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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない E01C 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない E01C |
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管理番号 | 1017529 |
審判番号 | 審判1998-35388 |
総通号数 | 13 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-06-21 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-08-26 |
確定日 | 1999-10-29 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第1997204号発明「施工面敷設ブロック」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
〔I〕手続きの経緯 本件特許第1997204号発明は、平成4年12月9日に出願され、平成7年12月8日に特許権の設定の登録がなされ、平成10年8月26日に本件特許無効審判が請求され、答弁書の提出期間内に平成10年11月30付けで訂正請求がされたものである。 〔II〕請求人の主張 請求人は、甲第1〜第4号証を提出して、 本件特許第1997204号の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1及び第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項又は2項の規定により特許を受けることができないものであり、 同請求項2に係る発明は、甲第1及び第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの特許は、特許法123条1項2号の規定により無効とすべきである旨主張している。 甲第1号証:特開昭60-16607号公報 甲第2号証:実開昭62-50243号公報 甲第3号証:実公昭54-1761号公報 甲第4号証:実開平4-126926号公報 〔III〕被請求人の主張 被請求人は、本件請求項1及び2に係る発明と甲第2及び第4号証に記載された発明とは、技術的近似性を有せず、本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1〜第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものではない旨主張し、更に「甲1又は甲3と本件特許発明との差異を説明する技術説明書」を提出している。 〔IV〕訂正請求について 1.訂正請求の趣旨及び訂正の内容 訂正請求の趣旨は、特許第1997204号の明細書及び図面を訂正請求書に添付した訂正明細書及び図面のとおり訂正することを求めるものである。 そして、その訂正の内容は、以下の▲1▼〜▲6▼のとおりである。 ▲1▼明細書の特許請求の範囲の請求項1の「【請求項1】ネットの経糸又は緯糸にブロックに設けた引留具を通し掛けにして多数のブロックをネットに結合したことを特徴とする施工面敷設ブロック。」を、 「【請求項1】ネットの経糸又は緯糸にブロックの敷設面に設けた引留具を通し掛けにして多数のブロックをネットに結合し、該ネットを以って施工面に敷設する構成としたことを特徴とする施工面敷設ブロック。」 と訂正する。 ▲2▼明細書の特許請求の範囲の請求項2の「【請求項2】上記引留具は環状の引通し孔を有し、この引通し孔に経糸又は緯糸を導入する相の手構造の係入口を形成したことを特徴とする施工面敷設ブロック。」を、 「【請求項2】上記引留具は環状の引通し孔を有し、この引通し孔に経糸又は緯糸を導入する相の手構造の係入口を形成したことを特徴とする請求項1記載の施工面敷設ブロック。」 と訂正する。 ▲3▼明細書の段落【0008】の「【実施例】以下本発明の実施例を図1乃至図5に基いて説明する。」を、 「【実施例】以下本発明の実施例を図1乃至図4に基いて説明する。」 と訂正する。 ▲4▼明細書の段落【0014】の「図2乃至図4はブロック2の下面(敷設面)より上記引留具3を突出させネット1の経糸又は緯糸1aと結合させている。又図5はブロック2の側面又は側緑に上記引留具3を設け、これに上記ネット1の経糸又は緯糸1aを引通して結合している。この場合にはブロック2の対向する辺をネット1に結合し、ネット1をブロック2の下面に良好に密着させ、ネット1に対するブロックの遊びを抑止する。上記引留具3をブロック2の側面に突設した場合には、ネット1にブロック2の対向する辺に結合してネット1に抱き込むように一体的に結合できる。上記ネット1とブロック2群を結合した敷設体はネット1によって個々のブロック2が可撓性を付与され、又ネット1とブロック2とはその界面において実質的に遊離した状態を形成し、ネット1の通気、通水性と上記遊離界面とが施工面における植物育成を助長し、施工面への密着敷設を可能とする。従って未均し又は粗均し施工面への敷設に有効に使用できる。」を、 「図2乃至図4はブロック2の下面(敷設面)より上記引留具3を突出させネット1の経糸又は緯糸1aと結合させている。上記ネット1とブロック2群を結合した敷設体はネット1によって個々のブロック2が可撓性を付与され、又ネット1とブロック2とはその界面において実質的に遊離した状態を形成し、ネット1の通気、通水性と上記遊離界面とが施工面における植物育成を助長し、施工面に敷設されるネットの馴染性を以って施工面への密着敷設を可能とする。従って未均し又は粗均し施工面への敷設に有効に使用できる。」 と訂正する。 ▲5▼明細書の図面の簡単な説明の記載「【図5】更に他例を示す断面図。」を削除する。 ▲6▼明細書に添付の図面中、図5を削除する。 2.訂正の適否について (1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否について (1-1)訂正▲1▼について この訂正は、請求項1における「ブロックに設けた引留具」を「ブロックの敷設面に設けた引留具」とし、ブロックにおける引留具を設ける位置を限定し、また「ネットに結合し」の次に、「該ネットを以って施工面に敷設する構成とし」を加え、ネットを以って施工面に敷設する施工面敷設ブロックであることに限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、「ブロックの敷設面に設けた引留具」なる事項は、明細書の段落【0014】の「図2乃至図4はブロック2の下面(敷設面)より上記引留具3を突出させネット1の経糸又は緯糸1aと結合させている」の記載、及び図2〜図3の記載に基づくものであり、また「該ネットを以って施工面に敷設する構成とし」の事項は、明細書の段落【0007】の「ネットを施工面に敷設するのみでこれに連結した上記多数のブロックで覆工できる」の記載、並びに図3及び図4の記載に基づくものであり、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、しかも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 なお、請求人は、弁駁書2頁25行〜3頁3行において、「訂正前の請求項1は『ブロックをネットに結合したことを特徴とする施工面敷設ブロック』としているが、これは『ブロックを敷設すること』が発明の主旨であり、訂正後の請求項1は『該ネットを以って施工面に敷設する構成としたことを特徴とする施工面敷設ブロック』としているが、これは、『ネットを敷設すること』が発明の主旨である。このことは、発明の主旨がブロックからネットに変更され、新たな作用効果を生むものであり、明らかに特許請求の範囲を拡張し、あるいは変更するものである。」と主張しているで、これについて検討する。 訂正前の請求項1に記載された施工面敷設ブロックを施工面に敷設するには、明細書の段落【0007】に「ネットを施工面に敷設するのみでこれに連結した上記多数のブロックで覆工できる」とあるように、ネットを施工面に敷設することになるものと認められるから、請求項1において「該ネットを以って施工面に敷設する構成としたことを特徴とする施工面敷設ブロック」と訂正することは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更することにはならないので、請求人の主張は採用しない。 (1-2)訂正▲2▼について この訂正は、請求項2における「特徴とする」の次に「請求項1記載の」を加え、請求項1を引用する記載とするものである。 訂正前の請求項2は、「上記引留具は」の記載があること、また、「この引通し孔に経糸又は緯糸を導入する」とあり、「経糸又は緯糸」に関して「ネットの」が省略された記載となっていることからみて、請求項1を引用する請求項であることは明らかであり、引用することを表す「請求項1記載の」なる記載が脱落していることもまた明らかである。 したがって、この訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、しかも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (1-3)訂正▲3▼、▲5▼について これらの訂正は、訂正▲6▼において図5を削除するのに伴い、図5に関連する記載を削除するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、しかも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (1-4)訂正▲4▼について この訂正は、訂正▲6▼において図5を削除するのに伴い、図5に関連する「又図5はブロック2の側面又は側縁に・・・・ネット1に抱き込むように一体的に結合できる。」の記載を削除するものである。また、「施工面における植物育成を助長し、」と「施工面への密着敷設を可能とする。」の間に「施工面に敷設されるネットの馴染性を以って」の記載を加え、施工面への密着敷設がネットの馴染性によることを説明するものであり、明細書の段落【0007】の「ネットを施工面に敷設するのみでこれに連結した上記多数のブロックで覆工できることに加え、ネットの良馴性にて施工面に密着施工しながら、」の記載に基づくものであるから、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、しかも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (1-5)訂正▲6▼について 図5を削除するこの訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、しかも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)独立特許要件について ▲1▼訂正後の請求項1及び2に係る発明 訂正後の請求項1及び2に係る発明は、それぞれ訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】ネットの経糸又は緯糸にブロックの敷設面に設けた引留具を通し掛けにして多数のブロックをネットに結合し、該ネットを以って施工面に敷設する構成としたことを特徴とする施工面敷設ブロック。 【請求項2】上記引留具は環状の引通し孔を有し、この引通し孔に経糸又は緯糸を導入する相の手構造の係入口を形成したことを特徴とする請求項1記載の施工面敷設ブロック。」 ▲2▼甲各号証に記載された事項 請求人が提出した、、本件特許発明の特許出願前に国内において頒布された刊行物である甲第1〜第4号証には、以下の事項が記載されていると認められる。 《甲第1号証》 甲第1号証には、 「(1)透水性、可撓性の布、金網等のシート状物の表面に、多数のコンクリートブロックが一体に固着された法面保護、軟弱地盤補強、河川根固工等に用いられるコンクリートブロツクを備えたシート状物の製造方法において、コンクリートブロツク成形用型枠内に水硬性セメント組成物を打設し、該水硬性セメント組成物が硬化しない前に透水性、可撓性のシート状物を前記型枠上に載せて水硬性セメント組成物と接合させ、更にシート状物の裏側より連結具を該シート状物をつらぬいて型枠内の水硬性セメント組成物内にその先端が侵入するように打込み、次いで、水硬性セメント組成物を硬化させてシート状物にコンクリートブロツクを固着させることを特徴とするコンクリートブロツクを備えたシート状物の製造方法。」(特許請求の範囲)、 「本発明はコンクリートブロツクマツト(独立したコンクリートブロツクが透水性、可撓性布等のシート状物の表面に一体化されたもの)の製造方法に関し、・・・・このコンクリートブロツクを備えたシート状物は、・・・・道路、造成地等における法面を保護する覆工マツトとして利用される。」(1頁右下欄9〜19行)、 「水硬性セメント組成物と透水性、可撓性の布は面接着し、コンクリートブロツクと布は強固に一体化される。」(2頁左下欄19行〜右下欄1行)と記載されている。 以上の記載、並びに第3図、コンクリートブロツクマットの上面側より見た斜視図である第4図及び同底面側より見た斜視図である第5図の記載からみて、甲第1号証には、 「金網の表面に多数のコンクリートブロツクを一体に面接着し、かつ連結具を金網をつらぬいてコンクリートブロツクに打込んで、多数のコンクリ―トブロツクを金網に固着し、該金網を以って施工面に敷設する構成としたコンクリートブロツクマツト」 《甲第2号証》 甲第2号証には、 「コンクリート製又は、モルタル製の四角柱のスペーサーブロツク1の上面中央部に止めクギ2を一部表面に露出させ残り部分は埋込みとした吹付け用スペーサーブロツク。」(実用新案登録請求の範囲)と記載され、第2図には、のり面5にスペーサブロツク1が載置され、スペーサブロツク1に埋込まれた止めクギ2の露出部に金網3が取り付けられ、吹き付けたコンクリート又はモルタル7中に金網が埋設されている構造が記載されている。 また第3、第5及び第6図には、金網3に止め金具9、11、12を通し掛けにしてブロツク1を金網3に結合する構造が記載されている。 《甲第3号証》 甲第3号証には、 「幅方向に一定間隔を置いて長さ方向に配されたマルチフイラメントよりなる補強合成繊維を有し、かつモノフイラメントからなる合成繊維の網目状の可撓性シートと、多数のコンクリートまたはモルタルブロツクからなり、前記シート上にコンクリートまたはモルタルブロツクを縦横に隣接配置し、かつそのシートに接着剤により固定してなることを特徴とする地盤保護シート。」(実用新案登録請求の範囲)と記載されている。 《甲第4号証》 甲第4号証には、 「【請求項1】河床や河岸さらには堤防を流水による侵食から保護するための護岸工として構築される護岸用構造物において、菱形金網の列線端部にカール加工された複数のリング状フックを備え、護岸工設置領域に敷設される底網と、リング状フックが端縁部に形成され、前記底網上に中詰石を投入する区画部を画成するために立設して縦横に配置される複数のコンクリート隔壁板と、菱形金網の列線端部にカール加工された複数のリング状フックを備え、上記中詰石が投入された区画部を覆うためのふた網と、前記底網,コンクリート隔壁板,ふた網のそれぞれのリング状フックと、それらに隣接する底網,コンクリート隔壁板,ふた網のいずれかのリング状フックとを一致させた状態で挿通される骨線と、を備えることを特徴とする親水河川用護岸工構造。」(実用新案登録請求の範囲)と記載されている。 ▲3▼対比・判断 《訂正後の請求項1に係る発明について》 訂正後の請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明の「金網」、「コンクリートブロツク」、「固着」及び「コンクリートブロツクマツト」は、それぞれ訂正後の請求項1に係る発明の「ネット」、「ブロック」、「結合」及び「施工面敷設ブロック」に相当するから、両者は、 「多数のブロックをネットに結合した施工面敷設ブロック」 である点で一致し、以下の点で相違する。 訂正後の請求項1に係る発明は、ネットの経糸又は緯糸にブロックの敷設面に設けた引留具を通し掛けにして多数のブロックをネットに結合するのに対し、甲第1号証に記載された発明は、ネットの表面にコンクリートブロツクを一体に面接着し、かつ連結具をネットをつらぬいてコンクリートブロツクに打込んで、多数のブロツクをネットに結合する点。 相違点について検討する。 甲第2号証には、コンクリート製のスペーサーブロックに一部表面に露出させて埋め込んだ止め金具(訂正後の請求項1に係る発明の「引留具」に相当する。)に金網(訂正後の請求項1に係る発明の「ネット」に相当する。)を通し掛けにして、スペーサーブロックを金網に結合することが記載されている。しかしながら、このスペーサーブロックは、同号証の第2図に示されているように、のり面に吹き付けられるコンクリート又はモルタル中に埋設される金網を、のり面から離れた位置に保持するためのブロックであって、のり面を覆工するためのブロックとは異なるものである。すなわち、甲第2号証に記載された発明は、ネットに結合されたブロックによってのり面等の施工面を覆工する技術に関するものではなく、甲第1号証に記載された発明とは技術分野を異にするものであるから、甲第2号証に記載された発明を甲第1号証に記載された発明に適用する契機となるものをみいだすことができない。 また、甲第3及び第4号証にも、相違点で挙げた訂正後の請求項1に係る発明の構成については記載されていないし、示唆もされていない。 そして、訂正後の請求項1に係る発明は、「ネットの経糸又は緯糸にブロックの敷設面に設けた引留具を通し掛けにして多数のブロックをネットに結合し」という構成(以下、「構成ア」という。)を備えることにより、「ネット1とブロック2とはその界面において実質的に遊離した状態を形成し、ネット1の通気、通水性と上記遊離界面とが施工面における植物育成を助長し、」(訂正明細書段落【0014】)、「施工面に対する馴染性が極めて良好であり、施工面の凹凸を吸収して密着施工が行なえ」(訂正明細書段落【0015】)という甲第1〜第4号証に記載された発明からは期待できない作用、効果を奏するものである。 したがって、訂正後の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとすることも、また甲第1及び第2号証に記載された発明に基いて、あるいは甲第1〜第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 なお、請求人は、弁駁書2頁15〜22行において、訂正後の発明は、甲第3号証の連結固定手段として、甲第1号証の連結固定手段を応用することにより当業者が容易に想到し得るもので、進歩性が認められず、独立して特許を受けることができない旨主張しているので、これについて検討する。 訂正後の請求項1に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、甲第3号証に記載された発明の「網目状の可撓性シート」、「コンクリートブロツク」、「固定」及び「地盤保護シート」は、それぞれ訂正後の請求項1に係る発明の「ネット」、「ブロック」、「結合」及び「施工面敷設ブロック」に相当するから、両者は、 「多数のブロックをネットに結合した施工面敷設ブロック」 である点で一致し、以下の点で相違する。 訂正後の請求項1に係る発明は、上記構成アを備えるのに対し、甲第3号証に記載された発明は、ブロックを網目状のシートに接着剤により固定して多数のブロックをネットに結合する点。 相違点について検討すると、甲第1号証に記載された発明は、金網(ネット)の表面に多数のコンクリートブロツクを一体に面接着し、かつ連結具を金網をつらぬいてコンクリートブロツクに打込んで、多数のコンクリートブロツクを金網に固着しており、連結具のみでコンクリートブロツクを金網に固着するものではないし、訂正後の請求項1に係る発明の構成アも備えておらず、またそれを示唆するものでもない。 そして、訂正後の請求項1に係る発明は、構成アを備えることにより、上記の作用、効果を奏するものである。 したがって、訂正後の請求項1に係る発明は、甲第3及び第1号証に記載されたものから当業者が容易に想到し得たものとすることができず、請求人の主張は採用しない。 また、他に訂正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 よって、訂正後の請求項1に係る発明(以下、「本件請求項1に係る発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 《訂正後の請求項2に係る発明について》 訂正後の請求項2に係る発明は、訂正後の請求項1に係る発明を引用するものであるから、上記訂正後の請求項1に係る発明と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明であるとすることも、また甲第1及び第2号証に記載された発明に基いて、あるいは甲第1〜第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 また、他に訂正後の請求項2に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 よって、訂正後の請求項2に係る発明(以下、「本件請求項2に係る発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、訂正▲1▼〜▲6▼は、特許法134条2項ただし書き各号に掲げる事項のいずれかを目的とし、かつ同条5項で準用する同法126条2項及び3項の規定に適合するので、本件訂正請求を認める。 〔V〕請求人が主張する無効理由の検討 1.本件請求項1に係る発明について 上記〔IV〕2.(2)で述べたように、本件請求項1に係る発明は、請求人が提出した甲第1号証に記載された発明であるとすることも、また甲第1及び第2号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第1〜第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 2.本件請求項2に係る発明について 上記〔IV〕2.(2)で述べたように、本件請求項2に係る発明は、請求人が提出した甲第1及び第2号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第1〜第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 〔VI〕むすび 以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1及び2に係る発明の特許を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 施工面敷設ブロック (57)【特許清求の範囲】 【請求項1】ネットの経糸又は緯糸にブロックの敷設面に設けた引留具を通し掛けにして多数のブロックをネットに結合し、該ネットを以って施工面に敷設する構成としたことを特徴とする施工面敷設ブロック。 【請求項2】上記引留具は環状の引通し孔を有し、この引通し孔に経糸又は緯糸を導入する相の手構造の係入口を形成したことを特徴とする請求項1記載の施工面敷設ブロック。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この発明は施工面をコンクリートブロックで覆工する場合に使用する敷設ブロックに関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、土地造成、道路開設、或いは土手の工事等においては、傾斜面や路面をコンクリートブロックにて覆工する工事が行なわれている。またこの覆工用ブロックとして塩ビシートやゴムシートの表面に多数の小ブロックを接着剤にて貼り付け、施工面の凹凸に馴染敷設できるようにしたものが提供されている。 【0003】 【発明が解決しようとする問題点】 これら覆工工事は広面積にブロックを敷設する作業や目地込め作業、施工面の下地工事や均し作業に工期が嵩む。各ブロックに窓を設けて植物を育成するようにしても工事手間、工費アップがネックとなっている。又多数のブロックを塩ビシートやゴムシートに接着剤にて貼り付けたようなものはブロックに剥離を生じ易く、植物の育成を妨げる。 【0004】 この発明は施工面に対するブロック敷設が極めて簡単で、従って短い工期、工費で敷設でき、植物育成も活性にする、更には製造の簡単な施工面敷設ブロックを提供する。 【0005】 【問題点を解決するための手段】 ネットの経糸又は緯糸にブロックに設けた引留具を通し掛けにし、多数のブロックをネットに結合する構成とした。 【0006】 【作用】 ネットにブロックに設けた引留具を通し掛けにするのみで多数のブロックをネットに結合した敷設ブロックが容易に形成でき、ネットとブロックは互いに結合しながら、その界面において実質的に互いに遊離した状態を形成できる。 【0007】 従ってネットを施工面に敷設するのみでこれに連結した上記多数のブロックで覆工できることに加え、ネットの良馴性にて施工面に密着施工しながら、ブロック間における植物の育成を助長する。又施工面の粗均しで敷設でき、大巾な工期短縮と工費削減を図ることができる。 【0008】 【実施例】 以下本発明の実施例を図1乃至図4に基いて説明する。 【0009】 1はネット、2は施工面覆工用のブロックであり、ブロック2には上記ネット1の経糸又は緯糸1aを通し掛けにする引留具3を設けて、多数のブロック2をネット1に結合する。 【0010】 ネット1は例えば合成樹脂製ネットであり、又ブロック2はセメントと砂の混練物を主材とする。又はこのブロック2は金属精練によって発生するスラッジや製紙スラッジ等を固形化したものを使用する。又このブロック2はタイルやレンガブロックである。又このブロックは木質製又は合成樹脂製ブロックである。 【0011】 上記ブロック2の成形時に引留具3を一体成形したものを準備し、このブロック2の引留具3にネット1の経糸又は緯糸1aを引通し、ネット1に多数のブロック2を結合する。 【0012】 上記引留具3は線材をブロック2の外面においてリング形にして環状の引通し孔4を形成し、この引通し孔4に上記ネット1の経糸又は緯糸1aを係入する相の手構造の係入口5を形成する。一例として線材又は条板をリングに巻曲しつつ、その巻曲端部を相の手に重ね上記係入口5を形成する。ネット1の経糸又は緯糸1aは上記相の手構造の係入口5より差し入れられ、環状の引通し孔4に引通しされる。この引留具3はこれに通し掛けされたネット1の経糸又は緯糸1aを係入口5の相の手構造により脱出を良好に阻止する。この引留構造はネットをクレーンにて吊り上げてブロック群を一括して吊り上げ施工面に敷設する場合等に、ブロック2の脱落を有効に防止する。 【0013】 上記引留具3はネット1の経糸又は緯糸1aを通し掛けにし潰し加工してブロック2の下面に沿うように変形させることができる。又上記引留具3はブロック2よりU字形に突出させ、このU字曲部にネット1の経糸又は緯糸1aを係入する係入口5を設けることができる。 【0014】 図2乃至図4はブロック2の下面(敷設面)より上記引留具3を突出させネット1の経糸又は緯糸1aと結合させている。上記ネット1とブロック2群を結合した敷設体はネット1によって個々のブロック2が可撓性を付与され、又ネット1とブロック2とはその界面において実質的に遊離した状態を形成し、ネット1の通気、通水性と上記遊離界面とが施工面における植物育成を助長し、施工面に敷設されるネットの馴染性を以って施工面への密着敷設を可能とする。従って未均し又は粗均し施工面への敷設に有効に使用できる。 【0015】 【発明の効果】 上記施工面敷設ブロックによれば、ネットの経糸又は緯糸にブロックに設けた引留具を通し掛けにして多数のブロックをネットに結合する構成としたので、施工面に対する馴染性が極めて良好であり、施工面の凹凸を吸収して密着施工が行なえ、又広域の施工面に対するブロック覆工作業が極めて容易且つ迅速に行なえる。又ネットに結合された個々のブロック間における植物育成も助長することができる。又ネットの経糸又は緯糸にブロックに設けた引留具を通し掛けするのみで、ネットに多数のブロックを結合する敷設ブロックが容易に製造できる。 【0016】 上記によって施工面の覆工ブロックのコストを削減、覆工工事の工期短縮、工費削減が達成できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の実施例を示す施工面敷設ブロックの斜視図。 【図2】 同平面図。 【図3】 同断面図。 【図4】 同他例を示す断面図。 【符号の説明】 1 ネット 1a 経糸又は緯糸 2 ブロック 3 引留具 4 引通し孔 5 係入ロ 【図面】 |
訂正の要旨 |
(訂正の要旨) 本件訂正は、願書に添付した明細書及び図面を、特許請求の範囲を目的として、下記▲1▼のとおり、誤記の訂正を目的として下記▲2▼のとおり、明りょうでない記載の釈明を目的として、下記▲3▼〜▲6▼のとおり訂正するものである。 ▲1▼明細書の特許請求の範囲の請求項1の「【請求項1】ネットの経糸又は緯糸にブロックに設けた引留具を通し掛けにして多数のブロックをネットに結合したことを特徴とする施工面敷設ブロック。」を、 「【請求項1】ネットの経糸又は緯糸にブロックの敷設面に設けた引留具を通し掛けにして多数のブロックをネットに結合し、該ネットを以って施工面に敷設する構成としたことを特徴とする施工面敷設ブロック。」と訂正する。 ▲2▼明細書の特許請求の範囲の請求項2の「【請求項2】上記引留具は環状の引通し孔を有し、この引通し孔に経糸又は緯糸を導入する相の手構造の係入口を形成したことを特徴とする施工面敷設ブロック。」を、 「【請求項2】上記引留具は環状の引通し孔を有し、この引通し孔に経糸又は緯糸を導入する相の手構造の係入口を形成したことを特徴とする請求項1記載の施工面敷設ブロック。」と訂正する。 ▲3▼明細書の段落【0008】の「【実施例】以下本発明の実施例を図1乃至図5に基いて説明する。」を、 「【実施例】以下本発明の実施例を図1乃至図4に基いて説明する。」と訂正する。 ▲4▼明細書の段落【0014】の「図2乃至図4はブロック2の下面(敷設面)より上記引留具3を突出させネット1の経糸又は緯糸1aと結合させている。又図5はブロック2の側面又は側緑に上記引留具3を設け、これに上記ネット1の経糸又は緯糸1aを引通して結合している。この場合にはブロック2の対向する辺をネット1に結合し、ネット1をブロック2の下面に良好に密着させ、ネット1に対するブロックの遊びを抑止する。上記引留具3をブロック2の側面に突設した場合には、ネット1にブロック2の対向する辺に結合してネット1に抱き込むように一体的に結合できる。上記ネット1とブロック2群を結合した敷設体はネット1によって個々のブロック2が可撓性を付与され、又ネット1とブロック2とはその界面において実質的に遊離した状態を形成し、ネット1の通気、通水性と上記遊離界面とが施工面における植物育成を助長し、施工面への密着敷設を可能とする。従って未均し又は粗均し施工面への敷設に有効に使用できる。」を、 「図2乃至図4はブロック2の下面(敷設面)より上記引留具3を突出させネット1の経糸又は緯糸1aと結合させている。上記ネット1とブロック2群を結合した敷設体はネット1によって個々のブロック2が可撓性を付与され、又ネット1とブロック2とはその界面において実質的に遊離した状態を形成し、ネット1の通気、通水性と上記遊離界面とが施工面における植物育成を助長し、施工面に敷設されるネットの馴染性を以って施工面への密着敷設を可能とする。従って未均し又は粗均し施工面への敷設に有効に使用できる。」 と訂正する。 ▲5▼明細書の図面の簡単な説明の記載「【図5】更に他例を示す断面図。」を削除する。 ▲6▼明細書に添付の図面中、図5を削除する |
審理終結日 | 1999-08-10 |
結審通知日 | 1999-08-20 |
審決日 | 1999-08-26 |
出願番号 | 特願平4-351913 |
審決分類 |
P
1
112・
113-
YA
(E01C)
P 1 112・ 121- YA (E01C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川島 陵司 |
特許庁審判長 |
幸長 保次郎 |
特許庁審判官 |
鈴木 公子 小野 忠悦 |
登録日 | 1995-12-08 |
登録番号 | 特許第1997204号(P1997204) |
発明の名称 | 施工面敷役ブロック |
代理人 | 中畑 孝 |
代理人 | 久門 知 |
代理人 | 中畑 孝 |
代理人 | 久門 享 |