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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1018120
異議申立番号 異議1998-70022  
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-05-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-01-09 
確定日 2000-06-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第2627715号「スロットマシン」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2627715号の特許を取り消す。 
理由 (1)手続きの経緯
本件特許2627715号の発明は、平成5年10月15日に特許出願され、平成9年4月18日に設定登録がなされ、その後、阪本実より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年7月13日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年1月11日に訂正明細書の補正がなされたものである。
(2)訂正明細書の補正の適否についての判断
上記訂正明細書の補正は、主として、訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の「複数のリールと、これらのリールの回転を開始させるスタートスイッチと、
乱数を発生させる乱数発生手段と、
前記スタートスイッチからのスタート信号に基づいて、前記乱数発生手段から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する確率抽選手段と、
この確率抽選手段により抽選された乱数値により、通常確率か、通常確率より高い入賞確率の高確率かの入賞確率の判定を行い、当該判定結果が通常確率の場合には通常確率判定信号を出力するとともに、高確率の場合には高確率判定信号を出力する確率判定手段と、
この確率判定手段からの高確率判定信号に基づいて、通常確率から高確率へ変更されたことを遊技者に報知する特定確率報知手段と、
前記確率判定手段により判定される前記通常確率における通常入賞確率データ及び前記確率判定手段により判定される高確率における高入賞確率データを記憶する入賞確率データ記憶手段と、
前記確率判定手段から出力される高確率判定信号の入力を条件に、前記入賞確率データ記憶手段に記憶された高入賞確率データを選択する確率選択手段と、
前記乱数発生手段から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する入賞抽選手段と、
前記入賞抽選手段により抽選された乱数値と前記入賞確率データ記憶手段の通常入賞確率データ若しくは高入賞確率データとに基づいて、入賞を判定し、入賞信号を出力する入賞判定手段と、を備えたことを特徴とするスロットマシン。」とあるのを、「複数のリールと、
これらのリールの回転を開始させるスタートスイッチと、
乱数を発生させる乱数発生手段と、
前記スタートスイッチからのスタート信号に基づいて、前記乱数発生手段から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する確率抽選手段と、
この確率抽選手段により抽選された乱数値により、通常確率か、通常確率より高い入賞確率の高確率かの入賞確率の判定を行い、当該判定結果が通常確率の場合には通常確率判定信号を出力するとともに、高確率の場合には高確率判定信号を出力する確率判定手段と、
この確率判定手段からの高確率判定信号に基づいて、通常確率から高確率へ変更されたことを遊技者に報知する特定確率報知手段とを備え、
確率判定手段は、
当該確率判定手段により判定される前記通常確率における通常入賞確率データ及び前記確率判定手段により判定される高確率における高入賞確率データを記憶し、
当該確率判定手段から出力される高確率判定信号の入力を条件に、当該確率判定手段に記憶された高入賞確率データを選択し、
前記乱数発生手段から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選し、
抽選された乱数値と通常入賞確率データ若しくは高入賞確率データとに基づいて、入賞を判定し、入賞信号を出力するようにしたことを特徴とするスロットマシン。」と補正しようとするものである。
そこで、当該補正事項について検討する。
訂正請求書に添付された訂正明細書(以下「補正前の訂正明細書」という。)の第5頁第23行〜第6頁第21行の「上記中央制御装置50は、図1に示すように、・・・通常確率における通常入賞確率データと、高確率における高確率入賞確率データとからなる、いわゆる入賞確率データを記憶する入賞確率データ記憶手段55と、前記確率判定手段53からの通常確率判定信号の入力を条件に、前記入賞確率データ記憶手段55に記憶された通常入賞確率データを選択するとともに、高確率判定信号の入力を条件に、前記入賞確率データ記憶手段55に記憶された高入賞確率データを選択する確率選択手段54と、前記乱数発生手段52から順次発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する入賞抽選手段56と、この入賞抽選手段56により抽選された乱数値と入賞確率データ記憶手段55の通常入賞確率データ若しくは高入賞確率データとに基づいて、入賞を判定し、入賞信号を出力する入賞判定手段59とを備えている。
【0015】
なお、確率判定手段53には、現状が通常確率の場合には、高確率に移行するか若しくは現状維持のままの何れかを選び、一方、現状が高確率の場合には、通常確率に移行するか若しくは現状維持のままかのいずれかを選ぶ抽選確率データを備えている。
また、図1に示すように、中央制御装置50のランプ点灯制御手段57及び効果音発生手段58と、中央制御装置50の出力側に接続されたランプ30及びスピーカ31とから、通常確率から高確率に変更されたことを遊技者に変更されたことを遊技者に報知する特定確率報知手段が形成されている。」との記載は、補正後の全文訂正明細書第5頁第22行〜第6頁第21行の記載と同じ中央制御装置50について記述しているものと解される。してみると、補正後の特許請求の範囲に記載される「確率判定手段は、当該確率判定手段により判定される前記通常確率における通常入賞確率データ及び前記確率判定手段により判定される高確率における高入賞確率データを記憶し、当該確率判定手段から出力される高確率判定信号の入力を条件に、当該確率判定手段に記憶された高入賞確率データを選択し、前記乱数発生手段から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選し、抽選された乱数値と通常入賞確率データ若しくは高入賞確率データとに基づいて、入賞を判定し、入賞信号を出力するようにした」との記載は、補正前の訂正明細書の記載と一致しないし、さらにいえば、補正後の明細書の記載とも一致しない。すなわち、補正前の訂正明細書の記載によれば、確率判定手段53は、確率抽選手段51により抽選された乱数値により、通常確率か、通常確率より高い入賞確率の高確率かの判定を行い、当該判定結果が通常確率の場合には通常確率判定信号を出力するとともに、高確率の場合には高確率判定信号を出力するだけであって、補正後のような機能をさらに有するものではない。
特許権者(訂正請求人)は、訂正拒絶理由に対する意見書の中で、「確率判定手段が判定する入賞確率が高確率か低確率というときには、そこには入賞判定が行われることが含まれると考えられるからです。入賞の判定無くして、入賞確率が「高確率」であるとか「通常確率」であるとかという判定は生じません。」と主張するが、スロットマシンにおいて、入賞判定を行うことは、従来から普通に行われていると認められるが、その判定をどのような手段でどのように判定をするかは、種々考えられるところであり、その具体的手段として、補正前と補正後とでは、異なるものであることは、上述のとおりである。
よって、上記補正事項は、実質上補正前の訂正明細書の特許請求の範囲を変更するものであって、明瞭でない記載の釈明にはあたらないものと認められる。
したがって、上記補正事項は、訂正請求書の要旨を変更するものであって、特許法第131条第2項の規定に該当し、その余の補正事項に触れるまでもなく、上記訂正明細書の補正は認められない。
(3)訂正の適否についての判断
本件訂正請求は、特許第2627715号の特許明細書を本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めたものであって、その要旨は、
A.特許請求の範囲の「複数のリールと、これらのリールの回転を開始させるスタートスイッチと、
乱数を発生させる乱数発生手段と、
前記スタートスイッチからのスタート信号に基づいて、前記乱数発生手段から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する確率抽選手段と、
この確率抽選手段により抽選された乱数値により、通常確率か、通常確率より高い入賞確率の高確率かの判定を行い、当該判定結果が通常確率の場合には通常確率判定信号を出力するとともに、高確率の場合には高確率判定信号を出力する確率判定手段と、
この確率判定手段からの高確率判定信号に基づいて、通常確率から高確率へ変更されたことを遊技者に報知する特定確率報知手段とを備えたことを特徴とするスロットマシン。」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、「複数のリールと、これらのリールの回転を開始させるスタートスイッチと、
乱数を発生させる乱数発生手段と、
前記スタートスイッチからのスタート信号に基づいて、前記乱数発生手段から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する確率抽選手段と、
この確率抽選手段により抽選された乱数値により、通常確率か、通常確率より高い入賞確率の高確率かの入賞確率の判定を行い、当該判定結果が通常確率の場合には通常確率判定信号を出力するとともに、高確率の場合には高確率判定信号を出力する確率判定手段と、
この確率判定手段からの高確率判定信号に基づいて、通常確率から高確率へ変更されたことを遊技者に報知する特定確率報知手段と、
前記確率判定手段により判定される前記通常確率における通常入賞確率データ及び前記確率判定手段により判定される高確率における高入賞確率データを記憶する入賞確率データ記憶手段と、
前記確率判定手段から出力される高確率判定信号の入力を条件に、前記入賞確率データ記憶手段に記憶された高入賞確率データを選択する確率選択手段と、
前記乱数発生手段から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する入賞抽選手段と、
前記入賞抽選手段により抽選された乱数値と前記入賞確率データ記憶手段の通常入賞確率データ若しくは高入賞確率データとに基づいて、入賞を判定し、入賞信号を出力する入賞判定手段と、を備えたことを特徴とするスロットマシン。」と訂正し、
さらに、上記Aの訂正に伴う明細書の明瞭でない記載の釈明を目的として、
B.明細書第3頁第7行目の「特定報知手段(60)とを備えた。」を「特定報知手段(60)と、前記確率判定手段(53)により判定される前記通常確率における通常入賞確率データ及び前記確率判定手段により判定される高確率における高入賞確率データを記憶する入賞確率データ記憶手段(55)と、前記確率判定手段(53)から出力される高確率判定信号の入力を条件に前記入賞確率データ記憶手段(55)に記憶された高入賞確率データを選択する確率選択手段(54)と、前記乱数発生手段(52)から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する入賞抽選手段(56)と、前記入賞抽選手段(56)により抽選された乱数値と前記入賞確率データ記憶手段(55)の通常入賞確率データ若しくは高入賞確率データに基づいて、入賞を判定し、入賞信号を出力する入賞判定手段(59)と、を備えたことを特徴とする。」と訂正することを求めるものである。
そこで、これらの訂正事項について検討する。
訂正事項Aについては、願書に添付した明細書または図面(以下「特許明細書」という。)に記載された発明に、「前記確率判定手段により判定される前記通常確率における通常入賞確率データ及び前記確率判定手段により判定される高確率における高入賞確率データを記憶する入賞確率データ記憶手段と、前記確率判定手段から出力される高確率判定信号の入力を条件に、前記入賞確率データ記憶手段に記憶された高入賞確率データを選択する確率選択手段と、前記乱数発生手段から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する入賞抽選手段と、前記入賞抽選手段により抽選された乱数値と前記入賞確率データ記憶手段の通常入賞確率データ若しくは高入賞確率データとに基づいて、入賞を判定し、入賞信号を出力する入賞判定手段」を追加したものと認められる。特許権者(訂正請求人)は、特許明細書の第5頁第5〜23行及び図1に明示されていたものであって、特許請求の範囲の減縮に当たり、実質上特許請求の範囲を拡張し変更するものではないと主張している。確かに、上記訂正事項Aは、請求人の主張のとおり特許明細書中に記載されている。しかしながら、特許明細書に記載された発明は、入賞確率の変動を遊技者に知らせ、もって変化に富む、ゲーム性が向上したスロットマシンを提供することをその目的とするものであって、どのように入賞判定するかは、発明の対象とはなっていなかったものである。特許権者(訂正請求人)が、主張するように、特許明細書に記載された発明において、入賞判定が行われることは含まれるとしても、当該特許明細書に記載された発明では、その入賞判定はどのようなやり方であってもよかったものである。言い換えれば、特許明細書に記載された発明は、特許明細書第9頁第1行〜第19頁第6行に記載されるスロットマシンの動作の説明(図3〜6のフローチャート参照)によれば、スロットマシンにおいて、ステップ71〜77までの動作を行い得る手段を備えていたにすぎないものであったのに対して、訂正後の発明は、ゲームスタートからゲーム終了までの全ての動作を行い得る手段を備えるものとなった。すなわち、訂正後の発明は、特許明細書に記載された発明に、その後のステップ78〜119を行い得る手段が追加されたものである。したがって、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮とは言えず、実質的に特許明細書に記載された特許請求の範囲を変更するものである。
また、訂正事項Bは、上記訂正事項Aの訂正に伴う訂正であるから、当該訂正事項Bも明瞭でない記載の釈明とは認められない。
以上の通りであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2項の規定に違反するので、当該訂正は認められない。
(3)特許異議の申立についての判断
i)本件発明
本件請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。
「複数のリールと、これらのリールの回転を開始させるスタートスイッチと、
乱数を発生させる乱数発生手段と、
前記スタートスイッチからのスタート信号に基づいて、前記乱数発生手段から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する確率抽選手段と、
この確率抽選手段により抽選された乱数値により、通常確率か、通常確率より高い入賞確率の高確率かの判定を行い、当該判定結果が通常確率の場合には通常確率判定信号を出力するとともに、高確率の場合には高確率判定信号を出力する確率判定手段と、
この確率判定手段からの高確率判定信号に基づいて、通常確率から高確率へ変更されたことを遊技者に報知する特定確率報知手段とを備えたことを特徴とするスロットマシン。」
ii)引用刊行物
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(「パチスロ完全攻略事典」PART5、株式会社日本文芸社、平成2年8月30日発行、第196〜201頁「アラジン」)には「アラジンでは、すべての役のフラグが立つか立たないかは、コインを投入してスタートレバーをたたいたタイミングで決まる。
・・・
コンピュータ内部では、ほとんど常に数字の計算が行われ、レバーがたたかれた瞬間に、コンピュータが計算していた数字が選ばれる。
その数字が、ある役の当たりならその役のフラグが立ち、当たりでなければフラグは立たない。つまり、コンピュータからの数字1個1個には、おのおのの役の当たりはずれの役割があり、レバーをたたくたびに、当たりはずれの抽選をしているのと同じなのである。
・・・
アラジンのコンピュータが計算している数字は2通りある。
1つは、ビッグチャンス、レギュラーボーナス、シングルボーナス、および小役のフラグの判定用の数字で、範囲は1〜65535となっている。これを乱数A(誤記と認められる。正しくはBである。)とする。
もう1つは、シングルボーナスの集中役のフラグの判定のための専用の数字で、範囲は0〜65535.これを乱数B(誤記と認められる。正しくはAである。)とする。
アラジンのコンピュータでは、まず最初にシングルボーナスの集中役の判定を行い、次にほかの役の判定に進む。
・・・
表1からわかるように、アラジンでは、乱数Bによる判定に設定するごとの差が出ていない。シングルボーナスの集中役の確率によって、設定に明確な違いが出てくるのである。
・・・
シングルボーナスの集中役の最中での、乱数Bの中での役のフラグの成立確率は以下のようになる。
▲1▼ビッグチャンス……通常時と同じ約0.243%
▲2▼レギュラーボーナス……通常時と同じ約0.284%
▲3▼シングルボーナス……通常時の約10倍の約16.66%
▲4▼小役……8枚小役は通常より低い約6.67%。5・7枚チェリーは通常と同じ約0.50%。単チェリーは通常の約100倍の約49.90%。
――以上のように、シングルボーナスと単チェリーの確率が、通常より大きく上昇するのである。」(第197頁下段第1行〜第198頁下段第7行、第198頁表1、第199頁表2)と記載されている。また、196頁には、複数のリールを備えるスロットマシン「アラジン」の写真が掲載されている。
同刊行物2(「パチスロ完全攻略事典」PART5、株式会社日本文芸社、平成2年8月30日発行、第148〜151頁「ベンハー」))には、「▲5▼小役の集中役……前記のチェリーを含む小役が60回の間にひんぱんに取れる役のことを指す。今までの役のように特定の絵柄が並んで始まるというものではない。ベルの小役が出たあと、この役にはいったり入らなかったりする。この役が成立した場合、台の正面右側のCONGRATULAT10NのLEDが6個点灯し、10ゲームを消化するたびに1個ずつ消えていく。全部で60回のゲームの間、この役が継続する。」(第149頁下段第15行〜第150頁上段第9行)、「▲1▼完全確率方式のため、天井はなく、まだビッグチャンスその他の役も、純粋にレバーを叩いたときの運のよし悪しで決まる。」(第151頁上段第4〜8行)と記載されている。
同刊行物3(「パチスロ完全攻略事典」PART5、株式会社日本文芸社、平成2年8月30日発行、第140〜143頁「ガリバー」)には、「シングルボーナスの集中役、またの名をジャCパニックというが、これは約5回のゲームにつき1回の割合でシングルボーナスが出るという役だ。通常ゲーム中の確率の、ちょうど10倍になる。
シングルボーナスの集中役というのは、遊技中においてはなかなかわかりにくく、台の上方につけられた別個のランプを点灯させて知らせるようにする店が多い。
・・・
集中役の判定には、ほかの役で用いられた乱数Xとは、まったく無関係の乱数Yが使われる。」(第142頁中段第5行〜同頁下段第13行)と記載されている。
同刊行物4(特開昭62-127086号公報)には、「▲1▼周面に複数個の絵柄が配列された複数のドラムと、それぞれドラムを駆動するための駆動手段と、駆動手段が始動する毎に特定の入賞の条件を向上させるための抽選を行う抽選手段と、抽選結果に応じて前記駆動手段の動作を制御して特定の入賞の条件を向上させるための入賞条件向上手段と、抽選結果を遊戯者に報知する報知手段とを具備して成るスロットマシン。
・・・
▲4▼前記報知手段は、表示手段や発音手段を含んでいる特許請求の範囲第1項記載のスロットマシン。」(特許請求の範囲)、「今メダルの投入および始動レバー6の操作によりドラム1a、1b、1cが一斉始動すると、まずCPU27はROM28に予め格納してある乱数テーブルより任意の乱数を取り込んで、抽選処理を開始する(ステップ21、22)。この抽選処理は、乱数値がRAM29にセット済みの設定値と一致するか否かを判定し、もしこれが一致するとき、ボーナスゲームにかかる絵柄配列が生じ易いような停止制御を、各ドラムに対し与えるものである。なお前記の設定値は、例えばその数を自由に変更できるようになっており、これによりボーナスゲームの発生頻度を適宜に調整し得る。そしてこの抽選により一致判定があると、ステップ23が“YES”となり、ステップ24で抽選結果表示ランプ30による発光および音声発生部23による発音の各動作が実施される。」(第4頁左上欄第1〜17行、第1、6図)と記載されている。
iii)判断
本件発明と上記刊行物1に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比すると、引用発明における「スタートレバー」、「コンピュータが計算している数字」、「レバーがたたかれた瞬間に、コンピュータが計算していた数字が選ばれる(こと)」、{シングルボーナス」、「シングルボーナスの集中役の判定を行う(こと)」が、本件発明における「スタートスイッチ」、「乱数」、「通常確率より高い入賞確率の高確率」、「確率抽選手段」、「確率判定手段」に相当することは明白である。また、引用発明が、複数のリールを備えるスロットマシンであることも明白であり、引用発明におけるスタートレバーをたたくと、当該複数のリールの回転が開始されることも明白である。してみれば、両者は、複数のリールと、これらのリールの回転を開始させるスタートスイッチと、乱数を発生させる乱数発生手段と、前記スタートスイッチからのスタート信号に基づいて、前記乱数発生手段から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する確率抽選手段と、この確率抽選手段により抽選された乱数値により、通常確率か、通常確率より高い入賞確率の高確率かの判定を行い、当該判定結果が通常確率の場合には通常確率判定信号を出力するとともに、高確率の場合には高確率判定信号を出力する確率判定手段とを備えたスロットマシンである点で一致し、本件発明が、確率判定手段からの高確率判定信号に基づいて、通常確率から高確率へ変更されたことを遊技者に報知する特定確率報知手段を備えているのに対して、引用発明はこの手段を備えていない点で相違する。
上記相違点について検討する。刊行物2には、小役の集中役が成立した場合(本件発明における「通常確率から高確率へ変更された」場合に相当する。)にLEDが点灯することが、刊行物3には、シングルボーナスが出た場合に台の上方につけられた別個のランプを点灯させて知らせるようにすることが、それぞれ開示されている。また、刊行物4には、光および音による報知手段が開示されている。本件発明、引用発明および刊行物2〜4に記載される発明は、いずれもスロットマシンという同一の技術分野に属する技術であり、したがって、引用発明に刊行物2〜4に記載される発明を適用して本件発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到し得るものと認められる。そしてその奏する作用効果も、引用発明及び刊行物2〜4に開示されるものの和を越えるものではない。
iv)むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、上記引用発明及び刊行物2〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。すなわち、本件発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
したがって、本件請求項1に係る特許は、平成6年法律第116号附則第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第4条第1項及び第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-04-02 
出願番号 特願平5-258133
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (A63F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 佐藤 久容
特許庁審判官 高木 彰
市野 要助
登録日 1997-04-18 
登録番号 特許第2627715号(P2627715)
権利者 サミー株式会社
発明の名称 スロットマシン  
代理人 木村 高明  
代理人 米山 淑幸  
代理人 北村 仁  
代理人 竹山 宏明  
代理人 黒田 博道  

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