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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  B41J
審判 全部申し立て 2項進歩性  B41J
管理番号 1018429
異議申立番号 異議2000-71408  
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-12-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-04-06 
確定日 2000-07-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第2959398号「テープカセット」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2959398号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.本件特許発明
本件特許第2959398号(平成6年5月25日出願、平成11年7月30日設定登録。)の請求項1及び2に係る特許発明(以下、各々「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】カセットケース内に、フィルムテープを巻回したテープスプールと、インクリボンを巻回したリボンスプールとを配置し、各テープスプール及びリボンスプールからフィルムテープ、インクリボンを所定の搬送経路に沿って引き出すとともに、インクリボンを介して文字等を印字したフィルムテープをカセットケースの外方へ排出するテープカセットにおいて、
前記搬送経路中でカセットケースに形成され、各フィルムテープ及びインクリボンを案内するとともに、一対の壁部を有するガイド部と、
前記ガイド部の一対の壁部の間に形成された分離壁と、
前記一方の壁部と前記分離壁との間には、前記フィルムテープの幅方向を案内規制する案内規制部とを備え、
前記フィルムテープは一方の壁部と分離壁との間を、前記案内規制部にその幅方向を規制されつつ走行案内されるとともに、前記インクリボンは他方の壁部と分離壁との間を走行案内されることを特徴とするテープカセット。
【請求項2】前記カセットケースは上ケースと下ケースとを有し、該下ケース側に形成された前記他方の壁部と前記分離壁とは、前記インクリボンとほぼ同一の高さを有し、インクリボンは上ケースの下面と下ケースの上面とで幅方向に規制されていることを特徴とする請求項1記載のテープカセット。」
2.申立ての理由の概要
申立人桑原和子は、「本件請求項1に係る特許発明は、甲第1号証と甲第2号証との組み合わせにより、当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を特許を受けることができないものであり、また、本件請求項2に係る特許発明は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがって、上記各特許発明に係る特許はいずれも同法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである。さらに、本件明細書の特許請求の範囲の記載が発明の詳細な説明に記載されておらず、請求項1及び2に係る特許は、同法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたことから、上記各特許発明に係る特許はいずれも同法第113条第1項第4号の規定により取り消すべきものである。」旨主張している。
3.甲第1号証乃至甲第3号証に記載の発明
甲第1号証(特開昭57-11073号公報)には、プリント装置又は文字組合せ装置に用いられるように作られた改良されたテープ及びリボンのカートリッジに関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「実施例を説明するに当り、最初に第1図及び2図を参照して述べる。これらは本発明のテープ及びリボン用のプリント用カートリッジを示すものである。第1図は組立てた状態のカートリッジの斜視図で一般的なカートリッジ収容装置18は鎖線で示してある。第2図は説明の便宜上多くの部品を分解して示したカートリッジの斜視図である。テープ及びリボン用のカートリッジは符号10で示され、互いに結合させて第1図に示した形態をなすように構成された成形品の1対のカートリッジ半部11及び12を有している。組立てた状態で、カートリッジ10はテープ及びリボンの供給用のハウジングと、ハウジングから外方に延びる長形のテープ及びリボン用の案内部14とを有する。ハウジングは、1対の側壁とそれに対し直角に配置されその周囲付近に延びる縁部壁を有した空所を有する。後に詳述するように、案内部14はプリントサイクルの間テープ及びリボンが引出される際それらを案内する作用をなす。」(第4頁左上欄16行乃至右上欄14行)
「第3図及び4図に良く示されているように、テープ39及びリボン34はそれらの供給用の巻いたものから長形の案内部14を介しカートリッジの外方に出るよう案内される。案内部14を通してのテープ39とリボン34の案内は複数の第1及び第2の案内柱状体50,51を含む案内装置により達成される。第4図に示されるように、複数の案内柱状体又は面50はリボン34がカートリッジから引出される間それを支持するのを助け、テープ39とリボン34がカートリッジから引出される際にそれらが離れていることを維持しまたテープ39に対しそれが柱状体44と案内部14の外端との間で座屈することを防ぐ案内面を提供する。前にも述べたように、本発明のカートリッジは、プリント用カートリッジの往復運動の結果テープとリボンが前進するプリント装置に組合わせ用いることを意図されている。従って、テープとリボンは、収容装置を従ってカートリッジを前方に実際に動かすことによって前進させられる。このカートリッジの前方への運動の間テープに後方への動きが生ずると、テープ上の字の間隔が損われる。従ってこの型式のカートリッジにおいてその前方への運動の間にテープの後方への運動及び座屈を阻止することは重要である。案内面はリーフスプリング49と共にこのテープ39の後方への運動を阻止することを助ける。案内柱状体51は主としてテープが案内部14を通り運動する際テープ39を支持しそれがたれ下がることを防止する機能を果す。
次に第5図及び6図を見ると、テープ39の上にリボン34がある状態でテープとリボンが案内部14を通る間のそれらの断面が示されている。図示のようにテープ39とリボン34の分離は複数の案内柱状体50によって維持されている。テープ39が案内部14の外端を通り案内される間、テープ39は前端の内縁によって中心に維持される。」(第6頁右上欄15行乃至第6頁右下欄11行)
甲第2号証(特開平6-135105号公報)には、熱転写プリンタに装着してラベルテープに対して熱転写方式あるいは感熱方式等により印字をおこなうことに使用されるラベル作成用インクリボンカセットに関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「本実施例のラベル作成用インクリボンカセットは、第1の実施例と同様にカセットケース1内に被転写テープ3およびインクリボン4が収納されているとともに、カセットケース1の凹部12の近傍の部分の、プリンタのプラテン14と対向する側の面がプラテン14に突出した突出部28a、28bとされており、熱転写プリンタのキャリッジ8上に搭載されて被転写テープ3に対する印字を行なうものであるが、被転写テープ3の供給コア2aから印字部へ至るまでの搬送経路が、インクリボンカセットの使用初期の状態においてほぼ直線状とされている点、および印字終了後の被転写テープ3の搬送経路の構造が上記した第1の実施例とは異なっている。
すなわち、本実施例では、被転写テープ3がインクリボンカセットの使用初期の状態において、供給コア2aから送り出される位置30と凹部12に形成された被転写テープ3をカセットケース1外に導出する開口26との間でカセットケース1に形成されたガイド壁31に当接してその搬送経路がほぼ直線状となるような状態でカセットケース1内に収納されており、この直線状の搬送経路は、図17に破線で示すように被転写テープ3の使用が終了する時点までその状態を維持するようになっている。
本実施例においては、上述した位置30と開口26との間における被転写テープ3の搬送経路をこのような形状とすることにより、被転写テープ3の引き出し負荷が低減され、印字動作時における被転写テープ3の引き出しを常に安定して行なうことができる。
尚、本実施例においては最初から最後まで、搬送経路がほぼ直線状に保持される構成とされているが、この搬送経路は、少なくともその引き出し負荷が最大となるインクリボンカセットの使用初期状態において直線状とされていれば、その引き出し負荷を低減させて被転写テープ3の引き出しが安定して行なえるようになり、その目的が達成されるものである。
また、本実施例においては、印字が終了して凹部12に形成された開口27から再度カセットケース1内に導入された被転写テープ3は、ガイド部材13によりプラテン14から離反する方向にガイドされた後、ガイド壁32およびガイド壁33に案内されてカセットケース1の側部に形成された開口部34に達し、ここからカセットケース1外に導出される。
図18は、印字に終了した被転写テープ3およびインクリボン4が再度カセットケース1内に導入される開口27およびガイド壁31近傍の構造を説明するためのものであり、図17におけるB-B’線に沿った断面を図中矢印C方向より見た断面図である。
尚、図18(a)、(b)および(c)はそれぞれカセットケース1内に収納されて使用される被転写テープ3の幅が複数種類存在することにともない、収納される被転写テープ3の幅に対応してガイド壁32の構造が異なっている点を示すものである。
図示のように、印字の終了した被転写テープ3およびインクリボン4はそれぞれ別の方向に移送されてゆくが、両者を分離しているガイド壁32にはカセットケース1内に収納されている被転写テープ3の幅に応じたガイド腕32aが形成されており、被転写テープ3は、このガイド腕32aのよりその幅方向をガイドされて、斜行することなく開口部34の方向に案内される。」(段落【0093】乃至【0100】)
甲第3号証(特開平6-122239号公報)には、印字が行なわれる長尺状の印字シートを収納した印字シートカートリッジおよびその印字シートカートリッジを着脱自在に装着して印字を実行する印字機器に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「この様なリボン巻取コア24に巻取られるインクリボンRは、熱転写型のリボンであり、その幅は印字される側のテープTの幅に応じて複数種用意される。本実施例では、図6に示したように、テープ幅6,9,12mm用として12mm幅のインクリボンと、図示しないがテープ幅18mm用として18mm幅のインクリボンと、図7に示したように、テープ幅24mm用として同幅の24mm幅のインクリボンと、計3種のインクリボンRを用意している。
インクリボンRは、リボン幅がテープカートリッジ10の高さと等しいものの場合には(図7参照)、インクリボンRは天壁16および底壁18にガイドされるので、リボン巻取コア24の外周にはフランジ部は形成されていないが、リボン幅が狭いテープカートリッジ10の場合には、インクリボンRを安定してプラテン12に供給できるように、リボン巻取コア24の外周には、巻取収納しているインクリボンRの幅に適合したフランジ部24Cが形成され、このフランジ部24CにてインクリボンRを案内している(図6参照)。」(段落【0038】、【0039】)
4.対比・判断
【特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとの主張について】
甲第1号証に記載された上記技術事項からみて、甲第1号証に記載された発明の「カートリッジ10」、「テープ39」、「テープ39の供給用の巻いたもの」、「リボン34」、「リボン34の供給用の巻いたもの」、「案内部14」、「案内部14の壁面」、「案内柱状体50」及び「プリント用カートリッジ」は、各々本件特許発明1の「カセットケース」、「フィルムテープ」、「テープスプール」、「インクリボン」、「リボンスプール」、「一対の壁部を有するガイド部」、「一対の壁部」、「分離壁」及び「テープカセット」に相当するものであるから、本件特許発明1の用語を使用して本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、「カセットケース内に、フィルムテープを巻回したテープスプールと、インクリボンを巻回したリボンスプールとを配置し、各テープスプール及びリボンスプールからフィルムテープ、インクリボンを所定の搬送経路に沿って引き出すとともに、インクリボンを介して文字等を印字したフィルムテープをカセットケースの外方へ排出するテープカセットにおいて、 前記搬送経路中でカセットケースに形成され、各フィルムテープ及びインクリボンを案内するとともに、一対の壁部を有するガイド部と、前記ガイド部の一対の壁部の間に形成された分離壁とを備え、前記フィルムテープは一方の壁部と分離壁との間を走行案内されるとともに、前記インクリボンは他方の壁部と分離壁との間を走行案内されることを特徴とするテープカセット。」で一致しており、下記の点で相違している。
相違点;本件特許発明1では、ガイド部としての一方の壁部と分離壁との間には、フィルムテープの幅方向を案内規制する案内規制部を備え、フィルムテープは一方の壁部と分離壁との間を、案内規制部にその幅方向を規制されつつ走行案内されるとともに、インクリボンは他方の壁部と分離壁との間を走行案内されるものであるのに対して、甲第1号証に記載された発明では、案内部14の一方の壁部と案内柱状体50との間には、本件特許発明1のような案内規制部を備えていない点。
上記相違点について検討するに、甲第1号証及び甲第2号証に記載されたカートリッジ(テープカセット)のテープ及びリボンをカートリッジ(カセット)から引き出すための案内部14(搬送経路)には、フィルムテープの幅方向を規制する案内規制部は設けられていないものである。
そして、甲第2号証には、上記摘記した技術事項が記載されているが、ガイド壁32に形成されるガイド腕32aは、ガイド壁32を収納される印字の終了した被転写テープ3の幅に対応してガイド壁32を形成するためのものであって、印字の終了した被転写テープ3を収容するための開口部34(本件特許発明1や甲第1号証に記載された発明には設けられていない)へ被転写テープ3を斜行することなく案内するものであるから、本件特許発明1の案内規制部のように他方の壁部と分離壁との間を走行案内されるインクリボンとともに、一方の壁部と分離壁との間でフィルムテープの幅方向を案内規制するものとは、解決しようとする課題が相違しているものであるから、甲第2号証に記載されたガイド腕32aを甲第1号証に記載された案内部14のテープ通路部に案内規制部として採用するための契機がないものである。
そして、本件特許発明1では、上記相違点に係る構成を備えることによって、フィルムテープとインクリボンの幅が異なっていても、フィルムテープをインクリボンに対して各走行経路内で独立して確実に走行案内することができるという格別な作用効果を奏するものと認める。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めることができない。
次に、本件特許発明2について検討するに、本件特許発明2は、本件特許発明1の技術事項を引用するとともに、「カセットケースは上ケースと下ケースとを有し、該下ケース側に形成された他方の壁部と分離壁とは、インクリボンとほぼ同一の高さを有し、インクリボンは上ケースの下面と下ケースの上面とで幅方向に規制されている」点を限定したものである。
一方、甲第3号証には、上記摘記したようにインクリボンRの幅がテープカートリッジの高さと等しいものの場合には天壁16と底壁18がガイドの役割を奏することが記載されているにすぎないものであって、上記本件特許発明2で限定した技術事項については記載されていないばかりでなく、本件特許発明1の相違点に係る技術事項についても記載されていない。
したがって、本件特許発明2は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めることができない。
【特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていないとの主張について】
請求項1の「カセットケース内に、フィルムテープを巻回したテープスプールと、インクリボンを巻回したリボンスプールとを配置し、各テープスプール及びリボンスプールからフィルムテープ、インクリボンを所定の搬送経路に沿って引き出すとともに、インクリボンを介して文字等を印字したフィルムテープをカセットケースの外方へ排出するテープカセットにおいて、」との記載は、段落【0007】及び【0016】等に記載されているようにテープカセットがテープ印字装置との協働により各テープスプール及びリボンスプールからフィルムテープ、インクリボンを所定の搬送経路に沿って引き出すとともに、インクリボンを介して文字等を印字したフィルムテープをカセットケースの外方へ排出するものであることを記載したものであって、テープカセットとしては、テープ送りローラ12,テープスプール18,リボンスプール20,リボン巻取スプール21等を備えたものであることは明らかであるから、請求項1に記載された技術事項は、発明の詳細な説明に記載された技術事項の範囲内のものである。
したがって、請求項1の発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないという特許異議申立人の主張は採用できない。
次に、請求項2の「インクリボンとほぼ同一の高さを有し、」との記載は、「インクリボンの幅とほぼ同一の高さを有し、」を意味することは発明の詳細な説明(段落【0070】等の記載参照)から明らかであって、「高さ」とはインクリボンの「幅」を意味するものである。
したがって、請求項2が記載不備であるとの特許異議申立人の主張も採用することができない。
5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1及び2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1及び2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-06-23 
出願番号 特願平6-136325
審決分類 P 1 651・ 534- Y (B41J)
P 1 651・ 121- Y (B41J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松川 直樹上田 正樹  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 森林 克郎
市野 要助
登録日 1999-07-30 
登録番号 特許第2959398号(P2959398)
権利者 ブラザー工業株式会社
発明の名称 テープカセット  

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