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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A23L
管理番号 1019327
審判番号 審判1994-1757  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1984-12-03 
種別 無効の審決 
審判請求日 1994-01-23 
確定日 2000-05-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第1779184号「即席冷凍麺類の製造法」の特許無効審判事件についてされた平成9年11月28日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成9年(行ケ)第343号、平成11年6月8日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件特許発明
本件特許第1779184号(以下、本件特許という)は、昭和58年5月17日に特許出願され、昭和63年12月20日に出願公告(特公昭63ー66177号)された後、平成5年8月13日に設定登録されたものである。その後、平成7年5月9日に特許法第126条の規定に基づく明細書の訂正をする審判請求(平成7年審判第10190号)がなされ、平成7年11月8日にこれを認める審決がなされた。
本件特許に係る発明(以下、本件発明という。)の要旨は、前記訂正された明細書の記載からみて、特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「タピオカ澱粉を5〜30重量含有する小麦粉を使用して製麺し、そして歩留り270〜300%になるように茹上げ処理してα化した後、冷凍することを特徴とする即席冷凍うどんの製造法。」
2.当事者の主張及び提出した証拠方法
2-1 請求人の主張
請求人は、「第1779184号特許は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、下記の甲各号証及び参考資料1、2を提出し、以下の(1)〜(3)の理由により、本件特許を無効とすべきであると主張する。
(1)上記訂正審判における明細書の訂正(以下、本件訂正という。)は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものではないし、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものでもないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものである。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書若しくは第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第7号により無効とすべきである。(請求人は、「同法第123条第1項第8号により無効とすべきである」と主張しているが、本件審判は、平成5年法律第26号をもって改正された特許法が適用されるので、適用される特許法の条文に基づき上記のごとく読み替えた。以下、同様に適用する特許法の条文に読み替える。)
(2)訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明(以下、本件発明という。)は、甲第4号証として提出する特願昭58ー322685号の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2第1項の規定によって特許を受けることができないものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第3項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第7号により無効とすべきである。
(3)本件発明は、甲第1〜3号証及び甲第5〜11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第3項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第7号により無効とすべきである。
なお、請求人は、本件審判請求書において、上記訂正前の明細書の記載に基づき、本件特許に係る発明の要旨を認定し、該発明は甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであると主張しているが、前述のように本件特許に係る明細書は訂正され、しかも、請求人のその後の弁駁の全趣旨から考えて、請求人の主張する理由は、上記(1)〜(3)にあるものと認める。
2-2 請求人の提出した証拠方法
甲第1号証 : 特公昭56-9098号公報
甲第2号証 : 特開昭56-78570号公報
甲第3号証 : 「`83麺業年鑑」全国麺友会共編、(株)麺業新聞社 発行、1982年11年25日刊、P.240〜244
甲第4号証 : 特開昭59-156260号公報
甲第5号証 : 「体当たりうどん考」小島高明著、朝日新聞社発行、1 975年10月30日第1刷発行、2〜4頁、102頁 〜107頁
甲第6号証 : 「月刊麺業界」4月号(通巻99号)、(株)食品産業 新聞社大阪支局、1983年4月1日発行、10〜11 頁、16〜17頁
甲第7号証 : 浅野玲著「製麺の基礎ーうどん・そば入門ー」株式会社 食品と科学社、昭和46年12月20日第1版発行、1 29〜133頁
甲第8号証 : 特開昭57ー159461号公報
甲第9号証 : 特開昭58ー5151号公報
甲第10号証: 特開昭58ー51859号公報
甲第11号証: 「ジャパンフードサイエンス」第20巻、第4号、通巻 第229号(1981年4月)36〜40頁、日本食品 出版株式会社発行
参考資料1 : 平成3年審判第12697号の審決
参考資料2 : 特公昭62ー49018号公報
2-3 被請求人の主張
被請求人は、下記の乙第1、2号証を提出して、請求人の主張する上記(1)〜(3)の無効理由は、いずれも理由がない旨答弁している。
2-4 被請求人の提出した証拠方法
乙第1号証 : 田中康裕作成に係る実験成績証明書(通常の茹上げ歩留 りでの冷凍麺と本件発明の茹上げ歩留りでの冷凍麺の官 能試験)
乙第2号証 : 村角 充作成に係る実験成績証明書(本件発明の冷凍麺 と従来品の解凍後の歩留りの測定と官能試験)
3.当審の判断
3-1 請求人の主張する理由(1)について
(i)請求人が主張する具体的理由の概要は、概ね次のようなものである。
『本件訂正は、特許請求の範囲に記載の「茹上げ処理」を「歩留り270〜300%になるように茹上げ処理」に訂正することを含むものである。
上記訂正事項に関するものとして、訂正前の明細書には「前記のようにタピオカ澱粉を添加した小麦粉等の穀粉類を常法に従って製麺し茹で上げる。この時の茹で上げ歩留りは通常の麺の茹で上げ歩留りより低めにすることが望ましい。例えばうどん等のような太物は260〜330%好ましくは270〜300%、中華麺やそばのような細物は200〜260%好ましくは210〜250%である。この範囲より歩留りが多いと後で解凍して食した場合に弾力性に欠けやわらかすぎる状態になり、これより歩留りが少ないと硬くて芯のある食感になってしまう」という記載がある。前記摘記箇所に「270〜300%」が見られるものの、この数値範囲は「通常の麺の茹で上げ歩留りより低めにすることが望ましい」という前提があって初めて意味のある数値範囲であるといえる。その数値範囲だけを取り出し上記前提と無関係に用いた場合、うどんには細いもの、太いものがあるため、うどん全般について「通常の麺の茹で上げ歩留りより低めにする」ことを規定したことにはならないはずである。
そうすると、上記のように訂正することは、出願当初の明細書が意図していない発明をも包含していることになる。
また、「通常の麺の茹で上げ歩留りより低めにすることが望ましい」ことは、当たり前のことであり、単に「うどんを歩留り270〜300%になるように茹上げる」と規定しただけで、「通常の麺の茹で上げ歩留りより低めにする」ことを規定したことにはならないことも、甲第5号証〜甲第7号証の記載から明らかである。』
(ii)上記主張について検討する。
本件訂正前の明細書には、「この時の茹で上げ歩留りは通常の麺の茹で上げ歩留りより低めにすることが望ましい。例えばうどん等のような太物は260〜330%好ましくは270〜300%、中華麺やそばのような細物は200〜260%好ましくは210〜250%である。」(本件特許に係る特公昭63ー66177号公報第3欄19〜20行)と記載されている。ここに記載されている「うどん等のような太物」は、「中華麺やそばのような細物」とはその太さが異なるものとして例示されていることからみて、中華麺やそばとは太さが異なるごく普通のうどんを指していることは明らかである。そして、一般にごく普通のうどんをおいしく食べることができるように茹で上げたときの茹で上げ歩留りがおおよそ320〜340%程度であることを考えると、「普通のうどんの茹で上げ歩留りを270〜300%にする」と「通常の麺の茹で上げ歩留りより低くする」とは整合するのである。
してみると、ごく普通のうどんの場合、茹で上げ歩留りを270〜300%とし、通常の麺の茹で上げ歩留りより低めにすることは、訂正前の明細書に記載されているということができる。
そうすると、甲第5号証〜甲第7号証の記載を参考にするも、「茹上げ処理」を「歩留り270〜300%になるように茹上げ処理」と訂正することは、特許請求の範囲の減縮あるいは明りょうでない記載の釈明を目的として、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものと認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
以上のことから、請求人の主張する理由(1)によって、本件特許を無効とすることはできない。
3-2 請求人の主張する理由(2)について
(先願明細書記載の発明)
請求人が甲第4号証として提出した本件特許の出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された特願昭58ー32268号の願書に最初に添付した明細書(以下、先願明細書という。)には、次の(a)〜(d)に示す事項が記載されている。
(a)「1.タピオカ澱粉を配合した製麺原料粉を、真空度約600mmHg以下の減圧環境下で加水混練し、以下常法通り製麺することを特徴とする手延べ風麺類の製造法。
2.前記製麺原料粉中のタピオカ澱粉の配合割合が、略5重量%以上である特許請求の範囲第1項に記載の手延べ風麺類の製造法。」(特許請求の範囲)
(b)「タピオカ澱粉の原料粉中の配合割合は、麺製品の種類(原材料別に云えばうどん類、………………。この配合割合の上限は、麺の種類により異なり一律には規定できないが、略30重量%が目安で………………」(2頁右上欄10〜20行)
(c)「この生麺を……………ゆでればゆで麺、……………ゆで麺を冷凍すれば冷凍麺となる如く、本発明は広範囲の麺類に適用できる。」(3頁右上欄下から9〜6行)
(d)「実施例1 タピオカ澱粉(……………)11重量部と中力小麦粉89重量部をバキュームミキサーにいれて予備混合後、……………本発明に係る生うどんを得た。この生うどんを沸とう水中で18分間ゆでて本発明に係るゆでうどんを得た。………………前記実施例で得た生うどん及びゆでうどんを急速冷凍(ー40℃のエアープラストで35分間で冷凍)後、包装してー20℃の冷凍室で約1ヶ月間放置後、解凍、調理して試食したところ、……………」(3頁右下欄1行〜4頁左上欄4行)
これらの記載からみて、先願明細書には、タピオカ澱粉を5〜30重量%含有する小麦粉を使用して製麺し、そして得られた生麺を茹上げ処理してα化した後、冷凍することにより冷凍うどんを製造することが記載されているものと認められる。
(対比・判断)
本件発明と先願明細書に記載された発明を対比すると、両者は、タピオカ澱粉を5〜30重量%含有する小麦粉を使用して製麺し、そして茹上げ処理してα化した後、冷凍することを特徴とする冷凍うどんの製造法の点で一致し、(i)前者は、歩留り270〜300%になるように茹で上げるのに対して、後者には、歩留りについての数値が記載されていない点、及び(ii)前者は、製造されるものが即席冷凍うどんであるのに対して、後者では、製造されるものが冷凍うどんである点、で両者は相違する。
上記相違点について検討すると、先願明細書には、歩留りについて具体的な数値の記載はなく、また、タピオカ澱粉の使用と茹で上げ歩留りとの関係を説明する記載もない。そうだとすると、先願明細書においては、冷凍うどんを製造する際に当業者が通常採用する歩留りで茹で上げ処理するものと解するのが自然である。
一方、本件発明においては、東京高等裁判所における審決取消しの判決(平成9年(行ケ)第343号、平成11年6月8日判決言渡)の中で述べられているとおり、うどんを固めに茹でることを目的として、言い換えると解凍時又はその後に注入される湯によって、うどんが柔らかくなることを防ぐことを目的として、「歩留り270〜300%」にするものではなく、タピオカ澱粉入りの冷凍うどんを製造したとき、最もうどんをおいしく食することができる好適歩留りとして、茹で上げ歩留りを通常よりも低めの270〜300%としたものである。
本件発明のタピオカ澱粉を使用したときの好適歩留りとして、「歩留り270〜300%」になるように茹で上げることが先願明細書に記載されているということはできない。
この点について、請求人は、甲第6号証及び甲第11号証の記載に基づき、冷凍うどんの製造において、「固めに茹でるのがポイント」であることは本件出願前周知の事実であると指摘し、本件発明の歩留りについての数値限定は何も特別の範囲を規定するものではなく、通常の歩留りで茹で上げることを書いているに過ぎない旨主張しているが、上述のとおり、本件発明は、うどんを固めに茹でることを目的として、「歩留り270〜300%」にするものではなく、また、甲第6号証及び甲第11号証の記載を検討するも、タピオカ澱粉入りの冷凍うどんをおいしく食することができる好適歩留りとして、茹で上げ歩留りを通常よりも低めの270〜300%とすることが、本件出願時に当業者においてごく普通に採用されていたという事実は見出せないので、請求人の上記主張は採用しない。
したがって、上記(ii)の点が両者の実質的な相違点であるかどうかを検討するまでもなく、本件発明は、上記先願明細書に記載された発明と同一であるということはできず、請求人の主張する上記理由(3)は、採用できない。
3-3 請求人の主張する理由(3)について
平成9年11月28日付けの審決の概要は、「本件発明は、甲第1号証及び甲第6号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。したがって、本件訂正は、特許法第126条第3項の規定に違反してされたものであり、本件特許は、同法第123条第1項第7号に該当し、無効とすべきである。」というものであるが、前記審決について東京高等裁判所において審決取消しの判決(平成9年(行ケ)第343号、平成11年6月8日判決言渡)があったので、もはや本件発明が甲第1号証及び甲第6号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
したがって、甲第1号証及び甲第6号証の他に提出されている甲第2、3、5号証及び甲第7〜11号証について検討する。
(上記甲各号証記載事項)
甲第2号証には、「第1粉および第2粉とから成る原料粉の総重量を基準にして、第1粉として20%〜50%の小麦粉に、小麦粉以外の穀粉類およびデン粉類から成る群から選択される第2粉を80%〜50%配合して混合し、………………、次いで常圧下で圧延して麺帯とし、次いで該麺帯を水蒸気を用いた蒸し器中を通過させ、しかる後、これを水分が25〜35%となるまで熱風で乾燥させ、その後切刃で切り出して麺線とすることからなる麺類の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)及び「本書の全体を通じて使用される“デン粉類”とは………………、タピオカデン粉、………………等を指称する。」(2頁右下欄10行〜14行)と記載されている。
甲第3号証には、「したがって冷凍麺の製造において最も重要な点は、ただ単に急速凍結すればよいといった単純なものではなく、それぞれのめんの特性上最もおいしいピーク時にタイミングを合わせて凍結するように注意しなければならない。」(1頁右欄16行〜20行)及び「冷凍茹でめんの場合は通常の水道水程度の水質と温度の水にめんを浸漬するなどして、直接めんと水を接触させる方法によっても2〜3分で解凍し、そのままおいしく食べられる。」(2頁左欄24行〜28行)と記載されている。
甲第5号証には、「軟らかく練って短時間で、さっとゆでたものがうまい。麺の味が逃げないからだ。」(105頁)及び「34グラムの練り水を作り、次いで、この練り水で、80グラムのうどん粉をこねて、114グラムの生地を作り上げる。この生地を伸ばして切り釜でゆでると、うどんはどんどん湯を吸い、90グラム吸収した辺りでゆで上がる。半面、ゆで湯の中に練り水に加えた4グラムの塩の大半は逃げて行ってしまうので、差し引き勘定すると、200グラムのうどんが出来る。」(106頁1行〜6行)と記載されている。
甲第7号証には、麺の茹上げに関し「従って、水の浸透に関係するのは生麺の寸法、成分組織、含水量、含塩量、水分分布状態、麺の温度、および茹湯温度等が関係するものと考えます。」(131頁1行〜3行)と記載されている。
甲第8号証には、「生めん類を糊化後、直ちに比較的短時間の凍結処理が施されてなる冷凍ゆでめん類に、でんぷん糊化温度以下の低温水を麺に接触させほぼ20分以内でかつ解凍後の品温がほぼ15℃を超えないように解凍することを特徴とする冷凍ゆでめん類の解凍方法。」(特許請求の範囲)と記載されている。
甲第9号証には、「常法製造された生めんを、ほぼ98〜100℃に調節されたゆで湯の水面下に強制的に保持してゆで上げ、次いで水洗及び予備冷却後直ちに凍結することを特徴とする冷凍ゆでめん類の製造法。」(特許請求の範囲)と記載されている。
甲第10号証には、「麺原材料に、当該原材料の混練物の含水率が約31〜38重量%になるように水を加え、真空度約600mmHg以下の減圧環境下で混練し、次いで常法製麺後、凍結することを特徴とする冷凍めん類の製造法。」(特許請求の範囲)と記載されている。
甲第11号証には、「めんの太さにより異なるが、うどんなどの太物で20分前後からそば、ラーメンなどの細物で5〜10分前後からゆで伸びが始まる。この現象の始まるまでを釜揚状態と言い、めん類を一番おいしく食べるタイミングとされている。」(36頁右欄下から3行〜37頁左欄2行)及び「<ゆで伸び老化防止には> ………………本質的には、釜揚状態で食べさせてしまうことであり釜揚状態で凍結してしまうことである。」(37頁左欄24行〜30行)と記載されている。
(対比・判断)
「3-2 請求人の主張する理由(2)について」の項で述べたとおり、本件発明においては、うどんを固めに茹でることを目的として、言い換えると解凍時又はその後に注入される湯によって、うどんが柔らかくなることを防ぐことを目的として、「歩留り270〜300%」にするものではなく、タピオカ澱粉入りの冷凍うどんを製造したとき、最もうどんをおいしく食することができる好適歩留りとして、茹で上げ歩留りを通常よりも低めの270〜300%としたものである。
これに対して甲第2号証には、タピオカ澱粉を含有させた原料粉を用いて麺類を製造することが、甲第3号証には、冷凍麺を製造する際、おいしいピーク時にタイミングを合わせて凍結することが重要であることが、甲第5号証には、うどんの上手なゆで方に関し、軟らかく練って短時間で、さっとゆでたものがうまいことが、甲第7号証には、生麺の寸法、成分組織、含水量等が水の浸透に関係することが、甲第8号証には、でんぷん糊化温度以下の低温水を用いて冷凍ゆで麺を解凍することが、甲第9号証には、冷凍ゆで麺の製造において、生めんをゆで湯の水面下に強制的に保持してゆで上げることが、甲第10号証には、麺原材料を減圧環境下で混練し、常法により製麺後、凍結することにより冷凍めんを製造することが、甲第11号証には、うどんを一番おいしく食べることができる釜揚状態で凍結することが、それぞれ記載されているが、そのいずれにもタピオカ澱粉入りの冷凍うどんを製造する際に、最もうどんをおいしく食することができる好適歩留りとして、茹で上げ歩留りを通常よりも低めの270〜300%とすることを教示する記載は何もない。
そして、本件発明は、タピオカ澱粉入り生麺を「歩留り270〜300%」となるように茹上げ処理することにより、従来の同様の麺類に比べて優れた食味を有し、滑らかさおよび粘弾性についても非常に優れ、また従来のように沸騰湯中で解凍する必要がなく、ポット等の湯で充分であり、さらに冷やして食する麺の場合は水道水でも解凍できる等特許明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲第2、3、5号証及び甲第7〜11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできず、請求人の主張する上記理由(3)は、採用できない。
4.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件発明に係る特許を無効とすることはできず、本件審判費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第89条を適用して、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1997-10-24 
結審通知日 1997-11-18 
審決日 1997-11-28 
出願番号 特願昭58-85072
審決分類 P 1 112・ 121- Y (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 一弘植野 浩志  
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 佐伯 裕子
田中 久直
田中 倫子
大高 とし子
登録日 1993-08-13 
登録番号 特許第1779184号(P1779184)
発明の名称 即席冷凍麺類の製造  
代理人 西村 公佑  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 高木 千嘉  
代理人 佐藤 辰男  

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