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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1020409
異議申立番号 異議1998-71301  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-11-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-03-17 
確定日 2000-07-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第2654454号「半導体のドライエッチング方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2654454号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2,654,454号に係る主な手続の経緯は以下のとおりである。
特許出願 昭和63年4月29日
特許権設定登録 平成9年5月30日
特許公報発行 平成9年9月17日
特許異議の申立て(2件)
平成10年3月17日
取消理由通知 平成10年7月2日
異議意見書 平成10年9月21日
訂正請求 平成10年9月21日
訂正拒絶理由通知 平成11年1月6日
異議意見書 平成11年3月23日
手続補正書 平成11年3月23日
2.訂正の適否について
(2.1)訂正の目的等について
(2.1.1)訂正事項1について
特許明細書の特許請求の範囲請求項1における「少なくともガリウム(Ga)と窒素(N)を含む化合物半導体」を「GaN半導体」とする訂正は、該半導体の構成元素を特定するものであるので、特許請求の範囲の減縮に相当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものでもない。
(2.1.2)訂正事項2について
特許公報第2頁第3欄第29行〜第30行において、「少なくともガリウム(Ga)と窒素(N)を含む化合物半導体」を「GaN半導体」とする訂正は、特許請求の範囲の訂正に伴う訂正であり、明りょうでない記載の釈明に該当する。
(2.1.3)訂正事項3について
特許公報第2頁第3欄第33行〜第34行において、「少なくともガリウム(Ga)と窒素(N)を含む化合物半導体」を「GaN半導体」とする訂正は、特許請求の範囲の訂正に伴う訂正であり、明りょうでない記載の釈明に該当する。
(2.1.4)訂正事項4について
特許公報第2頁第4欄第4行〜第5行において、「少なくともガリウム(Ga)と窒素(N)を含む化合物半導体、例えば、AlXGa1-XN(0<X<1)半導体」を「GaN半導体」とする訂正は、特許請求の範囲の訂正に伴う訂正であり、明りょうでない記載の釈明に該当する。
(2.1.5)訂正事項5について
特許請求の範囲の請求項2における「四塩化炭素(CCl4)ガスのプラズマによりAlXGa1-XN(0≦X≦1)半導体を」を「四塩化炭素(CCl4)ガスのプラズマによりGaN半導体を」とする訂正は、半導体の構成元素を特定するものであるので、特許請求の範囲の減縮に相当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものでもない。
(2.1.6)訂正事項6について
特許公報第2頁第3欄第35行〜第37行における「四塩化炭素(CCl4)ガスのプラズマによりAlXGal1-XN(0≦X≦1)半導体を」を「四塩化炭素(CCl4)ガスのプラズマによりGaN半導体を」とする訂正は、特許請求の範囲の訂正にに伴う訂正であり、明りょうでない記載の釈明に該当する。
(2.1.7)訂正事項7について
特許公報第2頁第4欄第9行における「AlXGa1-XN(0≦X≦1)半導体を」を「GaN半導体を」とする訂正は、特許請求の範囲の訂正に伴う訂正であり、明りょうでない記載の釈明に該当する。
(2.2)独立特許要件について
(2.2.1)要旨変更について
平成7年4月27日付け手続補正書により、補正前にあっては、エッチングガスは四塩化炭素であったものが、塩素ガスを含むガスと変更された(この点については、取消理由通知において指摘が、訂正請求においても訂正されていない。)。
しかるに、明細書には、「AlXGa1-XN半導体に関するドライエッチング方法については、全く知られた方法が存在しない。プラズマエッチングにおいて如何なる反応性のガスを選択すれば良いかは、反応機構がエッチングされる化合物半導体の原子の組み合わせや結晶構造に影響されるため、予測が出来ない。従って、既存の反応性ガスがAlXGa1-XN半導体にとってエッチングに効果があるか否かも予測することができない。」と記載されている。すなわち、エッチングガスと被エッチング物との組合せが異なるとどのような効果が生じるのか予測ができないのであるから、上記補正により、エッチングガスを四塩化炭素から塩素ガスを含むガスと変更することは、どのような結果が生じるかは予測ができない組合せをも本件発明とすることであるので、上記補正は、願書に添付した明細書及び図面の要旨を変更するものである。
したがって、本件特許出願は、平成6年法律116号附則第6条1項及び平成5年法律26号附則第2条第2号の規定により、なお従前の例とされる平成5年改正前の特許法第40条の規定を適用して、上記手続補正書を提出した時にしたものとみなす。
この点に関し、特許権者は、平成11年3月23日付特許異議意見書の第3頁第11行〜第4頁第9行において、以下のように主張する。
「1.エッチング対象の半導体をエッチングするのは、原子イオン、原子ラジカルである。
四塩化炭素(CCl4)ガスがプラズマ化されれば、原子イオン、原子ラジカルに塩素原子イオン、塩素原子ラジカルが含まれているのは自明である。
又、塩素を含むガスのうちの特定の種類のガスプラズマで、ある種の半導体がエッチングされれば、それは、塩素原子イオン、塩素原子ラジカルがエッチング対象の半導体構成原子と化合し、気化することで、エッチングされることを意味する。尚、エッチング速度の大小についてはガスの種類に依存する。
このことを示す根拠に、平成10年9月21日付け特許異議意見書に乙第1号証として添付した「III-V族化合物半導体のドライエッチング」(引例3)のFig.9、Fig.10、Table 5、その他本文において、塩素原子ラジカルの作用と、ある特定の半導体に対する各種の塩素系ガスによるエッチング結果が記載されている。
よって、四塩化炭素(CCl4)ガスのプラズマでGaN半導体がエッチングされた事実から、塩素原子イオン、塩素原子ラジカルがGaN半導体と反応してエッチングすることは明白な事実である。
また、塩素原子イオン、塩素原子ラジカルに他の原子イオン、他の原子ラジカルが存在したところで、プラズマ状態により個々のイオン、個々のラジカルに分離して存在するのであるから、その他の原子イオン、原子ラジカルによりエッチングの更なる効果の促進は有り得るが、その中の塩素原子イオン、塩素原子ラジカルがGaN半導体表面に接触して化学反応が行われ、GaNをエッチングすることは明白である。
したがって、四塩化炭素(CCl4)ガスのプラズマでGaN半導体をエッチングすることができることが本件出願当初明細書に記載されているのであるから、そのプラズマ状態において存在する塩素原子イオン、塩素原子ラジカルに注目して、その状態と等価な塩素を含むガスのプラズマでGaN半導体をエッチングする主旨の請求項を作成したところで、何ら明細書の要旨を変更するものではない。
尚、訂正拒絶理由通知における上記したa)の2.の理由は、イ)エッチング対象物が異なる場合のエッチングの可能性に関する予測性と、ロ)エッチング対象物が同一であり、且つ、エッチング因子である塩素原子イオン、塩素原子ラジカルを共通とした上で、さらに、他に存在する原子イオン、原子ラジカルのみが異なる複数のガスでのエッチングの可能性に関する予測性とを混同している。」
しかしながら、上記「III-V族化合物半導体のドライエッチング」の第1143頁Table5「III-V族化合物半導体の主なドライエッチング例」に示されているとおり、III-V族化合物半導体の主なドライエッチングにおけるエッチングガスとしては、塩素系のガスに限っても四塩化炭素(CCl4)のみならず、CCl2F2,CCL3F,Cl2,COCl2,PCl3,HCl等の種々のガスが記載されているが、それらのガスが窒化ガリウム系化合物半導体に対し、四塩化炭素と同じ作用をし、同じ効果をもたらすとは記載されていない。そして、この他に、四塩化炭素以外の塩素系のガスが四塩化炭素と同じ作用をし、同じ効果を奏するということを示す証拠はない。したがって、出願当初の明細書において、窒化ガリウム系化合物半導体のエッチングガスとして四塩化炭素の例が示されていたからといって、四塩化炭素以外の全ての塩素系のガスが窒化ガリウム系化合物半導体に対し、四塩化炭素と同じ作用をし、同じ効果を奏するとは認められず、本件出願当時自明であったとも認められない。
(2.2.2)訂正された発明
平成11年3月23日付け手続補正書による訂正明細書の特許請求の範囲に記載された請求項1乃至3に係る発明(以下「訂正第1発明」乃至「訂正第3発明」という。)は、その明細書及び図面の記載からして特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されている次のとおりのものである。
「1.塩素を含むガスのプラズマでGaN半導体をエッチングすることを特徴とするドライエッチング方法。
2.四塩化炭素(CCl4)ガスのプラズマによりGaN半導体をエッチングするドライエッチング方法。
3.前記プラズマはエッチングすべき前記化合物半導体を載置する電極と、その電極に対向する電極との間に、高周波電力が印加されることで生成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のドライエッチング方法。」
(2.2.3)刊行物記載の発明について
平成4年1月14日に公開された特開平1-278025号公報(本件特許の公開公報、以下「刊行物1」という。)には、四塩化炭素(CCl4)ガスのプラズマによりAlXGa1-XN(0≦X≦1)半導体をエッチングするドライエッチング方法及び前記プラズマはエッチングすべき前記化合物半導体を載置する電極と、その電極に対向する電極との間に、高周波電力が印加されることで生成されるドライエッチング方法が記載されている。
(2.2.4)訂正第1発明について
訂正第1発明(以下、この項において「前者」という。)と上記刊行物1に記載された発明(以下、この項において「後者」という。)とを比較すると、後者における四塩化炭素は、前者における塩素を含むガスの一つであり、後者におけるAlXGa1-XN(0≦X≦1)においてX=0の場合はGaNであるので、両者は、四塩化炭素(CCl4)ガスのプラズマによりGaN半導体をエッチングするドライエッチング方法で重複しており、この点において同一の発明である。
したがって、訂正第1発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので特許を受けることができないものである。
(2.2.5)訂正第2発明及び第3発明について
訂正第2乃至第3発明は、上記のとおり上記刊行物1に記載された発明と同一である。
したがって、訂正第2発明及び第3発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので特許を受けることができないものである。
(2.2.6)この項のむすび
以上のとおりであるので、訂正第1発明乃至第3発明は、上記刊行物に記載された発明と同一であるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正は、平成6年法律第116号第6条第1項により平成6年改正前の特許法第126条第3項の規定を適用し、これを認めることができない。
3.本件発明
本件発明は、以上のとおり訂正請求が認められないので、特許された明細書の特許請求の範囲請求項1乃至3に記載された事項により特定された以下のとおりのものである(以下「本件第1発明」乃至「本件第3発明」という。)。
「【請求項1】塩素を含むガスのプラズマで少なくともガリウム(Ga)と窒素(N)を含む化合物半導体をエッチングすることを特徴とするドライエッチング方法。
【請求項2】四塩化炭素(CCl4)ガスのプラズマによりAlXGa1-XN(0≦X≦1)半導体をエッチングするドライエッチング方法。
【請求項3】前記プラズマはエッチングすべき前記化合物半導体を載置する電極と、その電極に対向する電極との間に、高周波電力が印加されることで生成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のドライエッチング方法。」
4.刊行物記載の発明
本件特許出願は、上記(2.2.1)において述べた理由により、平成8年11月15日付け手続補正書を提出した時に出願されたものとみなされる。上記手続補正書を提出した日の前である平成4年1月14日に公開された特開平4-10665号公報(本件特許の公開公報、以下「刊行物1」という。)には、四塩化炭素(CCl4)ガスのプラズマによりAlXGa1-XN(0≦X≦1)半導体をエッチングするドライエッチング方法及び前記プラズマはエッチングすべき前記化合物半導体を載置する電極と、その電極に対向する電極との間に、高周波電力が印加されることで生成されるドライエッチング方法が記載されている。
5.対比及び判断
(5.1)本件第1発明について
本件第1発明(以下、この項において「前者」という。)と上記刊行物1に記載された発明(以下、この項において「後者」という。)とを比較すると、後者における「四塩化炭素」は、前者における「塩素を含むガス」の一つであり、また、後者における「AlXGa1-XN(0≦X≦1)半導体」は、前者における「少なくともガリウム(Ga)と窒素(N)を含む化合物半導体」の一つであるので、両者は、四塩化炭素(CCl4)ガスのプラズマによりAlXGa1-XN(0≦X≦1)半導体をエッチングするドライエッチング方法である点において重複しており、この点において同一の発明である。
したがって、本件第1発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので特許を受けることができないものである。
(2.2.5)訂正第2発明及び第3発明について
本件第2乃至第3発明は、上記のとおり上記刊行物1に記載された発明と同一である。
したがって、本件第2発明及び第3発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので特許を受けることができないものである。
(5.3)この項のむすび
したがって、本件特許の請求項1乃至3記載の発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができなものである。
6.むすび
以上のとおり、本件特許明細書の請求項1乃至3に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものであるので、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-06-04 
出願番号 特願昭63-108666
審決分類 P 1 651・ 113- ZB (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 今井 淳一  
特許庁審判長 小林 邦雄
特許庁審判官 松田 悠子
左村 義弘
登録日 1997-05-30 
登録番号 特許第2654454号(P2654454)
権利者 株式会社豊田中央研究所 科学技術振興事業団 豊田合成株式会社
発明の名称 半導体のドライエッチング方法  
代理人 藤谷 修  

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