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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09B
管理番号 1022583
審判番号 審判1999-5176  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-07-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-04-06 
確定日 2000-08-02 
事件の表示 平成 5年特許願第325748号「ノニオン性界面活性剤」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 7月18日出願公開、特開平 7-179773]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 (1)手続の経緯、本願発明

この出願は、平成5年12月1日に行った特許法第30条第1項の規定による特許出願で、その請求項1乃至請求項3に係る発明は、平成11年4月28日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項3に記載されたとおりの、以下のものである。

【請求項1】アゾベンジル部分(moiety)を有するノニオン性界面活性剤。
【請求項2】下記の一般式〔I〕
R-φ1-N=N-φ2-O(CH2)mO(CH2CH2O)nH 〔I〕
[ここで、Rは水素原子、又は、アルキル基を表し、φ1及びφ2はp-フェニレン基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上、好ましくは6以上の整数を表す。]で表されるアゾ化合物である請求項1に記載のノニオン性界面活性剤。
【請求項3】下記式で表される請求項2に記載のノニオン性界面活性剤。

(2)原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、特許法第29条第2項に該当するに至った発明について特許法第30条の規定を適用する余地はなく、本件発明は、引用例1(「1993年電気化学秋季大会講演要旨集」((社団法人電気化学協会、平成5年9月30日発行)第243頁)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

(3)審判請求の理由の概要

本願は、1993年電気化学秋季大会講演要旨集第243頁の講演番号1J21の有機顔料薄膜作製に使用する「アゾベンジル部分(moiety)を有するノニオン界面活性剤」の発明である。
有機顔料薄膜は、講演要旨集左欄の1.の項の4〜6行に記載されている如く、新規に合成した疎水部にアゾベンゼンを導入した界面活性剤を使用するものである。
本願発明の基となる講演要旨集に記載されている有機顔料薄膜作製の特徴は、新規な「疎水部にアゾベンゼンを有しているノニオン界面活性剤」を使用することにあり、本願発明の技術思想も正にここにあり、本願発明が「アゾベンジル部分(moiety)を有するノニオン界面活性剤」である根拠もここにある。
講演要旨集に化学式で記載されているものは、この界面活性剤の一例であり、この例が本願発明であると認定した原審は、講演要旨集に記載の技術的特徴を見誤ったものであり、明らかに失当である。同様に、請求項1(補正前の)に記載のものには講演要旨集に記載の化合物の周辺の化合物も含まれており、これらの化合物は講演要旨集に記載の化合物に照らして進歩性がないとした原審の認定も失当である。
本願発明の基となる講演要旨集に記載の有機顔料薄膜作製の特徴が、新規な「疎水部にアゾベンゼンを有しているノニオン界面活性剤」の使用にあるにも関わらず、本願発明を講演要旨集に記載の化合物そのものにあるとした原審の判断は誤りであり、本願発明は進歩性を有する発明である。

(4)特許法第30条第1項の適用を受けるために提出した新規性の喪失の例外適用証明書に添付された講演要旨集の記載

該講演要旨集第243頁の講演番号1J21には、「アゾベンゼン修飾界面活性剤の還元による有機顔料薄膜作製」という題目で、以下の記載がある。

「1.これまで我々の研究室ではフェロセンを疎水部に導入した非イオン界面活性剤(FPEG)を用いて電気化学的に薄膜を作製する方法を報告してきた。しかし、フェロセンの酸化還元電位が高いため、卑な金属を基板に用いることが出来ない。そこで本研究では、疎水部に酸化還元電位の低いアゾベンゼンを導入した界面活性剤を新規に合成し、これを利用した薄膜作製を検討した。

2.本研究で用いたアゾベンゼン修飾界面活性剤(AzoPeg.図1)はp-n-ヘキシルアニリンを原料としカップリング反応とWilliamson合成により合成した。薄膜の作製には、1mM界面活性剤、0.1M HClの水溶液に10mMのI型銅フタロシアニン(i-CuPc)を加え、10min.超音波処理後、3day攪拌し、その上澄みを用いた。この上澄みを電解セルに移し定電位電解した。


図1 アゾベンゼン修飾界面活性剤の構造

3.表1に薄膜作成結果を示す。基板には、ITOの他に銅、ステンレススチール、真ちゅうを用いた。全ての基板で透明で均一な薄膜が得られた。したがって、卑な金属を基板として使用可能であることが明らかとなった。
(表 省略)
表1 顔料薄膜作成結果

1)T.Saji,K.Hoshino. and S.Aoyagui,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,865,(1985)
2)K.Hoshino and T.Saji,J.Am.Chem.Soc.,109,5881(1987)
3)T.Saji,K.Hoshino,Y.Ishii and M.Goto,J.Am.Chem.Soc.,113,450(1991)」

(5)当審の判断

(5-1)特許法第30条第1項の規定の適用の可否について

本願の請求項1乃至請求項3に係る発明が、新規性の喪失の例外適用証明書に添付された講演要旨集における文書によって発表されたことにより特許法第29条第1号各号の一に該当するに至った発明であるかという点について検討する。
該講演要旨集の記載は前記の通りであり、それは、題目「アゾベンゼン修飾界面活性剤の還元による有機顔料薄膜作製」に関するもので、その中にアゾベンゼン修飾界面活性剤を利用して薄膜作製を行ったことが記載されている。そのアゾベンゼン修飾界面活性剤の具体例として図1の構造の界面活性剤が示されている。この界面活性剤は、その化学構造から見て非イオン性(ノニオン性)の界面活性剤であることがわかり、アゾベンゼン部分をその化学構造中に有しているので、それは、本願発明の請求項1の「アゾベンジル部分(moiety)を有するノニオン性界面活性剤」に包含される界面活性剤である(「アゾベンジル部分」という用語は、「ベンジル」がC6H5CH2-を表す用語であるので、アゾベンゼンから誘導される基の意味として用いるのは誤用であるが、ここでは本願明細書の記載から見て、アゾベンゼンから誘導される基として用いられているものと解する。)。
しかしながら、非イオン界面活性剤にはアルコールとエチレンオキサイドから製造されるポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルフェノールとエチレンオキサイドから製造されるポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、脂肪酸とエチレンオキサイドから製造されるポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、脂肪酸アミドとエチレンオキサイドから製造されるN-ジ置換脂肪酸アミドのようにエチレンオキサイド系の界面活性剤にも多種のものがあり、さらにそれ以外にも、ジエタノールアミン系のもの、アンヒドロソルビトール系のもの、グルコシド、グルコンアミド系のもの、グリセリン、グリシドール系のもの等多種多様な化学構造のものが含まれ、親水性部分としてはポリエチレングリコール部分だけではなく種々のものがあり、疎水性部分としても長鎖アルキル基以外にも種々のタイプがあることがよく知られている(例えば、「界面活性剤の合成と其の応用」(1957年3月20日、槇書店発行)第141〜160頁参照)ので、講演要旨集の図1で表される一つの界面活性剤のみで非イオン界面活性剤の全体を代表したものとすることはできない。
ところで、フェロセンを疎水部に導入した非イオン界面活性剤(FPEG)に代えて疎水部にアゾベンゼンを導入した非イオン界面活性剤を新規に合成して薄膜の作製に利用したのがこの講演による発表のポイントであるが、講演予稿集に引用文献として挙げられている文献のうちFPEGについて記載されているのは、文献3)(T.Saji,K.Hoshino,Y.Ishii and M.Goto,J.Am.Chem.Soc.,113,450(1991))であり、そこには非イオン界面活性剤としてα-(11-Ferrocenylundecyl)-ω-hydroxypoly(oxyethylene)(12.3)が挙げられているのみである。この文献を従来技術として知っている当業者が本講演発表を受けたとき、前記したような種々の非イオン性界面活性剤にアゾベンゼン部分を導入したもの全体をこの発表における「アゾベンジル部分を有する非イオン性界面活性剤」と想定することは考えられず、せいぜい、文献3)に記載の非イオン界面活性剤のフェロセニル基を除いた部分にアゾベンゼン部分を導入しもの、またはその類似化合物にアゾベンゼン部分を導入した非イオン界面活性剤と想定するのが通常であると考えられる。
また、「アゾベンゼン部分」及びその導入位置についてみても、本講演発表ではp位をn-ヘキシル基で置換したアゾベンゼンが(ポリエチレングリコールの繰り返し単位と同じ)オキシエチレン基を介してポリエチレングリコール部分に結合しているものとして記載されており、当業者が本願請求項2の界面活性剤の一般式〔I〕において、Rが水素原子のもの、及びmが2以外のものについてまで、それが発表された発明であると認識するとは認められない。
よって、本願請求項1乃至請求項3に係る発明の全体が講演発表により公知となった発明であるとは認められないので、本件出願が特許法第30条第1項の適用を受けることはできず、本願請求項1乃至請求項3に係る発明が特許法第29条第1項各号の一に該当するに至らなかったものと見なすことはできない。

(5-2)本件発明の新規性及び進歩性について

本願請求項1乃至請求項3に係る発明は前記のとおりの界面活性剤に関するものであり、引用例1の記載にはその界面活性剤に包含される界面活性剤が記載されていることも前記したとおりである。そして、該発明の界面活性剤には、引用例1に記載の界面活性剤に類似した化学構造をもち、それと同等の効果を奏するものが含まれていることも明らかである。
よって、本願請求項1乃至請求項3に係る発明は引用例1に記載された発明であるか、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることはできず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-04-21 
結審通知日 2000-05-30 
審決日 2000-06-13 
出願番号 特願平5-325748
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09B)
P 1 8・ 113- Z (C09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 唐木 以知良  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 胡田 尚則
後藤 圭次
発明の名称 ノニオン性界面活性剤  
代理人 吉田 勝広  
代理人 吉田 勝広  
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