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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
管理番号 1023729
異議申立番号 異議1999-71657  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-09-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-27 
確定日 2000-03-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2817137号「放電灯点灯装置」の特許に対する異議の申立てについて、次のとおり決定する。  
結論 訂正を認める。 特許第2817137号の特許請求の範囲第1項、第2項に記載された発明についての特許を維持する。 
理由 〔1〕手続きの経緯
本件特許第2817137号(以下「本件特許」という。)は、昭和63年3月9日の出願であって、平成10年8月21日に特許権の設定登録がなされ、その後、松下電工株式会社により特許異議の申立てがなされた。そして、当審において取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年10月12日に訂正請求がなされ、さらにその後、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月17日に訂正請求書の補正がなされたものである。
〔2〕訂正請求書の補正の適否についての判断
上記訂正請求書の補正は、
a)訂正請求書に添付された全文訂正明細書(以下「訂正明細書という」。)の特許請求の範囲の請求項1の「放電灯が継続して点灯できる範囲」を「放電灯が減光状態で継続して点灯できる範囲」と補正し、
b)訂正明細書の問題点を解決するための手段の項の「放電灯が継続して点灯できる範囲」を「放電灯が減光状態で継続して点灯できる範囲」と補正するものである。
そこで、上記補正事項について検討する。
上記補正a)は、放電灯が点灯できる範囲を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。
そして、当該補正は、特許明細書の実施例の「この結果、他の正常な放電灯3、4は減光された状態で点灯を継続するが、半波放電した放電灯2への供給電力も低減するから、この放電灯2は消灯するかあるいは他の放電灯3、4と同様に減光された状態で点灯する。」なる記載に基づくものである。
上記補正b)は、発明の詳細な説明中の問題点を解決するための手段の項の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当する。
したがって、上記補正は、訂正の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合するので、当該補正を認める。
〔3〕訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件補正後の訂正請求の要旨は、以下のとおりのものである。
a)特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「放電灯が継続して点灯できる範囲内で調光点灯させ得る出力制御装置」を「放電灯が減光状態で継続して点灯できる範囲内で調光点灯できるように上記高周波電源装置の出力を変化させる出力制御装置」と訂正し、
b)特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の「異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力周波数を上昇させる出力制御装置」を「正常点灯している放電灯が継続して点灯できる範囲内で、かつ、異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力を上昇させる出力制御装置」と訂正し、
c)特許明細書の問題点を解決するための手段の項の「放電灯が継続して点灯できる範囲内で調光点灯させ得る出力制御装置」を「放電灯が減光状態で継続して点灯できる範囲内で調光点灯できるように上記高周波電源装置の出力を変化させる出力制御装置」と訂正し、
d)特許明細書の問題点を解決するための手段の項の「異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力周波数を上昇させる出力制御装置」を「正常点灯している放電灯が継続して点灯できる範囲内で、かつ、異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力を上昇させる出力制御装置」と訂正するものである。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正a)及びb)は、出力制御装置を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。
そして、当該補正は、特許明細書の実施例の「したがって、出力制御装置11は高周波電源装置1の発振周波数をf1に変化させ、共振電圧をV1に低下させるものである。この結果、他の正常な放電灯3、4は減光された状態で点灯を継続するが、半波放電した放電灯2への供給電力も低減するから、この放電灯2は消灯するかあるいは他の放電灯3、4と同様に減光された状態で点灯する。」なる記載に基づくものである。したがって、この事項は、特許明細書の記載に基づくものであるから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記訂正c)及びd)は、発明の詳細な説明の課題を解決するための項の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)独立特許要件
1)訂正明細書の請求項1に係る発明
訂正明細書の請求項1、2に係る発明は、訂正明細書の請求項1、2に記載された以下のとおりのものと認める。
「請求項1
出力可変形の高周波電源装置と;
互いに並列的に設けられ上記高周波電源装置から付勢される複数個の放電灯と;
これら各放電灯の点灯状態を検知し、上記各放電灯のうちのいずれかの放電灯が異常点灯したときには、他の正常点灯している放電灯が減光状態で継続して点灯できる範囲内で調光点灯できるように上記高周波電源装置の出力を変化させる出力制御装置と;
を具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。
請求項2
出力周波数可変形の高周波電源装置と;
互いに並列的に設けられ上記高周波電源装置から誘導性限流素子を介して付勢される複数個の放電灯と;
これら各放電灯の点灯状態を検知し、上記各放電灯のうちのいずれかの放電灯が異常点灯したときには、正常点灯している放電灯が継続して点灯できる範囲内で、かつ、異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力周波数を上昇させる出力制御装置と;
を具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。」
2)引用刊行物記載の発明
平成11年7月29日付け取消理由通知書で引用した刊行物1(特開昭59-146200号公報)には、放電灯点灯装置に関して以下の事項が記載されている。
a)「本発明は、放電灯が寿命末期時に半波放電状態になったとき放電灯を消灯させて、半波放電状態が継続することによる不都合を未然に防止するようにした放電灯点灯装置に関する。」(第1頁右下欄第11〜14行)
b)「そして、放電灯17aまたは17bが寿命末期になり半波放電状態になると、第2図(e)に示す電圧を検知し、また、このときは時限装置34のトランジスタ37がオンしているから、制御装置は検知信号により作動し、トランジスタインバータを不作動するのである。なお、放電灯17a及び17bを取外したときのような無負荷時には前述のように検知装置22の検知信号が制御装置28を作動させる値に達し得ず、制御装置28は作動しない。なお、一方の放電灯17aのみを点灯させる場合は第2図(b)のような電圧が検知巻線23から出力される。しかし、この場合は2灯点灯の場合(第2図(c))と同様制御装置28が作動することがない。また、1灯点灯時においてこの放電灯17aが半波放電状態になると、検知巻線23の出力電圧は第2図(d)となり、このようなピーク電圧に対しては2灯点灯時の場合(第2図(e))と同様に制御装置28を作動させるのである。以上のようなそれぞれの場合の検知信号の大きさを図式的に示すと第3図となる。第3図において、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は第2図の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)と対応するものである。」(第4頁左上欄第4行〜同右上欄第5行)
c)「以上詳述したように本発明は、放電灯が半波放電状態になったとき、半波放電状態を検知する検知装置およびこの検知装置の検知信号により放電灯の付勢を停止させる制御装置を設けたものにおいて、高周波発生装置を負荷の状態により出力周波数が異なるものとし、検知装置に上記出力周波数によりインピーダンス値を変えるコンデンサおよびインダクタを設けたから、放電灯が半波放電状態になったときのみを確実に検知でき、放電灯を消灯させることができるものである。」(第4頁左下欄第15行〜同右下欄第4行)
3)対比・判断
そこで、まず、本件請求項1に係る発明と、上記刊行物1に記載の発明とを対比する。
上記刊行物1には、本件請求項1に係る発明を特定する事項である「各放電灯のうちいずれかの放電灯が異常点灯したときには、他の正常点灯している放電灯が継続して点灯できる範囲内で調光点灯できるように上記高周波電源装置の出力を変化させる出力制御装置」については、記載も示唆もされていない。
したがって、本件請求項1に係る発明が、上記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
次に、本件請求項2に係る発明と、上記刊行物1に記載の発明とを対比する。
上記刊行物1には、本件請求項2に係る発明を特定する事項である「いずれかの放電灯が異常点灯したときには、正常点灯している放電灯が継続して点灯できる範囲内で、かつ、異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力を上昇させる出力制御装置」については、記載も示唆もされていない。
したがって、本件請求項2に係る発明が、上記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する同第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
〔4〕特許異議申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
申立人、松下電工株式会社は、「本件の請求項1、2に係る各特許発明は、その出願の日前に出願された特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第1号証の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、当該特許出願と甲第1号証とは、出願人または発明者が同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである。
さらに、本件の請求項2に係る特許発明の記載が不明瞭な点で、昭和63年特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第1項第4号の規定により取り消すべきものである。」旨、主張している。
(2)特許法第29条の2違反について
異議申立人の提示した甲第1号証(特願昭61-309843号(特開昭63-160196号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願明細書」という。))には、放電灯点灯装置に関して以下の事項が記載されている。
a)「これによりインバータINVが発振を開始すると、灯数検出回路2により、正常な放電灯の装着灯数が2灯であることが検出され、周波数切替回路3により2灯点灯時の周波数f1が共振周波数近傍に設定され、コンデンサC1の両端には、高電圧が印加され、点灯に至る。今、一方の放電灯が外れた場合、あるいは、フィラメントが断線状態になって不点灯になった場合には、第8図に示すように、回路の共振系は大きく変わり、第9図(a)の1点鎖線で示すように、共振曲線は2つの極を持った複雑なものとなって、1灯点灯時のコンデンサC1の両端電圧は第9図(b)の1点鎖線で示すような2つの山を持った曲線となる。このような1灯点灯時においては、灯数検出回路2により1灯であることが検出され、周波数切替回路3により第9図(b)の周波数f2あるいはf3に設定される。この周波数f2、f3はωL>1/ωCとなる遅相モードであり、第10図(b)に示すような電流波形ICとなる周波数である。したがって、スイッチングトランジスタQ1、Q2のストレスは1灯点灯時にも小さく、安定に点灯することが可能である。」(第3頁左上欄第16行〜同右上欄第18行)
b)「他励式電流共振インバータによる多灯並列点灯方式の放電灯点灯装置において、正常な放電灯の装着灯数に応じて共振系が変化しても、インバータの発振周波数を灯数に応じて変化させてインバータのスイッチ素子に流れる電流が遅相モードとなるようにしたので、並列点灯時にいずれかの放電灯が不点灯になることにより共振系が変化しても、スイッチ素子のストレスを小さくすることができ、正常な放電灯の装着灯数に拘わらず安定に点灯させることが可能になるという効果がある。」(第4頁左上欄第14行〜同右上欄第4行)
しかしながら、上記先願明細書に記載のものは、放電灯が外れたり、フィラメントが断線状態になり放電灯が不点灯になった場合を対象としているのに対して、本件特許発明は半波放電により異常点灯となった場合を対象としており、本件特許発明の「いずれかの放電灯が異常点灯したとき」なる条件は、上記先願明細書には記載されていない。
したがって、両者は同一の発明とは、認められない。
(3)特許法第36条第3項違反について
本件特許の請求項2に係る発明は、訂正により、「正常点灯している放電灯が継続して点灯できる」ことが明記されたので、効果の「並列点灯において被照明空間における照明をなくすことなく、また、高周波電源装置の保護等も可能なものである」なる記載と整合がとれているものと認める。
したがって、特許法第36条第3項に違反しているとは認められない。
(4)以上のとおりであるから、異議申立人のいずれの主張も採用できない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
放電灯点灯装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】出力可変形の高周波電源装置と;
互いに並列的に設けられ上記高周波電源装置から付勢される複数個の放電灯と;
これら各放電灯の点灯状態を検知し、上記各放電灯のうちのいずれかの放電灯が異常点灯したときには、他の正常点灯している放電灯が減光状態で継続して点灯できる範囲内で調光点灯できるように上記高周波電源装置の出力を変化させる出力制御装置と;
を具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】出力周波数可変形の高周波電源装置と;
互いに並列的に設けられ上記高周波電源装置から誘導性限流素子を介して付勢される複数個の放電灯と;
これら各放電灯の点灯状態を検知し、上記各放電灯のうちのいずれかの放電灯が異常点灯したときには、正常点灯している放電灯が継続して点灯できる範囲内で、かつ、異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力周波数を上昇させる出力制御装置と;
を具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。
【発明の詳細な説明】
〔発明の目的〕
(産業上の利用分野)
本発明は、複数個の放電灯を共通の高周波電源装置にて並列点灯する放電灯点灯装置に関するものである。
(従来の技術)
従来、放電灯を高周波点灯するものにおいて、放電灯の点灯状態を検知し、放電灯が異常点灯たとえば寿命末期時の半波放電状態になったときには、高周波発生装置たとえばインバータの出力を停止あるいは断続させるようにしたものが提案されている。たとえば実公昭61-15598号公報のものは高周波発生装置の出力を断続させ、もって、放電灯を点滅させるものである。上述したような従来のものは、半波放電時には高周波発生装置の出力を停止あるいは断続させるため、半波放電時の直流成分を含んだ過大電流が流れ続けることを防止できる。したがって、高周波発生装置の異常発熱や破壊,消費電力の増大,放電灯電極が過熱されて垂れ下ることによる放電灯外管の破損等を未然に防止し得るものである。
(発明が解決しようとする問題点)
上述のように従来のものは、高周波発生装置の保護,消費電力の増大防止,放電灯の破損防止等を行なえて有効なものである。しかしながら、上記従来のものは、半波放電時には高周波発生装置の出力を停止あるいは断続させるものである。このため、複数個の放電灯を共通の高周波発生装置にて並列点灯する場合に、上記従来の技術を用いると、複数個のうちの1個でも半波放電状態になったときには高周波発生装置の出力を停止あるいは断続することになる。この結果、半波放電を行なっていない正常放電灯を強制消灯あるいは強制点滅させてしまうことにより、被照明空間の照明が突然なくなったり、不快なものになったりする問題が生じることが解った。また、この問題点は、始動時に複数個の放電灯のうちのいずれかが始動しない異常時に高周波発生装置の出力を停止するようにした場合も同様であり、被照明空間の照明を得られなくなるものである。
本発明はこのような従来の問題点を解決するためになされたもので、並列点灯される複数個の放電灯のうちのいずれかが異常点灯した場合、被照明空間の照明を確保でき、しかも、高周波発生装置(あるいは高周波電源装置)の保護,消費電力増大の防止,放電灯外管の破損防止等も可能な放電灯点灯装置を提供することを目的とするものである。
〔発明の構成〕
(問題点を解決するための手段)
請求項1記載の放電灯点灯装置は、出力可変形の高周波電源装置と;互いに並列的に設けられ上記高周波電源装置から付勢される複数個の放電灯と;これら各放電灯の点灯状態を検知し、上記各放電灯のうちのいずれかの放電灯が異常点灯したときには、他の正常点灯している放電灯が減光状態で継続して点灯できる範囲内で調光点灯できるように上記高周波電源装置の出力を変化させる出力制御装置と;を具備したことを特徴とするものである。
また、請求項2記載の放電灯点灯装置は、出力周波数可変形の高周波電源装置と;互いに並列的に設けられ上記高周波電源装置から誘導性限流素子を介して付勢される複数個の放電灯と;これら各放電灯の点灯状態を検知し、上記各放電灯のうちのいずれかの放電灯が異常点灯したときには、正常点灯している放電灯が継続して点灯できる範囲内で、かつ、異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力周波数を上昇させる出力制御装置と;を具備したことを特徴とするものである。
(作用)
請求項(1)の発明は、複数個の放電灯のうちのいずれかが異常点灯たとえば半波放電とすると、高周波電源装置の出力を低減させるが、低減されるのは正常点灯している他の放電灯が点灯を維持できる範囲内までであるので、他の放電灯が消灯することはなく調光状態で点灯する。したがって、被照明空間の照明は確保できる。なお、この場合、前記異常点灯(半波放電)している放電灯を消灯させるのが好ましいが、必ずしも消灯させなくともよい。いずれにしても、高周波電源装置の出力を低減させるから、異常点灯のまま放置するものに比し高周波電源装置の保護,消費電力増大の防止,放電灯外管の破損防止を図り得るものである。また、正常点灯している放電灯は調光状態で点灯されることになるため、使用者にとっては放電灯寿命の警告となり得る。もっとも、高周波電源装置の出力をどの程度低減するかは、高周波電源装置の保護等との関係で決定できるものであるから、必ずしも使用者が認識できるまで調光(減光)しなくともよい。
請求項(2)の発明は、放電灯が異常点灯例えば半波放電すると、出力制御装置は、高周波電源装置の出力周波数を上昇させるから、誘導性限流素子のインピーダンスが上昇して、放電灯への印加電圧が低減して異常点灯している放電灯が点灯維持ができなくなる。なお、この場合も正常な放電灯は点灯を維持して調光されるから、被照明空間の照明は確保される。
本発明においてけい光ランプの点灯状態を検知するのに好適な手段は、インピーダンス回路のランプ電圧信号に応じて各トランジスタの導通が制御される。すなわち、インピーダンス回路により得たランプ電圧信号を前記トランジスタにより電流増幅する。このため、前記インピーダンス回路のインピーダンス値を大きくしても、必要な量(後述する出力制御装置への入力信号として)のランプ電圧信号を得られる。インピーダンス回路のインピーダンス値を大きくできることは、このインピーダンス回路における消費電力の軽減につながる。また、前記電流増幅により必要な量のランプ電圧信号を得られることにより、出力制御装置に入力される前記ランプ電圧信号が放電灯の数すなわちオアされるランプ電圧信号の数によって変化することが少なく、したがって、前記出力制御装置の制御が安定になるものであった。
(実施例)
以下、本発明の一実施例を第1図および第2図を参照して説明する。1は高周波電源装置で、その出力を変化可能なものである。このような高周波電源装置1としては、たとえばトランジスタインバータ・サイリスタインバータ等周知の高周波変換装置を主として構成し得るものであり、出力を変化する手段としては、発振周波数,デューティ等を変化させるものとすることができる。本実施例では、シリーズ形トランジスタインバータを主として構成されるもので、発振周波数を変化可能なものとして以下説明する。2〜4は放電灯たとえばけい光ランプで、互いに並列的に設けられて前記高周波電源装置1から付勢されるものである。5〜7は各放電灯2〜4に直列接続されたインダクタである。8〜10は各放電灯2〜4の非電源かわれ端子間に接続されたコンデンサで、前記インダクタ5〜7と直列共振回路を形成し得るものである。すなわち、各放電灯2〜4が点灯する以前においては相対的に高い共振電圧を発生し、放電灯2〜4が点灯しているときにはそのランプインピーダンスを付加されることにより相対的に低い共振電圧(あるいは実質的に非共振になる)を発生するようになされている。11は出力制御装置で前記各放電灯2〜4の点灯状態を検知し、各放電灯2〜4のうちのいずれかが異常点灯たとえば半波放電したときには、前記高周波電源装置1の出力を他の正常な放電灯が点灯を継続できる範囲内で低減させるものである。すなわち、本実施例においては、半波放電を検知するものとして各放電灯2〜4のランプ電圧を検知する電圧検知回路12〜14と、これら電圧検知回路12〜14の検知出力を入力するオア回路15と、このオア回路15からの検知出力に応じて前記高周波電源装置1の発振周波数を変化させる周波数制御装置16とからなるものである。なお、前記周波数制御装置16は、前記高周波電源装置1の発振周波数をたとえば第2図に示すようにf0〜f1まで変化させるものである。そして、前記直列共振回路は前記f0,f1に対して、V0,V1の共振電圧を出力するように定数を設定されている。なお、上述のように共振出力は放電灯2〜4の点灯前と点灯中とでは異なるが、共振出力の増減の傾向は同じてある。そして、本実施例では、前記高周波電源装置1の発振周波数を放電灯2〜4のいずれもが正常点灯しているときにはf0とし、いずれかが半波放電したときにはf1とするようにしている。そしてさらに、発振周波数f1のときの共振出力V1は正常な放電灯の点灯を継続できる値に選ばれている。
つぎに、本実施例の作用を述べる。各放電灯2〜4の始動時においては、インダクタ5〜7およびコンデンサ8〜10の直列共振により相対的に大きな電流が各共振回路に流れて、各放電灯2〜4のフィラメントを予熱するとともに、相対的に大きな共振電圧を発生して放電灯2〜4を点灯させる。放電灯2〜45のうちのいずれかたとえば放電灯2が半波放電すると、この放電灯2のランプ電圧は増大する。したがって、出力制御装置11は高周波電源装置1の発振周波数をf1に変化させ、共振電圧をV1に低下させるのである。この結果、他の正常な放電灯3,4は減光された状態で点灯を継続するが、半波放電した放電灯2への供給電力も低減するから、この放電灯2は消灯するかあるいは他の放電灯3,4と同様に減光された状態で点灯する。したがって、半波放電時の直流成分を含んだ過大な電流が流れ続けることによるインダクタ5,コンデンサ8,高周波電源装置1の特に半導体スイッチング素子を保護することが可能である。
なお、上記実施例において、半波放電した放電灯2を確実に消灯できるように、高周波電源装置1の発振周波数を上記f1より高く変化させるようにしてもよい。しかし、この場合でも正常な放電灯3,4の点灯は継続させることが必要である。
また、放電灯の異常点灯を検知する手段としては、ランプ電流,光出力あるいは構成部品の異常発熱等を検知するものでもよい。
第3図および第4図は他の実施例を示すものである。20は高周波発生装置であり、一対のFET21,22を有してなるシリーズインバータを主として構成されるものである。23〜27はそれぞれ放電灯で、本実施例ではこれら5灯の放電灯23〜27を互いに並列的にして前記高周波発生装置20の出力側に設けている。28〜32は第1図と同様なインダクタ,33〜37は同じくコンデンサである。40は出力制御装置で、本実施例では、前記各放電灯23〜27に対応して設けられたランプ電圧検知装置41〜45,これらランプ電圧検知装置41〜45のオア出力を入力して前記高周波発生装置20の発振周波数を変化させる周波数制御装置46からなるものである。前記ランプ電圧検知装置41〜45はそれぞれインピーダンス回路47〜51と、これらインパーダンス回路47〜51のランプ電圧検知信号に応じて導通を制御されるトランジスタ52〜56と、これらトランジスタ52〜56のコレクタ・エミッタ回路に直列接続されオア回路を形成するダイオード57〜61とからなるものである。また、周波数制御装置46は前記オア回路の出力を入力してこの入力信号のレベルに応じて発振周波数を略比例的に変化する発振装置62を有してなるものである。このような発振装置62は、たとえばV-f変換機能を有する周知のICを用いて構成することができるものである。なお、本実施例においては、いわゆるソフトスタート回路70を有するもので、放電灯23〜27の始動時所定時間は高周波発生装置20の発振周波数を放電灯23〜27を始動し得ない共振出力となるように高め、その後徐々に低下させるようにしている。また、本実施例においては調光回路71を有し、前記高周波発生装置20の発振周波数を段階的に切換えて、段調光を可能にしている。もちろん連続調光としてもよい。なお、第3図において、ボリューム72は、出力設定用,73は調光レベル設定用である。本実施例の作用は第3図および第4図の構成および上述の説明から、当業者においては容易に理解できるので説明を省略する。
なお、以下に実験例を示す。第3図のものにおいて、放電灯23〜27を20Wけい光ランプとして、高周波発生装置20の発振周波数を44.7kHzとしたとき、放電灯23〜27はほぼ全光点灯であり、1個の放電灯が半波放電時には45kHzであった。このとき、他の放電灯は減光点灯した。さらに、無負荷時においては64kHzから徐々に低下させることによってソフトスタートでき、また、57kHzとしたとき約60%の調光点灯を得られた。
〔発明の効果〕
以上述べたように本発明は、並列点灯において被照明空間における照明をなくすことなく、また、高周波電源装置の保護等も可能なものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示す回路図,第2図は同じく作用を示す図,第3図は他の実施例を示す回路図,第4図は同じく要部を示す回路図である。
1……高周波電源装置,11……出力制御装置。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
▲1▼特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「放電灯が継続して点灯できる範囲内で調光点灯させ得る出力制御装置」を「放電灯が減光状態で継続して点灯できる範囲内で調光点灯できるように上記高周波電源装置の出力を変化させる出力制御装置」と訂正し、
▲2▼特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の「異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力周波数を上昇させる出力制御装置」を「正常点灯している放電灯が継続して点灯できる範囲内で、かつ、異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力を上昇させる出力制御装置」と訂正し、
▲3▼特許明細書の課題を解決するための項の「放電灯が継続して点灯できる範囲内で調光点灯させ得る出力制御装置」を「放電灯が減光状態で継続して点灯できる範囲内で調光点灯できるように上記高周波電源装置の出力を変化させる出力制御装置」と訂正し、
▲4▼特許明細書の課題を解決するための項の「異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力周波数を上昇させる出力制御装置」を「正常点灯している放電灯が継続して点灯できる範囲内で、かつ、異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力を上昇させる出力制御装置」と訂正するものである。
【書類名】全文訂正明細書(補正後)
(54)【発明の名称】放電灯点灯装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】出力可変形の高周波電源装置と;
互いに並列的に設けられ上記高周波電源装置から付勢される複数個の放電灯と;
これら各放電灯の点灯状態を検知し、上記各放電灯のうちのいずれかの放電灯が異常点灯したときには、他の正常点灯している放電灯が減光状態で継続して点灯できる範囲内で調光点灯できるように上記高周波電源装置の出力を変化させる出力制御装置と;
を具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】出力周波数可変形の高周波電源装置と;
互いに並列的に設けられ上記高周波電源装置から誘導性限流素子を介して付勢される複数個の放電灯と;
これら各放電灯の点灯状態を検知し、上記各放電灯のうちのいずれかの放電灯が異常点灯したときには、正常点灯している放電灯が継続して点灯できる範囲内で、かつ、異常点灯している放電灯が点灯を維持し得ない値に低減するように高周波電源装置の出力周波数を上昇させる出力制御装置と;
を具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。
異議決定日 2000-01-27 
出願番号 特願昭63-55733
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 関 信之  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 和泉 等
長崎 洋一
登録日 1998-08-21 
登録番号 特許第2817137号(P2817137)
権利者 東芝ライテック株式会社
発明の名称 放電灯点灯装置  
代理人 佐藤 成示  
代理人 安藤 淳二  
代理人 和泉 順一  
代理人 井澤 眞樹子  
代理人 川瀬 幹夫  
代理人 和泉 順一  

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