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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H05B
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
管理番号 1024199
異議申立番号 異議1999-72848  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-01-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-27 
確定日 2000-08-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2851304号「インバータ方式加熱用電源装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2851304号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2851304号の請求項1に係る発明についての出願は、平成1年5月29日に特許出願され、平成10年11月13日に設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人、笹木久男により特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成12年6月8日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正明細書の請求項1に係る発明
訂正明細書の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲に記載されたとおりの次のものである。
「商用周波数を高周波に変換する半導体インバータ回路と、このインバータ回路を制御する制御手段と、上記インバータ回路から出力される高周波電力を負荷と整合させる高周波トランスと、この高周波トランスの出力側と各負荷に応じた巻回条件の加熱コイルとの間に連結されるコンデンサと、上記高周波トランスの出力側において上記インバータ回路の過大電流及び過大電圧を検知し、該過大電流及び過大電圧の少なくとも一方に基づいて上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる回路保護手段とを具備したことを特徴とするインバータ方式加熱用電源装置。」
(2)訂正の内容
ア)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「加熱コイル」を、
「各負荷に応じた巻回条件の加熱コイル」に訂正する。
イ)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる」を、
「該過大電流及び過大電圧の少なくとも一方に基づいて上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる」に訂正する。
ウ)訂正事項c
発明の詳細な説明の[課題を解決するための手段]において、「加熱コイル」を、「各負荷に応じた巻回条件の加熱コイル」に訂正し、「上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる」を、「該過大電流及び過大電圧の少なくとも一方に基づいて上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる」に訂正する。
(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の在否
訂正事項a、bは、特許請求の範囲の減縮であり、また、訂正事項cは、訂正事項a、bに伴う明瞭でない記載の釈明であり、これらの訂正事項は、「どのような負荷状況になっても電源の破損を確実に防止し得るインバータ方式加熱用電源装置を提供することを目的とする」(特許明細書第3頁1〜3行)こと、「焼鈍において、被加熱物6はその形状及び材質が異なっており、加熱コイル5の巻回数及び巻回方法は変化する。したがって、加熱前に加熱コイル5の巻回条件を推定して装着するが、前述したように被加熱物は多様であり正確に予想できない」(特許明細書第6頁2〜7行)こと、及び「過大電圧、過大電流のどちらか一方でも超過した場合、・・・インバータ駆動制御器17の出力を停止させる」(特許明細書第6頁10〜19行)こととの記載からみて、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないと認められる。

(4)独立特許要件
(引用刊行物)
当審が平成12年3月30日付けで通知した取消理由で引用した刊行物1(実公昭55-12391号公報、甲第1号証)には、その記載からみて、次のものが記載されていると認められる。
商用周波数を高周波に変換する半導体インバータ回路と、上記インバータ回路から出力される高周波電力を負荷と整合させる整合変圧器と、この整合変圧器の出力側と誘導加熱コイルとの間に連結されるコンデンサとを具備したインバータ方式加熱用電源装置。
また、同刊行物2(実公昭56-2382号公報、甲第4号証)には、図面とともに、次の記載がある。
ア)「第1図において1は電源、2はインバータ等高周波発生装置、3は加熱コイル4の高周波電流、5は加熱コイル4に流れる電流の電流検知器、6は高周波発生禁止回路、7は鍋等の被加熱物である。
上記構成において、被加熱物7が磁性材料で構成された所定の鍋であることを検知するため加熱コイル4に流れる電流3を検出する。
これはきわめて有効な手段であり、特にアルミのごとく固有抵抗ρ及び透磁率μの小さい負荷であるとその負荷によつて加熱コイル4のインピーダンスが低下し、加熱コイルに流れる電流3が過大となるからである。
過大電流は高周波発生装置2の過負荷となり、また特にサイリクタインバータを高周波発生装置とした場合サイリスタの転流失敗の原因となるが、上記構成によれば過大電流を検知し、その検知出力で、高周波発生禁止回路6を作動させるので高周波発生装置は保護される。」(1頁左欄35行〜同頁右欄15行)
イ)「以上説明したように本考案によればアルミ等の非磁性体で構成された異常鍋負荷を検知する手段として加熱コイルの高周波電流を検出するので電気的に負荷ともっとも関係のある変化量が検知でき高精度な装置が得られる。」(2頁左欄5〜9行)
そして、前記ア)、イ)の記載からみて、刊行物2には、次のものが記載されていると認められる。
インバータ回路を制御する高周波発生装置と、上記インバータ回路の過大電流を検知し、上記高周波発生装置を介して上記インバータ回路の動作を停止させる電流検知器及び高周波発生禁止回路とを具備するインバータ方式誘導加熱装置。
また、同刊行物3(特公昭57-36836号公報、甲第5号証)には、次の記載がある。
ウ)「インバータの過電圧保護方式に関し、更に詳細には、制御整流器からなる直流電源、ブリッジ型に組まれた制御整流素子からなり直流電源からの直流出力を受けてそれを交流に変換するインバータ、インバータからの交流出力を受けとる誘導性負荷、および、誘導性負荷に並列に接続した力率補償用コンデンサを具備し、このコンデンサと誘導性負荷とで形成される並列共振回路の電圧振動に歩調を合せて制御整流素子の点弧制御を行うようにした高周波インバータの過電圧保護方式に関する。
上述したような型のインバータに対する過電圧保護方式として従来知られているのは、共振回路電圧が所定の限界値を越えたとき直流電源内制御整流器の出力電圧を低減ないししゃ断し、インバータから並列共振回路に注入されるエネルギを対応的に低減或いはしや断するという方式である。」(1頁左欄37行〜同頁右欄16行)
また、本件特許出願前の昭和54年12月19日に頒布された実公昭54-44182号公報(以下、「刊行物4」という。甲第2号証)には、次の記載がある。
エ)「可変電源装置と負荷を接続したインバータを備え、インバータの負荷電流を電流検出回路を介して検出し検出値が一定値以上の過電流となつたとき可変電源装置の出力電圧を可変して負荷電流を制限するようにしたもの」(実用新案登録請求の範囲抜粋)
オ)「このインバータ2の交流出力電力の電流は変流器C.Tを介して電流検出回路5で検出され、この検出された電流は電流制御回路10の電流制御用加算器10aに与えられる。
またインバータ2の交流出力の周波数は変成器P.Tを介して周波数検出回路6で検出され(又は内部に設けられた周波数設定器等より検出する事も出来る)、この検出された周波数は前記電流制御回路10の周波数-電圧変換器10bに与えられ、かつインバータ2の交流出力電圧は変成器P,Tを介して電圧検出回路7で検出され、この検出された電圧制御回路8の加算器8aに与えられる。
さらに設定回路9より設定された電圧は、前記電圧制御回路8の加算器8aに与えられる。この場合に前記のように電圧検出回路7で検出された電圧の検出値が、設定回路9の設定値よりも高いときは電圧制御回路8の増幅器8bの出力は正となり、電流制御回路10の電流制御用加算器10aは前記増幅器8bと逆極性であるので該電流制御回路10の増幅器10cの出力は負となり、この出力信号は位相制御回路11を介して可変電源装置1のゲートに印加し電圧を下げるように動作する。」(第1頁右欄24行〜第2頁左欄11行)
また、本件特許出願前に頒布された「リレー回路の見方・書き方」(北川稔著、オーム社、昭和53年2月20日発行、以下、「刊行物5」という。甲第3号証)には、次の事項が記載されていると認められる。
第110頁図3・71 には、電源装置である発電機を保護するためのOC、OVが示されている。
OCは、過大な電流を検知して作動するリレーであり、図3・71においては、第111頁第11行〜第12行に記載されているように、OCは、過大な電流を検知すると、発電機の出力側の遮断器を遮断し、発電機を無負荷にし、発電機の発電動作を停止させるものとなっている。
OVは、過大な電流を検知して作動するリレーであり、図3・71においては、第111頁第11行〜第12行に記載されているように、OVは、過大な電圧を検知すると、発電機の界磁回路の遮断器を遮断し、発電機の発電動作を停止させるものとなっている。
(対比・判断)
そこで、訂正明細書の請求項1に係る発明(前者)と刊行物1に記載のもの(後者)とを対比すると、後者の「整合変圧器」、「誘導加熱コイル」は、その機能に照らして、前者の「高周波トランス」、「加熱コイル」に相当するから、両者は、
商用周波数を高周波に変換する半導体インバータ回路と、上記インバータ回路から出力される高周波電力を負荷と整合させる高周波トランスと、この整合変圧器の出力側と加熱コイルとの間に連結されるコンデンサとを具備したインバータ方式加熱用電源装置、
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]:前者は、加熱コイルの巻回条件を各負荷に応じたものとする共に、インバータ回路を制御する制御手段と、高周波トランスの出力側において上記インバータ回路の過大電流及び過大電圧を検知し、該過大電流及び過大電圧の少なくとも一方に基づいて上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる回路保護手段とを具備するのに対して、後者は、加熱コイルの巻回条件が不明であると共に、前者の制御装置や回路保護手段を具備しない点。
そこで、相違点(1)を検討する。
[相違点1]
前者は、「鋼管等の局部焼鈍に用いられる高周波誘導加熱装置」([産業上の利用分野]抜粋)を対象とするから、「加熱コイルの巻回条件を各負荷に応じたもの」(請求項1)とするのであって、しかも、「過大電流及び過大電圧の少なくとも一方に基づいて上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる」(請求項1)ことで、「どのような負荷状況になっても電源の破損を未然に防止でき」、「電圧が過大か、電流が過大かによって、加熱コイルの整合が判別できる。つまり、加熱コイル巻数の多いか、少いかを判別でき巻数の是正が容易である」([発明の効果](2)イ)、ロ)抜粋)との効果を生じると認められる。
一方、刊行物2乃至刊行物5には、過大電流や過大電圧を検知し、インバータ回路を停止することでその保護を図るものに関する記載はあるものの、加熱コイルの整合が判別ができることについて何ら記載されていない。
したがって、訂正明細書の請求項1に係る発明は、刊行物1乃至5(甲第1号証乃至甲第5号証)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたといえない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件特許の請求項1に係る発明は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(前記2.(1)参照。)
(2)申立ての理由の概要
異議申立人は、「本件特許発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて、いわゆる当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものであります。
また、本件の請求項1に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないので、特許法第36条第5項第1号に違反しているので、特許法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものであります。」(特許異議申立書第7頁(5)結論抜粋)と主張する。
(3)判断
ア)第29条第2項について
本件特許の請求項1に係る発明は、前記2.(4)で示したとおり、甲第1号証乃至甲第5号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。
イ)第36条について
特許請求の範囲の請求項1の「高周波トランスの出力側と各負荷に応じた巻回条件の加熱コイルとの間に連結されるコンデンサ」において、「連結される」とは、電気的にみると端部間を接続すること、すなわち直列に接続することを意味するものといえる。そして、発明の詳細な説明の実施例には、直列に「連結される」ものが記載されている。
よって、請求項1に記載の発明が発明の詳細な説明に記載されているといえる。
(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
インバータ方式加熱用電源装置
(57)【特許請求の範囲】
商用周波数を高周波に変換する半導体インバータ回路と、このインバータ回路を制御する制御手段と、上記インバータ回路から出力される高周波電力を負荷と整合させる高周波トランスと、この高周波トランスの出力側と各負荷に応じた巻回条件の加熱コイルとの間に連結されるコンデンサと、上記高周波トランスの出力側において上記インバータ回路の過大電流及び過大電圧を検知し、該過大電流及び過大電圧の少なくとも一方に基づいて上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる回路保護手段とを具備したことを特徴とするインバータ方式加熱用電源装置。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は鋼管等の局部焼鈍に用いられる高周波誘導加熱装置の電源装置に関する。
[従来の技術]
従来鋼管の溶接後に行う局部焼鈍は、可燃ガスを用いる方法、電力による抵抗発熱体(ヒーター)を用いる方法、あるいは商用周波数を用いた誘導加熱方法等がある。
[発明が解決しようとする課題]
可燃ガスを用いるものは、ガス供給設備が必要になり、又、温度制御が正確にできない。
一方、抵抗発熱体(ヒーター)を用いたものは、温度制御は精密に行なえるが、ふく射による加熱であり、効率が悪い。さらに、抵抗発熱体(ヒーター)を焼鈍部に装着するのに多大の工数を要する。
商用周波数の誘導加熱では温度制御、効率も良好であるが、電源の形状が大きく重量も重い。一例として一般に多く用いられているものは約1トンの重量があり、可搬式としては使い難い。又、加熱部に巻回する加熱コイルの線径も太く、巻回数も多い。したがって、加熱コイルを加熱部へ装着巻回する労力は非常に大きい。
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、加熱コイルの装着が容易であると共に、システム全体を小型軽量に構成でき、かつ、どのような負荷状況になっても電源の破損を確実に防止し得るインバータ方式加熱用電源装置を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段]
本発明は、商用周波数を高周波に変換する半導体インバータ回路と、このインバータ回路を制御する制御手段と、上記インバータ回路から出力される高周波電力を負荷と整合させる高周波トランスと、この高周波トランスの出力側と各負荷に応じた巻回条件の加熱コイルとの問に連結されるコンデンサと、上記高周波トランスの出力側において上記インバータ回路の過大電流及び過大電圧を検知し、該過大電流及び過大電圧の少なくとも一方に基づいて上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる回路保護手段とを具備したことを特徴とする。
[実施例]
本発明の一実施例について、第1図を用いて説明する。
同図において1は整流器であり、3相全波の回路例を示している。2a,2bはインバータ回路2内の主トランジスタである、3は高周波トランスであり、コンデンサ4と共に負荷との整合を行う。5は加熱コイルで、鋼管等の被加熱物6に巻回されている。7は電圧計であり、加熱コイル5の両端に印加される高周波電圧を測定する。8は電圧検出用トランスであり、必要な電圧に下げる目的と、出力側と制御側とに分離する役割りを持っている。9は電圧検出用トランジューサ、10は電圧用コンパレータ、11は過電圧値設定用調節器である。12は出力電流検出用C.Tであり、13は電流用トランジューサ、14は出力電流計である。15は電流用コンパレータ、16は過電流値設定用調節器である。17はインバータ駆動制御器。18は出力調整器である。
次に上記実施例の動作を説明する。
図示しない電源スイッチを閉じ、整流器1に商用周波数の3相交流電力を供給すると、インバータ回路2内の主トランジスタ2a,2bに直流が印加される。トランジスタ2a,2bは、インバータ駆動制御器17により駆動制御され、高周波トランス3の1次側に1〜35KHzの高周波を出力する。この高周波トランス3に入力された高周波電力は、負荷と整合するように変圧された後、コンデンサ4を介して加熱コイル5に供給される。このとき、加熱コイル5の両端に印加されている電圧は、電圧計7で確認できる。また、加熱コイル5の両端に印加されている電圧は電圧トランス8に入力され、この電圧トランス8により出力側と絶縁、分離された高周波波出力電圧信号はトランジューサ9に入力されて直流電圧に変換され、過電圧値設定用調節器11で設定された電圧値と、コンパレータ10で比較される。
一方、高周波トランス3の2次側から取出される高周波出力電流値は、C.T12で検出されて電流用トランジューサ13に入力される。この出力電力値は、電流計14で確認できる。上記トランジューサ13により変換された高周波電流信号は、電流用コンパレータ15に入力され、過電流値設定用調節器16よりの出力と比較される。
この時、高周波出力の電圧、電流値が、規定の範囲内であれば、被加熱物6の加熱コイル5の電磁誘導によって所望の条件で加熱される。
溶接後に行う焼鈍において、被加熱物6はその形状及び材質が異なっており、加熱コイル5の巻回数及び巻回方法は変化する。したがって、加熱前に加熱コイル5の巻回条件を推定して装着するが、前述したように被加熱物は多様であり正確に予想できない。
加熱通電後に、整合不適の場合、過大電流あるいは過大電圧のため、電源を破壊する恐れがある。そこで、過大電圧、過大電流のどちらか一方でも超過した場合、例えば電圧では、過電圧設定用調節器11で設定された電圧値とコンパレータ10に入った電圧測定信号と比較され、超過の場合インバータ駆動制御器17の出力を停止させる。一方、電流の場合も同じく、C.T12で検出された出力電流値はトランジューサを介し、過電流設定用調節器16で設定された電流値とコンパレータ15に入った電流測定と比較され、超過の場合インバータ駆動制御器17の出力を停止させる。
なお、第1図には本発明に関する回路のみを記載しており、インバータ回路一般の保護回路等例えばサージ電圧対策回路等は省略してある。
[発明の効果]
上記本発明によれば、次のような効果が得られる。
(1) 商用周波数を半導体インバータで高周波に変換し、高周波トランスとコンデンサを介して負荷加熱コイルに直接接続してあるため、
イ)高周波誘導により加熱され、高い効率が得られる。
ロ)高周波誘導加熱であり、加熱コイルの巻数が少く、線径が小さい。したがって、加熱コイルの装着が非常に簡便になった。
ハ)高周波トランスを介しているため、負荷側は電源と分離している。
(2) また、高周波出力側に過電圧及び過電流検出器を備えたため、
イ)どのような負荷状況になっても電源の破損を未然に防止できる。
ロ)電圧が過大か、電流が過大かによって、加熱コイルの整合が判別できる。つまり、加熱コイル巻数の多いか、少いかを判別でき巻数の是正が容易である。
(3)更に加熱装置は高周波を利用したため、
イ)高周波電源及びシステム全体が小型軽量にでき、特に現地等に用いる可搬形とするのに最適である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例に係る加熱装置の構成図である。
1…整流器、2…インバータ回路、2a,2b…主トランジスタ、3…高周波トランス、4…コンデンサ、5…加熱コイル、6…被加熱物、7…電圧計、8…電圧検出用トランス、9…電圧検出用トランジューサ、10…電圧用コンパレータ、11…過電圧値設定用調節器、12…出力電流検出用C.T、13…電流用トランジューサ、14…出力電流計、15…電流用コンパレータ、16…過電流値設定用調節器、17…インバータ駆動制御器、18…出力調整器。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
ア)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「加熱コイル」を、
「各負荷に応じた巻回条件の加熱コイル」に訂正 する。
イ)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる」を、
「該過大電流及び過大電圧の少なくとも一方に基づいて上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる」に訂正する。
ウ)訂正事項c
発明の詳細な説明の[課題を解決するための手段]において、「加熱コイル」を、「各負荷に応じた巻回条件の加熱コイル」に訂正し、「上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる」を、「該過大電流及び過大電圧の少なくとも一方に基づいて上記制御手段を介して上記インバータ回路の動作を停止させる」に訂正する。
異議決定日 2000-07-17 
出願番号 特願平1-135020
審決分類 P 1 651・ 534- YA (H05B)
P 1 651・ 121- YA (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大河原 裕丸山 英行  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 櫻井 康平
冨岡 和人
登録日 1998-11-13 
登録番号 特許第2851304号(P2851304)
権利者 三菱重工業株式会社
発明の名称 インバータ方式加熱用電源装置  
代理人 坪井 淳  
代理人 橋本 良郎  
代理人 村松 貞夫  
代理人 橋本 良郎  
代理人 村松 貞男  
代理人 坪井 淳  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 鈴江 武彦  

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