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審決分類 審判 全部申し立て 特39条先願  C07F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C07F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C07F
管理番号 1024281
異議申立番号 異議1999-73183  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-11-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-24 
確定日 2000-07-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2860169号「アルキルメチルケトキシムシラン」に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2860169号の特許を維持する。 
理由 (1)手続の経緯

特許第2860169号の請求項1に係る発明は、1994年(平成6年)11月29日(優先権主張1993年11月29日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成10年12月4日にその特許権の設定登録がなされ、その後、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成11年11月4日付けの取消理由通知がなされ、期間延長されたその指定期間内である平成12年6月2日に訂正請求がなされたものである。

(2)訂正の適否についての判断

(2-1)訂正の内容、訂正明細書の請求項1に係る発明

特許権者の求める訂正は、特許請求の範囲の請求項1において、「R'は炭素数3〜7の飽和の直鎖状または分枝状のアルキルであり」とあるのを「R'はイソブチルまたはアミルであり」と訂正するものであり、訂正明細書の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの
である。

(2-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否

また、この訂正は、化学物質発明において、化学物質の範囲をより狭い範囲のものに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2-3)独立特許要件の判断

当審が通知した取消理由で引用した刊行物1(特公昭56-9560号公報)には、「1分子中にSi原子に結合したオキシム基を少なくとも1個とSi原子に結合したアルコキシ基を少なくとも1個有し、かつ、該オキシム基と該アルコキシ基の合計数が少なくとも4個であるけい素化合物からなる、オキシムを放出しつつ室温で硬化するシリコーン組成物用接着促進剤」に係る発明が記載されており(特許請求の範囲第1項)、「接着促進剤において、Si原子に結合したオキシム基としては、・・・メチル-n-プロピルケトキシム基、・・・メチル-n-ブチルケトキシム基、Si原子に結合したアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、・・・n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンタノキシ基、ヘキサノキシ基、・・・メトキシエトキシ基、・・・が例示される。」(3欄25〜39行)、「接着促進剤の具体例としては、・・・ジ-(メチル-n-プロピルケトキシム)-ジメトキシシラン、・・・以上のシラン類のメトキシ基をエトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、またはメトキシエトキシ基で置換したシラン、・・・がある。」(4欄41行〜5欄34行)、「本発明にかかる接着促進剤を主成分とするプライマーは、オキシムを放出しつつ室温で硬化するシリコーン組成物を種々の基材に耐久性よく接着させるのに好適である。また、本発明にかかる接着促進剤を使用したオキシムを放出しつつ室温で硬化するシリコーン組成物は種々の基材によく接着し、硬化した後変色もせず、耐候性、耐熱性、耐油性などが、なんら害されず圧縮永久歪も大きくならず、シーリング材として使用したときの目地動き追随性もなんら害されないという特徴があり、シーリング材、コーキング材、コーティング材などとして安心して使用することができる。」(7欄39行〜8欄6行)という記載もあり、実施例1、2としてメチルエチルケトキシム-エトキシシラン、メチルエチルケトキシム-トリ(n-プロポキシ)シランの合成例、及び、それを有するシリコーン組成物が示されている。
同じく刊行物2(特開平4-159286号公報)にはオキシムシランの着色防止方法に係る発明が記載されており、オキシムシランの製造方法に関して「本発明は、窒素含有塩基及び有機溶剤存在下で、一般式R14-aSiXa(式中、Xはハロゲン原子を表し、R1は水素原子、アルキル基・・・を表し、aは1〜4の整数を表す)で示されるハロゲン化シラン及び一般式R2R3C=N-OH[式中、R2及びR3は各々独立に水素原子、アルキル基、・・・を表し、・・・]で示されるオキシムから合成される、一般式(R2R3C=N-O)aSiR14-a(式中、R1、R2、R3は前記に同じ)で示されるオキシムシラン」という記載(2頁右下欄4行〜3頁左上欄8行)、オキシムシランの製造原料のオキシムに関して「本発明に用いるオキシムは前記一般式R2R3C=N-OH(式中のR2、R3は前記に同じ)で示されるが、R2あるいはR3としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基・・・などが例示され、オキシムとしては・・・2-ヘキサノンオキシム・・・などが例示される。」という記載がある(3頁左下欄2行〜4頁左上欄2行)。
それに対し、本件発明のR'がイソブチルまたはアミルのケトキシムシランは硬化して透明なシリコーンゴムになるものであり(本件出願の審査段階で提出された1998年5月21日付け実験成績証明書も参照)、本件発明の化学物質のそのような性質は刊行物1の記載から想到されるものではない。また、刊行物2にはシリコーン組成物に関して記載はなく、シリコーン組成物を室温硬化させたときのシリコーンゴムの性質に関して示唆するような記載もない。
よって、本件発明は刊行物1乃至刊行物2に記載された発明とすることはできず、それらに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとすることもできないので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(2-4)むすび

以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

(3)特許異議の申立てについての判断

(3-1)特許異議申立ての理由の概要

特許異議申立人東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社は、本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証乃至甲第2号証刊行物(それぞれ前記(2-3)に記載の刊行物1、刊行物2に相当する。)に記載された発明であるか、両刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、さらに、該発明は特願昭53-87149号(この特許出願の公告公報が刊行物1に当る。)に係る発明(以下、「先願発明」という。)と同一の発明であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができないものであるので、請求項1に係る発明の特許を取り消すべきであると主張している。

(3-2)当審の判断

前述のように本件訂正は適法なものであるので、本件請求項1に係る発明は、訂正明細書の請求項1に記載された発明である。

(特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項について)
前記(2-3)で述べた理由により、本件請求項1に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明であるとすることはできず、また、刊行物1、2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(特許法第39条第1項について)
なお、甲第3号証は先願の出願経過をPATOLISにより照会した結果を記載するもので、先願発明が特許第1067749号として登録されていることを示すものであって、この記載により先願発明の認定が変更されるものではない。
よって、本件発明が先願発明と同一の発明であるとすることはできない。

また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アルキルメチルケトキシムシラン
【発明の詳細な説明】
発明の背景
種々の有用なシリコーン組成物は、室温で硬化して様々な物理的特徴と化学的特徴を有するエラストマー材料になる。これらの組成物の表面は大気に触れると30分以内に硬化し、数年間実質的に柔軟な状態を保つことができるため、極めて望ましい組成物である。また、これらの組成物は、ガラス、磁気、木材、金属、有機プラスチックといった様々な材料にも強く接着する。このため、ビルや自動車などに用いるあらゆるタイプのシーラントとして実際に利用することができる。以下に記載する特許は、これらの組成物の一部についてより詳細に検討している。
スウィート(Sweet)の米国特許第3,189,576号明細書には、室温硬化性組成物の製造に有用なオキシミノシランについて記載されている。特に、この明細書には、架橋剤たる三官能価および四官能価のケトキシミノシランと、これらのケトキシミノシランをヒドロキシ末端保護ポリジオルガノシロキサンと混合して室温硬化性シリコーンエラストマー組成物を調製することが教示されている。これらの組成物には、増量剤や硬化触媒も含ませることができる。
フォンアウ(Von Au)の米国特許第4,503,210号には、三官能価および四官能価のケトキシミノシランが開示されており、四官能価のケトキシミノシランがシーラント組成物として有用であることが特に着目されている。
既知の四官能価のオキシミノシラン(例えば、メチルエチルケトキシム(MEKO)やアセトンオキシムをベースにしたもの)は、室温で固体であるという問題がある。これらの化合物は湿気に非常に敏感であるため、容易に分解して半固体になって扱いにくくなってしまう。したがって、これらの材料は保存性が悪く、包装や輸送に際しては特別な注意が必要とされている。
既知の四官能性および三官能性オキシミノシラン(例えば、MEKOやアセトンオキシムをベースにしたもの)には、他の欠点もある。従来より、これらの材料はシリコーンポリマーと組み合わされているが、その結果として得られる生成物は不透明である。したがって、その生成物を利用することができる適用場面がかなり限定されてしまっていた。
室温硬化性組成物を適用できる状況が増えるにしたがって、組成物に求められる特質も変わりつつある。本技術分野では、新しくて望ましい性質を有し、かつ不透明性や物理的状態の制約(固体であること)といった従来の欠陥を有しない室温硬化性組成物が依然として求められている。我々は、驚くべきことに、本発明のシランがこの必要性を満たすことを発見した。
本発明の説明
本発明は、式:
(R’R”C=NO)aSiR14-a
で表されるシランに関する。上式において、R’は炭素数3-7の飽和直鎖または分枝アルキルであり(例えばプロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびアミル);R”はメチルであり;R1は炭素数1-8の飽和直鎖アルキルまたはアルコキシ(例えばメチル、エチルおよびプロピル)または炭素数1-5のアルケニル(例えばメチル、ビニルおよびアリル)であり;aは2-4から選ばれる正の整数である。より詳細に述べると、本発明は以下のシランに関する。すなわち、メチルビニルビス(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン、メチルビニルビス(メチルアミルケトキシミノ)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン、ビニルトリス(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン、メチルトリス(メチルアミルケトキシミノ)シラン、ビニルトリス(メチルアミルケトキシキミノ)シラン、テトラキス(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン、テトラキス(メチルアミルケトキシミノ)シラン、メトキシトリス(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン、エチルトリス(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン、エトキシトリス(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン、メトキシトリス(メチルアミルケトキシミノ)シラン、エチルトリス(メチルアミルケトキシミノ)シラン、エトキシトリス(メチルアミルケトキシミノ)シランおよびこれらの混合物に関する。
市販されている四官能価オキシミノシランは、米国特許第4,503,210号明細書に記載されているように三官能価オキシミノシランと混合(溶解)するか、有機溶媒に溶解したうえで利用されている。このような混合や溶解は、シーラント配合物において広く行われている。
三官能価オキシミノシランに溶解する場合、四官能価オキシミノシランは室温で35-40%溶解する。しかし、三官能価オキシミノシランの使用量が多い方が硬化速度が速くて触媒の必要性が少ないため、四官能価オキシミノシランを三官能価オキシミノシランに溶解するのは不利である。
一方、精密量の四官能価オキシミノシランが必要とされるときにその取り扱いを容易にするために、四官能価オキシミノシランを有機溶媒に溶解している。溶解する有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレンといった炭化水素類、ジエチルエーテルやジブチルエーテルといったエーテル類、ケトン類やハロゲン化物類の溶媒を用いている。しかしながら、これらの溶媒の中には引火性ものもや発癌性のものがあり、操作中の身の安全を確保するために一段と注意を払わねばならない。さらに、使用中にシーラント製品から発生する蒸気が人体や環境に対して安全であることを確認する必要がある。このような注意を払うことは、コストがかかり時間の浪費にもなる。
また、溶解度も重要である。例えば、室温において、四官能価のMEKO-べースのシランはトルエンやメチルエチルケトキシムに50%、ジエチルエーテルに40%、ジブチルエーテルに10%しか溶解しない。その結果、配合時に多量の溶媒が必要とされることがある。また、温度が低かったり(例えば冬季航海中)、四官能価オキシミノシランの濃度が高かったりすると、結晶化してしまうこともある。
このため、有機溶媒に溶解したり、三官能価オキシミノシランと混合する必要がない四官能価オキシミノシランを開発することが、産業界にて長い間必要とされてきた。本発明者らは、驚くべきことに、本発明の新規テトラキスオキシミノシラン[例えばテトラキス(メチルイソブチルケトキシミノ)シランやテトラキス(メチルアミルケトキシミノ)シラン]が液体であるため、固体シランが抱える問題を生じないことを発見した。溶媒濃度を下げ過ぎて問題を生ずることがなければ、これらの新しいシランを利用してすることによって溶媒を含まない配合物を提供することができる。また、室温で湿気によって硬化するシリコーン組成物の配合を柔軟で簡略化することができる。本発明の四官能価オキシミノシランは液体であることから、組成物の硬化速度を速めるために使用することもできる。本発明以外の四官能価オキシミノシランを用いる場合は、使用する溶媒に対する溶解度によってこの種のシリコーン組成物への使用量が制限されていた。
同族の有機化合物の物理的状態は分子量の増加に伴って一般に気体、液体、固体の順に変化することを考えれば、これらの新らしい四官能価オキシミノシランが液体であることは驚くべきことである。モリソン(R.T.Morrison)とボイド(R.N.Boyd)のOrganic Chemistry(第5版)91-94頁(1987年)を参照。例えば、脂肪族炭化水素では、プロパン(分子量44)やブタン(分子量58)といった低分子化合物は気体であり、ヘキサン(分子量86)やオクタン(分子量114)といったより高分子な化合物は液体である。また、エイコサン(分子量282.6)、ドコサン(分子量316.6)、テトラコサン(分子量338.7)といた長鎖炭化水素系パラフィンは固体である。
アセトンオキシム(分子量73)やメチルエチルケトキシム(分子量87)といった低分子量のアルキルケトキシムをベースにした三官能価オキシミノシランは固体である。したがって、これよりも分子量が大きいメチルイソブチルケトキシム(分子量115)やメチルアミルケトキシム(分子量129)をベースにした四官能価オキシミノシランも固体であろうと予測される。しかしながら、驚くべきことに本発明者らは、これらの本発明の四官能価オキシミノシランは両方とも室温で液体であることを発見した。
これらの新規液体四官能価オキシミノシランに加えて、本発明者らはさらに驚くべきことに、本発明の他のオキシミノシラン(テトラオキシミノ、トリスオキシミノまたはビスオキシミノ)を周知のシリコーンポリマーであるヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(HTPDMS)と配合すると光学的に透明なシリコーンゴムになることを見いだした。市販されているオキシミノシランを通常の有効濃度でシリコーンポリマーと混合すると、一般に非常に曇った不透明なゴムしか生成しないことを考えると、この発見は驚くべきことである(下記の実施例1-9と比較例1-4参照)。従来は非常に曇った不透明なゴムしか得られなかったため、オキシミノシランを利用しうる場面が限られていた。本発明によれば、オキシミノシランを美観が重視される場面へ適用することが可能になり、従来は使用できないとされていた種々の状況下で活用することができるようになった。
本発明の新しいケトキシミノシランは、以下に概容を記載する調製法にしたがって調製することができる。米国特許第4,400,527号明細書参照。また、本発明の新しいケトキシミノシランは、本技術分野において知られている方法によって調製することもできる。以下に記載する調製法において使用するオキシムは、本技術分野において知られている方法によって調製することができる。例えば、アライドシグナル社の米国特許第4,163,756号明細書および同第3,991,115号明細書に概容が記載される調製法参照。
本発明の新しいシランは、他の架橋剤と組み合わせて使用することができる。他の架橋剤として、例えばアルコキシシラン、アルコキシオキシミノシラン、他のオキシミノシランを挙げることができる。組み合わせて使用しうるシランの例は、米国特許第3,697,568号明細書、同第3,896,079号明細書、同第4,371,682号明細書および同第4,657,967号明細書に開示されている。
テトラキス(メチルイソブチルケトキシミノ)シランの調製
コンデンサー、温度計と滴下漏斗を備えた1リットルの3つ口フラスコに、ヘキサン350mlと蒸留したメチルイソブチルケトキシム96.7g(0.84mol)を入れた。反応媒体を乾燥状態に維持するために、ドライアライトをコンデンサーに取り付けた。ヘキサン/ケトキシム溶液が入ったフラスコを氷浴中に入れ、磁気撹拌機を用いて撹拌しながらテトラクロロシラン17g(0.1mol)を滴下した。滴下中の反応温度は35-42℃に維持した。テトラクロロシラン添加完了後、反応混合物を5分間撹拌して、5分間放置した。分液漏斗を用いて、無色ヘキサン溶液の上層を粘度が高いメチルイソブチルケトキシム塩酸塩の下層から分離した。上層に対してシリンダーから無水アンモニアガスを供給して5分間処理した。析出した固体塩化アンモニウムを濾過して、無色濾液をロートバップ上で減圧蒸留(50℃、5mmHg)してヘキサンを除去した。無色液体約429(収率86%)を得た。1Hおよび13C NMRとGC/マススペクトルデータによる同定の結果、得られた無色液体がテトラキス(メチルイソブチルケトキシミノ)シランであることが確認された。
テトラキス(メチルアミルケトキシミノ)シランの調製
滴下漏斗、コンデンサーおよび温度計を備えた2リットルの3つ口丸底フラスコに、ヘキサン1300mlとメチルアミルケトキシム418.6g(3.24mol)を入れた。オーバーヘッド撹拌機を用いて溶液を撹拌しながら、テトラクロロシラン67.969(0.4mol)を30分かけて滴下した。滴下中、反応混合物の温度は37-42℃に維持した。テトラクロロシランの滴下完了後、反応混合物を5分間放置した。分液漏斗を用いて、曇った上層をメチルアミルケトキシム塩酸塩の下層から分離した。その後、上層を無水アンモニアで15分かけて中和し、析出した固体塩化アンモニウムを濾過して除いた。減圧下で濾液からヘキサンを除くことによって、液体178.5g(82.6%)を得た。IR、1Hおよび13C NMRスペクトルデータによる同定の結果、得られた液体がテトラキス(メチルアミルケトキシミノ)シランであることが確認された。
アルコキシオキシミノシラン混合物の調製
テトラクロロシラン:エタノール:メチルアミルケトキシムをモル比1:1:7で反応させた。
コンデンサー、滴下漏斗および乾燥チューブを備えた還流用コンデンサーを備えた1リットルの3つ口フラスコに、ヘキサン348mg、エタノール11.5g(0.25mol)および蒸留したメチルアミルケトキシム232.2g(1.80mol)を入れた。このアルコール、オキシムおよびヘキサンの溶液を、オーバーヘッド撹拌機を用いて撹拌した。テトラクロロシラン42.5g(0.25mol)を反応フラスコに滴下した。滴下の間の反応温度は35-42℃に維持した。テトラクロロシランの滴下完了後に、反応混合物を5分間撹拌して、さらに5分間放置した。分液漏斗を用いて、粘性の高いメチルアミルケトキシム塩酸塩の下層から上層を分離した。上層をシリンダーからアンモニアガスを供給することによって10分かけて中和した。析出した塩化アンモニウム固体を濾過して除去した。無色透明な濾液からヘキサンを除去して、無色液体94.0gを得た。この液体をガスクロマトグラフィーにより分析することによって、トリエトキシ(メチルアミルケトキシミノ)シラン(5.6%)、ジエトキシビス(メチルアミルケトキシミノ)シラン(12.5%)、エトキシトリス(メチルアミルケトキシミノ)シラン(43.2%)、テトラキス(メチルアミルケトキシミノ)シラン(33.9%)およびメチルアミルケトキシム(4.5%)が含まれていることが確認された。これらのシランは、GC-マススペクトル分析によって同定された。
メチルトリス(メチルイソブチルケトキシミノ)シランの調製
温度計、オーバーヘッド撹拌機および添加漏斗を備えた5リットルの3つ口水ジャケット付フラスコに、メチルイソブチルケトキシム714.3g(6.20mol)およびヘキサン3000mlを入れた。メチルトリクロロシラン1molまたは149.48gを1時間かけて滴下した。滴下の間の反応温度は37-42℃に維持した。メチルトリクロロシランの滴下完了後、反応混合物を5分間撹拌して、10分間放置した。分液漏斗を用いて、メチルイソブチルケトキシム塩酸塩の下層から上層を分離して、10分間反応液の中にアンモニアガスを吹き込むことによって中和した6固体塩化アンモニアを濾過して除去し、濾液からヘキサンを減圧蒸留して除去することによって、無色液体380g(98.7%)を得た。この生成物を、IR、1Hおよび13C NMRスペクトルデータにより分析したところ、メチルトリス(メチルイソブチルケトキシミノ)シランであると同定された。
ビニルトリス(メチルイソブチルケトキシミノ)シランの調製
オーバーヘッド撹拌機、温度計および添加漏斗を備えた3リットルの3つ口丸底フラスコに、メチルイソブチルケトキシム714.0g(6.20mol)およびヘキサン1200mlを入れた。撹拌しながらビニルクロロシラン161.5g(1.0mol)を1時間かけて滴下した。滴下の間の反応温度は37-41℃に維持した。滴下完了後、反応混合物を10分間放置した。分液漏斗を用いて、メチルイソブチルケトキシム塩酸塩の下層から、生成物とヘキサンを含む上層を分離した。さらにアンモニアガスを用いて10-15分かけて中和した。固体塩化アンモニウムを濾過して、濾液からヘキサンを減圧蒸留することによって、無色液体374g(94%)を得た。この液体をIR、1Hおよび13C NMR分析した結果、ビニルトリス(メチルイソブチルケトキシミノ)シランであると同定された。
メチルトリス(メチルアミルケトキシミノ)シランの調製
温度計、オーバーヘッド撹拌機および滴下漏斗を備えた2リットルの3つ口丸底フラスコに、メチルアミルケトキシム394.1g(3.05mol)およびヘキサン1000mlを入れた。フラスコ中の内容物を撹拌しがら、メチルトリクロロシラン74.5g(0.5mol)滴下漏斗から30分かけて滴下した。滴下の間の温度は、35-41℃に維持した。滴下完了後、反応混合物を10分間放置した。分液漏斗を用いて、重いメチルイソブチルケトキシム塩酸塩の下層から、ヘキサンと生成物を含んだ上層を分離した。固体塩化アンモニアを濾過して除去し、濾液を減圧濾過してヘキサンを除去することによって、無色液体201.8g(94.5%)を得た。この液体をIR、1Hおよび13C NMR分析した結果、メチルトリス(メチルアミルケトキシミノ)シランであると同定された。
ビニルトリス(メチルアミルケトキシミノ)シランの調製
オーバーヘッド撹拌機、添加漏斗および温度計を備えた2リットルの3つ口丸底フラスコに、メチルアミルケトキシム236.4g(1.83mol)およびヘキサン800mlを入れた。フラスコ中の内容物を撹拌しながら、ビニルトリクロロシラン48.45g(0.3mol)を滴下漏斗から30分かけて滴下した。滴下の間の反応温度は32-41℃に維持した。ビニルトリクロロシランの滴下完了後、反応混合物を10分間放置した。分液漏斗を用いて、重いメチルアミルケトキシム塩酸塩の下層から、生成物とヘキサンを含む上層を分離した。さらに、得られた液体中にアンモニアガスを吹き込むことによって、液体を中和した。塩化アンモニウムを濾過して除去することによって、透明な濾液を得た。減圧蒸留することによってヘキサンを除去して、無色液体115g(87%)を得た。IR、1Hおよび13C NMR分析した結果、ビニルトリス(メチルアミルケトキシミノ)シランであると同定された。
メチルビニルビス(メチルイソブチルケトキシミノ)シランの調製
温度計、コンデンサーおよび滴下漏斗を備えた500mlの3つ口丸底フラスコに、メチルイソブチルケトキシム47.17g(0.41mol)およびヘキサン250mlを入れた。この混合物を磁気撹拌機を用いて撹拌しながら、メチルビニルジクロロシラン14.11g(0.1mol)を滴下漏斗から15分かけて滴下した。反応混合物の温度は33-38℃に維持した。クロロシランの添加完了後、反応混合物を5分間放置して層分離させた。分液漏斗を用いて、オキシム塩酸塩の下層から上層を分離した。この上層に10分間アンモニアガスを吹き込むことによって中和した。濾液のヘキサンを減圧蒸留することによって除去し、無色液体27.59(89%)を得た。IR、1Hおよび13C NMR分析の結果、メチルビニルビス(メチルイソブチルケトキシミノ)シランであると同定された。
メチルビニルビス(メチルアミルケトキシミノ)シランの調製
オーバーヘッド撹拌機、滴下漏斗および温度計を備えた3リットルの3つ口フラスコに、メチルアミルケトキシム529g(4.1mol)とヘキサン1200mlを入れた。フラスコ中の内容物を撹拌しながら、メチルビニルジクロロシラン141g(1.0mol)を滴下漏斗から40分かけて滴下した。滴下の間の反応温度は28-32℃に維持した。滴下完了後、反応混合物を10分間放置して2層に分離した。分液漏斗を用いて、重いオキシム塩酸塩の下層から、生成物とヘキサンを含む上層を分離した。上層にアンモニアガスを10分間吹き込むことによって中和した。固体塩化アンモニウムを濾過して除去した後、減圧蒸留してヘキサンを除去することによって、無色液体286g(87.7%)を得た。IR、1Hおよび13C NMR分析の結果、得られた液体はメチルビニルビス(メチルアミルケトキシミノ)シランであると同定された。
実施例1
粘度50,000cstのヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(HTPDMS)50重量部を100mlのビーカーに入れ、さらに本明細書に開示される調製法にしたがって調製したメチルトリス(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン1-4重量部を添加した。これらの化合物を、25℃にて標準的な実験室用撹拌機を用いて200rpmで5分間撹拌した。生成物は硬化して透明なシリコーンゴムになった。
実施例2-9
以下のシランを用いて、上記実施例1に記載される操作を繰り返して行った。
1)メチルトリス(メチルアミルケトキシミノ)シラン1-4重量部
2)ビニルトリス(メチルアミルケトキシミノ)シラン2-3重量部
3)ビニルトリス(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン2-3重量部
4)テトラキス(メチルアミルケトキシミノ)シラン1-3重量部
5)テトラキス(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン1-3重量部
6)メチルトリス(メチルイソブチルケトキシミノ)シランとテトラキス(メチルイソブチルケトキシミノ)シランの重量比3:1の混合物
7)メチルトリス(メチルアミルケトキシミノ)シランとテトラキス(メチルアミルケトキシミノ)シランの重量比3:1の混合物
8)メチルトリス(メチルアミルケトキシミノ)シランとテトラキス(メチルイソブチルケトキシミノ)シランの重量比3:1の混合物
結果は、実施例1に記載される結果と同一であり、得られた硬化シリコーンゴムは透明であった。
比較例1
粘度50,000cstのHTPDMS50重量部を100mlフラスコに入れ、メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン3-4重量部を添加した。これらの化合物を、25℃にて標準的な実験室用撹拌機を用いて200rpmで5分間撹拌した。生成物は硬化して、不透明で曇りのあるシリコーンゴムになった。
比較例2-4
以下のシランを用いて、上記比較例1に記載される操作を繰り返して行った。
1)ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン2-10重量部
2)トルエン中のテトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シラン3-10重量部
3)メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シランとテトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シランの重量比3:1の混合物
結果は、比較施例1に記載される結果と同一であり、得られた硬化シリコーンゴムは不透明で曇りがあった。
本発明のシランは、シーラント、接着剤、コーティング剤などのシリコーンポリマーの用途に供し得る種々の一成分室温硬化性組成物を調製するための中間体として有用である。これらの一成分系は、本明細書の一部として引用するスウィート(Sweet)の米国特許第3,189,576号明細書(12欄6-26行の実施例17)およびワーミンハウス(Wurminghause)らの米国特許第4,720,530号明細書(1欄60-67行と2欄1-43行)の記載にしたがって調製することができる。一成分室温硬化性組成物の調製法は、実質的に湿気がない条件下でヒドロキシ末端保護シロキサンポリマーとシランとを反応させる工程を一般に含む。あるいは、増量剤(例えばシリカ、チョーク、ガラスビーズ)、接着促進剤(例えば有機官能性シラン)および触媒(例えば錫カルボキシレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、鉛カルボキシレート、亜鉛カルボキシレート、有機チタネート)を含有させておくこともできる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 式:
(R’R”C=NO)aSiR14-a
(上式において、R’はイソブチルまたはアミルであり、R”はメチルであり、R1は炭素数1〜8のアルコキシであり、aは2、3または4である)
で表されるケトキシムシラン。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許請求の範囲の請求項1において、特許請求の範囲の減縮を目的として「R’は炭素数3〜7の飽和の直鎖状または分枝状のアルキルであり」とあるのを「R’はイソブチルまたはアミルであり」と訂正する。
異議決定日 2000-06-29 
出願番号 特願平7-515269
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C07F)
P 1 651・ 4- YA (C07F)
P 1 651・ 121- YA (C07F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤原 浩子  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 後藤 圭次
谷口 操
登録日 1998-12-04 
登録番号 特許第2860169号(P2860169)
権利者 アライドシグナル・インコーポレーテッド
発明の名称 アルキルメチルケトキシムシラン  
代理人 社本 一夫  
代理人 増井 忠弐  
代理人 釜田 淳爾  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 小林 泰  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 社本 一夫  
代理人 今井 庄亮  
代理人 小林 泰  
代理人 今井 庄亮  
代理人 久保田 芳譽  
代理人 釜田 淳爾  
代理人 増井 忠弐  

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