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審決分類 |
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 F04B |
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管理番号 | 1024747 |
異議申立番号 | 異議2000-70142 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-07-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-01-19 |
確定日 | 2000-09-11 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2924621号「揺動斜板式圧縮機におけるピストン」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2924621号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続の経緯 特許第2924621号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)についての出願は、平成5年12月27日に特許出願され、平成11年5月7日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人カルソニック株式会社 より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間である平成12年7月31日に訂正請求がなされたものである。 (2)訂正の適否についての判断 ア.訂正の内容 特許権者が求めている訂正の内容は、以下のa〜eのとおりである。 a.特許請求の範囲の請求項1に記載される「ピストンの中心軸線」を「一体構成のピストンの中心軸線」に訂正する。 b.特許請求の範囲の請求項1に記載される「肉取り部を設け、該肉取り部を前記ピストンの頭部の周面が前記シリンダボアの内周面に押し付けられる領域から外れた位置に形成した」を「肉取り部を設ける一方、前記ピストンの中心軸線に関して斜板の半径方向側における片頭ピストンの頭部の周面部において、往復動時に前記シリンダボアの内周面から押し付け力に対する反力を受けるようにした」に訂正する。 c.明細書の段落【0002】に記載される「往復4可能である」(本件特許公報第2頁左欄第15〜16行参照)を「往復動可能である」に訂正する。 d.明細書の段落【0007】に記載される 「ピストンの中心軸線」(本件特許公報第2頁右欄第15行参照)を「一体構成のピストンの中心軸線」に訂正する。 e.明細書の段落【0007】に記載される「肉取り部を設け、該肉取り部を前記ピストンの頭部の周面が前記シリンダボアの内周面に押し付けられる領域から外れた位置に形成した」(本件特許公報第2頁右欄第15〜18行参照)を「肉取り部を設ける一方、前記ピストンの中心軸線に関して斜板の半径方向側における片頭ピストンの頭部の周面部において、往復動時に前記シリンダボアの内周面から押し付け力に対する反力を受けるようにした」に訂正する。 イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記aの訂正事項は、片頭ピストンを一体構成のものに減縮するものであって、特許請求の範囲の減縮に相当する。また、この訂正事項は、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0006】の「一体構成の片頭ピストン」の記載に基づくものであって、新規事項を追加するものでも、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 上記bの訂正事項は、取消理由通知書で指摘した不明瞭な記載を、特許明細書の段落【0021】、【0023】、【0030】及び図1における、ピストン周面がシリンダボアの内周面から受ける力に関する記載に基づいて、明瞭にするものであって、明瞭でない記載の釈明に相当し、新規事項を追加するものでも、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 上記cの訂正事項は、明らかに誤記の訂正に該当し、新規事項を追加するものでも、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 上記d、eの訂正事項は、上記a、bの訂正事項と整合するように、発明の詳細な説明の欄を訂正するものであって、明瞭でない記載の釈明に該当し、新規事項を追加するものでも、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 ウ.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項、及び同条第3項において準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 (3)特許異議の申立について ア.本件発明 本件発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。 【請求項1】 回転軸に傾動可能に支持された斜板の両面とシリンダボア内に収容された片頭ピストンの首部との間に介在されたシューを介して斜板の回転運動を片頭ピストンの往復直線運動に変換すると共に、クランク室内の圧力と吸入圧との片頭ピストンを介した差により斜板の傾角を制御する揺動斜板式圧縮機において、 一体構成のピストンの中心軸線に関して斜板の回転方向側及び反対側の少なくとも一方の片頭ピストンの頭部の周面側には、ピストンの中心軸線側に向けて凹ませた肉取り部を設ける一方、前記ピストンの中心軸線に関して斜板の半径方向側における片頭ピストンの頭部の周面部において、往復動時に前記シリンダボアの内周面から押し付け力に対する反力を受けるようにした揺動斜板式圧縮機におけるピストン。 イ.申立の理由の概要 申立人カルソニック株式会社は、本件発明は、甲第1号証(米国特許第3057545号明細書)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、本件発明を取り消すべき旨主張している。 ウ.甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、その第1欄第65行〜第3欄第23行及び図1〜図10の記載によれば、 「駆動軸26に支持された斜板28の両面とシリンダボア34内に収容された双頭ピストン30の一側中央切欠部との間に介在されたシュー39を介して斜板の回転運動を双頭ピストンの往復直線運動に変換する斜板式圧縮機において、 ピストンの中央軸線に関して斜板の回転方向側及び反対側の双方の双頭ピストンの頭部の周面側には、ピストンの中央軸線側に向けて凹ませた肉取り部を設けた、 斜板式圧縮機におけるピストン。」 が、記載されている。 エ.対比・判断 本件発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、本件発明が、「片頭式の斜板式圧縮機のピストン」に関するものであるのに対し、甲第1号証記載のものは、「双頭式の斜板式圧縮機のピストン」に関するものである点、及び本件発明が、「片頭式の揺動斜板式圧縮機において、ピストンの中心軸線に関して斜板の回転方向側及び反対側の少なくとも一方の片頭ピストンの頭部の周面側には、ピストンの中心軸線側に向けて凹ませた肉取り部を設ける一方、前記ピストンの中心軸線に関して斜板の半径方向側における片頭ピストンの頭部の周面部において、往復動時に前記シリンダボアの内周面から押し付け力に対する反力を受けるようにした」ものであるのに対し、甲第1号証記載のものでは、その点が明らかでない点で相違する。 そして、斜板からピストンに伝えられる力について検討すると、その力を、双頭ピストンではその両端で支持するのに対し、片頭ピストンでは頭部先端と頭部の周面とで支持する必要があり、両者では上記力の支持のメカニズムが相違している。したがって、片頭式の揺動斜板式圧縮機が周知・慣用の圧縮機であるとしても、「片頭式の揺動斜板式圧縮機において、ピストンの中心軸線に関して斜板の回転方向側及び反対側の少なくとも一方の片頭ピストンの頭部の周面側には、ピストンの中心軸線側に向けて凹ませた肉取り部を設ける一方、前記ピストンの中心軸線に関して斜板の半径方向側における片頭ピストンの周面部において、往復動時に前記シリンダボアの内周面から押し付け力に対する反力を受けるようにする」点は、甲第1号証に記載されているとは認められない。 したがって、本件発明は、甲第1号証に記載の発明ではない。 オ.取消理由について 当審において、概略以下のとおりの取消理由を通知した。 a.刊行物1(甲第1号証)には、ピストンの中心軸線に関して斜板の回転方向側及び反対側のピストン頭部の周面側にピストンの中心軸線側に凹ませた肉取り部を設け、該肉取り部を前記ピストン頭部の周面がシリンダボアの内周面に押し付けられる領域からはずれた位置に形成した双頭式の固定斜板式圧縮機におけるピストンが記載されており、請求項1に係る発明と上記刊行物1記載の発明とは、請求項1に係る発明が、揺動斜板式圧縮機の片頭ピストンであるのに対し、上記刊行物1記載のものは、固定斜板式圧縮機の双頭ピストンである点で相違する。 しかしながら、片頭ピストンを有する揺動斜板式圧縮機は、刊行物2(実願平3-13020号(実開平4-109481号)のマイクロフィルム)にも示されるように周知であり、上記刊行物1記載のピストンを、周知の揺動斜板式圧縮機の片頭ピストンに適用して、請求項1に係る発明のように構成することは、当業者が容易に想到しうることであり、それによる効果も格別のものではない。 b.請求項1の「肉取り部を前記ピストンの頭部の周面が前記シリンダボアの内周面に押し付けられる領域から外れた位置」とは、どのような位置を意味するのか不明瞭である。 取消理由aについては、上記「(3)エ.対比・判断」で検討したように、斜板からピストンに伝えられる力に関し、双頭ピストンではその両端で支持するのに対し、片頭ピストンでは頭部先端と頭部の周面とで支持する必要があり、両者では上記力の支持のメカニズムが相違している。したがって、片頭式の揺動斜板式圧縮機が周知の圧縮機であるとしても、上記刊行物1記載のピストンを片頭式の揺動斜板式圧縮機に適用して、請求項1に係る発明のように構成することが、当業者にとって容易になし得たものであるとはいえない。 取消理由bについては、上記「(2)訂正の適否についての判断」において検討したように、上記訂正によって解消された。 (4)むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び提出された証拠によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-08-22 |
出願番号 | 特願平5-332144 |
審決分類 |
P
1
652・
113-
YA
(F04B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 尾崎 和寛 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
飯塚 直樹 清田 栄章 |
登録日 | 1999-05-07 |
登録番号 | 特許第2924621号(P2924621) |
権利者 | 株式会社豊田自動織機製作所 |
発明の名称 | 揺動斜板式圧縮機におけるピストン |
代理人 | 三好 秀和 |
代理人 | 恩田 博宣 |