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審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  G02F
審判 全部申し立て 2項進歩性  G02F
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  G02F
管理番号 1024796
異議申立番号 異議1998-73419  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-06-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-07-21 
確定日 1999-06-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2698541号「液晶表示板用スペーサーおよびこれを用いた液晶表示板」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2698541号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 (1)手続きの経緯
本件特許第2698541号に係る出願は平成5年11月17日に出願され、平成9年9月19日に設定登録され、その後、触媒化成工業株式会社、大関隆久及びナトコペイント株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年12月15日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年3月15日に訂正請求の補正がなされたものである。
(2)訂正請求の補正についての判断
訂正請求の補正の内容は、特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1乃至請求項4、
「1.有機基中の少なくとも1個の炭素原子が直接ケイ素原子に化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンを主成分とする有機質一無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーであって、前記粒子の10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2、10%変形後の残留変位が0〜5%、平均粒子径が1〜50μmおよぴ粒子径の変動係数が20%以下であることを特徴とする液晶表示板用スペーサー。
2.下記一般式(1)
R1m-Si(OR2)4-m …(1)
(式中、R1は、置換基を有していても良い炭素数1-10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、およぴ、炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基からなる詳から選ばれる1価の基、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基およぴ炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基、mは0〜3の整数を示す。mが2の場合、2個のR1は互いに異なってもよいし、同じでもよい。mが3の場合、3個のR1は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが2の場合、2個のOR2は互いに異なってもよいし、同じでもよい。4-mが3の場合、3個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4一mが4の場合、4個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。)で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解・縮合可能なシリコン化合物〔ただし、単独使用できる前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物だけであり、2以上併用される前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる詳から選ばれる化合物と、式(1)におけるm=0で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物との両方またはいずれか一方を含む必要がある。〕を含有する加水分解・縮合可能な金属化合物を加水分解し、縮合して得られる粒子を100-1000℃の範囲で熱処理してなり、前記シリコン化合物の平均組成が、下記一般式(3)におけるnが0.5〜1である液晶表示板用スペーサー。
R3nSi(OR4)4-n …(3)
(式中、R3は、置換ケイ素原子に結合する炭素原子を有する有機基の平均組成、R4は水素原子、アルキル基、アシル基から選ばれる少なくとも1つの1価の基の平均組成を示す。)
3.熱処理が酸素濃度10容量%以下の雰囲気で行われる請求項2記載の液晶表示板用スペーサー。
4.電極基板間に介在させるスペーサーとして、請求項1から3までのいずれかに記載のスペーサーが用いられてなる液晶表示板。」
を、
「1.有機基中の少なくとも1個の炭素原子が直接ケイ素原子に化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンを主成分とする有機質一無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーであって、
前記粒子が、下記一般式(1)
R1mSi(OR2)4-m …(1)
(式中、R1は、置換基を有していても良い炭素数1-10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、およぴ、炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基からなる詳から選ばれる1価の基、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基およぴ炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基、mは0〜3の整数を示す。mが2の場合、2個のR1は互いに異なってもよいし、同じでもよい。mが3の場合、3個のR1は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが2の場合、2個のOR2は互いに異なってもよいし、同じでもよい。4-mが3の場合、3個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4一mが4の場合、4個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。)で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解・縮合可能なシリコン化合物〔ただし、単独使用できる前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物だけであり、2以上併用される前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる詳から選ばれる化合物と、式(1)におけるm=0で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物との両方またはいずれか一方を含む必要がある。〕を含有する加水分解・縮合可能な金属化合物を加水分解し、縮合して得られる粒子を100-1000℃の範囲で処理してなるものであり、前記粒子の10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2、10%変形後の残留変位が0〜5%、平均粒子径が0.5〜50μmおよぴ粒子径の変動係数20%以下であることを特徴とする液晶表示板用スペーサー。
2.熱処理が酸素濃度10容量%以下の雰囲気で行われる請求項1記載の液晶表示板用スペーサー。
3.電極基板間に介在させるスペーサーとして、請求項1または2記載のスペーサーが用いられてなる液晶表示板。」
と補正し、明細書の記載もこれに合わせて補正するものであり、訂正請求の補正の要件を満足するので、これを認める。
(3)訂正の適否についての判断
▲1▼訂正の内容
訂正請求の内容は、特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の
「1.有機基中の少なくとも1個の炭素原子が直接ケイ素原子に化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンを主成分とする有機質一無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーであって、前記粒子の10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2、10%変形後の残留変位が0〜5%、平均粒子径が0.5〜50μmおよぴ粒子径の変動係数が20%以下であることを特徴とする液晶表示板用スペーサー。
2.下記一般式(1)
R1mSi(OR2)4-m …(1)
(式中、R1は、置換基を有していても良い炭素数1-10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、およぴ、炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基からなる詳から選ばれる1価の基、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基およぴ炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基、mは0〜3の整数を示す。mが2の場合、2個のR1は互いに異なってもよいし、同じでもよい。mが3の場合、3個のR1は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが2の場合、2個のOR2は互いに異なってもよいし、同じでもよい。4-mが3の場合、3個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4一mが4の場合、4個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。)で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解・縮合可能なシリコン化合物〔ただし、単独使用できる前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物だけであり、2以上併用される前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる詳から選ばれる化合物と、式(1)におけるm=0で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物との両方またはいずれか一方を含む必要がある。〕を含有する加水分解・縮合可能な金属化合物を加水分解し、縮合して得られる粒子を100-1000℃の範囲で熱処理してなる液晶表示板用スペーサー。
3.熱処理が酸素濃度10容量%以下の雰囲気で行われる請求項2記載の液晶表示板用スペーサー。
4.電極基板間に介在させるスペーサーとして、請求項1から3までのいずれかに記載のスペーサーが用いられてなる液晶表示板。」
を、上記(2)に記載したように訂正し、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と合致させるため、不明瞭な記載の釈明を目的として明細書を訂正するものである。
▲2▼訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
請求項1乃至請求項3の訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、明細書の訂正は不明瞭な記載の釈明を目的としており、新規事項の追加には該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。以下、訂正明細書の請求項1乃至請求項3に記載された発明(以下、訂正発明1乃至訂正発明3という。)の独立特許要件について検討する。
▲3▼独立特許要件について
(引用例)
取消理由通知に示した、本件出願前公知の刊行物である特開昭62-72516号公報(以下、引用例1という。)には、
「加水分解可能な有機珪素化合物を反応液中において、周期律表第1族のアルカリ金属イオンの存在下に加水分解させることを特徴とするシリカ粒子の製造方法。」(特許請求の範囲)、「本発明の原料である加水分解可能な有機珪素化合物は特に限定されないが、代表的には一般式Si(OR)4またはSiR’n(OR)n-4((OR)n-4は(OR)4-nの誤記と認められる。)で示されるアルコキシシラン、またはアルコキシシランを部分的に加水分解して得られる低縮合物が工業的に入手し易く、その1種または2種以上の混合物が好ましく使用される。なお、上記の一般式において、RおよびR’はアルキル基で、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基などの低級アルキル基が好適である。」(公報第2頁左上欄第19行〜右上欄第8行)、
「本発明によれば、一般に粒子径が0.05〜50μmの範囲で、粒子径の変動係数が10%以下という揃った粒度分布を有する球状シリカ粒子を任意に得ることが出来る。したがって、これら本発明で得られるシリカ粒子は、球状かつ均一粒径の粉体ピースとして有用で、例えば免疫、臨床検査用、液晶等のマイクロエレクトロニクスのスペーサ用、濾過材評価試験用、液クロ、ガスクロの担体などに好適に用いられる。」(公報第3頁右上欄第12行〜第20行)と記載されている。
また、同じく特開平5-80343号公報(以下、引用例2という。)には、
「【請求項1】下式(A)で定義されるKの値が20℃において750kgf/mm2〜1500kgf/mm2の範囲であり、かつ圧縮変形後の回復率が20℃において30%〜80%の範囲であるSTN型液晶表示素子用球状スペーサー。
K=(3/√2)・F・S-3/2・R-1/2(A)
ここで、F、Sはそれぞれ球状スペーサーの10%圧縮変形における荷重値(kgf)、圧縮変位(mm)であり、Rは該スペーサーの半径(mm)である。
【請求項2】請求項1に記載のスペーサーを用いた、STN型液晶表示素子。」(特許請求の範囲)、
「【0032】上記K値および回復率を上記範囲内に容易に調整することができる点で、特に好ましいものは無機質と有機質とのハイブリッドからなるスペーサーである。
【0033】例えば、無機質多孔性微粒子に有機モノマーを含浸させた後、このモノマーを重合して得られる無機/有機ハイブリッド微粒子が挙げられる。また、有機多孔性微粒子に金属アルコキシドを含浸させた後、これを加水分解して金属酸化物を形成させるいわゆるゾルゲル法によって得られる無機/有機ハイブリッド微粒子が挙げられる。」(公報第3頁右欄第43行〜第4頁左欄第3行)、
「【0038】金属アルコキシドとしては、アルミニウムアルコキシド、シリルアルコキシド、チタニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドが好適に用いられる。」(公報第4頁左欄第31行〜第34行)、
「【0045】本発明の粒子径は、0.1μm〜100μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5μm〜50μmの範囲であり、特に好ましくは1μm〜20μmの範囲である。」(公報第4頁右欄第42行〜第44行)、
「【0057】実施例1
スチレンージビニルベンゼン共重合体よりなる平均粒子径6.98μm、標準偏差0.25μmの多孔性プラスチック粒子10gを入れた容器Aとテトラエトキシシラン1gを入れた容器Bとが連結され且つ真空ポンプにつながっている。・・・次に、別の容器にテトラエトキシシラン含有多孔性粒子と6N塩酸とを加え、冷却下超音波を照射しつつ粒子の多孔構造内部に金属酸化物の縮合物を形成させた。
【0059】このようにして得られた有機/無機ハイブリッドスペーサーの平均粒子径は7.03μm、標準偏差は0.27μmであった。このスペーサーの圧縮試験を微小圧縮試験器(島津製作所製)を用いて行った。その結果、圧縮歪10%におけるK値は1150kgf/mm2であった。また、反転荷重1grfの場合の圧縮変形後の回復率は58%であった。」(公報第5頁右欄第7行〜第29行)と記載されている。
A.訂正発明1について
(対比・判断)
訂正発明1と引用例1及び引用例2に記載された発明とを対比すると、
両引用例に記載された発明には、訂正発明1の構成要件、
「粒子を100-1000℃の範囲で熱処理してなるものであり、前記粒子の10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2、10%変形後の残留変位が0〜5%」である点について記載されていないし、示唆されてもいない。
そして、訂正発明1は、上記構成要件を具備することにより、明細書に記載の、
「電極基板表面の傷つけ、低温発泡の発生、画像ムラの発生、製造コストの上昇、諸表示性能の低下を招くことがなく、かつ、従来の有機質ポリマー粒子よりも散布個数を大幅に減らしても、厳密に一定の隙間距離を保持することができ、画質の優れた高性能の液晶表示板を作ることができる」という作用効果を奏する。
よって、訂正発明1が、第1引用例及び第2引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとすることはできない。
B.訂正発明2及び訂正発明3について
訂正発明2は、訂正発明1の熱処理条件を限定したものであり、訂正発明3は、訂正発明1または訂正発明2のスペーサーを用いた液晶表示板に関する発明であるから、両訂正発明は、訂正発明1と同様に、第1引用例及び第2引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとすることはできない。
したがって、訂正発明1乃至訂正発明3は特許出願の際独立して特許を受けることができないものである、とすることはできない。
(むすび)
よって、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項乃至第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
(4)特許異議申立について
(本件発明)
本件特許第2698541号の請求項1乃至請求項3に係る発明は、訂正された特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至請求項3に記載されたとおりのものと認める。
(特許異議申立人の主張の概要)
これに対して、特許異議申立人触媒化成工業株式会社は、甲第1号証として特開平2-255837号公報、甲第1号証の2として実験報告書、甲第2号証として特公平7-95165号公報、甲第3号証として特公平7-82172号公報、甲第4号証として(株)島津製作所製島津微小圧縮試験機MCTM/MCTEシリーズ取扱説明書」を提示して、本件発明は、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明と同一であるか、または甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第1項第3号または同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、本件出願公開後の明細書に行われた補正は、出願時における明細書の記載範囲を越えたものであり、また、本件明細書の記載は、当業者が容易に実施しうる程度に記載されていないので、本件は、特許法第17条の2第3項(なお、本件の出願日は平成5年11月17日であるから、「新規事項の追加」は特許異議申立理由とすることはできないので、以下、要旨変更か否かの判断を行う)、特許法第36条第4項および第6項に規定する要件を満たしていない、旨主張している。
また、特許異議申立人大関隆久は、甲第1号証として特開昭62-72516号公報、甲第2号証として特開平5-214111号公報、甲第3号証として特開平5-80343号公報、甲第4号証として「微粒子開発ハンドブック」第314〜322頁、甲第5号証として特開昭62-269933号公報、甲第6号証として特公平4-70335号公報を提示して、本件発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるか、または同発明に基いて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第1項または第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、本件発明は、甲第2号証乃至甲第6号証の記載に基いて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、さらに、本件出願は、明細書の記載に不備があり、特許法第36条第3項および第4項に規定する要件を満していない、旨主張している。
また、特許異議申立人ナトコペイント株式会社は、甲第1号証としてレオロジーハンドブック第230頁〜第231頁、第184頁 1965年丸善株式会社刊、甲第2号証として島津微小圧縮試験機MCTM/MCTEシリーズ取扱説明書,甲第3号証として圧縮試験成績書(愛知県工業技術センター)(写)、甲第4号証としてプラスチック大辞典1994年第260頁、第800頁、工業調査会刊、甲第5号証として特開平2-97504号公報、甲第6号証として特開平5-232480号公報、甲第7号証として高分子論文集Vol.50,No.7.P551-555 1993年7月高分子学会刊、甲第8号証として特開平4-313727号公報、甲第9号証として特開平5-80343号公報、甲第10号証として特開平5-2141111号公報、甲第11号証として得意先元帳(写)、甲第12号証としてナトコスペーサーHF-605分析結果成績書(写)を提示して、本件特許請求の範囲請求項1の記載、特に10%圧縮弾性率の値は不正確であり、また10%変形後の残存変位の値も正確さを欠くので、本件特許は特許法第36条4項および6項に規定する要件を満たしておらず、また同項にかかる発明は甲第5号証乃至甲第10号証の教唆から容易に想到出来るから特許法第29条2項に規定する要件を満たしておらず、更に本件特許は出願前に公然実施されていたものであるから特許法第29条1項に規定する要件を満たしておらず、したがって本件特許は取消されるべきである、旨主張している。
(引用例)
特許異議申立人触媒化成工業株式会社の提示した甲第1号証には、
「平均組成式RaSiOb(式中、Rは置換又は非置換の1価の炭化水素基を表わし、a及びbはそれぞれ1<a≦1.7、1<b<1.5及びa+2b=4の関係を満たす数である)で示される、平均粒子径が0.01〜100μmであり、粒子の形状が球状であるポリオルガノシロキサン微粒子。」(特許請求の範囲請求項1)、
「一般式R1Si(OR2)3・・・で示されるオルガノトリアルコキシシランと、一般式(R1)2Si(OR2)2・・・で示されるジオルガノジアルコキシシランとからなり、・・・部分ないし全加水分解して、・・・重縮合反応させて・・・ポリオルガノシロキサン微粒子の製造方法である。」(公報第3頁左下欄第16行〜第4ぺージ左上欄第3行)と記載されており、
同じく甲第1号証の2は、前記甲第1号証の実施例1を追試した実験報告書であり、まとめとして、
「甲第1号証の実施例1では、得られた粒子は
10%圧縮弾性率:764kg/mm2
残留変位 :測定できず
平均粒子径 :1.69μm
CV値 :11.18%
であった。」と記載されており、
同じく甲第2号証には、
直径が0.1〜100μmの範囲にあり、K値(10%圧縮変形率)が250〜700kgf/mm2(本件と同じ10%圧縮弾性率に換算すると、214〜599kgf/mm2)である微球体を液晶表示素子用スペーサーに用いることが開示されており(なお、甲第2号証は平成7年10月11日に公告された公報であり、本件出願時の公知文献ではない)、
同じく甲第3号証には、
金属アルコキシドを加水分解して得られた有機物を含む白色系粒子を200〜1000℃の温度で、熱処理することにより得られる表示装置用黒色系スペーサ粒子、及び、熱処理を不活性ガス雰囲気中で行うことが記載されており、さらに、金属アルコキシドとして、エチルシリケートが例示されており(なお、甲第3号証は平成7年9月6日に公告された公報であり、その公開公報は昭和63年4月20日に公開されているが、当該証拠自体は本件出願時の公知文献ではないが、)、
同じく甲第4号証には、
10%変位後の残留変位の一般的な測定法、すなわち反転荷重値まで圧縮負荷を与えたのち、原点荷重値まで除荷すること、設定上の反転荷重値の最小値が1gであることが記載されている。
また、特許異議申立人大関隆久の提示した甲第1号証は、取消理由において引用例1として通知したものであるから、上記(3)▲3▼(引用例)において記載した発明が記載されており、
同じく甲第2号証には、
「粒子の中心方向へ荷重をかけ、その粒子直径の10%が変形した時の圧縮弾性率が370kg/mm2より大きく900kg/mm2以下である請求項1記載の架橋重合体微粒子の製造方法。」(特許請求の範囲請求項2)と記載されており、
同じく甲第3号証は取消理由において引用例2として通知したものであるから、上記(3)▲3▼(引用例)において記載した発明が記載されており、
同じく甲第4号証には、「球状シリコーン微粒子の性質と応用」について記載されており、
「ここで紹介する球状シリコーン微粒子は三官能性単位からなるシリコーンレジンの微粒子であり、通常のシリコーンレジンが有機溶剤に可溶で、熱溶融するのに対して、球状シリコーン微粒子は緻密なシロキサン結合(≡Si-O-Si≡)を形成しすでに硬化した、溶剤不溶、熱不融の高分子微粒子である。」(第314頁左欄第13行〜第18行)、
「更に数μmからサブミクロンまでの粒子径に制御することができ」(第314頁右欄第8行〜第9行)、
「チッ素ガス雰囲気中での熱分解開始温度は、空気中での分解開始温度が420℃付近であるのに対して、約600℃と非常に高くなっている。」(第319頁左欄第6行〜第9行)と記載されており、
図1には、三官能形として、オルガノシルセスキオキサン(RSiO1.5)が示されており、
同じく甲第5号証には、
「アルキルシリケートの加水分解により調製された球状のシリカ微粒子から成る液晶表示板用スペーサ。」(特許請求の範囲)、
「上記のシリカ微粒子は、平均粒子径2.0μm、粒子径変動率8.0%の真球状であった。」(公報第3頁左欄第19行〜第20行)と記載されており、
同じく甲第6号証には、
「(a)メチルトリアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物・・・粒子の形状が各々独立したほぼ真球状であり、粒度分布が平均粒子径の±30%であり、かつ接触帯電量が-200〜-2000μC/gである真球状ポリメチルシルセスキオキサン粉末。」(特許請求の範囲請求項1)、
「200℃の乾燥器中で乾燥させた。」(公報第4頁右欄第29行〜第30行)と記載されており、実施例1乃至実施例9には粒子径が約0.9〜4.5μmであることが示されている。
また、特許異議申立人ナトコペイント株式会社の提示した甲第1号証には、
第230頁〜第231頁「ねんだんせい」の項に、「実際に存在する物質のほとんどすべては、おもに弾性的である場合にもひずみ速度に依存する粘性的性質を含み」、
「粘弾性の関与する現象では、粘性的挙動が含まれているため、現象の時間依存性が強く現れる。」と記載されており、
更に同証第184頁「タイムスケール」の項に、「粘弾性体にあっては、完全弾性体や理想流体と異なり、応力とひずみの関係には時間が入ってきてその関係は一義的でなくなる。」、
「線形弾性体を規定するものは弾性率や粘性率などの定数でなく時間または角振動数の関数としての上記の“物質関数”である。物質定数となるのはこれらの関数の極限値である。物質関数の変数としての、すなわち応力やひずみの測定にもちいた時間tと角振動数ωとを総称してタイムスケールという。」と記載されており、
同じく甲第2号証には、
第29頁に、
「試料:・粒径1〜50μmの粒子を一粒一粒圧縮することが可能」と記載されており、
第48頁「表7.1負荷速度定数と負荷速度、試験時間の関係」のMCTM/MCTE-200、201に、試験荷重は1gf〜2gf以下、2gf〜20gf以下、20gf〜200gf以下の3通りあり、試験荷重に対応して負荷速度の範囲が決まっており、負荷速度定数は10通りあることが示されており、
同じく甲第3号証には、
ナトコスペーサーHF-605、ナトコスペーサーHF-630及びミクロパールSPN-2063種類の粒子の荷重速度(負荷速度)と10%圧縮弾性率との関係を求めたところ、各粒子の10%圧縮弾性率は荷重速度0.007gf/secから1.44gf/secまでの変化に対して2倍以上変化することが示されており、
同じく甲第4号証には、
第260頁「elasticmodulas」の項に、
「このとき応力σと歪みεとの比例定数をEと定め弾性率という。E=σ/ε」と記載されており、
更に同証第800頁「strain」の項に、
「圧縮試験ではもとの長さ(L)と変形した長さ(l)より、ε=(l-L)/Lで表す。」と記載されており、
同じく甲第5号証には、
「加水分解可能なシリル基を有するビニル単量体の単独または二種以上と、該ビニル単量体と共重合可能な他のビニル単量体の単独または二種以上との共重合休中に含まれるシリル基を加水分解して架橋を生成させたことを特徴とする架橋重合体粒子。」(特許請求の範囲請求項1)、
「加水分解可能なシリル基とは下記の構造を有するものである。

式中Rは炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基から選ばれる2価の炭化水素基、Xは例えば一OCH3、一OC2H5等のアルコキシル基、―Cl、一Br等のハロゲン等の加水分解可能な基である。」(第2頁右下欄14行〜第3頁左上欄第4行)と記載されており、
同じく甲第6号証には、
「粒子表面を配向基板に対して付着性を有する付着層によって被覆した構成であって、該粒子表面と付着層とは共有結合によって結合されていることを特徴とする液晶スペーサ。」(特許請求の範囲)、
「上記粒子を洗浄後、酸あるいはアルカリ処理することによって粒子内部ではSi-O-Siのシロキサン結合の架橋、粒子表面ではシラノール基(Si-OH)が存在する架橋粒子Aが合成された。」(公報第3頁右欄第31行〜第34行)と記載されており、
同じく甲第7号証には、
「粒子径分布が同じでも、圧縮弾性率の高いスペーサーを用いた方がセル厚は変化しにくいことが明らかになった。」(第553頁 3.2.2項)と記載されており、
同じく甲第8号証には、
「粒子直径の10%が変位した時点の圧縮弾性率が370〜550kg/mm2であることを特徴とする液晶表示用スペーサ。」(特許請求の範囲請求項1)と記載されており、
同じく甲第9号証は、取消理由において引用例2として通知したものであるから、上記(3)▲3▼(引用例)において記載した発明が記載されており、
同じく甲第10号証は、特許異議申立人大関隆久の提示した甲第2号証と同じものであり、
「粒子の中心方向へ荷重をかけ、その粒子直径の10%が変形した時の圧縮弾性率が370kg/mm2より大きく900kg/mm2以下である請求項1記載の架橋重合体微粒子の製造方法。」(特許請求の範囲請求項2)と記載されており、
同じく甲第11号証には、
ナトコペイント株式会社が、1993年9月8日及び同年10月30日にナトコスペーサーHF-605を得意先コード3001202のヒロシマオプトに販売したことが示されており、
同じく甲第12号証には、
ナトコスペーサーHF-605のLot.3526の試料を発光分光分析したところ、多数のSiと微量のMg、Snが存在することが示されている。
A.公然実施について
特許異議申立人ナトコペイント株式会社は、本件発明は、本件出願前に製造・販売していたナトコスペーサーHF-605と同一である、旨主張しているので、これについて検討する。
a.当審において平成11年1月13日付けで概略以下のような審尋を行った。
「甲第3号証では、ナトコスペーサーHF-605を、株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機MCTM-201で試験したところ、荷重速度(単位gf/sec)が▲1▼0,007、▲2▼0.09、▲3▼0.48、▲4▼0.72、▲5▼1.44に対して、10%圧縮弾性率(単位kg/mm2)が▲1▼310、▲2▼320、▲3▼540、▲4▼520、▲5▼720、であることが示されているのみであり、また、甲第12号証では、ナトコスペーサーHF-605には発光分光分析の結果、Siと微量のMg及びSnが含まれていた、ことが示されているのみであるから、このナトコスペーサーHF-605が、何故本件特許第2698541号に係る発明の液晶表示用スペーサーと同一といえるのかが全く不明である。」
b.これに対して、ナトコペイント株式会社から、平成11年3月29日付けで回答書が提出された。
その概要は次のとおりである。
i).ナトコスペーサーHF-605のSi結合分析その2として、CPMAS NMRスペクトル及びMAS NMRスペクトルを測定し、ナトコスペーサーHF-605は、有機基中の少なくとも1個の炭素原子が直接ケイ素原子に化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンを主成分とする有機質一無機質複合体粒子であることを確定した。
ii).10%圧縮弾性率を求める際に、材質、寸法、予想される圧縮強度の範囲などの条件によって標準的に設定される圧縮速度はないから、荷重速度は任意に設定でき、甲第3号証のとおり、ナトコスペーサーHF-605の10%圧縮弾性率は、本件特許請求の範囲の値に含まれる。
iii).ナトコスペーサーHF-605の10%変形後の残留変位及び粒径については、測定・検査の結果、本件特許請求の範囲の値に含まれる。
c.まず、ナトコスペーサーHF-605の10%圧縮弾性率が本件発明の数値範囲に含まれるか否かについて検討する。
甲第3号証により、ナトコスペーサーHF-605の10%圧縮弾性率が本件発明の数値範囲に含まれるのは、荷重速度を0.48、0.72、1.44とした場合であり、逆に荷重速度を0,007、0.09とした場合には範囲から外れることは明らかであり、上記回答書の「微小圧縮測定時における荷重速度と10%圧縮強度相関グラフ」によれば、荷重速度と10%圧縮強度は略正比例関係にあることが解る。
また、島津微小圧縮試験機MCTM/MCTEシリーズ取扱説明書、第48頁「表7.1負荷速度定数と負荷速度、試験時間の関係」のMCTM/MCTE-200、201によれば、試験荷重は1gf〜2gf以下、2gf〜20gf以下、20gf〜200gf以下の3通りあり、試験荷重に対応して負荷速度の範囲が決まっており、負荷速度定数は10通りあることが示されている。
ところで、回答書によれば、ナトコスペーサーHF-605の残留変位測定の際に、1gfの荷重を負荷した場合、粒子の変形割合は25.5%であったことが示されている。
そして、本件明細書の「【0021】この発明でいう10%圧縮弾性率とは、下記測定方法により測定した値である。島津微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製MCTM-200)により、室温(25℃)において、試料台(材質:SKS平板)上に散布した試料粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイヤモンド)を用いて、粒子の中心方向へ一定の負荷速度で荷重をかけ、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させ、10%変形時の荷重と圧縮変位のミリメートル数を求める。求められた圧縮荷重、粒子の圧縮変位、粒子の半径を次式・・・に代入して計算された圧縮弾性率が10%圧縮弾性率である。その後、すぐに、負荷時と同じ速度で負荷を除き、最終的に荷重が0.1gとなるまで除荷を行い、最終的に荷重が0gとなるように荷重一変位曲線を接線に沿って外挿し、粒子になお残留する変形の大きさを求める。」という記載からみて、10%圧縮弾性率を求めるときの圧縮速度と、残留変位を求めるときの除荷速度は等しいこと、最大荷重は10%変位時の荷重であることは明らかである。
してみれば、ナトコスペーサーHF-605の10%圧縮弾性率を、本件発明と同様の手法により測定する場合には、試験荷重は2gf以下に設定するものと認められ、負荷速度は必然的に0.029gf/sec以下となるので、その10%圧縮弾性率は、荷重速度が0.09gf/secのときの320kg/mm2以下となり、本件発明の数値範囲外となる。
d.よって、他の構成要件を対比するまでもなく、本件発明は、ナトコスペーサーHFー605と同一ではないから、出願前公然実施された発明とはいえない。
B.その他の特許法第29条の判断について(対比・判断)
請求項1に係る発明(以下、第1発明という。)と甲各号証に記載された発明とを対比すると、甲各号証には 第1発明の構成要件である、「粒子を100-1000℃の範囲で熱処理してなるものであり、前記粒子の10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2、10%変形後の残留変位が0〜5%」である液晶表示板用スペーサーについて記載されていないし、示唆されてもいない。
そして、第1発明は、上記構成要件を具備することにより、明細書に記載の、
「電極基板表面の傷つけ、低温発泡の発生、画像ムラの発生、製造コストの上昇、諸表示性能の低下を招くことがなく、かつ、従来の有機質ポリマー粒子よりも散布個数を大幅に減らしても、厳密に一定の隙間距離を保持することができ、画質の優れた高性能の液晶表示板を作ることができる」という作用効果を奏する。
よって、第1発明は、甲各号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、請求項2に係る発明(以下、第2発明という。)は、第1発明の熱処理条件を限定したものであり、請求項3に係る発明(以下、第3発明という。)は、第1発明または第2発明のスペーサーを用いた液晶表示板に関する発明であるから、第2及び第3発明は、第1発明と同様に、甲各号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
C.特許法第36条の判断について
a.特許異議申立人触媒化成工業株式会社は、本件請求項1に記載の発明では、液晶表示板用スペーサーの10%変位後の残留変位が0〜5%であるとしているが、本件実施例1及び実施例5で使用している粒子の10%圧縮時の荷重は0.1g以下であり、本件明細書に記載の方法では残留変位は測定できないから、本件請求項には、特許を受けようとする発明が明確にされておらず、また、本件明細書は、当業者が容易に実施しうる程度に記載されていない、旨主張している。
これに関して、特許権者は、平成11年3月15日付けの特許異議意見書において、「試料1個で測定できる場合は1個で測定し、1個で測定できない場合には複数個の試料粒子を用いて測定した上で、その場合に得られた残留変位を粒子1個の残留変位とします」と意見を述べており、このように明細書には記載されていないが、当業者の技術常識を考慮すれば、該意見の内容は妥当なものと認められるから、本件明細書に、特許異議申立人の主張する記載不備がある、とすることはできない。
b.特許異議申立人大関隆久は、本件請求項1及び2に有機基の割合を規定すべきであるし、また熱処理について、熱分解を防止する条件が規定されるべきである、旨主張している。
しかしながら、本件明細書の【0024】には、「上記範囲における10%圧縮弾性率および残留変位の程度は、粒子中に占める有機基の割合を調節することにより達成される。」と記載されており、また、前記「微粒子開発ハンドブック」には、「チッ素ガス雰囲気中での熱分解開始温度は、空気中での分解開始温度が420℃付近であるのに対して、約600℃と非常に高くなっている。」と、熱分解開始温度は雰囲気により異なることが記載されているので、有機基の割合や熱処理温度は、目的とする10%圧縮弾性率および残留変位の程度、熱処理時の雰囲気に応じて適宜設定すればよいものと認められ、これらが請求項に記載されていないことを理由として、記載不備があるとすることはできない。
c.特許異議申立人ナトコペイント株式会社は、請求項1では、粒子の10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2であると限定されているが、圧縮弾性率は圧縮速度や粒径によって大きく支配されるところ、本件明細書には島津微小圧縮試験機MCTM-200により測定したことが記載されているのみで、負荷速度は記載されておらず、また、請求項1には10%圧縮弾性率を測定した際の粒径も規定されていないので、この限定は不確定であり、さらに、上記島津微小圧縮試験機は、粒径1〜50μmの粒子を圧縮することが可能と記載されているが、本件明細書には粒子径は通常0.5〜50μmとあり、粒径1μmに満たない粒子は測定出来ないし、更に本件明細書の残留変位測定方法では不正確である、旨主張している。
これに関して、特許権者は、平成10年12月15日付けの特許異議意見書において、「通常は、試料の種類や形状によって、適切な負荷速度の値あるいは範囲があり、特に断りがない限り、一般的な条件が採用されます。前記圧縮試験器の取扱説明書には、・・・負荷速度や負荷速度定数、試験荷重の設定方法やその組合せ条件・・・負荷速度の具体的設定方法が説明されています。したがって、試料の材質や寸法、予想される圧縮強度の範囲などの条件が判れば、標準的な負荷速度の値を求めることは、一般的常識事項です。」と意見を述べており、島津微小圧縮試験機の取扱説明書によれば、負荷速度は試験荷重に依存した範囲とすることが記載されており、前記した如く、本件発明では、残留変位の測定は、10%圧縮弾性率の測定に引き続いて行われ、試料が10%変位した時に荷重を反転するから、10%圧縮弾性率を求めるときの試験荷重は、該反転荷重であり、試料の材質、寸法、予想される圧縮強度などの条件によって決定されること、及びそのときの荷重速度も対応したある範囲に限定されることは明らかであり、明細書には具体的な負荷速度は記載されていないが、当業者の技術常識を考慮すれば、該意見の内容は妥当なものと認められ、また、平均粒子径は1〜50μmと訂正されており、この平均粒子径のすべての範囲で10%圧縮弾性率が所定の範囲に含まれると解され、さらに、残留変位の測定方法が試験機の取扱説明書に記載されている方法と異なっていても、明細書にその測定方法が特定されていれば、仮に精度に多少の問題があるとしても、記載不備であるとはいえないから、本件明細書が、特許法第36条に規定する要件を満たしていないとの特許異議申立人の主張は採用できない。
D.要旨変更の判断について
特許異議申立人触媒化成工業株式会社は、本件特許権者が、本件出願公開後の明細書【0021】欄および【0029】欄に行った補正は、出願時における明細書の記載範囲を越えたものである、旨主張している。
【0021】欄の補正は、出願時の記載が「最終的に荷重がゼロとなるまで除荷を行い」とあるのを、「最終的に荷重が0.1gとなるまで除荷を行い、最終的に荷重が0gとなるように荷重一変位曲線を接線に沿って外挿し」と補正したものであるが、本件発明が採用している試験機である島津微小圧縮試験機の取扱説明書によれば、負荷・除荷試験は、原点用荷重値として0.1gf以上を設定することが記載されており、上記補正内容は、出願時の明細書に記載されて事項から当業者に自明な事項を記載したものと認められる。
また、【0029】欄の補正は、粒子径の標準偏差の計算式を補正したものであるが、標準偏差の計算式が補正後のものであることは自明であり、上記補正は単なる誤記の訂正にすぎない。
したがって、上記本件明細書の補正は、要旨変更ではない。
(むすび)
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1乃至請求項3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1乃至請求項3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液晶表示板用スペーサーおよびこれを用いた液晶表示板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機基中の少なくとも1個の炭素原子が直接ケイ素原子に化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンを主成分とする有機質-無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーであって、
前記粒子が、下記一般式(1)
【化1】
R1mSi(OR2)4-m …(1)
(式中、R1は、置換基を有していても良い炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、および、炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基からなる群から選ばれる1価の基、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基、mは0〜3の整数を示す。mが2の場合、2個のR1は互いに異なってもよいし、同じでもよい。mが3の場合、3個のR1は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが2の場合、2個のOR2は互いに異なってもよいし、同じでもよい。4-mが3の場合、3個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが4の場合、4個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。)
で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解・縮合可能なシリコン化合物〔ただし、単独使用できる前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる化合物だけであり、2以上併用される前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる化合物と、式(1)におけるm=0で示される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる化合物との両方またはいずれか一方を含む必要がある。〕を含有する加水分解・縮合可能な金属化合物を加水分解し、縮合して得られる粒子を100〜1000℃の範囲で熱処理してなるものであり、
前記粒子の10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2、10%変形後の残留変位が0〜5%、平均粒子径が1〜50μmおよび粒子径の変動係数が20%以下であることを特徴とする液晶表示板用スペーサ-。
【請求項2】 熱処理が酸素濃度10容量%以下の雰囲気中で行われる請求項1記載の液晶表示板用スペーサー。
【請求項3】 電極基板間に介在させるスペーサーとして、請求項1または2記載のスペーサーが用いられてなる液晶表示板。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、粒子径が非常に揃っており、かつ、圧縮弾性率と残留変位が特定範囲にある液晶表示板用スペーサーに関する。この発明は、また、画像ムラ、TFTの断線による画素欠陥や低温発泡が起こりにくく、電極基板間に介在させるスペーサーの個数を少なくした液晶表示板に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示板(LCD:液晶表示素子とも言う)は、2枚の対向する電極基板間にスペーサーを介在させ、その隙間に液晶物質を挟み込んで構成されている。スペーサーは、液晶層の厚みを均一かつ一定に保つために使用され、液晶層中の面内スペーサーおよび周辺接着シール材中のシール部スペーサーとして使用されるものである。
【0003】
液晶表示板は、通常、2枚の対向する電極基板間に、シール部スペーサーを分散させた周辺シール材および面内スペーサーを挟持した状態で周辺シール材の硬化温度で両電極基板をホットプレスして固定する工程を経て作られる。
一般に、液晶表示板用スペーサーは非常に高価であるため、その使用量はできるだけ少量であることが望ましい。特に、液晶物質と直接接触する面内スペーサーの使用に際しては、液晶表示板の表示性能に悪影響を及ぼすようなイオンや分子等の、スペーサー内部から液晶中への溶出を最小限にするために、その使用量はできる限り少なくしなければならない。
【0004】
液晶表示板の実用に際して要求される表示性能として、一般に、高速応答性、高コントラスト性、広視野角性等が挙げられる。これら諸性能の実現のためには、液晶層の厚み、つまり、2枚の電極基板の隙間距離を厳密に一定に保持しなければならない。
このような要望に応じた液晶表示板用スペーサーとしては、ゾル-ゲル法で製造したシリカ粒子(特開昭62-269933号公報)、前記シリカ粒子を焼成したもの(特開平1-234826号公報)、スチレン系単量体等を懸濁重合させて得られるスチレン系ポリマー粒子等があり、いずれも、粒子径分布が狭く、粒子径が非常に揃った球状粒子である。
【0005】
隙間距離を厳密に一定にするためには、そのように粒子径の揃った粒子をスペーサーとして用いるだけでなく、更に、隙間距離の微調節を行う必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術では、次のような問題点があり、粒子の硬さや機械的復元性を制御し得る液晶表示板用スペーサーを得ることはできなかった。
ゾル-ゲル法で製造されたシリカ粒子を焼成したものは、変形性が乏しく、素材として非常に硬いため、液晶表示板を作製するためにプレスを行うと基板上の電極等の蒸着層、配向膜、カラーフィルター等のコート層に物理的損傷を与え、画像ムラやTFTの断線による画素欠陥が起こる。また、このシリカ焼成物粒子と液晶との熱膨張係数の差が大きいため、そのシリカ焼成物粒子を用いた液晶表示板が、たとえば、マイナス40℃の低温環境に曝された場合、液晶が収縮するほどには粒子が収縮せず、液晶層と電極基板との間に空隙が生じて表示機能が全く作動しないという、いわゆる低温発泡の問題を生じる。
【0007】
ゾル-ゲル法で製造されたシリカ粒子は、シリカ焼成物粒子と比べて柔らかいので、上記プレスにより変形しても上記物理的損傷を起こさない。しかし、この未焼成のシリカ粒子は、機械的復元性に劣るため、隙間距離が不均一になり画像ムラを発生させやすい。これは、上記プレスによるスペーサーの変形の程度が不均一であるため、スペーサーが機械的復元性に劣っていると、プレス後のスペーサーの粒子径が不均一になるからである。しかも、未焼成のシリカ粒子は、シリ力焼成物粒子と同様に低温発泡の問題を起こす。
【0008】
スチレン系ポリマー粒子は、有機粒子であり素材として非常に柔らかいがゆえに、電極基板隙間距離の微調節のためのプレス工程において個々の粒子に加わる圧力を減らして変形を少なくするために、散布個数を多くせざるを得ない。これは、少ない散布個数でプレス工程を行うと、個々の粒子に加わる圧力が増すために変形量が大きくなりすぎて、プレス後の電極基板隙間距離を均一に一定とするための機械的復元性が得られないからである。このため、製造コストの上昇を招くばかりでなく、画像を形成しない部分の面積が結果として増加し、さらに、イオン、分子等の不純物がスペーサー内部から液晶層中へ溶出する量も増加することにより、コントラストの低下、ざらつきの増加等の諸表示品位を低下させる原因となる。
【0009】
この発明は、前述の諸問題を回避するために必要な、シリカ焼成物粒子と有機粒子との間の硬さを持ち、かつ、均一に一定の隙間距離を保持するために必要な機械的復元性をあわせ持った液晶表示板用スペーサーを提供することを課題とする。
この発明は、また、そのような液晶表示板用スペーサーを用いることにより、電極基板の製造時の物理的損傷、低温発泡、画像ムラ、コントラストの低下、ざらつきが起こりにくくなった液晶表示板を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記課題を解決するために、有機基中の少なくとも1個の炭素原子が直接ケイ素原子に化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンを主成分とする有機質-無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーであって、
【0011】
前記粒子が、下記一般式(1)
【0012】
【化2】
R1mSi(OR2)4-m …(1)
【0013】
(式中、R1は、置換基を有していても良い炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、および、炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基からなる群から選ばれる1価の基、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基、mは0〜3の整数を示す。mが2の場合、2個のR1は互いに異なってもよいし、同じでもよい。mが3の場合、3個のR1は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが2の場合、2個のOR2は互いに異なってもよいし、同じでもよい。4-mが3の場合、3個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが4の場合、4個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。)
【0014】
で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解・縮合可能なシリコン化合物〔ただし、単独使用できる前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる化合物だけであり、2以上併用される前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる化合物と、式(1)におけるm=0で示される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる化合物との両方またはいずれか一方を含む必要がある。〕を含有する加水分解・縮合可能な金属化合物を加水分解し、縮合して得られる粒子を100〜1000℃の範囲で熱処理してなるものであり、
【0015】
前記粒子の10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2、10%変形後の残留変位が0〜5%、平均粒子径が1〜50μmおよび粒子径の変動係数が20%以下であることを特徴とする液晶表示板用スペーサーを提供する。
【0016】
この発明は、また、上記課題を解決するために、電極基板間に介在させるスペーサーとして、この発明の液晶表示板用スペーサーが用いられてなる液晶表示板を提供する。
【0017】
まず、この発明のスペーサーについて説明する。
この発明でいうポリシロキサンとは、次式(2)
【0018】
【化3】

【0019】
で表されるシロキサン単位が連続的に化学結合して、三次元のネットワークを構成した化合物と定義される。
この発明でいう有機基とは、1〜10個、好ましくは1〜5個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素原子が1個以上の水素原子に直接化学結合した、1価、2価および3価の基から選ばれる少なくとも1つである。前記有機基としては、置換基を有していても良い炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、および、炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基からなる群から選ばれる1価の基が好ましく、置換基を有していても良い炭素数1〜5のアルキル基、および、炭素数2〜5の不飽和脂肪族残基(たとえば、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロピニル基)からなる群から選ばれる1価の基がより好ましい。これらの有機基は、これら以外の有機基と比べて安価で入手しやすく、取り扱いが容易であるなどの利点を有する。ここで、アルキル基の有しうる置換基は、たとえば、グリシドキシ基、メルカプト基、アミノ基などであり、アルキル基の水素原子の1個から全部を置換してもよく、好ましくは水素原子の1〜3個を置換することである。前記有機基の具体例は、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、3-グリシドキシプロピル、3-メルカプトプロピル、3-(2-アミノエチルアミノプロピル)、フェニルなどである。
この発明でいう有機ケイ素とは、有機基中の少なくとも1個の炭素原子が上記シロキサン単位に含まれる少なくとも1個のケイ素原子と直接化学結合したものを指す。有機基は、ケイ素原子1個あたり、1〜3個化学結合することができる。
【0020】
この発明でいう有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンを主成分とする有機質-無機質複合体粒子は、上記式(2)で表される無機質の構成単位と有機ケイ素とを同時に有するため、無機質の特徴である大きな硬さと、有機質の特徴である高い機械的復元性を同時に兼ね備えた粒子である。ここで、硬さ、および、機械的復元性を示す尺度としては、各々、圧縮弾性率、および、残留変位があり、詳細は後述する。前述の10%圧縮弾性率、および、10%変形後の残留変位の範囲を満たすためには、有機質-無機質複合体粒子中の有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンの割合が70重量%以上であることが好ましく、100重量%であることがより好ましい。有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン以外の成分としては、たとえば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、リン、チタン、ジルコニウム等の酸化物等が挙げられる。
【0021】
この発明でいう10%圧縮弾性率とは、下記測定方法により測定した値である。島津微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製MCTM-200)により、室温(25℃)において、試料台(材質:SKS平板)上に散布した試料粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイヤモンド)を用いて、粒子の中心方向へ一定の負荷速度で荷重をかけ、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させ、10%変形時の荷重と圧縮変位のミリメートル数を求める。求められた圧縮荷重、粒子の圧縮変位、粒子の半径を次式
【0022】
【数1】

【0023】
〔ここで、E:圧縮弾性率(kg/mm2)
F:圧縮荷重(kg)
K:粒子のポアソン比(定数、0.38)
S:圧縮変位(mm)
R:粒子の半径(mm)
である。〕
に代入して計算された圧縮弾性率が10%圧縮弾性率である。その後、すぐに、負荷時と同じ速度で負荷を除き、最終的に荷重が0.1gとなるまで除荷を行い、最終的に荷重が0gとなるように荷重-変位曲線を接線に沿って外挿し、粒子になお残留する変形の大きさを求める。これを粒子径に対する百分率として残留変位を算出する。この操作を異なる3個の粒子について行い、その平均値を粒子の10%圧縮弾性率、残留変位とし、それぞれ、粒子の硬さ、機械的復元性の尺度とする。
【0024】
従来のスペーサー粒子の10%圧縮弾性率を上記測定方法により測定した場合、シリカ焼成物粒子は4400kg/mm2、スチレン系ポリマー粒子は300kg/mm2であった。
これに対し、この発明のスペーサーは、10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2の範囲、好ましくは550〜2500kg/mm2の範囲、更に好ましくは550〜2000kg/mm2の範囲で任意の硬さに調整されている。10%圧縮弾性率が前記範囲を下回ると、前述のように、スペーサー粒子の散布個数の増加による製造コストの上昇、コントラストの低下、ざらつきの増加等の問題があり、上回ると、前述のように、基板上の接着層、コート層への物理的損傷や低温発泡等の問題がある。
【0025】
また、10%変形後の残留変位については、未焼成のシリカ粒子は残留変位が8%であったが、この発明のスペーサーは、0〜5%の範囲、好ましくは0〜4%の範囲の残留変位を有する機械的復元性に優れた複合体粒子である。10%変形後の残留変位が前記範囲を上回ると前述のように画像ムラが起こるという問題がある。
【0026】
上記範囲における10%圧縮弾性率および残留変位の程度は、粒子中に占める有機基の割合を調節することにより達成される。たとえば、有機基の割合を高めると、10%圧縮弾性率と残留変位が小さくなり、有機基の割合を低くすると、10%圧縮弾性率と残留変位が大きくなる。
【0027】
この発明のスペーサー中に占める有機基の割合は、有機基の量を全炭素原子の重量で表して、通常、5〜17重量%であり、好ましくは7〜17重量%である。その理由は、前記範囲よりも有機基が少ない場合には圧縮弾性率や残留変位が大きくなり、粒子が硬くなりすぎたり、あるいは、充分な機械的復元性が得られず、また、多い場合には逆に圧縮弾性率が小さくなりすぎ、必要以上に柔らかい粒子となるためである。有機基の量が前記の範囲である場合に、前述の諸問題の回避のために、より効果的な硬さ、および、機械的復元性が得られる。
【0028】
この発明のスペーサーの平均粒子径は、目的とする隙間距離の大きさによって任意に製造することができるが、通常、1〜50μmであり、1〜20μmであることが好ましく、1〜15μmであることがより好ましい。前記範囲を外れると実用上の液晶表示板の隙間距離を達成できず、通常、スペーサーとして用いられない領域である。
この発明のスペーサーの粒子径の変動係数は、隙間距離の均一性の面から、20%以下であり、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下である。前記上限値を上回ると隙間距離の均一性が低下して画像ムラを起こしやすくなる。粒子径の変動係数は次式
【0029】
【数2】

【0030】
で定義される。
この発明では、平均粒子径と粒子径の標準偏差は、電子顕微鏡撮影像の任意の粒子200個の粒子径を実測して下記の式より求めた。
【0031】
【数3】

【0032】
次に、この発明の液晶表示板用スペーサーの製造方法を説明する。
この発明に用いる、前記一般式(1)で表される化合物は、加水分解性基を1〜4個有するものであり、加水分解性基としては、水酸基、炭素数1〜5個のアルコキシ基、炭素数2〜5個のアシルオキシ基から選ばれる1価の基であり、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、アセトキシ基である。これらの加水分解性基は、水により加水分解し、さらに、縮合することによりポリシロキサンの生成が可能であるためこの発明に使用される。前記一般式(1)で表される化合物は、m=1〜3の場合、上述の有機基(または、上述の有機ケイ素)を有しており、生成する複合体粒子に有機基を導入するために使用される。
【0033】
この発明に用いる、前記一般式(1)で表される化合物の具体例は、たとえば、次のとおりである。
m=0で示される化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン化合物;テトラアセトキシシラン等のテトラアシルオキシシラン化合物等である。
【0034】
m=1で示される化合物は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン化合物、オルガノトリアセトキシシラン化合物等である。
【0035】
m=2で示される化合物は、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシ-3-グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジフェニルシランジオール等のジオルガノジアルコキシシラン化合物等である。
m=3で示される化合物は、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、アセトキシトリメチルシラン、トリメチルシラノール等のトリオルガノアルコキシシラン等である。
【0036】
前記一般式(1)で表される化合物としては、中でも、オルガノトリアルコキシシラン化合物、テトラアルコキシシラン化合物がより好ましい原料である。
また、他の加水分解、縮合可能なシリコン化合物としては、前記一般式(1)で表される化合物の誘導体がある。一例として、一部の加水分解性基がカルボキシル基、β-ジカルボニル基や他のキレート化合物を形成しうる基で置換された化合物、あるいは、これらシリコン化合物またはキレート化合物を部分的に加水分解し縮合して得られる低縮合物がある。
【0037】
以上述べたような加水分解・縮合可能なシリコン化合物は、一種単独で、または、二種以上を混合して原料(ここでは、加水分解・縮合可能な金属化合物)として使用することができる。
単独使用できる前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる化合物だけであり、単独使用ではこの場合に限り、この発明のスペーサーが得られる。
【0038】
2以上併用される前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる化合物と、式(1)におけるm=0で示される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる化合物との両方またはいずれか一方を含む必要がある。2以上の併用ではこの場合に限り、この発明のスペーサーが得られる。この場合の、一般式(1)におけるmが0、1、2、3で示される各シリコン化合物、および、それらの誘導体の混合比率は、混合後の原料の平均組成が下記一般式(3)におけるnが0.5〜1になるように決定されることが好ましい。
【0039】
【化4】
R3nSi(OR4)4-n …(3)
【0040】
(式中、R3は直接ケイ素原子に結合する炭素原子を有する有機基の平均組成、R4は水素原子、アルキル基、アシル基から選ばれる少なくとも1つの1価の基の平均組成を示す。)
一般式(1)におけるmが2で示されるシリコン化合物、mが3で示されるシリコン化合物、および、それらの誘導体から選ばれる少なくとも1つのみを原料として用いる場合、あるいは、mが0で示されるシリコン化合物およびその誘導体から選ばれる少なくとも1つのみを原料として用いる場合には、この発明のスペーサーは得られない。
【0041】
この発明のスペーサーを得るために使用される加水分解・縮合可能な金属化合物としては、前述の有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン成分の原料となる、前記した一般式(1)で表される化合物およびその誘導体から選ばれる加水分解・縮合可能なシリコン化合物だけが使用されてもよいし、あるいは、前記加水分解・縮合可能なシリコン化合物と、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、リン、チタン、ジルコニウムなどの有機金属化合物または無機化合物から選ばれる加水分解・縮合可能な他の金属化合物とを共存せしめたものが使用されてもよい。これらの割合は、複合体粒子中に占める前記ポリシロキサンの割合が70重量%以上となるようにして決定されることが好ましい。
【0042】
上記した原料の加水分解・縮合可能な金属化合物は、水を含む溶媒中で加水分解され、縮合される。加水分解と縮合は、一括、分割、連続等、任意の方法を採ることができる。加水分解や縮合させるにあたり、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の触媒を用いてもよい。また、溶媒中には、水や触媒以外の有機溶剤が存在していてもよい。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエ一テル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が単独で、または、混合して用いられる。
【0043】
加水分解と縮合は、たとえば、上記した原料の加水分解・縮合可能な金属化合物またはその有機溶剤溶液を水を含む溶媒に添加し、0〜100℃、好ましくは0〜70℃の範囲で30分〜100時間攪拌することによって行われる。
また、上記のような方法により得られた複合体粒子を、種粒子として予め合成系に仕込んでおき、上記原料を添加して該種粒子を成長させていっても良い。
【0044】
このようにして原料の加水分解・縮合可能なシリコン化合物を含む加水分解・縮合可能な金属化合物を、水を含む溶媒中で適切な条件の下で加水分解、縮合させることにより、球形で、しかも、粒子径分布の非常にシャープな複合体粒子として析出し懸濁体となる。ここで、適切な条件とは、たとえば、得られる懸濁体に対して、原料濃度については20重量%以下、水濃度については50重量%以上、触媒濃度については10重量%以下が好ましく用いられる。
【0045】
生成する複合体粒子の平均粒子径は、水濃度、触媒濃度、有機溶剤濃度、原料濃度、原料の添加時間、温度、種粒子の濃度を、それぞれ、50〜99.99重量%、0.01〜10重量%、0〜50重量%、0.1〜30重量%、0.001〜500時間、0〜100℃、0〜10重量%に設定することにより、上述のスペーサーの有する平均粒子径の範囲内にすることができる。生成する複合体粒子の粒子径の変動係数は、水濃度、触媒濃度、有機溶剤濃度を、それぞれ、上記範囲内に設定することにより、上述のスペーサーの有する、粒子径の変動係数の範囲内にすることができる。
【0046】
ついで、このようにして生成した複合体粒子を濾過、遠心分離、減圧濃縮等の従来公知の方法を用いて上記懸濁体より単離した後、100℃以上、1000℃以下の温度、好ましくは300℃以上、900℃以下の温度で乾燥および焼成のための熱処理を施すことにより、適当な硬さおよび機械的復元性を持つ有機質-無機質複合体粒子であるこの発明のスペーサーが得られる。この複合体粒子は、有機基中の少なくとも1個の炭素原子が直接ケイ素原子に化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンを主成分とする。100℃より低い温度での熱処理では、前記式(2)で示されるシロキサン単位中に存在する、下式(4)
【0047】
【化5】

【0048】
で表されるシラノール基同士の脱水縮合反応が充分に起こらないため、必要な硬さが得られない、すなわち、粒子の10%圧縮弾性率が350kg/mm2以上、かつ、10%変形後の残留変位が5%以下にならない。また、1000℃より高い温度での熱処理では有機基の分解が顕著となるため必要な機械的復元性が得られない、すなわち、粒子の10%変形後の残留変位が0〜5%にならないし、しかも、硬すぎて粒子の10%圧縮弾性率が3000kg/mm2を越えてしまう。更に、熱処理する際の雰囲気は何ら制限なく用い得るが、有機基の分解を抑制し、必要な機械的復元性を得るためには、雰囲気中の酸素濃度が10容量%以下である場合がより好ましい。熱処理温度が350℃〜1000℃の範囲だと、上記本発明のスペーサーを得るためには熱処理する際の雰囲気中の酸素濃度が10容量%以下であることが好ましく、熱処理温度が100〜350℃の範囲だと、空気中でも上記本発明のスペーサーが生成する。
【0049】
本発明のスペーサーをつくる場合、上述の原料の種類、量、熱処理温度・時間・雰囲気中の酸素濃度を選定することによって複合体粒子中の有機基の割合を前述の範囲で任意に製造しうる。
加水分解や縮合時や熱処理時に、前述したような反応性基を持つ加水分解・縮合可能なシリコン化合物と反応して化学結合し得る別の化合物を共存させてもよい。この場合、たとえば、従来公知の染料、顔料等の着色性化合物を共存させてもよい。
【0050】
上記のようにして得られたこの発明の液晶表示板用スペーサーは、電極基板上への散布性を向上させるために、または、該スペーサー表面での液晶物質の異常配向を抑制するために、または、電極基板上において該スペーサーが移動しないように固定するために、または、他の目的で、カップリング剤による表面改質、前述の有機金属化合物または無機化合物による表面改質、他の有機化合物による表面改質等従来公知の表面改質処理を施してスペーサーとして使用してもよい。たとえば、特開昭62-269933号公報に記載された表面処理方法が採用される。この公報では、ゾル-ゲル法で製造されたシリカ粒子を液晶表示板用スペーサーに応用するに際し、スペーサーの電極基板上への散布性を向上させるために、または、スペーサー表面での液晶物質の異常配向の発生を抑制するために、アルコール類、カップリング剤等でスペーサーの表面処理をしている。
【0051】
得られたこの発明の液晶表示板用スペーサーを構成する複合体粒子中のSi-C結合およびシロキサン単位は、FT-IR、NMR、ESCAなど従来公知の方法で確認され、また、複合体粒子中に占める有機基の割合は、元素分析装置により全炭素原子の割合として定量的に測定される。
この発明の液晶表示板は、従来の液晶表示板において、従来のスペーサーの代わりに、この発明の液晶表示板用スペーサーを電極基板間に介在させたものであり、同スペーサーの粒子径と同じかまたはほぼ同じ隙間距離を有する。使用されるスペーサーの量は、通常40〜100個/mm2、好ましくは40〜80個/mm2と、従来の有機質粒子スペーサーに比べると10%程度少なくなっており、画像を形成しない部分の面積が少なくなり、また、イオンや分子等の不純物がスペーサー内部から液晶層中へ溶出する量も減少する。このため、コントラストが高くなり、ざらつきが減り、表示品位が向上した液晶表示板が作製できる。
【0052】
この発明の液晶表示板には、電極基板、シール材、偏向板、反射板など、スペーサー以外のものは従来と同様のものが同様のやり方で使用することができる。
液晶物質としては、従来より用いられているものでよく、たとえば、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキセン系などの液晶が使用できる。
【0053】
この発明において、スペーサーとしてこの発明の液晶表示板用スペーサーを用いた液晶表示板の作製方法としては、この発明のスペーサーを2枚の電極基板のうちの一方の電極基板に湿式法または乾式法により均一に散布したものに、この発明のスペーサーをエポキシ樹脂等の接着シール材に分散させた後、もう一方の電極基板の接着シール部分にスクリーン印刷などの手段により塗布したものを載せ、適度の圧力を加え、100〜180℃の温度で1〜60分間の加熱、または、照射量40〜300mJ/cm2の紫外線照射により、接着シール材を加熱硬化させた後、液晶を注入し、注入部を封止して、液晶表示板を得る方法を挙げることができるが、液晶表示板の作製方法によってこの発明が限定されるものではない。
【0054】
この発明の液晶表示板は、従来のものと同じ用途、たとえば、テレビ、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサーなどの画像表示素子として使用される。
【0055】
【作用】
この発明のスペーサーは、上記ポリシロキサンを主成分とする有機質-無機質複合体粒子からなり、上記式(2)で表される無機質の構成単位と有機ケイ素とを同時に有するため、無機質の特徴である大きな硬さと、有機質の特徴である高い機械的復元性を同時に兼ね備えた粒子である。すなわち、この複合体粒子は、硬さを示す尺度として10%圧縮弾性率350〜3000kg/mm2と、機械的復元性を示す尺度として10%変形後の残留変位0〜5%とを有し、隙間距離として好適な平均粒子径1〜50μmを有し、粒子径の変動係数が20%以下と粒子径の揃った均一な粒子である。
【0056】
しかも、この発明のスペーサーを構成する粒子は、一般式(1)
【0057】
【化6】
R1mSi(OR2)4-m …(1)
【0058】
(式中、R1、R2、mは上述されている。)
で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解、縮合可能なシリコン化合物〔ただし、単独使用できる前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる化合物だけであり、2以上併用される前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる化合物と、式(1)におけるm=0で示される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる化合物との両方またはいずれか一方を含む必要がある。〕を含有する加水分解・縮合可能な金属化合物を加水分解し、縮合して得られる粒子を100〜1000℃の範囲で熱処理してなるものであるので、無機質の特徴である大きな硬さと、有機質の特徴である高い機械的復元性とを同時に兼ね備え、隙間距離として好適な粒子径を有し、粒子径が揃った均一な粒子である。
【0059】
この発明の液晶表示板は、電極基板の間にこの発明の液晶表示板用スペーサーが介在しているので、製造時のプレスによる物理的損傷、低温発泡、画像ムラを起こしにくい。しかも、電極基板間に介在するスペーサーの個数が減少しているので、画像を形成しない部分の面積が減り、また、不純物の液晶層への溶出量も減る。このため、コントラストの向上、ざらつきの減少など表示品位の改善が図られる。
【0060】
【実施例】
以下に、この発明の実施例と、この発明の範囲を外れた比較例とを示すが、この発明は下記実施例に限定されない。
下記実施例中の液晶表示板は、以下の方法により作製した。図1にみるように、まず、300mm×345mm×1.1mmの下側ガラス基板11上に電極(たとえば、透明電極)5、ポリイミド配向膜4を形成した後、ラビングを行ってなる下側電極基板110に、メタノール10容量部、イソプロパノール40容量部、水50容量部の混合溶媒中にこの発明のスペーサ-(この場合、面内スペーサー)8が1重量%となるように均一に分散させたものを1〜10秒間散布した。次に、エポキシ樹脂接着シール材2中にこの発明のスペーサー(この場合、シール部スペーサー)3が30容量%となるように分散させたものを、300mm×345mm×1.1mmの上側ガラス基板12上に電極(たとえば、透明電極)5とポリイミド配向膜4を形成した後にラビングを行ってなる上側電極基板120の接着シール部分にスクリーン印刷した。最後に、上下側電極基板120,110を電極5,5、配向膜4,4がそれぞれ対向するように、この発明のスペーサ-8を介して貼り合わせ、4kg/cm2の圧力を加え、150℃の温度で30分間加熱し、接着シール材2を加熱硬化させた後、2枚の電極基板120,110の隙間を真空とし、その後、大気圧とすることにより、注入部より、作製する液晶表示板の種類に応じてビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系などの液晶物質を混合した液晶7を隙間が液晶7で充満するまで注入し、注入部を封止し、上下ガラス基板12,11の外側にPVA(ポリビニルアルコール)系偏光膜6を貼り付けて液晶表示板とした。
【0061】
得られた液晶表示板の評価方法は、いずれも、画像表示状態において、低温発泡についてはマイナス45℃で1000時間保持後の画像表示の有無を、画像ムラ、画素欠陥については室温(25℃)におけるそれらの有無をそれぞれ目視により観察して行った。
(実施例1)
攪拌機、滴下口および温度計を備えた2リットルのガラス製反応器中で、メタノール307重量部、25%アンモニア水6重量部、水1225重量部を均一に混合した。この混合液を20±0.5℃に調整して100rpmで均一に攪拌しながら、メチルトリメトキシシラン60重量部を滴下口より6時間かけて滴下した。滴下後も1時間均一に攪拌を続け、加水分解、縮合を行い、メチルトリメトキシシランの縮合体水和物微粒子の懸濁体(A)を得た。この懸濁体(A)を濾過により固液分離し、得られたケーキにメタノールによる洗浄を3回繰り返して行い、得られた固形分粉体を真空乾燥器中で100℃で3時間乾燥した後、窒素雰囲気中で350℃で3時間の熱処理を施して、平均粒子径1.81μm、変動係数7.6%の有機質-無機質複合体粒子を得た。
【0062】
得られた複合体粒子の硬さと機械的復元性を前述の方法により評価したところ、10%圧縮弾性率は711kg/mm2、10%変形後の残留変位は2.5%であった。また、FTIRにより複合体粒子中にSi-CH3結合とシロキサン単位の存在が確認された。更に、元素分析による複合体粒子中の有機基の割合は、有機基の量を全炭素原子の重量で表して13.3重量%であった。
【0063】
この複合体粒子を用いて、公知の方法によりB5版大の強誘電性液晶表示板を作製したところ、現存する有機質粒子スペーサー(株式会社日本触媒製エポスターGP-H)に対して散布個数を10%以上減少させることができ、また、シリカ焼成物粒子やゾル-ゲル法による未焼成のシリカ粒子を用いたときに生じる低温発泡も画像ムラも生じない液晶表示板が作製できた。
【0064】
(実施例2)
実施例1において、メタノール307重量部の代わりにメタノール154重量部およびn-ブタノール153重量部を使用したこと、350℃で3時間の熱処理の代わりに750℃で1時間の熱処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、平均粒子径6.84μm、変動係数5.9%の有機質-無機質複合体粒子を得た。
【0065】
得られた複合体粒子の10%圧縮弾性率は750kg/mm2、10%変形後の残留変位は3.1%であった。また、FTIRにより複合体粒子中にSi-CH3結合とシロキサン単位の存在が確認され、元素分析による複合体粒子中の有機基の割合は、有機基の量を全炭素原子の重量で表して12.1重量%であった。
この複合体粒子を用いて公知の方法によりB5版大のSTN(Super Twisted Nematicの略称)型液晶表示板を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【0066】
(実施例3)
実施例1において、メタノール307重量部の代わりにメタノール154重量部およびn-ブタノール153重量部を使用したこと、メチルトリメトキシシラン60重量部の代わりにテトラエトキシシラン17重量部およびメチルトリメトキシシラン43重量部を使用したこと、350℃で3時間の熱処理の代わりに600℃で2時間の熱処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、平均粒子径4.47μm、変動係数6.8%の有機質-無機質複合体粒子を得た。ここで、メチルトリメトキシシラン80モル%、テトラエトキシシラン20モル%であるので、上記式(3)におけるnは0.8である。
【0067】
得られた複合体粒子の10%圧縮弾性率は1606kg/mm2、10%変形後の残留変位は4.7%であった。また、FTIRにより複合体粒子中にSi-CH3結合とシロキサン単位の存在が確認され、元素分析による複合体粒子中の有機基の割合は、有機基の量を全炭素原子の重量で表して9.2重量%であった。
この複合体粒子を用いて公知の方法によりB5版大のTFT(Thin Film Transistorの略称)型液晶表示板を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られ、かつ、画素欠陥も認められなかった。
【0068】
(実施例4)
実施例2において、窒素雰囲気中での750℃で1時間の熱処理の代わりに窒素95容量%、酸素5容量%の混合雰囲気中での450℃で2時間の熱処理を行ったこと以外は実施例2と同様にして、平均粒子径6.15μm、変動係数6.7%の有機質-無機質複合体粒子を得た。
【0069】
得られた複合体粒子の10%圧縮弾性率は1440kg/mm2、10%変形後の残留変位は3.8%であった。また、FTIRにより複合体粒子中にSi-CH3結合とシロキサン単位の存在が確認され、元素分析による複合体粒子中の有機基の割合は、有機基の量を全炭素原子の重量で表して10.1重量%であった。
この複合体粒子を用いて公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、実施例2と同様の結果が得られた。
【0070】
(実施例5)
実施例1において、メタノール307重量部の代わりにメタノール154重量部およびn-ブタノール153重量部を使用したこと、メチルトリメトキシシラン60重量部の代わりにエチルトリメトキシシラン60重量部を使用したこと、350℃で3時間の熱処理の代わりに750℃で3時間の熱処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、平均粒子径1.97μm、変動係数6.9%の有機質-無機質複合体粒子を得た。
【0071】
得られた複合体粒子の10%圧縮弾性率は811kg/mm2、10%変形後の残留変位は3.2%であった。また、FTIRにより複合体粒子中にSi-CH2-結合とシロキサン単位の存在が確認され、元素分析による複合体粒子中の有機基の割合は、有機基の量を全炭素原子の重量で表して12.0重量%であった。
この複合体粒子を用いて公知の方法によりB5版大の強誘電性液晶表示板を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【0072】
(実施例6)
実施例3において、600℃で2時間の熱処理の代わりに、空気中で200℃で5時間の熱処理を行ったこと以外は実施例3と同様にして、平均粒子径4.55μm、変動係数6.8%の有機質-無機質複合体粒子を得た。
得られた複合体粒子の10%圧縮弾性率は630kg/mm2、10%変形後の残留変位は2.3%であった。また、FTIRにより複合体粒子中にSi-CH3結合とシロキサン単位の存在が確認され、元素分析による複合体粒子中の有機基の割合は、有機基の量を全炭素原子の重量で表して14.3重量%であった。
【0073】
この複合体粒子を用いて公知の方法によりB5版大のTFT型液晶表示板を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られ、かつ、画素欠陥も認められなかった。
(比較例1)
実施例2において、750℃で1時間の熱処理の代わりに80℃で2時間の熱処理を行ったこと以外は実施例2と同様にして有機質-無機質複合体粒子を得た。
【0074】
得られた複合体粒子の10%圧縮弾性率は312kg/mm2、10%変形後の残留変位は2.0%であった。また、元素分析による複合体粒子中の有機基の割合は、有機基の量を全炭素原子の重量で表して18重量%であった。
この複合体粒子を用いて公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、現存する有機質ポリマー粒子スペーサーと同等の散布個数が必要であった。
【0075】
(比較例2)
実施例3において、600℃で2時間の熱処理の代わりに、1150℃で1時間の熱処理を行ったこと以外は実施例3と同様にして粒子を得た。
得られた粒子の10%圧縮弾性率は3380kg/mm2、10%変形後の残留変位は6.4%であった。また、元素分析による粒子中の有機基の割合は、有機基の量を全炭素原子の重量で表して1重量%であった。
【0076】
この粒子を用いて公知の方法によりB5版大のTFT型液晶表示板を作製したところ、基板上のTFTの断線による画素欠陥が生じ、かつ、粒子の機械的復元性が充分でないため画像のムラが生じた。
上記実施例で得られた液晶表示板の面内に散布された、この発明のスペーサー個数は、散布面を縦、横それぞれ3等分して合計9つの区域のそれぞれにおいて任意の1mm2内のこの発明のスペーサーの個数を光学顕微鏡により計数し、計9区域の個数の平均値をもって、散布個数とした。結果は、以下のとおりであった。
実施例1…散布個数73個/mm2
実施例2…散布個数70個/mm2
実施例3…散布個数69個/mm2
実施例4…散布個数68個/mm2
実施例5…散布個数69個/mm2
実施例6…散布個数66個/mm2
(比較例3)
実施例1記載の現存する有機質粒子スペーサーを用いて、公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、画像ムラが顕著に現れ、液晶表示板として使用に耐えないものであった。このとき、スペーサーの散布個数は、上記のような計数方法によれば66個/mm2であった。
【0077】
【発明の効果】
この発明の液晶表示板用スペーサーは、粒子径が非常に揃っており、有機基、および、前記式(2)で表されるシロキサン単位が粒子の内部、および、表面に均一に分布している構造を有する有機質-無機質複合体粒子であるので、シリカ焼成物粒子と有機質ポリマー粒子の間の硬さ、および、高い機械的復元性を持つ。したがって、この発明の液晶表示板用スペーサーを用いることにより、電極基板表面の傷つけ、低温発泡の発生、画像ムラの発生、製造コストの上昇、諸表示性能の低下を招くことがなく、かつ、従来の有機質ポリマー粒子よりも散布個数を大幅に減らしても、厳密に一定の隙間距離を保持することができ、画質の優れた高性能の液晶表示板を作ることができる。
【0078】
この発明の液晶表示板は、この発明の液晶表示板用スペーサーを用いて電極基板間の隙間距離が設定されているため、電極基板表面の傷つけ、低温発泡の発生、画像ムラの発生、製造コストの上昇、諸表示性能の低下を招くことがなく、かつ、従来の有機質ポリマー粒子よりも散布個数を大幅に減らしても、厳密に一定の隙間距離を保持することができ、画質の優れた高性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
液晶表示板の1例を表す部分断面図である。
【符号の説明】
2 接着シール材
3 シール部スペーサー
4 配向膜
5 電極
6 偏光膜
7 液晶
8 面内スペーサー
11 下側ガラス基板
12 上側ガラス基板
110 下側電極基板
120 上側電極基板
 
訂正の要旨 1.訂正事項1
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の
「1.有機基中の少なくとも1個の炭素原子が直接ケイ素原子に化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンを主成分とする有機質一無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーであって、前記粒子の10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2、10%変形後の残留変位が0〜5%、平均粒子径が0.5〜50μmおよぴ粒子径の変動係数が20%以下であることを特徴とする液晶表示板用スペーサー。
2.下記一般式(1)
R1mSi(OR2)4-m ・・・(1)
(式中、R1は、置換基を有していても良い炭素数1-10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、およぴ、炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基からなる詳から選ばれる1価の基、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基およぴ炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基、mは0〜3の整数を示す。mが2の場合、2個のR1は互いに異なってもよいし、同じでもよい。mが3の場合、3個のR1は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが2の場合、2個のOR2は互いに異なってもよいし、同じでもよい。4-mが3の場合、3個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4一mが4の場合、4個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。)で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解・縮合可能なシリコン化合物〔ただし、単独使用できる前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物だけであり、2以上併用される前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる詳から選ばれる化合物と、式(1)におけるm=0で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物との両方またはいずれか一方を含む必要がある。〕を含有する加水分解・縮合可能な金属化合物を加水分解し、縮合して得られる粒子を100-1000℃の範囲で熱処理してなる液晶表示板用スペーサー。
3.熱処理が酸素濃度10容量%以下の雰囲気で行われる請求項2記載の液晶表示板用スペーサー。
4.電極基板間に介在させるスペーサーとして、請求項1から3までのいずれかに記載のスペーサーが用いられてなる液晶表示板。」
を、
「1.有機基中の少なくとも1個の炭素原子が直接ケイ素原子に化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンを主成分とする有機質一無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーであって、
前記粒子が、下記一般式(1)
R1mSi(OR2)4-m …(1)
(式中、R1は、置換基を有していても良い炭素数1-10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、およぴ、炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基からなる詳から選ばれる1価の基、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基およぴ炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基、mはO〜3の整数を示す。mが2の場合、2個のR1は互いに異なってもよいし、同じでもよい。mが3の場合、3個のR1は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが2の場合、2個のOR2は互いに異なってもよいし、同じでもよい。4-mが3の場合、3個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが4の場合、4個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。)で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解・縮合可能なシリコン化合物〔ただし、単独使用できる前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物だけであり、2以上併用される前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる詳から選ばれる化合物と、式(1)におけるm=0で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物との両方またはいずれか一方を含む必要がある。〕を含有する加水分解・縮合可能な金属化合物を加水分解し縮合して得られる粒子を100-1000℃の範囲で熱処理してなるものであり、前記粒子の10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2、10%変形後の残留変位が0〜5%、平均粒子径が1〜50μmおよぴ粒子径の変動係数が20%以下であることを特徴とする液晶表示板用スペーサー。
2.熱処理が酸素濃度10容量%以下の雰囲気で行われる請求項1記載の液晶表示板用スペーサー。
3.電極基板間に介在させるスペーサーとして、請求項1または2記載のスペーサーが用いられてなる液晶表示板。」
と訂正する。
2.訂正事項2
明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるため、不明りょうな記載の釈明を目的として、
a.【0010】〜【0017】の
「【0010】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記課題を解決するために、有機基中の少なくとも1個の炭素原子が直接ケイ素原子に化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンを主成分とする有機質一無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーであって、前記粒子の10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2、10%変形後の残留変位がO〜5%、平均粒子径が0.5〜50μmおよぴ粒子径の変動係数が20%以下であることを特徴とする液晶表示板用スペーサー(以下では、「第1のスペーサー」と言うことがある)を提供する。
【0011】この発明は、また、下記一般式(1)
【0012】
【化2】
R1mSi(OR2)4-m …(1)
【0013】(式中、R1は、置換基を有していても良い炭素数1-10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、およぴ、炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基からなる詳から選ばれる1価の基、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基およぴ炭素数2-5のアシル基から選ばれる1価の基、mは0〜3の整数を示す。mが2の場合、2個のR1は互いに異なってもよいし、同じでもよい。mが3の場合、3個のR1は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが2の場合、2個のOR2は互いに異なってもよいし、同じでもよい。4-mが3の場合、3個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4一mが4の場合、4個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。)で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解・縮合可能なシリコン化合物〔ただし、単独使用できる前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物だけであり、2以上併用される前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる詳から選ばれる化合物と、式(1)におけるm=0で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物との両方またはいずれか一方を含む必要がある。]を含有する加水分解・縮合可能な金属化合物を加水分解し、縮合して得られる粒子を100-1000℃の範囲で熱処理してなる液晶表示板用スペーサー(以下では、「第2のスペーサー」と言うことがある)を提供する。
【0014】この発明は、また、上記課題を解決するために、電極基板間に介在させるスペーサーとして、この発明の液晶表示板用スペーサーが用いられてなる液晶表示板を提供する。この発明の液晶表示板用スペーサーとしては、上記第1のスペーサーおよび第2のスペーサーから選ばれる少なくとも1つを使用することができる。
【0015】まず、この発明の第1のスペーサーについて説明する。」
を、
「【0010】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記課題を解決するために、有機基中の少なくとも1個の炭素原子が直接ケイ素原子に化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリジロキサンを主成分とする有機質一無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スベーサーであって、
【0011】
前記粒子が、下記一般式(1)
【0012】
【化2】
R1mSi(OR2)4-m …(1)
【0013】
(式中、R1は、置換基を有していても良い炭素数1-10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、およぴ、炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基からなる詳から選ばれる1価の基、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基およぴ炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基、mはO〜3の整数を示す。mが2の場合、2個のR1は互いに異なってもよいし、同じでもよい。mが3の場合、3個のR1は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが2の場合、2個のOR2は互いに異なってもよいし、同じでもよい。4-mが3の場合、3個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4一mが4の場合、4個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。)で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解・縮合可能なシリコン化合物〔ただし、単独使用できる前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物だけであり、2以上併用される前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる詳から選ばれる化合物と、式(1)におけるm=0で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物との両方またはいずれか一方を含む必要がある。〕を含有する加水分解・縮合可能な金属化合物を加水分解し、縮合して得られる粒子を100-1000℃の範囲で熱処理してなる液晶表示板用スペーサー(以下では、「第2のスペーサー」と言うことがある)を提供する。
【0014】この発明は、また、上記課題を解決するために、電極基板間に介在させるスペーサーとして、この発明の液晶表示板用スペーサーが用いられてなる液晶表示板を提供する。この発明の液晶表示板用スペーサーとしては、上記第1のスペーサーおよび第2のスペーサーから選ばれる少なくとも1つを使用することができる。
【0015】まず、この発明の第1のスペーサーについて説明する。」
を、
「【0010】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記課題を解決するために、有機基中の少なくとも1個の炭素原子が直接ケイ素原子に化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサンを主成分とする有機質一無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーであって、
【0011】
前記粒子が、下記一般式(1)
【0012】
【化2】
R1mSi(OR2)4-m …(1)
【0013】
(式中、R1は、置換基を有していても良い炭素数1-10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、およぴ炭素数2〜10の不飽和脂肪族残基からなる詳から選ばれる1価の基、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基およぴ炭素数2〜5のアシル基から選ばれる1価の基、mは0〜3の整数を示す。mが2の場合、2個のR1は互いに異なってもよいし、同じでもよい。mが3の場合、3個のR1は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4-mが2の場合、2個のOR2は互いに異なってもよいし、同じでもよい。4-mが3の場合、3個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。4一mが4の場合、4個のOR2は互いに異なってもよいし、2個以上が同じでもよい。)
【0014】
で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解・縮合可能なシリコン化合物〔ただし、単独使用できる前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物だけであり、2以上併用される前記シリコン化合物は、式(1)におけるm=1で示される化合物およぴその誘導体からなる詳から選ばれる化合物と、式(1)におけるm=0で示される化合物およぴその誘導体からなる群から選ばれる化合物との両方またはいずれか一方を含む必要がある。〕を含有する加水分解・縮合可能な金属化合物を加水分解し、縮合して得られる粒子を100-1000℃の範囲で熱処理してなるものであり、
【0015】
前記粒子の10%圧縮弾性率が350〜3000kg/mm2、10%変形後の残留変位が0〜5%、平均粒子径が1〜50μmおよぴ粒子径の変動係数が20%以下であることを特徴とする液晶表示板用スペーサーを提供する。
【0016】
この発明は、また、上記課題を解決するために、電極基板間に介在させるスペーサーとして、この発明の液晶表示板用スペーサーが用いられてなる液晶表示板を提供する。
【0017】
まず、この発明のスペーサーについて説明する。」
と訂正し、
b.【0022】、【0023】、【0024】、【0025】及び【0026】の
「この発明の第1のスペーサー」
を、【0024】、【0025】、【0027】及び【0028】の
「この発明のスペーサー」
と訂正し、
c.【0025】の
「0.5〜50μm」
を、【0028】の
「1〜50μm」
と訂正し、
d.【0030】の
「次に、この発明にかかる、もう1つの液晶表示板用スペーサー(上記第2のスペーサー)を説明する。なお、上記第1のスペーサーは、後述する第2のスペーサーの製造方法によって作ることができる。この発明に用いる」
を、【0032】の
「次に、この発明の液晶表示板用スペーサーの製造方法を説明する。この発明に用いる」
と訂正し、
e.【0035】、【0036】、【0038】及び【0039】の
「この発明の第2のスペーサー」
を、【0037】、【0038】、【0040】及び【0041】の
「この発明のスペーサー」
と訂正し、
f.【0043】の
「上述の第1のスペーサー」
を、【0045】の
「上述のスペーサー」
と訂正し、
g.【0044】の
「この発明の第2のスペーサー」
を、【0046】の
「この発明のスペーサー」
と訂正し、
h.【0046】の
「上記第1のスペーサー」
を、【0048】の
「上記本発明のスペーサー」
と訂正し、
i.【0047】の
「第2のスペーサーを作る場合、上述の原料の種類、量、熱処理温度・時間・雰囲気中の酸素濃度を選定することによって複合体粒子中の有機基の割合を前述の範囲(第1のスペーサーの説明で述べた範囲)で任意に製造しうる。」
を、【0049】の
「本発明のスペーサーを作る場合、上述の原料の種類、量、熱処理温度・時間・雰囲気中の酸素濃度を選定することによって複合体粒子中の有機基の割合を前述の範囲で任意に製造しうる。」
と訂正し、
j.【0053】の
「この発明の第1のスペーサーは、」、及び
「0.5〜50μm」
を、【0055】の
「この発明のスペーサーは、」、及び
「1〜50μm」
と訂正し、
k.【0054】の
「この発明の第2のスペーサーは、」
を、【0056】の
「しかも、この発明のスペーサーを構成する粒子は、」
と訂正し、
l.【0056】の
「100〜1000℃の範囲で熱処理してなるので、無機質の特徴である大きな硬さと、有機質の特徴である高い機械的復元性とを同時に兼ね備え、、隙間距離として好適な粒子径を有し、粒子径が揃った均一な粒子である。第2のスペーサーは、好ましくは、硬さを示す尺度として10%圧縮弾性率350〜3000kg/mm2と、機械的復元性を示す尺度として10%変形後の残留変位0〜5%とを有し、隙間距離として好適な平均粒子径が0.5〜50μmを有し、粒子径の変動係数が20%以下の複合体粒子からなっている。」
を、【0058】の
「100〜1000℃の範囲で熱処理してなるものであるので、無機質の特徴である大きな硬さと、有機質の特徴である高い機械的復元性とを同時に兼ね備え、、隙間距離として好適な粒子径を有し、粒子径が揃った均一な粒子である。」
と訂正する。
異議決定日 1999-06-18 
出願番号 特願平5-288536
審決分類 P 1 651・ 112- YA (G02F)
P 1 651・ 121- YA (G02F)
P 1 651・ 531- YA (G02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 瀧本 十良三  
特許庁審判長 豊岡 静男
特許庁審判官 横林 秀治郎
橋本 栄和
登録日 1997-09-19 
登録番号 特許第2698541号(P2698541)
権利者 株式会社日本触媒
発明の名称 液晶表示板用スペーサーおよびこれを用いた液晶表示板  
代理人 福留 正治  
代理人 松本 武彦  
代理人 宇佐見 忠男  
代理人 松本 武彦  
代理人 鈴木 俊一郎  

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