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審決分類 審判 一部無効 1項1号公知 無効としない B63B
管理番号 1026886
審判番号 審判1999-35724  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-08-19 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-02 
確定日 2000-11-01 
事件の表示 上記当事者間の特許第2884491号発明「船舶に設置された冷蔵装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第 2884491号(請求項の数10、以下「本件特許」という)は、平成8年2月14日の出願に係り、平成11年2月12日にその設定登録がなされたが、これに対して、昭和ナミレイ株式会社より請求項1,2,3,4,5,及び6に関して特許無効の審判が請求されたものである。
2.本件特許発明
本件特許発明は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項により特定されるものであり、そのうち無効審判の対象である請求項1,2,3,4,5,及び6に係る発明は下記のとおりのものと認める。
【請求項1】端面にジョイント機構が設けられた複数の断熱パネルを箱状に組み立ててなる冷蔵庫と、
この冷蔵庫が載置される架台と、
前記冷蔵庫と船室の壁との間に設けられ、かつ、長さ調節可能な前記冷蔵庫の転倒を防止する支持梁とを具備し、前記架台が床面の傾斜した船室内に設置される冷蔵装置であって、
前記架台は、枠体と、この枠体の所定位置に取り付けられた脚とからなると共に、前記脚は、前記船室の床の傾斜に対応して、長さが段階的に異なっており、
前記冷蔵庫を前記船室に設置した際、前記架台の作用により、前記冷蔵庫の載置面が水平となるよう構成されてなることを特徴とする船舶に設置された冷蔵装置。
【請求項2】船室の壁面と冷蔵庫の側面との間に空隙を設けたことを特徴とする請求項1に記載の船舶に設置された冷蔵装置。
【請求項3】枠体における冷蔵庫の載置面には緩衝材が設けられてなることを特徴とする請求項1または2に記載の船舶に設置された冷蔵装置。
【請求項4】架台は、冷蔵庫の側面に当接して位置ズレを防止するガイド片を具備してなることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかに記載の船舶に設置された冷蔵装置。
【請求項5】ガイド片における冷蔵庫の側面に当接する側の面には緩衝材が設けられてなることを特徴とする請求項4に記載の船舶に設置された冷蔵装置。
【請求項6】支持梁は、
基端が船室の壁に固定された固定片と、
一端が冷蔵庫の上端部に当接し、かつ、他端が前記固定片に接続される可動片とを具備し、
前記固定片と可動片との接続位置の変更が可能であるよう構成されてなることを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかに記載の船舶に設置された冷蔵装置。
2.無効審判請求人(以下,「請求人」という)の提出した証拠
請求人が提出した成立に争いのない証拠は、次の通りである。
甲第1号証:「REGISTER OF SHIPS」1998〜99Vol.1(A-O)財 団法人日本海事協会 1998年11月30日発行
甲第2号証:寺尾正道氏の陳述書
甲第3号証:ナミレイ株式会社発行の平成7年(1995年)1月5日付 川崎商事株式会社宛の請求書
甲第4号証:糧食冷蔵庫防熱装置の配置計画図の一部訂正図とその表紙
の1
甲第4号証:訂正前の糧食冷蔵庫防熱装置の配置計画図とその表紙
の2
証人 :氏名 寺尾 正道
住所 京都市西京区川島北裏町62
3.当事者の主張の概要
(1)請求人の主張
甲第1号証に示されるように、自動車運搬船「オリンピアン ハイウエイ号」は川崎重工業株式会社が神戸造船所で、平成7年1月に建造し、船主である「カノープス マリタム カンパニ リミテッド」へ引き渡したものであり、同自動車運搬船に甲第4号証の1,2に示される糧食冷蔵庫防熱装置が設置されたことは、甲第4号証の記載及び甲第2,3号証の記載並びに証人寺尾正道の証言により明らかであり、しかも、甲第4号証には、本件の請求項1乃至請求項6に係る発明が記載されている。
したがって、本件の請求項1、2、3、4、5及び6に係る特許発明は、特許法第29条第1項第1号の規定に違反して特許を受けたものであるから、これらの特許は、同法第123条第1項第2号によっていずれも無効とすべきである。
(2)被請求人の主張
自動車運搬船「オリンピアン ハイウエイ号」の船主が、その運搬船の内部構造を本件特許発明の出願前に公開した旨の宣誓をしていないこと、
かつ、建造者である川崎重工業株式会社も、請求人も船主の了解なくしては、自動車運搬船「オリンピアン ハイウエイ号」の内部構造を公開できる権限はないことから、自動車運搬船「オリンピアン ハイウエイ号」の引き渡しを以てその運搬船の内部構造を本件特許発明の出願前に公然知られたものに至ったとは言えず、また、甲第4号証(甲第4号証の1、甲第4号証の2)には、「本技術図書は川崎重工業(株)の所有技術に関わるものであり文書による当社の事前承諾なしには複写・流用あるいは第三者に開示する事はできません。」の印が記されていることから、甲第4号証は秘密資料であり、よって甲第4号証の内容を吟味するまでもなく、甲第4号証を以て本件特許発明が特許法第29条第1項第1号の規定に違反して特許を受けたものであると言うこともできないので、本件請求項1ないし6の発明に係る特許は特許法第123条第1項第2号によって無効とされるものではない。
4.当審の判断
甲第1号証から、本件の出願前に「オリンピアン ハイウエイ号」なる名称の自動車運搬船が建造され、引き渡された事実は認められるものの、甲第1号証は、その引き渡しの状況、及びその後の「オリンピアン ハイウエイ号」の運行等を何等立証しようとするものではないから、これをもって、「オリンピアン ハイウエイ号」の建造、引き渡し、運行がその内部構造も含めて日本国内において公然実施又は公然知られたとすることはできない。
たとえ、「オリンピアン ハイウエイ号」の糧食冷蔵庫防熱装置が、甲第4号証1,2に記載されている構造を有していたとしても、甲第3号証及び甲第4号証の1,2によっては、糧食冷蔵庫防熱工事の実施が如何なる状況下で行われたものであり、その後どのように管理されたものであるのかを示すものでないから、「オリンピアン ハイウエイ号」に甲第4号証の1,2に記載の糧食冷蔵庫防熱装置が設置されたとしても、そのことは直ちにその構造が、日本国内において公然実施又は公然知られたとするものではない。
なお、証人寺尾正道は、川崎重工業株式会社と船主であるカノープス マリタム カンパニ リミテッドとの間の「オリンピアン ハイウエイ号」に係る契約及び「オリンピアン ハイウエイ号」の運行等を知る立場にはなく、同人の証言及び甲第2号証の陳述書によっても、「オリンピアン ハイウエイ号」の糧食冷蔵庫防熱装置が、日本国内において公然実施又は公然知られたとすることはできない。
次に、ナミレイ株式会社が川重商事株式会社に対して、「オリンピアン ハイウエイ号」の糧食冷蔵庫防熱装置を納品した事実について検討すると、甲第2号証の陳述書、甲第3号証の請求書及び証人寺尾正道の証言によれば、証人は、1)川重商事株式会社から前記運搬船の冷蔵庫の設置工事を受注したナミレイ株式会社の技術課長の職にあり、2)前記4号証に記載の配置計画図は、主として証人が設計したものに基づいて作成されたものであり、3)前記自動車運搬船の糧食冷蔵庫防熱装置の設置工事後の中間検査に証人が立ち会ったこと、4)糧食冷蔵庫防熱装置を川重商事株式会社を介して川崎重工業株式会社へ納品したことはいずれも信憑性があるものとして認められるものの、甲第4号証の1及び2に記載の配置計画図は、「本技術図書は川崎重工業(株)の所有技術に関わるものであり文書による当社の事前承諾なしには複写・流用あるいは第三者に開示する事はできません。」と表紙に記してある以上、一般的には守秘義務が科された書類であり、これについて証人は第三者に開示しないことを強く要請されたものでないと証言するものの、現実には第三者に開示した事実を立証するものはなく、かつ本件審判請求における書類の提出に際し、請求人は川崎重工業株式会社の船装設計課の主事に承認を得て証拠として提出したという証言内容を考慮すれば、甲第4号証の1及び2に記載の糧食冷蔵庫防熱装置が設計され、「オリンピアン ハイウエイ号」にその設計された糧食冷蔵庫防熱装置が施工され、検査されそして納品された何れの段階においても、前記糧食冷蔵庫防熱装置を第三者に公開する意図はないものと考えられる以上、本件の出願前に日本国内において自動車運搬船「オリンピアン ハイウエイ号」に施工されている糧食冷蔵庫防熱装置が公然知られたものであるとすることはできない。
5,むすび
以上のとおりであるから、甲第4号証の2及びその一部改正された甲第4号証の1に記載の配置計画図に、本件の請求項1、2、3、4、5及び6に係る特許発明が記載されているかどうかを吟味するまでもなく、これら発明が特許法第29条第1項第1号の規定に違反して特許を受けたものであるとすることはできない。
したがって、請求人が主張する理由及びその提出した証拠によっては、本件特許を無効とすることができないし、また、他に無効とすべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-08-14 
結審通知日 2000-08-25 
審決日 2000-09-06 
出願番号 特願平8-26289
審決分類 P 1 122・ 111- Y (B63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 祥吾  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 清水 英雄
鈴木 法明
登録日 1999-02-12 
登録番号 特許第2884491号(P2884491)
発明の名称 船舶に設置された冷蔵装置  
代理人 鎌田 文二  
代理人 鳥居 和久  
代理人 東尾 正博  
代理人 宇高 克己  

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