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審決分類 審判 全部申し立て 1項1号公知  H05K
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  H05K
管理番号 1027830
異議申立番号 異議1999-71988  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-12-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-25 
確定日 2000-11-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第2827900号「便器用コントロールボックス」の請求項1〜5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2827900号の請求項1〜5に係る特許を維持する。 
理由 1.[事件の経緯と本件特許発明]
本件特許第2827900号(請求項の数5、以下、「本件特許」という)は、平成6年5月30日(以下、「本件特許に係る出願日」という)に出願された特願平6-116296号に係り、平成10年9月18日に設定登録されたが、表記特許異議申立人より、全請求項に関して特許異議の申立があったもので、当該各請求項に係る発明は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜5に、それぞれ記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
【請求項1】「便器に装着された各種装置を制御するためのコントロールボックスであって、該コントロールボックスの各種制御機能部品は2枚以上の基板上に配設されている便器用コントロールボックスにおいて、
前記基板のうち、1枚又は複数枚の第1の基板は、ポッティングケース内に配置され、前記各種制御機能部品の一部又は全部がポッティング材によって埋設されており、
前記基板のうち残りの第2の基板の前記各種制御機能部品はポッティング材により埋設されずに露出した状態で前記ポッティングケースに取り付けられていることを特徴とする便器用コントロールボックス。」
【請求項2】「請求項1において、前記第1の基板上の部品は高電圧用部品であり、前記第2の基板上の部品は低電圧用部品であることを特徴とする便器用コントロールボックス。」
【請求項3】「請求項1において、前記ポッティングケースの底面を挟んで一方の側に第1の基板が配置され、他方の側に第2の基板が配置されていることを特徴とする便器用コントロールボックス。」
【請求項4】「請求項3において、前記第1の基板と第2の基板とがリード線で接続されており、前記ポッティングケースの側辺部に設けられた切欠状の凹部に該リード線が引き通されていることを特徴とする便器用コントロールボックス。」
【請求項5】「請求項3又は4において、前記ポッティングケースの底面を挟んで上側に第1の基板が配置され、下側に第2の基板が配置されていることを特徴とする便器用コントロールボックス。」

2.[特許異議申立に係る証拠と申立理由の概要]
これに対し、特許異議申立人が提出した証拠は、次のとおりである。
(1)甲第1号証:日立化成工業株式会社製温水洗浄便座(「ファミレツトHC-800シリーズ」)の商品カタログとされるもの
(2)甲第2号証:「日立化成 ファミレツトHC-800T」を撮影したとされる写真(1-1)〜(1-9)
(3)甲第3号証:「ファミレツトHC-800Tを説明する説明図」とされる説明図1,2
(4)甲第4号証:松下電工株式会社製温水洗浄便座「クリーンシャワレ」の商品カタログ
(5)甲第5号証:「松下電工 クリーンシャワレ CH610S」を撮影したとされる写真(2-1)〜(2-10)
(6)甲第6号証:「クリーンシャワレ CH610Sを説明する説明図」とされる説明図3,4
(7)甲第7号証:「INAX シャワートイレ総合カタログ」
(8)甲第8号証:「INAX NSシャワートイレHBC-8812SN」を撮影したとされる写真(3-1)〜(3-8)
(9)甲第9号証:「NSシャワートイレHBC-8812SNを説明する説明図」とされる説明図5,6
以上の各証拠に基づいて、特許異議申立人は、次の旨を主張している。
<甲第1〜3号証に基づく主張>
甲第1号証は、平成4年10月26日付で発行された、温水洗浄便座「ファミレツトHC‐800シリーズ」のカタログであって、その第2頁には、「10月27日から「ファミレツトHC-800シリーズ」として発売いたします。」と記載され、そのシリーズに含まれる形式の1つとして「ファミレットHC-800T」が掲載されているところから、甲第2号証の写真に示される当該形式の温水洗浄便座は、本件特許に係る出願日より前に販売されて公知となっていたことがわかる。そして、当該公知の温水洗浄便座は、甲第2号証の写真(1-3)〜(1-9)に示されるコントロールボックスを備えており、当該コントロールボックスは、甲第3号証の説明図に示されるとおり、本件特許の各請求項の発明で規定される構成と同じか、あるいは当該各発明で規定される構成と類似の構成を有している。
したがって、本件各請求項に係る発明は、本件特許に係る出願日より前に公知、若しくは公然実施された発明、または、当該公知若しくは公然実施された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件各請求項の特許は、特許法第29条第1項または同条第2項の規定に基づいて拒絶査定されるべき出願に対して受けたことになるから、これを取り消すべきである。
<甲第4〜6号証及び甲第7〜9号証に基づく主張>
本件各請求項に係る発明が、本件特許に係る出願日より前に公知、若しくは公然実施された発明、または、当該公知、若しくは公然実施された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであることは、甲第4〜6号証に基づいても、甲第7〜9号証に基づいても、上記甲第1〜3号証についてと同様に明らかで、いずれにしても、本件各請求項の特許は、特許法第29条第1項または同条第2項の規定に基づいて拒絶査定されるべき出願に対して受けたことになるから、これを取り消すべきである。

3.[当審の判断]
(1)温水洗浄便座の公知性について
特許異議申立人は、甲第1号証は平成4年10月26日に、甲第4号証は平成5年2月1日に、甲第7号証は平成4年10月に、それぞれ発行されたとしており、その裏付けとして、例えば、甲第4号証に「このカタログの記載内容は平成5年2月1日現在のものです」という記載があることを指摘している。しかし、このような記載があるからといって、当該各甲号証の発行日が特定されるわけではなく、したがって、甲第1、4、7号証が本件特許に係る出願日より前に公知のものであったとは断定できない。また、例えば、甲第1号証に「10月27日から「ファミレツトHC-800シリーズ」として発売いたします。」と記載されていても、何らかの理由によって、発売が延期になる可能性も否定できない。
そうすると、甲第1号証記載の「ファミレットHC-800T」、甲第4号証記載の「クリーンシャワレCH610S」、甲第7号証記載の「NSシャワートイレHBC-8812SN」の各記号の付されたそれぞれの形式の温水洗浄便座が、本件特許に係る出願日より前に販売等によって公知となった、または公然実施されたか否かは必ずしも明確ではない。
(2)コントロールボックス構造の公知性について
例えば、甲第4号証の末尾近傍に「商品改良のため、仕様、外観は予告なしに変更することがありますのでご了承ください」と記載されているように、同じ記号が付された形式の商品であっても、その内部構造を含めて、常に同じ構成のものが販売され続けるとは限らない。
そうすると、仮に、上記(1)で指摘した、それぞれの記号形式の温水洗浄便座が、本件特許に係る出願日より前に発売されていたとしても、当該形式の温水洗浄便座の仕様等はその後変更された可能性があるから、当該変更の可能性が明確に否定されるか、甲第2、5、8号証の各写真に示されている温水洗浄便座が、本件特許に係る出願前に公知または公然実施されたことが証明されない以上、甲第3、6、9号証の説明図に示される構成のコントロールボックスが、本件特許に係る出願前に公知となった、または公然実施されたものと認定することはできない。
(3)甲各号証と本件各請求項の発明との関係について
上記(1)、(2)の理由から、特許異議申立人が提出した証拠によっては、本件各請求項に係る発明が、本件特許に係る出願日より前に公然知られた、または公然実施された発明であるとすることはできないし、当該公然知られた、または公然実施された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
なお、特許異議申立人は、「甲第1号証ないし甲第3号証により特定される物品、甲第4号証ないし甲第6号証により特定される物品、甲第7号証ないし甲第9号証により特定される物品」を、「必要に応じて検証物として提出する用意」があるとしているが、上記(1)、(2)で指摘したように、各甲号証によって物品が「特定され」ているとはいえないし、また、提出の用意があるとする物品が甲第2、5、8号証の写真に撮影されたそれぞれの温水洗浄便座に特定されたとして、それらの物品の検証を行い、当該物品が上記(1)で指摘した形式のものであることや、甲第3、6、9号証の説明図に示されるようなコントロールボックスの構成を備えるものであることが確認されたとしても、それらの確認によって、当該温水洗浄便座やコントロールボックスの公知性が証明されるわけではないことは、上記(1)、(2)で述べたとおりであって、当該検証の必要が認められない。したがって、当該検証は行わない。

5.[むすび]
以上のとおり、特許異議申立人の主張する理由及びその提出した証拠によっては、上記本件各請求項に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、特許異議申立に係る本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-10-12 
出願番号 特願平6-116296
審決分類 P 1 651・ 111- Y (H05K)
P 1 651・ 112- Y (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川端 修  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 鈴木 久雄
大島 祥吾
登録日 1998-09-18 
登録番号 特許第2827900号(P2827900)
権利者 株式会社イナックス アイシン精機株式会社
発明の名称 便器用コントロールボックス  
代理人 五十嵐 孝雄  
代理人 下出 隆史  

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