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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
管理番号 1028250
異議申立番号 異議1998-71978  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-09-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-04-27 
確定日 1999-06-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2668576号「接着テープ」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2668576号の特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2668576号は、平成1年2月23日に特許出願され、平成9年7月4日にその特許の設定登録がなされ、その後に、特許異議申立人鐘淵化学工業株式会社および特許異議申立人白石由紀子より特許異議の申立てがあり、それに基づく特許取消の理由通知に対し、その指定期間内に訂正請求がなされたものである。
2.本件訂正請求について
(1)訂正請求の内容
本件訂正請求は、本件明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるもので、その具体的内容は以下のとおりである。
[1]特許請求の範囲の請求項1の「以下であることを特徴とする樹脂封止型半導体装置用接着テープ。」を「以下であることを特徴とする樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープ。」に訂正する。
[2]明細書第5頁2〜3行目の「樹脂封止型半導体装置用接着テープを提供することにある。」を「樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープを提供することにある。」に訂正する。
[3]明細書第6頁10〜11行の「樹脂封止型半導体装置用接着テープを構成する各層について説明する。」を「樹脂封止型半導体装置のリードフレ-ム固定用接着テープを構成する各層について説明する。」に訂正する。
(2)訂正請求の可否
上記[1]の訂正は、特許請求の範囲において接着テープの用途を限定するものであり、訂正前の明細書には、発明が解決しようとする課題および発明の効果の記載中においてリードフレーム固定用接着テープの使用が記載され(明細書第3頁19〜20行および第15頁下から14〜13行)、実施例と【第1図】〜【第2図】においてもリードフレーム固定用接着テープの使用が説明されていることから、当訂正は訂正前の明細書に記載された事項の範囲内における特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
上記[2]および[3]の訂正は、上記の特許請求の範囲の訂正に伴って生じる明細書の明りょうでない記載の釈明を目的とするものと解され、上記[1]の訂正と同様に訂正前の明細書記載された事項の範囲内のものである。
そしていずれの訂正も実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではなく、しかも後記するように、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができない発明とも認められない。
したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の4第2項第1号および第3項に掲げる事項を目的とし、かつ、同法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2項から第4項の規定を満たすものであり、本件訂正は適法なものと認めることができる。
3.特許異議申立について
(1)本件発明
訂正された明細書の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】予め熱処理を施した耐熱性ベースフィルムの表面に耐熱性接着層を積層してなる樹脂封止型半導体装置用接着テープであって、(1)20℃〜300℃における耐熱性ベースフイルムの幅方向の平均線熱膨脹係数が、0.4×10-5〜2.5×10-5cm/cm/℃の範囲にあり、かつ、(2)300℃/3分間加熱した場合における耐熱性ベースフィルムの幅方向の加熱寸法変化率が、0.15%以下であることを特徴とする樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープ。」
(2)特許異議申立理由の概要
特許異議申立人鐘淵化学工業株式会社は、甲第1号証〜甲第3号証を提示し、本件発明は甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明であるから、本件特許は特許法第29条第1項第1〜3号の規定に違反してなされたものであり、本件特許は取り消されるべきである旨主張している。
また、特許異議申立人白石由紀子は、甲第1号証〜甲第4号証を提示し、本件発明は甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、さらに、本件明細書の記載が不備であり、特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていないから、本件特許は取り消されるべきである旨主張している。
(3)甲各号証の記載事項
[1]特許異議申立人鐘淵化学工業株式会社が提出した甲各号証:
甲第1号証(「合成樹脂」1985年3月号第26〜31頁:以下、「刊行物1」という。)には、ポリイミドフィルムユーピレックスについて記載され、Sタイプの熱膨張係数(単位10-5cm/cm/℃)は20〜100℃で0.8、100〜200℃で1.0、200〜300℃で1.6であることが示され(第28頁の表3)、300℃に加熱した時の収縮率(%)は、厚みが25μmのものでMD方向0.11、TD方向0.13、厚みが50μmのものでMD方向0.14、TD方向0.12であることが示され(第30頁の表8)、用途として、フレキシブルプリント回路用基板や重電機用絶縁材料やフロッピーディスク基あるいは磁気テープ、さらにフィルムコンデンサーなどが記載されている(第31頁左欄)。
甲第2号証(「プラスチックエージ」1988年6月号 第165〜170頁:以下、「刊行物2」という。)には、ポリイミドフィルムユーピレックスについて記載され、Sタイプの熱膨張係数(単位10-6cm/cm/℃)は23〜100℃で8、100〜200℃で10、200〜300℃で16であることが示され(第168頁の表11)、用途として、フレキシブルプリント回路板(FPC)やフィルムキャリアや高密度磁気記録媒体あるいは重電機器用絶縁材料などが記載されている(第170頁)。
甲第3号証(宇部興産の耐熱性ポリイミドフィルム:ユーピレックスのカタログ 1988年6月:以下、「刊行物3」という。)には、ポリイミドフィルムユーピレックスについて記載され、Sタイプの熱膨張係数(単位10-5cm/cm/℃)は20〜100℃で0.8、100〜200℃で1.0、200〜300℃で1.6であり、300℃に加熱した時の収縮率(%)は、厚みが25μmのもので0.13であることが示され(表3および図3-1)、用途として、フレキシブルプリント回路板や磁気記録用ベースフィルムあるいは電動機絶縁材料などが記載されている。
[2]特許異議申立人白石由紀子が提出した甲各号証:
甲第1号証(「電子技術」1988年9月号別冊 第91〜99頁:以下、「刊行物4」という。)には、TAB用フィルムキャリアの構成と設計ポイントに関し、IC実装に使用されるTAB用フィルムキャリアの接着剤、例えばエポキシ系接着剤を基材であるポリイミドフィルムの片面に積層したテープ、およびICを接続し樹脂封止をしたフィルムキャリアが記載され(第92〜93頁)、ポリイミドフィルムとしては、米国デュポン社のカプトン(75μm)および宇部興産社のユーピレックスS(50μm)が使用されることが記載され(第97頁)、これらの線膨張率(単位10-5cm/cm/℃)が2.0および1.2であることも記載されている(第98頁表7)。
甲第2-1号証(「プラスチックエージ」1988年5月号 第187〜192頁:以下、「刊行物5」という。)には、ポリイミドフィルムの製造と応用開発に関し、各種ポリイミドフィルム一覧とその用途としてフィルムキャリアが示されている(第190頁表2および第192頁)。
甲第2-2号証(「プラスチックエージ」1988年6月号 第165〜170頁)は上記の刊行物2と同一である。
甲第3号証(特開昭62-41024号公報:以下、「刊行物6」という。)には、加熱収縮性の改良されたポリイミドフィルムに関し、実質的に無張力下で25μmまたは75μm厚さのポリイミドフィルムを200℃、300℃、または400℃で加熱した後冷却する処理を施して、JIS-C-2318の加熱収縮率(200℃×2時間、300℃×30分)が0.08%以下(TD、MDいずれも)であるポリイミドフイルムを得たことが記載されている(実施例および表-1)。
甲第4号証(特開昭62-48726号公報:以下、「刊行物7」という。)には、ポリイミドフィルムに関し、4,4′ジアミノンフェニルエーテル(DADE)とp-フェニレンジアミン(PPD)および3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とから強度の非常に大きいポリイミドフィルムが得られたこと(第1頁左欄)、さらに前記ポリイミドフィルムを420℃で10分、または450℃で10分熱処理して機械的強度および伸びがさらに改良されたポリイミドフィルムを得たことが記載されている(第3表)。
4.対比および判断
(1)本件特許は、特許法第29条第1項第1〜3号の規定に違反してなされたものか否か
本件発明と各刊行物に記載された発明とを対比すると、刊行物1〜3には、本件発明が構成とする「耐熱性ベースフィルム」および「20℃〜300℃における耐熱性ベースフィルムの幅方向の平均線熱膨脹係数が、0.4×10-5〜2.5×10-5cm/cm/℃の範囲にあり、かつ、300℃/3分間加熱した場合における耐熱性ベースフィルムの幅方向の加熱寸法変化率が、0.15%以下であること」は記載されているが、本件発明が構成とする「予め熱処理を施した耐熱性ベースフィルムの表面に耐熱性接着層を積層してなる樹脂封止型半導体装置用接着テープであって、樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープ。」については記載されていない。
刊行物4には、本件発明が構成とする「耐熱性ベースフィルムの表面に耐熱性接着層を積層してなる接着テープであって、20℃〜300℃における耐熱性ベースフィルムの幅方向の平均線熱膨脹係数が、0.4×10-5〜2.5×10-5cm/cm/℃の範囲にある」については記載されているが、本件発明が構成とする「予め熱処理を施した耐熱性ベースフィルム」および「300℃/3分間加熱した場合における耐熱性ベースフィルムの幅方向の加熱寸法変化率が、0.15%以下である樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープ。」については記載されていない。
刊行物5には、耐熱性ベースフィルムが記載されているだけで、その他本件発明に係わる記載はない。
刊行物6および7には、本件発明が構成とする「予め熱処理をした耐熱性ベースフィルム」および「300℃/3分間加熱した場合における耐熱性ベースフィルムの幅方向の加熱寸法変化率が、0.15%以下である」については記載されているが、「耐熱性ベースフィルムの表面に耐熱性接着層を積層してなる樹脂封止型半導体装置用接着テープであって、20℃〜300℃における耐熱性ベ-スフィルムの幅方向の平均線熱膨脹係数が、0.4×10-5〜2.5×10-5cm/cm/℃の範囲にある、樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープ。」については記載されていない。
したがって、本件発明が刊行物1〜7に記載された発明であるとすることはできず、また、本件発明が刊行物1〜7の記載から本件出願前に公然知られ公然実施された発明であるとすることもできない。
よって、本件発明は特許法第29条第1項第1〜3号の規定に違反してなされたものではない。
(2)本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものか否か
本件発明と各刊行物に記載された発明とを対比すると、上記の(1)で記述したとおり、いずれの刊行物にも、本件発明が構成とする、「樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープ」について記載されてなく、各刊行物の上記の各記載は、この点を示唆するものでもない。
一方、本件発明は、かかる構成を含む上記で認定とおりの構成を採用することにより、明細書に記載されたとおりの、アセンブリ工程中の加熱により生じるリードシフトの問題が解消され、ファインピッチリードフレームにテーピングが可能になり、半導体の生産効率および生産歩留まりが大巾に改善されるという優れた効果を奏すると認めることができる。
したがって、本件発明は、刊行物1〜7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
(3)本件明細書の記載が不備であり、特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていないか否か
特許異議申立人白石由紀子は、本件明細書において、明細書の記載が不備である旨主張しているが、記載不備の具体的な箇所とその理由が述べられていず、よって、異議申立人の主張は採用できない。
5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
接着テープ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 予め熱処理を施した耐熱性ベースフィルムの表面に耐熱性接着層を積層してなる樹脂封止型半導体装置用接着テープであって、(1)20℃〜300℃における耐熱性ベースフィルムの幅方向の平均線熱膨張係数が、0.4×10-5〜2.5×10-5cm/cm/℃の範囲にあり、かつ、(2)300℃/3分間加熱した場合における耐熱性ベースフィルムの幅方向の加熱寸法変化率が、0.15%以下であることを特徴とする樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープ。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、樹脂封止型半導体装置内において使用される接着テープに関する。
(従来の技術)
樹脂封止型半導体装置内において使用される接着テープには、リードフレーム固定用テープ、ダイパッドテープ、タブテープなどがあり、例えば、リードフレーム固定用接着テープの場合は、リードフレームのリードピンを固定し、リードフレーム自体及び半導体装置のアセンブリ工程全体の生産歩留まり及び生産性の向上を目的として使用されるので、一般にリードフレームメーカーにおいてリードフレーム上にテーピングされ、半導体メーカーに持ち込まれ、IC搭載後、樹脂封止される。このためリードフレーム固定用接着テープには、半導体レベルでの一般的な信頼性及びテーピング時の作業性等は勿論のこと、テーピング直後の十分な室温接着力、IC組立工程での加熱後の十分に高い接着力が要求される。
従来、リードフレームのリードピン間を固定するための接着テープとしては、例えばポリイミドフィルムなどのベースフィルム上にポリアクリルニトリル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂或いはアクリルニトリルーブタジエン共重合体などの合成ゴム系樹脂などを単独或いは他の樹脂で変性または混合した接着剤を塗工し、Bステージ状態とした接着テープが使用されてきた。
ところが、近来の半導体素子の集積度の向上には著しいものがあり、さらに半導体の小型化も急速に進んでいる状況にある。このためリードフレームのピン数の増大、及びリードフレームのインナーリードピンの各ピンが細くなり、そのピン間が狭くなる傾向にあるため、各ピンの位置精度に対する要求が厳しくなってきている。このため、このような多ピンQFPなどのファインピッチリードフレームにおいては、アセンブリ工程でのリードピンのばたつき防止や、リードピンの位置精度向上などの目的で、接着テープを用いてリードピンを固定することが多い。
(発明が解決しようとする課題)
ところが半導体装置のアセンブリ工程では、半導体チップをリードフレームに接着するダイボンディング工程で、150〜250℃/1〜3時間、リードフレームのインナーリードピン先端と半導体チップ上の配線用パッドとを金線で接続するためのワイヤーボンディング工程で150〜350℃/1〜30分程度の加熱処理が行われるが、その場合、リードフレーム上にテーピングされた接着テープも、当然これらの加熱工程での熱履歴を受けることになる。従来の接着テープをテーピングしたリードフレームでは、この熱履歴によりリードピンの位置ずれが生じて、いわゆるリードシフトを起こすという問題があった。
このリードシフト現象について図面を参酌して説明する。第1図は、リードフレーム固定用接着テープをテーピングした4方向多ピンリードフレームを示すもので、接着テープ1a、1bが井桁状にテーピングされたものである。第2図は、その一部の拡大図であり、(a)は熱履歴を受ける前の状態を示し、(b)は熱履歴を受けた後の状態を示す。第2図において、テープ1a及び1bがリードピン2の上に井桁状に貼り付けられている。なお、3は中心部と連結しているサポートバーである。第2図(a)に示される状態のリードフレームを、例えば300℃で3分間加熱すると、(b)に示されるように、サポートバー3とそれと隣接したリードピン2aとの間隔(第2図(a)ではA、(b)ではBとして示す)が広がり、リードピンの位置ずれが生じる。その結果、半導体チップとリードピンとを接続するワイヤーボンデイング工程が適格に行われなくなり、アセンブリ工程中のワイヤーボンディング効率の低下をきたしたり、シフトしたリードピンが隣接するリードピンに接触して配線間がショートし、半導体装置として使用出来なくなる等の問題が生じる。
上記したような接着テープを貼り付けたリードフレームにおけるリードシフトの問題と同様の問題が、一般にこの種の樹脂封止型半導体装置用接着テープ類に存在し、その改良が急がれていた。
したがって、本発明は、樹脂封止型半導体装置内において使用される接着テープに要求される諸要求特性、特に、従来技術の欠点とされる加熱後のリードシフトの問題を改善することを目的とするものである。すなわち、本発明の目的は、熱履歴によるリードシフト、その他の問題が解消された樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープを提供することにある。
上記リードシフトの問題は、1985年頃より表面化し始めた比較的新しい問題であり、その発生原因は、リードフレーム固定用に用いられている接着テープのアセンブリ工程での加熱による収縮であるものと推測されていた。すなわち、リードフレーム上にテーピングされた接着テープが加熱により収縮し、室温に戻されたときに収縮した状態になり、リードピンを引き寄せることにより、リードシフトを生じるものと思われていた。ところが、本発明者等は、検討の結果、リードシフトの主原因は、接着テープの加熱収縮だけでなく、熱膨張率も関与していることを解明した。すなわち、アセンブリ工程中の加熱で、接着テープのベースフィルムが膨脹し、膨脹した状態で接着剤が加熱温度付近の温度でもずれない程度に本硬化し、固定され、その結果、接着テープは、以前よりも伸びた状態でリードフレームに貼り付けられたことになり、そしてそれが室温に戻されると、リードピンを内側に引き寄せ、リードシフトを発生させるということを解明した。
本発明は、この様な知見に基づいて完成されたものである。
(課題を解決するための手段及び作用)
本発明は、予め熱処理を施した耐熱性ベースフィルムの表面に耐熱性接着層を積層してなる樹脂封止型半導体装置用接着テープであって、(1)20℃〜300℃における耐熱性ベースフィルムの幅方向の平均線熱膨脹係数が、0.4×10-5〜2.5×10-5cm/cm/℃の範囲にあり、かつ
(2)300℃/3分間加熱した場合における耐熱性ベースフィルムの幅方向の加熱寸法変化率が、0.15%以下であることを特徴とする。
次に、本発明の樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープを構成する各層について説明する。
〈耐熱性ベースフィルム〉
厚さ5〜300μm、好ましくは12.5〜150μmの、例えばポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリパラバン酸等の耐熱フィルムや、エポキシ樹脂-ガラスクロス、エポキシ樹脂-ポリイミド-ガラスクロス等の複合耐熱フィルムが使用される。これら耐熱性ベースフィルムは、予め熱処理を施すことによって、その熱膨張率及び加熱収縮率が、次の条件を満たすようにすることが必要である。
熱膨脹率:20℃〜300℃における耐熱性ベースフィルムの幅方向の平均線熱膨脹係数(測定方法:ASTMED-696-44に準じる)が、0.4×10-5〜2.5×10-5cm/cm/℃であること。
加熱収縮率:300℃/3分間加熱した場合における耐熱性ベースフィルムの幅方向の加熱寸法変化率(測定方法:JIS C2318-6.3.5に準じる)が、0.,5%以下であること。
一般に、この種の接着テープとしては、約50〜100cmの幅で巻回されて製造されているベースフィルム原反に接着剤層を形成させた後、その巻き取り方向に平行に、例えば17mm幅または20mm幅に、裁断して製造される市販の巻き取りテープが用いられる。
本発明における接着テープは、上記した巻き取りテープを、さらに幅方向(巻き取り方向の垂直方向)に1〜3mm程度の間隔で裁断して得られるもの(例.17mm×1.5mm)を、それぞれ、第1図の接着テープ1a及び接着テープ1bとして示すように、その長手方向がリードピンを横断するように貼付して使用されるものである。このことから、本発明における耐熱性ベースフィルムの幅方向とは、巻き取りテープまたはベースフィルム原反の巻き取り方向の垂直方向(ロール幅方向)を意味している。
その幅方向の膨脹率及び加熱収縮率が、上記の条件を満たすような耐熱性ベースフィルムを得るには、次のようにすればよい。
(1)熱膨脹率:
一般に各種有機フィルムの20〜300℃における平均熱膨張率は1.0×10-5〜15×10-5cm/cm/℃の範囲にあり、したがって、一部のものを除き、その殆んどが上記の範囲を逸脱しでいる。そこで、熱膨張係数を低下させるためには次のような処置を施せばよい。
▲1▼有機フィルムの系内に、無機フィラーを添加する。
▲2▼有機フィルムの主要構成材料として、熱膨張率の低いものを使用する。例えば、下記構造単位を含むポリイミド系材料を使用する。

(2)加熱収縮率
一般に各種有機フィルムの加熱収縮は、次に二つの原因により引き起こされる。
▲1▼エポキシ樹脂、ポリイミド等の熱硬化性樹脂をベースとした有機フィルムでは、フィルムを構成する樹脂の加熱硬化反応が十分に行われておらず、その為その後の加熱によりフィルムが収縮する。▲2▼樹脂を引き延ばしフィルム化する際に、延伸等によりフィルム内に歪み応力が生じ、この歪み応力が加熱により解放されて収縮する。
そこで、上記のような収縮原因を有する有機フィルムは、それを予め熱処理することによって、アセンブリ工程中の加熱による熱収縮を上記の範囲になるように抑えることができる。熱処理は、例えば、有機フィルムを、対向する二つの赤外線ヒーターの間を通過させるか、或いは、加熱ロールの表面に接触した状態で複数の加熱ロール間を通過させることにより、280〜360℃の処理温度で1〜10分間処理すればよい。
〈耐熱性接着層〉
一般にはNBR系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリイミド系接着剤等を厚さ2〜50μm、好ましくは7〜30μm程度に塗布し、Bステージまで硬化したものが使用される。また、場合により、各種熱可塑性樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリアミドイミド等)を単独又は熱硬化性樹脂と配合して使用することもできる。
〈保護フィルム〉
上記耐熱性接着層の上には、必要に応じて、厚さ1〜200μm、好ましくは10〜100μmの保護フィルムを、加熱圧着等の手段を用いて設けることができる。保護フィルムとして使用可能なものとしては、ポリプロピレンフィルム、フッ素樹脂系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、紙、及びこれらにシリコーン樹脂等では剥離性を付与したもの等があげられる。
(実施例)
以下、本発明を実施例によって説明する。
例1
第1表に示す各種ベースフィルムを使用し、その上に、接着剤として、アクリル系接着剤(テイサンレジンSG-70L、帝国化学産業(株)製)を塗布し、熱風循環式乾燥機中で150℃において10分間乾燥して、膜厚15±2μmのBステージ化した耐熱性接着層を形成した。得られた接着シートを幅20mm及び幅17mmに、ベースフィルムの走行方向(マシン方向)に沿って裁断して接着テープを得、リードシフト測定用のサンプルとした。これらの接着テープを用い、下記方法によってリードシフトを測定した。その結果を第2表に示す。
リードシフトの測定方法
▲1▼サンプル
リードシフトを測定する接着テープをベースフィルムの走行方向(マシン方向)に沿って幅17mm及び20mmに裁断する。
▲2▼測定リードフレーム
リードシフト測定用リードフレームとして、128ピンQFPリードフレームを使用する。前もってこのリードフレームの第2図(a)で示された部位の距離(A)を測定限界1μmにて測定し、その値をAとする。
▲3▼テーピング
リードフレームテーピングマシンとして、住友金属鉱山(株)製4方向テーピングマシンを使用してテーピングする。
▲4▼加熱処理
テーピングしたリードフレームを、半導体装置のアセンブリ工程中の熱履歴を想定し、ホットプレート上で300℃において3分間加熱処理する。
▲5▼リードシフトの測定
第2図(b)で示された部位の距離(B)を測定限界1μmにて測定し、これをBとし、下記の計算式にしたがってリードシフト率α(%)を計算する。

なお、リードシフト率が10%以内の場合は、実用上問題のないことを意味する。



上記第2表の結果から、本発明のサンプルはリードフシフト率が低いことが分かる。
例2
第3表に示す各種ベースフィルムを使用し、その上に、接着剤として、ナイロン系接着剤(トレジンFS-410、帝国化学産業(株)製)を塗布し、熱風循環式乾燥機中で150℃において10分間乾燥して、膜厚15±2μmのBステージ化した耐熱性接着層を形成した。得られた接着シートを幅20mm及び幅17mmに、ベースフィルムの走行方法(マシン方向)に沿って裁断して接着テープを得、リードシフト測定用のサンプルとした。これらの接着テープを用い、実施例1と同様にしてシードシフトを測定した。その結果を第4表に示す。


例3
第5表に示す各種ベースフィルムを使用した以外は、実施例1と同様にして接着テープを作製した。またリードフレームとして42アロイ(平均熱膨張係数α=0.4×10-5cm/cm/℃)およびCuアロイ(α=1.5×10-5cm/cm/℃)を使用した以外は、実施例1と同様にしてリードシフト率を測定した。その結果を第6表に示す。


例4
第7表に示す各種ベースフィルムを使用した以外は、実施例1と同様にして接着テープを作製した。またリードフレームとして42アロイ(平均熱膨張係数α=0.4×10-5cm/cm/℃)を使用した以外は、実施例1と同様にしてリードシフト率を測定した。その結果を第8表に示す。


上記表1、表3、表5及び第7表中のベースフィルム欄に示す商品名の「ユーピレックスS」及び「ユービレックス50R」は、ともに、ポリビフェニルテトラカルボン酸イミド系のポリイミドであり、また、同じく「カプトン200H」、「カプトン100V」、「カプトンE」、「カプトンV」及び「アピカル50AH」は、いずれも、ポリピロメリット酸イミド系のポリイミドである。
(発明の効果)
本発明は、上記構成を有するので、多ピンQFP等のファインピッチリードフレームをパッケージ内に有する半導体装置において、リードフレーム固定用接着テープとして使用した場合、アセンブリ工程中の加熱により生じるリードシフトの問題が解消される。l7たがって、従来の接着テープではテーピング不可能とされていたファインピッチリードフレームにテーピング可能になり、これらのリードフレームを使用した半導体の生産効率及び生産歩留まりが大巾に改善される。また、樹脂封止型半導体パッケージ内におけるリードフレーム固定以外の用途、例えばダイパッドテープとして使用した場合にも、テーピングされたり、リードフレームのアセンブリ工程中での加熱によるリードフレームの反りの問題等が解決され、生産の安定性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、リードフレームに接着テープが貼り付けられた状態を示すためのリードフレームの平面図、第2図は第1図の一部の拡大図である。
1a、1b……接着テープ、2……リードピン、3……サポートバー。
 
訂正の要旨 [1]特許請求の範囲の請求項1の「以下であることを特徴とする樹脂封止型半導体装置用接着テープ。」を「以下であることを特徴とする樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープ。」に訂正する。
[2]明細書第5頁2〜3行目の「樹脂封止型半導体装置用接着テープを提供することにある。」を「樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープを提供することにある。」に訂正する。
[3]明細書第6頁10〜11行の「樹脂封止型半導体装置用接着テープを構成する各層について説明する。」を「樹脂封止型半導体装置のリードフレーム固定用接着テープを構成する各層について説明する。」に訂正する。
異議決定日 1999-05-06 
出願番号 特願平1-41637
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C09J)
P 1 651・ 121- YA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石井 あき子井上 義行  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 小島 隆
柿崎 良男
登録日 1997-07-04 
登録番号 特許第2668576号(P2668576)
権利者 株式会社巴川製紙所
発明の名称 接着テープ  
代理人 楠本 高義  

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