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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない C12N
審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない C12N
審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許 無効としない C12N
審判 全部無効 特38条共同出願 無効としない C12N
管理番号 1030995
審判番号 審判1999-35669  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-06-07 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-11-17 
確定日 2001-01-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第1739131号発明「有用微生物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.本件発明
本件特許第1739131号に係る発明(昭和62年12月1日出願、平成5年2月26日登録)は、その特許明細書及び図面から見て、その特許請求の範囲に記載された次の通りのものであると認める。

「1 下記の菌学的性質を有するバチラス・ズブチリス・クボタ。
(a)形態
1 細胞の形及び大きさ
短小桿菌、1.2〜1.4X3.6〜3.8マイクロメーター
2 細胞の多形性
特別にない。細胞膜にとりかこまれ、核を持つ。また、芽胞を持ち、特 徴的なものであり、Septumを観察できる。
3 運動性の有無
運動性あり。鞭毛は10本位である。
4 胞子の有無
胞子あり
5 グラム染色性
グラム陽性。フェイバーGセット(日水)により青に染色。
6 抗酸性
チール、ネルゼン染色により赤に染まる。抗酸性の菌である。

(b)各培地における生育状態
生理食塩水に浮遊させた状態で肉汁寒天板に接種し、37℃で24時間 培養し、よく生育する。
集落周辺部が円形とならないR型を示す。色は不透明、淡黄色である。
羊血液寒天培養、ハートインフュージョン寒天培養、トリプトソーヤ寒天 培養でR型、不透明、淡黄色を示し、いずれも発育良好である。
各培地における生育状態は次の通りである。
普通寒天培地 (+)
羊血液寒天培養 (+)
ハートインフュージョン (+)
トリプトソーヤ (+)
サブロー (-)
食塩卵寒天培地 (-)
ドリガルスキー (-)
ブレインハートインフュージョン液体培地 (-)

(c)生理学的性質
(1)硝酸塩の還元 (+)
(2)VPテスト (+)
(3)インドールの生成 (-)
(4)硫化水素の生成 (-)
(5)デンプンの加水分解 (+)
(6)クエン酸の利用 (+)
(7)色素の生成 水溶性
(8)ウレアーゼ (-)
(9)オキシターゼ (+)
(10)カタラーゼ (+)
(11)生育 酸性 悪い
中性 良い
温度 37℃ 良
30℃ 良
25℃ 良
(15)酸素に対する態度 好気性
(16)O-Fテスト F
(17)糖類から酸及びガスの発生
酸 ガス
Lアラビノース (-) (-)
Dキシロース (-) (-)
Dグルコース (+) (-)
Dフルクトース (+) (-)
麦芽糖 (+) (-)
ショ糖 (-) (-)
乳糖 (-) (-)
トレハロース (+) (-)
Dソルビット (-) (-)
Dマンニット (-) (-)
イノシット (-) (-)
デンプン (-) (-)
(d)
エクスリンの分解 (+)
セルロースの分解 (+)
マロン酸の利用 (+)
アルギニンの分解 (-)
リジンの脱炭酸反応 (-)
オルニチンの脱炭素反応 (-)
フェニルアラニンの脱アミノ反応 (-)
溶血性 β型溶血
栄養要求性 (+)
βガラクトシダーゼ (-)

2.請求人の主張
(1)無効理由1(要旨変更により出願日が繰り下がることによる新規性欠如)
平成3年11月8日付け手続き補正書により、特許請求の範囲を、本件特許のバチラス・ズブチリス・クボタの菌学的性質の内、(c)生理学的性質の(17)酸及びガスの発生の項目の中「トレハロース」における酸の発生について「(-)」から「(+)」に補正されたが、トレハロースからの酸及びガスの発生については、審査基準にも明細書に記載することを求められるという微生物の同定に極めて重要なファクターであるから、この補正は、願書に添付した明細書または図面の要旨を変更するものとなるので、特許法第40条の規定により本件特許はその補正書が提出された時に出願されたものとみなされる。したがって、本件の公開公報である特開平1-144971号は、本件特許発明の出願前に頒布された刊行物になるから、本件特許発明は、特許法第29条第1項3号に該当するので、無効である。

(2)無効理由2(公然実施)
昭和60年12月から同62年10月にかけ、本件特許権者の九宝物産に在籍していた今村定夫氏は、株式会社東京バイオックスの前身である東京クリーンの開発製品であるハイクリンを用いて、配管内、地下汚水槽、養豚場、クーリングタワー、厨房や食堂、給食センター、ビルピット等の脱臭、腐敗防止、スカム除去、浄化、スケール付着防止の各種実験を実施している。更にBSK菌の実験について、本件出願日前の昭和62年4月24日に行われた沖縄県石川市の石川種豚での実験は、秘密の状態ではなく、公然と行われたものである。したがって、本件特許発明は、本件の特許出願前に公然実施されていたから、特許法第29条第1項2号に該当するので、無効である。

(3)無効理由3(冒認)
本件特許に係る微生物は、東京クリーン社が特許権者に提供したものであり、その代表者である伊藤栄三氏は、その提供前から脱臭効果があることを認識していたので、当該伊藤栄三氏は、本件発明の真の発明者であるか、少なくとも、共同発明者であるところ、本件発明について、伊藤栄三氏から特許受ける権利を承継しないで、特許出願されたので、無効である。

(証拠方法)
請求人は、上記主張を立証するための証拠方法として、次の甲第1-5号証を提出している。
甲第1号証:本件特許出願の平成3年8月11日付け補正書
甲第2号証:特開平1-144971号公報
甲第3号証:今村定夫氏の陳述書
甲第4号証:「食品工業」第24巻第8号1981年4月下旬号「新しい微
生物処理剤を使う汚水の浄化・脱臭について」第73-78頁
(表紙、奥付けとも)
甲第5号証:「バイオ・デオドライザーのニューウェイブ」株式会社九宝物産

3.甲各号証について
甲第3号証には、
「私こと・・・今村定夫は、昭和60年12月から昭和60年10月にかけ、・・・株式会社九宝物産に在籍していました。私は、この期間に於いて株式会社東京バイオックスの前身である東京クリーンの開発製品であるハイクリンを用いて、配管内、地下汚水槽、養豚場、クーリングタワー、厨房や食堂、給食センター、ビルピット等の脱臭、腐敗防止、スカム除去、浄化、スケール付着防止の各種実験を実施し、大きな成果を収めました。
これらの一連の実験は、本件審査手続き中に提出された平成3年11月8日付け意見書に添付された甲第2号証のBSK菌のパンフレットに記載されたBSK菌の実験でありますが、秘密裏には行われず、公然と行ったものです。以上陳述します。」と記載されている。

甲第4号証には、
「大手町ブレーン産業では、東京クリーン(株)の伊藤栄三氏が開発した強化微生物(商品名ハイクリン)によるし尿処理、脱臭について、種々のユーザー実験や、専門分析センター、フィールドテストからデータを集めてきた。」(第73頁右欄第4-8行目)
「特にハイクリンは、好気性菌をスクリーニングし、優良菌を強化、増殖することによって”製造”した新菌種であることから、この脱臭では、ユーザーからの好評を博している。」(第73頁右欄第14-17行目)
「パーライト顆粒内に人工的に変異・強化した菌叢を封じ込めたものがこのハイクリンである。その菌体は硝化菌、緑毛菌、針状菌など(表1)の通りで、約400種もの混合菌集団になっている。」(第74頁左欄下から10-6行目)
「 表1
Pseudomonus系 180種 Nocardia系 45種
Streptmyces系 102種 Achromobacter系 14種
Microccocus系 10種 Flavobacterium系 15種
Mycobacterium系 12種 Aerobacter系 9種
Vibrio系 10種 Nitrobacter系 7種」(第74頁右欄上)
が記載されている。

甲第5号証には、
「BSK菌(登録番号Bacillus Subtilis Kubota 微工研菌寄第9643号(FERMP-9643号)、特許公告平1-144971号」
「私共は、以前鰻の稚魚の輸送の際、へい死させたことがありました。これを防ぐ研究を続けていくうちに、土壌中から特殊な働きのある細菌を分離増殖することができました。細菌学的に分類すると枯草菌の一種と思われますがスカムを分解をしたり、汚水を浄化したり、消・脱臭の働きがあることが分かりました。・・・・そこでこの分解菌株をバチルス・ズブチルス・クボタ(以下BSK菌と称す)と命名し、登録しました。」
「50頭から2,000頭の養豚場の脱臭に効果がありました。糞尿を分離し、糞と尿にそれぞれ適用します。尿は一部を循環させます。」

4.当審の判断
(1)無効理由1について
平成3年11月8日付け補正書により、特許請求の範囲において、本件特許のバチラス・ズブチリス・クボタの菌学的性質の内、「(c)生理学的性質」中、「(17)糖類からの酸及びガスの発生」の項目に掲げられた糖の一つである「トレハロース」について、酸の発生が「(-)」から「(+)」に補正されたが、当該トレハロースについての記載は、菌学的性質として掲げられ種々の性質の内、生理学的性質について、17にも及ぶ項目中の、「糖類からの酸及びガスの発生」についての項目に掲げられた12の糖類の1つにすぎないものである。
本件請求人は、トレハロースが微生物の同定において極めて重要である旨述べ、その根拠としてトレハロースからの酸及びガスの発生について記載するよう審査基準が求めていことを取り上げている。
なるほど、本件の現実の出願日当時に用いられていた審査基準である「応用微生物工業」には、「新種が細菌に属するものである場合には、下記事項について記載する。」(第19頁)とあり、「(c)次の生理学的性質を記載する。」という項目に、第17番目に「下記の糖類から酸及びガスの生成の有無を記載する。」とあり、「(10)トレハロース」(第21頁)が掲げられている。
しかしながら、微生物ごとに記載すべき項目の重要性が異なることは明らかであり(例えば、現在審査基準に準ずる、「特定技術分野の審査の運用指針」第2章生物関連発明に、分類学的性質の記載要領「付録1」には、「本記載要領に列挙された記載事項は、微生物を特定するための目安であって、どの記載事項を記載すれば微生物が十分に特定できるかは、出願に係る微生物ごとに判断されるべきものである。」とされている。)、本件菌株の特定において、トレハロースが何故重要であるかを、請求人は説明していない。
そして、本件明細書には、本件菌株を同定するための種々の菌学的性質が、特許請求の範囲にも記載されていることは、上記に摘示したとおりで、本件菌株は、十分特定されていると言える。更に、本件微生物のバチラス・ズブチリス・クボタについて、本件明細書第6頁(本件特許公報第2頁第4欄第18-19行目)に「本菌株は、Bacillus Subutilis Kubota FERM P-9643 として微工研に寄託されている。」と記載され、その受託証の写しも提出されているように、微工研に本件特許の出願前に寄託されているものである。
してみれば、本件特許発明の微生物は菌学的性質により十分特定されており、寄託番号によりその同一性は担保されているから、その菌学的性質の重要であるとは言えない項目についての記載上の誤りを訂正する補正は、本件発明の要旨を変更しないことが明らかである。
したがって、平成3年11月8日付けての手続き補正書によりされた補正は、本件明細書または図面の要旨を変更するものではなく、適法な補正であるから、本件特許の出願日は繰り下がらないので、本件特許が本件出願前に刊行物に記載された発明であるとすることはできない。

(2)無効理由2について
本件請求人の提出した甲第3号証の陳述書において、今村定夫氏は、「東京クリーンの開発製品であるハイクリンを用いて、各実験を実施し、」したことについては述べているが、具体的に何時どのような条件で実験したので公然と実施されたこととなるのか述べておらず、そもそも、ハイクリンと本件特許発明の菌株バチラス・ズブチリス・クボタとが何故同一であるといえるのか何ら陳述するところがない。請求人が提出した甲第4号証を検討しても、ハイクリンは、上記に摘示したように、約400種もの混合菌集団であって、しかも、表1からは、Bacillus属の菌が含まれていることさえ確認できない。してみれば、ハイクリンが本件特許の菌株であるバチラス・ズブチリス・クボタと同一であるとすることができない。
更に、請求人は、甲第5号証を提出し、BSK菌の実験について、本件出願日前の昭和62年4月24日に行われた沖縄県石川市の石川種豚での実験は秘密の状態ではなく、公然と行われたものであると主張するものの、甲第5号証記載のBSK菌が、微工研菌寄第9643号(FERMP-9643号)という記載から本件特許菌株のバチラス・ズブチリス・クボタであることはわかるが、甲第5号証のいずれの箇所からも沖縄県石川市の石川種豚で昭和62年4月24日に本件特許菌株が公然と用いられたことを伺い知ることができる記載は見あたらない。
したがって、請求人の提出した証拠方法によっては、本件特許発明が本件特許出願前に、公然実施されていたとすることはできない。

(3)無効理由3について
本件特許発明の菌株が、ハイクリンと同じであるということができないから、ハイクリンの開発者であるとされている、伊藤栄三氏が本件発明者であったとすることはできない。
さらに、同氏が本件特許発明に多大な貢献があるから共同発明者であるとする主張についても、本件菌株を土壌から分離して本件発明をなすに際して同氏が如何なる貢献をしたのか具体的に示す証拠方法は何ら提出されていないので、採用できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり、審決する。
 
審決日 2000-11-17 
出願番号 特願昭62-301582
審決分類 P 1 112・ 112- Y (C12N)
P 1 112・ 151- Y (C12N)
P 1 112・ 152- Y (C12N)
P 1 112・ 113- Y (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐伯 裕子  
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 藤田 節
田中 久直
登録日 1993-02-26 
登録番号 特許第1739131号(P1739131)
発明の名称 有用微生物  
代理人 中里 浩一  
代理人 戸田 親男  
代理人 川崎 仁  
代理人 滝口 昌司  
代理人 武田 正彦  
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