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審決分類 審判 全部無効 特38条共同出願 無効とする。(申立て全部成立) C09G
審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許 無効とする。(申立て全部成立) C09G
管理番号 1031228
審判番号 審判1999-35368  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-08-17 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-07-16 
確定日 2001-01-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第2823557号発明「タイヤ用艶出し組成物及びタイヤ用艶出し組成物入り容器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2823557号の請求項1ないし13に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I 手続の経緯・本件発明
特許第2823557号発明(以下「本件発明」という。)は、平成10年3月5日(優先権主張、平成9年12月3日)に特許出願され、平成10年9月4日にその特許の設定登録がなされたものであって、本件請求項1ないし13に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】タイヤ表面に塗布層を形成するために塗布される液状形態を有し、その組成中に有機系艶出し成分と金属粉末とを含有し、かつ前記金属粉末を前記タイヤ表面に定着するための定着高分子成分を1〜15重量%の範囲で含有し、得られる塗布層中に前記金属粉末が分散することにより、前記タイヤに対し前記有機系艶出し成分に基づく艶と、前記金属粉末に基づく金属光沢様の装飾色彩とを同時に付与できるようにしたことを特徴とするタイヤ用艶出し組成物。
【請求項2】タイヤ表面に塗布層を形成するために塗布される液状形態を有し、その組成中に有機系艶出し成分と金属粉末とを含有し、かつ前記金属粉末を溶媒中に分散させるための分散剤を、0.1〜2重量%の範囲で含有し、得られる塗布層中に前記金属粉末が分散することにより、前記タイヤに対し前記有機系艶出し成分に基づく艶と、前記金属粉末に基づく金属光沢様の装飾色彩とを同時に付与できるようにしたことを特徴とするタイヤ用艶出し組成物。
【請求項3】タイヤ表面に塗布層を形成するために塗布される液状形態を有し、その組成中に有機系艶出し成分と金属粉末とを含有し、前記金属粉末を溶媒中に分散させるための分散剤を、0.1〜2重量%の範囲で含有し、かつ前記金属粉末を前記タイヤ表面に定着するための定着高分子成分を1〜15重量%の範囲で含有し、得られる塗布層中に前記金属粉末が分散することにより、前記タイヤに対し前記有機系艶出し成分に基づく艶と、前記金属粉末に基づく金属光沢様の装飾色彩とを同時に付与できるようにしたことを特徴とするタイヤ用艶出し組成物。
【請求項4】前記金属粉末を分散させる溶媒は水を主体とする水系溶媒であり、前記定着高分子成分はシリコーン系の高分子成分を主体に構成されるものである請求項1又は3に記載のタイヤ用艶出し組成物。
【請求項5】前記定着高分子成分は、前記溶媒中に分散するシリコーン系樹脂成分又はシリコーン系ゴム成分である請求項4記載のタイヤ用艶出し組成物。
【請求項6】前記溶媒は水を主体とするものであり、前記分散剤はアニオン系界面活性剤を主体とするものである請求項2ないし5のいずれかに記載のタイヤ用艶出し組成物。
【請求項7】前記金属粉末の含有量が0.5〜5重量%である請求項1ないし6のいずれかに記載のタイヤ用艶出し組成物。
【請求項8】前記金属粉末の平均粒径が10〜300μmである請求項1ないし7のいずれかに記載のタイヤ用艶出し組成物。
【請求項9】前記金属粉末は、Al又はAl合金、及びCu又は真鍮、ブロンズ等のCu合金のいずれかにより構成されている請求項1ないし8のいずれかに記載のタイヤ用艶出し組成物。
【請求項10】前記金属粉末の粒子は、薄板状又はフレーク状の形態をなす請求項1ないし9のいずれかに記載のタイヤ用艶出し組成物。
【請求項11】前記金属粉末は、その粒子表面に着色用のコーティングが施されている請求項1ないし10のいずれかに記載のタイヤ用艶出し組成物。
【請求項12】前記有機系艶出し成分としての液状シリコーンが、水を主体とする溶媒中に5〜30重量%の範囲で懸濁してエマルジョン形態をなし、これに前記金属粉末がさらに分散している請求項1ないし11のいずれかに記載のタイヤ用艶出し組成物。
【請求項13】請求項1ないし12のいずれか記載のタイヤ用艶出し組成物と、そのタイヤ用艶出し組成物を収容する容器とを備えたことを特徴とするタイヤ用艶出し組成物入り容器。」
II 請求人の主張
これに対して、請求人は、(1)本件発明の特許は、特許を受ける権利が原始的には水谷耕治(以下「水谷」という。)と青木吾朗(以下「青木」という。)との共有に係るにも拘わらず、青木からその持ち分を譲渡されたと推認される有限会社ワールドオート企画(以下「ワールドオート企画」という。)が、水谷に無断で、単独で特許出願をしたものであるから、特許法第38条の規定に違反してなされたものである(以下「無効理由1」という。)、(2)ワールドオート企画は、本件発明の発明者ではなく、本件発明の特許を受ける権利のうちの水谷の持ち分を不当に盗んだ者であり、本件発明の特許を受ける権利の全部を承継されていない者であるから、本件出願はいわゆる冒認出願であって、同法第123条第1項第6号に該当する(以下「無効理由2」という。)から、本件発明の特許は無効とすべきである旨主張し、以下の証拠方法を提出している。
1 書証
甲第1号証の1:堀金箔粉株式会社眞嶋規義の書簡
甲第1号証の2:同書簡に添付されたサンプル提出メモ
甲第1号証の3:提供されたサンプルの写真
甲第2号証:水谷が購入したスプレーノズルの写真
甲第3号証の1:有限会社三大中田稔の書簡
甲第3号証の2:提供されたサンプルの写真
甲第4号証:丹羽コルク興業株式会社長内久義の書簡
甲第5号証:商品のスプレーノズル、容器及びパッケージ箱の写真
甲第6号証:水谷購入の艶出し剤の写真
甲第7号証:青木からのファクシミリ書類
甲第8号証:堀金箔粉株式会社のカタログ
甲第9号証:東芝シリコーン株式会社のカタログ
甲第10号証:水谷の実験ノート
2 証人
ア 氏名 眞嶋 規義
住所 名古屋市昭和区車田町1丁目20-2
イ 氏名 中田 稔
住所 名古屋市中区大須2丁目13番26号
ウ 氏名 長内 久義
住所 愛知県春日井市浅山町2-6-6
III 被請求人の主張
一方、被請求人は、本件発明は青木が単独で発明したものであって、水谷は共同発明者ではなく、その特許を受ける権利も青木に属しており、青木からワールドオート企画への承継を経て特許出願され特許になったものであるから、本件発明の特許が無効とされる理由はない旨主張している。
IV 当審の判断
1 本件発明について
本件特許公報によれば、本件明細書には「本発明は、艶出し効果に加えて独特の色彩付与効果を有するタイヤ用艶出し組成物と、そのタイヤ用艶出し組成物を収容した容器とを提供することにある。」(2頁4欄8〜11行)、「上記課題を解決するために本発明のタイヤ用艶出し組成物は、タイヤ表面に塗布層を形成するために塗布される液状形態を有し、その組成中に有機系艶出し成分と金属粉末とを含有し、得られる塗布層中に金属粉末が分散することにより、タイヤに対し有機系艶出し成分に基づく艶と、金属粉末に基づく金属光沢様の装飾色彩とを同時に付与できるようにしたことを特徴とする。」(2頁4欄13〜20行)、「組成物に、金属粉末をタイヤ表面に定着するための定着高分子成分を含有させることで、・・・その定着高分子の配合量は1〜15重量%とするのがよい。」(2頁4欄25〜31行)、「組成物に、金属粉末を溶媒中に分散させるための分散剤を配合することで、・・・これにより、・・・噴射ノズルのノズル孔等に粉末詰まりが生じることを極めて効果的に防止ないし抑制でき」(2頁4欄36〜42行)、「本発明のタイヤ用艶出し組成物入り容器は、上記タイヤ用艶出し組成物と、そのタイヤ用艶出し組成物を収容する容器とを含む。・・・該容器内のタイヤ用艶出し組成物を吸い上げる手動式ポンプと、・・・タイヤ用艶出し組成物を噴霧する噴霧ノズルとを設けることができる。」(2頁4欄44行〜3頁5欄2行)、「組成物中の金属粉末の含有量は0.5〜5重量%で調整するのがよい。」(3頁6欄47、48行)、「溶媒は、タイヤのゴムを侵さない液体を使用するのがよく、例えば水を主体とするもの・・・が使用できる。」(4頁8欄30〜32行)、「有機系艶出し成分は・・・液状のシリコーン・・・を主体とするものが撥水性と艶出し効果に優れるので本発明に好適に使用できる。」(4頁8欄32〜36行)、「組成物中の上記分散剤の配合量は、0.1〜2重量%・・・の範囲で調整することができる。」(5頁10欄18〜20行)と記載されている。
以上の記載によれば、本件発明は、タイヤに艶と金属光沢様の装飾色彩を付与するために、上記特許請求の範囲に記載されたとおり、組成物中に有機系艶出し成分及び金属粉末を含有させ、さらに、タイヤに有機系艶出し成分及び金属粉末を定着されるための定着剤、金属粉末を組成物中に分散させるための分散剤を含有させた水性エマルジョン形態のものであること、及び該組成物をタイヤに吹き付けることができるスプレーノズルを有する容器に係るものであると認められる。
2 証拠から認定できる事実について
成立に争いのない又は真正に成立したものと認められる書証及び眞嶋規義、中田稔及び長内久義の各証言(以下、それぞれ「眞嶋」証言などという。)によれば、次の事柄は、上記作成された書証の裏付けがあるか、又は上記証言により事実等と認識できるものであって、事実と認定することができる。
(1)本件発明は、平成9年12月3日を優先権主張日として、平成10年3月5日に特許出願された。
(2)本件出願において、発明者は青木であり、出願人はワールドオート企画であって、発明者と出願人とは別人である。
(3)本件発明の特許は、平成10年9月4日に設定の登録がなされた。
(4)水谷は、青木から1998年(平成10年)2月16日に特許出願の特許請求の範囲の記載部分をファクシミリで受け取った。
(以上の点は、当事者間に争いがない。)
(5)平成9年9月頃から、水谷は、タイヤに艶と金属光沢を付与するために、ラメ入りタイヤワックスの開発を始めた(「ラメ」とは金色や銀色が細かく分散したキラキラ模様という意味。)。(眞嶋証言反訳4〜6頁、中田証言反訳2、3頁、長内証言反訳3頁、甲第1号証の1ないし3、甲第3号証の1ないし2、甲第4号証)
(6)水谷は、該タイヤワックスの開発は、共同開発と認識していた。(中田証言反訳3、16頁、長内証言反訳2、3頁)
(7)該タイヤワックスは、アルミフレーク、シリコーン、定着剤及び界面活性剤を主たる成分とする水性エマルジョン形態のものである。(眞嶋証言反訳15頁、中田証言反訳3、4、6、11頁、甲第1号証の1ないし3、甲第3号証の1ないし2、甲第6号証)
(8)該タイヤワックスは手動でスプレーノズルによりタイヤに吹き付けるものである。(長内証言反訳3、4、6、8、12頁、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証)
(9)水谷は、ラメ、ワックスがタイヤからすぐ剥がれるので、このため定着剤(接着剤)を配合した。(中田証言反訳7、8頁)
(10)水谷は、ラメが固まるという分散性の問題があったので、このため界面活性剤(分散剤)を配合した。(中田証言反訳10〜13頁)
(11)水谷は、スプレーノズルにラメが詰まるという問題を解決するため試行錯誤した。(眞嶋証言反訳8頁、中田証言反訳15頁、長内証言反訳8、9頁)
(12)平成9年11月頃、水谷は自社内でスプレーノズルによる吹き付け実験した。(中田証言反訳14頁)
(13)水谷は、長内の工場内でスプレーノズルによる吹き付け実験した。(長内証言反訳8頁)
(14)水谷は、平成9年の年末、ラメが詰まらないスプレーノズルを実験して確認した。(長内証言反訳12頁)
3 本件発明の発明者について(無効理由1)
(1)水谷は、平成9年9月頃から、ラメ入りタイヤワックスの開発を始め、その材料となるサンプルの収集を行い、試行実験を繰り返している。該タイヤワックスは、アルミフレーク、シリコーン、定着剤及び界面活性剤を主たる成分とする水性エマルジョン形態のものであり(眞嶋証言反訳15頁、中田証言反訳3、4、6、11頁、甲第1号証の1ないし3、甲第3号証の1ないし2、甲第6号証)、手動でスプレーノズルによりタイヤに吹き付けるものである(長内証言反訳3、4、6、8、12頁、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証)ことが認められる。
(2)水谷は、この開発を共同開発と認識していたが、青木から水谷に、「若者向けにタイヤワックスにラメを入れたものを作りたいが、どうでしょうか。・・・二人で共同してやりましょう。協力してほしい。」(審判請求書7頁3〜5行)との趣旨の共同開発の申し出があったか否かについて、上記事実から明らかではない。しかし、青木が水谷に該タイヤワックスに係る特許出願の特許請求の範囲の記載部分をファクシミリで送付したこと(甲第7号証)からみて、青木と水谷の間には、該ファクシミリ書類の送付日である平成10年2月16日までは、少なくとも該タイヤワックスの開発成果を特許出願し、特許を取得することで合意がなされていたと推認できる。
(3)該タイヤワックスの開発中、ラメ、ワックスがタイヤからすぐ剥がれる、ラメが固まる、スプレーノズルが詰まるといった技術的課題があったが、水谷は、これら課題を解決したものと認められる。
(4)以上のことを総合的に考慮すれば、水谷は、本件発明の完成に深く関与しており、水谷なくして本件発明の完成はなかったものと推認できる。そうすると、水谷は、本件発明の発明者(単独の発明者か、共同発明者の一人かは措くとして)であるというべきである。
(5)被請求人は、本件発明の分散剤の配合量は0.1〜2.0重量%であって、水谷が行ったという上記配合量(例えば、量産が事実上決定したとする配合量は6重量%となっている。審判請求書16頁7〜14行参照。)は、本件発明の配合量とは相入れず、そもそも本件発明の共同発明者であると水谷が主張する余地はない旨主張している。
しかし、上記各証言によれば、水谷は、該タイヤワックスの開発中、上記した技術的課題を解決するために、成分の調整、スプレーノズルの改良等により実験を行っていることが認められ、その際、当然成分の配合量も含めて発明の完成に向けて実験を行っていたと推認されるものであり、上記分散剤の配合量について、仮に青木の発明が加わった部分があったとしても、本件発明が青木のみによってなされたものと認め得べきほど主要なものとは到底考えられない。そして、他に以上の認定をくつがえし、本件発明が青木の単独発明にかかるものと認定するに足る措信すべき証拠はない。
(6)よって、無効理由1には理由がある。
4 特許を受ける権利の承継について(無効理由2)
(1)本件発明の特許出願については、青木単独の発明にかかるものとして、青木から特許を受ける権利を譲渡されたと推認されるワールドオート企画によってなされたものである。
しかし、前記認定のとおり、水谷は本件発明の発明者であると認められるところ、ワールドオート企画が水谷から本件発明の特許を受ける権利を譲渡されたとする証拠は見出さない。
そうすると、本件発明の特許出願は、その発明者又は特許を受ける権利の承継人でない者によってなされたものというべきである。
(2)よって、無効理由2には理由がある。
V むすび
以上のとおりであるから、本件発明の特許は、特許法第38条の規定に違反してなされたものであり、また、発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号及び第6号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-11-08 
結審通知日 2000-11-17 
審決日 2000-11-28 
出願番号 特願平10-73165
審決分類 P 1 112・ 151- Z (C09G)
P 1 112・ 152- Z (C09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柳 和子  
特許庁審判長 花田 吉秋
特許庁審判官 山口 由木
星野 浩一
登録日 1998-09-04 
登録番号 特許第2823557号(P2823557)
発明の名称 タイヤ用艶出し組成物及びタイヤ用艶出し組成物入り容器  
代理人 菅原 正倫  
代理人 松原 等  
代理人 井野 昭  
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