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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G09G
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G09G
管理番号 1031665
異議申立番号 異議1999-73023  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-06-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-09 
確定日 2000-10-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2856241号「プラズマディスプレイ装置の階調制御方法」の請求項1乃至15に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2856241号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 
理由 理由
1.手続の経緯
特許第2856241号の請求項1乃至15に係る発明についての出願は、平成5年11月17日に出願され、平成10年11月27日に設定登録され、その後、その特許について特許異議申立人 石津麗より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年2月15日に訂正請求がなされた後、二度目の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年6月23日に、再度訂正請求がなされるとともに、平成12年2月15日付け訂正請求が取り下げられた後、三度目の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年8月25日に新たな訂正請求がなされるとともに平成12年6月23日付け訂正請求が取り下げられたものである。

2.訂正の適否について
ア.訂正の内容
平成12年8月25日付け訂正請求書にて特許権者が求める訂正の内容は以下のとおりである。
a.請求項1の「1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、該各サブフレームにおける維持発光の回数を当該各サブフレーム毎に個別に設定し、所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」の記載を「1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、該各サブフレームは、ライン上のセルに対して選択的に壁電荷を蓄積するためのアドレス放電を、選択された各ラインに対してそれぞれ行うための共通の期間であるアドレス期間と、該選択された各ラインに対して維持放電を行うための共通の期間である維持放電期間とを含むプラズマディスプレイ装置の階調制御方法において、
前記選択された各ラインにおける維持放電は前記維持放電期間内で行われるものであり、かつ、該各維持放電期間における維持発光の回数を、各サブフレームにおける輝度を基準にして当該各サブフレーム毎に非等比数列的に個別に設定し、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」と訂正する。
b.請求項3及び6を削除する。
c.訂正前の請求項4及び5を請求項3及び4とする。
d.訂正前の請求項7を請求項5とし、同項に記載された「前記複数のサブフレームにおける1つ若しくは2つのサブフレームの維持発行の回数の和、または、2つ若しくは3つのサブフレームの維持発行の回数の和を指定するようにしたことを特徴とする請求項4または5のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」の記載を「前記複数のサブフレームにおける1つ若しくは2つのサブフレームの維持発光の回数の和、または、2つ若しくは3つのサブフレームの維持発光の回数の和を指定した後に、該各サブフレームにおける維持発光の回数を個別に設定するようにしたことを特徴とする請求項3または4のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」と訂正する。
e.訂正前の請求項8を請求項6とし、同項に記載された「前記複数のサブフレームにおいて、最大階調値のサブフレームの輝度を指定するようにしたことを特徴とする請求項4または5のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」の記載を「前記複数のサブフレームにおいて、最大階調値のサブフレームの輝度を指定した後に、該各サブフレームにおける維持発光の回数を個別に設定するようにしたことを特徴とする請求項3または4のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」と訂正する。
f.訂正前の請求項9を請求項7とし同項の「維持放電を行う平行する維持放電電極(7,8)と、該維持放電電極に直行して配置されたアドレス電極(3)とを具備し、前記維持放電電極の一方(7)を共通接続し、且つ、他方(8)を表示ライン毎に独立して設け、壁電荷をメモリ媒体として利用した面放電構造を有する3電極型面放電交流型プラズマディスプレイ装置であって、全画面における表示データの書き込みを該表示データに応じて維持放電に必要な壁電荷を形成することで行うアドレス期間と発光のための維持放電を繰り返して行う維持放電期間とを分離してプラズマディスプレイ装置を駆動し、1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、そして、該各サブフレームにおける維持発光の回数を当該各サブフレーム毎に個別に設定して所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。」の記載を「維持放電を行う平行する維持放電電極(7,8)と、該維持放電電極に直行して配置されたアドレス電極(3)とを具備し、前記維持放電電極の一方(7)を共通接続し、且つ、他方(8)を表示ライン毎に独立して設け、壁電荷をメモリ媒体として利用した面放電構造を有し、
全画面における表示データの書き込みを該表示データに応じて維持放電に必要な壁電荷を各ラインごとに共通の期間内で形成することで行うアドレス期間と、各ラインに対して発光のための維持放電を繰り返して行うための共通の期間である維持放電期間とを分離して、各ラインにおける前記維持放電が前記維持放電期間内で行われるように駆動し、
1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成した3電極型面放電交流型プラズマディスプレイ装置であって、
該各維持放電期間における維持発光の回数を、各サブフレームにおける輝度を基準にして当該各サブフレーム毎に非等比数列的に個別に設定して、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。」と訂正する。
g.訂正前の請求項10を請求項8とし、同項記載の「請求項9の」の記載を「請求項7の」と訂正する。
h.訂正前の請求項11を請求項9とし、同項の「前記記憶手段を、前記プラズマディスプレイ装置における駆動波形用記憶素子(55)の空き領域により構成し、前記各サブフレームの維持発光の回数情報を当該駆動波形用記憶素子の空き領域に設定するようにしたことを特徴とする請求項10のプラズマディスプレイ装置。」の記載を「維持放電を行う平行する維持放電電極と、該維持放電電極に直行して配置されたアドレス電極とを具備し、前記維持放電電極の一方を共通接続し、且つ、他方を表示ライン毎に独立して設け、壁電荷をメモリ媒体として利用した面放電構造を有する3電極型面放電交流型プラズマディスプレイ装置であって、全画面における表示データの書き込みを該表示データに応じて維持放電に必要な壁電荷を形成することで行うアドレス期間と発光のための維持放電を繰り返して行う維持放電期間とを分離してプラズマディスプレイ装置を駆動し、1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、そして、該各サブフレームにおける維持発光の回数を当該各サブフレーム毎に個別に設定して所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたものであり、
各サブフレームにおける維持発光の回数を設定して記憶する記憶手段を駆動波形用記憶素子の空き領域により構成し、前記各サブフレームの維持発光の回数情報を当該駆動波形用記憶素子の空き領域に設定するようにし、該記憶手段から前記各サブフレームの維持発光の回数情報を随時読み出すようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。」と訂正する。
i.訂正前の請求項12乃至15を請求項10乃至13とし、それぞれの請求項に記載された「請求項10の」の記載を、いずれも「請求項8の」と訂正する。
j.明細書【0023】の「【課題を解決するための手段】本発明によれば、1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、該各サブフレームにおける維持発光の回数を当該各サブフレーム毎に個別に設定し、所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の階調制御方法が提供される。」の記載を「本発明によれば、1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、該各サブフレームは、ライン上のセルに対して選択的に壁電荷を蓄積するためのアドレス放電を、選択された各ラインに対してそれぞれ行うための共通の期間であるアドレス期間と、該選択された各ラインに対して維持放電を行うための共通の期間である維持放電期間とを含むプラズマディスプレイ装置の階調制御方法において、前記選択された各ラインにおける維持放電は前記維持放電期間内で行われるものであり、かつ、該各維持放電期間における維持発光の回数を、各サブフレームにおける輝度を基準にして当該各サブフレーム毎に非等比数列的に個別に設定し、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の階調制御方法が提供される。」と訂正する。
k.明細書【0026】の「発行」(4箇所)の記載をいずれも「発光」と訂正する。
l.明細書【0031】の「すなわち、従来のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、各サブフレームにおける維持発光の回数が等比数列的になっている(1,2,4,8,…)のに対して、本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、各サブフレームにおける輝度を」の記載を「なお、従来のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、各サブフレームにおける維持発光の回数が等比数列的になっている(1,2,4,8,…)のに対して、本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、上記のように各サブフレームにおける輝度を」と訂正する。
m.明細書【0035】の「ここで、(12)式または(13)式を用いた場合、B=f1(P)によっては、任意の階調値の輝度に対して、その次に大きい階調値の輝度が前者の輝度を上回ってしまう事態を生じる恐れがあるので、これを防ぐために(14)式の条件を付加する。この(14)式は、任意のサブフレームのパルス数が、それ以下のパルス数を有するサブフレームのパルス数の総和より、大きくなることを示している。すなわち、任意の階調値を有する第1のサブフレームの輝度に対して、第1のサブフレームの次に大きい階調値を有する第2のサブフレームの輝度が該第1のサブフレームの輝度を上回らないようにすることができる。」の記載を「ここで、(12)式または(13)式を用いた場合、B=f1(P)によっては、任意の階調値Kの輝度に対して、Kより小さい次の階調値K-1の輝度が前者の輝度を上回ってしまう事態を生じる恐れがあるので、これを防ぐために(14)式の条件を付加する。この(14)式は、任意のサブフレームのパルス数が、それ以下のパルス数を有するサブフレームのパルス数の総和より、大きくなることを示している。この結果、任意の階調値を有する第1のサブフレームの輝度に対して、第1のサブフレームより小さな階調値を有する、第1のサブフレームの次の第2のサブフレームの輝度が、該第1のサブフレームの輝度を上回らないことにもなる。」と訂正する。
n.明細書【0036】の「発行」(2箇所)の記載を、いずれも「発光」と訂正する。

イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記a及びfに関する記載として、「前記各サブフレームにおける維持発光の回数を、非等比数列的に設定するようにしたことを特徴とする請求項1のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」(請求項3)、「図9に示されるように、1サブフレーム内は、アドレス期間および維持放電期間に分離される。そして、アドレス期間においては、全面書き込み,全面消去,および,線順次書き込み(アドレス)が行われ、また、維持放電期間においては、全ライン同時に維持パルスが印加され、書き込みアドレスが実行され壁電荷が蓄積されたセルに対して維持放電が行われる。」(明細書【0013】)、「図12は従来のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法における課題を説明するための図であり、維持パルス数と輝度との関係を示すものである。図12中の実線で示すように、理想的には、輝度は維持放電の回数に対してリニアな関係にあり、この時、階調値に対する輝度の関係もリニアとなる。しかしながら、図12中の破線で示すように、実際の駆動においては、維持放電の回数に対して輝度はリニアな関係にならずに曲線となってしまう。その結果、階調値に対する輝度もリニアな関係にならず、表示品質の著しい低下を招くことになる。このような問題は、近年の階調数の増大の要求に伴って、重要なものとなって来ており、例えば、64階調のような多階調となると、上記の表示品質の低下が大きな問題となる。
【0022】本発明は、上述した従来のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法が有する課題に鑑み、階調値に対する輝度をリニアな関係としてプラズマディスプレイ装置の表示品質を向上させることを目的とする。」(明細書【0021】-【0022】)、「本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、各サブフレームにおける輝度を基準にして該各サブフレームの維持発光の回数を規定するようになっている。したがって、本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、各サブフレームにおける維持発光の回数が非等比数列的になる。」(明細書【0031】)の記載がある。
さらに、図11には本件発明の前提となる技術としてプラズマディスプレイ装置を駆動する放電期間の概念図が記載されており、同図によればアドレス期間及び維持放電期間はそれぞれが分離されており、かつ、各ラインにおいてはこれらが共通のアドレス期間及び維持放電期間となっていることが理解できる。
また、図12から従来技術の問題点として、維持放電パルスの数が増加するに従って、輝度が理論値どおりに増加せず、上記増加しなかった分をリニアに増加するように補うことが本件発明の目的であったことが理解できる。
したがって、上記a及びfの訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内で、プラズマディスプレイ装置の駆動に係る具体的な構成及び、維持放電期間における発光回数の定義を実施例に記載された内容となるよう、具体的に限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮である。
上記bの訂正は請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮である。
上記c、g、iの訂正は請求項の削除に伴い、請求項に付した項番が連続となるように訂正し、また、上記請求項の項番が訂正されたことにより、引用形式で記載された請求項の記載において、引用する対象の請求項の番号を、訂正された新たな番号と訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明である。
上記d及びeの訂正は、上記c、g,iの訂正と同様の請求項の削除に対応する訂正を行っているとともに、明細書の下記の記載に基づき減縮を行っている。
本件特許明細書には「さらに、高い輝度を得たい場合は各サブフレームの維持パルス数を多くすればよいが、一垂直同期期間内での限られた時間内に入る維持パルス数は限られているため、まず、一垂直同期信号内でのパルス数の総和(P1+P2+P3)、または、最上位サブフレームのパルス数(P3)を設定したのち、(4)式から(11)式の条件を満たす(12)式のbS1、または、(13)式のbS2が最小となる時のP1,P2,P3を求めれば、それが最適維持パルス数となる。このとき、 (2)式のB=f2(K)の設定は必要ない。なお、図2の実施例では、SF3のパルス数は60に設定されている。すなわち、複数のサブフレームにおける1つ若しくは2つのサブフレームの維持発行の回数の和、または、2つ若しくは3つのサブフレームの維持発行の回数の和を指定するように構成してもよい。
【0037】次に、図3に示すように、十分長い一垂直同期期間が有り、且つ、目標とする最高輝度の設定が必要な場合、まず、最高輝度f1(P1+P2+P3)を設定した後、 (3)式から(10)式の条件を満たす(12)式のbS1、または、(13)式のbS2が最小となる時のP1,P2,P3を求めれば、それが最適維持パルス数となる。このとき、 (2)式のB=f2(K)の設定は必要ない。なお、図3の実施例では、階調値7の輝度は140cd/m2 と設定されている。すなわち、複数のサブフレームにおいて、最大階調値のサブフレームの輝度を指定するように構成してもよい。」(明細書【0036】-【0037】)の記載がある。
したがって、上記d及びeの訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内で、維持発光の回数の設定方法を実施例に記載された内容となるよう、具体的に限定したものである。
よって、上記d及びeの訂正は、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮である。
上記hの訂正は、訂正前の請求項11が訂正前の請求項10(上記請求項10は請求項9を引用する形式で記載された請求項である。)を引用する形式で記載されていたものを、引用する請求項の構成を記載することにより独立した請求項の記載とし、また、上記請求項の削除に伴い、請求項の番号が連番となるように訂正したものであるから、明りょうでない記載の釈明である。
上記jの訂正は特許請求の範囲の訂正にあわせて、対応する発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから明りょうでない記載の釈明である。
上記k及びnの訂正は誤記の訂正である。
上記l及びmの訂正は明りょうでない表現を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明である。
そして、上記a乃至nの訂正は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

ウ.独立特許要件の判断
A.訂正後の本件発明
訂正後の本件特許出願に係る発明は、本件訂正明細書の請求項1乃至13に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1、7及び9に係る発明(以下、それぞれ本件発明1、7及び9という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、7及び9に記載された次のものである。

【請求項1】
1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、該各サブフレームは、ライン上のセルに対して選択的に壁電荷を蓄積するためのアドレス放電を、選択された各ラインに対してそれぞれ行うための共通の期間であるアドレス期間と、該選択された各ラインに対して維持放電を行うための共通の期間である維持放電期間とを含むプラズマディスプレイ装置の階調制御方法において、
前記選択された各ラインにおける維持放電は前記維持放電期間内で行われるものであり、かつ、該各維持放電期間における維持発光の回数を、各サブフレームにおける輝度を基準にして当該各サブフレーム毎に非等比数列的に個別に設定し、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。
【請求項7】
維持放電を行う平行する維持放電電極(7,8)と、該維持放電電極に直行して配置されたアドレス電極(3)とを具備し、前記維持放電電極の一方(7)を共通接続し、且つ、他方(8)を表示ライン毎に独立して設け、壁電荷をメモリ媒体として利用した面放電構造を有し、
全画面における表示データの書き込みを該表示データに応じて維持放電に必要な壁電荷を各ラインごとに共通の期間内で形成することで行うアドレス期間と、各ラインに対して発光のための維持放電を繰り返して行うための共通の期間である維持放電期間とを分離して、各ラインにおける前記維持放電が前記維持放電期間内で行われるように駆動し、
1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成した3電極型面放電交流型プラズマディスプレイ装置であって、
該各維持放電期間における維持発光の回数を、各サブフレームにおける輝度を基準にして当該各サブフレーム毎に非等比数列的に個別に設定して、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項9】
維持放電を行う平行する維持放電電極と、該維持放電電極に直行して配置されたアドレス電極とを具備し、前記維持放電電極の一方を共通接続し、且つ、他方を表示ライン毎に独立して設け、壁電荷をメモリ媒体として利用した面放電構造を有する3電極型面放電交流型プラズマディスプレイ装置であって、全画面における表示データの書き込みを該表示データに応じて維持放電に必要な壁電荷を形成することで行うアドレス期間と発光のための維持放電を繰り返して行う維持放電期間とを分離してプラズマディスプレイ装置を駆動し、1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、そして、該各サブフレームにおける維持発光の回数を当該各サブフレーム毎に個別に設定して所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたものであり、
各サブフレームにおける維持発光の回数を設定して記憶する記憶手段を駆動波形用記憶素子の空き領域により構成し、前記各サブフレームの維持発光の回数情報を当該駆動波形用記憶素子の空き領域に設定するようにし、該記憶手段から前記各サブフレームの維持発光の回数情報を随時読み出すようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

B.当審が通知した取消理由の概要
上記3回の取消理由通知で当審が通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
i)特許法第36条について
訂正前の本件請求項1、6及び9には詳細な説明に記載された実施例または効果との対応が明りょうでない記載があり、特許法第36条の規定を満たしていない。

ii)特許法第29条第2項について
訂正前の本件請求項1乃至10(訂正後の請求項1乃至8に相当する。)及び請求項12乃至15(訂正後の請求項10乃至13に相当する。)に係る発明は、下記の刊行物に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

刊行物1:特開平4-299385号公報
刊行物2:特開平3-138692号公報
刊行物3:特開平4-195188号公報
刊行物4:特開平4-284491号公報
刊行物5:特開平1-163795号公報
刊行物6:特開平4-278989号公報
刊行物7:特開平1-193797号公報

C.取消理由通知についての判断
i)特許法第36条について
訂正前の請求項6は削除された。また、訂正前の請求項1及び9は、平成12年8月25日付け訂正請求により訂正され、それぞれ、訂正後の請求項1及び7となり、また、上記訂正により発明の詳細な説明に記載された実施例及び効果との対応も明りょうとなったから、上記取消理由は解消した。

ii)特許法第29条第2項について
a.刊行物の記載事項
上記刊行物1乃至7には下記のとおりの記載がある。
刊行物1:特開平4-299385号公報
「メモリ型表示パネルのメモリ駆動方法としては、基本的には表示データの書込み(ON状態の開始)、維持および消去(OFF状態の開始)の3動作よりなり、書込みには線順次に全行にわたる行方向の走査を行ない、書込みから消去までの期間維持発光を行なわせ、消去から次の書込みまで非発光状態を保つことによって1駆動サイクルを構成する表示動作を行なう。発光状態から非発光状態への転移には表示パネルに消去動作を行なわせる消去駆動が必要である。維持期間の長さによって表示輝度が変わるので、1フィールドの入力画像信号を表示ビット毎の画面(ビット面)に対応するサブフィールド毎の信号に分割し、サブフィールド毎に必要な2進荷重(2の冪乗比)の表示輝度に相当する維持期間になるように設定して入力画像信号の各ビット面を表示し、それらのビット面の視覚的な合成効果として画像の中間調を表示する。表示パネルの特性によっては維持駆動回数と輝度が比例しない場合もあるが、このような場合は維持駆動の個数を補正すればよく、以下2の冪乗比と表現した場合も上記のように補正した場合を含むものと解釈する。」(公報【0006】)
「一方、AC型気体放電表示パネルにおいては、ネオンガスを用いた単色表示パネルをランダムアクセスして用いた例もあるので、一見、インターレース走査によるテレビ画像表示は容易とも考えられるが、カラー表示の場合には封入ガスが変わること、また、紫外線が隣接セルの蛍光体を励起することによる混色を防止するためにDC型表示パネルと同様に表示セル間の障壁を導入する必要があること、テレビ画像表示には高速動作が必要なことなど、上述した例とは条件が変わるので、単純に1行おきに駆動すればインターレース走査ができるか否かは不明である。」(公報【0024】)
刊行物2:特開平3-138692号公報
「本実施例では、第3図に示すように隣合う階調同士で表示期間が相反するか、それに近い状態にあるものを避けるように各階調が選択される。・・その他の階調についても同様である。したがって、本実施例ではどのような階調の組み合わせが画像上で隣合わせになっても境界の揺らぎの発生を防止して画像表示の性能を向上させることができる。」(公報4頁左上欄11-20行)
そして、第3図を参酌すると、たとえば、組み合わせ8の行においては、第6サブフレームのみで表示を行っておりその表示率(輝度)は29であり、それ以前のサブフレームの和から表示される組み合わせ7よりも表示率(輝度)が低いため組み合わせ8が選択されないことが見て取れる。
刊行物3:特開平4-195188号公報
「第5図はPDP3aのX電極X、Y電極Yj、及びアドレス電極Anにそれぞれ印加される駆動電圧の波形を示す図、第6図は特開昭57ー78751号又は特開昭61ー39341号公報などにより周知の三電極構造を持った面放電型のPDP3aの概略の構成図である。
第6図において、PDP3aの画面4aは、横方向に延びる互いに平行なX電極X及びY電極Yjと、縦方向に延びるアドレス電極Anとのそれぞれの交点において、放電セルCが画定されている。
第5図において、各ラインであるY電極Yj,Yj+1,Yj+2…及びX電極Xに対して、同時にアドレスサイクルCYaが実行される。
アドレスサイクルCYaにおいては、全部のラインに対して同時に書き込みパルスPwがX電極Xから印加され、これによって壁電荷が形成される。
次に、各ライン毎に、順次、消去パルスPfがY電極から印加されるとともに、それぞれの消去パルスPfの印加と同時に、当該サブフレームSF1〜4において発光表示すべき画素(放電セルC)について、消去アドレスパルスPaがアドレス電極Anから印加される。
消去アドレスパルスPaが印加された画素のみについて、消去用放電が発生し壁電荷が消去される。一方、消去アドレスパルスPaが印加されない画素は壁電荷が維持される。
表示サイクルCYiにおいては、全部のラインに対して同時に維持パルスPsy,Psxが印加され、これによって、壁電荷が形成されている画素が発光する。
サブフレームSF1〜4に応じて表示サイクルCYiの長さ(維持パルスPsy,Psxの個数)が相違し、それぞれの長さに応じた輝度が得られるようになっている。
これらのサブフレームSF1〜4を合成することによって、1フレームFMの階調表示が行われる。」(公報5頁右下欄5行-6頁右上欄3行)
刊行物4:特開平4-284491号公報
「従って、例えば1フレーム16.7msで、アドレス周波数3MHzの場合、波形ROMを単純に1フレームで構成すると、プログラムの容量は49kB必要となる。更に、輝度切り換えをN段設けるとすると、波形ROMの容量は49×NkB必要となり、コスト高になると共に、波形プログラムの設計に時間がかかり、またプログラム作成ミスも増え作業性が悪いという問題があった。」(公報【0007】)
「1フレーム内のサブフィールド数を計数するフィールドカウンタOと・・・フィールドカウンタOの出力と信号BCをデコードして該サブフィールドにおけるサスティン数の設定値を出力するデコーダNと」(公報【0012】)
「つまり、ROMアドレスカウンタFの内容が”19”から”22”までの間は、サスティン期間の設定された回数数(図4ではM回)分の繰り返しサイクルに入るので、波形ROMDのアドレス”19”から”22”までの内容がM回繰り返し制御信号として出力される。この動作は上述のアドレス期間の繰り返しサイクルと同様の制御による。また、サスティン期間の繰り返しサイクルがM回行なわれると信号loadがディジタルコンパレータMからの出力信号EQ2により禁止されて、ROMアドレスカウンタFはサスティン期間から抜け出す。」(公報【0015】)
「行側ドライバ回路12及び列側ドライバ回路13に対するドライバ制御信号を、1フレーム内の複数個のフィールドにおける書き込みパルス印加期間とアドレス期間及びサスティン期間の繰り返しサイクルの最小単位について、プログラムとして保持する波形ROM15と、前記フィールド数、並びに前記書き込みパルス印加期間とアドレス期間及びサスティン期間の繰り返しサイクル毎の該繰り返し数を計数して該繰り返しサイクルの最小単位に応じたプログラムを前記波形ROM15より出力させる波形ROM制御手段16とを有して構成する。」(公報【0009】)
刊行物5:特開平1-163795号公報
「本発明は、発光を維持するに足る維持パルスを印加されたときは発光し、印加されないときは非発光状態となり、発光と非発光の何れかの状態を選択的にとるプラズマデイスプレイの如き2値表示素子を画素としてマトリクス状に配列することにより構成した2値表示パネルを画面とする2値表示パネル画像表示装置に関するものであり、」(公報2頁左下欄8-14行)
「上記従来技術では、2値表示パネル上に多階調画像を表示することができるが、次に述べるような意味でテレビ受像機の画面としての機能を十分もたせることについては、配慮していなかった。
例えば、テレビ画面を見る場合、その周囲条件を考えて、画面の最小輝度(黒レベル)や、最大輝度と最低輝度との比(コントラスト比)を調整する機能をテレビ受像機は設けている。
具体的には現行のテレビ受像機では、前者の黒レベル調整は、表示すべき映像信号の直流レベルを変えることにより行ない、後者のコントラスト調整は映像信号の振幅を変えることにより行っている。
このように従来、黒レベル調整(輝度調整或いはブライト調整とも云う)、コントラスト調整は映像信号の直流レベル調整、振幅調整で行なうのが普通であった。
しかし、2値表示パネルを多階調表示で駆動する場合、映像信号の直流レベル調整,振幅調整を行なうと、ブライト調整,コントラスト調整によって有効な階調数が損なわれてしまうという問題を生じる。
例えば、パルス幅変調により多階調表示を行う場合を例にとる。このパルス幅変調を行なう為、通常は映像信号をA/Dコンバータ(Analog-Digital変換器)でPCM(Pulse-Code Modulation)信号に変換して用いる。このA/Dコンバータの入力映像信号の直流レベル,振幅を調整すると次の様なことになる。」(公報3頁右上欄4行-左下欄12行)
「本発明の目的は、A/Dコンバータのビット数,もしくはPCM信号のビット数で決まる画像の階調数(例えば256階調)を正常な調整範囲内において損なうことなく、A/Dコンバータの入力ダイナミックレンジで制限される調整範囲を越えて広範囲に再生画面の輝度調整を行なうことのできる2値表示パネル画像表示装置を提供することにある。
輝度調整としては広義には、上述の通りブライト調整,コントラスト調整があるが、本発明での対象は特にブライト調整にある。」(公報4頁左上欄7-17行)
刊行物6:特開平4-278989号公報
「輝度制御信号の値に応じた輝度レベルで各種データを表示するディスプレイと、前記ディスプレイの輝度レベルの変更を指示するデータを入力するキーボードと、このキーボードからの入力データに応じて、前記ディスプレイの輝度レベルを指示する指示手段と、前記ディスプレイの輝度レベルが前記指示手段によって指定された輝度レベルになるように、前記ディスプレイに供給される輝度制御信号の値を制御する輝度制御手段とを具備することを特徴とするバッテリ駆動可能な情報処理機器。」(公報特許請求の範囲請求項1)
「なお、上記実施例では、表示部として液晶ディスプレイ37を例に説明したが、LCDに限らず、図9に示すように、プラズマディスプレイパネル(PDP)70を使用することも可能である。
【0067】
この場合、プラズマディスプレイパネル(PDP)70の輝度は、そのパネル内部での放電量によって変化する。このため、インテリジェントパワーサプライ30からの輝度制御信号は、光源38ではなく、プラズマディスプレイパネル(PDP)に直接入力すれば良い。」(公報【0066】、【0067】)
刊行物7:特開平1-193797号公報
「自発光型表示装置と、該自発光型表示器を駆動する駆動回路とを有する自発光型表示装置において、
上記駆動回路は、
上記自発光型表示器の表示量を検出する表示量検出手段と、
該表示量検出手段の検出出力に基づいて、上記自発光型表示器の表示量の増大を抑制する如く、その表示量を制御する表示量抑制手段とを備えることを特徴とする自発光型表示装置」(特許請求の範囲第1項)
「本発明はプラズマ表示装置・・等の自発光型表示装置に関する。」(公報1頁右下欄20行-2頁左上欄3行)

b.対比・判断
本件発明1及び7と上記刊行物1乃至7に記載された発明とを対比すると、上記刊行物1乃至7には、本件発明1及び7を特定する事項である「選択的に壁電荷を蓄積するためのアドレス放電を、選択された各ラインに対してそれぞれ行うための共通の期間であるアドレス期間と、該選択された各ラインに対して維持放電を行うための共通の期間である維持放電期間とを含むプラズマディスプレイ装置の階調制御方法において、維持発光の回数を、個別に設定し、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように階調表示を行う」(請求項1)、「各ラインごとに共通の期間内で形成することで行うアドレス期間と、各ラインに対して発光のための維持放電を繰り返して行うための共通の期間である維持放電期間とを分離して駆動し、維持発光の回数を、個別に設定して、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように階調表示を行う」(請求項7)の構成(以下、これらの構成をまとめて相違点という。)が記載されていない。
すなわち、上記刊行物1には「表示パネルの特性によっては維持駆動回数と輝度が比例しない場合もあるが、このような場合は維持駆動の個数を補正すればよく、以下2の冪乗比と表現した場合も上記のように補正した場合を含むものと解釈する。」の記載があるとおり、気体放電パネル(プラズマディスプレイも気体放電パネルである。)において表示パネルの特性によって維持駆動回数と輝度が比例しない場合も存在し、これを補正することが記載されているが、上記刊行物1に記載された気体放電パネルは、アドレス期間と維持放電期間は存在するものの、それらは各ラインに共通のものではない。
そして、上記刊行物3には、各ラインに共通のアドレス期間と維持放電期間を有するプラズマディスプレイの基本的な構成は記載されているが、本件発明1及び7が解決する課題は記載されておらず、したがって、当該課題を解決するための構成も記載されていない。
また、上記刊行物2には隣り合う階調値の間で輝度が逆転しないようにするための技術が、上記刊行物4には記憶手段に維持発光回数を記憶することが、上記刊行物5には輝度調整をボリュームで行うことが、上記刊行物6には外部から輝度の指定を行うことが、上記刊行物7には消費電流を一定にすることがそれぞれ記載されているが上記相違点に関連する記載はない。
これに対し、本件発明1及び7も維持駆動回数と輝度が比例しない場合に補正を行うものではあるが、本件発明のものは、各ラインに共通のアドレス期間と維持放電期間を有するプラズマディスプレイにおいて、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように維持発光回数を所定の回数になるように設定するものである。
したがって、上記刊行物1には維持放電回数を補正する技術思想は記載されているものの、上記維持放電回数を補正するための課題が本件発明1及び7に記載された維持放電回数を補正するための課題と異なるものであり、上記刊行物3にはアドレス期間と維持放電期間を有するプラズマディスプレイが記載されているものの、維持放電回数を補正する必要があるという課題が記載されていない。
そして、本件発明1及び7は、各ラインに共通のアドレス期間と維持放電期間を有するプラズマディスプレイにおいて、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下という課題を解決するために、維持放電回数を個別に設定するという構成を用いたことにより、上記刊行物1乃至7記載の発明からは予測し得ない効果を得ることができるものである。
したがって、本件発明1及び7は上記刊行物1乃至7の記載から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
そして、本件発明2乃至6は実質的に本件発明1を引用してさらに限定する構成を付加するものであり、また、本件発明8、10乃至13は実質的に本件発明7を引用してさらに限定する構成を付加したものであるから、上記本件発明1及び7について記載したとおり、上記刊行物1乃至7の記載から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、当審が通知した取消理由はいずれも解消しており、本件発明1乃至13は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

D.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き及び同条第3項で規定する訂正の要件については、平成6年改正法附則第6条第1項の規定により「なお従前の例による」とされる、改正前の特許法第126条第1項ただし書き乃至第3項までの規定に適合しているから、当該訂正を認める。

3.特許異議の申し立てについて
ア.本件発明
上記のとおり、平成12年8月25日付け訂正請求は認められたから、本件特許出願に係る発明は、上記訂正請求書の特許請求の範囲の請求項1乃至13(以下、本件発明1乃至13という。)に記載されたとおりのものである。
イ.申立の概要
特許異議申立人 石津麗は、特許異議の申立て時に、証拠として甲第1乃至3号証(当審が上記取消理由通知書で引用した刊行物1、4、7とその内容は同じである)を提出し、本件請求項1乃至15に係る発明(訂正後の本件発明1乃至13)は、甲第1乃至3号証に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定に該当し、本件請求項1乃至15(訂正後の請求項1乃至13)の特許は、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきである旨主張するとともに、本件請求項14及び15に係る発明(訂正後の本件発明12及び13)は、特許明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、特許法第36条第5項及び第6項の規定に違反して特許されたものであり、本件請求項14及び15(訂正後の請求項12及び13)に係る発明の特許は、特許法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきである旨主張している。

ウ.判断
i)特許法第36条について
a.請求項12(訂正前の請求項14)について
請求項12には下記のとおりの記載がある。

「【請求項12】前記プラズマディスプレイ装置は、該プラズマディスプレイ装置の消費電流を所定値以下に制御する消費電流制御手段(4)を具備し、前記各サブフレームにおける維持発光の回数を複数の組み合わせとして前記記憶手段(55)に設定し、該複数の組み合わせの任意の1つを前記消費電流制御手段(44)の出力に応じて選択して、表示率の変化に係わらず消費電力を一定とするようにしたことを特徴とする請求項10のプラズマディスプレイ装置。」

上記請求項に関する記載として明細書の【0044】には下記のとおりの記載がある。

「【0044】さらに、本プラズマディスプレイ装置では、発光輝度および表示率により消費電流が大きく異なるため、公知の技術を使用して、電源経路に消費電流検出回路42を設け、表示率の増加等により消費電流が規定値を上回るような場合、輝度を抑える事により消費電流を抑えて設定値以下に制御するようになっている。この消費電力を制御するための自動消費電力制御部(消費電流制御手段)44の出力を維持パルス数パターン選択用加算器で加算してROM55に書き込むことにより、消費電流を一定値以下に抑えつつ滑らかな階調制御を行うことが可能となる。すなわち、表示率の変化に係わらず消費電力を一定とすることができる。」
さらに図4には上記明細書の記載に対応して、維持パルス数パターン選択用加算器、自動消費電力制御器、輝度調整ボリューム(それをA/D変換する装置)、維持パルス数パターン選択信号外部入力部、ROMが記載されており、維持パルス数パターン選択用加算器には、自動消費電力制御器、輝度調整ボリューム、維持パルス数パターン選択信号外部入力部の出力がそれぞれ入力するよう構成され、維持パルスパターン選択用加算器の出力がROMに出力されている。そして、当該維持パルスパターン選択用加算器とROMを結ぶ線は「ROMアドレス入力」と記載されている。
ところで、輝度調整ボリュームの出力及び維持パルス数パターン選択信号外部入力部の出力については明細書に下記のとおり記載されている。

「【0042】さらに、ROM内の維持放電パルス数データを一通りのみでなく、(12)式および(13)式を用いて相対輝度の異なる複数通りのパターンのデータを算出して設定すれば、一定の階調表示を保ちつつ輝度調整が可能となる。輝度調整ヴォリューム51により設定された輝度情報は、A/D変換52によりディジタル信号に変換されROMアドレス信号となり、維持発光回数データの選択を行う。すなわち、輝度調整用ボリューム51によりROMに設定された各サブフレームの維持発光の回数情報の内の1通りを選択するように構成することができる。これにより、ユーザーによる装置の使用環境に応じた輝度設定が可能となる。
【0043】この時、選択スイッチSW1を接点(1) 側から接点(2) 側へ切り替えることによって、輝度調整ヴォリューム51による情報の代わりに維持パルス数パターン選択情報外部入力部53を介して情報を装置外部から入力させることができる。また、サブフレームの維持発光の回数情報を複数の組み合わせとしてROM55に設定し、該複数の組み合わせの任意の1つをプラズマディスプレイ装置の外部から供給する選択信号により選択するように構成してもよい。これにより、輝度調整の遠隔操作等が可能となる。」

これらの記載からみて、輝度調整ボリュームの出力及び維持パルス数パターン選択信号外部入力部の出力はROMに複数記憶された維持発光回数情報の組合わせを選択するための信号であるとみることができ、自動消費電力制御部からの出力を加えたあとでも、その出力がROMアドレス入力となっていることから上記ROMに記憶された複数の組合せから一つを選択するものであることは理解できる。
してみると、上記消費電力制御部の出力は、輝度調整ボリュームまたは維持パルス数パターン選択信号外部入力部からの信号と加算されることによりROMに記憶された複数の組合せから一つを選択する信号となるものであることは当業者には十分理解できるものであり、「表示率の変化に係わらず消費電力を一定とする」との記載もあるから、上記請求項12に対応する記載は特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている。

b.請求項13(訂正前の請求項15)について
請求項13には下記のとおりの記載がある。

「【請求項13】 前記各サブフレームの維持発光の回数情報を該プラズマディスプレイ装置の外部から供給するようにしたことを特徴とする請求項10のプラズマディスプレイ装置。」

上記記載に関連して明細書の【0045】には下記のとおりの記載がある。

「上述したプラズマディスプレイ装置の構成では、プラズマディスプレイ装置の本体内部にROM(55)を設け、その情報を元に各制御を行うようになっている。ところで、一般に、プラズマディスプレイ装置の寿命は輝度半減で定義される場合が多く、例えば、このような現象に対応すべくユニット外部から、より高度な階調制御を行いたい場合には、選択スイッチSW2を接点(1) 側 から接点(2) 側へ切り替えることにより、サブフレーム(サブフィールド)SF毎の維持パルス数の外部入力が可能となり、その結果、維持放電パルス数の変更をリアルタイムで行うことも可能となる。」
そして、図4にはROM55の出力とSF毎維持パルス数外部入力がSW2により選択的に出力されているブロック図が記載されている。
したがって、上記明細書の詳細な説明には外部からROM55の出力と置換可能なSF毎維持パルス数外部入力により維持パルス数を制御することが記載されており、請求項13に対応する事項も発明の詳細な説明に記載されている。

よって、特許異議申立人が指摘する記載不備は本件明細書には存在しない。

ii)特許法第29条について
特許異議申立人の提出した甲第1乃至3号証は当審が通知した取消理由通知で引用した刊行物1、4、7とそれぞれ同じであり、本件発明1乃至8及び10乃至13と上記甲号各証との対比判断は上記2.ウ.C.ii)bに記載したとおりである。
また、本件発明9(訂正前の請求項11に係る発明)と上記甲号各証と対比すると、上記甲号各証には本件発明9を特定する事項である「各サブフレームにおける維持発光の回数を設定して記憶する記憶手段を駆動波形用記憶素子の空き領域により構成し、前記各サブフレームの維持発光の回数情報を当該駆動波形用記憶素子の空き領域に設定する」(以下、相違点2という)が記載されていない。
なお、特許異議申立人は、上記甲第2号証に上記相違点2に相当する構成が記載されていると主張している。
しかし、上記甲第2号証(刊行物4)の「1フレーム内のサブフィールド数を計数するフィールドカウンタOと・・・フィールドカウンタOの出力と信号BCをデコードして該サブフィールドにおけるサスティン数の設定値を出力するデコーダNと」(公報【0012】)、「1フレーム内の複数個のフィールドにおける書き込みパルス印加期間とアドレス期間及びサスティン期間の繰り返しサイクルの最小単位について、プログラムとして保持する波形ROM15」(公報【0015】)の記載から、上記甲第2号証のものは、本件発明9の維持発光回数に相当する情報はデコーダNに、駆動波形に相当する情報は波形ROM15に記憶されていると認められ、駆動波形と維持発光回数は異なるメモリに記憶されている。そして、他の記載をみてもこれらの情報が同じメモリに記憶されているという記載はない。

よって、訂正後の請求項1乃至13に係る発明は上記甲第1乃至3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由および、証拠によっては、本件発明1乃至13の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1乃至13の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
プラズマディスプレイ装置の階調制御方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、該各サブフレームは、ライン上のセルに対して選択的に壁電荷を蓄積するためのアドレス放電を、選択された各ラインに対してそれぞれ行うための共通の期間であるアドレス期間と、該選択された各ラインに対して維持放電を行うための共通の期間である維持放電期間とを含むプラズマディスプレイ装置の階調制御方法において、
前記選択された各ラインにおける維持放電は前記維持放電期間内で行われるものであり、かつ、該各維持放電期間における維持発光の回数を、各サブフレームにおける輝度を基準にして当該各サブフレーム毎に非等比数列的に個別に設定し、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。
【請求項2】 前記プラズマディスプレイ装置の階調制御方法は、維持発光の回数に対する輝度の実測データに基づいて、任意の輝度を有する第1のサブフレームにより得られる輝度が、該第1のサブフレームの次の輝度を有する第2のサブフレームにより得られる輝度の2倍となるようにして、前記各サブフレームの維持発光の回数を算出するようにしたことを特徴とする請求項1のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。
【請求項3】 前記プラズマディスプレイ装置の階調制御方法は、維持発光の回数に対する輝度の実測データに基づいて、階調値に対する輝度の関係がリニアな関係となるように、該各階調値における理想値との誤差の二乗の総和が最小となる場合の前記各サブフレームの維持発光の回数を算出するようにしたことを特徴とする請求項1のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。
【請求項4】 前記プラズマディスプレイ装置の階調制御方法は、維持発光の回数に対する輝度の実測データに基づいて、階調値に対する輝度の関係がリニアな関係となるように、該各階調値における理想値との誤差の絶対値の総和が最小となる場合の前記各サブフレームの維持発光の回数を算出するようにしたことを特徴とする請求項1のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。
【請求項5】 前記複数のサブフレームにおける1つ若しくは2つのサブフレームの維持発光の回数の和、または、2つ若しくは3つのサブフレームの維持発光の回数の和を指定した後に、該各サブフレームにおける維持発光の回数を個別に設定するようにしたことを特徴とする請求項3または4のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。
【請求項6】 前記複数のサブフレームにおいて、最大階調値のサブフレームの輝度を指定した後に、該各サブフレームにおける維持発光の回数を個別に設定するようにしたことを特徴とする請求項3または4のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。
【請求項7】 維持放電を行う平行する維持放電電極(7,8)と、該維持放電電極に直行して配置されたアドレス電極(3)とを具備し、前記維持放電電極の一方(7)を共通接続し、且つ、他方(8)を表示ライン毎に独立して設け、壁電荷をメモリ媒体として利用した面放電構造を有し、
全画面における表示データの書き込みを該表示データに応じて維持放電に必要な壁電荷を各ラインごとに共通の期間内で形成することで行うアドレス期間と、各ラインに対して発光のための維持放電を繰り返して行うための共通の期間である維持放電期間とを分離して、各ラインにおける前記維持放電が前記維持放電期間内で行われるように駆動し、
1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成した3電極型面放電交流型プラズマディスプレイ装置であって、
該各維持放電期間における維持発光の回数を、各サブフレームにおける輝度を基準にして当該各サブフレーム毎に非等比数列的に個別に設定して、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項8】 前記プラズマディスプレイ装置は、各サブフレームにおける維持発光の回数を設定して記憶する記憶手段(55)を具備し、該記憶手段から前記各サブフレームの維持発光の回数情報を随時読み出すようにしたことを特徴とする請求項7のプラズマディスプレイ装置。
【請求項9】 維持放電を行う平行する維持放電電極と、該維持放電電極に直行して配置されたアドレス電極とを具備し、前記維持放電電極の一方を共通接続し、且つ、他方を表示ライン毎に独立して設け、壁電荷をメモリ媒体として利用した面放電構造を有する3電極型面放電交流型プラズマディスプレイ装置であって、全画面における表示データの書き込みを該表示データに応じて維持放電に必要な壁電荷を形成することで行うアドレス期間と発光のための維持放電を繰り返して行う維持放電期間とを分離してプラズマディスプレイ装置を駆動し、1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、そして、該各サブフレームにおける維持発光の回数を当該各サブフレーム毎に個別に設定して所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたものであり、
各サブフレームにおける維持発光の回数を設定して記憶する記憶手段を駆動波形用記憶素子の空き領域により構成し、前記各サブフレームの維持発光の回数情報を当該駆動波形用記憶素子の空き領域に設定するようにし、該記憶手段から前記各サブフレームの維持発光の回数情報を随時読み出すようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項10】 前記プラズマディスプレイ装置は、輝度調整を行う輝度調整用ボリューム(51)を具備し、該輝度調整用ボリューム(51)により前記記憶手段(55)に設定された前記各サブフレームの維持発光の回数情報の内の1通りを選択するようにしたことを特徴とする請求項8のプラズマディスプレイ装置
【請求項11】 前記各サブフレームにおける維持発光の回数を、複数の組み合わせとして前記記憶手段(55)に設定し、該複数の組み合わせの任意の1つを前記プラズマディスプレイ装置の外部から供給する選択信号により選択するようにしたことを特徴とする請求項8のプラズマディスプレイ装置。
【請求項12】 前記プラズマディスプレイ装置は、該プラズマディスプレイ装置の消費電流を所定値以下に制御する消費電流制御手段(4)を具備し、前記各サブフレームにおける維持発光の回数を複数の組み合わせとして前記記憶手段(55)に設定し、該複数の組み合わせの任意の1つを前記消費電流制御手段(44)の出力に応じて選択して、表示率の変化に係わらず消費電力を一定とするようにしたことを特徴とする請求項8のプラズマディスプレイ装置。
【請求項13】 前記各サブフレームの維持発光の回数情報を該プラズマディスプレイ装置の外部から供給するようにしたことを特徴とする請求項8のプラズマディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はプラズマディスプレイ装置の階調制御方法に関する。近年、フラットディスプレイにおける大画面化,大容量化,フルカラー表示化の要求に伴って、交流型プラズマ・ディスプレイ・パネル(AC型PDP:Plasma Display Panel)においても多くの表示ラインでの多階調表示が必要となって来ている。そして、AC型PDPとして、所望の輝度による多階調表示が可能なプラズマディスプレイ装置の階調制御方法が要望されている。
【0002】
【従来の技術】従来、AC型PDPとしては、2本の維持電極に、交互に電圧波形を印加することで放電を持続し、発光表示を行うものが知られている。このAC型PDPにおいて、一度の放電は、パルス印加直後、1μsから数μsで終了する。さらに、放電によって発生した正電荷であるイオンは、負の電圧が印加されている電極上の絶縁層の表面に蓄積され、同様に、負電荷である電子は、正の電圧が印加されている電極上の絶縁層の表面に蓄積される。
【0003】従って、初めに高い電圧(書き込み電圧)のパルス(書き込みパルス)で放電させ壁電荷を生成した後、極性の異なる前回よりも低い電圧(維持電圧または維持放電電圧)のパルス(維持パルスまたは維持放電パルス)を印加すると、前に蓄積された壁電荷が重複され、放電空間に対する電圧は大きなものとなり、放電電圧のしきい値を越えて放電を開始する。つまり、一度書き込み放電を行い壁電荷を生成したセルは、その後、維持パルスを交互に逆極性で印加することで、放電を持続するという特徴がある。これをメモリ効果、またはメモリ機能と呼んでいる。一般に、AC型PDPは、このメモリ効果を利用して表示を行うものである。
【0004】近年、AC型PDPとしては、2本の電極で選択放電(アドレス放電)および維持放電を行う2電極型、および、第3の電極を利用してアドレス放電を行う3電極型が提案されている。また、階調表示を行うカラーPDPでは、放電により発生する紫外線によって放電セル内に形成した蛍光体を励起しているが、この蛍光体は、放電により同時に発生する正電荷であるイオンの衝撃に弱いという欠点がある。
【0005】上記の2電極型では、蛍光体がイオンに直接当たるような構成になっているため、蛍光体の寿命低下を招く恐れがある。これを回避するために、カラーPDPでは、面放電を利用した3電極構造が一般に用いられている。さらに、この3電極型においても、第3の電極を維持放電を行う第1と第2の電極が配置されている基板に形成する場合と、対向するもう一つの基板に配置する場合がある。また、同一基板に前記の3種の電極を形成する場合でも、維持放電を行う2本の電極の上に第3の電極を配置する場合と、その下に第3の電極を配置する場合がある。さらに、蛍光体から発せられた可視光を、その蛍光体を透過してみる場合と、蛍光体からの反射をみる場合がある。本明細書では、維持放電を行う電極の基板とは別な対向する基板に第3の電極を形成するパネルを例に採って説明する。
【0006】図6は従来の3電極面放電交流駆動型のプラズマディスプレイパネルの概略的構造を示す平面図であり、図7は図6のプラズマディスプレイパネルにおける1つの放電セルの概略的構造を示す断面図である。ここで、図6は、M×Nドットのパネル構造(電極構造)を示している。図6および7において、参照符号1は前面ガラス基板,2は背面ガラス基板,3はアドレス電極,4は壁,5は壁の間に設けられた蛍光体,6は誘電体層,7および8はX電極およびY電極を示している。このAC型PDPにおいて、放電は主に背面ガラス基板2上に配置された2本の維持放電電極(X電極7およびY電極8)の間で行われ、また、表示データに応じた画素(放電セル)の選択は、Y電極8とアドレス電極3との間の放電を利用して、該当するY電極8を含むライン上のセルを選択して行うようになっている。各維持放電電極(7,8)上には、絶縁のための誘電体層6が形成され、該誘電体層6上に保護膜であるMgO膜が形成されている。さらに、背面ガラス基板2と向かい合う前面ガラス基板1には、アドレス電極3および蛍光体5が形成されている。ここで、蛍光体5は、カラー表示を可能とするために、赤・緑・青の発光特性を有し、該蛍光体5はアドレス電極3上に形成されている。
【0007】放電空間は、ガラス基板の片側もしくは両側に形成された壁(障壁)4によって分離され、放電はその中で各セル毎に起こるようになっており、放電によって発生した紫外線が蛍光体を発光させて表示を行うようになっている。このような構成を有するセルを、例えば、マトリクス状に(M×N)個だけ配列することにより、図6に示すようなディスプレイパネルが構成される。ここで、図6において、参照符号A1〜AMはアドレス電極3を示し、Y1〜YNはY電極8を示している。また、各セルに対するX電極7は、共通結線とされている。
【0008】図8は図6に示すプラズマディスプレイパネルを用いた3電極面放電交流駆動型プラズマディスプレイ装置の一例を示すブロック図であり、代表的な3電極・AC型PDPを駆動するための周辺回路を示すものである。図8において、参照符号10は制御回路、11は表示データ制御部、12はフレームメモリ、13はパネル駆動制御部、14はスキャンドライバ制御部、そして、15は共通ドライバ制御部である。さらに、参照符号21はアドレスドライバ、22はXドライバ、23はYスキャンドライバ、24はYドライバ、そして、30はプラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)である。
【0009】また、図8において、参照符号CLOCKは表示データを示すドットクロック、DATAは表示データ(256階調カラー表示の場合は、各色8ビット:3×8)、VSYNCは垂直同期信号、1フレーム(1フィールド)の開始を示す信号、そして、HSYNCは水平同期信号を示している。制御回路10は、表示データ制御部11およびパネル駆動制御部13を備えている。表示データ制御部11は、表示データをフレームメモリ12に蓄え、パネルの駆動タイミングに合わせて、アドレスドライバ21に転送するものである。ここで、参照符号A-DATAは表示データ、また、A-CLOCKは転送クロックを示している。
【0010】パネル駆動制御部13はパネル30に高圧波形を印加するタイミングを決定するものであり、スキャンドライバ制御部14および共通ドライバ制御部15を備えている。ここで、参照符号Y-DATAはスキャンデータ(Yスキャンドライバを1ビット毎にONさせるためのデータ)、Y-CLOCKは転送クロック(Yスキャンドライバを1ビット毎にONさせるためのクロック)、Y-STB1はYストローブ1(YスキャンドライバをONさせるタイミング規定する信号)、そして、Y-STB2はYストローブ2を示している。また、参照符号X-UDはX側共通ドライバのON/OFFを制御する信号(Vs/Vwを出力)、X-DDはX側共通ドライバのON/OFFを制御(GND)、Y-UDはY側共通ドライバのON/OFFを制御(Vs/Vwを出力)、そして、Y-DDはX側共通ドライバのON/OFFを制御(GND)を示している。
【0011】図8に示されるように、アドレス電極3は1本毎にアドレスドライバ21に接続され、該アドレスドライバ21によってアドレス放電時のアドレスパルスが印加される。また、Y電極8は個別にYスキャンドライバ23に接続される。スキャンドライバ23はY側共通ドライバ(Yドライバ)24に接続されており、アドレス放電時のパルスはYスキャンドライバ23から発生する。また、維持パルス等はYドライバ24で発生し、Yスキャンドライバ23を経由して、Y電極8に印加される。さらに、X電極7は、パネル30の全表示ラインに渡って共通に接続される。そして、X側共通ドライバ(Xドライバ)22は、書き込みパルスおよび維持パルス等を発生する。これらのドライバ回路は、制御回路10によって制御され、該制御回路10は、装置の外部より入力される同期信号や表示データ信号によって制御される。
【0012】図9は図8のプラズマディスプレイ装置における駆動波形の一例を示す図であり、いわゆる『アドレス/維持放電分離型・書き込みアドレス方式』における1サブフレーム(または、1サブフィールド)の駆動波形を示すものである。この方法は、特願平3-338342号に示した方法であり、この例は、フルカラーのための多階調表示を行う場合に適用され、且つ、低電圧で安定な駆動(アドレス)を行うことを目的とした駆動方法である。
【0013】図9に示されるように、1サブフレーム内は、アドレス期間および維持放電期間に分離される。そして、アドレス期間においては、全面書き込み,全面消去,および,線順次書き込み(アドレス)が行われ、また、維持放電期間においては、全ライン同時に維持パルスが印加され、書き込みアドレスが実行され壁電荷が蓄積されたセルに対して維持放電が行われる。ここで、1サブフレームは、例えば、インターレース(飛び越し操作)処理により1フレームの画面を2つのサブフレームにより構成する場合には、各サブフレームにおけるサブフィールドに対応する。
【0014】この図9に示す駆動方法の特長は、アドレス期間の始めに行われる全面書き込みと全面消去によって、全セルの状態を均一とし、さらに、次に行われる線順次書き込み放電(アドレス放電)に有効な壁電荷を残した状態で消去の完了とすることである。まず、Y電極がGNDレベルになり、同時にX電極に電圧Vwからなる書き込みパルスが印加されて全面書き込みが行われる。この時、アドレス電極側、実際には蛍光体等の絶縁物表面に、正電荷であるイオンが蓄積される。そして、次のステップで、電圧Veからなる消去パルスが印加されることにより、全面消去が行われる。消去放電は、X電極とY電極の絶縁層(MgO膜)表面に壁電荷が無い状態を作り出すものであるが、好ましくは、Y電極側のMgO面には、次のアドレス放電に有利な負電荷である電子を蓄積し、且つ、その際、残留した壁電荷の電圧値は、X電極およびY電極に維持放電パルスが印加されても、維持放電を起こさないレベルでなくてはならない。
【0015】これらの、均一化とアドレスの低電圧化を狙った、全面書き込み全面消去を経た後に、線順次に書き込み放電(アドレス放電)が行われる。この放電は、書き込みを行うラインのY電極をGNDレベルとして、そのライン中の書き込みを行うセルのアドレス電極に、電圧Vaからなるアドレスパルスが印加されて行われる。この際、アドレス側(蛍光体表面)にはイオンが、Y電極側(MgO面)には電子がそれぞれ蓄積されたいるため、非常に低い電圧でアドレス放電が可能となる。これらの動作が、全ラインに渡り実行された後、X電極とY電極に交互に維持パルスが印加され維持放電が行われる。
【0016】図10は図8のプラズマディスプレイ装置において駆動されるセルの様子を模式的に示す図であり、同図(a)〜(d)は1つの放電セル内の電荷の配置および放電の状態に着目してモデル化した図を示している。すなわち、同図(a)は全セル(全面)書き込み段階(アドレス電極側に正電荷(イオン)を蓄積する。)、同図(b)は全セル維持放電段階、同図(c)は全セル消去段階(維持放電電極側の壁電荷を維持放電電圧(Vs)を印加しても放電が起きない値まで減少させる。ここで、Y電極側に負の壁電荷(電子)を残す事が出来れば、次のアドレス放電に有効に作用する。)、そして、同図(d)は選択書き込み段階(アドレス放電:アドレス電極側の壁電荷を利用して書き込み放電を行う。)を示している。
【0017】まず、図10(a)に示されるように、全セル書き込み段階では、アドレス電極3側にイオン、X電極7およびY電極8側にそれぞれイオンおよび電子が壁電荷として蓄積される。次に、図10(b)に示されるように、全セル維持放電段階では、アドレス電極3側におけるイオンはそのままとされ、X電極7とY電極8側間の維持放電によって、電荷の反転が生じる。さらに、図10(c)に示されるように、全セル消去段階では、アドレス電極3側におけるイオンはそのままとされ、X電極7とY電極8側間の消去放電によって、電圧Vsからなる維持放電パルスが印加されても、維持放電が起こらない値まで、壁電荷が減少する。そして、図10(d)に示されるように、選択書き込み段階では、線順次による選択書き込み放電(アドレス放電)が行われる。この時、電極からの印加電圧は、アドレス電極3にかかるアドレスパルスの電圧Vaのみであるが、全セル消去段階までに生成された壁電荷による電圧、つまり、アドレス電極3側のイオンとY電極8側の電子による電圧がアドレス電圧Vaに積み重なって作用するため、低いアドレス電圧Vaで、安定に確実に選択書き込み放電(アドレス放電)が行えることになる。
【0018】そこで、この『アドレス/維持放電分離型・アドレス方式』は、スキャンライン数(表示ライン数)が多い場合や、フルカラー表示のために多階調表示を行う場合に利用されており、例えば、特開平4-195188号公報に開示されている。さらに、具体的には、多階調表示の一例として、16階調表示を行う場合の駆動方法を図11に示す。
【0019】すなわち、図11は図8のプラズマディスプレイ装置を駆動する一例のタイムチャートを示す図であり、16階調表示を行う場合の駆動方法を示すものである。図11に示す駆動方法では、1フレームが4個のサブフレーム(サブフィールド)SF1,SF2,SF3,SF4に区分される。そして、これらのサブフレームSF1,SF2,SF3,SF4においては、全面書き込み期間Tw1,Tw2,Tw3,Tw4を含むアドレス期間Ta1,Ta2,Ta3,Ta4は、それぞれ同一の長さ(時間)となる。また、維持放電期間Ts1,Ts2・Ts3・Ts4の長さ(時間)は、1:2:4:8の比率となる。従って、点灯させるサブフレームを選択するこにより、0から15までの16段階の輝度の違いを表示できるようになっている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、AC型PDPでは、階調表示を行うために1画面を形成する1フレームがそれぞれ輝度の異なる数枚のサブフレーム(SF)によって構成されており、各サブフレームにおける発光輝度は、単位時間当たりの維持放電の回数によって決定される。理想的には維持放電の回数に対して輝度はリニアな関係にあり、よって任意のサブフレームの維持放電パルス数はその次に明るいサブフレームのそれに対し1/2の関係を持つ方法が最適であり、この方法は『プラズマディスプレイパネルの輝度調整に関する駆動方法』として特開平4-281459号公報にて出願済である。この発明によれば例えば16階調表示の場合、サブフレームSFは4枚必要となり、それぞれの1Vsync内の維持放電パルス数は最大輝度のSF(SF4)の維持放電パルス数を80発とすると、サブフレームSF3が40発、SF2が20発、SF1が10発となる。
【0021】図12は従来のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法における課題を説明するための図であり、維持パルス数と輝度との関係を示すものである。図12中の実線で示すように、理想的には、輝度は維持放電の回数に対してリニアな関係にあり、この時、階調値に対する輝度の関係もリニアとなる。しかしながら、図12中の破線で示すように、実際の駆動においては、維持放電の回数に対して輝度はリニアな関係にならずに曲線となってしまう。その結果、階調値に対する輝度もリニアな関係にならず、表示品質の著しい低下を招くことになる。このような問題は、近年の階調数の増大の要求に伴って、重要なものとなって来ており、例えば、64階調のような多階調となると、上記の表示品質の低下が大きな問題となる。
【0022】本発明は、上述した従来のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法が有する課題に鑑み、階調値に対する輝度をリニアな関係としてプラズマディスプレイ装置の表示品質を向上させることを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、該各サブフレームは、ライン上のセルに対して選択的に壁電荷を蓄積するためのアドレス放電を、選択された各ラインに対してそれぞれ行うための共通の期間であるアドレス期間と、該選択された各ラインに対して維持放電を行うための共通の期間である維持放電期間とを含むプラズマディスプレイ装置の階調制御方法において、前記選択された各ラインにおける維持放電は前記維持放電期間内で行われるものであり、かつ、該各維持放電期間における維持発光の回数を、各サブフレームにおける輝度を基準にして当該各サブフレーム毎に非等比数列的に個別に設定し、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の階調制御方法が提供される。
【0024】
【作用】本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法によれば、各サブフレームにおける維持発光の回数は、該各サブフレーム毎に個別に設定される。これにより、階調値に対する輝度をリニアな関係としてプラズマディスプレイ装置の表示品質を向上させることができる。
【0025】
【実施例】以下、図面を参照して本発明に係るプラズマディスプレイ装置の階調制御方法の実施例を説明する。図1は本発明に係るプラズマディスプレイ装置の階調制御方法の一実施例を説明するための図である。同図において、縦軸は輝度B〔cd/m2〕を示し、また、横軸は階調値を示している。
【0026】以下の各実施例において、階調値0は全てのサブフレーム(サブフィールド)SF1〜SF3の維持発光を行わない場合に対応し、階調値1,2および4は1つのサブフレームSF1,SF2およびSF3だけの維持発光を行った場合に対応し、階調値3,5および6は2つのサブフレームSF1とSF2,SF1とSF3およびSF2とSF3の維持発光を行った場合に対応し、そして、階調値7は全てのサブフレームSF1〜SF3の維持発光を行った場合に対応する。
【0027】
【数1】
【0028】まず、維持放電パルス数Pに対するパネルの輝度Bの実測を行い、前述した図12に示す階調-輝度特性での実測値を求めその曲線を(1)式のB=f1(P)とする。従来技術では、任意のサブフレームのパルス数に対して、その次に大きい輝度を有するサブフレームのパルス数が2倍となるように、各サブフレームの維持発光の回数を設定していたが、本実施例では任意のサブフレームの輝度に対して、その次に大きい輝度を有するサブフレームの輝度が2倍となるように、各サブフレームの維持発光の回数を設定する。
【0029】図12に示す階調-輝度特性での実測値を例として、本実施例による最適化を行った場合を示す。サブフレームSF3の輝度を60cd/m2とした時、サブフレームSF2の輝度は60の半分の30cd/m2、サブフレームSF1の輝度は30の半分の15cd/m2となり、このときの各階調値に対する維持放電パルス数は次の表1の通りとなる。
【0030】
【表1】
【0031】図1において、点線が上述した最適化を行う前、実線が最適化を行った後の関係を示すものである。ここで、図1に示す実施例では、複雑な計算が不要であるという長所があるが、維持放電パルス数Pに対するパネルの輝度Bの直線性が低い場合には、高階調値での直線性に欠けることになる。
なお、従来のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、各サブフレームにおける維持発光の回数が等比数列的になっている(1,2,4,8,…)のに対して、本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、上記のように各サブフレームにおける輝度を基準にして該各サブフレームの維持発光の回数を規定するようになっている。したがって、本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、各サブフレームにおける維持発光の回数が非等比数列的になる。
【0032】図2は本発明に係るプラズマディスプレイ装置の階調制御方法の他の実施例を説明するための図であり、図3は本発明に係るプラズマディスプレイ装置の階調制御方法のさらに他の実施例を説明するための図である。図2および図3において、縦軸は輝度B〔cd/m2〕を示し、横軸は階調値を示している。図2に示されるように、本実施例では、階調値Kに対する輝度Bの目標ラインを(2)式のB=f2(K)と設定する。ここで、ある維持パルス数比で或る階調値Xにおける計算輝度値と目標輝度との差をbxとして、例えば、8階調における各サブフレームの維持パルス数(P1、P2、P3)は次の手順で求めることができる。
【0033】まず、(1)式を実測により求め,(2)式を設定した時に(4)式から(11)式の条件を満たす(12)式のbS1が最小となる時のP1,P2,P3が求める最適維持パルス数となる。すなわち、維持発光の回数に対する輝度の実測データに基づいて、階調値に対する輝度の関係がリニアな関係となるように、各階調値における理想値との誤差の二乗の総和が最小となる場合の各サブフレームの維持発光の回数を算出する。この図2に示す実施例は、図1に示す実施例に比べて計算は複雑なものとなるが、限り無く直線に近い結果を求めることができる。
【0034】また、(12)式では、各階調値における理想値との誤差の二乗の総和が最小となる場合の各サブフレームの維持発光の回数を算出したが、(12)式の代わりに(13)式を用いれば、各階調値における理想値との誤差の絶対値の総和が最小となる場合の各サブフレームの維持発光の回数を算出することができる。すなわち、維持発光の回数に対する輝度の実測データに基づいて、階調値に対する輝度の関係がリニアな関係となるように、各階調値における理想値との誤差の絶対値の総和が最小となる場合の各サブフレームの維持発光の回数を算出する。
【0035】ここで、(12)式または(13)式を用いた場合、B=f1(P)によっては、任意の階調値Kの輝度に対して、Kより小さい次の階調値K-1の輝度が前者の輝度を上回ってしまう事態を生じる恐れがあるので、これを防ぐために(14)式の条件を付加する。この(14)式は、任意のサブフレームのパルス数が、それ以下のパルス数を有するサブフレームのパルス数の総和より、大きくなることを示している。この結果、任意の階調値を有する第1のサブフレームの輝度に対して、第1のサブフレームより小さな階調値を有する、第1のサブフレームの次の第2のサブフレームの輝度が、該第1のサブフレームの輝度を上回らないことにもなる。
【0036】さらに、高い輝度を得たい場合は各サブフレームの維持パルス数を多くすればよいが、一垂直同期期間内での限られた時間内に入る維持パルス数は限られているため、まず、一垂直同期信号内でのパルス数の総和(P1+P2+P3)、または、最上位サブフレームのパルス数(P3)を設定したのち、(4)式から(11)式の条件を満たす(12)式のbS1、または、(13)式のbS2が最小となる時のP1,P2,P3を求めれば、それが最適維持パルス数となる。このとき、(2)式のB=f2(K)の設定は必要ない。なお、図2の実施例では、SF3のパルス数は60に設定されている。すなわち、複数のサブフレームにおける1つ若しくは2つのサブフレームの維持発光の回数の和、または、2つ若しくは3つのサブフレームの維持発光の回数の和を指定するように構成してもよい。
【0037】次に、図3に示すように、十分長い一垂直同期期間が有り、且つ、目標とする最高輝度の設定が必要な場合、まず、最高輝度f1(P1+P2+P3)を設定した後、(3)式から(10)式の条件を満たす(12)式のbS1、または、(13)式のbS2が最小となる時のP1,P2,P3を求めれば、それが最適維持パルス数となる。このとき、(2)式のB=f2(K)の設定は必要ない。なお、図3の実施例では、階調値7の輝度は140cd/m2と設定されている。すなわち、複数のサブフレームにおいて、最大階調値のサブフレームの輝度を指定するように構成してもよい。
【0038】以上の各方法により求めた最適維持放電パルス数を用いて、次に示す駆動を行う。図4および図5は本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法が適用されるプラズマディスプレイ装置の一実施例を示すブロック図である。図4および図5(図5)において、参照符号10は制御回路、11は表示データ制御部、12はフレームメモリ、13はパネル駆動制御部、14はスキャンドライバ制御部、そして、15は共通ドライバ制御部である。さらに、参照符号21はアドレスドライバ、22はXドライバ、23はYスキャンドライバ、24はYドライバ、そして、30はプラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)である。これらの構成は、前述した図8に示すものと同様であるので、その説明は省略する。
【0039】図4および図5(図4)において、参照符号41は駆動用高圧入力、42は消費電流検出回路、43はA/D変換器、そして、44は自動消費電力制御部(APC:Automatic Power Controller)を示している。さらに、参照符号51は輝度調整ボリューム、52はA/D変換器、53は維持パルス数パターン選択信号外部入力部、54は維持パルス数パターン選択用加算器、55はROM(読み出し専用メモリ)、そして、56はSF毎維持パルス数外部入力部を示している。また、参照符号SW1およびSW2は選択スイッチを示している。
【0040】上述したプラズマディスプレイ装置の階調制御方法(最適維持発光回数算出方法)により算出された維持放電パルス数データは、ROM55に格納されている。このROM55から出力される維持放電パルス数データは、制御回路10内の共通ドライバ制御部15に供給される。ここで、各サブフレーム毎の維持放電パルスの制御信号をROM55から受けた指定数だけ、規定タイミングでXドライバ22およびYドライバ24へ向けて出力する。Xドライバ22およびYドライバ24では、制御回路10から供給された制御信号に基づいてパネル駆動用高圧パルスを出力する。すなわち、各サブフレームにおける維持発光の回数をROM55に設定し、該ROM55から各サブフレームの維持発光の回数情報を随時読み出すようになっている。
【0041】ここで、新規にROMを追加せずに、駆動波形用として従来から使用していたROMの空き領域を有効活用すればコストダウン及び実装面積の節約につながる。すなわち、各サブフレームにおける維持発光の回数を設定して記憶する記憶装置を、プラズマディスプレイ装置における駆動波形用記憶素子55の空き領域により構成することができる。
【0042】さらに、ROM内の維持放電パルス数データを一通りのみでなく、(12)式および(13)式を用いて相対輝度の異なる複数通りのパターンのデータを算出して設定すれば、一定の階調表示を保ちつつ輝度調整が可能となる。輝度調整ヴォリューム51により設定された輝度情報は、A/D変換52によりディジタル信号に変換されROMアドレス信号となり、維持発光回数データの選択を行う。すなわち、輝度調整用ボリューム51によりROMに設定された各サブフレームの維持発光の回数情報の内の1通りを選択するように構成することができる。これにより、ユーザーによる装置の使用環境に応じた輝度設定が可能となる。
【0043】この時、選択スイッチSW1を接点(1)側から接点(2)側へ切り替えることによって、輝度調整ヴォリューム51による情報の代わりに維持パルス数パターン選択情報外部入力部53を介して情報を装置外部から入力させることができる。また、サブフレームの維持発光の回数情報を複数の組み合わせとしてROM55に設定し、該複数の組み合わせの任意の1つをプラズマディスプレイ装置の外部から供給する選択信号により選択するように構成してもよい。これにより、輝度調整の遠隔操作等が可能となる。
【0044】さらに、本プラズマディスプレイ装置では、発光輝度および表示率により消費電流が大きく異なるため、公知の技術を使用して、電源経路に消費電流検出回路42を設け、表示率の増加等により消費電流が規定値を上回るような場合、輝度を抑える事により消費電流を抑えて設定値以下に制御するようになっている。この消費電力を制御するための自動消費電力制御部(消費電流制御手段)44の出力を維持パルス数パターン選択用加算器で加算してROM55に書き込むことにより、消費電流を一定値以下に抑えつつ滑らかな階調制御を行うことが可能となる。すなわち、表示率の変化に係わらず消費電力を一定とすることができる。
【0045】上述したプラズマディスプレイ装置の構成では、プラズマディスプレイ装置の本体内部にROM(55)を設け、その情報を元に各制御を行うようになっている。ところで、一般に、プラズマディスプレイ装置の寿命は輝度半減で定義される場合が多く、例えば、このような現象に対応すべくユニット外部から、より高度な階調制御を行いたい場合には、選択スイッチSW2を接点(1)側から接点(2)側へ切り替えることにより、サブフレーム(サブフィールド)SF毎の維持パルス数の外部入力が可能となり、その結果、維持放電パルス数の変更をリアルタイムで行うことも可能となる。
【0046】以上の実施例の説明においては、3電極構造を有する面放電交流駆動型のプラズマディスプレイ装置を本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法が適用される一例として詳述したが、本発明は、この3電極面放電交流駆動型プラズマディスプレイ装置の他にも、例えば、2電極構造を有する対向放電型のプラズマディスプレイ装置等の他の様々なプラズマディスプレイ装置に対しても適用することができるのはいうまでもない。
【0047】
【発明の効果】以上、詳述したように、本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法によれば、各サブフレームにおける維持発光の回数は、該各サブフレーム毎に個別に設定される。これにより、階調値に対する輝度をリニアな関係としてプラズマディスプレイ装置の表示品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラズマディスプレイ装置の階調制御方法の一実施例を説明するための図である。
【図2】本発明に係るプラズマディスプレイ装置の階調制御方法の他の実施例を説明するための図である。
【図3】本発明に係るプラズマディスプレイ装置の階調制御方法のさらに他の実施例を説明するための図である。
【図4】本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法が適用されるプラズマディスプレイ装置の一実施例を示すブロック図(その1)である。
【図5】本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法が適用されるプラズマディスプレイ装置の一実施例を示すブロック図(その2)である。
【図6】従来の3電極面放電交流駆動型のプラズマディスプレイパネルの概略的構造を示す平面図である。
【図7】図6のプラズマディスプレイパネルにおける1つの放電セルの概略的構造を示す断面図である。
【図8】図6に示すプラズマディスプレイパネルを用いた3電極面放電交流駆動型プラズマディスプレイ装置の一例を示すブロック図である。
【図9】図8のプラズマディスプレイ装置における駆動波形の一例を示す図である。
【図10】図8のプラズマディスプレイ装置において駆動されるセルの様子を模式的に示す図である。
【図11】図8のプラズマディスプレイ装置を駆動する一例のタイムチャートを示す図である。
【図12】従来のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法における課題を説明するための図である。
【符号の説明】
1…前面ガラス基板
2…背面ガラス基板
3…アドレス電極
4…壁
5…蛍光体
6…誘電体層
7…X電極(維持電極)
8…Y電極(維持電極)
10…制御回路
11…表示データ制御部
12…フレームメモリ
13…パネル駆動制御部
14…スキャンドライバ制御部
15…共通ドライバ制御部
21…アドレスドライバ
22…Xドライバ
23…Yスキャンドライバ
24…Yドライバ
30…プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)
41…駆動用高圧入力
42…消費電流検出回路
43…A/D変換器
44…自動消費電力制御部
51…輝度調整ボリューム
52…A/D変換器
53…維持パルス数パターン選択信号外部入力部
54…維持パルス数パターン選択用加算器
55…ROM
56…SF毎維持パルス数外部入力部
SW1,SW2…選択スイッチ


 
訂正の要旨 訂正の要旨
a.請求項1の「1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、該各サブフレームにおける維持発光の回数を当該各サブフレーム毎に個別に設定し、所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として「1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、該各サブフレームは、ライン上のセルに対して選択的に壁電荷を蓄積するためのアドレス放電を、選択された各ラインに対してそれぞれ行うための共通の期間であるアドレス期間と、該選択された各ラインに対して維持放電を行うための共通の期間である維持放電期間とを含むプラズマディスプレイ装置の階調制御方法において、
前記選択された各ラインにおける維持放電は前記維持放電期間内で行われるものであり、かつ、該各維持放電期間における維持発光の回数を、各サブフレームにおける輝度を基準にして当該各サブフレーム毎に非等比数列的に個別に設定し、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」と訂正する。
b.請求項3及び6を削除する。
c.訂正前の請求項4及び5を請求項3及び4とする。
d.訂正前の請求項7を請求項5とし、同項に記載された「前記複数のサブフレームにおける1つ若しくは2つのサブフレームの維持発行の回数の和、または、2つ若しくは3つのサブフレームの維持発行の回数の和を指定するようにしたことを特徴とする請求項4または5のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として「前記複数のサブフレームにおける1つ若しくは2つのサブフレームの維持発光の回数の和、または、2つ若しくは3つのサブフレームの維持発光の回数の和を指定した後に、該各サブフレームにおける維持発光の回数を個別に設定するようにしたことを特徴とする請求項3または4のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」と訂正する。
e.訂正前の請求項8を請求項6とし、同項に記載された「前記複数のサブフレームにおいて、最大階調値のサブフレームの輝度を指定するようにしたことを特徴とする請求項4または5のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として「前記複数のサブフレームにおいて、最大階調値のサブフレームの輝度を指定した後に、該各サブフレームにおける維持発光の回数を個別に設定するようにしたことを特徴とする請求項3または4のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法。」と訂正する。
f.訂正前の請求項9を請求項7とし同項の「維持放電を行う平行する維持放電電極(7,8)と、該維持放電電極に直行して配置されたアドレス電極(3)とを具備し、前記維持放電電極の一方(7)を共通接続し、且つ、他方(8)を表示ライン毎に独立して設け、壁電荷をメモリ媒体として利用した面放電構造を有する3電極型面放電交流型プラズマディスプレイ装置であって、全画面における表示データの書き込みを該表示データに応じて維持放電に必要な壁電荷を形成することで行うアドレス期間と発光のための維持放電を繰り返して行う維持放電期間とを分離してプラズマディスプレイ装置を駆動し、1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、そして、該各サブフレームにおける維持発光の回数を当該各サブフレーム毎に個別に設定して所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。」の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として「維持放電を行う平行する維持放電電極(7,8)と、該維持放電電極に直行して配置されたアドレス電極(3)とを具備し、前記維持放電電極の一方(7)を共通接続し、且つ、他方(8)を表示ライン毎に独立して設け、壁電荷をメモリ媒体として利用した面放電構造を有し、
全画面における表示データの書き込みを該表示データに応じて維持放電に必要な壁電荷を各ラインごとに共通の期間内で形成することで行うアドレス期間と、各ラインに対して発光のための維持放電を繰り返して行うための共通の期間である維持放電期間とを分離して、各ラインにおける前記維持放電が前記維持放電期間内で行われるように駆動し、
1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成した3電極型面放電交流型プラズマディスプレイ装置であって、
該各維持放電期間における維持発光の回数を、各サブフレームにおける輝度を基準にして当該各サブフレーム毎に非等比数列的に個別に設定して、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。」と訂正する。
g.訂正前の請求項10を請求項8とし、同項記載の「請求項9の」の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として「請求項7の」と訂正する。
h.訂正前の請求項11を請求項9とし、同項の「前記記憶手段を、前記プラズマディスプレイ装置における駆動波形用記憶素子(55)の空き領域により構成し、前記各サブフレームの維持発光の回数情報を当該駆動波形用記憶素子の空き領域に設定するようにしたことを特徴とする請求項10のプラズマディスプレイ装置。」の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として「維持放電を行う平行する維持放電電極と、該維持放電電極に直行して配置されたアドレス電極とを具備し、前記維持放電電極の一方を共通接続し、且つ、他方を表示ライン毎に独立して設け、壁電荷をメモリ媒体として利用した面放電構造を有する3電極型面放電交流型プラズマディスプレイ装置であって、全画面における表示データの書き込みを該表示データに応じて維持放電に必要な壁電荷を形成することで行うアドレス期間と発光のための維持放電を繰り返して行う維持放電期間とを分離してプラズマディスプレイ装置を駆動し、1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、そして、該各サブフレームにおける維持発光の回数を当該各サブフレーム毎に個別に設定して所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたものであり、
各サブフレームにおける維持発光の回数を設定して記憶する記憶手段を駆動波形用記憶素子の空き領域により構成し、前記各サブフレームの維持発光の回数情報を当該駆動波形用記憶素子の空き領域に設定するようにし、該記憶手段から前記各サブフレームの維持発光の回数情報を随時読み出すようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。」と訂正する。
i.訂正前の請求項12乃至15を請求項10乃至13とし、それぞれの請求項に記載された「請求項10の」の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、いずれも「請求項8の」と訂正する。
j.明細書【0023】の「【課題を解決するための手段】本発明によれば、1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、該各サブフレームにおける維持発光の回数を当該各サブフレーム毎に個別に設定し、所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の階調制御方法が提供される。」の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として「本発明によれば、1画面を形成する1フレームをそれぞれ輝度の異なる複数のサブフレームによって構成し、該各サブフレームは、ライン上のセルに対して選択的に壁電荷を蓄積するためのアドレス放電を、選択された各ラインに対してそれぞれ行うための共通の期間であるアドレス期間と、該選択された各ラインに対して維持放電を行うための共通の期間である維持放電期間とを含むプラズマディスプレイ装置の階調制御方法において、前記選択された各ラインにおける維持放電は前記維持放電期間内で行われるものであり、かつ、該各維持放電期間における維持発光の回数を、各サブフレームにおける輝度を基準にして当該各サブフレーム毎に非等比数列的に個別に設定し、維持発光回数の増大に伴って生じる輝度の低下を補うように所定の輝度を有する階調表示を行うようにしたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の階調制御方法が提供される。」と訂正する。
k.明細書【0026】の「発行」(4箇所)の記載をいずれも、誤記の訂正を目的として「発光」と訂正する。
l.明細書【0031】の「すなわち、従来のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、各サブフレームにおける維持発光の回数が等比数列的になっている(1,2,4,8,…)のに対して、本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、各サブフレームにおける輝度を」の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として「なお、従来のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、各サブフレームにおける維持発光の回数が等比数列的になっている(1,2,4,8,…)のに対して、本発明のプラズマディスプレイ装置の階調制御方法では、上記のように各サブフレームにおける輝度を」と訂正する。
m.明細書【0035】の「ここで、(12)式または(13)式を用いた場合、B=fl(P)によっては、任意の階調値の輝度に対して、その次に大きい階調値の輝度が前者の輝度を上回ってしまう事態を生じる恐れがあるので、これを防ぐために(14)式の条件を付加する。この(14)式は、任意のサブフレームのパルス数が、それ以下のパルス数を有するサブフレームのパルス数の総和より、大きくなることを示している。すなわち、任意の階調値を有する第1のサブフレームの輝度に対して、第1のサブフレームの次に大きい階調値を有する第2のサブフレームの輝度が該第1のサブフレームの輝度を上回らないようにすることができる。」の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として「ここで、(12)式または(13)式を用いた場合、B=fl(P)によっては、任意の階調値Kの輝度に対して、Kより小さい次の階調値K-1の輝度が前者の輝度を上回ってしまう事態を生じる恐れがあるので、これを防ぐために(14)式の条件を付加する。この(14)式は、任意のサブフレームのパルス数が、それ以下のパルス数を有するサブフレームのパルス数の総和より、大きくなることを示している。この結果、任意の階調値を有する第1のサブフレームの輝度に対して、第1のサブフレームより小さな階調値を有する、第1のサブフレームの次の第2のサブフレームの輝度が、該第1のサブフレームの輝度を上回らないことにもなる。」と訂正する。
n.明細書【0036】の「発行」(2箇所)の記載を、誤記の訂正を目的として、いずれも「発光」と訂正する。
異議決定日 2000-09-11 
出願番号 特願平5-288345
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G09G)
P 1 651・ 534- YA (G09G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 奥村 元宏  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 島田 信一
渡邊 聡
登録日 1998-11-27 
登録番号 特許第2856241号(P2856241)
権利者 富士通株式会社
発明の名称 プラズマディスプレイ装置の階調制御方法  
代理人 井桁 貞一  
代理人 井桁 貞一  

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