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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H05K
管理番号 1032001
異議申立番号 異議1999-74359  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-04-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-11-22 
確定日 2000-12-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2896169号「電子部品用導電性搬送体の底材」の請求項1、2、3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2896169号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2896169号に係る発明についての出願は、平成1年8月30日の出願であって、平成11年3月5日にその発明について特許の設定登録がなされた後、その特許について、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年6月5日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
a.訂正事項a
特許請求の範囲を以下の通り訂正する。
「(1)電子部品装填用の凹部を一定の間隔で有するとともに、その側部の一方又は両方に送り穴が一定のピッチで設けられた、蓋材をヒートシールすることにより電子部品を封入するためのテープ状の電子部品用導電性搬送体の底材において、少なくとも前記電子部品と接する側には導電性ポリスチレン層が積層されており、前記導電性ポリスチレン層が、ポリスチレン65〜75重量%と、エチレン-酢酸ビニル共重合体5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレン-ブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成され、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量が前記導電性ポリスチレン樹脂組成物全体に対して0.8重量%以上であることを特徴とする電子部品用導電性搬送体の底材。
(2)請求項1に記載の電子部品用導電性搬送体の底材において、前記底材の総厚が0.2〜2.0mmであり、前記導電性ポリスチレン層の厚さが30〜100μmであることを特徴とする電子部品用導電性搬送体の底材。」
b.訂正事項b
明細書第5頁第4行目〜9行目を以下の通り訂正する。
「前記導電性ポリスチレン層が、ポリスチレン65〜75重量%と、エチレン-酢酸ビニル共重合体5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレン-ブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成され、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量が前記導電性ポリスチレン樹脂組成物全体に対して0.8重量%以上であることを特徴とする。」
c.訂正事項c
明細書第6頁第8行目〜12行目を以下の通り訂正する。
「本発明において導電性ポリスチレン樹脂組成物は、ポリスチレン65〜75重量%と、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレン-ブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有するものである。」
d.訂正事項d
明細書第7頁第4行目〜6行目を以下の通り訂正する。
「なお、EVA中の酢酸ビニル(VA)の含有量は、EVAの使用量に依存し、組成物全体に対して0.8重量%以上とする。」
e.訂正事項e
明細書第8頁第6行目〜10行目を以下の通り訂正する。
「特に、本発明においては、ポリスチレンとエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)との相溶性を向上するために、スチレン-ブタジエン系ゴムを、組成物全体に対して7〜10重量%の割合で添加する。」
f.訂正事項f
明細書第9頁第18行目、19行目の「第4図」を「第3図」と訂正し、明細書第10頁第19行目の「第5図」を「第4図」と訂正する。
g.訂正事項g
明細書第22頁第16行目〜第23頁第1行目を以下の通り訂正する。
「第3図は、本発明の導電性搬送体の底材の製造工程を示す概略図であり、第4図は、本発明の導電性搬送体の底材にヒートシールする蓋の層構造を示す断面図である。」
h.訂正事項h
第3図を削除する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
a.訂正事項a(請求項1の訂正)は、(ア)「蓋材をヒートシールすることにより電子部品を封入するための」底材に特定し、(イ)導電性ポリスチレン樹脂組成物中、スチレン-ブタジエン系ゴムを7〜10重量%とし、さらに(ウ)エチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量を、組成物全体に対して0.8重量%以上に限定するものであり、いずれも特許請求の範囲の滅縮を目的とするものである。
(ア)の訂正は第2図により、(イ)の訂正は訂正前の請求項2により、(ウ)の訂正は明細書第7頁第4行目〜6行目の記載により支持されている。
そうすると、訂正事項aの訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲の減縮に該当するものである。また、訂正事項b,c,d,e,f,g及びhの訂正は、特許請求の範囲の請求項1の記載と発明の詳細な説明及び図面の記載との整合をとるため、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記いずれの訂正も、新規事項の追加に該当しないし、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)独立特許要件
a.請求項1に係る発明について
(a)当審が通知した取消理由で引用した特開昭63-299923号公報(以下、「引用例1」という。)には、基材層と、該基材層の少なくとも片面に樹脂100重量部に対してカーボンブラックを5〜50重量部含有するスチレン系樹脂の表面導電層を積層した表面導電性複合プラスチックシートであって、表面導電層に用いるスチレン系樹脂として透明スチレン樹脂、耐衝撃性スチレン樹脂及びこれ等の混合物又は他のスチレン系樹脂、例えばスチレンーブタジエンブロック共重合樹脂が開示されているが、上記表面導電層がポリスチレンとカーボンブラックとエチレンー酢酸ビニル共重合体とスチレンーブタジエン系ゴムとを含有することについて記載されていない。
(b)特開昭58-35536号公報(以下、「引用例2」という。)には、耐衝撃用ポリスチレン、カーボンブラック及びゴム質のオレフィン系ポリマーからなる樹脂組成物であって、ゴム質のオレフィン系ポリマーの具体例として、スチレンブタジエンラバー、エチレンー酢酸ビニル共重合体が例示され、そして上記樹脂組成物は、成形性、機械的性質、電気的性質においてバランスのとれた樹脂組成物であり、ノンベント式押出機にてICコンテナ成形品を押出成形することができることが記載されている。
しかしながら、ゴム状ポリマーとしてスチレンブタジエンラバーとエチレンー酢酸ビニル共重合体とを併用したものは具体的には記載されておらず、さらに、蓋材をヒートシールすることにより電子部品を封入するためのテープ状の電子部品用導電性搬送体の底材において、少なくとも電子部品と接する側には上記樹脂組成物が積層されることについて記載されていない。
(c)同じく、周知例(特開昭64-299923号公報、特開昭62-208374号公報、実開平1-63661号公報、実開平63-14860号公報、実開平1-91766号公報、実開昭63-147475号公報)にも、蓋材をヒートシールすることにより電子部品を封入するためのテープ状の電子部品用導電性搬送体の底材が、少なくとも前記電子部品と接する側には導電性ポリスチレン層が積層されており、前記導電性ポリスチレン層が、ポリスチレンと、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、カーボンと、スチレン-ブタジエン系ゴムとを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成されることについて記載されていない。
(d)以上のように、引用例1及び2並びに上記各周知例のいずれにも、本件請求項1に係る発明を特定する事項である、「蓋材をヒートシールすることにより電子部品を封入するためのテープ状の電子部品用導電性搬送体の底材において、少なくとも前記電子部品と接する側には導電性ポリスチレン層が積層されており、前記導電性ポリスチレン層が、ポリスチレン65〜75重量%と、エチレンー酢酸ビニル共重合体5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレンーブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成され、前記エチレンー酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量が前記導電性ポリスチレン樹脂組成物全体に対して0.8重量%以上であること」について記載されていないし、当該事項について示唆するところもない。そして、当該事項により、本件特許明細書の記載によれば、本件請求項1に係る発明は,良好な導電性を有しており、しかも高価な導電性樹脂組成物の使用量が少なくてすむばかりでなく、EVAをシール層とする蓋に対して良好なヒートシールの保存性を示すという効果を奏するものと認められる。
b.請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明を更に限定したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記引用例1〜8に記載のものに基づいて当業者が容易に推考しうるものではない。
c.したがって、請求項1ないし2に係る発明は、引用例1及び2に記載のもの並びに上記周知例に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する126条第2項ないし第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立について
(1)請求項1ないし2に係る発明
上記2.において記載したように、上記訂正が認められるから、本件請求項1ないし2に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2)特許異議申立の理由の概要
a.特許異議申立人 電気化学工業株式会社は、「特許第2896169号の全請求項に記載された発明はその出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。また、同じく本件特許発明は明細書の実施例と矛盾しているから、特許法第36条第6項第1号の規定に該当し、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである。本件特許発明は特許法第36条第5項に該当し拒絶の査定をしなければならないにも関わらず特許されており、これは特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める平成7年政令第205号第4条により取り消されるべきものである。」旨主張する。
証拠方法
(a-1)甲第1号証:特開昭63-299923号公報(引用例)
(a-2)甲第2号証:米国特許第4,478,903号明細書(以下、「引用例3」という。)
(a-3)甲第3号証:特公昭58-35536号公報(引用例2)
(a-4)甲第4号証:特公昭59-5213号公報(以下、引用例4」という。)
b.特許異議申立人 白澤 仁は、「本件請求項1〜3に係る各特許発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。」旨主張する。
証拠方法
(b-1)甲第1号証:特開昭57-205145号公報(以下、「引用例5」という。)
(b-2)甲第2号証:特開昭54-152580号公報(以下、「引用例6」という。)
(b-3)甲第3号証:特開昭62-260313号公報(以下、「引用例7」という。)
(b-4)甲第4号証:特開昭57-77464号公報(以下、「引用例8」という。)
(3)対比・判断
a.特許法第36条違反についての主張(その1)
特許異議申立人電気化学工業化学株式会社の「本件特許発明は明細書の実施例と矛盾している」との主張について検討すると、訂正明細書の記載によれば、「エチレンー酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量が導電性ポリスチレン樹脂組成物全体に対して0.8重量%以上であること」を本件請求項1に係る発明を特定するために必要な事項とすることが本件請求項1及び発明の詳細な説明に記載されているので、特許異議申立人の上記主張は理由のないこととなった。
b.特許法第36条違反についての主張(その2)
特許異議申立人電気化学工業化学株式会社の「本件特許発明は導電性ポリスチレン層3とポリスチレン層4とを必須の構成とし(特許公報第2頁右欄11〜12行)実施例もすべてポリスチレン層を有しているにもかかわらず、請求項にはそのことについて全く記載がない。」との主張について検討すると、導電性ポリスチレン層が積層される基材層に関し、たとえば、訂正明細書3頁18行ないし19行には、「本発明の導電性搬送体の底材1は、導電性ポリスチレン層3とポリスチレン層4とを必須の構成要件とし、」との記載があり、そして本件請求項1に係る発明においては、蓋材をヒートシールすることにより電子部品を封入するためのテープ状の電子部品用導電性搬送体の底材であって、少なくとも前記電子部品と接する側には導電性ポリスチレン層が積層されているものである。
したがって、基材層は、少なくとも前記電子部品と接する側に導電性ポリスチレン層が積層されるものであるので、導電性ポリスチレン層が積層されうる基材層であって、基材層がポリスチレンであることは明らかである。
よって、特許異議申立人の上記主張は理由がない。
c.第29条第2項違反について
(a)本件請求項1に係る発明について
(ア)引用例1及び2並びに特許異議申立人が周知例であると主張する特開昭64-299923号公報、特開昭62-208374号公報、実開平1-63661号公報、実開平63-14860号公報、実開平1-91766号公報、実開昭63-147475号公報のいずれにも、2.(3)a.(a)ないし(c)に記載したように、蓋材をヒートシールすることにより電子部品を封入するためのテープ状の電子部品用導電性搬送体の底材において、電子部品と接する側にはポリスチレン65〜75重量%と、エチレン-酢酸ビニル共重合体5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレン-ブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成される導電性ポリスチレン層が積層されることについて記載されていない。
(イ)引用例3には、ポリスチレン系樹脂及びABS系樹脂のグループから選ばれた樹脂からなる基材層を覆う導電性の表面層はエチレンープロピレン共重合体、エチレンーブテン共重合体及びプロピレンーブテン共重合体からなるグループから選ばれたオレフインの共重合体と混合されているスチレン系樹脂である複合プラスチックシートであって、上記オレフインの共重合体がエチレンー酢酸ビニル共重合体であることについて記載されていないし、また、引用例4には、「ポリスチレン40〜89重量部、スチレンーブタジエンブロツク共重合体3〜15重量部、エチレンー酢ビ共重合体であるエチレン共重合体5〜20重量部及びカーボンブラツク3〜25重量部からなる導電性熱可塑性樹脂組成物。」(請求項1及び2頁末行ないし右欄8行参照)が電気電導性が良好で、かつ耐衝撃強度の優れた成型加工性の良好なることが記載されているにすぎず、上記引用例3及び4のいずれにも、蓋材をヒートシールすることにより電子部品を封入するためのテープ状の電子部品用導電性搬送体の底材において、電子部品と接する側にはポリスチレン65〜75重量%と、エチレン-酢酸ビニル共重合体5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレン-ブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成される導電性ポリスチレン層が積層されることについて記載されていない。
(ウ)引用例5には、「樹脂シート基材の片面もしくは両面にカーボンブラツクを5〜50重量部含有するポリスチレン系又はABS系樹脂のフイルム又はシートを共押出により一体に積層してなる表面導電性複合プラスチツクシート。」(特許請求の範囲)が帯電防止性を有し、かつ、機械的性質、剛性、耐衝撃性、耐折強さ等に優れ、IC製品の包装用に適したものであることが開示されているが、カーボンブラツク5〜50重量部含有する上記ポリスチレン系又はABS系樹脂のフイルム又はシートが、スチレン樹脂とエチレンー酢酸ビニル共重体とカーボンブラツクとを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成されていること及び上記導電性熱可塑性樹脂組成物をテープ状の電子部品用導電性搬送体の底材において電子部品と接する側に上記フィルム又はシートを積層することについて開示されていない。
引用例6には、「(a)ポリスチレン100重量部に対し、(b)カーボンブラツク10〜70重量部及び(c)カーボンブラツクとポリスチレンの双方に親和性の良好なブタジエンを一成分とする合成ゴムまたはゴム質のオレフイン系コポリマーの少なくとも1種15〜80重量部からなる樹脂組成物」において、「ポリスチレン、カーボンブラツクと共に使用して成形性、機械的性質及び電気的性質の向上に役立つポリマーは、ゴム質のオレフイン系ポリマーであり、具体的には、エチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられる。」(3頁左上欄6行ないし右上欄3行)こと、そして上記「樹脂組成物は例えば電子部品用収納ケースの如き電気的性質、機械的性質において更に苛酷な物性要求を受ける場合においても十分適用することが可能である。」(3頁右下欄7行ないし9行)こと、「耐衝撃用ポリスチレン、SBR及びカーボンブラツクを表1に示す如き割合にて加えたものを混練し、熔融押出し、ペレツト化した。更にICキヤリヤー成形品を押出成型し」(4頁右上欄2行ないし9行)たことが記載されていることから明らかなように、上記樹脂組成物を押出成型したICキヤリヤーの如き電子部品用収納ケースは基材層に上記樹脂組成物を積層したものではないので、上記引用例6には、上記樹脂組成物をテープ状の電子部品用導電性搬送体の底材において、電子部品と接する側に積層することについて記載されていない。
引用例7には、「一定間隔を保持して収納凹部を形成したベーステープと、該収納凹部に電子部品を収納した後シールするためのカバーテープとを備えた電子部品用キヤリヤーテープにおいて、少なくとも該ベーステープに透光性の平板状物質の表面を導電性物質で被覆してなる導電性素材を主成分とする導電層を設けた・・・電子部品用キヤリヤーテープ。」(特許請求の範囲)において、上記導電性素材は透光性の平板状物質の表面を導電性物質で被覆してなるものであって、カーボンブラツクではないし、また、上記導電層がポリスチレンとエチレンー酢酸ビニル共重体とカーボンブラツクとスチレンーブタジエン系ゴムとを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成されているものではない。
引用例8には、容器本体を構成する複合シートはスチレン系樹脂シートと混合樹脂シートとを積層してつくられ、混合樹脂シートは、エチレンー酢酸ビニル共重合樹脂を含有するものであることが開示されているが、混合樹脂シートにはカーボンブラツクが含有されておらず、上記混合樹脂シートは導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成されているものではない。
(エ)以上のように、引用例1ないし8及び上記各周知例のいずれにも、本件請求項1に係る発明を特定する事項である、「蓋材をヒートシールすることにより電子部品を封入するためのテープ状の電子部品用導電性搬送体の底材において、少なくとも前記電子部品と接する側には導電性ポリスチレン層が積層されており、前記導電性ポリスチレン層が、ポリスチレン65〜75重量%と、エチレンー酢酸ビニル共重合体5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレンーブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成され、前記エチレンー酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量が前記導電性ポリスチレン樹脂組成物全体に対して0.8重量%以上であること」について記載されていないし、当該事項について示唆するところもない。
そして、当該事項により、本件特許明細書の記載によれば、本件請求項1に係る発明は,良好な導電性を有しており、しかも高価な導電性樹脂組成物の使用量が少なくてすむばかりでなく、EVAをシール層とする蓋に対して良好なヒートシールの保存性を示すという効果を奏するものと認められる。
(b)請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明を更に限定したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記引用例1〜8に記載のものに基づいて当業者が容易に推考することができたものとはいえない。
(c)したがって、請求項1ないし2に係る発明は、引用例1ないし8及び上記各周知例に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1ないし2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電子部品用導電性搬送体の底材
(57)【特許請求の範囲】
(1)電子部品装填用の凹部を一定の間隔で有するとともに、その側部の一方又は両方に送り穴が一定のピッチで設けられた、蓋材をヒートシールすることにより電子部品を封入するためのテープ状の電子部品用導電性搬送体の底材において、少なくとも前記電子部品と接する側には導電性ポリスチレン層が積層されており、前記導電性ポリスチレン層が、ポリスチレン65〜75重量%と、エチレン-酢酸ビニル共重合体5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレン-ブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成され、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量が前記導電性ポリスチレン樹脂組成物全体に対して0.8重量%以上であることを特徴とする電子部品用導電性搬送体の底材。
(2)請求項1に記載の電子部品用導電性搬送体の底材において、前記底材の総厚が0.2〜2.0mmであり、前記導電性ポリスチレン層の厚さが30〜100μmであることを特徴とする電子部品用導電性搬送体の底材。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、IC等の電子部品のテーピング包装に使用する電子部品用導電性搬送体の底材に関し、特に導電性が良好で、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂をシール層とする蓋材との接着性が良好な電子部品用導電性搬送体の底材に関する。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕
近年電子機器の生産の自動化を目的として、回路基板への電子部品の自動装着が行われるようになってきたが、この場合電子部品のハンドリングを容易にするために、個々の電子部品をキャリアテープと呼ばれるテープ状搬送体で包装し、搬送体を順々に送り出しながら電子部品を自動的にピックアップし、回路基板の所定の箇所に自動的に装着している。
このような電子部品の自動装着に用いられる搬送体は、一般にともにテープ状の底材と、蓋(カバーテープ)とからなり、底材には、一定の間隔で電子部品収容用凹部が形成されているとともに、その一方又は両方の側部に一定のピッチの送り穴が形成されている。また、蓋は電子部品を収容した凹部を完全にカバーする幅を有し、その両側部において底材にヒートシール等により接着されている。
このような電子部品の搬送体の底材としては、通常、強度及びコストの点でポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等が使用されており、また蓋材としては、接着性の点でエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が使用されている。
ところで、電子部品は、小型化及び精密化に伴い、高電圧による絶縁破壊等を防止する必要性が益々重要になってきている。このためには搬送体を導電性とし、電荷が蓄積されるのを防止する必要がある。
このような導電性の付与を目的として、搬送体の底材として、ポリ塩化ビニル樹脂中にカーボンなどの導電性物質の微細粒子を多量に配合して、表面抵抗を108Ω/□以下とした樹脂のシートを用いたものがある。
しかしながら、この搬送体の底材は、単層構造であり底材を形成する全樹脂中にカーボンブラック等の導電性物質を配合しているので、どうしてもその配合量が多量となり、コストが高いという問題があった。
従って本発明の目的は、十分な導電性を有するとともに、安価な電子部品搬送体の底材を提供することである。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、搬送体の底材全体を導電性としなくても、少なくとも電子部品と接する側に導電層を設ければ電子部品の保護としては十分であり、かつ導電性樹脂の使用量を少なくすることができることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の電子部品用導電性搬送体の底材は、少なくとも電子部品と接する側には導電性ポリスチレン層が積層されており、前記導電性ポリスチレン層が、ポリスチレン65〜75重量%と、エチレン-酢酸ビニル共重合体5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレン-ブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成され、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量が前記導電性ポリスチレン樹脂組成物全体に対して0.8重量%以上であることを特徴とする。
以下本発明を詳細に説明する。
第1図は、本発明の一実施例による導電性搬送体の平面図であり、第2図は第1図のA-A拡大断面図である。
導電性搬送体はテープ状底材1及びそれにヒートシールされたテープ状蓋2からなり、底材1は一定の間隔(a)で配列された部品装填用の凹部11と、一方の側部に一定のピッチ(b)で設けられた送り穴12とを有する。また蓋2は底材1の上面に、凹部11を完全に覆うようにヒートシール等により接着されている。このような導電性搬送体において、第1図及び第2図に一点鎖線で示したように、電子部品6が装填される。
第2図に示すように、本発明の導電性搬送体の底材1は、導電性ポリスチレン層3とポリスチレン層4とを必須の構成要件とし、さらに必要に応じポリスチレン層4の下側にさらに導電性ポリスチレン層5を有する。
本発明において導電性ポリスチレン樹脂組成物は、ポリスチレン65〜75重量%と、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレン-ブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有するものである。
ポリスチレンとしては、分子量等に特に制限はなく、またその配合割合は65〜75重量%である。ポリスチレンの配合割合が65重量%未満ではEVAとのブレンドが困難となり、また75重量%を超えるとEVA及びカーボンの配合量が低下しすぎる。
エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の配合割合は一般に5〜15重量%であり、特に5〜10重量%の範囲内にするのが好ましい。EVAの配合割合が5重量%未満であると、蓋との接着力が経時的に低下し、また15重量%を超えると、ポリスチレンとのブレンドが困難となる。
なお、EVA中の酢酸ビニル(VA)の含有量は、EVAの使用量に依存し、組成物全体に対して0.8重量%以上とする。従って、例えばEVAが5重量%の場合、VAの含有量は、16重量%以上であればよく、またEVAが15重量%の場合、VAの含有量は、5.3重量%以上であればよい。より好ましくは酢酸ビニルの全体に対する配合割合が1.25〜3.5重量%である。一般に酢酸ビニルの含有量が低すぎると、蓋とのヒートシール強度の保存性の低下が著しい。また酢酸ビニルの含有量は多すぎても意味がない。
導電性ポリスチレン樹脂組成物中のカーボンの配合割合は10〜25重量%であり、特に10〜20重量%が好ましい。カーボンの配合割合が10重量%未満では、導電性ポリスチレン樹脂組成物の導電性が十分でなく、また25重量%を超えると、底材を長期間高温下で保存した場合、カーボンが底材表面にブリードアウトするため、蓋材とのヒートシール強度の保存性が低下する。このようにカーボンを適量含有する導電性ポリスチレン層の表面抵抗は108Ω/□以下、好ましくは、106Ω/□以下である。
特に、本発明においては、ポリスチレンとエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)との相溶性を向上するために、スチレン-ブタジエン系ゴムを、組成物全体に対して7〜10重量%の割合で添加する。スチレン-ブタジエン系ゴムの含有量が7重量%未満では、その添加効果が顕著でなく、また10重量%を超えても意味がない。
なお、上述したような成分以外に必要に応じ、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤等を適量添加してもよい。
ポリスチレン層4は、ポリスチレンの単独重合体に限らず、ゴム等のその他の成分をブレンドしたものも用いることができる。
なお、本発明においては、導電性ポリスチレン層3が電子部品側に設けられていれば十分であるが、一層良好な導電性を得るためには、第2図に示すように、外側にも導電性ポリスチレン層5を設けるのが好ましい。
上述したような各層からなる底材の総厚は、装填する電子部品の大きさ及び重量に応じ適宜変更可能であるが、一般に0.2〜2.0mmである。
また導電性ポリスチレン層3の厚さは、十分な導電性を得るためには、30〜100μmであるのが好ましい。なお100μmを超えても、それに相応した効果の向上が得られず、使用する導電性ポリスチレン樹脂組成物の量が多くなるだけで、経済的でない。なお、下側にも導電性ポリスチレン層5を有する場合、導電性ポリスチレン層5の厚さは、導電性ポリスチレン層3の厚さと同じでよい。
このような多層構造を有する導電性搬送体の底材は、以下のような方法により製造することができる。
まず第3図に示す装置により積層シートを製造する。第3図において、マルチマニホールド(図示せず)を有するダイアより、各層用樹脂を2層又は3層押出しし、延伸した後積層シート9を冷却ロール71〜73により冷却して、巻取ロール8で巻き取る。この際、導電性ポリスチレン層3の押出し温度を200〜220℃、ポリスチレン層4の押出し温度を210〜220℃、導電性ポリスチレン層5の押出し温度を210〜220℃に設定するのが好ましい。また、冷却ロール71〜73の温度を60〜80℃程度に設定すれば、冷却を効率的に行うことができる。
次に、得られた積層シートに凹部11を形成し、側部に送り穴12をあけ、リールに巻き取っていく。このようにして導電性搬送体の底材を得ることができる。
なお、この導電性搬送体の底材にヒートシールする蓋は、(a)底材にヒートシールしたときに剥離強度のばらつきが少なく、(b)静電防止性を有し、(c)一定以上の機械的強度を有することが必要である。
このような条件を満たす蓋の一例を第4図に示す。蓋2は、ベースシート21と、シール材層22とからなり、両層の間には必要に応じて、アンカーコート層23が設けられる。前記シール材層22はポリエチレン層22aと、EVA層22bの2層構造となっている。
ベースシート21には、機械的強度の観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルを用いるのが好ましい。またEVA層22bは、EVAの他に静電防止剤を含有する。上記EVAとしては、前述の底材に用いたのと同じEVAでよい。また上記静電防止剤としては、非イオン系界面活性剤、あるいは非イオン系界面活性剤+グリセリンとカルボン酸(例えばステアリン酸等)とのモノエステルを用いるのが好ましい。
上記静電防止剤の含有量は、EVA層22bの組成物100重量%に対して0.2〜0.5重量%の割合である。添加量が0.2重量%未満では蓋の表面抵抗値を十分に低下させることができず、また0.5重量%を超えても意味がない。静電防止剤の添加により、この蓋の表面抵抗は1011Ω/□以下、特に108Ω/□以下、好ましくは106Ω/□以下となる。静電防止剤を添加しない場合のEVAの表面抵抗は1016Ω/□以上であるから、導電性が著しく向上することがわかる。
また、ベースシート21と、シール材層22との間にアンカーコート層23を設ける場合、アンカーコート剤としては、ポリエチレンイミン、ウレタン、イソシアネート等の汎用のものを用いることができる。
このような蓋材の厚さは全体で47〜145μmの範囲にある。蓋材の厚さが47μmより薄いと、強度的に支障をきたし、145μmより厚いとヒートシールの際の伝熱性が悪くなる。また各層の厚さは、ベースシートが12〜25μm、シール材層が35〜95μmであり、シール材層中のEVA層は15〜75μmであるのが好ましい。より好ましくは、シール材層が40〜80μmであり、EVA層が20〜60μmである。なおベースシートの厚さは補強の目的で決まり、上記範囲内にないと、強度的に支障をきたす。またシール材層は35μm未満であると剥離強度のばらつきが大きくなり、導電性搬送体の開封をソフトに行うことが困難となり、また95μmを超えても意味がない。
このようなEVA層22bを有する蓋2は、底材1に対して、10〜70g以内の剥離強度(幅1mmでヒートシールしたものを300mm/分の速度で剥離したときの強度)を有する。また剥離強度は全体にわたってばらつきが少なく、最大と最小の差は僅か60g以内である。
この蓋2は、例えばポリエチレンテレフタレートのシートと、静電防止剤含有EVA組成物のシートとの間にポリエチレンを押出し、ラミネートすることにより得ることができる。またアンカーコート層を設ける場合は、前記ポリエチレンテレフタレートのシートにアンカーコート剤を塗布してアンカーコート層を形成し、その後同様の押出しラミネートを行えばよい。
〔作用〕
本発明の導電性搬送体の底材は、電子部品と接する側に、導電性ポリスチレン樹脂組成物が積層されているので、十分に小さな表面抵抗を有し、導電性ポリスチレン樹脂組成物の使用量が少なくて済む。このため、安価な導電性搬送体の底材となっている。
さらに、導電性ポリスチレン層を形成する導電性ポリスチレン樹脂組成物は、組成物全体に対する酢酸ビニルの割合が所望の範囲にあるEVAを含有しているため、シール面をEVA層とする蓋に対してヒートシール接着性にばらつきがなく、良好である。
〔実施例〕
以下の具体的実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1〜10及び比較例1
導電性ポリスチレン樹脂組成物のシートの作成
4種類のエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA(1)〜EVA(4))と、ポリスチレンと、カーボンと、スチレン-ブタジエン系ゴムとを第1表に示す割合で配合し、230℃で15分間混練し、厚さ1.5mmの導電性ポリスチレン樹脂組成物のシートを得た。
EVA(1)〜EVA(4)の酢酸ビニル含有量は、以下に示す通りである。
EVA(1):酢酸ビニル含有量15重量%
EVA(2):酢酸ビニル含有量25重量%
EVA(3):酢酸ビニル含有量30重量%
EVA(4):酢酸ビニル含有量33重量%
表面抵抗値の測定
上記導電性ポリスチレン樹脂組成物のシートの表面抵抗値を三菱油化(株)製ロレスターを使用して測定した。
測定結果を第1表にあわせて示す。
第1表に示したように実施例1〜10の導電性ポリスチレン樹脂組成物のシートの表面抵抗値は、導電性搬送体の底材に要求される108Ω/□以下(好ましくは106Ω/□以下)の表面抵抗値より十分に低かった。
剥離強度保存テスト
剥離強度保存テスト用に、本発明の底材にヒートシールする蓋として、ポリエチレンテレフタレートにイソシアネート系アンカーコート剤を塗布してアンカーコート層を形成し、これと、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系樹脂とを、ポリエチレンで押出しラミネートし、ポリエチレンテレフタレート層25μm、ポリエチレン層20μm、EVA層30μmの積層シートを作成した。
なお、EVA系樹脂は、静電防止剤として、全体を100重量%として、0.5重量%のノニオン系界面活性剤(東京電気化学工業(株)製スタティサイド)を添加したものである。またこの蓋の表面抵抗値は108Ω/□であった。
各導電性ポリスチレン樹脂組成物シートに対して、上記蓋を幅1mmで、170℃で、1秒間ヒートシールし、ヒートシール直後の剥離強度と、温度60℃、湿度90%で一週間保存した後の剥離強度とをそれぞれ測定した。
剥離強度の測定条件は以下の通りであった。
剥離角度:テープ面に対して180°
剥離速度:毎分300mm
結果を第1表にあわせて示す。
第1表より、EVAの含有量5〜15重量%の場合に良好な剥離強度を示し、かつEVA中の酢酸ビニルの含有量が組成物全体に対して0.8重量%以上の割合となると、剥離強度保存性が良いことがわかる。また、各実施例のサンプルでは、剥離強度のばらつきは非常に小さかった。

実施例11〜16
底材用シートの作成
上層及び下層を形成する導電性ポリスチレン樹脂組成物として、第2表に示す2種類のものをそれぞれ用い、中間層をハイインパクトポリスチレン層として、3層押出し成形し、第3図に示すような構造の本発明の導電性搬送体の底材用シートを作成した。
なお、底材用シートの総厚は、0.3mm、0.4mm、1.0mmの3種類を設定し、さらに各層の層厚の比は導電性ポリスチレン層:ポリスチレン層:導電性ポリスチレン層=1:5:1となるように設定した。
得られた導電性搬送体の底材のシートの上面及び下面の表面抵抗と、厚さを測定し、表面状態を観察した。
結果を導電性ポリスチレン樹脂組成物の組成とともに第3表に示す。


第3表より、本発明の導電性搬送体の底材用シートは、上面、下面ともに108Ω/□よりはるかに小さい表面抵抗を示すことがわかる。また3層押出しによるシートの厚さはほぼ一定であった。
〔発明の効果〕
以上詳述した通り、本発明の導電性搬送体の底材は、電子部品との接触面を導電性ポリスチレン層としているので、良好な導電性を有しており、しかも高価な導電性樹脂組成物の使用量が少なくて済む。またEVAをシール層とする蓋に対して良好なヒートシールの保存性を示す。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の導電性搬送体の底材の一例を示す平面図であり、
第2図は、第1図のA-A拡大断面図であり、
第3図は、本発明の導電性搬送体の底材の製造工程を示す概略図であり、
第4図は、本発明の導電性搬送体の底材にヒートシールする蓋の層構造を示す断面図である。
1・・・底材
11・・・部品装着用凹部
12・・・送り穴
2・・・蓋
3、5・・・導電性ポリスチレン層
4・・・ポリスチレン層
6・・・電子部品
7・・・ダイ
71、72、73・・・冷却ロール
8・・・巻取りロール
9・・・積層シート
21・・・ベースシート
22・・・シール材層
22a・・・ポリエチレン層
22b・・・エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂層
23・・・アンカーコート層
【図面】




 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許請求の範囲の滅縮を目的として、特許請求の範囲を以下の通り訂正する。
「(1)電子部品装項用の凹部を一定の間隔で有するとともに、その側部の一方又は両方に送り穴が一定のピッチで設けられた、蓋材をヒートシールすることにより電子部品を封入するためのテープ状の電子部品用導電性搬送体の底材において、少なくとも前記電子部品と接する側には導電性ポリスチレン層が積層されており、前記導電性ポリスチレン層が、ポリスチレン65〜75重量%と、エチレン-酢酸ビニル共重合体5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレン-ブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成され、前記エチレン-酢酸ピニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量が前記導電性ポリスチレン樹脂組成物全体に対して0.8重量%以上であることを特徴とする電子部品用導電性搬送体の底材。
(2)請求項1に記載の電子部品用導電性搬送体の底材において、前記底材の総
厚が0.2〜2.0皿であり、前記導電性ポリスチレン層の厚さが30〜100μmであることを特徴とする電子部品用導電性搬送体の底材。」
(2)以下の訂正は、請求項1の記載と発明の詳細な説明の記載及び図面との整合をとるために明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(2-1)明細書第5頁第4行目〜9行目を以下の通り訂正する。
「前記導電性ポリスチレン層が、ポリスチレン65〜75重量%と、エチレン-酢酸ビニル共重合体5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレン-ブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有する導電性ポリスチレン樹脂組成物により形成され、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量が前記導電性ポリスチレン樹脂組成物全体に対して0.8重量%以上であることを特徴とする。」
(2-2)明細書第6頁第8行目〜12行目を以下の通り訂正する。
「本発明において導電性ポリスチレン樹脂組成物は、ポリスチレン65〜75重量%と、エチレン-酢酸ピニル共重合体(EVA)5〜15重量%と、カーボン10〜25重量%と、スチレン-ブタジエン系ゴム7〜10重量%とを含有するものである。」
(2-3)明細書第7頁第4行目〜6行目を以下の通り訂正する。
「なお、EVA中の酢酸ビニル(VA)の含有量は、EVAの使用量に依存し、組成物全体に対して0.8重量%以上とする。」
(2-4)明細書第8頁第6行目〜10行目を以下の通り訂正する。
「特に、本発明においては、ポリスチレンとエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)との相溶性を向上するために、スチレン-ブタジエン系ゴムを、組成物全体に対して7〜10重量%の割合で添加する。」
(2-5)明細書第9頁第18行目、19行目の「第4図」を「第3図」と訂正し、明細書第10頁第19行目の「第5図」を「第4図」と訂正する。
(2-6)明細書第22頁第16行目〜第23頁第1行目を以下の通り訂正する。
「第3図は、本発明の導電性搬送体の底材の製造工程を示す概略図であり、第4図は、本発明の導電性搬送体の底材にヒートシールする蓋の層構造を示す断面図である。」
(2-7)第3図を削除する。
異議決定日 2000-11-13 
出願番号 特願平1-224230
審決分類 P 1 651・ 534- YA (H05K)
P 1 651・ 121- YA (H05K)
P 1 651・ 531- YA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 市川 裕司  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 鈴木 久雄
井口 嘉和
登録日 1999-03-05 
登録番号 特許第2896169号(P2896169)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 電子部品用導電性搬送体の底材  
代理人 高石 橘馬  
代理人 高石 橘馬  

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