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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01K
管理番号 1032057
異議申立番号 異議2000-71948  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-02-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-10 
確定日 2001-01-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第2975552号「温度検知器」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2975552号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2975552号に係る特許は、その出願が、平成2年8月23日に出願された実願平2-88474号を平成7年7月5日に特許出願に出願変更したものであって、平成11年9月3日に特許権の設定登録がなされ、平成12年5月10日付けで異議申立人田村正一から特許異議の申立があり、平成12年9月11日付けで取消理由を特許権者に通知したところ、平成12年11月9日付けで意見書が提出された。

2.本件発明
本件特許第2975552号の請求項1に係る発明は、特許明細書及び図面 の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定 される次のとおりのものである。
断熱材として機能するスポンジ状弾性体と、
該スポンジ状弾性体上面に搭載され前記スポンジより高硬度で、熱伝導性及び耐熱性に優れた材料から構成された集熱体として機能する感熱素子保持体と、
該感熱素子保持体内部に埋め込まれたサーミスタ素子及びサーミスタリード線部からなるサーミスタと、
これらを被包する摩擦係数の小さい耐熱性絶縁フィルムとからなり、
前記感熱素子保持体表面を前記耐熱絶縁フィルムを介して前記回転加熱体に押し当てることにより前記サーミスタ素子部及びサーミスタリード線部の全体で前記回転加熱体の熱を集熱して温度検知するように構成された温度検知器であって、
前記感熱素子保持体又は前記スポンジ状弾性体のうち少なくとも一方が前記回転加熱体の形状に沿って略等しい曲面を有していることを特徴とする
温度検知器。

3.取消理由通知の概要
本件発明は、刊行物1(実願昭61-143284号(実開昭63-50028号公報)のマイクロフィルム)、刊行物2(実願昭61-135998号(実開昭63-41175号公報)のマイクロフィルム)及び刊行物3(特開昭63-129379号公報)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.刊行物の記載事項
刊行物1について
「第1図は本考案に係る温度センサの分解斜視図、第2図は同じく組立状態での部分断面図である。5は薄板状に形成されたセラミック基板であって、板厚方向の表面51の略中央部に、円弧状の凹部52を形成し、表面51と対向する下面53を感熱面としてある。従って、熱定着ローラ等に対して、耐摩耗性の高いセラミック基板5の下面53が対向するので、熱定着ローラ等の高速で回転しまたは移動する熱源であっても、摩耗が少なく、寿命の長い温度センサが得られる。」(第5頁20行〜第6頁9行)
「セラミック基板5の感熱面53は熱源との熱的結合を高めるために、鏡面研磨面としたり、或は、第3図に示すように、感熱面53の表面をテフロン等のような耐熱性に優れた低摩擦材料である保護膜54で覆って、耐摩耗性を向上させることもできる。
6は感熱素子である。感熱素子6は、セラミック基板5の表面51の略中央部に形成された凹部52内に、その下半分を埋め込み、その上から無機接着剤7を塗布して固着してある。」(第6頁14行〜第7頁3行)
「感熱素子6はガラス封止サーミスタまたはビード型サーミスタで構成し、ガラス封止部61から導出された一対のリード線62,63を、カシメ金具64,65によって、耐熱絶縁被覆を施した引出線66,67にそれぞれ接続している。68はリード線を被覆する耐熱絶縁チューブである。
8は耐熱性弾性体である。この耐熱性弾性耐8は例えばシリコーンスポンジ等でなるもので、セラミック基板51上に、感熱素子を覆うようにして積層して設けられている。この耐熱弾性体8が感熱素子6に対する保護緩衝体となるので、感熱素子6の硬質セラミック基板5に固着した構造の下でも、感熱素子6の破損、割れ等を確実に防止できる。」(第7頁12行〜第8頁7行)
刊行物2について
「定着ローラ1への温度検出部材3の当接を安定化させるために、温度検出部材3の当接面に、第5図に示すような曲率をもたせるようにしてもよい。」(第10頁7行〜同10行)
刊行物3について
「32は固定用基板25を含め温度検知センサー24を含み保護するとともに、加熱ローラ11aとの摺動時の摩擦抵抗を少なくするための耐熱性及び摺動特性の良いフッ素樹脂やポリイミド樹脂などのシートにより構成される保護シートである。」(第2頁左下欄3行〜同7行)

5.対比
請求項1に係る発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、上記刊行物1に記載された、「耐熱弾性体8」、「セラミック基板51」は、それぞれ請求項1に係る発明の「断熱材として機能するスポンジ状弾性体」、「該スポンジ状弾性体上面に搭載され前記スポンジより高硬度で、熱伝導性及び耐熱性に優れた材料から構成された集熱体として機能する感熱素子保持体」に相当する。
そして、刊行物1の「保護膜」も請求項1に係る発明の「耐熱性フィルム」も、摩擦係数の小さい耐熱材である点で共通するので、両者は、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。

(一致点)
断熱材として機能するスポンジ状弾性体と、該スポンジ状弾性体上面に搭載され前記スポンジより高硬度で、熱伝導性及び耐熱性に優れた材料から構成された集熱体として機能する感熱素子保持体と、サーミスタ素子及びサーミスタリード線部からなるサーミスタと、摩擦係数の小さい耐熱材とからなり、前記感熱素子保持体表面を前記耐熱材を介して回転体に押し当てることにより前記サーミスタ素子部及びサーミスタリード部の全体で回転加熱体の熱を集熱して温度検知するように構成された温度検出器。

(相違点)
相違点(1)について
請求項1に係る発明では、サーミスタ素子及びサーミスタリード線部からなるサーミスタが感熱素子保持体内部に埋め込まれているのに対し、刊行物1に記載のものは感熱素子保持体(セラミック基板)に下半分が埋め込まれている点。
相違点(2)について
請求項1に係る発明では、摩擦係数の小さい耐熱性材が耐熱性フィルムであって、これにより被包しているのに対して、刊行物1に記載のものは耐熱性材が保護膜であって、感熱面のみを覆っている点。
相違点(3)について
請求項1に係る発明では、前記感熱素子保持体又は前記スポンジ状弾性体のうち少なくとも一方が前記回転加熱体の形状に沿って略等しい曲面を有しているのに対して、刊行物1に記載のものはそのようになっていない点。

6.当審の判断
相違点(1)について
刊行物1の詳細な説明の従来技術には、熱定着ローラ3に接触する耐熱性弾性体1に感熱素子2を埋め込むことが記載されている。
一方、本件発明が相違点(1)に係る構成とした技術的意義は、本件明細書の記載をみるに、「集熱と感熱素子の保持機能を有する」(公報3欄30〜31行)、「前記サーミスタ素子部及びサーミスタリード線部の全体で回転加熱体の熱を集熱して温度検知する」(公報4欄8行〜9行)と記載されており、集熱効率の向上を図る機能と感熱素子を保持する機能を有していることが明らかである。
すると、刊行物1の従来例に熱定着ローラ3に接触する耐熱性弾性体1に感熱素子2を埋め込むことが記載されていたとしても、集熱効率の向上を図る機能まで、従来例の記載から把握することができない。
よって、相違点(1)係る構成は、当業者といえども容易に想到しうるものではない。
相違点(3)について
本件発明が相違点(3)に係る構成とした技術的意義について検討するに、本件明細書には「感熱素子保持体の表面全体を回転加熱体に接触させることにより、熱応答性に優れ、良好な温度検知を行うことができる」と記載されている。
一方、刊行物2には温度検出部材の当接面に曲率をもたせることが記載されている。
しかし、刊行物2には温度検出部材の当接面に曲率をもたせることについて、「該温度検出部材3を定着ローラ1に押し付けた時に温度検出部材が傾いても、この温度検出部材3が第6図に示すように矢印C方向に回転し、最も接触面積の広がる方向に移動する。すなわち・・・最良の接触状態を得ることができる。」(第10頁14行〜第11頁1行)と記載されており、本件発明が熱応答性に優れ、良好な温度検知を行うことを課題としているのに対し、刊行物2のものは、形態的な安定性を課題としていることが明らかであり、両者の課題は相違するものである。
よって、刊行物2に記載のものが、本件発明の相違点(3)に係る構成に類似する構成を有していたとしても、両者の課題が相違する以上、刊行物2に記載された当接面の曲率を刊行物1に記載された感熱素子保持体に適用することは、当業者といえども容易に想到しうるものではない。
したがって、上記相違点(2)について検討するまでもなく、本件発明は、上記刊行物1,2及び3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をなし得たものではない。

7.特許異議申立の理由の概要
本件発明は、甲第1号証(実願昭61-143284号(実開昭63-50028号公報)のマイクロフィルム)及び刊行物2(実願昭61-135998号(実開昭63-41175号公報)のマイクロフィルム)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

8.特許異議申立理由についての判断
特許異議申立理由における甲第1号証及び甲第2号証は、取消理由通知における刊行物1及び刊行物2と一致しており、いずれも特許法第29条第2項違反を理由とするものである。
よって、刊行物1及び刊行物2を甲第1号証及び甲第2号証と読み替えた上で、上記「5.対比」及び「6.当審の判断」で述べたとおりである。

9.むすび
以上検討したとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-12-07 
出願番号 特願平7-194227
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 島▲崎▼ 純一福田 裕司  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 杉野 裕幸
榮永 雅夫
登録日 1999-09-03 
登録番号 特許第2975552号(P2975552)
権利者 株式会社クラベ
発明の名称 温度検知器  

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