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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H05B |
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管理番号 | 1032281 |
異議申立番号 | 異議1998-71753 |
総通号数 | 17 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-10-01 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-04-15 |
確定日 | 2001-01-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2663935号「板状セラミックヒータ及びその製造方法」の請求項1に係る特許に対する平成11年6月24日付け異議決定について、東京高等裁判所において異議決定取消しの判決(平成11年(行ケ)第257号、平成12年3月21日言渡)があったので、更に審理の結果、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2663935号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
〔1〕手続の経緯 特許第2663935号は、昭和59年7月16日に出願された特願昭59-147381号の一部を平成9年6月20日に新たな特許出願として出願された特願平8-101080号に係り、平成9年6月20日にその発明について特許権の設定登録がされ、その後、異議申立人日本特殊陶業株式会社より特許異議の申立てがされ、取消理由通知がされ、その指定期間内である平成10年9月22日に訂正請求がされ、訂正拒絶理由通知がされ、これに対し意見書が提出され、訂正請求を認めない旨の異議決定をしたところ、東京高等裁判所にて異議決定が取り消されたので、更に審理をし、訂正拒絶理由がされ、これに対し意見書が提出されたものである。 〔2〕訂正の適否 1.訂正明細書の請求項1に係る発明 訂正明細書の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載される次の事項により特定されるとおりのものである。 「(1)耐熱電気絶縁性のセラミック粉末を材料として構成された板状の第1のセラミック基体と、少なくとも前記第1のセラミック基体を構成するセラミック材料と同じセラミック材料の粉末及び導電性材料の粉末を混合した材料を、前記第1のセラミック基体の表面に折曲した線状のパターンをもって部分的に形成してなる導電性発熱層と、前記導電性発熱層の前記パターンを全て覆うように、前記第1のセラミック基体上に積層され、該第1のセラミック基体を構成するセラミック材料と同じセラミック材料によって構成された板状の第2のセラミック基体とを具備し、前記第1のセラミック基体は、前記導電性発熱層が形成されていない部分を介して前記第2のセラミック基体に接触しており、前記第1のセラミック基体、前記導電性発熱層、及び前記第2のセラミック基体のみを焼結により一体化して構成されることによって、板状の前記第1のセラミック基体と、板状の前記第2のセラミック基体との間には、実質的に前記導電性発熱層のみが介在されていることを特徴とする酸素濃度検出装置用板状セラミックヒータ。」 2.引用刊行物に記載の発明 訂正明細書の請求項1に係る発明に対し、当審が平成12年5月9日付けの訂正拒絶理由通知において示した刊行物1(特開昭58-198754号公報)には、ガスセンサ素子用ヒータ付基板の製造方法に関して、第1〜3図とともに以下の点が記載されている。 ア)「この発明は、酸素濃淡電池の原理を応用し、あるいは酸化物半導体を用いた酸素センサ素子、その他のガスセンサ素子を形成する基板として好適なガスセンサ素子用ヒータ付基板の製造方法に関する。」(第1頁左欄第13〜17行)点。 イ)「第1図(d)に示すようなヒータ2を内蔵した未焼成基板5を作成していた。その後、前記未焼成基板5の表面に所望の酸素濃度検知部を構成する未焼成状態の酸素イオン伝導性固体電解質および電極を積層してこれらの全体を同時焼成したり、基板5を焼成したのちその表面に所望の酸素その他のガス濃度検知部を設けたりするようにしていた。」(第1頁右欄第19行〜第2頁左上欄第6行)点。 ウ)「72重量%のアルミナおよびその他タルク、ポリビニルブチラール、ジブチルフタレート、分散剤等を混合してアルミナスリップを作成した。次いで、既知のドクターブレード法によって薄板状に形成したのち、乾燥して厚さ約0.7mmのアルミナ未焼成シートを作成した。続いて、前記アルミナ未焼成シートを所定の寸法(5×9mm)に切断することによって一方の未焼成基板素材(第1図(a)参照)を得た。次に、比表面積が異なる次表にに示す3種の白金粉末にαーアルミナ粉末を10〜30体積%の範囲で加えたもの、および比較のためにαーアルミナ粉末を加えないものをそれぞれ準備し、これらの各粉末と有機質ビヒクル(テルピネオール85〜90重量%+エチルセルロース(10cPs)15〜10重量%)とを重量比で6:4〜8:2の範囲で適宜混合して粘度調整した導電性ペーストを多数作成し、それぞれの導電性ペーストをコーンプレート型(E型)でスクリーン印刷によってそれぞれ前記未焼成基板1上に所定形状(第1図(a)参照)でヒータ2を塗布し、その後乾燥した。」(第3頁左上欄第16行〜右上欄第16行)点。 エ)「前記アルミナ未焼成シートから切り出した所定寸法(5×9mm)の他方の未焼成基板素材4(第1図(c)参照)を準備し」(第3頁第5〜7行)た点。 オ)「前記第1図(b)に示す一方の基板素材1上に前記第1図(c)に示す他方の基板素材4を加圧力3Kg/cm2で加圧積層することによって未焼成基板5(第1図(d)参照)を作成した。」(第3頁左下欄第10〜14行)点。 カ)「その後1480℃×1時間の条件で焼成した。」(第3頁右下欄第10〜11行)点。 同じく刊行物2(特開昭56-94258号公報)には、ヒータ内蔵型基板の製造方法に関し、第1〜7図とともに以下の点が記載されている。 キ)「まず、約72重量%のアルミナおよび残りタルク、ポリビニルブチラール、ジブチルフタレート、分散剤等を混合してアルミナスリップを作成した。次いで既知のドクターブレード法によって上記スリップを薄板状に形成したのち乾燥して厚さ約0.7mmのアルミナグリーンシートを作成した。続いて前記アルミナグリーンシートを第4図(a)に示すように所定の寸法(9×5mm)に切断することによって一方の基盤素材11を得た。」(第3頁右上欄第11〜20行)点。 ク)「約60重量%の白金粉末および約5重量%のアルミナ粉末その他残りエチルセルロース、テルピネオール、ジブチルフタレート、界面活性剤等からなるサーメットペーストを用い、第4図(c)に示すパターンでスクリーン印刷することによって、第4図(d)に示すように、前記第4図(b)に示す一方の基盤素材11上に四本の直線部16を形成し、その後100℃、1時間で乾燥した。乾燥後の直線部16の膜厚は約9μm、膜幅は約0.3mmである。このようにして、四本の直線部16と三個所の屈曲部17と二個所の端子部18とからなる屈折状のヒータ層12を未焼成状態で形成した」(第3頁第9〜20行)点。 ケ)「一方、第4図(f)に示すように、前記と同じ厚さ0.7mmのアルミナグリーンシートから切り出した所定寸法(9×5mm)の他方の基板素材14を準備し」(第3頁右下欄第5〜8行)た点。 コ)「その後、上記他方の基板素材14を前記第4図(e)に示す一方の基盤素材11上に積層し、110℃×3分×4Kg/cm2の条件で加熱圧着をおこなって第4図(g)ならびに第5図に示すようなヒータ内蔵型基盤15を作製する。次に、このようにして得られた未焼成基盤15を1500℃×3時間の条件で焼成をおこなって焼結させ、構造基体としての強度を保持させた」(第3頁右下欄第13〜20行)点。 3.対比・判断 訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、この項において「前者」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、この項において「後者」という。)を対比すると、後者の「アルミナスリップ」、「アルミナ未焼成シート」、「アルミナ粉末」、「白金粉末」が、前者の「セラミック粉末」、「セラミック基体」、「セラミック材料の粉末」、「導電性材料の粉末」にそれぞれ相当し、後者の第1図及び「未焼成基板1上に所定形状でヒータ2を塗布し」たことが、前者の「第1のセラミック基体の表面に折曲した線状のパターンをもって部分的に形成する」ことに相当するものと認められるから、両者は、「耐熱電気絶縁性のセラミック粉末を材料として構成された板状の第1のセラミック基体と、セラミック材料の粉末及び導電性材料の粉末を混合した材料を、前記第1のセラミック基体の表面に折曲した線状のパターンをもって部分的に形成してなる導電性発熱層と、前記導電性発熱層の前記パターンを全て覆うように、前記第1のセラミック基体上に積層され、該第1のセラミック基体を構成するセラミック材料と同じセラミック材料によって構成された板状の第2のセラミック基体とを具備し、前記第1のセラミック基体、前記導電性発熱層、及び前記第2のセラミック基体を焼結により一体化して構成されることを特徴とする酸素濃度検出装置用板状セラミックヒータ」の点で一致しており、以下の点で相違している。 (相違点1) 導電性発熱層の材料として、前者は、「少なくとも第1のセラミック基体を構成するセラミック材料と同じセラミック材料の粉末及び導電性材料の粉末を混合した材料」としているのに対し、後者は、「少なくとも第1のセラミック基体を構成するアルミナとそれと文言上同じでないαアルミナ粉末及び導電性材料の粉末を混合した材料」としている点。 (相違点2) 前者は、第1のセラミック基体は、導電性発熱層が形成されていない部分を介して第2のセラミック基体に接触しているのに対し、後者は、相当する構成が明らかでない点。 (相違点3) 前者が、第1のセラミック基体、導電性発熱層、及び第2のセラミック基体のみを焼結により一体化して構成されることによって、板状の前記第1のセラミック基体と、板状の前記第2のセラミック基体との間には、実質的に前記導電性発熱層のみが介在されているのに対し、後者は、その構成が明瞭ではない点。 前記相違点について検討すると、まず上記相違点1において、「板状の第1のセラミック基体と、少なくとも前記第1のセラミック基体を構成するセラミック材料と同じセラミック材料の粉末及び導電性材料の粉末を混合した材料を導電性発熱層」とした点は、上記刊行物2に記載されており、後者の「少なくとも第1のセラミック基体を構成するアルミナとそれと文言上同じでないαアルミナ粉末及び導電性材料の粉末を混合した材料」としたものに代えて上記刊行物2に記載された「少なくとも第1のセラミック基体を構成するセラミック材料と同じセラミック材料の粉末及び導電性材料の粉末を混合した材料」とし前者のようにすることは、前者と後者が同一技術分野に係る発明であることを考慮すると、当業者が容易に想到できたものと認められる。 次に、上記相違点2について検討すると、刊行物1には、「前記第1図(b)に示す他方の基板素材4を加圧力3Kg/cm2で加圧積層する。」点、及び「その後1480℃×1時間の条件で焼成した。」点が記載され(刊行物2にも同趣旨の記載がある。)、第1、2セラミック基体は、未焼成の時に加圧積層し、その後焼成することから、後者も、「第1のセラミック基体は、導電性発熱層が形成されていない部分を介して第2のセラミック基体に接触している」ものと認められ、この点に相違は実質上認められない。 上記相違点3について検討すると、刊行物1には、従来技術として、「基板5を焼成したのちその表面に所望の酸素その他のガス濃度検知部を設けたりするようにしていた。」と記載されているところから、これらの構成は従来周知技術と認められ、前者の「第1のセラミック基体、導電性発熱層、及び第2のセラミック基体のみを焼結により一体化して構成されることによって、板状の前記第1のセラミック基体と、板状の前記第2のセラミック基体との間には、実質的に前記導電性発熱層のみが介在されている」構成とする点は、後者及び出願前の周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものと認められる。 なお、後者と上記出願前の周知技術とは、一応別異の発明に関するものではあるが、同一文献に記載されている同一技術分野に係る発明であって、それらを組み合わせることが困難であるとする理由は見い出せない。 そして、前者によってもたらされる作用効果は、明細書を参酌しても、刊行物1、2及び周知技術をあわせたもの以上の格別のものは見当たらない。 4.むすび したがって、訂正明細書の請求項1に係る発明は、刊行物1、2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 〔3〕特許異議申立てについての判断 1.請求項1に係る発明 請求項1に係る発明は、願書に添付した明細書の特許請求に範囲の請求項1に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。 「(1)耐熱電気絶縁性のセラミック粉末を材料として構成された板状の第1のセラミック基体と、少なくとも前記第1のセラミック基体を構成するセラミック材料と同じセラミック材料の粉末及び前記導電性材料の粉末を混合した材料を、前記第1のセラミック基体の表面に折曲した線状のパターンをもって部分的に形成してなる導電性発熱層と、前記導電性発熱層の前記パターンを全て覆うように、前記第1のセラミック基体上に積層され、該第1のセラミック基体を構成するセラミック材料と同じセラミック材料によって構成された板状の第2のセラミック基体とを具備し、前記第1のセラミック基体は、前記導電性発熱層が形成されていない部分を介して前記第2のセラミック基体に接触しており、前記第1のセラミック基体、前記導電性発熱層、及び前記第2のセラミック基体が、焼結により一体化して構成されることによって、板状の前記第1のセラミック基体と、板状の前記第2のセラミック基体との間には、実質的に前記導電性発熱層のみが介在されていることを特徴とする板状セラミックヒータ。」 2.引用刊行物 当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開昭58-198754号公報、上記〔2〕2.刊行物1と同じ。)には、上記〔2〕2.ア)〜カ)のとおりの事項が記載されている。 同じく刊行物2(特開昭56-94258号公報、上記〔2〕2.刊行物2と同じ。)には、上記〔2〕2.キ)〜コ)のとおりの事項が記載されている。 3.対比・判断 請求項1に係る発明(以下、この項において「前者」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、この項において「後者」という。)を対比すると、後者の「アルミナスリップ」、「アルミナ未焼成シート」、「アルミナ粉末」、「白金粉末」が、前者の「セラミック粉末」、「セラミック基体」、「セラミック材料の粉末」、「導電性材料の粉末」にそれぞれ相当し、後者の第1図及び「未焼成基板1上に所定形状でヒータ2を塗布し」たことが、前者の「第1のセラミック基体の表面に折曲した線状のパターンをもって部分的に形成する」ことに相当するものと認められるから、両者は、「耐熱電気絶縁性のセラミック粉末を材料として構成された板状の第1のセラミック基体と、セラミック材料の粉末及び導電性材料の粉末を混合した材料を、前記第1のセラミック基体の表面に折曲した線状のパターンをもって部分的に形成してなる導電性発熱層と、前記導電性発熱層の前記パターンを全て覆うように、前記第1のセラミック基体上に積層され、該第1のセラミック基体を構成するセラミック材料と同じセラミック材料によって構成された板状の第2のセラミック基体とを具備し、前記第1のセラミック基体、前記導電性発熱層、及び前記第2のセラミック基体が、焼結により一体化して構成される」点において一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 導電性発熱層の材料として、前者は、「少なくとも第1のセラミック基体を構成するセラミック材料と同じセラミック材料の粉末及び導電性材料の粉末を混合した材料」としているのに対し、後者は、「少なくとも第1のセラミック基体を構成するアルミナとそれと文言上同じでないαアルミナ粉末及び導電性材料の粉末を混合した材料」としている点。 (相違点2) 前者は、第1のセラミック基体は、導電性発熱層が形成されていない部分を介して第2のセラミック基体に接触しているのに対し、後者は、相当する構成が明らかでない点。 (相違点3) 前者が、板状の前記第1のセラミック基体と、板状の前記第2のセラミック基体との間には、実質的に前記導電性発熱層のみが介在されていることを特徴とする板状セラミックヒータであるのに対し、後者は、その構成を明瞭ではない点。 上記相違点について検討すると、上記相違点1については、上記〔2〕3.で検討した同じ理由により、当業者が容易に想到できたものであり、上記相違点2については、上記〔2〕3.で検討した同じ理由により、この点に相違は実質上認められない。。 上記相違点3について、刊行物1には、従来技術として、「基板5を焼成したのちその表面に所望の酸素その他のガス濃度検知部を設けたりするようにしていた。」と記載されているところから、これらの構成は従来周知技術と認められ、前者の「板状の前記第1のセラミック基体と、板状の前記第2のセラミック基体との間には、実質的に前記導電性発熱層のみが介在されていることを特徴とする板状セラミックヒータである」構成とする点は、後者及び従来周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものと認められる。 なお、後者と上記出願前の周知技術とは、一応別異の発明に関するものではあるが、同一文献に記載されている同一技術分野に係る発明であって、それらを組み合わせることが困難であるとする理由は見い出せない。 そして、前者によってもたらされる作用効果は、明細書を参酌しても、刊行物1、2及び周知技術ををあわせたもの以上の格別のものは見当たらない。 4.むすび 以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、上記刊行物1、2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項1に係る発明についての特許は、特許法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-06-24 |
出願番号 | 特願平8-101080 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(H05B)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 川向 和実、平上 悦司 |
特許庁審判長 |
佐藤 洋 |
特許庁審判官 |
熊倉 強 和泉 等 藤原 稲治郎 藤本 信男 |
登録日 | 1997-06-20 |
登録番号 | 特許第2663935号(P2663935) |
権利者 | 株式会社デンソー |
発明の名称 | 板状セラミックヒータ及びその製造方法 |
代理人 | 五十嵐 孝雄 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |
代理人 | 下出 隆史 |