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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない H04M
審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない H04M
審判 全部無効 1項1号公知 無効としない H04M
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない H04M
管理番号 1033802
審判番号 無効2000-35261  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-05-15 
確定日 2001-02-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第2801969号発明「電話番号リストのクリーニング装置およびクリーニング方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2801969号(請求項の数5)は、平成8年6月25日(優先権主張、平成7年6月26日、日本国)に出願された特願平9-504306号の特許出願について、平成10年7月10日に特許権の設定登録がなされたが、これに対して、平成12年5月15日に株式会社ステップワンより請求項1乃至5に関して特許無効の審判が請求されたものである。
2.本件特許発明
本件特許発明は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。
「【請求項1】パソコンのようなコンピュータを用いて構成され、以下の各要件(1)〜(5)を備えたことを特徴とする電話番号リストのクリーニング装置。
(1)ISDNに接続されてITUーT勧告Q.931に規定された回線交換呼の制御手順を発信端末として処理する。
(2)クリーニング処理しようとする電話番号リストから順番に電話番号を読み取り、その電話番号を着番号とし、伝達能力として非制限ディジタル情報を指定した「呼設定」メッセージを網に送出する。
(3)送出した「呼設定」メッセージの呼が受け付けられて網から「呼出」メッセージまたは「応答」メッセージが転送されてきた場合に、直ちに網に「切断」メッセージを送出して切断復旧シーケンスを実行するとともに、当該「呼設定」メッセージの前記電話番号を有効番号と判定する。
(4)送出した「呼設定」メッセージの呼が受け付けられずに網から「切断」メッセージが転送されてきた場合に、直ちに切断復旧シーケンスを実行するとともに、網からの「切断」メッセージに付帯した情報要素の理由表示をピックアップし、その理由表示の内容に応じて当該「呼設定」メッセージの前記電話番号を有効番号として扱うかを判定する。
(5)有効番号と判定した電話番号と無効番号と判定した電話番号とを区別した新たなリストを作成する。
【請求項2】請求項1において、網から転送されてきた前記理由表示の内容が「相手加入者番号変更」であった場合に、その理由表示に付帯した診断情報フィールドに記入されている新しい電話番号をピックアップし、当該「呼設定」メッセージの前記電話番号をピックアップした新しい電話番号に置換した新たなリストを作成することを特徴とする電話番号リストのクリーニング装置。
【請求項3】請求項1または2において、前記理由表示の内容によっては前記電話番号の有効・無効の判断を保留して、その電話番号を保留番号リストに記入することを特徴とする電話番号リストのクリーニング装置。
【請求項4】請求項1、2、3のいずれかにおいて、前記「呼設定」メッセージの前記伝達能力として前記制限ディジタル情報を指定することを特徴とする電話番号リストのクリーニング装置。
【請求項5】請求項1〜4に記載のクリーニング装置を用いて前記電話番号リストをクリーニングして更新することを特徴とする電話番号リストのクリーニング方法。」(以下、「本件特許発明」という)
3.無効審判請求人(以下、「請求人」という)の提出証拠
請求人が提出証拠は、次のとおりである。
イ.甲第1号証:平成11年異議第71001号異議決定書(第29頁第10行〜第14行)
ロ.甲第2号証:平成7年8月17日付け日本経済新聞第5面の囲み記事(景気万華鏡「ケチケチ」ビジネス)
ハ.甲第3号証(平成6年(1994)11月8日付け日経産業新聞、第1面囲み記事「ニューサービス」)
ニ.甲第4号証の1:株式会社ステップワン作成の「スーパーリサーチ」のフローチャート)
甲第4号証の2:甲第4号証の1のフローチャートに示された動作の説明書
ホ.甲第5号証の1:日本電気株式会社発行APEX7400IMSプレディクティブダイアリングシステムマニュアルND‐46030(J)1.0版1995年10月
甲第5号証の2:日本電気株式会社発行APEX7400IMSプレディクティブダイアリングシステムマニュアルND‐46030(J)2.0版1996年6月
ヘ.甲第6号証:平成12年1月19日付け株式会社ジンテック代表内海勝統氏から株式会社ステップワン代表取締役石倉孝志氏に宛てた書簡
ト.甲第7号証:日本電気株式会社作成日本移動通信株式会社向け基本設計書第2.4版
チ.証人:沖本能道
住所:千葉県柏市豊四季700-9アドリーム南柏 105
4.当事者の主張の概要
(1)請求人の主張
a)甲第1号証の内容、および本件特許との関係
甲第1号証(平成11年異議第71001号異議決定書)には、その第29頁第10行ないし第14行に「したがって、本件請求項1〜5に係る発明は、前記先の出願に最初に添付した明細書または図面に記載された発明ではないので、特許法第29条の適用における本件特許の出願日は、国際出願日である平成8年6月25日とするのが相当である。」と記載され、優先日(平成7年6月26日)を基準とすべきではなく、ほぼ1年繰り下がった平成8年(1996)6月25日とすべきことが認定されている。
したがって、本件特許に関して特許庁における有効な出願日は、現実の出願日である平成8年(1996)6月25日である。
b)甲第2号証の内容、および本件特許発明との対比
甲第2号証(平成7年8月17日付け日本経済新聞第5面の囲み記事、景気万華鏡「ケチケチ」ビジネス)には、第3段に「大手通信販売会社の千趣会は、テレマーケティング会社のジンテック(東京・千代田)に顧客リストの洗い出しを委託して「送料の約六%、年間約千五百万円を節約できた」(マーケティング部)。ジンテックが使ったのは、独自に開発したシステム。電話をかけて呼び出し音が鳴る直前に流れるかすかな周波数をもとに、番号が現在も使われているかどうかを瞬時に判断する。購買実績の殆どない人が転居したかどうかを事前にチェックし、無駄にカタログを送らずにすむ。」と記載されている。
この記事の内容は、本件特許の権利者が本願の有効出願日前に、本件特許に係る発明の内容を外部に提供していたことを示している。すなわち、本件特許に係る発明は、出願前に公知となっていたものである蓋然性が高い。
一方、本件特許に係る発明は、出願前に公知の甲第2号証の記事に記載された内容を基に当業者が容易に推考しえた程度の内容のものである。
すなわち、ジンテックが使った「・・・電話をかけて呼び出し音が鳴る直前に流れるかすかな周波数をもとに、番号が現在も使われているかどうかを瞬時に判断する。」という手法は、アナログ方式の電話システムにおいて、呼び出しベルを鳴らすことなく有効電話番号であることが分かることに基づいている。そして、呼び出し音が鳴る直前にかすかな周波数が流れることを知りさえすれば、当業者は、これを利用して以後の動作を行うことは容易に想到することができる。つまり、かすかな周波数が流れたら、直ちに網に切断メッセージを送出して切断復旧シーケンスを実行するとともに、当該番号を有効判定する。次いで有効番号と無効番号とを区別した新たなリストを作成する。
甲第2号証は、このかすかな周波数が流れることを明示しており、このことに基づいて電話に関する基礎知識を有する当業者が本件特許に係る発明を推考することは容易であった筈である。
したがって、本件特許発明は特許法第29条第2項の規定に該当するものである。
c)甲第3号証の内容、および本件特許発明との対比
甲第3号証(平成6年(1994)11月8日付け日経産業新聞、第1面囲み記事「ニューサービス」)に、マーケティング会社のジェー・ティー・シー(JTC内海勝統社長)が、顧客の電話番号変更状況を自動確認してDBの更新を行うサービスを始めたことが掲載されている。
この記事の第3段ないし第5段には「JTCは顧客の電話番号に自動的に発信し、電話の移転や廃止の信号を自動検知するシステム「TACS(タックス)」を開発した。同システムは自社開発のソフトとチップを組み込んだボードをIBM製のミニコンピュータに搭載、相手先の電話の呼び出しベルを鳴らすことなく、顧客リストの電話番号を「変更なし」、「廃止」、「移転」の三種類に区別する。一時間に約8000件の電話番号を確認する処理能力がある。」と記載されている。
この記載内容は、甲第2号証と同様に、電話に関する基礎知識を有する当業者に対して本件特許に係る発明を推考させるのに十分なものである。
ことに、本件特許の出願日てある平成7年6月頃は、NTTがディジタル電話網であるINS仕様を公表した直後であり、業界各社ではINS仕様に対応するシステム開発が行われていた。
本件特許の明細書に記載されているように、INS網からは切断メッセージの理由表示が得られる。そこで、この理由表示を利用して対象とする電話番号の有効/無効判定およびリスト作成を行うことは、当業者にとって容易に推考できることである。
したがって、本件特許発明は特許法第29条第2項の規定に該当する。
d)甲第4号証の1および甲第4号証の2の内容、および本件特許発明との対比
甲第4号証の1(株式会社ステップワン作成「スーパーリサーチ」フローチャート)および甲第4号証の2(甲第4号証の1(フローチャート)に示された動作の説明書)には、請求人である株式会社ステップワンが製造、販売する「スーパーリサーチ」の動作内容の説明が示されている。
甲第4号証の2には、図1のステップS11にファイルから電話番号リストを読み込む動作が記載されており、ステップ21では「呼設定」メッセージ」送出が行われ、ステップS24では「呼出」受信が行われ、ステップS25では「切断」メッセージ送出が行われ、ステップS28では切断復旧シーケンスが行われ、ステップS31ないしS34では戻り値、理由表示、移転先番号をリストに記入する動作を行う。
この一連の動作は、本件特許の特許請求の範囲、請求項1における「(2)ないし(5)」の各動作内容と符合するものである。
また、甲第4号証の2におけるステップS33における移転先番号をリストに記入する点は、本件特許の請求項2における、理由表示が「相手加入者番号変更」であった場合に、その理由表示に付帯した診断情報フィールドに記入されている新しい電話番号をピックアップし、当該「呼設定」メッセージの前記電話番号をピックアップした新しい電話番号に置換した新たなリストを作成することに該当する。
そして、本件特許発明の請求項3に記載された、有効・無効の判断を保留して、その電話番号を保留番号リストに記入すること、および請求項4に記載された、呼設定メッセージの伝達能力として制限ディジタル情報を指定することは、NTTの指定要素の利用法であり、これら自体が特許性を有するものではない。
さらに、本件特許発明の請求項5に記載された、請求項1〜4に記載のクリーニング装置を用いて電話番号をクリーニングして更新することは、装置の利用法であって元来特許性を有しないものである。
したがって、本件特許発明は特許法第29条第1項もしくは第2項の規定に該当するものである。
e)甲第5号証の1および甲第5号証の2の内容、および本件特許発明との対比
甲第5号証の1(日本電気株式会社発行APEX7400IMSプレディクティブダイアリングシステムマニュアルND‐46030(J)1.0版1995年10月)は、被呼者番号確認機能の公知性を立証するものである。
すなわち、甲第5号証の1、第5-7頁には3つの表が示され、そのうち最下部の表は(被呼者番号確認のパターン)を表している。
そして、甲第5号証の2(日本電気株式会社発行APEX74001MSプレディクティブダイアリングシステムマニュアルND‐46030(J)2.0版1996年6月)は、甲第5号証の1と同一型番(APEX7400IMS)のシステムについてのマニュアルであり、その第1-5頁には、被呼者番号確認機能についての説明がある(第5ー7頁には、第5号証の1と同一の3つの表が示されている。)。とくに、「1.3被呼者番号確認機能」なる題に続く説明文ては、「アプリケーションから被呼者番号確認指定によるプレディクティブダイアリング発信要求されると、INSネット回線より指定された被呼者番号に発信し、被呼者の状態(話中、不応答、番号違い、移転)をアプリケーションに通知すると共に、発信を自動的に途中放棄します。」とある。ここで、途中放棄とは切断を意味するものであり、原因である被呼者の状態とその結果である途中放棄との動作関係は、本件特許発明と同一内容を示すものである。
ただし、甲第5号証の2は、発行日が本件特許発明の有効出願日近くであるものの前であるか否かが不明であるが、本件特許の出願日よりも前に発行されている甲第5号証の1に既に被呼者番号確認の記載があり、その意味内容の解説を甲第5号証の2に求めることができる。これにより、本件特許発明の内容は有効出願日前に既に公知であったということができる。
したがって、本件特許発明は特許法第29条第1項もしくは第2項の規定に該当する。
f)甲第6号証の内容、および本件特許発明との対比
甲第6号証(平成12年1月19日付け株式会社ジンテック代表内海勝統氏から株式会社ステップワン代表取締役石倉孝志氏に宛てた書簡)は、本件特許発明の発明者である内海勝統氏による書簡てあり、内海氏は当該書簡中でスーパーリサーチが本件特許を侵害、つまりスーパーリサーチは本件特許発明と同一技術内容であることを述べている。
したがって、スーパーリサーチが本件特許の有効出願日前に公知であれば、本件特許は公知発明を内容として成立していることになる。そして、スーパーリサーチの公知性については、甲第7号証および証人甲に関して後述する。
なお、上記内海氏書簡の文中にある「弊社商品TACS(タックス)」は、甲第3号証における記事中に記載されているシステム「TACS(タックス)」と符合し、また関与する人物が同じ内海勝統氏であり、本件特許の出願前に販売されていたことを推定させる面もある。
g)甲第7号証の内容、および本件特許発明との対比
甲第7号証(日本電気株式会社作成日本移動通信株式会社向け基本設計書第2.4版)は、本件特許の有効出願日前てある平成7年6月30日に、日本電気株式会社が日本移動通信株式会社に納入したIMACSS(IDOMultimediaAssistedCustomerServiceSystem)の技術内容を示したものである。すなわち、その11-2頁には、11.2コール制御機能と題し、電話番号更新機能についての説明がされており、下から3行以降には「郵便戻り業務においては、オペレータを介させず、PBX/コール制御機能を用いて、移転先電話番号調査の業務を行い、検出した移転先電話番号をI‐MACSS用データベースに更新する。」との記載があり、また11-88頁の図表中に「移転先調査機能」が記載されている。そして、11-90頁には、下から4行以降に「4移転先調査機能」として、「・郵便戻りのあった相手先に対して、プレディクティブコールを行い、INSより移転先の電話番号を取得する。この場合、相手先に架電し即座に切断するため、オペレーターを必要としない。」なる記述があり、本件特許発明の内容と同様であることが分かる。
甲第7号証は、証人甲による立証内容と相まって本件特許発明が特許法第29条第1項または第2項に該当することを立証するものである。
h)証人による立証内容、および本件特許発明との対比
証人甲(沖本能道千葉県柏市豊四季700-9アドリーム南柏105)は、甲第7号証に示したIMACSSの開発、設計に中心的に関わった者てある。したがって、IMACSSが本件特許の有効出願日前に完成し、日本移動通信株式会社に納入されたことを立証することがてきる。また、日本電気株式会社製のIMACSSは、株式会社ステップワン製のスーパーリサーチと同一内容のものてあることを立証することができる。
したがって、本件特許発明は特許法第29条第1項または第2項の規定に該当するものである。
また、甲第6号証は、甲第7号証および証人甲による立証事実と相まって本特許発明が特許法第29条第1項または第2項の規定に該当することを裏付けるもである。
(2)被請求人の主張
本件特許発明の優先権主張の基礎となる先の出願(特願平7-158958号)の願書に最初に添付した明細書および図面(乙第1号証)には、つぎの各事項が記載されている。
まず、先の出願の明細書における段落番号0015〜0016には、発明の効果として、つぎの2点が明記されている。
(1a)・・・「この発明によれば、クリーニングしようとする電話番号リストに基づいて何らかの実業務(顧客とのなんらかのやりとり)を行わずに、無効になっている電話番号を自動的に能率良く削除することができる。」
(2a)・・・・「とくにこの発明の大きな利点は、一番多いであろう有効な電話番号の電話機の呼出ベルを鳴らさずに、その番号を有効と判定できることである。つまり、調査の相手から見た場合、用も無いのに電話がかかってくるという煩わしい思いをさせずに済むのである。」
一方、本件特許公報の第14欄第11行以降には、発明の効果として、つぎの2点が明記されている。
(1b)・・・・「この発明によれば、クリーニングしようとする電話番号リストに基づいてなんらかの実業務(顧客とのなんらかのやりとり)を行わずに、無効になっている電話番号を自動的に能率良く削除することができるし、」
(2b)・・・・「とくに、この発明の大きな利点は、数量的に一番多いてあろうアナログ電話網の有効な電話機について、その呼出ベルをまったく鳴らすことなしに、その有効性を調査確認できる。したがって、調査される相手から見た場合、無用な電話に無理に応答させられる煩わしさがまったくない。」
このように先の出願および国際出願において、本件発明の効果に関する両明細書の記載事項(1a)(2a)と(1b)(2b)はほぼ完全に一致している。
そして、この効果をもたらす本件特許発明の技術的手段についても、先の出願の明細書につきのように表現されて明示されている。
先の出願の明細書の段落番号0010には、
(3a)・・・この発明の一施例によるシステム構成を図1に示している。」ここてでISDNデータ端末として一般的なパソコン1を使う。パソコン1は、CPU2・・メモリ3・ハードディスク装置4・フロッピーディスク装置5・ディスプレイ装置6・キーボード7・入出力ポート8などを備える。このパソコン1をターミナル・アダプタ(TA)9および回線接続装置(DSU)10を介してISDNに接続している。ISDNと電話網は相互に接続可能である。」と記載されている。
また先の出願の明細書において、ISDN通信プロトコルの機能に関して、段落番号0008には、
(4a)・・・・「この呼設定メッセージを受け取ったISDN中継網は、指定された電話番号に従って回線を接続すべく電話中継網に働きかけ、相手が通常の電話機であって前記の通信仕様に適合するデータ端末でなかった場合は、その電話機に対する呼び出しをせずに、発信端末(ISDNデータ端末)に対して回線を接続できないことを知らせるメッセージを返し、網切断理由として「相手へのルートなし」を通知する。また、指定された電話番号が使用されていなかった場合(電話番号の変更登録がされている場合も含む)、発信端末(ISDNデータ端末)に対して回線を接続できないことを知らせるメッセージを返し、網切断理由として「欠番」または「番号変更」を通知する。」と記載されている。
また先の出願の明細書において、ISDN通信プロトコルを利用して電話番号リストをクリーニングする手段に関して、段落番号0006には、
(5a)・・・・「その呼設定メッセージに対してISDN中継網から相手が前記通信仕様に適合しないので回線が接続てきなかった旨を知らせてきた場合には、その電話番号が有効であると判断してリストを更新し、前記呼設定メッセージに対してISDN中継網から前記電話番号が使われていない旨を知らせてきた場合にはその電話番号が無効であると判断してリストを更新するようにした。」と記載されている。
同じく先の出願の明細書の段落番号0013には、
(6a)・・・・「なお、呼び出した相手が前記通信仕様に適合する電話網用のモデムおよびNCUを備えたデータ端末であった場合で、その相手が通信中でなければ、相手への呼び出し動作が開始され、発信端末は呼出メッセージを受け取る。このとき発信端末は直ちにISDN中継網に回線を切断する旨のメッセージを出し、その電話番号を有効と判断して有効リストに記入する(ステップ104ー109ー106)。その相手が通信中てあった場合も同じで、回線を切断して、その電話番号を有効と判断して有効リストに記入する(ステップ104ー109ー106)。」と記載されている。
いうまでもなく、ISDN通信プロトコルはITUーT勧告Q.931に詳細に規定された回線交換呼の制御手順に従って進行するのてあり、先の出願の明細書では「ITUーT勧告Q.931」という用語こそ用いられていないものの、先の出願に係る発明がISDNにパソコンなどのデータ端末を接続するものである以上、ITUーT勧告Q.931に準拠した通信プロトコルを利用して電話番号リストのクリーニングを行うものであることは当業者にとって明白なことであり、なんらの疑念を生じる余地もない事柄である。
また、先の出願の明細書における「接続先アドレス情報」という表現は請求項1における「着番号」という表現と同義であり、同様に、先の出願の明細書における「データ端末と通信する旨などの通信仕様を盛りこんだ呼設定メッセージ」という構成が請求項1における「伝達能力として非制限ディジタル情報を指定した呼設定メッセージ」という構成と技術的に同じである。日本電信電話株式会社発行のISNネットサービス技術参考資料(ITUーT勧告Q.931についても詳しく解説されている)などの技術文献では後者の用語が使用されていることが多いので、国際出願ではこの用語を使用したものである。
また、先の出願の明細書においては「切断メッセージ」「情報要素」「理由表示」というINS技術文献で一般的な用語を使用せずに、本件特許公報の記載と同じ内容について、「相手が前記通信仕様に適合しないので回線が接続できなかった旨を知らせてきた場合」とか「電話番号が使われていない旨を知らせてきた場合」と表現しているが、その技術的実体が同じものであることは、当業者であれば一目瞭然である。
以上詳細に説明したように、本件特許発明(請求項1)に係る電話番号リストのクリーニング装置が採用しているクリーニングのアルゴリズムは、それを説明するために使用した用語の選択の違いによる表現上の差違はあるものの、先の出願の願書に最初に添付した明細書および図面に記載された発明と実質的に同一であることは明白である。したがって、特許法第29条の適用における本件特許の出願日は、特許公報に記載されているとおり、優先日(平成7年6月26日)とすべきてある。
請求人の主張(b)に対する反論2
前述したように、特許法第29条の適用における本件特許の出願日は、特許公報に記載されているとおり、優先日(平成7年6月26日)とすべきである。したがって、優先日より後に発行された甲第2号証は証拠たり得ないものである。
しかし念のため、「本件特許の出願日は国際出願日とするのが相当てある」と認定された万一の場合を想定し、本件特許発明と甲第2号証とを対比して反論する。
甲第2号証には「電話をかけて呼び出し音が鳴る直前に流れるかすかな周波数をもとに、番号が現在も使われているかどうかを瞬時に判断する。」と記載されている。このことは、甲第2号証のシステムが本件特許発明の装置と異なる動作原理を採用していることを端的に示している。
本件特許発明の装置では、請求項1に記載されているように、「クリーニング処理しようとする電話番号リストから順番に電話番号を読み取り、その電話番号を着番号とし、伝達能力として非制限ディジタル情報を指定した呼設定メッセージを網に送出する。」のであり、更に「送出した呼設定メッセージの呼が受け付けられずに網から切断メッセージが転送されてきた場合に、直ちに切断復旧シーケンスを実行するとともに、網からの切断メッセージに付帯した情報要素の理由表示をピックアップし、その理由表示の内容に応じて当該呼設定メッセージの前記電話番号を有効番号として扱うか無効番号として扱うかを判定する。」という、甲第2号証のシステムの動作原理とはまったく異なるアルゴリズムを採用している。これらの本件発明の構成要件について甲第2号証には全く記載されていない。
そして、本件請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載のない前記構成を有することにより、アナログ電話網の有効な電話番号の電話機について、その呼出ベルをまったく鳴らすことなしに、その有効性を調査確認できるという作用効果を奏するものである。したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
請求人の主張(c)に対する反論3
甲第3号証の新聞記事は、甲第2号証と同様に、本件特許の発明者である内海勝統が開発し実用化していた乙第2号証の発明の実施システムの紹介記事である。
甲第3号証には「同システムは自社開発のソフトとチップを組み込んだボードをIBM製のミニコンピュータに搭載、相手先の電話の呼び出しベルを鳴らすことなく、顧客リストの電話番号を変更なし・廃止・移転の三種類に区別する。」と記載されているが、その機能がどのような技術的手段によって実現されているものなのかを推測させるような記載は皆無である。したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
請求人の主張(d)に対する反論4
甲第5号証の1は優先日より後に発行されたものであり、また甲第5号証の2は本件国際出願日前に発行されたものであることさえも明らかではない。この点でこれら甲第5号証は証拠たり得ないものである。しかし念のため、「本件特許の出願日は国際出願日とするのが相当である」と認定された万一の場合を想定し、本件特許発明と甲第5号証とを対比して反論する。
甲第5号証に解説されている「プレディクティブダイヤリング」とは、コンピュータに登録されている電話番号リストに従って自動的に次々と電話をかけ、呼び出された相手(顧客)が応答したならば、空いているオペレータに電話をつなぐとともに、そのオペレータが使用している端末のディスプレイに前記顧客の情報を表示することで、オペレータが顧客に応対する業務をスムーズに進めるために開発されたCTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)システムである。このシステムにより、オペレータはダイヤル操作や相手応答待ちから解放される。
したがって甲第5号証のシステムでは、相手と通話するために電話をかけるのである。このシステムは、相手と通話するために、伝達能力として「音声」または「3.1KHzオーディオ」を指定した呼設定メッセージを網に送出する。そうすると相手の電話機の呼出ベルが鳴り、相手が受話器をとると、システムは空いているオペレータに電話をつなぐ。これがこのシステムの基本機能である。
甲第5号証の2においては、前記の基本機能に加えて「被呼者番号確認機能」を備えているとして、(1-5)ページにつきのように記載されている。
アプリケーションから、被呼者番号確認指定によるプレディクティブダイヤリング発信要求されると、ISNネット回線より指定された被呼者番号に発信し、被呼者の状態(話中、不応答、番号違い、移転)をアプリケーションに通知すると共に、発信を自動的に途中放棄します。
アプリケーションは通知された被呼者の状態により被呼者番号のデータベースを更新することがてきます。
被呼者番号が有効で呼び出し可能な場合は、被呼者を呼び出し途中放棄することになります。被呼者の呼び出しを最小に留めていますが、呼出音を完全に鳴らさない保障はできません。
しかしながら、この記載から本件特許発明の構成を読み取ることは凡そ不可能てある。 しかも、「被呼者の呼び出しを最少に留めていますが、呼出音を完全に鳴らさない保証はできません」と記載されているが、これは本件特許発明の効果と異なるものである。
したがって、特許法第29条の適用における本件特許の出願日が国際出願日とされ、なおかつ甲第5号証の2が本件国際出願日前に発行されたものであると仮定しても、本件請求項1に係る発明は甲第5号証の2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとは言えない。ましてや請求人目身が認めているように、甲第5号証の2が本件国際出願日の前に発行されたものであることさえ不明なのである。
つぎに甲第5号証の1について検討する。甲第5号証の2の(1-5)ページにおける「被呼者番号確認機能」の前記説明は甲第5号証の1には存在しない。
甲第5号証の2の目次における「第1章機能概要」の欄に「13被呼者番号確認機能」という項目が記載されているが、甲第5号証の1の目次にはこの項目は存在しない。
また、甲第5号証の2の(5-7)ページの第3行目には「被呼者応答後にISDNトランクを接続させるパターンにより以下の2種類となります。」と記載され、この後に、(受付台に接続させるパターン)、(アナウンスに接続させるパターン)、(被呼者番号確認パターン)とタイトル付けされた3つの表が記載されている。3つ目の表の(被呼者番号確認パターン)は「ISDNトランクを接続させるパターン」ではないのて、「以下の2種類となります。」と記載されているのであろう。
一方、甲第5号証の1の(5-7)ページの第3行目には、前記と同じ「被呼者応答後にISDNトランクを接続させるパターンにより以下の2種類となります。」と印刷されており、この文中の「2種類」の「2」の文字が手書きにより「3」と加筆訂正されている。そして、(受付台に接続させるパターン)の表と(アナウンスに接続させるパターン)の表は印刷されているが、(被呼者番号確認パターン)というタイトルと3つ目の表が手書きにより書き加えられている。
しかし、手書きで修正されていること自体、不自然であるばかりか、甲第5号証の2における「2種類」との記載が上述の理由によるものであるとすると、甲第5号証の1における印刷された「2種類」の記載も本来正しいものであって、これを「3種類」に訂正する理由はないことになる。このことと、(被呼者番号確認パターン)の箇所が手書きで加えられているということからすると、甲第5号証の1の手書き箇所は捏造されたものである疑いを禁じ得ない。そして、つじつまを合わせようとして「2種類」を「3種類」に訂正したことが推測される。
このように信憑性のない甲第5号証の1は、そもそも証拠たり得ないものである。なお、請求人は甲第5号証の1と2は同一型番が付されたシステムについてのマニュアルである旨を主張しているが、同一型番のシステムの仕様や機能が日進月歩に更新されることはごく普通のことである。
請求人の主張(e)に対する反論5
請求人は、甲第4号証がいつ作成され、いつ公知になったものであるかについて何も説明していない。甲第4号証の1の右肩に「2000/3/1」の数字が表示されていることから見て、これらは本件特許の出願日より遥かに後である平成12年3月1日に作成されたものであると言うほかない。したがって、技術的な比較をするまでもなく、同号証は本件特許の有効性に何らの影響も及ぼすものでないことは明らかである。
請求人の主張(f)に対する反論6
甲第6号証は、請求人と被請求人との間の本件特許を巡る交渉の中で作成された文書であって、本件特許発明の新規性進歩性には全く関係のない証拠である。
請求人の主張(g)に対する反論7
本件出願の優先日より後に発行された甲第7号証は証拠たり得ないものである。
しかし念のため、「本件特許の出願日は国際出願日とするのが相当である」と認定された万一の場合を想定し、本件特許発明と甲第7号証とを対比して反論する。
甲第7号証には、「郵便戻り業務においては、オペレータを介在させず、PBX/コール制御機能を用いて、移転先電話番号調査の業務を行い、検出した移転先電話番号をI‐MACSS用データベースに更新する。」と記載されているとともに「郵便戻りのあった相手先に対して、プレディクティブコールを行い、INSより移転先の電話番号を取得する。この場合、相手先に架電し即座に切断するため、オペレータを必要としない。」と記載されている。
本件請求項1に係る発明は、「クリーニングしようとする電話番号リストに基づいて顧客とのなんらかのやりとりを行わずに、無効になっている電話番号を自動的に能率良く削除することができ、かつ、数量的に一番多いであろうアナログ電話網の有効な電話機について、その呼出ベルをまったく鳴らすことなしに、その有効性を調査確認できる。」という顕著な作用効果を奏するものであるが、甲第7号証にはこの作用効果を生み出すような機能や構成に関連した記載は皆無である。したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることは到底できない。
請求人の主張(h)に対する反論8
前項で述べたように、甲第7号証には本件請求項1に係る発明を想起させるような記載は皆無であるので、甲第7号証のシステムが本件国際出願日の前に完成して納入されていたことを証人により立証することは無意味である。また、甲第7号証のシステムの機能が「スーパーリサーチ」に盛り込まれていることを証人により立証することも無意味である。
5.当審の判断
a)特許法第29条の適用における本件特許の出願日について、
本件特許の優先権主張の基礎とされた先の出願(特願平7-158958号)の願書に添付した明細書又は図面(以下、「先の発明」という)は、無効リストに記入される理由のうち「番号変更」を明記しているが、本件特許公報は、理由が「番号変更」の場合には、「新番号をピックアップして有効リストに記入」としており、また、先の発明は、回線切断の通知でないものは全て有効リストに記入する構成になっているが、本件特許公報は、切断メッセージ(回線切断の通知)中特定の理由表示をピックアップして有効リストに記入し、さらに、有効、無効いずれとも区別できない理由表示については保留というあらたな項目を設けている。
そうすると、先の発明と本件特許発明とでは有効リスト及び無効リストを作成する技術思想が異なるものであることが明らかであるから、これら2つの発明を同一のものとして本件特許出願の優先権主張を認めることはできない。
よって、本件特許の請求項1〜5に係る発明の特許法第29条の適用における出願日は国際出願日である平成8年6月25日とするのが相当である。
b)甲第2号証と本件特許発明との対比
甲第2号証には「電話をかけて呼び出し音が鳴る直前に流れるかすかな周波数をもとに、番号が現在も使われているかどうかを瞬時に判断する。」と記載されている。このことは、甲第2号証のシステムが本件特許発明の装置と異なる動作原理を採用していることが明らかである。
本件特許発明の装置では、請求項1に記載されているように、「クリーニング処理しようとする電話番号リストから順番に電話番号を読み取り、その電話番号を着番号とし、伝達能力として非制限ディジタル情報を指定した呼設定メッセージを網に送出する。」のであり、更に「送出した呼設定メッセージの呼が受け付けられずに網から切断メッセージが転送されてきた場合に、直ちに切断復旧シーケンスを実行するとともに、網からの切断メッセージに付帯した情報要素の理由表示をピックアップし、その理由表示の内容に応じて当該呼設定メッセージの前記電話番号を有効番号として扱うか無効番号として扱うかを判定する。」という、甲第2号証のシステムの動作原理とはまったく異なるアルゴリズムを採用している。これらの本件発明の構成要件について甲第2号証には全く記載されていない。
そして、本件請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載のない前記構成を有することにより、アナログ電話網の有効な電話番号の電話機について、その呼出ベルをまったく鳴らすことなしに、その有効性を調査確認できるという作用効果を奏するものである。したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、請求項2〜5に係る発明は、請求項1に係る発明を引用して記載した発明であるから、前記と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
c)甲第3号証と本件特許発明との対比
甲第3号証には「同システムは自社開発のソフトとチップを組み込んだボードをIBM製のミニコンピュータに搭載、相手先の電話の呼び出しベルを鳴らすことなく、顧客リストの電話番号を変更なし・廃止・移転の三種類に区別する。」と記載されているが、その機能がどのような技術的手段によって実現されているものなのかを推測させるような記載は皆無である。したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、請求項2〜5に係る発明は、請求項1に係る発明を引用して記載した発明であるから、前記と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。
d)甲第4号証の1および甲第4号証の2と本件特許発明との対比
請求人は、甲第4号証がいつ作成され、いつ公知になったものであるかについて何も説明していない。したがって、技術的な比較をするまでもなく、同号証は刊行物としては本件特許の有効性に何らの影響も及ぼすものでないことは明らかである。
なお、甲第4号証の1に記載された内容が本件特許出願日前(平成8年6月25日)に公知・公用であったか否かについては後述する。
e)甲第5号証の1および甲第5号証の2と本件特許発明との対比
甲第5号証の2においては、「被呼者番号確認機能」を備えているとして、(1-5)ページにつきのように記載されている。
アプリケーションから、被呼者番号確認指定によるプレディクティブダイヤリング発信要求されると、ISNネット回線より指定された被呼者番号に発信し、被呼者の状態(話中、不応答、番号違い、移転)をアプリケーションに通知すると共に、発信を自動的に途中放棄します。
アプリケーションは通知された被呼者の状態により被呼者番号のデータベースを更新することがてきます。
被呼者番号が有効で呼び出し可能な場合は、被呼者を呼び出し途中放棄することになります。被呼者の呼び出しを最小に留めていますが、呼出音を完全に鳴らさない保障はできません。
しかしながら、この記載は、「被呼者番号確認機能」を紹介したにすぎず、本件特許の請求項1に係る発明に関する具体的な構成を開示あるいは示唆する記載はない。しかも、「被呼者の呼び出しを最少に留めていますが、呼出音を完全に鳴らさない保証はできません」との記載は、本件特許発明の効果と異なるものである。
したがって、甲第5号証の2は本件国際出願日(平成8年6月25日)前に発行されたものであるかいなかは不明であるが、仮に、甲第5号証の2が本件国際出願日(平成8年6月25日)前に発行されたものであるとしても、本件請求項1に係る発明は甲第5号証の2に記載された発明であるとも、また、甲第5号証の2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
つぎに甲第5号証の1について検討する。
甲第5号証の2の(1-5)ページにおける「被呼者番号確認機能」の前記説明は甲第5号証の1には存在しないし、甲第5号証の2の目次における「第1章機能概要」の欄に「13被呼者番号確認機能」という項目が記載されているが、甲第5号証の1の目次にはこの項目は存在しない。
そうすると、甲第5号証の1に甲第5号証の2に記載と同一の事項が記載されていたとみることはできない。
したがって、本件請求項1に係る発明は甲第5号証の1に記載された発明であるとも、また、甲第5号証の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
また、請求項2〜5に係る発明は、請求項1に係る発明を引用して記載した発明であるから、前記と同様の理由により、甲第5号証の1、2に記載された発明であるとも、また、甲第5号証の1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
なお、被請求人は、甲第5号証の1の成立を不知としたが、当合議体は甲第5号証の1の原本の確認により甲第5号証の1の成立を認める。
f)甲第6号証と本件特許発明との対比
甲第6号証は、請求人と被請求人との間の本件特許を巡る交渉の中で作成された文書であって、本件特許発明の新規性進歩性には全く関係のない証拠である。
g)甲第7号証と本件特許発明との対比
甲第7号証には、「郵便戻り業務においては、オペレータを介在させず、PBX/コール制御機能を用いて、移転先電話番号調査の業務を行い、検出した移転先電話番号をI‐MACSS用データベースに更新する。」と記載されているとともに「郵便戻りのあった相手先に対して、プレディクティブコールを行い、INSより移転先の電話番号を取得する。この場合、相手先に架電し即座に切断するため、オペレータを必要としない。」と記載されている。
しかしながら、前記記載は、本件特許の請求項1に係る発明に関する具体的な構成を開示あるいは示唆する記載はないから、この記載をもって本件請求項1に係る発明が甲第7号証に記載された発明であるとも、また、甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
また、請求項2〜5に係る発明は、請求項1に係る発明を引用して記載した発明であるから、前記と同様の理由により、甲第7号証に記載された発明であるとも、また、甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
h)証人による立証内容、甲第4号証の1、2、甲第5号証の1、2および甲第7号証と本件特許発明との対比
証人沖本能道の証言内容によれば、
イ)1996年3月1日に甲第7号証に示したIMACSSの機能に電話番号クリーニング機能が追加された事実が認められる。
ロ)この追加された電話番号クリーニング機能は本件特許発明の請求項1に係る発明と同様の構成を備えたものであることが認められる。
ハ)電話番号クリーニング機能が追加されIMACSSは、日本移動通信に1996年6月16日に検収・納入されたことが認められる。
しかしながら、証人沖本能道の証言によっても電話番号クリーニング機能が追加されIMACSSがいつ公然と知られ得る状態、あるいは公然と実施された状態となったか判然としない。
したがって、本件特許の請求項1に係る発明が本件出願日(平成8年6月25日)前公然と知られ、あるいは公然と実施された発明であったとすることはできない。
また、証人は、特許公報の請求の範囲の請求項1に記載された構成要件(1)〜(5)が、1995年6月25日(優先権主張日)以前公知であったと証言し、かつ、APEX7400IMS(甲第5号証の1、2)が本件特許発明の機能を含んでいたと証言している。
しかしながら、証人は、特許公報の請求の範囲の請求項1に記載された構成要件(1)〜(5)が単に1995年6月25日(優先権主張日)以前公知であったと証言しているのみで、その公知性について何等事実に基づいた証言をしていない。したがって、その証言内容に信憑性がなく、証人の証言内容をもって直ちに特許公報の請求の範囲の請求項1に記載された構成要件(1)〜(5)が1995年6月25日(優先権主張日)以前公知であったとはいえない。さらに、APEX7400IMSが本件特許発明の機能を含んでいたとする客観的な証拠もない。
したがって、証人沖本能道の証言によっても本件特許の請求項1に係る発明が1995年6月25日(優先権主張日)前公然と知られた発明であったとすることはできない。
また、請求項2〜5に係る発明は、請求項1に係る発明を引用して記載した発明であるから、前記と同様の理由により、1995年6月25日(優先権主張日)前公然と知られた発明あるいは公然と実施された発明であったとすることはできない。
6.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲第1号証乃至甲第5号証の2及び甲第7号証に記載された発明と同一であるとも、甲第1号証乃至甲第5号証の2及び甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできないし、証人の証言内容によっても本件出願前公知・公用であったとすることもできないものであるから、本件特許発明は特許法第29条第1項あるいは第2項の規定に違反してされたものあるとすることはできない。
したがって、請求人が主張する理由及び提出した証拠によっては、本件特許を無効にすることはできない。
また、他に本件特許を無効とすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2000-12-13 
出願番号 特願平9-504306
審決分類 P 1 112・ 113- Y (H04M)
P 1 112・ 111- Y (H04M)
P 1 112・ 121- Y (H04M)
P 1 112・ 112- Y (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浜野 友茂  
特許庁審判長 松野 高尚
特許庁審判官 大塚 良平
谷川 洋
登録日 1998-07-10 
登録番号 特許第2801969号(P2801969)
発明の名称 電話番号リストのクリーニング装置およびクリーニング方法  
代理人 一色 健輔  
代理人 神谷 巖  
代理人 原島 典孝  
代理人 玉真 正美  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 鈴木 知  
代理人 黒川 恵  
代理人 吉武 賢次  
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