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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C08L
管理番号 1033892
審判番号 審判1998-16229  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-10-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-10-22 
確定日 2001-03-05 
事件の表示 平成2年特許願第29235号「オルガノポリシロキサンの製造方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成3年10月18日出願公開、特開平3-234768、平成7年10月25日出願公告、特公平7-98863、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 I.手続きの経緯
本願は、平成2年2月8日の出願であって、原審において出願公告(特公平7ー98863号)されたところ、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社から特許異議の申立てがあり、その異議申立ては理由があるものと決定され、その異議決定の理由により拒絶査定されたものである。
II.本願発明
本願発明は、出願公告後、平成10年11月24日付け及び平成13年1月25日付けの各手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された次のとおりのものと認める。
「1.イ)エポキシ基を含有するオルガノシロキサンとアルケニル基を含有するオルガノシロキサンとの混合物 100重量部、 ロ)N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、アセトニトリルから選択される非プロトン系極性有機溶剤 5〜100重量部、
ハ)塩基性触媒 0.01〜10重量部
よりなる組成物を平衡化させてエポキシ基とアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとすることを特徴とするオルガノポリシロキサンの製造方法。
2.ハ)成分としての塩基性触媒がアルカリ金属含有塩基及びまたはホスホニウム塩である請求項1に記載したオルガノポリシロキサンの製造方法。

なお、平成8年9月26日付けの手続補正は、原審において旧特許法第54条第1項の規定による却下の決定がなされている。
III.原査定の理由
原査定の理由である特許異議決定の理由の概要は、本願発明(出願公告時の明細書の特許請求の範囲第1〜第3項記載の発明)は、本願出願前頒布された刊行物である甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
IV.引用刊行物の記載事項
原査定の理由に引用された甲第1号証(特公昭51-33839号公報、以下「引用例1」という。)には、「オルガノシロキサンの混合物を塩基性平衡化触媒で平衡化することからなり、その際該オルガノシロキサンの少なくとも1種はエポキシ置換された有機置換基を含有し、該混合物はその1重量%を越えない量の飽和した水を含有することを特徴とする、エポキシ置換オルガノシロキサンの製造方法。」(特許請求の範囲)の発明について記載され、発明の詳細な説明には「平衡化反応は、先に記載した如く、低分子量のポリシロキサンを比較的少量の強塩基性触媒の存在下で単に混合することによって行なわれる。・・・反応は触媒の存在下に行なうことができる(本審決注:前後の記載からみて「触媒」は「溶媒」の誤記であると認められる。)。好ましい溶媒は炭化水素溶媒であり、特に芳香族炭化水素たとえばトルエン、キシレン、ベンゼン等である。アルカンたとえばヘキサン、ノナン等もまた使用しうる溶媒である。・・・本発明の好ましい実施においては、平衡反応を行なう際、溶媒は使用しない。」(9欄)との記載がある他、その実施例7のdには実施例1のエポキシシロキサンと環式テトラマーおよびペンタマーの混合物〔CH2=CH(CH3)SiO〕4-5 を平衡化させることが記載されている。
同甲第2号証(WALTER NOLL 著”Chemistry and Technology of Silicones”1968 ACADEMIC PRESS 社発行、218〜229頁、以下「引用例2」という。)には、ポリオルガノシロキサンの重合についての記載があり、その5.4.2.3の「アルカリ触媒を用いた重合」の項には、「アルカリ重合は溶媒の存在下で行われる。高度の重合は例えばアセトニトリルやジメチルフォルムアミドのような極性溶媒が用いられれば達成される。重合の速度は、例えば デカリン、p-クロロトルエン、o-ジクロロベンゼンの順のように、溶媒の極性の増大に伴って増大する。」と記載されている。
甲第3号証(米国特許第2634284号明細書、以下「刊行物3」という。)には、珪素原子1個につき1.99〜2.1個の炭化水素基を有するオルガノシロキサンのアルカリによる重合において、ある種のニトリル化合物又は置換アミド化合物を溶媒として使用することにより重合度を上げることができることが記載されている。
甲第4号証(特開昭49-93499号公報、以下「刊行物4」という。)には、アミノ基含有のシラン又はシロキサンとアミノ基不含有のオルガノポリシロキサンとをアルカリ触媒により平衡化させる、アミノ官能基含有ポリシロキサンの製造法についての発明が記載され、該製造法においては、溶剤の存在下または不存在下に行うことができるとされ(6頁左上欄)、使用し得る溶剤に関しては、「種々の第三アミンたとえばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジンなどの溶媒を包含する。その他の適当な溶媒にはジメチルスルホキシド、ジオキサン、アルキルエーテル;グリコール類例えばジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエトキシエタン、テトラヒドロフランなどがある。」(4頁左下〜右下欄)と説明されている。
甲第5号証(特開昭51-121099号公報、以下「引用例5」という。)には、「エポキシ官能性オルガノ珪素化合物をリチウム化合物の存在下で環式オルガノシロキサンと反応させることから成るエポキシ官能性ポリシロキサン重合体の製法。」(特許請求の範囲)についての発明が記載され、発明の詳細な説明には、「本発明によれば、要するに塩基性触媒と所望により非プロトン溶剤との存在下においてエポキシまたは置換エポキシ官能性基をもつオルガノ珪素化合物をオルガノポリシロキサンと反応させることにより達成される。」(3頁右下欄)、また、「本発明のさらに他の目的は、エポキシ官能基のランダムな分布を起こしやすい平衡と実質的に無縁なエポキシ官能性シロキサンの製造方法を提供することである。」(3頁右下欄)と記載され、「反応は溶剤の不在下または存在下で行ないうる。陽イオンと配位結合することができる非プロトン溶剤を使用することが好ましい。「非プロトン溶剤」の語は、成長する陰イオン重合の中心に干渉するような活性プロトンをもたない有機溶剤を意味するものである。これには種々の第三アミンたとえばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン等々がある。その他の適当な溶剤はジメチルスルホキシド、ジオキサン、アルキルエーテル;グリコール類たとえばジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエトキシエタン、テトラヒドロフランおよびこれらの混合物である。」(6頁左上欄)と記載されている。
V.対比・検討
以下、まず本願特許請求の範囲第1項記載の発明(以下「本願第1発明」という。)について引用例記載の発明と対比し、その進歩性の有無を検討する。
本願第1発明と引用例1記載の発明を対比すると、引用例1の実施例では、エポキシ基含有オルガノシロキサンとCH2=CH(CH3)基(即ちアルケニル基)含有オルガノシロキサンの混合物を平衡化することが具体的に記載されているのであるから、両者は、エポキシ基を含有するオルガノシロキサンとアルケニル基を含有するオルガノシロキサンとの混合物、有機溶剤及び塩基性触媒の所定量からなる組成物を平衡化させてエポキシ基とアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとする、オルガノポリシロキサンの製造方法、である点で一致していると認められる。
そして、両者は、本願第1発明がエポキシ基を含有するオルガノシロキサンとアルケニル基を含有するオルガノシロキサンとの混合物100重量部に対しN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド及びアセトニトリルから選択される非プロトン系極性有機溶剤を5〜100重量部用いるとしているのに対し、引用例1記載の発明では、炭化水素溶媒(トルエン、キシレン、ベンゼンそしてヘキサン、ノナンが例示されている。)を使用し得るとはしているものの、極性有機溶剤を用いることは記載されておらず、好ましい態様としてはむしろ溶媒は使用しない、としている点で相違しているものと認められる。
よって、この点についてさらに検討すると、
引用例2には、ポリオルガノシロキサンの重合において極性溶媒の使用が高重合度のものをもたらす旨の記載がなされ、引用例3には、アルキルニトリル等の溶媒の存在でオルガノシロキサンの重合がなされることが記載されているが、本願第1発明は単にシロキサンの重合度を上げるというものではなく、エポキシ基を有するオルガノシロキサンとアルケニル基を含有するオルガノシロキサンからなる組成物を平衡化させ両官能基を有するオルガノポリシロキサンを得るものであり、これら両刊行物に記載された有機溶剤が、かかる平衡化反応をエポキシ基に悪影響を与えずにしかもその重合度を制御するに有効であることを示唆する記載は見出せない。
引用例4に記載された発明は、特定の中性溶媒の存在でアミノ官能基シランまたはシロキサンをオルガノシロキサンと混合した後塩基性触媒の存在下で平衡化するものであり、エポキシ基を有するシロキサンを反応させるものではなく、かかる反応に本件特定の極性有機溶剤が使用されることを示唆する記載は全く見出せない。
刊行物5には、エポキシ官能性オルガノ珪素化合物を環式オルガノシロキサンと反応させるエポキシ官能性ポリシロキサンを得るに塩基性触媒と所望により非プロトン溶剤との存在下に行うことは記載されているが、本件第1発明で使用するとしている特定の非プロトン系極性有機溶剤は記載されておらず、しかも該反応は平衡と実質的に無縁な反応として記載されているのであって、ここに記載された発明と刊行物1記載の発明に基づいて本件第1発明が当業者の容易に想到し得るとすることはできない。
以上のとおり、本願第1発明と刊行物1記載の発明との相違点を当業者であれば容易に想到し得るとする根拠を刊行物2〜5に見出すことはできない。
一方本願第1発明は、その採用する構成により、比較的短時間で平衡反応を行わせることができ、平衡反応時にエポキシ基の開裂などを伴わずにオルガノシロキサンの重合度を設定通りに制御することができ、溶解量として含まれる水などの活性水素含有物質により得られるオルガノポリシロキサンの分子鎖末端の封鎖がシラノール基となって阻害されることが少なく、分子鎖末端停止率が上昇する、等の優れた効果が得られることが認められ、かかる効果は、上記刊行物の記載からは予測することは困難である。
したがって、本願第1発明が刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本願特許請求の範囲第2項記載の発明は、本願第1発明において、塩基性触媒を特定のものに限定したものに相当するから、本願第1発明と同様刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
VI.むすび
以上のとおりであるから、刊行物1〜5の記載事項を根拠に本願を拒絶することは妥当でない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-02-02 
出願番号 特願平2-29235
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C08L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 均保倉 行雄  
特許庁審判長 柿崎 良男
特許庁審判官 佐野 整博
小島 隆
発明の名称 オルガノポリシロキサンの製造方法  
代理人 山本 亮一  
代理人 荒井 鐘司  

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