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審決分類 審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許 無効とする。(申立て一部成立) A47K
審判 全部無効 発明同一 無効とする。(申立て一部成立) A47K
審判 全部無効 特38条共同出願 無効とする。(申立て一部成立) A47K
管理番号 1034672
審判番号 無効2000-35166  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-19 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-04-03 
確定日 2001-03-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第2706757号発明「フロ用イス」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2706757号の請求項1、4に係る発明についての特許を無効とする。 特許第2706757号の請求項2、3に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。 
理由 第1 経緯

本件特許第2706757号は、平成6年6月9日に出願(特願平6-152599号)されたものであって、平成9年10月17日に特許登録され、平成12年4月3日に水野勝より無効審判の請求があり、平成12年7月11日に被請求人より審判事件答弁書及び上申書が提出され、平成12年10月19日に審判事件弁駁書が提出された。

第2 当事者の主張

1 請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書及び審判事件弁駁書において、特許第2706757号の特許はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めることを請求の趣旨とし、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、本件発明1ないし4という)についての特許を無効とすべき理由として、概要次のように主張する。
(1)本件特許は、発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるから、特許法第123条第1項第6号の規定に該当する。
(2)本件特許は、特許法第38条の規定に違反してされたものであるから、特許法第123第1項第2号の規定に該当する。
(3)本件特許は、(本件特許の出願前に出願され、本件特許の出願後に出願公開公報又は実用新案掲載公報が発行された)実用新案登録第3006728号、または実用新案登録第2507154号(の願書に最初に添付された明細書又は図面)に記載された考案と同一であり、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定に該当する。
(以下、上記(1)ないし(3)に記載された理由を、無効理由1ないし3という。)

2 被請求人の主張の概要
被請求人は、審判事件答弁書において、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の無効理由1ないし3はいずれも当を得ておらず、無効理由はない旨主張する。

第3 無効理由についての検討

1 本件発明1ないし4の認定
本件発明1ないし4は、明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次のとおりである。
【請求項1】 台座部と座部本体とからなるフロ用イスであって、前記台座部は略円錐形状とされるとともに中央には開口部が形成され、この開口部の内周面にはねじ山が形成されてなり、前記座部本体は筒状の軸体とこの軸体と一体成形された座受部と蓋体とからなり、前記軸体は外周面に前記台座部内周面のねじ山と螺嵌されるねじ山が刻設され、前記座受部は円盤状に形成されるとともに中央に開口部が形成され、この開口部の内周面には歯が形成されてなり、前記蓋体は裏面側に前記座受部の開口部に挿入される挿入部が形成され、且つこの挿入部の先端には前記座受部の歯と摺動自在に噛合される突起が形成されてなることを特徴とするフロ用イス。
【請求項2】 前記挿入部先端には複数のスリット部が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のフロ用イス。
【請求項3】 前記軸体は方形状の筒体とされ、且つねじ山がこの筒体の四隅外周面に刻設されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロ用イス。
【請求項4】 前記座受部と蓋体との間隙にはころがり軸受が設けられてなることを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載のフロ用イス。

2 無効理由3のうち実用新案登録第3006728号に基づく無効理由についての検討

2-1 実用新案登録第3006728号の出願日、考案者、出願人について
実用新案登録第3006728号は、平成6年4月5日に出願され、考案者及び出願人は水野勝であり、平成6年11月9日に登録され、平成7年1月31日に実用新案登録公報(甲第4号証)が発行された(以下、実用新案登録第3006728号を先願1という。)。

2-2 先願1の明細書又は図面に記載された事項
先願1は、明細書又は図面の補正をすることなく登録されており、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された事項は、その実用新案登録公報(甲第4号証)の明細書又は図面に記載された事項と同じであって、次の記載が認められる。
(1)実用新案登録請求の範囲における記載
【請求項1】 伸縮座席受け2に8個所にボール4を埋め込み、座席1の下面を受け回転可能にしたる、ふろばの座席が回る腰掛け。
【請求項2】 内面にストッパー受部ロを有する伸縮座席受け2にストッパー突起部イを有する座席1を入れて、突起部を噛み合わして同体化としたる請求項1記載のふろばの座席が回る腰掛け。
(2)考案の詳細な説明における記載
【0001】【産業上の利用分野】本考案は、ふろばに於いて使用するもので、体形に準じて高さが調整出来るものであり、そして座席も回る物で身体の不自由な人にも抵抗なく利用出来る浴場用腰掛けで詳しくは、その構造に関するものである。
【0002】【従来の技術】(省略)
【0003】【考案が解決しようとする課題】従来の技術で記した、現行の機能は高さを調整する構造に、座席の下向きの平歯車と高さを調整するネジ本体の上向きの平歯車を噛み合わせて、座席とネジ本体を連結して、座席に体重を加え、歯車を離して座席を回転可能にするものである。そのため体重差により、平歯車がガリガリと音がするので不快感が起きる。
【0004】(省略)
【0005】【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、座席の下端に突起部を設け、高さを調整する座席受けのストッパー受部を噛み合わせ、座席の着脱は重力を重さ一点で可能にする事で解決するものである。
【0006】(省略)
【0007】【作用】図面2に示す如く、伸縮座席受け2を本体3のネジ部にネジこんで一体とする座席1のストッパ突起部イを伸縮座席受け2のストッパー受け部ロに合わす如く座席1を押し込む、この時ストッパー突起部の形状の働きで容易に入り、腰掛けは一体となる。
【0008】図面1に示す如く、座席1の上部にはスベリ止めシート5を嵌め込み、本体3の底部にはスベリ止めOリング6を嵌め込んで、各滑りを止める。
【0009】【実施例】図面3に示す如く、座席1に腰を掛けると、体重出座席1がスベリ止めOリング6を経て、重さが伸縮座席受け2に、かかり伸縮座席受け2がしわり、座席1のストッパー突起部イが下がり伸縮座席受け2のストッパー受部ロが離れ、座席1が回り二つの機能が同時に働く。
【0010】【実施例】実施例は図面4により説明する、座席を上下するには図に示す如く、手で座席1と伸縮座席受け2を握り、本体3を足で保持して、座席1を回しネジの作用で高さを上下して体形に合わし使用する。
【0011】【考案の効果】本考案は、上述のとおり構成されているので、次ぎに記載する効果が生ずる。
【0012】請求項1の伸縮座席受け2のボールを、穴に入れて保持するので構造が簡単で、ふろばの腰掛けに使用する関係上優れている。
【0013】請求項2の突起部方式を採用した事により、作動に確実性が有るそして座席1と伸縮座席受け2の着脱が、瞬間的に働くので静かに作動する。
(3)そして、図面を参酌すると、腰掛けの本体は略円錐形状とされるとともに中央には開口部が設けられ、さらにこの開口部にはねじ山が形成されており、伸縮座席受けは円盤状となっており、伸縮座席受け裏面から延出した軸状体には外周面にねじ山が刻設されており、座席裏面には伸縮座席受けの開口部に挿入される挿入部が設けられていることが認められる。
(4)以上より、先願1に記載されたものにおいて、座席1のストッパー突起部(イ)と伸縮座席受け2のストッパー受部(ロ)は、両者を合わせる如く座席1を押し込むと噛み合うものであって、座席に腰を掛けて体重をかけると、ストッパー突起部(イ)が下がって、ストッパー受部(ロ)が離れ座席は回るようになるのであるから、ストッパー突起部(イ)とストッパー受部(ロ)は、噛み合うような形状であって、ストッパー突起部(イ)の下方への移動によってその噛み合いが外れるようになっていると考えられる。
ここで、「噛み合う」とは、広辞苑第4版によれば、「1.獣などが互いに噛んでたたかう。2.激しく争う。喧嘩する。つかみあう。3.歯車などがぴったり組み合わさる。4.意見や考えがうまく合う。」ことを意味し、引用例の場合には、「3」を意味すると解されるから、噛み合うような形状とは、歯車のようにぴったり組み合わされる形状をいうと考えられる。
座席1のストッパー突起部(イ)と伸縮座席受け2のストッパー受部(ロ)の形状がそのようなものとすれば、ストッパー受部(ロ)は、「歯」のような形状をしているといえ、座席に腰を掛けて体重をかけると、ストッパー突起部(イ)が下がって、ストッパー受部(ロ)が離れることから、当該「歯」のように形成されたストッパー受部(ロ)とは下方に下がる時に、摺動すると考えられ、先願1のストッパー受部(ロ)にはストッパー突起部(イ)が下方に摺動自在に噛合されているといえる。

2-3 本件発明1と先願1に記載されたものとの対比
先願1に記載されたものの、ふろばの腰掛け、本体、伸縮座席受け、伸縮座席受け裏面から延出した軸状体、座席、伸縮座席受け内周面に設けられたストッパー受部、座席裏面の挿入部先端に設けられたストッパー突起部は、本件発明1の、フロ用イス、台座部、座受部、軸体、蓋体、座受部内周面に設けられた歯、蓋体裏面の挿入部先端に設けられた突起、にそれぞれ相当するものであるから、両者に構成上の差異が認められない。
したがって、本件発明1は、先願1に記載された考案と同一であるというこができ、本件発明1の出願人または発明者と、先願1に記載された考案の出願人または考案者とは同一の者ではないので、特許法第29条の2に該当する。

2-4 本件発明2と先願1に記載されたものとの対比
本件発明2は、本件発明1を引用して、(蓋体の裏面に設けられた)「挿入部先端には複数のスリット部が形成されてなること」ように限定したものであり、「スリット」とは細い隙間を意味するのに対し、先願1に記載されたものの、本件発明2の蓋体に相当する座席の裏面に設けられた挿入部には、図2を参酌すると、ストッパー突起部が該突起部の幅よりも大きな間隔をあけて設けられており、この間隔を細い隙間とすることはできないことから、先願1には本件発明2の上記限定に係る構成は記載されておらず、本件発明2と先願1に記載された考案とを同一とすることはできない。

2-5 本件発明3と先願1に記載されたものとの対比
本件発明3は、本件発明1を引用して、「前記軸体は方形状の筒体とされ、且つねじ山がこの筒体の四隅外周面に刻設されてなる」ように限定したものであり、先願1に記載されたものでは、図1を参酌すると、軸体は円筒形であるから、先願1には本件発明3の上記限定に係る構成は記載されておらず、本件発明2と先願1に記載された考案とを同一とすることはできない。

2-6 本件発明4と先願1に記載されたものとの対比
本件発明4は、本件発明1を引用して、「前記座受部と蓋体との間隙にはころがり軸受が設けられてなる」ように限定したものであるが、先願1に記載されたものにも伸縮座席受けと座席との間にボールが設けられており、このボールは本件発明4のころがり軸受に相当するものであるから、本件発明4は先願1に記載された考案と同一であるということができ、本件発明4の出願人または発明者と、先願1に記載された考案の出願人または考案者とは同一の者ではないので、本件発明4は特許法第29条の2に該当する

3 無効理由3のうち実用新案登録第2507154号に基づく無効理由についての検討
上記2に記載したように本件発明1及び4については実用新案登録第3006728号に基づく無効事由を有するので、以下、当該無効事由を有さない本件発明2及び3について検討する。

3-1 実用新案登録第2507154号に記載された考案
実用新案登録第2507154号は、平成5年6月28日に出願され、考案者及び出願人は水野勝であり、平成7年1月20日に出願公開され(実開平7-3471号)、平成8年5月30日に登録され、平成8年8月14日に実用新案登録公報(甲第10号証)が発行された(以下、実用新案登録第2507154号を先願2という。)。
職権調査によれば、先願2の願書に最初に添付された図面には、甲第10号証の公報に記載されたものと実質的に同じ図が記載されており、先願2の願書に最初に添付された明細書又は図面には、甲第10号証の実用新案登録公報の実用新案登録請求の範囲に記載された次の考案が記載されていると認められる。
「下端面にOリング8を施した下部側の環状裾部3a、該裾部3aから上方へ径小に湾曲形成される環状殻部3bを介して設けた上部側の環状支持部3c、及び該環状支持部3cの内側に一体的に連接されて上下中空状をなし、該中空状の内周面に雌ねじを形成した内筒部からなる本体3と、中空筒状をなして外周面に前記環状支持部3cの雌ねじに上下方向螺進退可能な螺合嵌挿する上下用雄ねじハを形成した支持中空軸部2a、該支持中空軸部2aの上部側から拡径され、かつ下部側には、軸芯方向へ向けて突出形成し下面に平面歯下ホを形成した内周鍔部2dを設けた中間部2b、該中間部2bの周端部を拡径して受皿状に形成され、該受皿状部分の上面内周側に上向きの下部ボール受け溝ロを形成した受支部2cからなる伸縮用座受け2と、中心部に上下方向の貫通孔1bを残して平面化された腰掛け面部1a、該腰掛け面部1aの下面内周側に前記下部ボール受け溝ロに対向する下向きの上部ボール受け溝イ、及び前記貫通孔1bの内周部に前記中間部2bの内側に嵌挿され、内周縁部に連結用突起受け部トを形成され、該連結用突起受け部トの上面に所定角間隔を隔てて複数の連結用突起廻り止めチを突出させた内筒部1cからなる回転座1と、前記平面歯下ホと噛み合う平面歯上ヘを形成し、上面に独立的に撓曲可能な連結用突起ニ、及び該突起ニの上部外面に前記連結用突起廻り止めチに係合させる係合爪6aを突設した環状体からなる連結用部品6と、前記伸縮用座受け2の下部ボール受け溝ロと、これに対向する前記回転座1の上部ボール受け溝イとの間に介在可能にされ、複数の保持穴を形成し、該各保持穴内に保持されるボール5からなるボールガイド板4とを備え、利用者が、前記回転座1の腰掛け面部1a上に軽く腰掛け、該回転座1への体重負荷を軽減した状態では、連結用部品6の平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが保持され、回転座1及び伸縮用座受け2間の回動を拘束して、前記本体3に対する回転座1を含んだ伸縮用座受け2の螺進退操作を可能とし、また、前記回転座1への体重負荷を軽減しない状態では、前記連結用部品6の平面歯上ヘと前記伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが自動的に解放され、前記伸縮用座受け2に対する前記回転座1の回動操作が優先されて、前記本体3に対する伸縮用座受け2の螺進退を不能にし得るように構成したことを特徴とするふろばの回る腰掛け。」

3-2 本件発明2と先願2に記載された考案との対比
先願2に記載された考案は、回転座1と連結用部品6とが連結用突起ニと連結用突起受け部トを介して連結されており、さらに連結用部品6に設けられた平面歯上ヘと座受けの内周鍔部2dに設けられた平面歯下ホとが噛み合うようになっており、利用者が、前記回転座1上に軽く腰掛け体重負荷を軽減した状態では、連結用部品6の平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが保持され、回転座1及び伸縮用座受け2間の回動を拘束して、前記本体3に対する回転座1を含んだ伸縮用座受け2の螺進退操作を可能とし、一方、前記回転座1への体重負荷を軽減しない状態では、前記連結用部品6の平面歯上ヘと前記伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが自動的に解放され、前記伸縮用座受け2に対する前記回転座1の回動操作が優先されて、前記本体3に対する伸縮用座受け2の螺進退を不能にするものである。
したがって、回転座1と伸縮用座受け2との間には連結用部品6が設けられており、本件発明1のように、蓋体の挿入部に設けられた突起と、座受部(の開口部の内周面)に設けられた歯とが直接噛合する構成となっていない。
また、本件発明2は、さらに(蓋体の裏面に設けられた)「挿入部先端には複数のスリット部が形成されてなる」ものであり、「スリット」とは細い隙間を意味するのに対し、先願2に記載された考案の、本件発明2の蓋体に相当する回転座の裏面に設けられた挿入部には、図3を参酌すると、連結用突起ニが該突起の幅よりも大きな間隔をあけて設けられており、この間隔は細い隙間とすることはできない。
したがって、本件発明2と先願2に記載された考案とを同一とすることはできない。

3-3 本件発明3と先願2に記載された考案との対比
先願2に記載された考案は、上記3-2に記載したように、回転座1と伸縮用座受け2との間には連結用部品6が設けられており、本件発明1のように、蓋体の挿入部に設けられた突起と、座受部(の開口部の内周面)に設けられた歯とが直接噛合する構成となっていない。
また、本件発明3は、さらに「前記軸体は方形状の筒体とされ、且つねじ山がこの筒体の四隅外周面に刻設されてなる」ものであり、先願2に記載された考案では、図1を参酌すると、支持中空軸部2aは円筒形であるから、先願2には本件発明3の上記構成は記載されておらず、本件発明3と先願2に記載された考案とを同一とすることはできない。

4 特許法第123条第1項第6号の無効理由に対して

4-1 請求人は、本件特許発明の真の発明者は請求人である水野勝であって、本件特許は、発明者でない者であって、その発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してなされたものであるから、特許法第123条第1項第6号の規定に該当する旨主張する。
請求人の主張は、次の2つを根拠とするものと考えられる。
(1)請求人が考案者である実用新案登録第3006728号(甲第4号証)考案と、本件発明1ないし4との構成が共通すること、
(2)本件発明1ないし4を佐藤紀雄が発明したとする根拠が乏しいこと。

4-2 本件発明2及び3についての検討
上記2に記載したように本件発明1及び4については実用新案登録第3006728号に基づく無効事由を有するので、以下、当該無効事由を有さない本件発明2及び3について検討する。
(1)特許法第123条第1項第6号の規定に基づく無効理由があるとするためには、本件発明2及び3の真の発明者は請求人である水野勝であること、または、本件発明2及び3を佐藤紀雄が発明していなかったこと(佐藤紀雄は、いづれも否認している)を、請求人において立証することを要すると考えられる。
(2)実用新案登録第3006728号は、請求人である水野勝が考案者で、かつ実用新案権者であり、上記2に記載した先願1に係るものである。そして、先願1には、上記2-2に記載した事項が記載されており、上記2-4及び2-5に記載したとおり、本件発明2、3の構成要件である(蓋体の裏面に設けられた)「挿入部先端には複数のスリット部が形成されてなる」構成や、「前記軸体は方形状の筒体とされ、且つねじ山がこの筒体の四隅外周面に刻設されてなる」構成については記載されていないことから、たとえ本件発明2、3と、先願1に記載された事項とが多くの構成で共通するとしても、先願1の明細書または図面に記載された事項のみをもって、本件発明2及び3を請求人である水野勝が発明または考案したとすることはできない。
また、他に、本件発明2及び3を請求人である水野勝が発明または考案したとする証拠は提出されていない。
さらに、本件発明2及び3を、発明者として記載した佐藤紀雄が発明しなかったことを証明するものも何ら提出されていない。
請求人は、甲第9号証の領収書(川崎化工有限会社が(有)ケイエスビー四国より250万円を型代として領収したとするもの)を根拠にするが、当該領収書は、当事者間における金額の授受を証明するにすぎず、本件発明2及び3を請求人が発明したことを立証するものではない。
(3)したがって、本件発明2及び3についての請求人の主張はいずれも採用することができない。

5 特許法第38条に基づく無効理由に対して
請求人は、本件発明の真の発明者は請求人である水野勝のみでないとしても、本件発明の着想を提供したのは水野勝であるから、水野勝は共同発明者とならなければならないから、本件特許は、特許法第38条の規定に違反している旨主張する。
上記2に記載したように本件発明1及び4については実用新案登録第3006728号に基づく無効事由を有するので、以下、当該無効事由を有さない本件発明2及び3について検討する。
特許法第38条の規定に基づく無効理由があるとするためには、本件発明2及び3は佐藤紀雄と請求人である水野勝が共同して発明した(佐藤紀雄は、否認している)ことを、請求人において立証することを要すると考えられる。
しかしながら、本件発明2及び3の(蓋体の裏面に設けられた)「挿入部先端には複数のスリット部が形成されてなる」構成や、「前記軸体は方形状の筒体とされ、且つねじ山がこの筒体の四隅外周面に刻設されてなる」構成について、請求人である水野勝が関与したことを証するものは一切なく、水野勝が具体的にどのように関与したのか全く不明であって、当該構成を佐藤紀雄と水野勝が共同して発明したとすることはできない。
したがって、本件発明2及び3についての請求人の主張は採用することができない。

第4 まとめ

以上のとおりであるから、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。
また、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明2及び3に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第179条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-12-18 
結審通知日 2001-01-05 
審決日 2001-01-16 
出願番号 特願平6-152599
審決分類 P 1 112・ 161- ZC (A47K)
P 1 112・ 151- ZC (A47K)
P 1 112・ 152- ZC (A47K)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 藤原 伸二  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 憲子
杉浦 淳
登録日 1997-10-17 
登録番号 特許第2706757号(P2706757)
発明の名称 フロ用イス  
代理人 清原 義博  
代理人 川崎 隆夫  
代理人 清原 義博  
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