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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E02D |
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管理番号 | 1035567 |
異議申立番号 | 異議1999-71672 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-11-06 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-04-28 |
確定日 | 2001-03-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2818045号「コンクリート基礎の梁筋結合構造」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2818045号の特許を維持する。 |
理由 |
1.本件発明 本件特許第2818045号(平成3年4月12日出願、特願平3-79838号、平成10年8月21日設定登録)の請求項1(全請求項)に係る発明は、特許明細書(特許査定時の明細書)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】 フープ筋2と梁筋3により構成した接当側梁筋ユニットU1と、同様にフープ筋2と梁筋3により構成した直線側梁筋ユニットU2を、T字型に結合する梁筋ユニット結合部において、接当側梁筋ユニットU1の上下の梁筋3・3より突出する「コ」の字筋1・1を設け、該「コ」の字筋1・1を、直線側梁筋ユニットU2内に嵌装し、上下の梁筋3・3・3・3と交叉結合したことを特徴とするコンクリート基礎の梁筋結合構造。 2.異議申立ての理由の概要 特許異議申立人 岡田 芳子は、証拠方法として、 甲第1号証(実開昭57-196716号公報)、 甲第2号証(実願平1-20213号(実開平2-111702号)のマ イクロフイルム)、 甲第3号証「鉄筋コンクリート構造配筋標準」、編者 日本電信電話公社 建築局、昭和37年9月20日、株式会社みなと出版社発行、 第40,41頁、 甲第4号証(実開昭61-176350号公報)、及び 甲第5号証「建築の技術 施工 1 no.255」、1987年1月1日 発行、第19,36,37頁、を提出し、 本件発明は、甲第1号証の発明に、甲第2、3号証及び甲第4、5号証でそれぞれ明らかな周知の手段を適用して当業者が容易に発明をすることができたものに該当する。 あるいは、本件発明は、本件明細書で従来例として記載の技術に対して、甲第4、5号証で周知の手段を適用して当業者が容易に発明をすることができたものに該当する。 したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定に該当するので、本件特許は、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消しを免れない旨主張している。 3.甲各号証に記載の発明 特許異議申立人の提出した甲第1号証には、コンクリート構造物の内部に配置される複数の組立鉄筋A、A1、・・・をL字形継手筋6を用いて、T字型に結合する組立鉄筋結合構造に関して、次のような発明が記載されているものと認められる。 「肋筋3と上、下端筋1,2により構成した接当側組立鉄筋A1と、同様に肋筋3と上、下端筋1,2により構成した直線側組立鉄筋Aを、T字型に結合する組立鉄筋結合部において、T字型に結合する組立鉄筋A、A1間に跨ってL字形継手筋6を配置し、組立鉄筋A、A1 の上、下端筋1,2とL字形継手筋6を結合したコンクリート構造物の組立鉄筋結合構造。」 同じく、特許異議申立人の提出した甲第2号証には、工事現場で組み上げる、肋筋3と上下梁主筋1,2により構成した梁Aの内部に配置する組立鉄筋が記載されている。 同じく、特許異議申立人の提出した甲第3号証には、工事現場で組み上げる、フープ筋と梁筋により構成した基礎ばりの内部に配置する組立鉄筋が記載されている。 同じく、特許異議申立人の提出した甲第4号証には、壁鉄筋網6と、柱主筋4とフープ筋5により構成した柱用の組立鉄筋とを結合する壁筋定着用鉄筋構造体に関して次のように記載されている。 「一端の折曲げ部1aから所定間隔をおいて平行に延びる一対の延長部1b、1b′を有する継手鉄筋部材1の複数本を各延長部1b、1b・・・及び同1b′、1b′・・・が平行に揃うよう間隔をおいて並列配置し、各延長部1b、1b・・・及び同1b′、1b′・・・ごとに、それぞれ直交する通し鉄筋部材2及び2′を溶接し一体化してなる壁筋定着用鉄筋構造体。」 同じく、特許異議申立人の提出した甲第5号証の「U型梁主筋定着法」の項には、次のような記載がある。 「本工法は、図-3にその概要を示すように、梁上端筋と下端筋を柱梁接合部内で急角度に折曲げ、U型に連続させた柱材への梁接合方法である。」 4.対比、判断 本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)と、甲第1号証に記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の組立鉄筋A、A1と本件発明の梁筋ユニットとは、それぞれ個々のユニットという点で共通し、さらに、その組立鉄筋と梁筋ユニットは継手筋(甲第1号証の発明では、L字形継手筋6。本件発明では、「コ」の字筋1・1。)でT字型に結合されるという点で共通するから、両発明は、 「接当側梁筋ユニットU1と、同様に構成した直線側梁筋ユニットU2を、T字型に結合する梁筋ユニット結合部において、接当側梁筋ユニットU1と直線側梁筋ユニットU2を継手筋で結合したことを特徴とするコンクリート構造物の梁筋結合構造。」 の点で構成が一致しており、次の(イ)及び(ロ)の点で相違しているものと認められる。 (イ)本件発明の梁筋ユニットが、フープ筋2と梁筋3により構成されている梁筋ユニット、つまり立体形状であり、それらが「コ」の字筋1・1でT字型に結合される(以下、「構成A」という。)のに対して、甲第1号証記載の発明の組立鉄筋は、肋筋3と上、下端筋1,2により構成されている組立鉄筋、つまり平面形状であり、それらがL字形継手筋6でT字型に結合される点。 (ロ)接当側梁筋ユニットU1と、直線側梁筋ユニットU2を、「コ」の字筋1・1で結合した梁筋結合構造が、本件発明では、接当側梁筋ユニットU1の上下の梁筋3・3より突出する「コ」の字筋1・1を設け、該「コ」の字筋1・1を、直線側梁筋ユニットU2内に嵌装し、上下の梁筋3・3・3・3と交叉結合したコンクリート基礎の梁筋結合構造(以下、「構成B」という。)であるのに対して、 接当側組立鉄筋A1と、直線側組立鉄筋Aを、L字形継手筋6で結合した組立鉄筋結合構造が、甲第1号証記載の発明では、接当側組立鉄筋A1と直線側組立鉄筋Aを、L字形継手筋6で結合し、組立鉄筋A、A1 の上、下端筋1,2とL字形継手筋6を結合したコンクリート構造物の組立鉄筋結合構造である点。 そこで、これら相違点を甲第2号証〜甲第5号証をもとに検討する。 (イ)の点について 本件発明の梁筋ユニットが、工場において生産された梁筋ユニットを意味することは、本件明細書の発明の詳細な説明の記載からみて明らかである。 これに対して、甲第2号証には、肋筋3と上下梁主筋1,2により構成した組立鉄筋が記載され、甲第3号証には、フープ筋と梁筋により構成した組立鉄筋が記載されているが、いずれも工事現場で組み上げる組立鉄筋であり、本件発明の意味する梁筋ユニットとは相違するし、しかもそれら組立鉄筋は「コ」の字筋によって結合されていない。 また、甲第4号証及び甲第5号証にも、本件発明の梁筋ユニットに相当する構成は記載されていないし、本件発明のような機能を有する「コ」の字筋も記載されていない。 したがって、甲第2号証〜甲第5号証には、本件発明が採用した上記「構成A」は記載されていない。 そうすると、甲第1号証〜甲第5号証には、本件発明が採用した上記「構成A」が記載されていない。 (ロ)の点について 甲第2号証及び甲第3号証には、前記「(イ)の点について」で述べたとおりの、工事現場で組み上げる組立鉄筋に関する技術が記載されているだけであって、また、「コ」の字筋による組立鉄筋の結合については何も記載されていない。 また、甲第4号証には、本件発明とは技術分野が相違する壁鉄筋網6と、柱用の組立鉄筋との結合構造が記載されており、壁鉄筋網6と、柱用の組立鉄筋とを結合する継手鉄筋部材1は、壁鉄筋網6の上下の鉄筋より突出するものではないし、柱用の組立鉄筋の上下の鉄筋と交叉結合するものでもないから、本件発明の「コ」の字筋1・1には相当しないし、 甲第5号証には、U型梁主筋定着法が記載されているが、これは柱と梁の接合に関する技術であって、本件発明とはその技術分野が相違するし、さらに、梁上端筋と梁下端筋は、工事現場において、柱と梁の接合部内で急角度に折曲げ、U型に連続させたものであって、U型に連続させたものを、あとから柱の組立鉄筋内に嵌装できる構成ではないから、U型に連続させたものが、本件発明の「コ」の字筋1・1に相当するとは認められない。 したがって、甲第2号証〜甲第5号証には、本件発明が採用した上記「構成B」の構成はもちろん、それを示唆する記載もない。 そうすると、甲第1号証〜甲第5号証には、本件発明が採用した上記「構成B」が記載されていない。 以上のとおり、甲第1号証〜甲第5号証には、本件発明が採用した上記「構成A」及び「構成B」が記載されておらず、これら「構成A」及び「構成B」には技術的意義が認められるから、本件発明が、甲第1号証〜甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。 なお、特許異議申立人は、本件発明は、甲第1号証記載の発明に、甲第2、3号証及び甲第4、5号証でそれぞれ明らかな周知の手段を適用して当業者が容易に発明をすることができたものに該当すると主張するものであるが、甲第2、3号証及び甲第4、5号証には前述のように本件発明の構成が記載されていないから、甲第1号証記載の発明に、甲第2、3号証及び甲第4、5号証に記載の発明を適用しても本件発明は得られないし、また、甲第1号証記載の発明の構成のうちのどの構成に、甲第2、3号証及び甲第4、5号証に記載のどの構成を、どのように適用すれば本件発明が得られるのかについて、何の説明もない特許異議申立人の前記主張はとうてい採用できない。 さらに、特許異議申立人は、本件発明は、本件明細書で従来例として記載の技術に対して、甲第4、5号証で周知の手段を適用して当業者が容易に発明をすることができたものに該当する旨主張するが、本件明細書の中で従来例として記載の技術が、本件出願前に日本国内において公然実施をされた、あるいは公然知られたという事実を立証する証拠方法は何も提出されていないから、特許異議申立人の前記主張は採用できない。 5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び提出した証拠方法によっては、本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-02-27 |
出願番号 | 特願平3-79838 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(E02D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | ▲吉▼川 康史 |
特許庁審判長 |
佐田 洋一郎 |
特許庁審判官 |
藤枝 洋 宮崎 恭 |
登録日 | 1998-08-21 |
登録番号 | 特許第2818045号(P2818045) |
権利者 | 積水ハウス株式会社 |
発明の名称 | コンクリート基礎の梁筋結合構造 |