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審決分類 審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  B29C
管理番号 1035740
異議申立番号 異議1999-72997  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-09-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-10 
確定日 2001-03-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第2855118号「折り曲げ線刻設用ブレード」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2855118号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第2855118号の請求項1,2に係る発明についての出願は、平成10年1月5日(優先権主張:平成9年1月7日)に出願され、平成10年11月20日にその特許の設定登録がなされ、その後、三菱樹脂株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年5月30日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年9月22日に手続補正(訂正請求)がなされたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正明細書の請求項1,2に係る記載
上記手続補正は、誤記の訂正(「前記プラスチックシートに押圧されときに」を「前記プラスチックシートに押圧されたときに」と訂正)を目的とした適法なものと認められ、前記手続補正後の訂正明細書の請求項1,2に係る記載は、次のとおりのものと認める。

【請求項1】
「一体的に形成した2本の平行な突条からなる刃先を備え、該刃先をポリエチレンテレフタレートからなる包装用のプラスチックシートに押圧して2本の折り曲げ線を刻設するプレス用のブレードであって、前記各突条の頂部幅が0.15mm以下に形成され、頂部間の間隔が0.1〜0.7mmに形成され、突条間の谷部の深さが前記プラスチックシートに刻設される圧痕深さの2〜4倍の深さに形成され、両側部の角度が15〜30°に形成されてなり、前記プラスチックシートに押圧されたときに、前記谷部の深さの1/4〜1/2の深さの圧痕が前記プラスチックシートに形成されるように使用されることを特徴とする折り曲げ線刻設用ブレード。」
【請求項2】
「1本の突条からなる刃先を備えたブレードの2枚を重ね合わせて形成され、前記刃先をポリエチレンテレフタレートからなる包装用のプラスチックシートに押圧して2本の折り曲げ線を刻設するように設けた一組のプレス用ブレードであって、前記2枚のブレードによって形成される前記各突条の頂部幅が0.15mm以下に形成され、頂部間の間隔が0.1〜0.7mmに形成され、突条間の谷部の深さが前記プラスチックシートに刻設される圧痕深さの2〜4倍の深さに形成され、両側部の角度が15〜30°に形成されてなり、前記プラスチックシートに押圧されたときに、前記谷部の深さの1/4〜1/2の深さの圧痕が前記プラスチックシートに形成されるように使用されることを特徴とする折り曲げ線刻設用ブレード。」

(2)特許法第36条第6項第2号違反について
(2-1)当審が、平成12年6月28日付けで通知した訂正拒絶理由の内容
「訂正明細書請求項1及び2に記載された事項により特定される発明(以下、「訂正発明1,2」という。)は、ともに、(1)「突条間の谷部の深さが前記プラスチックシートに刻設される圧痕深さの2〜4倍の深さに形成され」ること、及び、(2)「前記プラスチックシートに押圧されときに、前記谷部の深さの1/4〜1/2の深さの圧痕が前記プラスチックシートに形成されるように使用されること」を「折り曲げ線刻設用ブレード」に係る物の発明を特定する要件としている。
しかし、上記特定要件(1)に係る「前記プラスチックシートに刻設される圧痕深さ」は、シートを折り曲げるために必要な条件の下に刻設の実施に際して当業者によって適宜設定されるものであるから、これにより「折り曲げ線刻設用ブレード」の「谷部の深さ」が具体的に把握できるとはいえない。
また、上記特定要件(2)は、「折り曲げ線刻設用ブレード」を使用して、その「谷部の深さ」の「1/4〜1/2の深さの圧痕が前記プラスチックシートに形成されるように」するとの方法を特定しているのみであって、これによっても、「折り曲げ線刻設用ブレード」の「谷部の深さ」が具体的に把握できるとはいえない。
しかも、本件特許訂正明細書「実施例」記載の「谷部の深さC」が0.4mmであるブレードであっても、「ポリエチレンテレフタレートからなる厚さ0.2mmのシート材」に、例えば、「底深さ」が0.08mmの「折り曲げ線」を刻設した場合は、上記特定要件(1)及び(2)を満足しないことから、同一の物であるにもかかわらず、訂正発明1,2の範囲外となり、また、同「比較例1」記載の「谷部の深さC」が0.1mmであるブレードであっても、「ポリエチレンテレフタレートからなる厚さ0.2mmのシート材」に、例えば、「底深さ」が0.05mmの「折り曲げ線」を刻設した場合は、上記特定要(1)及び(2)を満足することとなり、同一の物であるにもかかわらず、訂正発明1,2の範囲内となると認めざるを得ない。
以上のとおり、「折り曲げ線刻設用ブレード」に係る訂正発明1,2は物の発明であるにもかかわらず、上記特定要件(1)及び(2)によっては、訂正発明1,2に係る物の形状乃至構造を把握することはできないことから、訂正発明1,2に属する物と属しない物との区別が明らかでなく、結局、訂正発明1,2の内包及び外延がともに不明瞭である。
従って、訂正発明1,2は明確でない。
よって、訂正明細書の請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」

(2-2)平成12年9月22日付け意見書の記載内容(抜粋)
本件特許権者は、「解説 平成6年法改正特許法の運用」(特許庁審査基準室編集、社団法人発明協会発行)を「参考資料1」とし、その記載内容を引用しつつ、概略、次のとおり主張している。
(a)「そこで、かかる背景の下、上記参考資料1を参照して特許法第36条第6項第2号の規定を解釈すると、同号の「特許を受けようとする発明が明確であること」とは、
i)特許請求の範囲に記載した技術思想たる発明の技術的意義、即ち、意味内容が明確であること、且つ、
ii)発明の外延が明確であること、即ち、技術的思想が適用される事物の範囲が明確であること、
を意味するものと理解される。」(第6頁10〜17行)
(b)「また、同39頁には、本号適用の留意事項として、『出願人が請求項において特許を受けようとする発明について記載するにあたっては、旧法の下で許容されていた記載方法に加え、発明の構成にとらわれない表現方法を採用しうるようにすることが適切である。このことから、「物(有体物すなわち一定の物理的存在)の発明」の場合に、発明を特定するための事項として物の結合や物の構造の表現形式を用いることができることはもちろんのこと、作用・機能・性質・方法・用途・使用目的その他さまざまな事項を用いて物を特定することも、第36条第4項及び第6項の要件を満たす限り認められるべきものである。』と記載されている通りである。」(第7頁15〜25行)
(c)「かかる記載からすれば、本件訂正発明1,2は、いずれの技術的事項についても、その意味の不明瞭なものは無く、当業者がその意味,内容を極めて正確に理解できるものと思料する。」(第8頁下5〜3行)
(d)「したがって・・突条間の谷部の深さが所定に形成された折り曲げ線刻設用ブレードであっても、
a)前記プラスチックシートに刻設される圧痕深さとの相対関係において、突条間の谷部深さが圧痕の2〜4倍の深さに形成され、この谷部深さの1/4〜1/2の深さの圧痕がプラスチックシートに形成されるように使用されるブレードの場合には、当該訂正発明1の技術的範囲に属し、
b)上記谷部深さの1/4より浅い、又は1/2より深い深さの圧痕がプラスチックシートに形成されるように使用されるブレードの場合には、当該技術範囲に属さない。
このように、本件訂正発明1の外延、即ち当該発明の技術的思想が適用される事物の範囲は極めて明確である。」(第9頁11〜27行)
(e)「また、本件訂正発明1,2は、その谷部の深さを、ある具体的な特定の寸法とすることにより、その顕著且つ特有の効果を奏するものではなく、プラスチックシートに形成される圧痕深さとの相対的な関係によって決定される谷部の深さを、前記圧痕深さの2〜4倍とするという中核的な技術思想によって、顕著且つ特有の効果を奏するものである。
本件訂正発明1,2は、その技術的思想が当該物と特定の関係を有する他の物との関係においてはじめて成立するものであるが、発明が具体的な有体物を離れた技術的思想である以上、このようなことがあるのは当然のことであり、物の発明の場合に、その具体的な構成が、その物自体から特定されなければならないとするには、物の発明をあまりに狭く解釈するものであって、発明を技術的思想としてではなく、他のものとは切り離され、独立して存在する具体的な有体物として捉えんとすることに他ならないものである。」(第12頁3〜17行)
(f)「そもそも、技術的思想たる発明は、それ自体は抽象的な概念であり、その実施において具体的な有体物として具現化されるにすぎないものである。したがって、発明が明確であるためには、抽象的な概念そのものが明確であれば足りることであり、有体物それ自体から特定されるのみならず、他の物との関係においてはじめて成立する発明の場合は、関係のある相手物との関係において具体的に把握されれば足りることである。この意味で、上述したように、本件訂正発明1,2に係る折り曲げ線刻設用ブレードの「谷部の深さ」は、プラスチックシートに形成される圧痕との関係において、極めて具体的且つ明確にこれを把握することができる。」(第13頁6〜16行)
(g)「即ち、審判官は、同じ寸法のブレードが、本件訂正発明1,2の技術的範囲に属したり、属しなかったりすることに着目して、本件訂正発明1,2が具体的でないと認定しているが、これは・・なる構成要件を無視した認定であり、かかる要件を含まない、本件訂正発明1,2に係る折り曲げ線刻設用ブレードの未使用状態において、当該発明に属する事物が不明確であるとしているのである。」(第14頁3〜13行)
(h)「本件訂正発明1,2に係る折り曲げ線刻設用ブレードは、元来、折り曲げ線を刻設する対象物たるプラスチックシートとの関係を無視して存在できないものであり、当該技術分野においても、まず、包装材料となるプラスチックシートの材質や厚み等が設定され、次に、実用上これを容易に折り曲げ得る折り曲げ線(圧痕)の形状等(溝幅、溝深さなどの寸法)が設計,設定され、次いで、設定された折り曲げ線(圧痕)をプラスチックシートに刻設し得る折り曲げ線刻設用ブレードが、設計,設定される。
このように、本件訂正発明1,2に係る折り曲げ線刻設用ブレードは、プラスチックシートに形成される圧痕と極めて深い関係を有しているのであり、その「谷部深さ」と「圧痕深さ」との関係をもって特定したとしても、当業者であれば、その意味するところを極めて明確に理解することができ、これが適用される限界をもまた、明確に理解することができる。
したがって、本件特許が維持されることによって、第三者が不足の不利益を受けることは断じてあり得ない。」(第14頁下4行〜第15頁13行)
(i)「以上、詳述したように、審判官は、本件訂正発明1,2にかかる技術的事項の解釈にあたり、特許請求の範囲に記載した事項の一部を無視してこれを解釈する一方、特許法第36条第6項第2号の規定の解釈にあたっては、物の発明の場合に当該物自体からその形状乃至構造を特定しなければならないとして、その解釈を誤っており、したがって、上記認定には誤りがあると言わざるを得ない。」(第16頁11〜17行)

(2-3)特許権者の主張についての検討・判断
(ア)「発明」が技術的思想の創作であることは、特許法が定めるとおりである。また、「発明」は、「物の発明」、「方法の発明」及び「物を生産する発明」のいずれかのカテゴリーに属するものであることについても、同様である。特許法第2条第3項は、前記カテゴリー別に「実施」に係る行為を定めている。そして、同法第36条第5項では、「特許請求の範囲には・・特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項の全てを記載しなければならない。」と規定されていることから、「特許を受けようとする発明」を、前記カテゴリーのいずれのものとして記載するかは、特許出願人に委ねられていると解される。ただし、同法同条第6項第2号の規定により、特許請求の範囲には「特許を受けようとする発明」が「明確」に記載されていなければならない。
また、「物(有体物すなわち一定の物理的存在)の発明」の場合に、発明を特定するための事項として物の結合や物の構造の表現形式を用いることができることはもちろんのこと、作用・機能・性質・方法・用途・使用目的その他さまざまな事項を用いて物を特定することも、第36条第4項及び第6項の要件を満たす限り認められるべきものである点については、上記(2-2)(b)で特許権者が引用しているとおりである。しかしながら、当然のことであるが、第36条第6項第2号の規定により、特許請求の範囲には特許を受けようとする発明は明確に記載されていなければならないから、作用・機能・性質・方法・用途・使用目的その他さまざまな事項を用いて物を特定する場合も、特許を受けようとする発明が明確である限りにおいて認められるべきものである。
次に、「物」の発明の場合に、特許請求の範囲は、その「物」の技術的範囲が定められるように記載されていなければ、「明確」とはいえない。すなわち、特許を受けようとする「物」と他の「物」(例えば、当該特許出願前に公知である「物」)との区別(自他識別性)が明らかでなければならず、この場合、「物」自体を比較して、その異同が当業者にとって明らかである必要がある。

(イ)特許権者は、上記(2-2)(e)、(h)等のとおり、本件訂正発明1,2の技術思想は、客体である「プラスチックフィルム」及びそれに形成される「圧痕」と、主体である「折り曲げ線刻設用ブレード」との相対的関係にある旨、主張していると解される。
しかし、特許権者は、訂正明細書の請求項1,2のとおり、それを「折り曲げ線刻設用ブレード」、すなわち、「物」のカテゴリーに属する発明として記載する選択をしたのであり、したがって、訂正明細書の請求項1,2には、当然のことながら、本件訂正発明1,2に係る「物」が明確に記載されていなければならない。
そこで、訂正発明1,2は、訂正明細書の請求項1,2記載の事項によって特定された「物」であるが、その特定事項中の、(A)「折り曲げ線刻設用ブレード」の構造である「突条間の谷部の深さ」が、「折り曲げ線刻設用ブレード」を用いて「前記プラスチックシートに刻設される圧痕深さの2〜4倍の深さに形成され」との事項、及び、(B)「折り曲げ線刻設用ブレード」が「前記プラスチックシートに押圧されたときに、前記谷部の深さの1/4〜1/2の深さの圧痕が前記プラスチックシートに形成されるように使用されること」との事項について検討する。
上記(A)の事項に関し、本件訂正明細書の記載からは「前記プラスチックシートに刻設される圧痕深さ」が予め設定されるものであるか、明りょうでないが、仮に、所望の「圧痕深さ」に適宜設定されるものであるとした場合に、「折り曲げ線刻設用ブレード」の構造である「突条間の谷部の深さ」が一定に定まらないことになる。すなわち、客体の条件設定如何によって、主体である「物」の構成が変化ないし左右されるのであってみれば、該主体である「物」自体が明確に特定されているとはいえないことになる。
次に、上記(B)の事項に関し、「・・ように使用されること」との要件は、「折り曲げ線刻設用ブレード」自体の形状、構造、状態、性状等を何ら規定するものでなく、「突条間の谷部の深さ」のみならず、「折り曲げ線刻設用ブレード」、すなわち「物」自体を何ら特定するものではない。
この点に関し、特許権者は、本件訂正発明1,2に係る「物」の技術的範囲について、上記(2-2)(d)のとおり「当該発明の技術的思想が適用される事物の範囲は極めて明確である。」と主張し、また、(g)のとおり「本件訂正発明1,2に係る折り曲げ線刻設用ブレードの未使用状態において、当該発明に属する事物が」明確か否か判断するのは、誤りである旨、主張している。
このことは、本件訂正発明1,2に係る「折り曲げ線刻設用ブレード」が、実際に使用されていたとしても、その実際に使用されている「折り曲げ線刻設用ブレード」に係る物品自体の形状、構造、状態、性状等をもってしては、本件訂正発明1,2の技術的範囲に入るか否か全く不明であり、その物品が使用されても、「プラスチックシートに押圧されたときに、前記谷部の深さの1/4〜1/2の深さの圧痕が前記プラスチックシートに形成されるように使用」されなければ、本件訂正発明1,2の技術的範囲には入らず、一方、「プラスチックシートに押圧されたときに、前記谷部の深さの1/4〜1/2の深さの圧痕が前記プラスチックシートに形成されるように使用」されるとの条件を満たした時に、また、そのように「使用」されたことが明らかになった時に、はじめて本件訂正発明1,2の技術的範囲に含まれるということになる。更に、仮に、上記(A)及び(B)の特定事項を除く「折り曲げ線刻設用ブレード」が、本件特許出願前に公知であったとしても、それを「プラスチックシートに押圧されたときに、前記谷部の深さの1/4〜1/2の深さの圧痕が前記プラスチックシートに形成されるように使用する」と、本件訂正発明1,2の技術的範囲に含まれることとなる。このように、上記(A)及び(B)の事項で特定された本件訂正発明1,2は「物」の発明であるにも拘わらず、その「物」自体では自他識別性はないものであるから、その「物」に係る発明が明確であるとは、到底いえない。しかも、「物」の発明である以上、権利行使の対象は、「使用行為」ではなく、あくまでも前記「使用」に至った特定物品であることは明らかであってみれば、上記(h)の特許権者による「したがって、本件特許が維持されることによって、第三者が不足(「不測」の誤り?)の不利益を受けることは断じてあり得ない。」との主張を肯定することはできない。
したがって、本件訂正発明1,2は明確でない。
よって、訂正明細書の請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法120条の4第3項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しない。
よって、当該訂正は認められない。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)申立人三菱樹脂株式会社は、甲第1号証(特開平1-136720号公報)及び甲第2号証(実公昭61-39544号公報)を提示して、本件請求項1,2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号の規定により、または、甲第1,2に記載された発明、考案に基づいて、当業者が容易に想到し得た発明であるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである旨、主張している。

(2)本件請求項1,2に係る発明
上記2.記載のように、訂正は認められないから、本件請求項1,2に係る発明は、訂正前の本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】
「一体的に形成した2本の平行な突条からなる刃先を備え、該刃先をプラスチックシートに押圧して2本の折り曲げ線を刻設するプレス用のブレードであって、前記2本の突条間の谷部の深さを、プラスチックシートに刻設される圧痕の深さの2〜4倍の深さとしたことを特徴とする折り曲げ線刻設用ブレード。」
【請求項2】
「1本の突条からなる刃先を備えたブレードの2枚を重ね合わせて形成され、前記刃先をプラスチックシートに押圧して2本の折り曲げ線を刻設するように設けた一組のプレス用ブレードであって、前記2枚のブレードによって形成される2本の突条間の谷部の深さを、プラスチックシートに刻設される圧痕深さの2〜4倍の深さとしたことを特徴とする折り曲げ線刻設用ブレード。」

(3)取消理由通知
当審が、平成12年3月23日付けで通知した取消理由の内容は、次のとおりである。
「特許法第36条第6項第2号違反について
請求項1,2に係る発明は、シートに刻設される圧痕の深さを用いて、物としてのブレードを特定したものであるが、その圧痕の深さは、ブレード自体に具わっている特性等ではなく、当業者が、シートの厚さの範囲内で適宜設定し、刻設し得るような不特定な要件であるから、このような要件を用いて特定される請求項1,2に係る発明は、明確であるとはいえない。
よって、請求項1,2に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである。」
そして、当該取消理由は妥当なものと認められるから、申立人の上記主張を検討する必要はないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるので、請求項1,2に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第1項第4号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-01-30 
出願番号 特願平10-12061
審決分類 P 1 651・ 532- ZB (B29C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 早野 公惠  
特許庁審判長 藤井 彰
特許庁審判官 石井 克彦
山口 昭則
登録日 1998-11-20 
登録番号 特許第2855118号(P2855118)
権利者 トーイン株式会社 鐘紡株式会社 カネボウ化成株式会社
発明の名称 折り曲げ線刻設用ブレード  
代理人 村上 智司  
代理人 橋本 清  
代理人 竹内 三郎  
代理人 村上 智司  
代理人 村上 智司  

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