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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B29C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
審判 一部申し立て 1項1号公知  B29C
審判 一部申し立て 1項2号公然実施  B29C
管理番号 1039289
異議申立番号 異議2000-74217  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-04-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-22 
確定日 2001-05-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第3044027号「射出成形による樹脂成形品の生産方法」の請求項1、2、5、7〜9、11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3044027号の請求項1、2、5、7〜9、11に係る特許を維持する。 
理由 1、本件発明
本件特許第3044027号の発明(平成10年12月25日出願 、平成10年8月12日国内優先権主張、平成12年3月10日設定登録。)は、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1〜13に記載された下記のものと認める。
【請求項1】対向配置した雄金型と雌金型との間の空間部に、溶融した樹脂を注入孔を介して注入し、該樹脂を固化させて成形品を形成する、射出成形による樹脂成形品の生産方法であって、前記空間部を、前記成形品の外形に適合させて複数並設した成形空間部と、該複数の成形空間部及び前記注入孔に連通するもので前記複数の成形空間部の全周を囲む補助空間部とから構成する第1のステップと、溶融した樹脂を前記補助空間部に前記注入孔を介して注入する第2のステップと、前記樹脂を前記複数の成形空間部各々に前記補助空間部を介して注入する第3のステップとを備えることを特徴とする射出成形による樹脂成形品の生産方法。
【請求項2】前記第1のステップにおいて、前記複数並設させた成形空間部の相互間に前記補助空間部が配置され該補助空間部にて前記複数並設させた各成形空間部の全周を囲んでなることを特徴とする請求項1に記載の射出成形による樹脂成形品の生産方法。
【請求項3】前記第1のステップにおいて、前記補助空間部には、該補助空間部の厚みを増すことにより該補助空間部内における前記樹脂の流動を促進する流動促進部を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形による樹脂成形品の生産方法。
【請求項4】前記第1のステップにおいて 前記補助空間部には、該補助空間部の厚みを減らすことにより該補助空間部内における前記樹脂の流動を規制する流動規制部を設けることを特徴とする請求項1乃至3に記載の射出成形による樹脂成形品の生産方法。
【請求項5】前記第1のステップにおいて、前記補助空間部には、該補助空間部及び前記成形空間部の位置を規制するための位置決め孔を形成する位置決め部を設けることを特徴とする請求項1乃至4に記載の射出成形による樹脂成形品の生産方法。
【請求項6】前記第1のステップにおいて、前記成形空間部内及び前記補助空間部内のガスを前記空間部外に排出するためのエアベントを前記補助空間部に連通して形成することを特徴とする請求項1乃至5に記載の射出成形による樹脂成形品の生産方法。
【請求項7】前請第1のステップにおいて、前記雄金型と前記雌金型との接触面を前記補助空間部の側方にのみ位置させることを特徴とする請求項1乃至6に記載の射出成形による樹脂成形品の生産方法。
【請求項8】前記第3のステップの後、前記補助空間部内に突出しピンを挿入し、前記成形空間部内及び前記補助空間部内において固化した樹脂を離型する第4のステップを備えることを特徴とする請求項1乃至7に記載の射出成形による樹脂成形品の生産方法。
【請求項9】前記第4のステップの後、前記成形空間部及び補助空間部の外部へ排出した樹脂を基台上に配置すると共に、該基台上に設けたガイド突起を前記位置決め部にて形成した位置決め孔に挿入することにより前記樹脂と前記基台との相対位置を固定する第5のステップを備え、前記基台には前記成形空間部に対応した形状のブロック部を上下動自在に設け、該ブロック部の上下動にて前記成形空間部内に注入され固化した樹脂の前記基台上における上下位置を調整自在としたことを特徴とする請求項8に記載の射出成形による樹脂成形品の生産方法。
【請求項10】前記樹脂は多面付けにて形成され、前記第5のステップの後、前記基台に配置された前記樹脂に対して所定の表面処理及び又は裏面処理を多面的に施す第6のステップ、及び又は前記基台に配置された前記樹脂を所定寸法に多面的に切断する第7のステップを備えたことを特徴とする請求項9に記載の射出成形による樹脂成形品の生産方法。
【請求項11】前記第7のステップにおいて、前記樹脂は、前記成形空間部内に注入され固化した成形品と、前記補助空間部内に注入され固化した補助樹脂とに分離されることを特徴とする請求項10に記載の射出成形による樹脂成形品の生産方法。
【請求項12】前記第7のステップにおいて、前記多面切断をレーザにて行うことを特徴とする請求項10又は11に記載の射出成形による樹脂成形品の生産方法。
【請求項13】前記第6のステップの前後いずれかにおいて、接着層と剥離紙からなる剥離シートを前記接着層を介して前記樹脂の裏面に接着し、前記第7のステップにおいて、前記剥離紙を残した状態で前記樹脂を切断することを特徴とする請求項10又は11に記載の射出成形による樹脂成形品の生産方法。
(本件請求項1〜13の発明を、以下、順次「本件発明1」、「本件発明2」などという)

2、特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人 株式会社トウ・プラス、株式会社東洋マーク及び有限会社メイテックジャパン(以下、「申立人」という)は、証拠として甲第1〜4号証を提出し、上記本件請求項記載の発明のうち、請求項1、2、5、7〜9及び11の発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証刊行物に記載された発明と同一の発明であり(主張1)、また、本件請求項1の発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証刊行物に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり(主張2)、さらに、本件請求項1の発明は、甲第3号証からみて、本件出願前に公然知られ、また、公然実施された発明である(主張3)から、本件請求項1、2、5、7〜9及び11に係る特許は特許法第29条第1項第1〜3号又は同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって取り消されるべきものである旨の主張(特許異議申立書第12頁4〜17行)をしている。

3、申立人が提出した甲各号証記載の発明
甲第1号証:特開平9-48044号公報
「合成樹脂成形品に、その成形型内部で表面被覆を施すために、成形型内に被覆剤を注入する手段を装備してなる射出成形金型において、上記成形型は、少なくとも2つに分割可能な型部材より構成され、両型部材のパーティング面には、主キャビテイ全周に亘り、主キャビテイに連通した補助キャビティが有り、該補助キャビテイの厚さが、3.0mm以下、好ましくは、1.0mm以下であることを特徴とする金型内被覆成形用金型」(特許請求の範囲請求項1)
甲第2号証:特開平6一320578号公報
「固定側ベースプレートを有する固定側金型と、可動側ベースプレートを有し、上記固定側金型に対し型開き位置と型閉じ位置との間を移動可能な可動側金型と、上記固定側ベースプレートまたは上記可動側ベースプレートの少なくとも一方のベースプレートにその厚み方向に形成してある複数のカセット式金型取付け凹部と、上記両金型の型開き状態において、上記カセット式金型取付け凹部内に挿脱可能なカセット式金型と、上記カセット式金型取付け凹部が形成してあるベースプレートの、他方のベースプレートに対する対向面に形成してあるキー溝と、上記キー溝に挿脱され、上記キー溝への挿入状態で上記カセット式金型取付け凹部内の上記カセット式金型の係止部を係止して当該カセット式金型を離脱不能に固定する固定キーとを備え上記固定キーは、上記ベースプレートの上記対向面上に保持されることを特徴とする射出成形金型装置」(特許請求の範囲請求項1)
甲第3号証:
甲第3号証の1;松下通信工業株式会社に対するNTTDoCoMo POCKET BELL商品に関する確認願(兼確認書)
甲第3号証の2;量産用展開図(図名LCD‐PLATE図番5P10066A 日付1991.10.26)
甲第3号証の3;松下通信工業株式会社作成図面1枚
甲第4号証:特開平7-246639号公報
「ランナー(3)の終端が大断面積のサイドゲート(4)を介して、成形用空洞に連通するモールド金型において、型開き時に、成形品イジェクタピン(31)及びランナイジェクタピン(32)の前進に先立って前進するゲートカットピン(40)を備え、該ゲートカットピン(40)は、型閉め時には、該ゲートカットピン(40)の先端の刃先部が該サイドゲート(4)に対応する個所に後退しており、型開き時に前進して、該刃先部が該サイドゲート(4)内に進出するものであることを特徴とするモールド金型。」(特許請求の範囲請求項1)

4、対比・判断
(1)主張1に対して
(本件発明1に対して)
本件発明1は、対向配置した雄金型と雌金型との間の空間部に、溶融した樹脂を注入孔を介して注入し、該樹脂を固化させて成形品を形成する、射出成形による樹脂成形品の生産方法において、空間部を複数並設した成形空間部とこの成形空間部の全周を囲む補助空間部とから構成し、「溶融した樹脂を注入孔から補助空間部に注入し、樹脂を補助空間部を介して成形空間部各々に注入する」ことを構成要件の一つとするものである。
これに対して、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明においては、かかる構成要件を備えるものではなく、それを示唆する記載もない。
すなわち、甲第1号証の発明は、両型部材のパーティング面に主キャビテイ全周に亘り、主キャビテイに連通した補助キャビティが有るけれども、溶融樹脂は補助キャビティではなく主キャビティに注入するものであって、溶融樹脂を注入孔から補助空間部に注入する本件発明1とは相違するものである。
甲第2号証及び甲第4号証の発明においては、対向配置した雄金型と雌金型との間の空間部に複数並設した成形空間部は形成されているけれども、この成形空間部の全周を囲む補助空間部が形成されいるとは認められず、そもそも空間部の構造が本件発明1とは相違するものである。
したがって、本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明と同一の発明であるとは認められない。
(本件発明2、5、7〜9及び11に対して)
本件発明2、5、7〜9及び11は本件発明1に対してさらに技術的限定を付加したものであるから、本件発明2、5、7〜9及び11は、上記(本件発明1に対して)の項に記載した理由と同じ理由により甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明と同一の発明であるとは認められない。
(2)主張2に対して
本件発明1は、「溶融した樹脂を注入孔から補助空間部に注入し、樹脂を補助空間部を介して成形空間部各々に注入する」ことを構成要件の一つとするものであるが、上記のとおり甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明は、かかる構成要件をを示唆するものではない。
そして、本件発明1は、特許請求の範囲第1項に記載された構成を具備することにより、「複数の成形空間部のあらゆる方向から該成形空間部に対して樹脂が流入可能となり、成形空間部が薄厚であっても該成形空間部内に樹脂を均一に流入させることが容易に可能となるので、薄厚成形品の効率の良い射出成形が可能となる」などの本件発明1特有の効果を奏し得ているものと認められる。
したがって、本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(3)主張3に対して
申立人は、本件発明1は、甲第3号証からみて、本件出願前に公然知られ、また、公然実施された発明であるとの主張をしている。
具体的には、申立人は、甲第3号証を挙げて、
「株式会社トウ・プラスは、量産用展開図(図名LCD‐PLATE図番5P10066A日付1991.10.26)を松下通信工業株式会社に対して製造して、販売することにより1992年3月から1996年6月において公然実施しており、甲第3号証の2は、株式会社トウ・プラスが松下通信工業株式会社の図面を受けて作成した量産用展開図(図名LCD‐PLATE図番5P10066A 日付1991.10.26)であるとし、
甲第3号証の2(量産用展開図(図名LCD‐PLATE図番5P10066A日付1991.10.26))において、
ア.「複数の成形空間部」および「前記注入孔に連通するもので前記複数の成形空間部の全周を囲む補助空間部」が図面に開示されている
イ.量産用展開図(部品NO.5P10066A)に示すとおり、「溶融した樹脂」を「補助空間部」に「注入孔」を「介して注入する」ことが開示されている
ウ.量産用展開図(部品NO.5P10066A)に示すとおり、「樹脂」を「複数の成形空間部」各々に「補助空間部」を介して「注入する」ことが開示されている
エ.量産用展開図(部品NO.5P10066A)に示されるものは、「複数の成形空間部」および「前記注入孔に連通するもので前記複数の成形空間部の全周を囲む補助空間部」から構成されている旨の主張(特許異議申立書第18頁7行〜第19頁1行)をしている。
しかしながら、甲第3号証の2である量産用展開図(部品NO.5P10066A)に本件発明1の「補助空間部」が記載されているといは認められないから、申立人の上記ア〜エの主張は採用できない。
すなわち、該図面の中央に記載されているものは、多数枚取りの成形金型を用いて成形された多数枚取りの成形品であるとは推定できるけれども、一つ一つの成形品の周囲に「補助空間部によって作られた部分」が存在しているとは認め難い。
第3号証の2の図面には、一つ一つの成形品の周囲に斜線の施された枠状の部分がみられるが、この部分は甲第3号証の3における成形品の寸法及び印刷部分の指定の記載からみて、印刷が施された成形品本体の一部であると認められ、この斜線の施された枠状の部分が「補助空間部によって作られた部分」(本件発明1では、「補助空間部によって作られた部分」は成形品本体を構成するものではない)であるとは認められない。
さらに、一般的にいって、製造された成形品自体が公然知られていたとしても、その成形品の製造方法までが直ちに公然知られたもの、または、公然実施されたものであるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第3号証をもってしては本件出願前に公然知られ、または、公然実施された発明であるとすることはできない。

5、むすび
上記のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1、2、5、7〜9及び11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、5、7〜9及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-04-17 
出願番号 特願平10-369130
審決分類 P 1 652・ 121- Y (B29C)
P 1 652・ 112- Y (B29C)
P 1 652・ 111- Y (B29C)
P 1 652・ 113- Y (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加藤 友也  
特許庁審判長 藤井 彰
特許庁審判官 喜納 稔
石井 克彦
登録日 2000-03-10 
登録番号 特許第3044027号(P3044027)
権利者 新光ネームプレート株式会社
発明の名称 射出成形による樹脂成形品の生産方法  
代理人 浜田 治雄  
代理人 村田 幹雄  
代理人 浜田 治雄  
代理人 浜田 治雄  

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