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審決分類 審判 一部無効 判示事項別分類コード:なし 無効とする。(申立て全部成立) A23L
審判 一部無効 特29条の2 無効とする。(申立て全部成立) B65B
管理番号 1040900
審判番号 無効2000-35481  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-09-05 
確定日 2001-06-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第2637893号発明「掛棒麺の包装用コンベア装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2637893号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2637893号に係る発明についての出願は、平成5年5月14日に特許出願され、平成9年4月25日にその請求項1乃至3についての発明について設定登録がなされた。
平成12年9月5日に本件無効審判が請求され、平成12年11月14日に被請求人から答弁書が提出され、平成13年2月20日に請求人から弁駁書が提出された。
平成13年3月22日に請求人の主張及び被請求人の反論における論点を整理するため口頭審理を行った。同日付で請求人は口頭審理陳述要領書を提出し、平成13年3月30日に口頭審理時に提示した資料を上申書として提出した。

2.本件特許発明
本件特許第2637893号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「(A-1)多数の掛棒麺がスロープ面で近接した状態に集合待機している掛棒スロープ1
(A-2)に近接してその先端の掛棒麺を一本宛所定間隔で捕捉する爪コンベア2、
(B)及び、これと同期して移動する麺の平ベルトコンベアからなる整列コンベア3と、
(C)前記爪コンベア2から突出した掛棒4を挾着して整列コンベア3から斜め前方に設置され、かつ前記掛棒4を爪コンベア2の進行方向とほぼ直角方向に引き抜くように同期して移動する掛棒引抜きコンベア5とからなることを特徴とする
(D)掛棒麺の包装用コンベア装置。」
ただし、(A-1)、(A-2)、(B)、(C)、(D)の符号は分説のために当審が付したものである。

3.請求人の主張
請求人は、甲第1号証及び甲第2号証を提示して、上記結論と同趣旨の審決を求めた。その理由は次の2つである。
1)本件特許発明は甲第1号証(特願平5-81918号(平成5年4月8日出願)の公開公報である特開平6-296451号公報(平成6年10月25日公開))の明細書または図面に記載された発明と同一であり、しかも本件特許出願の際出願人が同一でなく、しかも発明者が同一でないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。(以下、「請求理由1」という。)
2)本件特許発明は本件特許出願前頒布された甲第2号証(特開平1-165331号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものである。(以下、「請求理由2」という。)
3-1.請求理由1に関する請求人の主張
甲第1号証により特定される先願明細書または図面(以下、引用例1という。)には、本件特許発明における構成(B),(C),(D)がすべて記載されている。本件特許発明の構成A-2の「掛棒スロープ1に近接してその先端の掛棒麺を一本宛所定間隔で捕捉する爪コンベア2」は、引用例1における回動チェン14,14と実質的に同一である。そして、先願明細書の段落【0046】の「棒受体8,8の先端側を搬送装置2の上側部に近接させると共に、同棒受体8,8を麺搬送棒3の搬送方向に対して下り勾配として」という記載からみて本件特許発明の構成(A-1)の内、「スロープ」は先願明細書の「棒受体」に相当し、この棒受体においても麺搬送棒3を多数集合待機させることは可能であり、しかも、麺搬送棒をスロープ上に集合待機させることは周知の技術であるから、構成(A-1)も先願明細書または図面に記載されているに等しい事項である。
3-2.請求理由2に関する請求人の主張
本件特許発明と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、本件特許発明では、斜めに前進するのが掛け麺引抜きコンベアの掛棒の端を挟着した部分であるのに対し、甲第2号証では、麺線を斜めに前進させるようにしている点で異なっている。しかしながら、甲第2号証の麺線に代えて、本件特許発明のように掛棒を斜めに前進させる構成を採用しても麺線から掛棒を抜取れることは当業者が明らかに見て取れるものであり、掛棒を斜めに前進させるために掛棒の端を挟着するベルトコンベアを斜め前方に設置することは容易である。

4.被請求人の反論
被請求人は、乙第1号証(本件特許公報)を提示し、本件審判の請求は成立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めた。
4-1.請求理由1に対する被請求人の反論
引用例1と本件特許発明とを対比すると、本件特許発明の構成(B)、(C)、(D)において相違しないことは認める。(この点は平成13年3月22日口頭審理において確認された。)しかし、本件特許発明の構成(A-1)における掛棒スロープは引用例1の段差部aとは機能、構成の異なるものである。すなわち、引用例1の明細書の記載からみて、段差部aに傾斜配置した左右の棒受体8,8は麺搬送棒3を一本宛滑降させて麺剥離用の回転ローラ9,9に給送させるためのものであり、棒受体8,8は回転ローラ9,9及びロッド11aと共に麺剥離装置の重要な構成要素をなすものであり、麺搬送棒を集合待機させることのできないものであって、本件特許発明の「掛棒スロープ」とは機能及び構造の全く異なるものである。また、本件特許発明においては、集合待機された掛棒麺の先端の掛棒麺を爪コンベアで捕捉できるという引用例1とは異なる作用を有する。
4-2.請求理由2に対する被請求人の反論
本件特許発明と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、請求人の主張する相違点以外に、本件特許発明における構成(A-1)、(A-2)及び(B)を甲第2号証に記載された発明は有していないという相違点があり、この相違点により本件特許発明は進歩性を有する。

5.当審の判断
まず、請求理由1について検討する。
特願平5-81918号の出願当初の明細書及び図面は、補正されることなく甲第1号証である特開平6-296451号公報として出願公開されているから、特許法第29条の2第1項の規定により引用される発明は、甲第1号証に記載された発明である。(この点は、平成13年3月22日口頭審理において確認された。)
甲第1号証には図面とともに次の記載がある。
[記載1]
「さらに、自動製麺機1には、図2に示すように、麺4を袋に収納する包装工程へ搬出するための搬出装置6とを配設しており、同搬出装置6により麺4を1袋分づつにまとめて包装工程へ搬出し、包装袋に収納し易くしている。」(明細書の段落0021)
[記載2]
「ベルト移動装置12は、図1、図3及び図4に示すように、長手方向の基台bの両側部に、麺剥離装置7から受け渡された麺搬送棒3を支持する為の一対の回動チェン14,14 を回動自在に配設すると共に、同回動チェン14,14 の間で上記剥離装置7と間隔をあけ、コンベアベルト15を回動自在に配設して構成している。そして、上記回動チェン14,14 には、図1に示すようなアタッチメント14b を一定間隔で設けており、麺搬送棒3の両端を支持可能としている。従って、麺4が寝かされた状態となる当初、即ち、コンベアベルト15の基端に当接するときにも麺搬送棒3の両端がずれたりすることがない。また、コンベアベルト15は、麺搬送棒3に掛け下げられた麺4を寝かせた状態にして搬送できるようにしたものであり、同麺4を包装工程へ搬出する搬出装置6に移動させるものである。」(明細書の段落0025〜0027)
[記載3]
「図7に示すように、麺搬送棒3を挟持できるだけの間隙を設けて上下に対向状態に配設した上下棒把持用ベルトコンベア31,32 を、ベルト移動装置12の移動方向に対して、漸次、上記ベルト移動装置12から離隔する方向に配設し、同上下棒把持用ベルトコンベア31,32 の先端をベルト移動装置12のコンベアベルト15側に臨ませている。上記した位置に麺搬送棒3が搬送されると、同上下棒把持用ベルトコンベア31,32 により麺搬送棒3の一端を挟持することができ、しかも、同ベルトコンベア31, 32により麺搬送棒3を斜め前方へ、ベルト移動装置12から離隔する方向へ平行移動するので、麺搬送棒3を麺4より搬送方向に対して直角方向へ引き抜くことができる。」(明細書の段落0069〜0070)
[記載4]
「図1に示すように、麺搬送装置2の終端部に段差部aを設け、同段差部aに麺搬送棒3の両端部を支持する左右の棒受体8,8 を傾斜状態に配設し、麺搬送装置2から受け渡された麺搬送棒3を各棒受体8,8 上に沿って滑降させるようにしている。」(明細書の段落0044)
[記載5]
「即ち、左右の棒受体8,8 は、図1に示すように、段差部aの段差方向に配設しており、長手状に形成して麺搬送棒3の両端部を支持可能とし、しかも、棒受体8,8 の先端側を搬送装置2の上側部に近接させると共に、同棒受体8,8 を麺搬送棒3の搬送方向に対して下り勾配として、同棒受体8,8 の上面8a,8a に沿って麺搬送棒3を回転ローラ9,9 の方向に滑降させるようにしている。」(明細書の段落0046)
[記載6]
「図1及び図3において、11,11 は各棒受体8,8 上に配設された伸縮自在の左右のシリンダであり、同シリンダ11,11 のロッド11a,11a を棒受体8,8 の中途部で回転ローラ9,9 側に進退自在に取付けている。そして、かかるロッド11a で同棒受体8,8 上を滑降してくる麺搬送棒3の両端部を受止め、同麺搬送棒3が搬送方向に対して真っ直ぐに回転ローラ9,9 側に移動可能としている。従って、麺搬送棒3は麺搬送装置2からいかなる態勢で滑降しても、一旦、上記ロッド11a,11a で受止めることにより、左右に配設した回転ローラ9,9 に同麺搬送棒3の左右両端が同時に揃った状態で移動されることになる。」(明細書の段落0050〜0051)
[記載7]
「各回転ローラ9,9 は、その中心部に回転軸9aが軸支されており、同回転軸9aに駆動モータ(図示せず)を連動連結し、同モータを駆動させて各回転ローラ9,9 の回転を行うようにしている。しかも、各回転ローラ9,9 の回転方向は、麺搬送棒3の搬送方向に対して逆方向(図3参照)とし、間隙10中に入り込んだ麺搬送棒3を搬送方向に回転させながら、棒受体8,8 の先方へ円滑に移動可能としている。」(明細書の段落0049)

ここで、記載1における「自動製麺機1」は、記載2にあるとおり麺搬送棒に掛け下げられた麺4を包装工程に搬出する搬出装置を有しており、本件特許発明における「掛棒麺の包装用コンベア装置」と相違しないから、本件特許発明の構成(D)は甲第1号証に記載されている。
記載3における上下棒把持用コンベアの構成は、本件特許発明における「掛棒引抜きコンベア」と相違せず、また、図7を参照すると、コンベアから突出した掛棒を挟着していることは明らかであるから、本件特許発明の構成(C)は甲第1号証に記載されている。
記載1におけるアタッチメント14Bは、図1を参照すると、「爪」と相違しないから、甲第1号証の回動チェン14は本件特許発明における「爪コンベア」と相違しない。そして、記載2にあるように2つの回動チェンの間に設けられたコンベアベルト15は麺4を寝かせた状態にして搬送させるのであるから、本件特許発明の「整列コンベア」と相違しない。甲第1号証のものでも、麺と掛棒とを同じ速度で移動させるためには回動チェンとコンベアベルト15は同期して移動させる必要があるから、本件特許発明の構成(B)は甲第1号証に記載されている。
記載4〜7及び甲第1号証の図1及び図5からみて、棒受体8は、スロープ面を有していることは明らかである。そのスロープ面には上方から順にシリンダのロッド、回転ローラが設けられており、そのスロープ面の下端は回動チェン近傍に達していると認められる。回転ローラと接触した麺搬送棒は先方(下方)に移動する(記載7及び図5参照。)ので、そのスロープ面における回転ローラと接触する部分においては、掛棒麺を近接した状態に集合待機させることは不可能と認められるが、この部分を除いたスロープ面においては、掛棒麺を近接した状態に集合待機させることが可能であることは明らかである。甲第1号証には、掛棒麺を近接した状態に集合待機させることの明示はないが、棒受体の下端近傍において常に1つの掛棒麺しか存在しないという運転状態を継続する必然性があるとも認められないから、通常の運転状態において、棒受体の下端近傍においては複数の掛棒麺が存在している状態になるということが甲第1号証から当業者が常識的に読みとれる範囲内の事項である。そして、この複数存在する掛棒麺は、構成(A-1)における「スロープ面で近接した状態に集合待機している」ものと相違しない。また、複数存在する掛棒麺と「多数の掛棒麺」という技術事項とを対比して、明確な区別が可能であるとは言えないから、この点で相違するとも言えない。したがって、そのスロープ面の下端近傍において多数の掛棒麺を近接した状態に集合待機させることは甲第1号証から当業者が常識的に読みとれる範囲内の事項であると認められる。したがって、本件特許発明の構成(A-1)も甲第1号証に開示されていることになる。
そうすると、甲第1号証の回動チェンは集合待機された麺搬送棒の先端の麺搬送棒を捕捉することになるから、本件特許発明の構成(A-2)も記載されていることになる。
結局、甲第1号証には本件特許発明の構成が全て開示されているのであるから、本件特許発明と甲第1号証の発明とは同一と言わざるを得ない。
なお、被請求人は、本件特許発明と甲第1号証とは異なった麺剥離技術を採用したために異なった構成となっていると主張(平成12年11月14日付け答弁書第4頁第23〜25行)している、すなわち、本件特許発明においては麺の剥離が後で行われるのでスロープ面は「多数の掛棒麺をスロープ面で近接した状態に単に集合待機させるもの」(平成12年11月14日付け答弁書第4頁第19〜21行)であって、甲第1号証のようにスロープ面において麺を剥離するものと相違すると主張している。しかしながら、スロープ面において集合待機以外の機能(たとえば、集合待機中に掛棒と麺とを剥離させる装置)を付加させたものも本件特許発明の技術的範囲に含まれるのであるから、この主張は請求項の記載に基づかない主張であり採用できない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本件の出願時に、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないから、本件特許発明は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。したがって、上記請求理由2について検討するまでもなく、特許第2637893号の請求項1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-04-16 
結審通知日 2001-04-25 
審決日 2001-05-08 
出願番号 特願平5-113046
審決分類 P 1 122・ - Z (A23L)
P 1 122・ 16- Z (B65B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池田 貴俊  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 門前 浩一
船越 巧子
登録日 1997-04-25 
登録番号 特許第2637893号(P2637893)
発明の名称 掛棒麺の包装用コンベア装置  
代理人 戸田 利雄  
代理人 戸田 利雄  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 内野 美洋  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 内野 美洋  

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