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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D21G
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  D21G
審判 全部申し立て 2項進歩性  D21G
管理番号 1041146
異議申立番号 異議1999-74669  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-07-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-14 
確定日 2001-01-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2904464号「製紙カレンダ用弾性ベルト」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2904464号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2904464号に係る出願は、平成4年12月29日に特許出願され、平成11年3月26日にその特許の設定登録がなされ、その後、松尾浩司及び穴見健策より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、再度取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成12年12月12日付けで訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2の1.訂正事項
(1)訂正事項1
【請求項1】の
「形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたことを特徴とする製紙カレンダ用弾性ベルト。」
との記載を、
「形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを、丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたことを特徴とする製紙カレンダ用弾性ベルト。」
と訂正する。(なお、前記「充填」の「填」は、実際のものと異なる。)
(2)訂正事項2-1
明細書段落【0009】(本件特許公報第4欄4〜12行)の
「【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明は、形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたことを特徴とする製紙カレンダ用弾性ベルトを提供するものである。」
との記載を、
「【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明は、形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを、丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたことを特徴とする製紙カレンダ用弾性ベルトを提供するものである。」
と訂正する。(なお、前記「充填」の「填」は、実際のものと異なる。)
(3)訂正事項2-2
明細書段落【0042】(同公報第10欄下3行〜第11欄11行)の
「【発明の効果】以上説明した如く、本発明に係る製紙カレンダ用弾性ベルトは、形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたので、基布と表裏両層の弾性樹脂層、及び基布を介して両層の弾性樹脂同士とが完全一体化する。従って、剥離や加圧変形を確実に防止できる。また、表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層の硬度は同じにすることも異ならせることもでき、また、両弾性樹脂の材質を異ならせることも自由にできるという優れた効果を奏するものである。」
との記載を、
「【発明の効果】以上説明した如く、本発明に係る製紙カレンダ用弾性ベルトは、形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを、丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたので、基布と表裏両層の弾性樹脂層、及び基布を介して両層の弾性樹脂同士とが完全一体化する。従って、剥離や加圧変形を確実に防止できる。また、表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層の硬度は同じにすることも異ならせることもでき、また、両弾性樹脂の材質を異ならせることも自由にできるという優れた効果を奏するものである。」
と訂正する。(なお、前記「充填」の「填」は、実際のものと異なる。)

2の2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否等
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の構成中の「基布」を「丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布」に限定するものである点で、特許請求の範囲の減縮に相当し、本件明細書段落【0017】(本件特許公報第5欄29〜35行)、段落【0021】(同公報第6欄12〜31行)、及び、【図1】(同公報第6頁)の記載からみて、新規事項の追加に該当せず、また、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。
(2)訂正事項2-1及び2-2について
訂正事項2-1及び2-2は、訂正事項1に伴い必要となる、明細書中の明りょうでない記載の釈明に相当すると認められ、新規事項の追加に該当せず、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2の3.独立特許要件の判断
(1)訂正発明
上記訂正の結果、本件請求項1係る発明(以下、「本件訂正発明」という。)は、上記訂正明細書の請求項1記載された次のとおりのものである。

「形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを、丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたことを特徴とする製紙カレンダ用弾性ベルト。」
(なお、上記「充填」の「填」は、実際のものと異なる。)
(2)取消理由(平成12年9月28日付け)の概要
(2-1)本件訂正前明細書の請求項1に係る発明は、本件訂正前明細書の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたことを特徴とする製紙カレンダ用弾性ベルト。」

(2-2)これに対して、取消理由(平成12年9月28日付け)の概要は次のとおりである。
「本件の請求項1に係る特許は、特許明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項(平成2年法)に規定する要件を満たしていないので、特許法第113条第1項第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

1.本件特許明細書の記載
(1)請求項1には、次のとおり記載されている。
(略)
(2)【発明の効果】(段落【0042】)には、次のとおり記載されている。
(略)
(3)【実施例】の段落【0018】には、次のとおり記載されている。
「前記基布4のシート側となる面からジアミン硬化ウレタン樹脂を含浸塗布するとともに該基布面を覆った部分の膜厚を2.5mm程度とする。これを熱硬化させて表面側弾性樹脂層5を形成する。次いで、該基布の反対側の面からジアミン硬化ウレタン樹脂を含浸塗布するとともに該基布面を覆った部分の膜厚が0.8mm程度とする。これを熱硬化させて表面側弾性樹脂層6を形成する。表裏両弾性樹脂層5、6は基布の中層にて互いに当接(図示せず)している。」

2.申立人が提示した甲第1号証(特許第2889341号公報)の記載事項
(1)「抄紙機の脱水プレス用ベルトのうち、第6図に示す基布層21の両面に弾性材料で表面層22及び裏面層23を有する(多数の溝を形成することもある)従来の脱水プレス用ベルトは、次のような問題点を有する。(1)基布層21に弾性材料をコーテイングする場合、両面同時に行うことができないので、先ず基布層21(フェルトと接しない裏面)に裏面層23となる弾性材料をコーテイングし、その後もう一面に表面層22となる弾性材料をコーテイングする。従って基布層21との接着強度が弱い傾向にある。特に、キャステイングによって裏面層23を形成する場合、基布の内部までキャステイング材(裏面用弾性材料)が入り込むため表面層22を形成しようとしても基布材料との間に投錨効果が得られなくなり、強い接着強度を形成できない。」(第1欄44行〜第2欄3行)
(2)「(3)表面層22として弾性材料をコーテイングする場合、裏面層23の弾性材料が充分基布層に浸透していないと、表面が凹凸で複雑な面をもっているので、表面層22との界面に気泡が生じ易く、使用時の剥離の原因となる。」(第2行9〜13行)
(3)第6頁【第6図】には、基布層21、表面層22及び裏面層23からなるベルトの一部断面図が記載されている。

3.本件特許明細書の記載不備の理由
上記2.の従来技術に係る記載は、「抄紙機の脱水プレス用ベルト」に関するものであり、本件請求項1に係る発明の「製紙カレンダ用弾性ベルト」とは異なる。しかし、その構造は上記2.(3)記載のとおりであり、その製造方法に係る上記2.(1)の記載事項は、上記1.(3)記載のものと同様であるので、用途が異なるとしても、3層構造のベルトである点で軌を一にするものであるから、上記2.記載の従来技術に係る問題点は、本件請求項1に係る発明の「製紙カレンダ用弾性ベルト」の製造においても同様に存在するものと認められる。
本件請求項1に係る発明では、上記1.(1)のとおり「前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたこと」を要件としており、また、上記1.(2)のとおり「基布と表裏両層の弾性樹脂層、及び基布を介して両層の弾性樹脂同士とが完全一体化する。従って、剥離や加圧変形を確実に防止できる。」との効果を奏すると記載されているが、そのための具体的製法は、上記1.(3)記載のとおりのものにすぎない。しかし、この製法では、上記2.(1)記載の強い接着強度が得られない傾向がある点、また、上記2.(2)記載の気泡が生じ易い点が、どのように解消されているのか不明である。よって、前記「基布の厚みの中間部位にて当接一体化」させること及び「完全一体化」させることが達成し得ているものか否か不明であるといわざるを得ない。
従って、本件特許明細書が本件請求項1に係る発明を当業者が容易に実施できる程度に記載されているとはいえない。(以下、略)」

(3)取消理由の適否判断
上記訂正の結果、「基布」は「丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた」ものとなった。そして、「基布」が前記「マルチフィラメントからなる丈方向充填糸」を含むものであって、その係留作用により、上記「前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたこと」が可能となるものと認められ、また、「基布と表裏両層の弾性樹脂層、及び基布を介して両層の弾性樹脂同士とが完全一体化する」等の作用・効果も生じるものと認めることができる。
したがって、本件訂正明細書及び図面の記載に特許法第36条各項に係る不備があるとは、もはやいえない。

(4)また、他に本件訂正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとすべき理由を発見しない。

2の4.むすび
以上のとおりであるから、平成12年12月12日付けの訂正は、特許法120条の4第2項第1号及び第3号並びに同条第3項で準用する同法第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立についての判断
3の1.本件発明
上記明細書の適法な訂正の結果、本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、上記2の3.(1)に記載したとおりのものである。

3の2.申立人松尾浩司による申立の理由の概要
申立人松尾浩司は、甲第1号証(特許第2889341号公報)、及び、甲第2号証(本件特許公報)を提示して、[理由1]訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明か、甲第1号証記載の発明から当業者が容易に発明できたものであるから、該発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は同第2項の規定に違反してなされたものであり、また、[理由2]訂正前の本件明細書及び図面は、当業者が容易に実施できる程度に記載されていないから特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない旨、主張する。

3の2の1.当審の判断
A.[理由1]について
Aの1.甲第1号証(特許第2889341号公報)の記載事項
上記2の3.(2)記載の取消理由2.(1)〜(3)に記載したとおりである。
Aの2.対比・判断
甲第1号証記載の従来技術に係る記載は、「抄紙機の脱水用プレス用ベルト」関するものであり、本件発明に係る「製紙カレンダ用弾性ベルト」とは異なる。しかも、甲第1号証には、本件発明の要件である「丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布」に関し記載されておらず、また、示唆もない。
そして、本件発明は訂正明細書記載のとおりの作用・効果を奏するものである。
したがって、[理由1]は妥当なものとはいえない。

B.[理由2]について
申立人の主張は、上記取消理由通知と同趣旨であり、適法な明細書の訂正の結果、もはや特許法第36条各項に係る不備があるものでないことは、上記2の3.(3)で述べたとおりである。
したがって、[理由2]は妥当なものとはいえない。

3の3.申立人穴見健策による申立の理由の概要
申立人穴見健策は、甲第1号証(米国特許第4,559,258号明細書)、甲第2号証(特開平4-119191号公報)、甲第3号証(特開昭60-224893号公報)、甲第4号証(特開昭61-7120号公報)、甲第5号証(特開昭60-88193号公報)、甲第6号証(特開平2-91296号公報)、及び、甲第7号証(特開昭61-7119号公報)を提示して、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基いて当業者が容易になし得た発明である、該発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである旨、主張する。

3の3の1.当審の判断
Aの1.甲第1号証〜甲第7号証の記載事項
(1)甲第1号証(米国特許第4,559,258号明細書)には、概略、抄紙機の広巾ニッププレス用加圧ベルトに関する発明が記載され、また、「Fig.2」には、加圧ベルトの断面構造について開示されている。
(2)甲第2号証(特開平4-119191号公報)には、上記2の3.(2)記載の取消理由2.(1)〜(3)に記載したと同様の事項が、記載されている。
(3)甲第3号証(特開昭60-224893号公報)には、概略、エンドレスベルト、特に、抄紙工程のプレスパートにおけるエクステンディットニッププレス(ENP)用ベルトに関する発明が記載されている。
(4)甲第4号証(特開昭61-7120号公報)には、概略、ENP用エンドレスベルトに関する発明が記載されている。
(5)甲第5号証(特開昭60-88193号公報)には、製紙機械用ベルトに関する発明が記載されている。
(6)甲第6号証(特開平2-91296号公報)には、概略、製紙用カレンダ装置に関する発明が記載されている。
(7)甲第7号証(特開昭61-7119号公報)には、ENP用ベルトとして有用なエンドレスベルトに関する発明が記載されている。

Aの2.対比・判断
上記甲第1〜7号証には、いずれにも、本件発明の要件である「丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布」に関し記載されておらず、また、示唆もない。
そして、本件発明は訂正明細書記載のとおりの作用・効果を奏するものである。
したがって、申立人の主張は妥当なものとはいえない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
製紙カレンダ用弾性ベルト
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを、丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたことを特徴とする製紙カレンダ用弾性ベルト。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、製紙カレンダ用弾性ベルトに係り、特に、紙の表面性を改善する製紙用カレンダ装置に使用する製紙カレンダ用弾性ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、紙の表面に平滑性や光沢を施すなど、紙の表面性を改善する製紙用カレンダ装置には、さまざまなタイプのものがあった。その代表的なものとしては、スチール製のチルドロールでニップを構成したマシンカレンダ、弾性ロールとチルドロールでニップを構成したスーパーカレンダ、及びソフトニップカレンダが挙げられる。
【0003】
しかしながら、前記マシンカレンダは、紙の厚さを無理に調整するため、紙の密度が均一にならず、印刷の均一性を低下させるという欠点があった。また、前記スーパーカレンダは、使用中に、弾性カバーと該弾性カバーが巻付けられたロールとの間に熱が蓄積して弾性カバーが剥離するなど、装置の耐久性が劣るという欠点があった。さらに、前記ソフトニップカレンダは、印刷適性に優れた紙を造ることができる反面、紙の厚みが大きい個所に対応して弾性ロールが部分的に発熱し、弾性カバーが剥離したり、疲労により破断するなど、弾性カバーの寿命が短いという欠点があるなど種々の問題を抱えていた。
【0004】
そこで、上記問題を解決するものとして、特開平2-91296号公報に開示された技術がある。これは紙シートを通過させるニップ部分を少なくとも一対のロールで構成するとともに、その一方のロールをチルドロールとし、他方のロールをバッキングロールとして、そのニップ部分を含む周面に対してバッキングロールとともに回転し、走行する長尺の無端弾性ベルトの一部を掛け渡した製紙用カレンダ装置である。この装置によると、紙シートがニップ部分を通過する際に紙シートの厚さの不均一による凹凸は、チルドロールに接して表面側が平らにされたときに裏面側の凹凸を増幅させるように作用するが、当該凹凸は無端弾性ベルトの弾性により全て吸収されるため、前記紙シートの表面を平滑にすることができる利点がある。
【0005】
また、前記無端弾性ベルトのような製紙プレス用ベルトの例としては、紙シートからの脱水を受け入れるために、表面を基布面にし、シューとの滑走性を考慮して裏面を平滑にした脱水プレス用エンドレスベルト(特公昭63-38477号公報)、基布の外面に表面自由エネルギーが30erg/cm2より小さい値を持つ物質をブレンドしたポリウレタンゴム層を設けた面圧プレス用加圧ベルト(特開昭63-159590号公報)、及び基布の外面に主鎖に疏水性部を有するウレタン原料と、主鎖に親水性部を有するウレタン原料をブレンドしたポリウレタンゴム層を設けた面圧プレス用加圧ベルト(特開昭63-159591号公報)などが挙げられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平2-91296号公報に開示されている製紙用カレンダ装置の無端弾性ベルトは、基布の片面に圧縮弾性を有する樹脂を接着又は塗布してなるため、基布と弾性樹脂との一体化が弱く、剥離し易い上に、製紙用カレンダ装置のニップ部分を通過する際に、加圧変形を起こす虞れもあった。
また、前記特公昭63-38477号公報に開示されている脱水プレス用エンドレスベルトは、紙シートの表面と接触する面が基布であり、平滑でないために紙シート表面を平滑に仕上げることが困難であった。
【0007】
そして、前記特開昭63-159590号公報及び特開昭63-159591号公報に開示されている面圧プレス用加圧ベルトの場合も基布と弾性樹脂との一体化が弱く、剥離し易く、しかも、製紙用カレンダ装置のニップ部分を通過する際に、加圧変形を起こす虞れがあった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決することを課題とするものであり、基布と弾性樹脂とを完全一体化を図り、剥離や加圧変形を確実に防止できる製紙カレンダ用弾性ベルトを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明は、形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを、丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたことを特徴とする製紙カレンダ用弾性ベルトを提供するものである。
【0010】
即ち、基布と表裏弾性樹脂との接着一体化と同時に表裏弾性樹脂同士の基布層内での当接一体化することにより、基布と弾性樹脂との完全一体化を図ったものである。
【0011】
【作用】
本発明に係る製紙カレンダ用弾性ベルトは、形状を保つための基布の紙シート側となる面から含浸塗布して得た表面側弾性樹脂層と、該基布の他方の面から含浸塗布して得た裏面側弾性樹脂層とは基布の厚みの中間部位にて当接し、基布との完全一体化を果たすことができ、剥離や加圧変形がなく、寿命が向上する。
【0012】
上記の場合、前記表面側弾性樹脂層の表面粗さを20μm以下、裏面側弾性樹脂層の表面粗さを20μmを越え400μm以下とすれば、紙シート表面には平滑性、光沢性が付与できる上に、印刷特性の向上になる。一方、裏面側弾性樹脂層はスリップ防止を考慮すれば足りる。尤も、スリップ防止のみを考慮して無制限に粗くしたのでは、表面側弾性樹脂層の平滑性にも影響を与え、紙シートの平滑性を低下させる虞れが無いとも言えないから、いかに粗くしても400μm以下、好ましくは50〜150μmぐらいが適当である。
【0013】
さらに、本発明は上述の如く、表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とは別の含浸塗布工程で形成されるために、前記表面側弾性樹脂層の硬度を85〜99°(JISA)とし、裏面側弾性樹脂層の硬度と同等とすることも、それより硬くすることも可能であるから、表裏の硬度のバランスをはかりつつ表面側弾性樹脂層に十分なカレンダ効果を発揮させることができる。ここに表面側弾性樹脂層の硬度を85〜99°(JISA)としたのは、85°(JISA)未満では柔らか過ぎて、紙シートヘの加圧が弱くなり、十分なカレンダ効果を発揮させることが困難となるし、基布マークが紙シートに出る虞れがあった。勿論、表面側弾性樹脂層の全膜厚のうち、基布を覆った部分の膜厚を大幅に厚くすれば、85°未満であっても基布マークは出ないが、全体が厚くなり過ぎ、不都合となる。
【0014】
一方、該表面側弾性樹脂層の硬度が99°(JISA)を越えると硬過ぎ、紙シートの密度が斑になり、良好なカレンダ効果を発揮することが困難となるし、クラックも発生し易くなる。従って、表面側弾性樹脂層の硬度は上述の如く85〜99°(JISA)、より好ましくは95〜99°(JISA)で決定されることとなる。これに対して、裏面側弾性樹脂層の硬度は、表面側弾性樹脂層が求めるような硬度の必然性はないが、製紙カレンダ用弾性ベルトの耐久性と、表面側弾性樹脂層との硬度のバランスとを考慮して決定される。従って、その硬度は表面側弾性樹脂層の硬度より相対的に低くてよいが、80°以下にすることは好ましくないことは言うまでもない。
【0015】
また、本発明では基布に対して別個の含浸塗布工程で造られる表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とはそれぞれの材質を違えることができる。例えば、紙シートのカレンダ効果をあげるために、紙シートに接するチルドロールを加熱する場合があるが、これに対応させるために、表面側弾性樹脂層を耐熱性樹脂とし、裏面側弾性樹脂層を一般の樹脂とすることがある。このように構成すれば、全体を熱耐久性にするより安価なベルトが提供できるものである。
【0016】
【実施例】
次に、本発明の一実施例について、図面を参照して説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の実施例に係る製紙カレンダ用弾性ベルトの巾方向断面図、図2は、図1に示す製紙カレンダ用弾性ベルトの表面研磨方法を示す構成図、図3は、図1に示す製紙カレンダ用弾性ベルトを用いた製紙用カレンダ装置の図である。
【0017】
図1に示すように、本実施例に係る製紙カレンダ用弾性ベルト1は、その丈方向及び巾方向の糸として、熱変化が少なく安定性が良好なポリエステルモノフィラメント(0.4mmФ)を用い、さらに、丈方向充填糸としてポリエステルマルチフィラメント(3000d)を用いて無端状の三重織構造とした基布4を備えている。
【0018】
前記基布4のシート側となる面からジアミン硬化ウレタン樹脂を含浸塗布するとともに該基布面を覆った部分の膜厚を2.5mm程度とする。これを熱硬化させて表面側弾性樹脂層5を形成する。次いで、該基布4の反対側の面からジアミン硬化ウレタン樹脂を含浸塗布するとともに該基布面を覆った部分の膜厚が0.8mm程度とする。これを熱硬化させて裏面側弾性樹脂層6を形成する。表裏両弾性樹脂層5、6は基布4の中層にて互いに当接(図示せず)している。
【0019】
そして、図2に示すように、2本のシリンダ11A及び11Bに、前記構造を有する製紙カレンダ弾性ベルト1の表面側弾性樹脂層5が接触するように掛けてストレッチし、#100のサンドペーパーを巻いた丸棒12を、一方のシリンダ11A面に抑圧する方法により裏面側弾性樹脂層6を研磨する。その後、前記サンドペーパーを#200に替えてさらに研磨し、該裏面側弾性樹脂層6の表面粗さを60μm程度に仕上げる。
【0020】
しかる後、前記製紙カレンダ用弾性ベルト1を裏返して、#100のサンドペーパーを用い、前記したと同様の方法で紙シート側弾性樹脂層5を研磨した後、順次、目が細かいサンドペーパーで研磨を繰り返し、最終的に#1000のサンドペーパーを用いて研磨仕上げを行い、表面側弾性樹脂層5の表面粗さを5μm程度に仕上げた。なお、表面側弾性樹脂層5及び裏面側弾性樹脂層6の硬度は、98°(JISA)と共通にした。
【0021】
このようにして得た製紙カレンダ用弾性ベルト1の仕様を表1に示す。


【0022】
次に、以上の工程により完成した製紙カレンダ用弾性ベルト1を架け渡す製紙用カレンダ装置の構成について説明する。
図3に示すように、符号25で示すカレンダフレームには、取付アーム26Aを介してチルドロール21Aが回転自在に取り付けられている。一方、チルドロール21Aの下に上下対向して設けられたバッキングロール23Aはカレンダフレーム25に一端を枢着された可動取付アーム27Aに取り付けられている。このバッキングロール23Aには図示しない回転駆動装置が取り付けられている。さらに、可動取付アーム27Aの自由端側には、昇圧装置28Aの作動部が取り付けられており、昇圧装置28Aの押し上げ圧によって可動取付アーム27Aが枢着個所を支点として上方へ押し上げられ、バッキングロール23Aはチルドロール21Aに圧接触されている。
【0023】
前記製紙カレンダ用弾性ベルト1はバッキングロール23Aのニップ部分を覆い、かつ、押圧するようにして保持ロール7a〜7d、ストレッチロール30A及びガイドロール31Aに掛け渡されている。そして、可動取付アーム27Aが昇圧装置28Aによって上方へ押し上げられた場合の製紙カレンダ用弾性ベルト1の走行路の修正は、ガイドロール31Aの位置調整によって行われ、また、ストレッチロール30Aにより張力が調整される。
【0024】
さらに、チルドロール21Aはスチーム、温水、電気誘導などの加熱手段32Aを内蔵しており、一方、製紙カレンダ用弾性ベルト1の走行路に対してはエアシャワーや水分噴霧装置などの冷却装置33Aが設けられ、熱を帯びた製紙カレンダ用弾性ベルト1が適宜冷却される。
【0025】
シートロール34a及び34bは紙シート15を前記チルドロール21Aと製紙カレンダ用弾性ベルト1との間に送給するためのものであって、紙シート15が前記チルドロール21Aとパッキングロール23Aからなる一対のロール構成のみによって処理される時には、チルドロール21Aと接する側の表面が製紙カレンダ用弾性ベルト1に接する表面よりも強く改質処理される。
【0026】
従って、紙シート15の両面を同じように処理する場合には、前記一対のロール構成を第1セットとし、このロールの上下を逆転させて第2セットとし、この第2セットを第1セットに連続して設置すればよい。図3は、この趣旨によりカレンダフレーム25を境に、紙シート15の流出側に、前記第2セットを設置したものである。
なお、この第2セットの構成は、前記第1セットのチルドロール21Aと、バッキングロール23Aの上下を逆転させた以外は、前記第1セットの場合と同様である。
【0027】
図3に示す製紙用カレンダ装置(本発明に係る製紙カレンダ用弾性ベルトを使用)を使用して、紙シートのカレンダ処理を下記条件で行った。

抄紙速度 500m/min
チルドロール温度 常温
加圧力(線圧) 100kg/cm
【0028】
また、比較として、従来例の弾性ロールを使用したソフトニップカレンダ装置を使用し、前記と同条件で紙シートのカレンダ処理を行い、前記カレンダ処理後に得られた紙シートの平滑度及び光沢度を測定した。
なお、平滑度はパーカプリントサーフ試験器、光沢度はJIS P-8123に従った。
【0029】
この結果を表2に示す。

但し、Fはフェルト面、Wはワイヤー面を示す。
【0030】
上記表2から、本実施例に係る製紙カレンダ用弾性ベルト1を備えた製紙用カレンダ装置から得られた紙シートは、従来の弾性ロールを使用したソフトニップカレンダ装置から得られた紙シートに比べ、平滑性及び光沢性が優れており、印刷適性が向上していることが判明した。
次に、製紙カレンダ用弾性ベルト1の硬度とクラックとの関係、及び硬度とマーク性との関係について、以下の試験方法による調査を行った。
【0031】
この結果を表3に示す。

(硬度とクラックとの関係)
繰り返し屈曲試験(Demattia屈曲試験)により調査した。
(硬度とマーク性との関係)
直径10cmΦの一対のロールを用い、50kg/cm2で加圧した時に、基布マークが出る最小弾性樹脂厚を調査した。
【0032】
上記表3から、表面側弾性樹脂層5の硬度が、85°(JISA)未満ではクラックが発生するまでの回数が極めて大きい点では優れているが、弾性樹脂の膜厚を極めて厚くしないと基布マークが出てしまうことが確認された。これより、表面側弾性樹脂層5は硬度85°(JISA)以上にすることが好適である。
また、前記表面側弾性樹脂層の硬度が99°(JISA)を越えると、紙シートの密度が斑になり、良好なカレンダ効果を発揮することが困難となる。これにより、表面側弾性樹脂層5は硬度99°(JISA)以下がよい。従って、表面側弾性樹脂層5の硬度は85〜99°(JISA)の範囲内、好ましくは95〜99°(JISA)とすることが好適である。
【0033】
一方、裏面側弾性樹脂層6の硬度を、表面側弾性樹脂層5と同じか、それより若干柔らかめとすることで製紙カレンダ用弾性ベルトの耐久性と紙シートの平滑性とのバランスを向上させることができる。
なお、本実施例では表面側弾性樹脂層5の表面粗さを5μmとしたが、これに限らず、20μm以下であれば、紙シートの平滑性、光沢性を良好とすることができる。
【0034】
(実施例2)
次に、本発明に係る実施例2について説明する。
実施例1と同様の基布4を使用し、この基布4のシート側となる面からエーテルウレア系ポリマー樹脂を塗布含浸するとともに該基布面を覆った部分の膜厚が2.7mm程度とし、熱硬化させて表面側弾性樹脂層5を形成し、次いで、前記基布4の反対側面からジアミン硬化ウレタン樹脂を塗布含浸するとともに該基布面を覆った部分の膜厚が0.8mm程度となるようにし、熱硬化させて裏面側弾性樹脂層6を形成して弾性ベルトを得た。
【0035】
次に、この弾性ベルトに前記実施例1と同様の表面研磨を行い、裏面側弾性樹脂層6の表面粗さを60μm程度にし、また、表面側弾性樹脂層5の表面粗さを5μm程度にした。
なお、表面側弾性樹脂層5及び裏面側弾性樹脂層6の硬度は共に97°(JISA)と共通にした。
【0036】
このようにして得た製紙カレンダ用弾性ベルト1の仕様を表4に示す。

【0037】
次に、図3に示す製紙用カレンダ装置(本発明に係る製紙カレンダ用弾性ベルトを使用)を使用して、紙シートのカレンダ処理を下記条件で行った。

抄紙速度 500m/min
チルドロール温度 150℃
加圧力(線圧) 100kg/cm
また、比較として、従来例の弾性ロールを使用したソフトニップカレンダ装置を使用して前記と同条件で紙シートのカレンダ処理を行った。
前記カレンダ処理後に得られた紙シートの平滑度及び光沢度を測定した。
なお、平滑度はパーカプリントサーフ試験器、光沢度はJIS P-8123に従った。
【0038】
この結果を表5に示す。

但し、Fはフェルト面、Wはワイヤー面を下す。
【0039】
上記表5から、本実施例に係る製紙カレンダ用弾性ベルト1を備えた製紙用カレンダ装置から得られた紙シートは、従来の弾性ロールを使用したソフトニップカレンダ装置から得られた紙シートに比べ、平滑性及び光沢性が優れており、印刷適性が向上していることが判明した。
【0040】
なお、本実施例では表面側弾性樹脂層5の表面粗さを5μmとしたが、これに限らず、20μm以下であれば、紙シートの平滑性、光沢性を良好とすることができる。
また、実施例1及び実施例2では、三重織の基布4を使用したが、これに限らず、ベルトの形状を保持可能であれば、基布4の織り方は、所望により決定してよい。
【0041】
更に、本実施例では裏面側弾性樹脂層6の表面粗さは60μm程度としているが、これ以上でも以下の粗さでもよい。尤も、400μmを越えることは紙シートの平滑性を低下させるから好ましくない。
【0042】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る製紙カレンダ用弾性ベルトは、形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを、丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたので、基布と表裏両層の弾性樹脂層、及び基布を介して両層の弾性樹脂同士とが完全一体化する。従って、剥離や加圧変形を確実に防止できる。また、表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層の硬度は同じにすることも異ならせることもでき、また、両弾性樹脂の材質を異ならせることも自由にできるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例に係る製紙カレンダ用弾性ベルトの巾方向断面図である。
【図2】
図1に示す製紙カレンダ用弾性ベルトの表面研磨方法を示す図である。
【図3】
図1に示す製紙カレンダ用弾性ベルトを用いた製紙用カレンダ装置の構成図である。
【符号の説明】
1 製紙カレンダ用弾性ベルト
2 丈方向の糸
3 巾方向の糸
4 基布
5 表面側弾性樹脂層
6 裏面側弾性樹脂層
 
訂正の要旨 (1)訂正事項1
【請求項1】の
「形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたことを特徴とする製紙カレンダ用弾性ベルト。」
との記載を、
「形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを、丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたことを特徴とする製紙カレンダ用弾性ベルト。」
と訂正する。(なお、前記「充填」の「填」は、実際のものと異なる。)
(2)訂正事項2-1
明細書段落【0009】(本件特許公報第4欄4〜12行)の
「【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明は、形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたことを特徴とする製紙カレンダ用弾性ベルトを提供するものである。」
との記載を、
「【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明は、形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを、丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたことを特徴とする製紙カレンダ用弾性ベルトを提供するものである。」
と訂正する。(なお、前記「充填」の「填」は、実際のものと異なる。)
(3)訂正事項2-2
明細書段落【0042】(同公報第10欄下3行〜第11欄11行)の
「【発明の効果】以上説明した如く、本発明に係る製紙カレンダ用弾性ベルトは、形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたので、基布と表裏両層の弾性樹脂層、及び基布を介して両層の弾性樹脂同士とが完全一体化する。従って、剥離や加圧変形を確実に防止できる。また、表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層の硬度は同じにすることも異ならせることもでき、また、両弾性樹脂の材質を異ならせることも自由にできるという優れた効果を奏するものである。」
との記載を、
「【発明の効果】以上説明した如く、本発明に係る製紙カレンダ用弾性ベルトは、形状を保つ基布と、該基布の紙シート側となる面から含浸塗布され該面を覆った表面側弾性樹脂層と、前記基布の他方の面から含浸塗布され該面を覆った裏面側弾性樹脂層とからなる製紙カレンダ用弾性ベルトにおいて、前記表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層とを、丈方向及び巾方向の糸とマルチフィラメントからなる丈方向充填糸とを用いた基布の厚みの中間部位にて当接一体化させたので、基布と表裏両層の弾性樹脂層、及び基布を介して両層の弾性樹脂同士とが完全一体化する。従って、剥離や加圧変形を確実に防止できる。また、表面側弾性樹脂層と裏面側弾性樹脂層の硬度は同じにすることも異ならせることもでき、また、両弾性樹脂の材質を異ならせることも自由にできるという優れた効果を奏するものである。」
と訂正する。(なお、前記「充填」の「填」は、実際のものと異なる。)
異議決定日 2000-12-26 
出願番号 特願平4-360823
審決分類 P 1 651・ 113- YA (D21G)
P 1 651・ 121- YA (D21G)
P 1 651・ 531- YA (D21G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 砂川 克阿部 寛  
特許庁審判長 石橋 和美
特許庁審判官 石井 克彦
藤井 彰
登録日 1999-03-26 
登録番号 特許第2904464号(P2904464)
権利者 市川毛織株式会社 日本製紙株式会社
発明の名称 製紙カレンダ用弾性ベルト  
代理人 羽村 行弘  
代理人 羽村 行弘  
代理人 羽村 行弘  

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