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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A21B
審判 全部申し立て 特29条の2  A21B
管理番号 1041292
異議申立番号 異議2000-74675  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-10-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-28 
確定日 2001-06-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第3085576号「食品の多面焼成方法とその装置」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3085576号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.本件特許発明1〜5
本件特許第3085576号(平成9年4月2日出願、平成12年7月7日設定登録。)の請求項1ないし5に係る特許発明(以下、順次「特許発明1」ないし「特許発明5」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】マニピュレータ2により食品材料Fを高温状態の火床4上に載置して当該食品材料Fの載置面を焼成すると共に、
この火床4と常時、接触して当該火床4からの伝熱により加熱された高温状態の少なくとも一対の押圧鈑5・5の両端部を円錐楔材6の進退動作により拡縮動作するクロスリンク棒材64・64に連接せしめることにより、前記押圧鈑5・5を平行に接近又は離反動作せしめ、これら一対の押圧鈑5・5で食品材料Fを両側から挟んで接触した食品材料Fの両側面を焼成することを特徴とした食品の多面焼成方法。
【請求項2】押圧面に食品材料の側面に塑性変形を与える型部(51、52)を形成した押圧鈑5を食品材料の側面へ向けて進退させることにより当該食品材料の側面を焼成すると同時に食品材料の側面形状を整形することを特徴とした請求項1記載の食品の多面焼成方法。
【請求項3】食品材料Fを摘み上げ、その姿勢を変化させながら所定位置に搬送し其処に載置するマニピュレータ2と;
このマニピュレータ2により載置された食品材料Fを焼成する火床4と;
この火床4と常時、接触して当該火床4からの伝熱により加熱される少なくとも一対の押圧鈑5・5と;
これら一対の押圧鈑5・5の両端部に連接され、円錐楔材6の進退動作により拡縮動作して押圧鈑5・5を平行に接近又は離反動作せしめるクロスリンク棒材64・64と;を備えて成り、
前記火床4上で食品材料Fの載置面を焼成すると共に、前記少なくとも一対の押圧鈑5・5を食品材料Fの両側面に押し当てることにより当該押圧鈑5が接触した食品材料Fの両側面を焼成することを特徴とした食品の多面焼成装置。
【請求項4】押圧鈑5の食品接触部分に食品材料の側面に所望の塑性変形を付与する型部(51、52)が形成されていることを特徴とした請求項3記載の食品の多面焼成装置。
【請求項5】押圧鈑5の食品接触部分にスプリング55を介して緩衝部材53が設けられていることを特徴とした請求項3記載の食品の多面焼成装置。」

2.申立ての理由の概要
申立人新日本機械工業株式会社は、「本件特許発明1〜5は、甲第1〜第5号証及び甲第8号証の1,2で立証されるMOBAC SHOW 97の出品、実演の事実と甲第6,7,9,11号証の記載とから容易に発明できるものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。また、少なくとも本件特許発明1は甲第10号証に記載される発明と一致し、その効果も「3面同時焼き」である点で一致し、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。」旨主張している。
〈証拠方法〉
甲第1号証:平成9年2月1日発行 1997/2 シンニホンニュース
甲第2号証:写真(a)、写真(b)
甲第3号証:宇野惇一の陳述書
甲第4号証:SDR-K1-Eのパンフレット
甲第5号証:平成8年11月1日発行 1996/11 シンニホンニュース
甲第5号証の1:甲第5号証の4頁の写真1の拡大
甲第5号証の2:甲第5号証の4頁の写真2の拡大
甲第5号証の3:甲第5号証の4頁の写真3の拡大
甲第6号証:1968年理工学社発行 新編機械の素
甲第7号証:昭和41年1月15日9版発行 機械運動機構
甲第8号証の1:甲第3号証では添付図1
甲第8号証の2:甲第3号証では添付図2
甲第9号証:特開平7-51042号公報
甲第10号証:特開平10-66497号公報
甲第11号証:昭和41年6月20日7版発行 機械工学辞典

3.甲号各証の記載事項
甲第1号証(平成9年2月1日発行 1997/2 シンニホンニュース)には、新製品の紹介記事として「きんつば焼成機」SDR-K1-Eの写真と「独自の3面同時焼きで生産性、投資効率抜群!独自の3面同時焼きで手間のかかる生地付けと焼成を完全自動化しました。人手に触れる回数が減るので、手焼き同様の製品が安全かつ衛生的に生産できます。」との製品説明が記載されている。
甲第2号証(写真a、写真b)は、MOBAC SHOW 97(インデックス大阪(南港))で剣持秀雄が撮影した2枚の写真であって、この2枚の写真からは、個々の焼板は結合されて焼板列とされ、各焼板上に生地付けしたあんを載置し、生地付けしたあんの両側面を側面焼成ブロックで押圧した搬送・焼成部構造がみてとれる。
甲第3号証(宇野惇一の陳述書)には、きんつば焼成機SDR-K1-Eについて、添付図1,2、資料1,2、写真1〜5を添付して装置の説明とMOBAC SHOW 97(インデックス大阪(南港))での出品の経緯等に関する宇野惇一の陳述事項が記載されている。
甲第4号証(SDR-K1-Eのパンフレット)には、きんつば焼成機について5枚の写真と説明文、機械特長並びに標準仕様が記載されている。
甲第5号証(平成8年11月1日発行 1996/11 シンニホンニュース)には、きんつば焼成機の新製品情報として上記甲第4号証とほぼ同様の内容が記載されている。また、甲第5号証の1〜3として添付された写真は、甲第5号証のきんつば焼成機を説明した3枚の写真(焼板への搬送部、焼板から取出して反転させる部分、焼板からの取出部)に対応したものであることがみてとれる。
甲第6号証(1968年理工学社発行 新編機械の素)には、製図で使用する平行クランクとしての平行定規について記載されている。
甲第7号証(昭和41年1月15日9版発行 機械運動機構)には、「607.斜面による直角方向への変更機構(3)」として、斜面による直角方向への変更機構の図と説明が記載されている。
甲第8号証(甲第3号証の添付図1、2)には、きんつば焼成機SDR-K1-Eとその横焼板の製作図が記載されている。
甲第9号証(特開平7-51042号公報)には、水に溶いた小麦粉を原材料にしたお好み焼やホットケーキ等の粘性食品の外周形状を仕上げる成形方法及びその装置が、図面とともに記載されている。
甲第10号証(特開平10-66497号公報)には、小豆などを主体としたあんの各面毎に行うべき生地付け、焼上げなどの処理を集約でき、かつ、合理的に自動的に行うことができるきんつば菓子の連続製造方法ならびにそれに供する焼き装置に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「まず、図1に示すように、予め6面体に成形されたあん1は、コンベヤ2を経て順次に連続的に生地付け装置3に供給される。
この生地付け装置3においては、あん1の焼くべき面1a、1b、1c、1d、1e、1fのうちで3つの隣接する面1a、1b、1cに生地4がつけられる(図2(a)参照)。
例えば、あん1の下面1aならびにそれに隣接する両側面1b、1cに生地4がつけられる。その後、生地がつけられたあん1は第1焼き装置Aに供給され、第1焼き装置Aにおいてあん1が連続的に下流側に流れる間に3面1a、1b、1cにつけられた生地4は同時に加熱して焼かれる。
第1焼き装置Aは、焼板11が連続的に連結されて焼板列10が形成され、焼板列10は一定の周期のもとで間欠的に移動する。各焼板11はこの移動の間に下側から加熱源5(図2(a)、(b)、(c)参照)によって加熱されている。
焼板列10の両側には一対の搬送軌道20が設けられ、これら搬送軌道20によって一対の側面焼成ブロック30が搬送される。各搬送軌道20の走行方向は、焼板列10、つまり、あんの走行方向と反対方向であり、搬送軌道20とその中心の焼板列10は互いに対向して所定の周期をもって間欠的に走行する。
従って、焼板列10の一つの焼板11の上にあん1が供給されたところにおいて、一つの焼板11の両側から一対の側面焼成ブロック30、30が幅方向、つまり、焼板列10又はその上のあん1の走行方向と直交する方向に、あん1の両側面1b、1c(図2(b)ならびに(c)参照)を挟むように、移動し、各焼板11上において、両側からあん1は側面焼成ブロック30、30によって押し付けられて、あん1の側面1b、1cははさまれる。 なお、あん1は6面体から成っているが、その成型時に、ことごとくが均一な寸法に成型されていることがある。このため、焼板列10の下流側に一対の調整押出部材60、例えばばねを設けて、上流側で一旦幅方向に押出された側面焼成ブロック30、30を押出してその押出しを調整することができる。
このような状態であん1が焼板列10とともに走行すると、3面につけられた生地4は焼板11に接触する下面1aの生地が加熱して焼かれ、併せて、側面焼成ブロック30、30に接触する側面1b、1cの生地4が加熱して焼かれる。つまり、このような状態で第1焼き装置Aを順次に間欠的にあん1が走行される間に、あん1の下面1aならびに両側面は1b、1cの各生地4は同時に加熱して焼かれる。
すなわち、図2(a)、(b)ならびに(c)に示すように、焼板11の上には、第1焼き装置Aの入口において側面焼成ブロック30、30が両側からのせられ、しかも、各焼板11は下の加熱源5により加熱されている。このため、その焼板11の熱量はその上に接触する各側面焼成ブロック30、30に熱伝達され、焼板11とともに各側面焼成ブロック30、30は加熱されている。
従って、側面焼成ブロック30、30があん1の各側面1b、1cに押しつけられると、図2(c)に示すように3面の各生地4は同時に焼成され、従来の手法にように一つの面ごとの生地付け、加熱を行なう処理は大巾に集約化をはかることができる。
このように焼板11ならびに側面焼成ブロック30、30によって加熱して焼きながら、あん1が出口側に達したとき、あん1の側面に接触する側面焼成ブロック30、30はあん1の側面から離されて、両側の搬送軌道20、20の上にそれぞれのせられる。各側面焼成ブロック30、30は各搬送軌道20、20とともに反対方向に上流側に逆送され、第1焼き装置Aの入口側に達し、上記のところと同様に、焼板列10の焼板11の上に供給され、くり返してあん1の側面の焼きに関与する。」(段落【0018】〜【0028】)
「第1焼き装置Aを経たあん1は、その後移動コンベヤ40にのせられ、その間、焼かれた下面1aと未焼成の上面1dは反転される。
その後、あん1は生地付け装置41に送られる。この生地付け装置41は、先の生地付け装置3と同様に構成することができ、この装置41においても未焼成の各面1d、1e、1fを個別的に生地付けすることもできるし、あるいは未焼成の3つの面1d、1e、1fを同時に生地付けするように構成することもできる。
更に、各面1d、1e、1fを手作業により生地付けすることができる。いずれの場合においても、未焼成の3つの面が生地付けされていれば十分である。
次に、未焼成の3つの面1d、1e、1fを生地付けされたあん1は、第2焼き装置Bに入り、第2焼き装置Bにおいても、第1焼き装置Aと同様に3つの面1d、1e、1fに付けられた生地は同時に加熱され、焼かれる。したがって、第2焼き装置Bは第1焼き装置Aと同様に構成されている。
すなわち、第2焼き装置Bにおいても、第1焼き装置Aと同様に、焼板11が連続的に結合されて焼板列10が構成され、焼板列10は間欠的に移動する。その入口側において一対の側面焼成ブロック30、30が幅方向に移動して、一つの焼板11の上にのせられる。これら側面焼成ブロック30、30によって焼板11上のあん1ははさまれて、未焼成の平面1dや側面1e、1fの生地は加熱して焼かれる。
第2焼き装置Bの出口側に達するときには、あん1の全外面を成す6つの面1a、1b、1c、1d、1e、1fはことごとく生地付けされ、加熱して焼かれ、きんつば菓子100として製品コンベヤ50にうつしかえられたのち、順次に排出される。
以上のように、第1ならびに第2焼き装置A、Bにおいて、あん1の1a、1b、1c、1d、1e、1fのうちで、互いに隣接する3つの面を同時に加熱し焼き、しかも、第1ならびに第2焼き装置A、Bの間で反転させると、きんつば菓子が連続かつ自動的に製造できる。更に、製造されるきんつば菓子は、あんは従来例と同様に六面体として構成され、6つの面にそれぞれ生地付け、加熱焼きが行なわれ、全く手造的風味が失なわれないきんつば菓子が製造できる。」(段落【0031】〜【0037】)
「各焼き装置A、Bの入口側に設けられる側面焼成ブロックの供給装置A1、B1は次のように構成することができる。
各搬送軌道20、20上において、側面焼成ブロック30、30は搬送コンベヤ21、21から突出した係止部材22、22に係止され、一つの係止部材22におされて順次に上流側、つまり、入口側まで所定の周期で間欠的に移動する。
焼板列10の入口側に達したときには、供給装置A1、B1を介して側面焼成ブロック30、30は幅方向に移動する。
各供給装置A1、B1には、各側面焼成ブロック30を幅方向に移動させるために、案内板31が設けられ、両側の焼成ブロック30、30は各押出部材32、32に押されて、焼板列10の一つの焼板11の上にのせられる。すなわち、各側面焼成ブロック30、30の幅方向移動は押出部材の幅方向移動、つまり、押しによって行なわれ、この移動機構は、通常、ピニオンとラックの結合機構によって達成できる。」(段落【0045】〜【0048】)
「また、各焼き装置A、Bの出口側には、側面焼成ブロック30の排出装置A2、B2を設ける。
排出装置A2、B2は供給装置A1、B1と同様に構成されるが、押出部材32、32の代りに、一対の引張り部材35、35を設ける。
すなわち、各引張り部材35、35は、図5に示す矢印方向、つまり、一対の引張り部材35、35は互いに遠ざかるよう幅方向に移動し、この移動によって側面焼成ブロック30、30は、引張られて、各搬送軌道20、20の搬送コンベヤ21、21に移しかえられる。移しかえられた側面焼成ブロック30、30は係止部材22によって運ばれる。」(段落【0052】〜【0054】)
甲第11号証(昭和41年6月20日7版発行 機械工学辞典)には、マニピュレータの用語の意味が記載されている。

4.異議申立理由に対する当審の判断
【本件特許発明1〜5は29条2項の規定により特許を受けることができないとの主張について】
甲第1号証〜甲第5号証及び甲第8号証から理解される、きんつば焼成機SDR-K1-E(以後、「甲第1号証のきんつば焼成機」という。)は、平成8年8月29日に特願平8-247030号(甲第10号証参照)として特許出願し、その後、甲第5号証として提出されたシンニホンニュースに掲載し、平成9年2月20日〜24日のMOBAC SHOW 97(インデックス大阪(南港))に出品したものであることが認められる。
そして、この甲第1号証のきんつば焼成機は、甲第10号証の特開平10-66497号公報に記載された「きんつば菓子の製造装置」の発明と実質的に同様の構成を備えたものであると認められる。
そこで、甲第1号証のきんつば焼成機の構成部材については、甲第10号証の公開公報で使用されている用語に倣って、本件特許発明1と甲第1号証のきんつば焼成機とを対比すると、本件特許発明1の「マニピュレータ2」、「火床4」、「食品材料F」及び「一対の押圧鈑5・5」は、甲第1号証のきんつば焼成機の「焼板へのあんの移送手段」、「連続的に結合された焼板」、「あん」及び「一対の側面焼成ブロック」が機能的には相当するものであるから、両者は、「マニピュレータにより食品材料を高温状態の火床上に載置して当該食品材料の載置面を焼成すると共に、この火床と接触して当該火床からの伝熱により加熱された高温状態の少なくとも一対の押圧鈑を平行に接近又は離反動作せしめ、これら一対の押圧鈑で食品材料を両側から挟んで接触した食品材料の両側面を焼成する食品の多面焼成方法。」で一致しており、下記の点で相違している。
相違点;本件特許発明1では、一対の押圧鈑5・5は、常時、火床4に接触して火床4からの伝熱により加熱されており、また、該一対の押圧鈑5・5は、その両端部を円錐楔材6の進退動作により拡縮動作するクロスリンク棒材64・64に連接せしめることにより、平行に接近又は離反動作せしめられるものであるのに対して、甲第1号証のきんつば焼成機では、一対の側面焼成ブロックは、焼き装置の入口側で焼板上に載せられ、焼き装置の入口側から出口側まで該焼板が移動する期間の間、焼板からの伝熱により加熱され、焼き装置の出口側で焼板から離され、再び、搬送軌道により焼き装置の入口側へ戻されるように構成されており、焼板からの側面焼成ブロックへの伝熱は、側面焼成ブロックが焼板上にある期間に限られるものであり、また、一対の側面焼成ブロックは、該入口側で押出部材による押しによって幅方向移動(平行に接近移動)がなされ、該出口側で引張り部材によって互いに遠ざかるよう幅方向に移動(平行に離反移動)させるものであって、焼き装置の入口側と出口側に設けられた別個の移動機構により一対の側面焼成ブロックの接近動作と離反動作を行うものである点。
上記相違点について検討するに、甲第6号証、甲第7号証、甲第9号証及び甲第11号証には、上記「3.甲号各証の記載事項」で記載した事項が記載されているにすぎないものであって、本件特許発明1のように、一対の押圧鈑を、常時、火床に接触して火床からの伝熱により加熱すること、及び、一対の押圧鈑の両端部を円錐楔材の進退動作により拡縮動作するクロスリンク棒材に連接せしめて、一対の押圧鈑を平行に接近又は離反せしめることについては、記載されておらず、本件特許発明1の上記相違点に係る構成を想到させるための契機もないものである。
よって、本件特許発明1の上記相違点に係る構成については、例え、甲第1号証のきんつば焼成機に、他の証拠を総合したとしても、当業者が容易に想到することができるものとは認めることができない。
そして、本件特許発明1は、上記相違点に係る構成を具備することによって、特許明細書中に記載された格別な効果を奏するものと認める。
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第1号証〜甲第5号証及び甲第8号証の本件出願前公然知られた甲第1号証のきんつば焼成機並びに甲第6号証、甲第7号証、甲第9号証及び甲第11号証に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものとは認めることができない。
次に、本件特許発明2〜5について検討すると、本件特許発明2は、本件特許発明1の技術事項を引用するとともに、押圧鈑5の構成をさらに限定したものである。
また、本件特許発明3は、本件特許発明1の食品の多面焼成方法を、食品の多面焼成装置として記載したものに実質的に相当するものであって、本件特許発明1と甲第1号証のきんつば焼成機とで対比、判断したと同様の構成上の相違点を有するものである。
さらに、本件特許発明4及び本件特許発明5は、本件特許発明3の技術事項を引用するとともに、押圧鈑5の構成をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明2〜5も、本件特許発明1と同様に、甲第1号証〜甲第5号証及び甲第8号証の本件出願前公然知られた甲第1号証のきんつば焼成機並びに甲第6号証、甲第7号証、甲第9号証及び甲第11号証に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものとは認めることができない。
【本件特許発明1は29条の2の規定により特許を受けることができないとの主張について】
甲第10号証の、本件の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平8-247030号(特開平10-66497号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「甲第10号証の先願明細書」という。)には、上記「3.甲号各証の記載事項」で摘記した事項が図面とともに記載されている。
そこで、本件特許発明1と甲第10号証の先願明細書に記載された発明とを対比すると、本件特許発明1の「マニピュレータ2」、「火床4」、「食品材料F」及び「一対の押圧鈑5・5」は、甲第10号証の先願明細書に記載された発明の「焼板11へのあん1の移送手段」、「連続的に結合された焼板11」、「あん1」及び「一対の側面焼成ブロック30、30」が機能的には相当するものであるから、本件特許発明1に倣って表現すると、両者は、「マニピュレータにより食品材料を高温状態の火床上に載置して当該食品材料の載置面を焼成すると共に、この火床と接触して当該火床からの伝熱により加熱された高温状態の少なくとも一対の押圧鈑を平行に接近又は離反動作せしめ、これら一対の押圧鈑で食品材料を両側から挟んで接触した食品材料の両側面を焼成する食品の多面焼成方法。」で一致しているにすぎないものであって、本件特許発明1では、一対の押圧鈑5・5は、常時、火床4に接触して火床4からの伝熱により加熱されているのに対して、甲第10号証の先願明細書に記載された発明では、一対の側面焼成ブロック30、30は、焼き装置A又はBの入口側で焼板11に載せられて焼板11に接触し、焼板11が焼き装置A又はBの出口側へ到達すると、焼板11から離れるように移動して搬送軌道20により再び入口側へ戻され、再度、入口側で焼板11に載せられるという動作を繰り返すものであって、側面焼成ブロック30、30が焼板11から伝熱作用を受けるのは、焼板11に載せられた期間だけであるから、本件特許発明1のように常時伝熱作用を受けるものとは構成が明確に相違しているものである。
また、本件特許発明1では、一対の押圧鈑5・5の両端部を円錐楔材6の進退動作により拡縮動作するクロスリンク棒材64・64に連接せしめることにより、一対の押圧鈑5・5を平行に接近又は離反動作せしめるものであるのに対して、甲第10号証の先願明細書に記載された発明では、一対の側面焼成ブロック30、30は、焼き装置A又はBの入口側で押出部材32による押しによって幅方向移動(平行に接近移動)がなされ、焼き装置A又はBの出口側で引張り部材35によって互いに遠ざかるよう幅方向に移動(平行に離反移動)させるものであるから、一対の押圧鈑(側面焼成ブロック)を平行に接近、離反させるための具体的機構も明確に相違するものである。
したがって、本件特許発明1と甲第10号証の先願明細書に記載された発明とは、同一であると認めることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件特許発明1ないし5についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1ないし5についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-05-31 
出願番号 特願平9-84166
審決分類 P 1 651・ 16- Y (A21B)
P 1 651・ 121- Y (A21B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大河原 裕  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 吉国 信雄
山崎 豊
登録日 2000-07-07 
登録番号 特許第3085576号(P3085576)
権利者 株式会社コバード
発明の名称 食品の多面焼成方法とその装置  
代理人 松下 義勝  
代理人 副島 文雄  
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