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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1043073
審判番号 審判1999-20805  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-12-24 
確定日 2001-08-10 
事件の表示 平成10年特許願第76862号「電力および情報の非接触伝送装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年12月4日出願公開、特開平10-322251]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本件発明
本願は、昭和61年9月11日に出願した実願昭61-214317号を平成10年3月18日に特許出願(特願平10-69058号)に変更し、その変更した特許出願の一部を平成10年3月25日に新たな特許出願として出願したものであって、その請求項1に係る発明は、平成11年6月16日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである(以下、本件発明という。)。
「【請求項1】移動側モジュールおよび固定側モジュールの対を少なくとも1つそなえ、前記両モジュールの何れか一方は、電気的に接続された状態で分離可能な電力用搬送波の供給回路を含む分割モジュールおよび電力送信ヘッドをそなえ、前記両モジュールの他方は電力受信ヘッドをそなえ、当該他方のモジュールの動作に必要な電力は、前記電力受信ヘッドおよび前記電力送信ヘッドの各電磁コイルが互いに近接対向した電磁結合期間に非接触で得られ、前記両モジュールのそれぞれは送受信アンテナを有し、外部から入力される情報信号により変調した信号用搬送波を一方のモジュールからもう一つのモジュ-ルに送信することにより、前記情報信号を前記両モジュールを介して授受することを特徴とする電力および情報の非接触伝送装置。」
なお、平成11年9月27日付け、平成11年12月24日付け、平成12年1月24日付けの各手続補正は、却下されている。
2.出願変更及び出願分割の適否
本願は、実願昭61-214317号を特許出願(特願平10-69058号)に変更し、その変更した特許出願の一部を新たな特許出願として出願したものであるところ、本件発明の両モジュールの何れか一方が、「電気的に接続された状態で分離可能な電力用搬送波の供給回路を含む分割モジュールおよび電力送信ヘッドをそなえ」るとする構成は、特願平10-69058号の明細書に記載されているものの、実願昭61-214317号の明細書及び図面には記載されていない。また、本件発明のその他構成要件については、特願平10-69058号の明細書に記載されている。
したがって、本件特許出願は、特願昭10-69058号の適法な分割出願に該当するが、一方、特願昭10-69058号は、適法な変更出願ではないので、本件特許出願の出願日は、特願平10-69058号の出願日である10年3月18日に遡及するが、実願昭61-214317号の出願日である昭和61年9月11日には遡及しない。
3.本件発明と刊行物記載の発明との対比・判断
原審において引用した特開昭56-106169号(以下、刊行物1という。)には、情報伝送装置に関する発明が記載されており、「本件発明は地上設備と移動設備(移動体に搭載した設備)間で通信を行う場合に、相手側設備に電源が存在しない場合でも相手側の設備情報を受信することが可能な片方電源の通信装置に関する。」(第1頁右下欄第5〜8行)、「第1図は本発明装置を用いる情報伝送系の構成例図である。図中1は地上側結合器で以下これを地上子と呼ぶことにする。2は(地上子を除く)地上装置、3は移動体側結合器で以下車上子と呼ぶことにする。4は移動体側装置で以下車上装置という。地上装置中の5は周波数f0の発振器、また6はそのf0の増幅器である。増幅器6の出力は地上子3((1)の誤記)のコイルN1に供給されるが、コイルN1はコンデンサC1と共にf0波に共振するL-C同調回路を形成するように選んである。コイルN1中の電流によって発生した磁束は移動体の車上子3が地上子1に接近した場合に車上子3のコイルN3およびN4と電磁結合する。コイルN3はコンデンサC2と共にf0波の共振回路を形成し、コイルN4に誘起した電圧は車上装置4内の整流電源9で整流し必要な直流電圧を得る。車上装置4内の10は情報設定器で、例えば貨車番号を設定するディジタルスイッチなどで構成される。11は並列→直列符号に変換され変調器12に送られる。変調器12は並直列変換器11の出力「1」と「0」に応じてコイルN3のリアクタンスを変化させる動作をするが、第2図にコイルのインダクタンスをLからL+ΔLに変化させる1方法を示している。」(第2頁左上欄第13行〜右上欄第16行)、「さて変調器12の動作によって共振回路N3、C3のリアクタンスが変化し、共振回路の共振周波数をたとえば周波数f0に対し周波数が近接しかつ上、下に対称なf1とf2間の変化をさせれば、回路電流の位相は第4図のようにα1からα2に変化する。この場合共振回路の共振周波数の変化をf1からf0に、あるいはf0からf2にしてもよいことはいうまでもない。この車上子の回路電流の位相変化を地上子1のコイルN1と近接して設けてあるコイルN2で取り出し、地上装置2内の位相検出(復調)器7で検出し、その結果を「1」「0」の符号で出力する復調を行い、次にこの直列符号を直列→並列変換器8に入力させて並列データDに変換すれば、車上装置の情報設定器10の設定データと同一データを地上側で受信することができる。」(第2頁左下欄第4〜18行)、「また逆に地上側の情報を電源を有する移動体たとえば列車や車両等で検出することも容易で実用上の効果は大きい。」(第3頁左上欄第19行〜右上欄第1行)と説明されている。
本件発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、
(a)上記刊行物1記載の情報伝送装置においては、移動体側装置、車上子及び地上装置、地上子とを備えているところ、この点は、本件発明の非接触電送装置が、移動側モジュールおよび固定側モジュールの対を少なくとも1つそなえ、また、両モジュールの何れか一方は電力送信ヘッドを、他方は電力受信ヘッドをそなえるとする点に相当する。
(b)上記刊行物1記載の情報伝送装置においては、コイルN1中の電流によって発生した磁束は移動体の車上子3が地上子1に接近した場合に車上子3のコイルN4と電磁結合し、コイルN4に誘起した電圧は車上装置4内の整流電源9で整流し必要な直流電圧を得るようにしているところ、この点は、本件発明が、他方のモジュールの動作に必要な電力は、電力受信ヘッドおよび電力送信ヘッドの各電磁コイルが互いに近接対向した電磁結合期間に非接触で得られるとする点に相当する。
(c)上記刊行物1記載の発明における車上装置から地上装置への情報伝送は、車上装置内の変調器12からの情報変調出力を、移動体側結合器のコイルN3と結合する地上側結合器のコイルN2で受信し、その変調出力を地上装置において復調することにより行われているところ、この点は、本件発明が、両モジュールのそれぞれは送受信アンテナを有し、情報信号により変調した信号用搬送波を一方のモジュールからもう一つのモジュ-ルに送信することにより、情報信号を両モジュールを介して授受するとする点に相当する(なお、本件発明においては、「送受信アンテナ」としているに留まり、開放状のアンテナを一義的に示すものではないが、たとえ、開放状のアンテナを用いるとしても、それは、例えば、特開昭62-133829号公報にみられるように、本件出願前周知のことにすぎない。)。
したがって、本件発明においては、情報信号が外部から入力されるとしているのに対し、上記刊行物1記載の発明にはその点についての言及がないという点で、本件発明と上記刊行物1記載の発明(以下、両者という。)とは相違し、また、本件発明においては、両モジュールの何れか一方は、電気的に接続された状態で分離可能な電力用搬送波の供給回路を含む分割モジュールを備えるとしているのに対し、上記刊行物1記載の発明には、その点についての言及がなされていないという点で、両者は相違するが、その余では、両者は一致する。
そこで、上記相違点について検討すると、外部から入力される情報を扱えるようにするといったことは、当業者が適宜なし得る程度のことにすぎず、また、電気的に接続された状態で分離可能な電力用搬送波の供給回路を含む分割モジュールを備えるとする点は、本件出願前の周知技術(必要ならば、例えば、特開昭53-99895号公報参照。この公報には、電力を供給する系統とそれ以外の系統とは完全に分離されていることが示されている。)にすぎない。
したがって、本件発明は、上記刊行物1記載の発明に基づき、周知技術を参酌して、当業者が容易に発明できたものである。
4.むすび
よって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-06-01 
結審通知日 2001-06-12 
審決日 2001-06-25 
出願番号 特願平10-76862
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉見 信明徳永 民雄前田 仁板橋 通孝梅沢 俊  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 吉見 信明
橋本 正弘
発明の名称 電力および情報の非接触伝送装置  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 佐藤 政光  
代理人 橘谷 英俊  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 佐藤 政光  
代理人 玉真 正美  
代理人 橘谷 英俊  
代理人 玉真 正美  

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