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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項2号公然実施 G03G 審判 全部申し立て 1項1号公知 G03G |
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管理番号 | 1043241 |
異議申立番号 | 異議1999-73127 |
総通号数 | 21 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-01-09 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-08-17 |
確定日 | 2001-07-30 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2858665号「電子写真用転写紙」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2858665号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2858665号は、平成2年4月24日に特許出願され、平成10年12月4日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後の経緯は以下のとおりである。 平成11年8月17日 日本製紙株式会社より特許異議の申立 平成11年10月26日 当審より特許異議申立人に審尋 平成12年1月11日 特許異議申立人より回答書の提出 平成13年1月24日 当審より取消理由通知(回答書副本を送付) 平成13年4月6日 特許権者より特許異議意見書の提出 2.本件発明 本件発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】転写紙(ただし、コロイダルシリカを含有するものを除く)を構成するパルプの数平均繊維長が0.43mm以上、および0.1mm以下の微細繊維の割合が33%以下であることを特徴とする電子写真用転写紙。」 3.異議申立の理由および証拠 異議申立人が特許を取り消すべきと主張する理由と証拠は次のとおりである。 「本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許出願前に日本国内で公然知られた発明乃至公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第1項乃至第2号の規定に違反して特許されたものである。 その根拠となる具体的証拠は、下記のとおりである。 本件出願前公用の電子写真用転写紙(物件提出資料1〜3)は、 各々、「実験報告書1」(甲第1号証)によれば、コロイダルシリカを含有しないことが明らかであり、又、 「実験報告書2」(甲第2号証)によれば、構成するパルプの数平均繊維長が0.43mm以上、および0.1mm以下の微細繊維の割合が33%以下であることが明らかであるから、 本件の特許請求の範囲請求項1に係る発明の電子写真用転写紙に該当する。」 《甲第1号証》 「実験報告書1」(日本製紙株式会社 商品開発研究所 主席研究員 岸恭二が平成11年8月16日に作成した実験報告書) (なお、その補足資料たる異議申立人提出の回答書添付の甲第1号証の1、甲第1号証の2、参考資料1〜2を参照) 《甲第2号証》 「実験報告書2」(日本製紙株式会社 中央研究所 紙パルプ第五研究室長 阿部裕司が平成11年8月17日に作成した実験報告書) 《物件提出資料1》 昭和63年6月13日付の特許庁出願第二課の押印がある特許異議申立理由補充書副本に使用された電子写真用転写紙(以下、「α」という。) 《物件提出資料2》 昭和63年2月9日付の特許庁出願第二課の押印がある特許異議申立理由補充書副本に使用された電子写真用転写紙(以下、「β」という。) 《物件提出資料3》 平成1年11月20日付けの特許庁出願課の押印がある特許異議申立理由補充書副本に使用された電子写真用転写紙公用の電子写真用転写紙 ((以下、「γ」という。) ・甲第1号証の「実験報告書1」には、α、β、γの物件提出資料の一部分を切り取った各試料について、結晶性無機填料(タルク、カオリン等)の有無を知るX線回折分析と、元素の種類と量を知るエネルギー分散型X線分析・測定(EDS)とを行ったこと、 ついで、各試料のMg、Al、Si各元素のEDS実測カウント値を、コロイダルシリカ以外の結晶性無機填料に含まれるMg、Al、Si各元素の寄与すると推計されるEDS算出カウント値(ただし、タルクのMg/Siカウント値比は、異議申立人の調達した標準試料の実測データに基づき1/3.85、又、カオリンのAl/Siカウント値比は、同様に1/1.17と設定して、EDS算出カウント値を導き出す前提としている。)と対比すると、ほぼ全て合致し、コロイダルシリカ含有の場合にもたらされるはずのSi元素のEDSカウント値(実測カウント値と算出カウント値との差分)は、略ゼロであり、α、β、γの各試料には、コロイダルシリカが含まれていないと推察される旨が記載されている。 ・具体的に、試料αでの実験と結果は、概略以下の如く記載されている。 先ず、X線回折分析により、カオリン、タルク含有が明らかとなる。又、EDS分析・測定により、各元素の実測カウント値(Mg:281、Al:1846、Si:3163)が明らかとなる。 Al実測カウント値(1846)相当分のカオリンによるSi算出カウント値は、カオリンのAl/Siカウント値比(1/1.17)から、「2160」となり、 Mg実測カウント値(281)相当分のタルクによるSi算出カウント値は、タルクのMg/Siカウント値(1/3.85)から、「1082」となるので、コロイダルシリカ以外の結晶性無機填料に含まれるSi元素の算出カウント値は、「3242」(=2160+1082)となる。 Si実測カウント値(3163)は、コロイダルシリカ以外の結晶性無機填料に含まれるSi元素の算出カウント値「3242」によって充足されてしまうが、算出値が実測値を79超過するのは、「分析精度や天然のタルクが産地や産出後の処理などにより変化するものであること」による『偏差』であり、「事実上無視しうるもの」と判断されるので、実質的にSi実測カウント値とSi算出カウント値との差分はゼロであり、コロイダルシリカが含まれていないと推察される。 (異議申立人提出の補足資料である回答書第9〜13頁参照) ・甲第2号証の「実験報告書2」には、α、β、γの「各試料10g(絶乾量)を1リットルの水中に24時間浸漬後、TAPPI標準離解機で、15分間離解を行った」前処理ののち、「得られたパルプスラリーを繊維長測定装置(Fiber Analyzer The KAJAANI FS-200、フィンランド国、KAJJNI社製)によって、数平均繊維長及び0.1mm以下の微細繊維の数の割合を測定」すると、その測定結果は、 αの数平均繊維長:0.44mm、 αの0.1mm以下の微細繊維の数の割合:21.4%、 βの数平均繊維長:0.43mm、 βの0.1mm以下の微細繊維の数の割合:22.7%、 γの数平均繊維長:0.47mm、 γの0.1mm以下の微細繊維の数の割合:19.2%であり、 α、β、γのいずれも、本件発明の「構成するパルプの数平均繊維長が0.43mm以上、および0.1mm以下の微細繊維の割合が33%以下である」との要件に合う値であったことが示されている。 4.検討・判断 異議申立人が特許を取り消すべきと主張する理由と根拠は次のとおりのものである。 「本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許出願前に日本国内で公然知られた発明乃至公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第1項乃至第2号の規定に違反して特許されたものである。 その根拠となる具体的証拠は、下記のとおりである。 α(昭和63年6月13日公用の電子写真用転写紙、物件提出資料1)、 β(昭和63年2月9日公用の電子写真用転写紙、物件提出資料2)、 γ(平成1年11月20日公用の電子写真用転写紙、物件提出資料3)は、 各々、「実験報告書1」(甲第1号証)によれば、コロイダルシリカを含有しないことが明らかであり、又、 「実験報告書2」(甲第2号証)によれば、構成するパルプの数平均繊維長が0.43mm以上、および0.1mm以下の微細繊維の割合が33%以下であることが明らかであるから、 α、β、γは、いずれも本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の電子写真用転写紙に該当する。」 そこで、「実験報告書1」の内容について検討する。 「実験報告書1」では、各試料のコロイダルシリカ以外の結晶性無機填料のMg、Al、Si各元素の寄与すると推計されるEDS算出カウント値を計算して導き出すにあたり、タルクのMg/Siカウント値比を、異議申立人の調達した標準試料の実測データに基づき1/3.85と設定している。 しかし、タルクは、異議申立人自身が『偏差』の検討過程(前掲摘示事項および異議申立人提出の補足資料である回答書第9〜13頁参照)で認めているように、産地や、産出後の処理で、元素組成等に大きなバラツキがあるので、そのMg/Siカウント値比を一義的に「1/3.85」と設定する合理的根拠を見出すことはできない。 国内で調達しうる汎用タルクには、例えば、NKタルク社の「NK85」の様に、Mg/Siカウント値比が、「1/0.63」のものも存在する。(特許権者の提出した特許異議意見書第4頁参照。) Mg/Siカウント値比を、「1/3.85」でなく「1/0.63」とした場合、試料αでの実測・算出・対比・推察の概略は、以下のとおりとなる。 Mg実測カウント値(281)相当分のタルクによるSi算出カウント値は、「1082」でなく「178」となるので、コロイダルシリカ以外の結晶性無機填料に含まれるSi元素の算出カウント値は、「2338」(=2160〔カオリン分・算出根拠は前掲3と同じ〕+178〔タルク分〕)となる。 Si実測カウント値(3163)は、コロイダルシリカ以外の結晶性無機填料に含まれるSi元素による算出カウント値「2338」によっては充足されず、その差の不足分「825」は、コロイダルシリカ等の非結晶性無機填料によるものと推察され、試料αには、コロイダルシリカが含まれてないとはいえない。 試料β、γでの実測・算出・対比・推察も同様であり、やはり、コロイダルシリカが含まれていないとはいえない。 結局、「実験報告書1」では、α、β、γが、コロイダルシリカを含有しないことは立証されていないので、それらが、本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の電子写真用転写紙に該当するとはいえない。 したがって、本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許出願前に日本国内で公然知られた発明乃至公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第1号乃至第2号の規定に違反して特許されたものであるということはできない。 5.むすび したがって、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-07-04 |
出願番号 | 特願平2-106350 |
審決分類 |
P
1
651・
112-
Y
(G03G)
P 1 651・ 111- Y (G03G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 井上 彌一、原 健司 |
特許庁審判長 |
城所 宏 |
特許庁審判官 |
植野 浩志 伏見 隆夫 |
登録日 | 1998-12-04 |
登録番号 | 特許第2858665号(P2858665) |
権利者 | 富士ゼロックス株式会社 王子製紙株式会社 |
発明の名称 | 電子写真用転写紙 |
代理人 | 箱田 篤 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 箱田 篤 |
代理人 | 平山 孝二 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 河澄 和夫 |
代理人 | 平山 孝二 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 竹内 英人 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 竹内 英人 |