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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B23K |
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管理番号 | 1043273 |
異議申立番号 | 異議2001-70652 |
総通号数 | 21 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-09-02 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-02-28 |
確定日 | 2001-08-22 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3081809号「金属材の接合方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3081809号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件特許第3081809号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成9年2月21日に特許出願され、平成12年6月23日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人住友軽金属工業株式会社より請求項1及び2に係る特許について特許異議の申立てがなされ、平成13年5月9日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年7月17日に特許異議意見書が提出されたものである。 2 本件特許に係る発明 本件特許第3081809号の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、特許査定時の明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認める。 「【請求項1】金属材同士の接合線に沿って回転子のプローブを埋入状態で回転しつつ進行させて両金属材同士を接合一体化する摩擦攪拌接合方法において、 接合終端部での前記プローブの引き上げによって生じる孔をピンの埋設によって塞ぐに際し、前記ピンが前記プローブとして回転子に着脱可能に取り付けられ、摩擦攪拌接合における接合終端部において該プローブを回転子から離脱させて金属材側に残すことによって、前記孔を塞ぐことを特徴とする金属材の接合方法。 【請求項2】プローブが抜け止め形状を有する請求項1記載の金属材の接合方法。」 3 特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人住友軽金属工業株式会社は、次の甲第1号証及び甲第2号証を提示し、本件の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである旨を主張する。 甲第1号証:米国特許第5460317号明細書 甲第2号証:国際公開第95/26254号パンフレット(1995) 4 当審が通知した取消しの理由の通知の概要 当審が通知した取消しの理由は、上記甲第1号証を引用し、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものであるというものである。 5 甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明の内容 (1)甲第1号証 甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認める。 金属材のクラックに沿って回転子のプローブを埋入状態で回転しつつ進行させてクラックを補修する摩擦溶接方法において、移動方向でのクラックの端を固めるために、クラックの端部でプローブを金属材に残すこと。 (2)甲第2号証 甲第2号証には、次の発明が記載されているものと認める。 金属材同士の接合線に沿って回転子のプローブを埋入状態で回転しつつ進行させて部材を両金属材同士を接合一体化する摩擦撹拌接合方法において、挿入深さを調節や接合部材の厚さの違いへの対応のために、プローブ先端に設けられたピンを取り換え可能とすること。 上記ピンを、縦軸に沿って交互に出っ張りとへこみのある形状とすること。 6 対比・判断 本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明における「摩擦溶接方法」は、複数の部材を接合するためには用いられていないが、摩擦溶接を行う方法という限りにおいて、本件発明1における「摩擦撹拌接合方法」と共通する。また、甲第1号証に記載された発明において「クラックの端」は、摩擦溶接の終端部という限りにおいて、本件発明1における「摩擦撹拌接合における接合終端部」に相当する。したがって、両者は、 金属材の摩擦溶接方法において、摩擦溶接の終端部においてプローブを金属材側に残す金属材の摩擦溶接方法。 である点で一致し、次の3点で相違する。 本件発明1は、金属材同士の接合線に沿って摩擦撹拌接合を行う方法であるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、金属材のクラックに沿って摩擦溶接を行う方法である点(以下「相違点1」という。)。 本件発明1は、接合終端部でのプローブの引き上げによって生じる孔をピンの埋設によって塞ぐためにプローブを金属材側に残すものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、移動方向でのクラックの端部を固めるためである点(以下「相違点2」という。)。 本件発明1において、ピンがプローブとして回転子に着脱可能に取り付けられるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、プローブを回転子から離脱させるための構成が明らかでない点(以下「相違点3」という。)。 上記相違点について検討する。相違点1及び3に関係し、金属材同士の接合線に沿って摩擦撹拌溶接方法を行うことにより、両金属材同士を接合一体化すること及び、ピンを取り換え可能に回転子に取り付けることは、甲第2号証に記載されている。しかし、甲第2号証に記載された発明は、ピンの挿入深さの調節や接合部材の厚さの違いへの対応のためにピンを取り換え可能としたものであり、本件発明1のように摩擦撹拌接合の接合終端部でのプローブの引き上げによって生じる孔をピンの埋設によって塞ぐためにピンを回転子に着脱可能に取り付けたものではない。そして、甲第2号証に記載されたもののごとく、両金属材同士を接合線に沿って接合一体化するものにあっては、クラックの端を固める必要性はなく、また、摩擦撹拌接合における接合終端部に生じる孔を塞ぐことが、本件特許の特許出願前に公知であったというものでもないから、甲第1号証にプローブを金属材に残すものがあるからといって、これを甲第2号証に記載された発明と組み合わせることが容易であるということはできない。 なお、本件の明細書の段落番号【0010】及び図2には、参考例として、摩擦撹拌接合における接合終端部に生じる孔にピンを打ち込み又は圧入して塞ぐか、ねじを刻設したピンをねじ込んで塞ぐものが記載されているが、このことが本件特許に係る発明の特許出願前に公然知られ、公然実施され、又は頒布された刊行物記載されたことを示す証拠はない。 したがって、本件発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明2は、本件発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものであるから、上記説示した理由と同様の理由により、甲第1号証及び甲第2号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 7 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-08-06 |
出願番号 | 特願平9-37821 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B23K)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 加藤 昌人 |
特許庁審判長 |
小林 武 |
特許庁審判官 |
中村 達之 宮崎 侑久 |
登録日 | 2000-06-23 |
登録番号 | 特許第3081809号(P3081809) |
権利者 | 昭和アルミニウム株式会社 |
発明の名称 | 金属材の接合方法 |
代理人 | 高田 健市 |
代理人 | 清水 久義 |
代理人 | 黒瀬 靖久 |
代理人 | 中島 正博 |
代理人 | 中島 三千雄 |