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審判番号(事件番号) データベース 権利
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判定200260110 審決 特許
判定200560030 審決 特許
判定200360077 審決 特許
判定200260108 審決 特許

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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) H01C
管理番号 1043329
判定請求番号 判定2001-60010  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1987-11-12 
種別 判定 
判定請求日 2001-01-19 
確定日 2001-07-30 
事件の表示 上記当事者間の特許第1662312号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「チツプ抵抗器」は、特許第1662312号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 【1】請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号写真並びにその説明書に示す発明「チップ抵抗器」(以下、「イ号物件」という。)は、特許第1662312号の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。
【2】本件特許発明
本件特許第1662312号は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された「チップ抵抗器」であって、その発明(以下、「本件特許発明」という。)は、次のとおりのものである。
(なお、便宜上、構成要件に分説して符号(I)〜(V)を付加し、また図面上の番号を付加した。)
「(I)一側面に金属箔抵抗体(12)が貼着された絶縁性基板(10)を、柔軟な内側の樹脂(24)と硬質な外側の樹脂(26)とで2層に外装し、
(II)この外装樹脂(24、26)のプリント基板(30)への取付面(26a)に板状外部接続端子(20)を臨ませたチップ抵抗器(32)において、
(III)前記絶縁性基板(10)の他側面に貼着されその外部突出端が前記外装樹脂(24、26)のプリント基板(30)への取付面(26a)以外の面から外部へ突出し前記外装樹脂(24、26)との間に間隙をもって前記取付面(26a)方向へ折曲された一対の板状外部接続端子(20)と、
(IV)これらの各板状外部接続端子(20)と前記抵抗体(12)とを前記外装樹脂(24、26)内で接続するリード線(18)とを備えることを特徴とする
(V)チップ抵抗器(32)。」
【3】イ号物件
イ号物件は、請求人が提出した判定請求書に添付されたイ号写真とその説明書及びイ号図面(甲第6号証)からみて、次の(i)〜(v)に分説したとおりの構成を具備するものである(当事者間に争いがない(審尋調書)。また便宜上、図面上の符号を付加した。)。
「(i)プリント基板(j)に対向する側面に金属箔抵抗体(a)が貼着された絶縁性基板(b)を、その一側面を柔軟な内側の樹脂(g)で覆うように基板(b)の抵抗体(a)貼着面だけに盛り付けられ、さらにその全体を硬質な外側の樹脂(c)で覆って外装し、
(ii)この外装樹脂(g、c)のプリント基板(j)への取付面(k)に板状外部接続端子(e)を臨ませたチップ抵抗器(d)において、
(iii)前記絶縁性基板(b)の他側面に貼着され、これに隣接する端面に沿って取り囲むように配設されてその外部突出端が前記外装樹脂(g、c)のプリント基板(j)への取付面(k)以外の面から外部へ突出し前記外装樹脂(g、c)との間に間隙をもって前記取付面(k)方向へ折曲された一対の板状外部接続端子(e)と、
(iv)これらの各板状外部接続端子(e)と前記抵抗体(a)とを前記外装樹脂(g、c)内で接続するリード線(f)とを備える
(v)チップ抵抗器(d)。」
【4】イ号物件と本件特許発明との対比・検討点
(一)対比
イ号物件が本件特許発明に係る前記分説した各構成要件(I)〜(V)を充足するか否かについて両者を対比すると、イ号物件は、その構成(ii)、(iv)及び(v)において本件特許発明の構成要件(II)、(IV)及び(V)を充足することは明らかである(当事者間にも争いがない。)。
しかしながら、イ号物件が本件特許発明のその余の構成要件(I)、(III)を充足しているか否かについては、イ号物件の構成(i)、(iii)がその一部において本件特許発明と相違し、当事者間に争いがある。
(二)検討点
イ号物件が本件特許発明の構成要件(I)、(III)を充足するか否かにおける主な検討点は、以下のとおりである。
・検討点(1)
本件特許発明の構成要件(I)において、イ号物件の構成(i)における「プリント基板(j)に対向する側面に金属箔抵抗体(a)が貼着された絶縁性基板(b)を、その一側面を柔軟な内側の樹脂(g)で覆うように基板(b)の抵抗体(a)貼着面だけに盛り付けられ、さらにその全体を硬質な外側の樹脂(c)で覆って外装し」は、本件特許発明の構成要件(I)における「一側面に金属箔抵抗体(12)が貼着された絶縁性基板(10)を、柔軟な内側の樹脂(24)と硬質な外側の樹脂(26)とで2層に外装し」といえるか。
・検討点(2)
前記検討点(1)におけるイ号物件の内側の樹脂(g)は、仮に本件特許発明の内側の樹脂(24)に当たらないとしても均等である、といえるか。
・検討点(3)
本件特許発明の構成要件(III)において、イ号物件の構成(iii)における「絶縁性基板(b)の他側面に貼着され、これに隣接する端面に沿って取り囲むように配設されてその外部突出端が前記外装樹脂(g、c)のプリント基板(j)への取付面(k)以外の面から外部へ突出」する一対の板状外部接続端子(e)は、本件特許発明の構成要件(III)における「絶縁性基板(10)の他側面に貼着されその外部突出端が前記外装樹脂(24、26)のプリント基板(30)への取付面(26a)以外の面から外部へ突出」する一対の板状外部接続端子(20)といえるか。
【5】判断(その1)
(一)検討点(1)について
まず、被請求人は、検討点(1)におけるイ号物件の金属箔抵抗体(a)は「プリント基板(j)に対向する側面」に貼着される構成であることから、その作用効果など種々相違する旨主張しているが、このイ号物件の構成は本件特許発明における「一側面」であることに差異はなく、金属箔抵抗体(a)の貼着についてのイ号物件の前記構成は、本件特許発明の構成(I)を充足するものであるから、被請求人の主張は採用することができない。したがって、検討点(1)の主要な争点は、外装に係わるもの、殊に「2層に外装し」について、本件特許発明が「基板(10)を、柔軟な内側の樹脂(24)と硬質な外側の樹脂(26)とで2層に外装し」と規定する構成を、イ号物件の構成(i)における「その一側面を柔軟な内側の樹脂(g)で覆うように基板(b)の抵抗体(a)貼着面だけに盛り付けられ」るものが充足しているといえるか否か、であり、以下に検討する。
はじめに、本件特許発明の「2層に外装し」における「内側の樹脂(24)」について、本件特許請求の範囲には、「柔軟な内側の樹脂と硬質な外側の樹脂とで2層に外装し」と記載されている。しかしながら、この記載から直ちに、イ号物件における基板(b)の「一側面を柔軟な内側の樹脂(g)で覆うように基板(b)の抵抗体(a)貼着面だけに盛り付けられ」る「内側の樹脂(g)」が、本件特許発明における「2層に外装し」とする「内側の樹脂(24)」といえるのか否か、確定することができない。したがって、その技術的意義を明確にする必要があるものと認められるから、本件特許明細書の記載、出願等の経緯、さらには公知乃至周知技術などを参酌することとする。
(1)本件特許明細書における記載内容
本件特許明細書には、「外装」に係る格別の定義は見当たらず、また内側の樹脂(24)など外装に係わる事項として、以下の記載が認められる。
(1-1)「アルミナやガラス等の絶縁性基板に、ニッケル、クロームなどを含む金属箔抵抗体を貼着し、この金属箔抵抗体にフォトエッチングなどにより抵抗体パターンを形成して抵抗チップとし、リード線をこの抵抗体に接続した後、全体を樹脂で外装した金属箔抵抗器が従来よりある。」(公告公報第1頁左欄第20行〜同頁右欄第3行)
(1-2)「本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、プリント基板への実装の際に外部接続端子側から応力が加わっても、抵抗器自身特に抵抗チップには応力が加わりにくくして実装状態での抵抗値を高精度に保つことを可能にするチップ抵抗器を提供することを目的とする。」(同公報第2頁左欄第7〜12行)
(1-3)「このように組立てられた後、基板10の周囲は適当な弾性を有するゴム系樹脂24と、硬質樹脂26とで二重に外装される。」(同公報第2頁右欄第18〜20行)
(1-4)「(発明の効果)
本発明は以上のように、外部接続端子を外装樹脂のプリント基板への取付面以外の面から外部へ突出させ、この突出部分を外装樹脂との間に間隙をもって取付面方向へ折曲させたものであるから、プリント基板に抵抗器を半田付けした場合にも応力がこの外部接続端子の外部突出部分の僅かな変形により吸収される。このため抵抗器に大きな応力が加わることがなく、プリント基板へ実装した状態での抵抗値の精度が向上する。特に外部接続端子は、取付面以外の面から外部へ突出させたから、外部接続端子は十分に長くなり、外部接続端子自身の弾性を利用して半田付け時の応力を良好に吸収できる。また両外部接続端子は絶縁性基板の金属箔抵抗体を貼着した面と反対の面に貼着し、これらの外部接続端子と抵抗体とを前記外装樹脂内でリード線によって接続したものであるから、万一外部接続端子に応力が加わってもその応力が抵抗体に加わることもなく、抵抗値の精度は一層向上する。」(同公報第3頁右欄第5〜22行)
(2)出願等の経緯
審査官の拒絶の理由に対する平成2年11月5日付意見書(乙第5号証)において、請求人(特許出願人、特許権者)は概要以下の主張を行い、また併せて明細書の補正(「発明の効果」について前記(1-3)の一部付加)を行っている。
(2-1)「金属箔を貼着した絶縁性基板を柔らかい内側の樹脂と、その外側を覆う硬い樹脂との2層に外装し、温度変化時の絶縁性基板の膨張・収縮により応力がこの基板に加わるのを防ぐものである。」(意見書第4頁第8〜12行)
(2-2)「また本願は外装樹脂を2層にして基板の膨張収縮を許容するのに対し、引例のものでは一層である。」(同第7頁第6〜8行)
(3)公知乃至周知技術について
(3-1)公知乃至周知技術として、本件特許発明に係る審査時の拒絶理由に引用された刊行物である実願昭58-77215号(実開昭59-182926号)のマイクロフィルム(本件判定請求における甲第9号証及び乙第14号証)が認められる。
この刊行物(甲第9号証、乙第14号証)には、その実施例と図面の第1〜3図に係わる記載を参酌すると、電子部品に関するもので「抵抗などにも適用できる」樹脂モールド形固体電解質コンデンサが開示されており、「コンデンサエレメント1の全周面は樹脂材7にて、下面7aの中央部に突出部8が形成されるようにモールド被覆されている。尚、第2の外部リード部材5は電極引出し層3に、内端5aが突出部8に対向する部分に位置するように接続されている。そして、第1、第2の外部リード部材4,5の導出端は樹脂材7の下面7aに沿うように折曲されている。」(公開明細書第5頁第4〜11行)との記載が認められる。
(3-2)被請求人が答弁書と共に提出した乙第8号証(実願昭47-14317号(実開昭48-90147号)のマイクロフィルム)、乙第12号証(実願昭58-138762号(実開昭60-48231号)のマイクロフィルム)、乙第13号証(実願昭58-73496号(実開昭59-177934号)のマイクロフィルム)及び乙第15号証(実願昭57-168482号(実開昭59-72725号)のマイクロフィルム)によれば、これらには電子部品の外部接続端子として「外部突出端が外装樹脂のプリント基板への取付面以外の面から外部へ突出し、前記外装樹脂との間に間隙をもって取付面方向へ折曲された一対の板状外部接続端子」が開示されている。
同じく乙第11号証(特開昭59-200448号公報)、乙第16号証(特開昭60-86849号公報)及び乙第17号証(特開昭59-61154号公報)によれば、これらには電子部品の外部接続端子と内部接続について「絶縁基板の他側面に貼着されその外部突出端が外装樹脂のプリント基板への取付面以外の面から外部へ突出した一対の板状外部接続端子」、及び「板状外部接続端子と抵抗体とを外装樹脂内で接続するリード線とを備える」ことが開示されている。
(4)外装について
「外装」の意味について、岩波国語辞典第三版第159頁(乙第1号証)には、「【外装】荷物などの、外側の包み。」とあり、このことから「外装」は、通常、対象物を包む外側の包みであり、対象物を包み覆うものを指すものと解される。したがって、対象物が基板等の平板状の部材である場合にあっても、「外装し」という場合には、基板等を包み覆うものであることを要するものと認められる。
(5)請求人(特許権者)の審尋及び上申書における主張
請求人(特許権者)は、被請求人の主張に対し、審尋及び上申書において、概要以下のとおり主張している。
(5-1)「本件特許出願時において、柔らかい樹脂で金属箔抵抗体を覆うためには現在のような精度が高いデスペンサーがなく、手作業でやらざるをえなく、また、樹脂の材料が非常に限られていて固まるときに収縮するため、金属箔抵抗体にストレスが加わり抵抗値が変化しないように、全体を柔らかな樹脂で覆ってしまった実施例になっている。」(審尋調書)
(5-2)「特許請求の範囲には「全体を2層に覆う」とは記載されていないから、少なくとも必要な部分を2層にしたものを含む意味に解釈すべきである。
内側の柔軟な樹脂(内層樹脂)を設ける理由は、モールドした外装樹脂が冷えて硬化するのに伴って収縮し、基板や抵抗体に応力(ストレス)を加えることになるから、このような応力が加わったり残ったりしないようにするためである。
元々このような「2層に外装する」という限定を加えたのは、審査段階の拒絶理由通知書で引用した文献(実開昭59-182926号公報、甲第9号証)に示されたものとの区別を明確にするためである。すなわちこの引用文献には実施例としてコンデンサが説明され、コンデンサに代えて抵抗にも適用できるとの記載があるが、抵抗の構造については何の説明もない。そこで本件発明では、対象とする抵抗器は特殊な超精密抵抗器であって、引用文献1が対象としていると思われる普通の抵抗器とは異なるものであることを明確にするために前記のような限定を加えたものである。従って、請求人が意見書で基板全体を2層に外装した例を挙げて説明したからといって、このようなものに限定的に解釈すべきではない。」(上申書第2頁第11〜26行)
(6)まとめ
以上の事実によれば、本件特許発明における柔軟な内側の樹脂(24)と硬質な外側の樹脂(26)とで「2層に外装し」とは、「基板に応力が加わるのを防止する」ことを技術的意義とし、このために柔軟な内側の樹脂(24)が絶縁性基板(10)の周囲全体を包むように覆い、さらに硬質な外側の樹脂(26)がこの内側の樹脂(24)の周囲全体を包むように覆うことによりなるものをもって「2層に外装し」と解するのが相当と認められる。
すなわち、このことは本件特許明細書の前掲記載「基板10の周囲は適当な弾性を有するゴム系樹脂24と、硬質樹脂26とで二重に外装される。」(同公報第2頁右欄第18〜20行)、また出願等の経緯における意見書での主張「本願は外装樹脂を2層にして基板の膨張収縮を許容するのに対し、引例のものでは一層である。」、さらには本件特許発明に係る出願当時「1層の外装」は公知乃至周知技術であること、及び「1層に外装」となる部分を備えるものは明細書の補正により意識的に除外されたものと認められることからも推認できる。そして、本件特許発明において採用された「2層に外装し」は、その技術的意義からみて公知乃至周知技術の「1層に外装」するものとは異なる作用効果を奏せしめるためのものであって、本件特許発明はこの公知乃至周知技術の「1層に外装」した際の作用効果にとどまるものは包含しない、ということができる。さらに、このように解することは本件特許明細書に「外装」に係る格別の定義もなされておらず、また当該明細書に記載された「応力が加わっても、抵抗器自身特に抵抗チップには応力が加わりにくくして実装状態での抵抗値を高精度に保つ」こと、及び意見書における主張にあるような「2層に外装し、温度変化時の絶縁性基板の膨張・収縮により応力がこの基板に加わるのを防ぐ」ことの技術的意義に沿うものであり、さらにまた「外装」が「外側の包み」を意味する通常の解釈とも合致するものである。
以上のとおり、本件特許発明の構成要件(I)において規定された「柔軟な内側の樹脂(24)と硬質な外側の樹脂(26)とで2層に外装し」とは、柔軟な内側の樹脂(24)が絶縁性基板(10)の周囲全体を包むように覆い、さらにこの周囲全周を包むように覆うことで「2層に外装し」となすものであって、硬質な外側の樹脂(26)のみにより「1層に外装」となる部分を備えるものは除外されるとするのが相当であり、またその余の構成(「外装樹脂(24、26)のプリント基板(30)への取付面(26a)」、「外装樹脂(24、26)との間に間隙」及び「外装樹脂(24、26)内で接続するリード線(18)」)からもこのような技術的意義として解することを妨げる構成は見当たらず、前記のように解することが妥当である。
なお、請求人は、均等論の観点から、相違点に係る構成についての均等の主張を行っているが、この点は以下の【6】項で検討する。
(二)イ号物件について
イ号物件に係る構成について検討すると、イ号物件において、チップ抵抗器(d)は、絶縁性基板(b)の一側面を柔軟な内側の樹脂(g)で覆うように、基板(b)の抵抗体(a)貼着面だけに盛り付けられる(当事者間に争いがない)ものであり、この一面側のみの被覆により奏する作用効果は、本件特許発明が「2層に外装し」とすることにより奏する作用効果乃至技術的意義とは異なるものであって、「絶縁性基板の膨張・収縮により応力がこの基板に加わるのを防ぐ」ものとはいえないものである。これはイ号物件の写真とその説明書(甲第4〜5号証)及びイ号図面(甲第6号証)の記載内容、さらには被請求人が主張する「イ号物件は、上述のように、内側の樹脂(g)は絶縁性基板(b)における金属箔抵抗体(a)の貼着面だけに盛り付けられている。従って、内側の柔軟な樹脂(g)によって、絶縁性基板(b)全体の膨張張収縮を緩和する効果は必ずしも得られない。特に、絶縁性基板(b)における板状外部接続端子(e)の貼着面及びその周囲には、内側の柔軟な樹脂(g)は一切施されていない。このため、板状外部接続端子(e)のプリント基板(j)への半田付け時に、内側の柔軟な樹脂(g)によって、絶縁性基板(b)の一方の面に加わる熱の影響を緩和することはできず、板状外部接続端子(e)に加わる応力の緩和効果も期待し難い。」(答弁書第7頁第第19〜27行)からも認められる。そして、このイ号物件における外装(g、c)は、内側の樹脂(g)がない他側面の外側の樹脂(c)の一部が「柔軟な内側に樹脂」といえるようなものとも認められず、したがってこのイ号物件における抵抗体電子部品の外装(g、c)は本件特許発明における「2層に外装し」とする構成を採用しているものとは認められない。
なお、このイ号物件のように外装の一部が「1層の外装」であっても、請求人(特許権者)が主張するように、場合によっては応力に係わる保護作用が一部に生じるとも考えられ、また仮に請求人(特許権者)が主張するような製造上の差異によるものがあるとしても、イ号物件における内側の樹脂(g)は、本件特許発明の技術的意義に係わる前記した基板に対する保護作用を達成するためのものではなく(すなわち、単なる被覆のためのものであって基板の熱的な応力を緩和するとまではいえない。)、また該保護作用も所要の作用をもつものではなく不完全なものであると認められる。
したがって、このイ号物件における内側の樹脂(g)は、本件特許発明におけると同意義の「内側の樹脂」であるとはいえず、この点においてイ号物件に係る構成は「2層に外装し」といえるものでないことは明らかである。
(三)請求人(特許権者)の主張について
請求人(特許権者)は、本件特許発明が内側の樹脂(24)と外側に樹脂(26)を「2層に外装し」となしたことについて、「本件特許出願時において、柔らかい樹脂で金属箔抵抗体を覆うためには現在のような精度が高いデスペンサーがなく、手作業でやらざるをえな」いという、出願当時の製造上の技術的制約を主張している。
しかしながら、この製造上の技術的制約は、「2層に外装し」とする際の前記技術的意義からみて、前記判断を左右するものではないから、請求人(特許権者)の当該主張は採用することができない。
(四)結論
以上のとおり、イ号物件における内側の樹脂(g)と外側の樹脂(c)とによる外装(g、c)は、本件特許発明における内側の樹脂(24)と外側の樹脂(26)とで2層に外装することによる作用効果及び技術的意義を持つものではなく、イ号物件の外装を形成する内側の樹脂(g)と外側の樹脂(c)は、本件特許発明の「2層に外装し」といえるものとは認められない。
したがって、イ号物件は、本件特許発明における構成要件(I)を充足するものとは認められない。
【6】判断(その2)
(一)検討点(2)について(均等論)
前記検討したように、イ号物件の内側の樹脂(g)は、本件特許発明の構成要件(I)に規定された「内側の樹脂(24)」に当たらないものであるが、請求人がさらに主張する均等について、これがいえるか否かについて、以下に検討する。
(1)本質的部分について
請求人は、判定請求書において『外部接続端子(20)の外部突出端と外装樹脂(26)との間に間隙を形成することにより、半田付け時等に外部接続端子(20)に加わる応力が基板(10)に加わらないようにすることを主要な効果とするものである。これに対して本件特許発明の「基板(10)を2層に外装する」構成は、リード線(18)で抵抗体(12)と外部接続端子(20)とを接続した場合に抵抗体(12)とリード線(18)とを保護する機能を発揮するにすぎず、前記の主要な効果に比較して何ら本質的な機能を有するものではない。このことはこの構成が本件特許の「特許請求の範囲」における前提項として記載されていることからも肯定されるべきである。』旨主張している。
しかしながら、本件特許発明における「2層に外装し」に係わる「内側の樹脂(24)」の技術的意義は、前記【5】(一)(6)のとおり「基板に応力が加わるのを防止する」というものであって、その詳細は「応力が加わっても、抵抗器自身特に抵抗チップには応力が加わりにくくして実装状態での抵抗値を高精度に保つ」ものであり、また「2層に外装し、温度変化時の絶縁性基板の膨張・収縮により応力がこの基板に加わるのを防ぐ」ことにあるものであるから、これに係わる「内側の樹脂(24)」は本件特許発明における本質的部分といえるものである。そして、請求人の主張する前記「外部接続端子(20)の外部突出端と外装樹脂(26)との間に間隙を形成することにより、半田付け時等に外部接続端子(20)に加わる応力が基板(10)に加わらないようにすることを主要な効果とする」点、及び「本件特許発明の「基板(10)を2層に外装する」構成は、リード線(18)で抵抗体(12)と外部接続端子(20)とを接続した場合に抵抗体(12)とリード線(18)とを保護する機能を発揮するにすぎず、前記の主要な効果に比較して何ら本質的な機能を有するものではない」点は、前記した出願等の経緯及び公知乃至周知技術からみて、「内側の樹脂(24)」にも係わるものであって「間隙」のみの構成をもって主要な効果とすることはできず、「内側の樹脂(24)」を本件特許発明における本質的部分ではないということはできない。
したがって、絶縁性基板(10)を樹脂(24、26)で「2層に外装し」という本件特許発明の構成要件は、本件特許発明が先行技術を回避して特許を受けるために付加された本件特許発明に不可欠な技術的事項であり、本件特許発明の主要な効果と密接に結びついた本質的部分といえるものであるから、請求人の当該主張は採用することができない。
(2)置換可能性及び置換容易性について
請求人は、判定請求書において『イ号物件における前記の相違点(抵抗体(a)の上に柔軟な内層樹脂(g)を盛り付ける構成)は、本件特許発明の前記構成と同様に「抵抗体(a)とリード線(e)とを保護する」機能を有するものであり、これらの構成は同一の作用効果を奏するものである。』(第7頁第10〜13行)旨主張し、また上申書において『本件判定請求事件の対象である超精密抵抗器の技術分野においては、外装樹脂などの材料や製造装置の進歩は著しいものがある。すなわち樹脂材料の種類や特性が極めて豊富になる一方、製造装置もコンピュータ化により著しく進歩し入手し易くなっている。外装樹脂として、基板と良く適合しモールド時に基板や抵抗体に残留応力が生じないものが存在すれば、基板全体を2層に外装する必要がないのは明らかであるが、本件特許の出願時においてはこのような良い材料は存在せず、その出現も予測できなかったために、「2層に外装」する限定を加えたものであり、全体を2層に包む場合の説明を意見書で行ったものである。現在では樹脂の種類も多いので、このような適当な材料の組合せを見付けることが比較的容易であり、その場合には「全体」を2層に包む必要が無いことは明らかである。』(第4頁第1〜11行)旨主張している。
しかしながら、本件特許発明における「2層に外装し」とすることの作用効果乃至技術的意義は、前記したように、さらに「応力が基板(10)に加わらないようにする」ことをも要するものであって、イ号物件における「外装(g、c)」の作用効果がこのような作用効果を有しないことは前記したとおりであり、また請求人は「外装樹脂として、基板と良く適合しモールド時に基板や抵抗体に残留応力が生じないものが存在すれば、基板全体を2層に外装する必要がないのは明らかである」としているが、イ号物件のものがこのような「基板や抵抗体に残留応力が生じないもの」であるとも認められないことから、これらの点における請求人の当該主張は採用することができない。
(3)その他
本件特許発明における前記した出願等の経緯からみて、硬質な外側の樹脂(26)のみにより「1層に外装」となる部分を備えるものは、本件特許発明の意識的除外として除外されるものと認められる(前記【3】(一)(5)参照)。
(4)結論
以上のとおりであって、イ号物件の外装となる内側の樹脂(g)は、本件特許発明の構成要件(I)に規定された2層に外装する「内側の樹脂(24)」と均等であるということはできない。
(二)検討点(3)について
本件特許発明の構成要件(III)において、イ号物件における「絶縁性基板(b)の他側面に貼着され、これに隣接する端面に沿って取り囲むように配設されてその外部突出端が前記外装樹脂(g、c)のプリント基板(j)への取付面(k)以外の面から外部へ突出」する一対の板状外部接続端子(e)は、本件特許発明の構成要件(III)における「絶縁性基板(10)の他側面に貼着されその外部突出端が前記外装樹脂(24、26)のプリント基板(30)への取付面(26a)以外の面から外部へ突出」する一対の板状外部接続端子(20)といえるかについて、以下に検討する。
本件特許発明の構成要件(III)における一対の板状外部接続端子(20)は、「前記絶縁基板(10)の他側面に貼着されその外部突出端が前記外装樹脂(26)のプリント基板(30)への取付面(26a)以外の面から外部へ突出し前記外装樹脂(26)との間に間隙をもって前記取付面(26a)方向へ折曲された」ものであり、イ号物件はこの本件特許発明の構成要件(III)に更なる構成「隣接する端面に沿って取り囲むように配設」を付加するものであって、この点で更なる作用効果をも奏するものと認められる。しかしながら、イ号物件は本件特許発明の構成要件(III)の全てを具備することは明らかであり、前記更なる構成の付加によって選択発明といえるなどの特段の事由も見当たらない。
したがって、イ号物件は、本件特許発明における構成要件(III)を充足するものと認められる。
【7】むすび
以上のとおりであって、イ号物件は、本件特許発明の前記分説した構成要件(I)を充足するものではなく、また均等であるものともいえないから、本件特許発明の技術的範囲に属するものとすることはできない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2001-07-16 
出願番号 特願昭61-102163
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (H01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 武彦  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 川嵜 健
片岡 栄一
登録日 1992-05-19 
登録番号 特許第1662312号(P1662312)
発明の名称 チツプ抵抗器  
代理人 木内 光春  
代理人 山田 文雄  
代理人 山田 洋資  
代理人 大熊 考一  
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