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審決分類 |
審判 査定不服 1項1号公知 取り消して特許、登録 C12N 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C12N 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C12N |
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管理番号 | 1044030 |
審判番号 | 審判1999-17907 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-11-08 |
確定日 | 2001-09-05 |
事件の表示 | 平成9年特許願第6550号「培養細胞または受精卵に外来遺伝子を導入する方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成10年7月28日出願公開、特開平10-191975、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
I.出願の経緯及び本願発明 本願は、特許法第30条第1項(新規性喪失の例外)の規定の適用を主張した平成9年1月17日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成11年9月6日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲に記載された通りのものと認められるところ、その請求項1〜3に係る発明は以下のように記載されている。 【請求項1】培養細胞または受精卵に外来遺伝子を導入する際に、導入後の外来遺伝子が周囲の遺伝子からの干渉を受けないように、導入しようとする外来遺伝子を、インスレーターで挟み独立した環境を確保した状態で染色体DNAに導入し、上記インスレーターは、ウニ・アリールスルファターゼ(Ars)遺伝子の上流-2686bp〜-2115bpに存在するインスレーター・フラグメントであることを特徴とする外来遺伝子の導入方法。 【請求項2】上記インスレーター・フラグメントは、導入しようとする外来遺伝子を挟むようにプラスミドに配置されることを特徴とする請求項1記載の外来遺伝子の導入方法。 【請求項3】上記インスレーター・フラグメントは、アリールスルファターゼ遺伝子のエンハンサーとプロモーターとの間に挿入されると、アリールスルファターゼ遺伝子のエンハンサーの活性を完全に遮断できるものであることを特徴とする請求項1記載の外来遺伝子の導入方法。 II.原査定の拒絶理由 原査定の拒絶理由の骨子は、本願発明の新聞発表(平成9年1月21日に「証明する書面」を提出。)とその後の学会発表とは密接不可分の関係にあるとは認められないから、当該学会発表に係る「証明する書面」を提出する必要があるが、出願から30日以内にこれらの書面が提出されていないので、学会発表及びその講演要旨集による発表に関しては特許法第30条第1項の規定の適用を受けることはできないとの前提の下、請求項1〜3に係る発明は、平成8年8月26〜30日に第69回日本生化学会大会・第19回日本分子生物学会年会・合同年会において発表された発明であり、当該講演要旨集(平成8年7月25日発行)に記載された発明であり、或いは当該講演要旨集に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第1号、同第3号又は第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 III.当審の判断 (審査便覧での取扱い) 特許庁が公表した審査便覧42.45Aの注2には、以下のように記載されている。 「一の公開(上記1の複数回の公開のいずれか一の公開)と密接不可分の関係にある他の公開は一の公開として取り扱うこととする。 その際、他の公開についての特許法第30条第4項に規定された手続きにおいて、他の公開に関する「証明する書面」の提出は省略可能である。 ここで言う「一の公開と密接不可分の関係にある他の公開」とは、他の公開が公開者の意志によっては律し切れないものであって、一の公開と互いに密接不可分の関係にあるような他の公開をいい、たとえば、「数日に亘らざるを得ない試験、試験とその当日配布される説明書、刊行物の初版と再版、予稿集と学会発表、学会発表とその講演集、同一学会の巡回的講演、博覧会出品と出品物に関するカタログ」等がそれに当たる。」 これに関連して、本件請求人は、学会組織委員会の委員であった鈴木範男氏の新聞発表の経緯を証明する確認書(甲第1号証)及び本発明者が「科学新聞」の新聞記者に本発明について説明した事実はないことを証明する宣誓書(甲第2号証)を提出して、「本願の発明の「科学新聞」の記事と、その後の上記パンフレット配布、学会発表、その講演要旨集による複数回の公開が、公開者の意志によっては律しきれないものであって、審査便覧の42.45Aでいう「一の公開(上記1の複数回の公開のいずれか一の公開)と密接不可分の関係にある他の公開は一の公開として取り扱うこととする」ことに当てはまることは明らかである。」と主張している。 (新聞発表にいたる経緯) 学会組織委員会の委員であった鈴木範男氏の新聞発表の経緯を証明する確認書(甲第1号証)において、 1)学会組織委員会から、学会開催の数ヶ月前から学会にて発表を予定している会員に予稿集を執筆するように要請し、 2)当該委員会は集められた2000有余の発明の予稿から100の発明を選び、学会において配布するパンフレット(甲第4号証)を作成し(そこに本願発明も含まれていた。)、 3)当該委員会は、学会開催に先立ち、「科学新聞」を発行する科学新聞社に対して先例にならい、上記パンフレットを交付した(この交付行為について、予稿集執筆者には一切通知していない。)旨の一連の事実関係が確認されている。 なるほど、平成8年7月25日に発行された講演要旨集(甲第3号証)、学会当日(平成8年8月26〜30日)に配布されたパンフレット(甲第4号証)、平成8年8月23日に発行された「科学新聞」(平成9年1月21日に特許法第30条第4項の「証明する書面」を提出。)には、技術的観点から同じ内容の発明が記載されている。 (本件と審査便覧等との関係) 本発明者が「科学新聞」の新聞記者に本発明について説明した事実はないことを証明する宣誓書(甲第2号証)も提出されており、講演要旨集(予稿集)、パンフレット、科学新聞の記載内容が実質的に同一である事実と併せ考慮すれば、本発明者が学会の予稿集のために作成した唯一の原稿がそのままこれらの発行に利用されたことも明らかである。 原査定で指摘するように、平成4年に特許庁審査基準室・法規便覧委員会が公表した「特許法第30条の適用について」のQ33には、「A新聞の記者に説明し(非公開)、新聞Aに「指定学術団体の研究集会で・・・という内容の技術を発表する」旨の記事が掲載された後、指定学術団体の研究集会で文書をもって発表した」場合が「密接不可分の関係にない」と記載されているが、審査便覧において「他の公開が公開者の意志によっては律し切れないもの」であることを条件に「一の公開と互いに密接不可分の関係にある」と判断していることから推測するに、この事例は、発明者が積極的に新聞記者に説明した場合を想定していると解するべきであるから、本件は当該事例に該当しない。 むしろ、科学新聞と講演要旨集とは関係者に対して学会の開催を周知する目的からすれば同じような出版物であって、かつ、本件発明者が学会のために作成した唯一の原稿に基づいて、講演要旨集(予稿集)、パンフレット、科学新聞が発明者の意志とは関わりなく引き続いて発行されている事実に鑑みれば、これら一連の公表は、審査便覧に挙げられた「公開者の意志によっては律し切れない」「密接不可分の関係」に相当し、「他の公開に関する「証明する書面」の提出は省略可能である」場合に該当すると解するのが適切であると認められる。 したがって、出願から30日以内に「科学新聞」の該当部分が「証明する書面」として提出されている以上、それと密接不可分の関係にある、平成8年8月26〜30日に第69回日本生化学会大会・第19回日本分子生物学会年会・合同年会においての発表及び講演要旨集(平成8年7月25日発行)等にも特許法第30条第1項の規定が適用されることから、これらを第29条第1項第1又は3号に記載された発明とすることはできない。 IV.むすび 以上のとおりであるから、本願の発明者等による学会発表及びその講演要旨集に基づいて、本願発明を拒絶することはできない。そして、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2001-08-09 |
出願番号 | 特願平9-6550 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(C12N)
P 1 8・ 111- WY (C12N) P 1 8・ 113- WY (C12N) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 高堀 栄二 |
特許庁審判長 |
徳廣 正道 |
特許庁審判官 |
佐伯 裕子 田村 明照 |
発明の名称 | 培養細胞または受精卵に外来遺伝子を導入する方法 |
代理人 | 小原 英一 |
代理人 | 小橋 信淳 |
代理人 | 小橋 信淳 |
代理人 | 小原 英一 |