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審決分類 審判 全部無効 発明同一 無効とする。(申立て全部成立) E06B
管理番号 1044363
審判番号 無効2001-35009  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-03 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-01-12 
確定日 2001-08-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第2912880号発明「収納ボックス付き出窓の取付け方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2912880号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 〔1〕手続の経緯
本件特許第2912880号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成8年8月20日に特許出願がなされ、平成11年4月9日に特許権の設定登録がなされ、平成13年1月12日に本件無効審判が請求され、被請求人に期間を指定して答弁の機会を与えたところ、何ら応答がなされなかった。

〔2〕本件発明
本件発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの次のものと認める。
「【請求項1】収納ボックス付き出窓を躯体に取付ける場合、収納ボックスの上枠に嵌合受部を設けると共に、出窓本体の下枠に前記嵌合受部に嵌合する嵌合部を設けておき、収納ボックスを躯体に取付け、その後、出窓本体を室外側から室内側へ移動させることによって前記嵌合部を前記嵌合受部に嵌合して出窓本体の下枠を収納ボックスの上枠に結合すると同時に、出窓本体を収納ボックス上に載せ、該収納ボックス上に出窓本体を載せた状態で出窓本体を躯体に固定具によって固定することを特徴とする収納ボックス付き出窓の取付け方法。」

〔3〕請求人の主張
請求人は、「特許第2912880号発明の明細書の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、無効理由として3つを挙げて、概ね次のように主張している。
無効理由1:本件発明は、甲第1号証の1又は甲第3号証記載の発明であるから、本件発明についての特許は、特許法29条1項の規定に違反してなされたものであり、特許法123条1項2号の規定に該当する。
無効理由2:本件発明は、甲第1号証の1又は甲第3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、特許法123条1項2号の規定に該当する。
無効理由3:本件発明は、本件特許の出願日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開された特願平8-54917号の願書に最初に添付された明細書又は図面(甲第5号証の1)に記載された発明と同一であるから、本件発明についての特許は、特許法29条の2の規定に違反してなされたものであり、特許法123条1項2号の規定に該当する。
そして、請求人は、甲第1号証〜甲第5号証の2を提出するとともに、証人尋問を申請している。

甲第1号証:カタログ「出窓7DYシリーズ オルテリア 家具収納出窓」、YKKアーキテクチュラルプロダクツ株式会社、1996年4月(1版)発行
甲第1号証の2:甲第1号証の1のカタログの13頁「納まり図」中の 「正面引違い窓部(呼称高5.9尺の場合)」の拡大図
甲第1号証の3:甲第1号証の1のカタログの13頁「納まり図」中の 「袖Fix窓部」の拡大図
甲第2号証:大竹壽の証明書
甲第3号証:「施工説明書 オルテリア 家具収納出窓」、96-4月発 行、1及び2頁
甲第4号証:新屋尚成の証明書
甲第5号証の1:特開平9-242319号公報
甲第5号証の2:甲第5号証の1の図3の要部拡大複写図(部材名称を付 す。)
甲第5号証の3:甲第5号証の1の図4の要部拡大複写図(部材名称を付 す。)
証人:大竹壽
新屋尚成

〔4〕当審の判断
1.無効理由3について
(1)本件特許の出願日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開された特願平8-54917号の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。甲第5号証の1参照。)に記載された発明
先願明細書には、
a 「本発明は、窓部と収納部を備えた出窓に関する。」(段落【0001】)、
b 「【発明の実施の形態】図1に示すように、建物躯体を構成する左右の柱1,1と上横材2と下横材3とで建物開口部4とし、この建物開口部4の下部寄りに収納部を構成する外部収納ユニット5を取付け、この外部収納ユニット5の上部と建物開口部4の上部寄りに窓部を構成する出窓本体6を取付ける。」(段落【0007】)、
c 「前記外部収納ユニット5は上面板7と下面板8と前面板9と左右の側面板10で室内部を開口した箱状であり、……この外部収納ユニット5の上部寄りには前面下枠支持横材12と左右の側面下枠支持横材13が取付けてある。」(段落【0008】)、
d 「前記出窓本体6は窓枠14と屋根15を備え、窓枠14を構成する前面下枠16が前面下枠支持横材12に支持され、左右の側面下枠17が側面下枠支持横材13に支持される。」(段落【0009】)、
e 「前記前面下枠支持横材12と側面下枠支持横材13は図3と図4に示すように同一断面形状であり、室外寄り上面12a,13aに上向片39と鉤形40を一体的に設けて室外側に向けて開口した下枠支持部41を形成している。」(段落【0017】)、
f 「前記窓枠14の前面下枠16、側面下枠17の下部室外寄りにはL字片42が室内側に向けて一体的に設けてあり、このL字片42を下枠支持部41に係合して乾式シール材43を介して載置してある。」(段落【0018】)、
g 「このようであるから、外部収納ユニット5を取付けた状態で窓枠6を室内側に向けて移動することで各L字片42が各下枠支持部41に入り込んで支持される……」(段落【0019】)、
h 「したがって、窓枠6の前面下枠16、側面下枠17を外部収納ユニット5の上部にビスを用いずに支持できるし、現場で湿式シール材を充填せずにシールできるから、窓枠14の取付け作業が簡単となる。」(段落【0020】)
の記載がある。
以上の記載及び図1〜図4の記載からみて、先願明細書には、
「外部収納ユニット5付き出窓を躯体に取付ける場合、外部収納ユニット5の前面下枠支持横材12及び側面下枠支持横材13に、室外寄り上面12a,13aに上向片39と鉤形40を一体的に設けて室外側に向けて開口した下枠支持部41を設けると共に、出窓本体6の前面下枠16及び側面下枠17に、前記下枠支持部41に係合するL字片42を設けておき、外部収納ユニット5を躯体に取付け、その後、出窓本体6を室外側から室内側へ移動させることによって、前記L字片42を前記下枠支持部41に係合して出窓本体6の前面下枠16及び側面下枠17を外部収納ユニット5の前面下枠支持横材12及び側面下枠支持横材13に支持すると同時に、出窓本体6を外部収納ユニット5上に載せる、外部収納ユニット5付き出窓の取付け方法」
なる発明が記載されていると認められる。

(2)対比・判断
本件発明と先願明細書に記載された発明とを対比すると、先願明細書に記載された発明の「外部収納ユニット5」、「前面下枠支持横材12及び側面下枠支持横材13」、「室外寄り上面12a,13aに上向片39と鉤形40を一体的に設けて室外側に向けて開口した下枠支持部41」、「前面下枠16及び側面下枠17」、「L字片42」、「係合」及び「支持」は、本件発明の「収納ボックス」、「上枠」、「嵌合受部」、「下枠」、「嵌合部」、「嵌合」及び「結合」に相当するから、両者は、
「収納ボックス付き出窓を躯体に取付ける場合、収納ボックスの上枠に嵌合受部を設けると共に、出窓本体の下枠に前記嵌合受部に嵌合する嵌合部を設けておき、収納ボックスを躯体に取付け、その後、出窓本体を室外側から室内側へ移動させることによって前記嵌合部を前記嵌合受部に嵌合して出窓本体の下枠を収納ボックスの上枠に結合すると同時に、出窓本体を収納ボックス上に載せる、収納ボックス付き出窓の取付け方法」
である点で一致し、次の点で一応相違する。
相違点
本件発明では、収納ボックス上に出窓本体を載せた状態で出窓本体を躯体に固定具によって固定するのに対し、先願明細書に記載された発明では、収納ボックス上に出窓本体を載せた状態で出窓本体を躯体に固定具によって固定するのか不明である。
そこで、上記相違点について検討すると、先願明細書には、収納ボックス(外部収納ユニット)上に出窓本体を載せた状態で出窓本体を躯体に固定具によって固定することについての明示の記載はないものの、出窓本体を躯体に取り付けるに当たって、出窓本体の取り付け強度や安定性の上から、当然、出窓本体は何らかの固定具によって躯体に固定されているものと考えられるから、先願明細書に記載された発明も、上記相違点における本件発明の構成を備えているとするのが相当であり、上記相違点に実質的な相違があるものと認めることはできない。
したがって、本件発明は、先願明細書に記載された発明と実質的に同一であると認められる。しかも、本件発明の発明者が、上記特許出願に係る上記先願明細書に記載された発明をした者と同一ではなく、また、本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

〔5〕むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する他の無効理由を検討するまでもなく、本件発明についての特許は、特許法29条の2の規定に違反してなされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-06-19 
結審通知日 2001-06-25 
審決日 2001-07-12 
出願番号 特願平8-237261
審決分類 P 1 112・ 161- Z (E06B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 蔵野 いづみ
鈴木 公子
登録日 1999-04-09 
登録番号 特許第2912880号(P2912880)
発明の名称 収納ボックス付き出窓の取付け方法  
代理人 高橋 邦彦  
代理人 佐藤 嘉明  
代理人 浜本 忠  

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