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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 E04D 審判 全部申し立て 2項進歩性 E04D 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 E04D |
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管理番号 | 1044570 |
異議申立番号 | 異議1999-74703 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-12-21 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-12-14 |
確定日 | 2001-04-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2905776号「安定駒利用の耐震、耐風瓦工法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2905776号の請求項1および2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2905776号に係る出願は、平成10年6月3日の出願であって、平成11年3月26日に特許の設定登録がなされ、その後、松尾俊幸から特許異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成12年5月22日に訂正請求がなされたが、再度訂正拒絶理由を兼ねた取消理由が通知され、その指定期間内である平成12年7月7日に訂正請求がなされるとともに、平成12年5月22日付けの訂正請求は取り下げられたものである。 2.訂正の要旨 訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1の記載を、次のように訂正する。 屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する屋根瓦の係止工程と、この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。 訂正事項b:特許請求の範囲の請求項2の記載を、次のように訂正する。 上記の屋根瓦は、瓦本体と、この瓦本体の尻側裏面に平坦形状の横棧当接部と、前記瓦本体の尻側に設けた横棧に係止される当接曲面を有する全体形状が半円弧形状でなる引掛けとで構成されている請求項1に記載の安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。 訂正事項c:特許請求の範囲の請求項3を削除する。 訂正事項d:明細書の段落【0007】の記載を、次のように訂正する。 請求項1は、屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する屋根瓦の係止工程と、この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法である。 訂正事項e:明細書の段落【0009】の記載を、次のように訂正する。 請求項2は、屋根瓦は、瓦本体と、この瓦本体の尻側裏面に平坦形状の横棧当接部と、前記瓦本体の尻側に設けた横棧に係止される当接曲面を有する全体形状が半円弧形状でなる引掛けとで構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法である。 訂正事項f:明細書の段落【0010】及び【0011】の記載を削除する。 訂正事項g:明細書の段落【0012】の【発明の実施の形態】の記載を、次のように訂正する。 屋根地に数本の横棧を取付けた後、軒先の横棧の上面(棟側)に瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、横棧の表面に安定駒の底面を直接当接する。この場合、本発明の当接曲面を利用して、当該横棧の変形、凹凸、その他変化があっても、引掛けと横棧の確実な当接ができる。また平坦形状の横棧当接部があり、一層の安定性が確保される。この葺き方を繰り返すと、軒先全体が葺き上げられる(葺工される)。続いて、この軒先に葺工された瓦を目安として、地割りが決定されるので、この地割りを基準として縦棧を横棧上に設ける。この縦棧の二箇所又は数箇所を釘止め、ネジ止め、又はその他取付けにより固定する。勿論、この固定には、例えば、曲尺、水糸を使用して固定する場合、横棧に予め設ける位置を記した状態で固定する場合、等色々の方法が採用できる。また当該横・縦棧又は縦棧等の取付けと後述する瓦葺工とを併用する場合も有る。 訂正事項h:明細書の段落【0016】の記載を、次のように訂正する。 屋根地Rには釘打ち、スクリュー釘打ち、ネジ釘打ち等の各種取付け手段で数本の横棧1と、縦棧2(木製、金具等でも可能)が設けられる。本発明では原則として横棧1と縦棧2は同じ材料、寸法とする。この横棧1と縦棧2はクロス形状に設けられており、この縦棧2は地割り位置に設けられる。この横棧1には瓦10(各種棧瓦、軒瓦、袖瓦、平板瓦、本葺き瓦等の瓦)の瓦本体10’で、かつこの尻側裏面10aに設けられた横棧当接部101と、瓦10の瓦本体10’で、かつこの尻側10bに設けられた引掛け102の当接曲面102a(図5参照)又は当接平面102a’(図6参照)がそれぞれ係止される。また縦棧2には瓦10の安定駒103の差込み側の側面103aが当接される。また安定駒103の底面103bは横棧1に当接される。この引掛け102の横棧1の上面1bへの当接と、横棧当接部101の横棧1の表面1aへの当接、及び安定駒103の差込み側の側面103aへの縦棧2の当接、並びに安定駒103の底面103bの横棧1への当接とにより、瓦10は地割りの所定位置に葺工される。尚、当接曲面102a又は当接平面102a’は横棧1の上面1bにスライド可能であり、しかも安定駒103の差込み側の側面103aを縦棧2に当接する構成であるので、瓦10を地割りの所定位置への移動の際、この移動できる範囲を広く確保でき、かつ容易な葺工が期待できる。 訂正事項i:明細書の段落【0019】の【発明の効果】の記載を、次のように訂正する。 請求項1の発明は、屋根地に多数本の横・縦棧をクロス状に配置し、この横棧に瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する際に、安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される構成である。従って、最も簡単な操作により瓦の主として棟方向への葺設の簡便化かつ確実化を図り、かつ葺き上げ精度の向上が図れること、又は原則として縦棧と横棧とを兼用して使用できること、等の特徴がある。また引掛けの横棧当接部と横棧の表面との確実な当接を図り、屋根瓦の飛散防止、耐震性向上、雨仕舞の向上が図れる特徴がある。 訂正事項j:明細書の段落【0020】の記載を、次のように訂正する。 請求項2の発明は、屋根瓦は、瓦本体と、平坦形状の横棧当接部と、半円弧形状で当接曲面を有する引掛けとで構成される。従って、瓦の燒成寸法にとらわれることなく、簡便かつ確実に葺き上げ得る特徴がある。 訂正事項k:明細書の段落【0021】の記載を削除する。 訂正事項l:明細書の【図面の簡単な説明】の【図4】の記載を、次のように訂正する。 瓦と横棧との関係を示す拡大正面図である。 訂正事項m:明細書の【図面の簡単な説明】の【図5】の記載を、次のように訂正する。 瓦と横棧との関係を示す拡大背面図である。 訂正事項n:明細書の【図面の簡単な説明】の【図6】の記載を、次のように訂正する。 他の瓦と横棧との関係を示す拡大背面図である。 訂正事項o:明細書の【図面の簡単な説明】の【図7】の記載を、次のように訂正する。 他の瓦と横棧との関係を示す拡大正面図である。 訂正事項p:明細書の【符号の説明】の「103a 側面」の記載を、「103a 差込み側の側面」と訂正する。 3.訂正の適否 (1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項a〜cに係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、いずれの訂正も、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項d〜k、pに係る訂正は、明りょうでない記載の釈明及び訂正事項a〜cに関連してなされた明りょうでない記載の釈明に該当し、訂正事項l〜oに係る訂正は、誤記の訂正に該当し、いずれの訂正も、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)独立特許要件の判断 A)上記訂正により、当審が先に通知した訂正拒絶理由を兼ねた取消理由で指摘した不明確な点は訂正され、特許を受けようとする発明及び詳細な説明は明確となった。 B)訂正明細書の請求項1および2に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1および2に記載されたとおりのものであり(以下、「訂正後発明1」および「訂正後発明2」という。)、訂正後発明2は、訂正後発明1を引用しているから、訂正後発明1について検討すると、これに対して、当審が先に通知した取消理由で引用した、特開平8-302910号公報(以下、「引用例1」という。)には、特許請求の範囲の請求項1、段落【0024】、段落【0026】、段落【0027】及び図1,2,4,5の記載を参照すると、「屋根面の勾配方向所要間隔に横方向に延在する横桟木を配設するとともに、この横桟木の上に勾配方向に延在する縦桟木を横方向所要間隔に配設し、他方、瓦の裏面後部に、横桟木に対する係止用凸起と縦桟木の側面に当接係合し得る凸部による係合部とを形成しておいて、係止用凸起を横桟木に係止させるとともに、係合部を縦桟木の内側面に沿わせるようにして載置し、縦桟木と横桟木とに沿って各瓦を屋根の勾配方向及び横方向に並べて葺設する瓦の葺設工法」及び、「この工法により、地震時や強風時に瓦が横に位置ずれするのを防止でき、また縦方向および横方向共にずれなく真直ぐに容易に葺設でき、しかも少々の寸法誤差や歪みのある瓦をそのまま使用できる」ことが記載されている。 同、実願昭53-116115号(実開昭55-33325号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、第2頁第1〜4行、第2頁第11行から第3頁第3行、第3頁第17行〜第4頁第4行、第4頁第16行〜第5頁第3行及び第1〜3、5〜7図の記載を参照すると、「引掛棧瓦の尻側裏面に、棧木に当接する平面を有するほぼ三角形状の引掛突起と、これとは別に、引掛突起を棧木に引掛けて瓦の裏面の下向きに凸の湾曲面の最低面を棧木上に当接して正規に葺いた状態において、先端が棧木と接触する高さを有する突起若しくは突面を形成することにより、引掛棧瓦は棧木に対し二点で支持されることになって、横揺れを防止する」ことが記載されている。 同、実願平2-25339号(実開平3-115721号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)には、第7頁第3〜6行、第7頁第8〜12行、第8頁第19行から第9頁第3行、第9頁第13〜15行及び第2、4図の記載を参照すると、「さん瓦本体の上端の尻側裏面に、下側面を傾斜させ突出先端面が非常に緩やかな曲面の掛止壁を突設し、それより下方部にフラット面を形成し、掛止壁を瓦桟に掛け、フラット面を瓦桟の上に載せて、横揺れしない安定状態に葺く」ことが記載されている。 訂正後発明1と上記引用例1に記載された発明とを比較すると、引用例1に記載された発明の「屋根面」、「横桟木」、「縦桟木」、「瓦の裏面後部」、「係止用凸起」、「凸部による係合部」、「係合部を縦桟木の内側面に沿わせる」及び「瓦の葺設工法」は、それぞれの機能に照らし、各々、訂正後発明1の「屋根地」、「横棧」、「縦棧」、「屋根瓦の尻側裏面」、「引掛け」、「安定駒」、「縦棧に安定駒の差込み側の側面を当接する」及び「瓦工法」に相当するから、両者は、屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する屋根瓦の係止工程と、で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法の点で一致し、下記の点で相違している。 a.係止工程で係止された縦棧と安定駒との側面係止の際に、訂正後発明1では、安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程を有しているのに対し、引用例1に記載された発明では、そのような工程がない点。 一方、引用例2に記載された発明の「棧木」、「引掛突起」及び「突起若しくは突面」は、それぞれの機能に照らし、各々、訂正後発明1の「横棧」、「引掛け」及び「安定駒」に相当するから、引用例2には、正規に葺いた状態において、安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工されることが記載されているが、引用例2に記載された発明には、訂正後発明1の「縦棧」に相当する部材がないから、係止工程で係止された縦棧と安定駒との側面係止の際に、安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程を有するという構成は記載されておらず、又、示唆するところもない。さらに、引用例3に記載された発明にも、訂正後発明1の「縦棧」に相当する部材がないから、係止工程で係止された縦棧と安定駒との側面係止の際に、安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程を有するという構成は記載されておらず、又、示唆するところもない。そして、訂正後発明1および2は、この構成によって明細書記載の作用効果を奏するものであり、訂正後発明1および2が上記引用例1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 C)また、他に訂正後発明1および2が独立して特許を受けることができない理由を発見しない。 したがって、訂正後発明1および2は、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものである。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する特許法第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 4.異議の申立てについての判断 (1)申立ての理由の概要 申立人松尾俊幸は、証拠として甲第1ないし4号証を提出して、本件請求項1および3に係る特許発明は、いずれも、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件の特許を取り消すべきであると主張している。 (2)判断 上記甲第1ないし3号証刊行物は、取消理由に引用した上記引用例1ないし3と同じであり、さらに、甲第4号証刊行物にも、係止工程で係止された縦棧と安定駒との側面係止の際に、安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程を有するという構成は記載されておらず、又、示唆するところもないから、前記3.(2)独立特許要件の判断で示した点をも併せて考慮すると、本件訂正後発明1および2は、甲第1ないし4号証刊行物に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 5.むすび 以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正後発明1および2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正後発明1および2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 安定駒利用の耐震、耐風瓦工法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、 この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する屋根瓦の係止工程と、 この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、 で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。 【請求項2】 上記の屋根瓦は、瓦本体と、この瓦本体の尻側裏面に平坦形状の横棧当接部と、前記瓦本体の尻側に設けた横棧に係止される当接曲面を有する全体形状が半円弧形状でなる引掛けとで構成されている請求項1に記載の安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、安定駒利用の耐震、耐風瓦工法に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来の瓦葺き工法の一例としては、軒先の屋根瓦(以下、各種の瓦を含む。瓦とする。)を、横棧に屋根瓦の引掛けを係止するようにして桁方向に順次葺設していき、当該軒先を葺き上げる。その後、隅瓦を葺き上げた後、次の瓦を棟方向に順次葺設するに際し、墨付け又は水糸をガイドに瓦を葺き上げていくとともに、各瓦の引掛けをそれぞれ横棧に係止する。以後は、前記と同様に順次葺設されていき屋根全体が葺き上げられる。以上の如く、瓦を棟方向に葺き上げる際に、屋根地に縦棧に相当するガイド部材がないことから、水糸等をガイドに順次葺設する工法であり、手間、熟練を要すること、また水糸では風、人物の接触によりぶれることがあり不安定であること、等の問題が考えられる。 【0003】 前記問題点を解決する手段として、次のような技術文献が挙げられる。(1)特開昭62-194352号の瓦の葺設方法(文献1とする。)がある。この発明は、屋根の勾配方向(桁方向)に縦瓦棧を配設して、この縦瓦棧に瓦の裏面に設けた係止突起を係止し、当該縦瓦棧を利用して瓦を順次桁方法に葺き上げていく構成であり、確実かつ簡便な葺設と、美麗で精度のよい葺設を意図する。(2)特開平8-302910号の瓦の敷設工法の発明がある。この発明は、屋根の桁方向に縦瓦棧(縦棧木)を配設し、この縦瓦棧の側面に瓦の裏面に設けた係合部を沿わせ、かつこの係合部を縦瓦棧に載置する構成であり、当該縦瓦棧を利用して瓦を順次桁方向に葺き上げていくことを特徴とする。その効果も文献(1)と略同様であるが、この発明は、係合部を縦瓦棧に載置することにより、裏面が湾曲状を呈する瓦であっても、この縦瓦棧に安定して載置できる。(3)特開平9-177251号の安定駒利用の耐震・耐風瓦葺工法である。この発明は、屋根地に横棧と縦棧をクロス状に設け、当該横棧に瓦の引掛けを係止するとともに、当該瓦の安定駒を縦棧に圧入する構成であり、在来瓦に設けられている安定駒を有効利用し、文献(1)と同様な効果を意図する。 【0004】 前記各文献は、共通する特性として、屋根地に設けたクロス状の横棧・縦棧と、瓦の係止手段を利用して、瓦の主として桁方向の葺設の簡便かつ確実化と、葺き上げ精度の向上が図れる。また文献(3)は、在来の安定駒を有効利用できる特徴を有する。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、文献(1)、(2)は、瓦に特別な係止手段(係止凹部)を設ける必要があるので、在来の瓦製造に関する機器、作業の有効利用ができないこと、及び係止手段と縦棧の係合関係であり、この係合関係のズレの問題があること、等の課題が考えられる。尚、この文献(2)は、係合部が横瓦棧(横棧木)より離間した状態で葺設されることから、縦瓦棧が朽ちたり、損傷した場合には、瓦のぐらつきが発生し、このぐらつきに基づくトラブルが考えられる。また文献(3)は、縦棧は安定駒を挿入する構成であるので、横棧を兼用することが難かしく、施工前の段取り又は商品管理に幾分の手間を有する課題が考えられる。 【0006】 【課題を解決するための手段】 請求項1の発明は、最も簡単な操作により瓦の主として棟方向への葺設の簡便化かつ確実化を図り、かつ葺き上げ精度の向上を図ること、又は原則として縦棧と横桟とを兼用して使用できること、等を目的とする。 【0007】 請求項1は、屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、 この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する屋根瓦の係止工程と、 この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、 で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法である。 【0008】 請求項2の発明は、瓦の焼上り寸法にとらわれることなく、簡便かつ確実に葺き上げることを目的とする。 【0009】 請求項2は、屋根瓦は、瓦本体と、この瓦本体の尻側裏面に平坦形状の横棧当接部と、前記瓦本体の尻側に設けた横棧に係止される当接曲面を有する全体形状が半円弧形状でなる引掛けとで構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法である。 【0010】 【0011】 【0012】 【発明の実施の形態】 屋根地に数本の横棧を取付けた後、軒先の横棧の上面(棟側)に瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、横棧の表面に安定駒の底面を直接当接する。この場合、本発明の当接曲面を利用して、当該横棧の変形、凹凸、その他変化があっても、引掛けと横棧の確実な当接ができる。また平坦形状の横棧当接部があり、一層の安定性が確保される。この葺き方を繰り返すと、軒先全体が葺き上げられる(葺工される)。続いて、この軒先に葺工された瓦を目安として、地割りが決定されるので、この地割りを基準として縦棧を横棧上に設ける。この縦棧の二箇所又は数箇所を釘止め、ネジ止め、又はその他取付けにより固定する。勿論、この固定には、例えば、曲尺、水糸を使用して固定する場合、横棧に予め設ける位置を記した状態で固定する場合、等色々の方法が採用できる。また当該横・縦棧又は縦棧等の取付けと後述する瓦葺工とを併用する場合も有る。 【0013】 以上のようにして横・縦棧の取付けが終了した場合、通常前記軒先瓦に続いて次の瓦を葺工するが、この場合、縦棧の側面に安定駒の差込み側の側面を当接する。この際、当該安定駒の底面が横棧に直接当接する構成であり、例えば、隣接瓦間に隙間、ガタが生じない構成とする。これにより在来の横棧のみによる葺工法と同様な施工効果が発揮できる構造にする。また瓦の引掛けを、横棧に引掛ける。その後、当該瓦を釘止めすると、当該瓦は横・縦棧に密着し横棧に強固に緊締され、当該瓦と屋根地とは一体化される。また原則として、縦棧は横棧の一定位置で、かつ屋根地の各所に設けられているので、水糸及び熟練を要さず、各瓦を所定位置に、かつ筋が通った状態で美麗に葺工できることと、この屋根地の各部位で、それぞれ葺工作業が個別にできる等の特徴があり有益である。 【0014】 前記のようにして、前記瓦が葺かれた後は、同様な作業及び手順により棟方向に向かって葺工する。以後は桁方向に隣接する瓦を前述と同様な操作及び手順により順次葺工する。その後、順次瓦を葺工することにより、全屋根が葺工される。 【0015】 【実施例】 以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。 【0016】 屋根地Rには釘打ち、スクリュー釘打ち、ネジ釘打ち等の各種取付け手段で数本の横棧1と、縦棧2(木製、金具等でも可能)が設けられる。本発明では原則として横棧1と縦棧2は同じ材料、寸法とする。この横棧1と縦棧2はクロス形状に設けられており、この縦棧2は地割り位置に設けられる。この横棧1には瓦10(各種棧瓦、軒瓦、袖瓦、平板瓦、本葺き瓦等の瓦)の瓦本体10’で、かつこの尻側裏面10aに設けられた横棧当接部101と、瓦10の瓦本体10’で、かつこの尻側10bに設けられた引掛け102の当接曲面102a(図5参照)又は当接平面102a’(図6参照)がそれぞれ係止される。また縦棧2には瓦10の安定駒103の差込み側の側面103aが当接される。また安定駒103の底面103bは横棧1に当接される。この引掛け102の横棧1の上面1bへの当接と、横棧当接部101の横棧1の表面1aへの当接、及び安定駒103の差込み側の側面103aへの縦棧2の当接、並びに安定駒103の底面103bの横棧1への当接とにより、瓦10は地割りの所定位置に葺工される。尚、当接曲面102a又は当接平面102a’は横棧1の上面1bにスライド可能であり、しかも安定駒103の差込み側の側面103aを縦棧2に当接する構成であるので、瓦10を地割りの所定位置への移動の際、この移動できる範囲を広く確保でき、かつ容易な葺工が期待できる。 【0017】 前記の如く、縦棧2は、安定駒103の底面103bが横棧1の表面1aに当接した際、表面1aと瓦10の瓦本体10’の尻側裏面10aとで形成される空間Hに設けられる構成であるので、瓦10の浮き上がり防止、換言すると横棧当接部101と横棧1の表面1aとの確実な当接を図り、瓦10の飛散防止、耐震性向上、雨仕舞の向上に利用できる。そして、通常は横棧1と縦棧2との兼用使用を図り、経費節減、管理及び作業の容易化を達成する。 【0018】 尚、縦棧2を金具とすることも可能であり、その構成の一例を説明すると、棒状、角柱、平板状等がある。 【0019】 【発明の効果】 請求項1の発明は、屋根地に多数本の横・縦棧をクロス状に配置し、この横棧に瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する際に、安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される構成である。従って、最も簡単な操作により瓦の主として棟方向への葺設の簡便化かつ確実化を図り、かつ葺き上げ精度の向上が図れること、又は原則として縦棧と横棧とを兼用して使用できること、等の特徴がある。また引掛けの横棧当接部と横棧の表面との確実な当接を図り、屋根瓦の飛散防止、耐震性向上、雨仕舞の向上が図れる特徴がある。 【0020】 請求項2の発明は、屋根瓦は、瓦本体と、平坦形状の横棧当接部と、半円弧形状で当接曲面を有する引掛けとで構成される。従って、瓦の燒成寸法にとらわれることなく、簡便かつ確実に葺き上げ得る特徴がある。 【0021】 【図面の簡単な説明】 【図1】 葺工状態を示す俯瞰図である。 【図2】 図1の要部の俯瞰図である。 【図3】 瓦と縦横棧との関係を示す拡大斜視図である。 【図4】 瓦と横棧との関係を示す拡大正面図である。 【図5】 瓦と横棧との関係を示す拡大背面図である。 【図6】 他の瓦と横棧との関係を示す拡大背面図である。 【図7】 他の瓦と横棧との関係を示す拡大正面図である。 【符号の説明】 1 横棧 1a 表面 1b 上面 2 縦棧 10 瓦 10’ 瓦本体 10a 尻側裏面 10b 尻側 101 横棧当接部 102 引掛け 102a 当接曲面 102a’ 当接平面 103 安定駒 103a 差込み側の側面 103b 底面 H 空間 R 屋根地 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 特許第2905776号の明細書を、特許請求の範囲の減縮を目的として訂正事項a〜cのように、また、明りょうでない記載の釈明及び訂正事項a〜cに関連してなされた明りょうでない記載の釈明を目的として訂正事項d〜k、pのように、さらに、誤記の訂正を目的として訂正事項l〜oのように訂正する。 訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1の記載を、次のように訂正する。 屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する屋根瓦の係止工程と、この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。 訂正事項b:特許請求の範囲の請求項2の記載を、次のように訂正する。 上記の屋根瓦は、瓦本体と、この瓦本体の尻側裏面に平坦形状の横棧当接部と、前記瓦本体の尻側に設けた横棧に係止される当接曲面を有する全体形状が半円弧形状でなる引掛けとで構成されている請求項1に記載の安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。 訂正事項c:特許請求の範囲の請求項3を削除する。 訂正事項d:明細書の段落【0007】の記載を、次のように訂正する。 請求項1は、屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する屋根瓦の係止工程と、この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法である。 訂正事項e:明細書の段落【0009】の記載を、次のように訂正する。 請求項2は、屋根瓦は、瓦本体と、この瓦本体の尻側裏面に平坦形状の横棧当接部と、前記瓦本体の尻側に設けた横棧に係止される当接曲面を有する全体形状が半円弧形状でなる引掛けとで構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法である。 訂正事項f:明細書の段落【0010】及び【0011】の記載を削除する。 訂正事項g:明細書の段落【0012】の【発明の実施の形態】の記載を、次のように訂正する。 屋根地に数本の横棧を取付けた後、軒先の横棧の上面(棟側)に瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、横棧の表面に安定駒の底面を直接当接する。この場合、本発明の当接曲面を利用して、当該横棧の変形、凹凸、その他変化があっても、引掛けと横棧の確実な当接ができる。また平坦形状の横棧当接部があり、一層の安定性が確保される。この葺き方を繰り返すと、軒先全体が葺き上げられる(葺工される)。続いて、この軒先に葺工された瓦を目安として、地割りが決定されるので、この地割りを基準として縦棧を横棧上に設ける。この縦棧の二箇所又は数箇所を釘止め、ネジ止め、又はその他取付けにより固定する。勿論、この固定には、例えば、曲尺、水糸を使用して固定する場合、横棧に予め設ける位置を記した状態で固定する場合、等色々の方法が採用できる。また当該横・縦棧又は縦棧等の取付けと後述する瓦葺工とを併用する場合も有る。 訂正事項h:明細書の段落【0016】の記載を、次のように訂正する。 屋根地Rには釘打ち、スクリュー釘打ち、ネジ釘打ち等の各種取付け手段で数本の横棧1と、縦棧2(木製、金具等でも可能)が設けられる。本発明では原則として横棧1と縦棧2は同じ材料、寸法とする。この横棧1と縦棧2はクロス形状に設けられており、この縦棧2は地割り位置に設けられる。この横棧1には瓦10(各種棧瓦、軒瓦、袖瓦、平板瓦、本葺き瓦等の瓦)の瓦本体10’で、かつこの尻側裏面10aに設けられた横棧当接部101と、瓦10の瓦本体10’で、かつこの尻側10bに設けられた引掛け102の当接曲面102a(図5参照)又は当接平面102a’(図6参照)がそれぞれ係止される。また縦棧2には瓦10の安定駒103の差込み側の側面103aが当接される。また安定駒103の底面103bは横棧1に当接される。この引掛け102の横棧1の上面1bへの当接と、横棧当接部101の横棧1の表面1aへの当接、及び安定駒103の差込み側の側面103aへの縦棧2の当接、並びに安定駒103の底面103bの横棧1への当接とにより、瓦10は地割りの所定位置に葺工される。尚、当接曲面102a又は当接平面102a’は横棧1の上面1bにスライド可能であり、しかも安定駒103の差込み側の側面103aを縦棧2に当接する構成であるので、瓦10を地割りの所定位置への移動の際、この移動できる範囲を広く確保でき、かつ容易な葺工が期待できる。 訂正事項i:明細書の段落【0019】の【発明の効果】の記載を、次のように訂正する。 請求項1の発明は、屋根地に多数本の横・縦棧をクロス状に配置し、この横棧に瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する際に、安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される構成である。従って、最も簡単な操作により瓦の主として棟方向への葺設の簡便化かつ確実化を図り、かつ葺き上げ精度の向上が図れること、又は原則として縦棧と横棧とを兼用して使用できること、等の特徴がある。また引掛けの横棧当接部と横棧の表面との確実な当接を図り、屋根瓦の飛散防止、耐震性向上、雨仕舞の向上が図れる特徴がある。 訂正事項j:明細書の段落【0020】の記載を、次のように訂正する。 請求項2の発明は、屋根瓦は、瓦本体と、平坦形状の横棧当接部と、半円弧形状で当接曲面を有する引掛けとで構成される。従って、瓦の燒成寸法にとらわれることなく、簡便かつ確実に葺き上げ得る特徴がある。 訂正事項k:明細書の段落【0021】の記載を削除する。 訂正事項l:明細書の【図面の簡単な説明】の【図4】の記載を、次のように訂正する。 瓦と横棧との関係を示す拡大正面図である。 訂正事項m:明細書の【図面の簡単な説明】の【図5】の記載を、次のように訂正する。 瓦と横棧との関係を示す拡大背面図である。 訂正事項n:明細書の【図面の簡単な説明】の【図6】の記載を、次のように訂正する。 他の瓦と横棧との関係を示す拡大背面図である。 訂正事項o:明細書の【図面の簡単な説明】の【図7】の記載を、次のように訂正する。 他の瓦と横棧との関係を示す拡大正面図である。 訂正事項p:明細書の【符号の説明】の「103a 側面」の記載を、「103a 差込み側の側面」と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-03-02 |
出願番号 | 特願平10-154909 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(E04D)
P 1 651・ 536- YA (E04D) P 1 651・ 537- YA (E04D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 青山 敏 |
特許庁審判長 |
樋口 靖志 |
特許庁審判官 |
鈴木 公子 鈴木 憲子 |
登録日 | 1999-03-26 |
登録番号 | 特許第2905776号(P2905776) |
権利者 | 株式会社天木 |
発明の名称 | 安定駒利用の耐震、耐風瓦工法 |
代理人 | 竹中 一宣 |
代理人 | 竹中 一宣 |
代理人 | 蔦田 璋子 |
代理人 | 蔦田 正人 |