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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C07D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C07D
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C07D
審判 全部申し立て 発明同一  C07D
管理番号 1044588
異議申立番号 異議1997-76105  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-06-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-12-26 
確定日 2001-03-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2625647号「セファロスポリン誘導体の新規製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2625647号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.経緯
本件特許第2625647号は、昭和60年11月21日に出願された特願昭61-500166号(優先権主張、1984年11月23日、オーストリア国)の一部を新たに分割した出願(特願平6-289506号)に係り、平成9年4月11日に設定登録の後、藤井外治、森下省吾、堀川かおり、松本久紀および俵湛美より異議申立があり、取消理由通知に対して平成13年2月28日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正請求について、
本件訂正請求に係る訂正事項は以下のとおりである。
(1)特許明細書の特許請求の範囲の請求項1における、
「7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその誘導体をシリル化して対応するN,0-ビス-シリル化物に変化させ、これをヨード化して対応するN,0-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物とし、これに求核反応試薬を反応させて対応するN,0-ビス-シリル-3-置換メチル化物に導き、これにアシル化剤を反応させ、かつ、この反応の前または後において保護基を脱離せしめることにより、対応する3-置換メチル-7-アシルアミノセファロスポラン酸化合物を製することを特徴とする、セファロスポリン誘導体の製造方法。」なる記載を、
「7一アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその誘導体をシリル化して対応するN,0-ビス-シリル化物に変化させる工程、これをヨード化して対応するN,0-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物とする工程、これを単離した後、求核反応試薬を反応させて対応するN,0-ビス-シリル-3-置換メチル化物に導く工程、これにアシル化剤を反応させ、かつ、この反応の前または後において保護基を脱離せしめることにより、対応する3-置換メチル-7-アシルアミノセファロスポラン酸化合物を製する工程から成ることを特徴とする、セファロスポリン誘導体の製造方法。」に訂正する。
(2)特許明細書3頁12〜13行(特許第2625647号公報2頁4欄26〜28行)における、「またこの発明の方法は、所望により全体を通じて個々の中間生産物を単離することなく実施することができる。」なる記載を削除する。
(3)特許明細書6頁14行(特許第2625647号公報4頁7欄24行)における、「その際式(III)の化合物を単離する必要がない。」なる記載を削除する。
そこで、これらの訂正について検討するに、
(1)の訂正は、特許明細書の請求項1の記載中、中間生成物として記載されたN,0一ビスーシリルー3一ヨードメチル化物について、これを単離する場合のみに限定するとともに、同請求項1の製造方法を構成する各反応が、別個の工程として行われるものであることを明確化したものであるから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)および(3)の訂正は、上記(1)の訂正に伴い、発明の詳細な説明中の記載を訂正後の請求項1の記載と整合させるものであるから、これらの訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
次に、N,0-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物を単離して次の反応工程に供することは特許明細書の実施例において明示されていたものであり、また、各反応が反応試薬等を異にする別個の工程として行われるものであることも、同明細書における一般反応工程式及び実施例において記載されていたものであるから、上記(1)の訂正、並びにこれとの整合を図るためになされた上記(2)及び(3)の訂正は、いずれも願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内の訂正であることは明かであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張または変更するものでもない。
さらに、 訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により構成される発明は、後記することから明らかなように、特許出願の際独立して特許を受けられないものとはいえないものである。
したがって、本件訂正請求は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例とされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、同条第2項及び同条第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.異議申立てについて
(1) 各異議申立人の主張をそれぞれまとめるとその概要は次のとおりである。
i)藤井外治の主張
本件発明は甲第1号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
証拠方法
甲第1号証;特開昭58-57387号公報(以下、刊行物1という。)
ii)森下省吾の主張
(a)本件特許発明は甲第1号証の1及び甲第3号証にそれぞれ記載された発明であるから、本件特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
(b)本件特許発明は甲第1号証の1、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(c)本件特許明細書の記載には不備があり、本件特許は特許法第36条に規定する要件を満たしていない出願に対しなされたものである。
証拠方法
甲第1号証の1;ドイツ特許公開第3316798号明細書(以下、刊行物2という。)
甲第1号証の2;特開昭60-34792号公報(甲第1号証の1の訳文として提出。)
甲第2号証;特公昭51-27676号公報(以下、刊行物3という。)
甲第3号証;「Tetrahedoron Letters」Vol.22, No.40, P.3915-3918 (1981)(以下、刊行物4という。)
甲第4号証;京都大学教授 富士 薫の鑑定書(以下、鑑定書1という。)
iii)堀川かおりの主張
(a) 本件特許発明は甲第1号証の1及び甲第2号証に記載された発明であるから、本件特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
(b) 本件特許発明は甲第1号証の1、甲第2号証、甲第3号証の1〜4及び甲第4号証の1〜2に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
証拠方法
甲第1号証の1;特開昭58-57387号公報(異議申立人、藤井外治提示の甲第1号証(刊行物1)と同じ。)
甲第1号証の2;米国特許第4396620号(以下、刊行物5という。)
甲第2号証;特開昭58-57386号公報(以下、刊行物6という。)
甲第3号証の1;特開昭51-88989号公報(以下、刊行物7という。)
甲第3号証の2;特開昭51-54580号公報(以下、刊行物8という。)
甲第3号証の3;特開昭52-62290号公報(以下、刊行物9という。)
甲第3号証の4;特開昭57-192392号公報(以下、刊行物10という。)
甲第4号証の1;特開昭54-95590号公報(以下、刊行物11という。)
甲第4号証の2;特開昭50-82086号公報(以下、刊行物12という。)
iv)松本久紀の主張
(a)本件特許発明は、甲第2号証及び甲第12〜14に係る本件の先願に相当する各出願の当初明細書に記載された発明と同一であり、また、産業上利用できない発明であるから、本件特許は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、また、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものである。
(b)本件特許発明は、甲第3号証に記載された発明であるから、本件特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
(c)本件特許発明は、甲第3号証、甲第6〜11号証、甲第15及び甲第16号証に記載された発明から容易に発明できたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
証拠方法
甲第1号証;本件出願の審査段階で提出された平成8年10月4日付意見書
甲第2号証;特開昭60-169486号公報(特願昭59-24110号の公開公報、以下、先願明細書1という。)
甲第3号証;ドイツ公開第3316798号明細書(異議申立人、森下省吾の甲第1号証の1(刊行物2)と同じ。)
甲第4号証;株式会社 東レリサーチセンタ作成の結果報告書(以下、報告書という。)
甲第5号証;京都大学教授 富岡 清の鑑定書(以下、鑑定書2という。)
甲第6号証;特開昭56-131590号公報(以下、刊行物13という。)
甲第7号証;「Tetrahedron Letters」Vol.22, No.40, P.3915‐3918(1981)(異議申立人、森下省吾提示の甲第3号証(刊行物4)と同じ。)
甲第8号証;特開昭57-167992号公報(以下、刊行物14という。)
甲第9号証;特公昭51-27676号公報(異議申立人、森下省吾提示の甲第2号証(刊行物3)と同じ。)
甲第10号証;特開昭58-57390号公報(以下、刊行物15という。)
甲第11号証;特開昭57-165393号公報(以下、刊行物16という。)
甲第12号証;特開昭60-132993号公報(特願昭58-217170号の公開公報、以下、先願明細書2という。)
甲第13号証;特開昭60-136586号公報(特願昭58-248929号の公開公報、以下、先願明細書3という。)
甲第14号証;特開昭60-188389号公報(特願昭59-419923号の公開公報、以下、先願明細書4という。)
甲第15号証;特開昭57-126492号公報(以下、刊行物17という。)
甲第16号証;時開昭58-72591号公報 (以下、刊行物18という。)
v)俵湛美の主張
(a)本件特許発明は、甲第4〜6号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(b)本件特許発明は、甲第6号証に記載された発明であるから、本件特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
証拠方法
甲第1号証;特開昭52-57191号公報(以下、刊行物19という。)
甲第2号証;特公昭51-27676号公報 (異議申立人、森下省吾提示の甲第2号証(刊行物3)及び松本久紀提示の甲第9号証と同じ。)
甲第3号証;特開昭53-59689号公報(以下、刊行物 20という。)
甲第4号証;特開昭57-165393号公報( 異議申立人、松本久紀提示の甲第11号証(刊行物16)と同じ。)
甲第5号証;特開昭58-57386号公報(異議申立人、堀川かおり提示の甲第2号証(刊行物6)と同じ。)
甲第6号証;ドイツ公開第3316798号明細書(異議申立人、森下省吾の甲第1号証の1(刊行物2)及び松本久紀提示の甲第3号証と同じ。)
甲第7号証;京都大学教授 富士 薫の鑑定書(異議申立人、森下省吾提示の甲第4号証(鑑定書1)と同じ。)
甲第8号証;株式会社 東レリサーチセンタ作成の結果報告書(異議申立人、松本久紀提示の甲第4号証(報告書)と同じ。)
(2)これに対して、本件訂正後の発明(以下、本件発明という。)の要旨は、訂正明細書の記載からみて以下のとおりである。
「7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその誘導体をシリル化して対応するN,0-ビス-シリル化物に変化させる工程、これをヨード化して対応するN,0-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物とする工程、これを単離した後、求核反応試薬を反応させて対応するN,0-ビス-シリル-3-置換メチル化物に導く工程、これにアシル化剤を反応させ、かつ、この反応の前または後において保護基を脱離せしめることにより、対応する3-置換メチル一7-アシルアミノセファロスポラン酸化合物を製する工程から成ることを特徴とする、セファロスポリン誘導体の製造方法。」
(3)そこで、本件異議申立人の主張について検討する。
(イ) 森下省吾の主張(a)、堀川かおりの主張(a)、松本久紀の主張(b)および俵湛美の主張(b)について、
刊行物1においては、セファロスポリン・キノリウム・ベタイン類に関し、その製法として7-アシルアミノ-3-アセトキシメチルセフェム-4-カルボン酸を3-ヨードメチル化物に変換し、これを置換キノリンと反応させる旨記載され、上記3-ヨードメチル化物への変換に際し、7-アシルアミノ-3-アセトキシメチルセフフェム-4-カルボン酸のカルボキシル基及び7-アシルアミノ基のアシル側鎖中のアミノ基をシリル化して保護し、次いでヨウ化トリメチルシリル(TMSI)を反応させて3-ヨードメチル化物とする旨記載され、また、他の方法として、7-アミノセファロスポラン酸またはそのシリル誘導体を置換キノリンと反応させ、次いでアシル化する旨記載されている。しかし、前者の方法は、出発原料として7位のアミノ基がすでにアシル基で置換されている化合物を使用するものであるのに対して、本件発明は、7位が遊離のアミノ基を有するセファロスポラン酸及びその誘導体を出発化合物とするものであるから、前者の方法と本件発明とは出発原料において相違し(なお、本件発明の7-アミノセファロスポラン酸の誘導体については、その後の反応工程においてアシル化されているから、7位のアミノ基は遊離のものとするのが相当である。)、当然これに伴い反応工程順序も異なる。
また、後者の方法においては、この方法に対応する実施例も記載されてはおらず、上記7-アミノセファロスポラン酸のシリル誘導体なるものが、7位のアミノ基及び4位のカルボキシル基の双方がシリル化されているものか明かではなく、また、アシル化においても3-ヨードメチル化物を使用しているか否についても判然とはしないものである。しかもこればかりではなく、これら方法においては、本件発明のように、7-アミノセファロスポラン酸あるいはその誘導体のN,O-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物について及びこれを単離する旨の記載が全くないものであって、これらの点からいえば、本件発明は刊行物1に記載された発明とはいえない。
刊行物6においては、セファロスポリン・イソキノリニウム・ベタイン類に関し、その製法として、置換キノリンではなくイソキノリンあるいは置換イソキノリンを使用する点では刊行物1と異なるが、これ以外は刊行物1と同様な製法が記載されているだけであり、上記刊行物1について示したのと同様な理由により、本件発明は刊行物6に記載された発明とすることはできない。
刊行物2においては、
一般式II

(R1は水素原子またはメトキシ基を表し、R7は基Aに対応する塩基によって置換することができる基を表し、R8は水素原子またはアミノ基保護基を表わす)の化合物をトリアルキルヨードシランの存在下で、基Aの基礎となる塩基と反応させて、式III

(Aはキノリニウム基、ピリジニウム基等を表す)の化合物となし、
存在するアミノ基保護基がある場合、これを脱離させ、そしてR8が水素原子を意味する化合物IIIをそのままで、または反応性誘導体の形で式IV

の2-syn-オキシイミノ酢酸と反応させるか、またはカルボニル基において活性化されたこの化合物の誘導体と反応させることより、7位アミノ基がアシル化されたセフェム化合物を得る旨記載され、式IIIの化合物の生成工程について「出発化合物IIにおける置換されるべき基R7のほかに、他の官能基、たとえばカルボキシル基もトリメチルヨードシランと反応するので、トリメチルヨードシランを少なくとも2倍ないし約5〜10倍過剰に、好ましくは3〜10倍過剰に添加する。
この種の官能基をシリル化剤、たとえばビストリメチルシリルアセトアミド、ビストリメチルシリルトリフルオルアセトアミド、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン(hexamethyl‐disilazane)またはビストリメチルシリル尿素の添加により、上記量の塩基(好ましくは基Aの基礎となる希望する塩基)の不在下または存在下で予備シリル化することもできる。次いでトリメチルヨードシランを少なくとも化学量論的量、または過剰に、好ましくは2〜10倍過剰に添加する。」と記載されている。また、実施例2a)においては「7-アミノ-3-[(2,3-シクロベンテノ-1-ピリジニオ)メチル]-セフ-3-エム-4-力ルボキシレート・ヨウ化水素酸塩」の製造例について「方法1」として、乾燥塩化メチレン中の7-アミノセファロスポラン酸の懸濁液に、2,3-シクロベンテノピリジンとトリメチルヨードシランを順次添加し、混合物を還流下に2時間加熱し、冷却し、エタノール及び水の混合物を攪拌下に滴加し、沈澱を生成させ、次いでこの沈澱をイソプロパノール、アセトン及びエーテルで順次洗浄した後、乾燥して、微細な結晶性の生成物が理論値の82%の収率で得られたことが記載されている。
しかし、刊行物2と本件発明の目的物とは同一であるとはいえるが、その製法において過剰のトリメチルヨードシランと反応するものとして具体的に挙げられているのはカルボキシル基であり、また、予備シリル化される置換基として具体的に記載されるものもカルボキシル基及び水酸基のみであって、本件発明の中間体である7-アミノセファロスポラン酸及びその誘導体のN,O-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物については具体的な記載はなく、ましてこれを単離する旨の記載はない。
また、特に、刊行物2における上記「方法1」は、7-アミノセファロスポラン酸、2,3-シクロベンテノピリジン及びトリメチルヨードシランを同時に使用し、一工程で7-アミノセファロスポラン酸から7-アミノ-3-[(2,3-シクロベンテノ-1-ピリジニオ)メチル]-3-セフエム-4-力ルボキシレート・ヨウ化水素酸塩を製造するものであり、本件発明のように7一アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその誘導体を、シリル化して対応するN,0-ピスーシリル化物に変化させる工程、これをヨード化して対応するN,0一ビスーシリルー3一ヨードメチル化物とする工程、これを単離した後、求核反応試薬を反応させて対応するN,0-ビスーシリル-3-置換メチル化物に導く各工程を順次経るものではなく、また、N,0一ビスーシリルー3一ヨードメチル化物を単離し、単離した後N,0-ビスーシリル-3-置換メチル化物にするものではないから、この「方法1」は本件発明とは異なることは明かである。
報告書、鑑定書1および鑑定書2は、上記刊行物2の方法1においても、N,0-ビス-シリル化物 、N,0一ビス-シリル-3一ヨードメチル化物 および N,0-ビス-シリル-3-置換メチル化物が順次生成していることを立証しようとするものではあるが、上記方法1は、上記したように、一工程で7-アミノセファロスポラン酸から7-アミノ-3-[(2,3-シクロベンテノ-1-ピリジニオ)メチル]-3-セフエム-4-力ルボキシレート・ヨウ化水素酸塩を製造するものである点に変わりはなく、また、N,0-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物を単離していないことは明かであるから、報告書、鑑定書1及び鑑定書2を参酌しても、本件発明は、刊行物2に記載された発明とすることはできない。
刊行物4においては、3-ヨードメチルセファロスポリン類が、種々の3-複素環置換セファロスポリン系抗生物質の製造に有用な中間体であり、該3-ヨードメチルセファロスポリン類は、3-アセトキシメチルまたは3-カルバモイルメチルセファロスポリン類をヨードトリメチルシラン(TMSI)で処理することにより簡単に得られる旨記載され、また、セファロチンナトリウムからN-メチルテトラゾリルチオメチルセファロスポリン酸を合成する経路を示す反応式IIIについて、「水溶性塩3はCH2Cl2可溶性のトリメチルシリルエステルに変換される。次いで、CH2Cl2中、20℃で1-2時間、TMSI(3当量)で処理した後、生じたヨードセファロスポリンをDMF及び予備プロピレンオキシド(酸補足剤)で希釈する。この反応液にN-メチルテトラゾールチオール(1.5当量)を加えると、反応は1時間で完結する。トリメチルシリルエステル体5を抽出処理後に単離し、次いで・・・・最終生成物へ加水分解し・・・抽出する。」と記載されている。
しかし、刊行物4においては、出発原料としてセファロスポリン環の7位アミノ基がすでにアシル化されているものを使用しており、本件発明のような7位が遊離のアミノ基である7一アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその誘導体を使用しておらず、当然これに伴い、反応工程順序も本件発明とは相違し、さらに、7-アミノセファロスポラン酸あるいはその誘導体のN,0一ビスーシリル-3一ヨードメチル化物及びこれを単離することについても記載されていない。してみれば、本件発明は刊行物4に記載された発明ではないことは明かである。
したがって、森下省吾の主張(a)、堀川かおりの主張(a)、松本久紀の主張(b)および俵湛美の主張(b)はいずれも採用できない。
(ロ)藤井外治の主張、森下省吾の主張(b)、堀川かおりの主張(b)、松本久紀の主張(c)および俵湛美の主張(a)について、
刊行物1、2、4及び6の記載は上記したとおりであるが、刊行物1には、藤井外治も指摘するようにさらにセファロスポリン酸の7位のアミノをホルミル基で保護したものをシリル化、3位ヨウ素化し、次いでアシル化する方法も記載されている。
しかし、刊行物1、2、4及び6においては、7-アミノセファロスポラン酸あるいはその誘導体のN,0一ビス-シリル-3一ヨードメチル化物は単離されてはいないし、これを中間体として使用することについても全く言及されてはいないものである。しかも、刊行物1においては、有用な中間体とされるものはセファロスポリン酸の7位のアミノをホルミル基で保護したものであり、7位のアミノ基をシリル基で保護したものではない。してみれば、刊行物1、2、4及び6においては2-アミノセファロスポラン酸あるいはその誘導体のN,0一ビス-シリル-3一ヨードメチル化物については認識がないものであり、刊行物1、2、4及び6は、本件発明のように2-アミノセファロスポラン酸あるいはその誘導体のN,0一ビス-シリル-3一ヨードメチル化物を単離して、次反応に使用することを示唆しているとすることはできない。
さらに、刊行物3、5、7〜20においても各種セファロスポリン系化合物の製法が記載されているが、これら刊行物においても、7-アミノセファロスポラン酸あるいはその誘導体のN,0一ビス-シリル-3一ヨードメチル化物については記載がなく、当然これを単離する点については記載がない。
しかも、本件発明のN,0一ビス-シリル-3一ヨードメチル化物は、3位において陽に荷電しているメチレン基を有し、また7位のアミノ基の窒素原子においては自由電子対が存在するから、溶液中においては自己アルキル化すなわち重合化が起こりやすい不安定な化合物であると予想されるものとしても不合理ではない。一方、本件明細書の記載からみると、N,0一ビス-シリル-3一ヨードメチル化物を純粋な形で固形物として単離しており、これからみると上記予想に反して意外にも安定であったということができる。そして、本件発明のN,0一ビス-シリル-3一ヨードメチル化物は、この化合物が安定でストック可能であれば、これをもとに種々の求核反応試薬及びアシル化剤の選択により簡便な反応操作で種々のセファロスポリン系化合物を製造しうるKey中間体として有用なものであり、これを単離することを含む本件発明の効果も顕著なものということができる。
もっとも、本件明細書においては、本件発明のN,0一ビス-シリル-3-ヨードメチル化物は極めて加水分解し易いため融点を測定できなかった旨記載されており、また、刊行物15及び刊行物16等においては、7-アシルアミノ-3-アセトキシメチルセフフェム-4-カルボン酸のアシル基中のアミノ基を、シリル化して保護し、次いでヨウ化トリメチルシリル(TMSI)を反応させて3-ヨードメチル化物と得る旨記載されているが、これらの3-ヨード化物については、重合化反応が起きる等の不安定性を示す記載はない。しかし、前者の点については、加水分解しない条件下で保管すればよく、保管不可能であるとはいえない。後者の点については、アシル基側鎖中のアミノ基とセフェム環に直接結合するアミノ基とは反応性において異なるものと解されるから、上記刊行物15及び16等の上記3-ヨード化物が仮に安定であるからといって、N,0-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物も安定であるとはいえない。したがって、これらの事由によって、本件発明の上記効果が否定されるものではない。
したがって、以上の点からみると、本件発明は、刊行物1〜20に記載された各発明からはもとより、これらを組み合わせても当業者が容易に発明できたものとすることはできず、藤井外治の主張、森下省吾の主張(b)、堀川かおりの主張(b)、松本久紀の主張(c)および俵湛美の主張(a)は採用できない。
(ハ) 松本久紀の主張(a)について、
この主張は、甲第1号証の意見書における、本件発明のN,0-ビス-シリル-3一ヨードメチル化物が新規物質であり、該化合物が予測不能な(安定性)を有し、これKey中間体としてを経由することにより工業的に有利セファロスポリン誘導体を製造できる旨の権利者の主張からみて、本件発明の特徴がN,0-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物のみにあるとし、該化合物は先願明細書1〜4に記載されているから、本件発明は先願明細書に記載された発明と同一であり、また、該化合物は、安定性もなく産業上利用性がないというものと解される。
そこで、以下、先願明細書1〜4に記載された発明との同一性について検討する。
まず、意見書における権利者の主張は上記のとおりであったとしても、本件発明における他の構成要件を無視して、上記N,0-ビス-シリル-3一ヨードメチル化物のみが特徴であるとして本件は発明と先願発明との同一性をいうことは妥当ではない。
そして、先願明細書1の実施例1、先願明細書2の参考例1、先願明細書3の参考例2、3及び先願明細書4の参考例1においては、本件発明のN,0-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物に該当する化合物の構造式が示されているが、これらの実施例、参考例の方法は、いずれも、7-アミノ-3-ヨードメチル-3-セフェム-4-カルボン酸を出発物質とし、シリル化後、ピリジンあるいはその他の求核反応試薬と反応させ、次いで脱保護するものであり、本件発明のように、7-アミノ-セファロスポリン酸を出発物質として用いるものでもなく、また、シリル化した後、ヨウ素化するものでもない。さらに、本件発明のN,0一ビス-シリル-3一ヨードメチル化物については、反応工程図中にその構造式が示されているだけで、単離はされてはいないものである。したがって、これらの相違からみれば、本件発明は、先願明細書1〜4に記載された発明と同一とすることはできない。
次に、本件発明のN,0一ビス-シリル-3一ヨードメチル化物の加水分解性の問題については、上記(ロ)で述べたように解決可能な問題であるし、上記N,0-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物はの種々のセファロスポリン系化合物を製造しうるKey中間体として有用なものであり、これを単離することを含む本件発明の効果も顕著なものということができるから、本件発明が産業上利用できないとはいえない。
したがって、この松本久紀の主張(a)も採用できない。
(ニ)森下省吾の主張(c)について、
この主張の一は、権利者が、N,0-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物の安定性効果をいう以上は、N,0-ビス-シリル-3一ヨードメチル化物を個体の形で単離する工程が特許請求の範囲において特定されねばならず、また、N,0-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物を単離しなければ、本件発明の効果は達成されないというものであるが、上記訂正により、N,0-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物の単離工程はすでに本件発明の必須の構成要件となっている。また、セファロスポリン誘導体の製造において中間生成物の単離といえば溶媒中から固体の形で単離されるのが普通である。したがって、この点に記載不備はない。
また主張の二は、本件明細書においては、3位ヨード置換体を製造するための試薬を「ヨード化試薬」としているが、具体的にはトリメチルヨードシランしか記載がなく、トリメチルヨードシラン以外のいかなるヨード化試薬を使用して本件発明の方法を実施することができるのか不明であるというものであるが、セファロスポリン系化合物において、3位のアセトキシメチル基を脱エステルして3位ヨードメチル基にすることは本件発明において始めてなされたわけではなく、例えば、本件発明の出願前から、広く行われており、このため例えば、刊行物13第3、8頁あるいは刊行物2の第18頁に示されるように、トリメチルヨードシラン以外にも種々のヨード化試薬が用いられており、本件発明の実施に際してはこれらのヨード化試薬を適宜選択して用いればよく、この点に関しては特に記載不備ということはできない。
したがって、この森下省吾の主張(c)も採用できない。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件各異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできず、また他に本件特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
セファロスポリン誘導体の新規製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその誘導体をシリル化して対応するN,O-ビス-シリル化物に変化させる工程、これをヨード化して対応するN,O-ビス-シリルー3-ヨードメチル化物とする工程、これを単離した後、求核反応試薬を反応させて対応するN,O-ビス-シリル-3-置換メチル化物に導く工程、これにアシル化剤を反応させ、かつ、この反応の前または後において保護基を脱離せしめることにより、対応する3-置換メチル-7-アシルアミノセファロスポラン酸化合物を製する工程から成ることを特徴とする、セファロスポリン誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
セファロスポリン類は、人間医学に使用される価値ある抗生物質である。これらの化合物の1部のもの(例えば、セファロチン、セフォタキシム)は、7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)なる基本骨格から誘導される。7-ACAは、セファロスポリンCを発酵生産し、その天然生産物を単離し、側鎖を分解することによって簡単に製造することができ、容易に入手し得る商業製品である。
【0002】
【従来の技術】
一方、今日治療上使用されているセファロスポリン類の本質的な大部分を占めているのは、3位に7-ACAと異なる残基を有する7-アミノセファロスポラン酸類から誘導されたものである(例えば、セファロリジン、セファマンドール、セフアゾリン、セフォペラゾン、セフタジデイム、セフトリアキソン、セフメノキシム、セフォニシド)。この種の化合物を製造するには、通常、まず7-ACAの3位置換基を置換し、得られた7-ACAの3位置換体を単離しなければならない。次いで、7位をアシル化する段階を経て、所望のセファロスポリン抗生物質が単離される。
【0003】
また、この反応は逆の順に実施することも可能である。すなわち、まず所望の残基で7-ACAの7位のアシル化を行なって、7-ACAのアシル誘導体を単離する。次いで、緩衝水溶液中で置換基の置換を行ない、常法により、初期の目的であるセファロスポリン生産物へと誘導する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの両反応には限界がある。つまり3位または7位における所望の残基の組合わせ次第では、無差別にこれらの反応を実施するわけには行かないのである。アシル化、置換反応または単離またはそれらを組合わせた何れの場合でも、プロトン性媒質中で操作しなければならない。7位の側鎖がアシル化され易い、もしくは活性化された官能基である場合には、まずこの基を、選ばれた保護基で保護し、初期の目的であるセファロスポリン生産物を単離した後、もう一度この保護基を脱離しなければならない。
【0005】
【課題を解決する方法】
この種の化合物を製造する従来技術には、本来3通りの方法があるが、何れも若干の問題を有している。西ドイツ国公開特許第2804896号(トヤマ)には、7-アミノセフェム(3)-4-カルボン酸と過剰のルイス酸またはプロトン酸との反応が開示され、その際、3フッ化ホウ素の使用が好ましいことが記載されている。この種の試薬はきわめて毒性が強く、環境問題を生じ易いが、そのほかにも、プロトン性媒質中で強酸条件下、β-ラクタムが不安定であることは周知の事実である。
【0006】
第2の方法として、緩衝水溶液中における3位の置換反応が開示されている(米国特許第3516997号)。この方法では、pH5〜9の緩衝溶液において摘要条件下(7-ACA+複素環チオール)でセファロスポリンの大半が分解し、標題化合物が充分な純度で得られないため収量が悪い。
【0007】
第3の方法として、既に所期の置換基を3位に有するセファロスポリンにおいて、その7位の側鎖のアシル化および脱離を行なう方法が開示されている(例えば米国特許第4369313号)。然しこの特許に使用される出発物質を製造するためには、まず7-ACAの7位をアシル化し、次いで3位における置換反応を行ない、最後に7位の側鎖を分解脱離しなければならない。一連の反応を合計すると、7-ACAからの収量が不経済であると考えられる。
【0008】
この発明の方法は、7-ACAまたはその誘導体をN,0-ビス・シリル誘導体とし、これにヨー素化試薬を反応させて3-ヨードメチル化合物とし、求核反応試薬を添加することによってN,0-ビス-シリル-7-ACAの所望の3位置換誘導体を得て、これを直ちに脱保護するか、あるいは所望のアシル基を7位に導入し得るアシル化剤で置換した後、脱保護によって反応を終結させるものである。この発明はまた、方法全体における個々の反応ないし各反応段階の配列順序に関するものである。
【0009】
この発明の方法は、下記の一般反応工程式によって示すことができる。
【化1】

式(1)〜(V)において、R1は水素またはメトキシ基、R2はメチルまたはアミノ基、Rは低級アルキル基、R4は水素、アルカリまたは負電荷、またはOR4がハロゲンであってもよい。R5はセファロスポリン化学において慣用されるアシル基を示す。R3は求核試薬の残基である。この発明は、特に(IV)から(III)、(III)から(II)へ至る段階、および(III)から(II)を経て(IIa)へ至る段階および(III)から(II)/(IIa)を経て(I)へ至る段階の配列順序に関する。
【0010】
これらの方法は、詳しくは下記の如く例示できる。
式(V)で示される7-アミノセフェム(3)-4-カルボン酸(好ましくは7-ACA)を、反応条件下で不活性な溶媒に懸濁し、シリル化試薬の過剰量の存在下に加熱還流する。このシリル化反応の溶媒には、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロルメタン、クロロホルム、1,2-ジクロルエタン、1,1,2-トリクロルエタン、テトラクロルエチレン等)、有機ニトリル(例、アセトニトリル、プロピオニトリル等)、ニトロアルカン(例、ニトロメタン等)またはスルホン(例、スルホラン等)が挙げられる。シリル化反応は、高沸点溶媒を使用し対応する温度に加熱することによって遂行するか、あるいは低沸点溶媒を使用し有機オキソ酸(例えば、カドラト酸)、トリフルオロ酢酸またはそれらの混合物から成る特殊触媒を用いて遂行する何れかの方法によって達成することができる。この反応のシリル化試薬には、通常この反応に使用されるヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロルシラン、ビス-トリメチルシリル尿素、N-トリメチルシリルジアルキルアミンまたは、ビス-またはモノシリル化アセトアミドまたはこれらの混合物のようなシリル化試薬が使用できる。この場合、モノシリル誘導体が少量でも存在していると以後の反応に著しく支障を来すおそれがあるので、ビスシリル化が100%進行することが望ましい。このようにして得られた式(IV)の化合物を置換するには、例えば、該反応混合物に1.1〜1.5当量のトリアルキルヨードシラン(例えばトリメチルヨージラン)を加え、-20〜+50℃、好ましくは0〜45℃の温度で反応を行えばよい。驚くべきことに3-ヨードメチル-N,0-ビス-トリアルキルシリル-7-アミノセファロスポラン酸なる構造の化合物は安定である。文献に記載されている若干の類似構造では、その窒素において過度の自己アルキル化反応が生じる(西ドイツ国公開特許第3212900号、ヤマノウチ)。本発明においてN,0-ビス-トリアルキルシリル-3-ヨードメチル-7-アミノセファロスポラン酸が安定であるのは、窒素原子に結合しているトリアルキルシリル基の立体障害によるものであろう。この場合、モノシリル化合物が混在するとさらに分解が進み、過度の重合化をもたらすので、ビス-シリル化合物を純粋に生成させることが肝要である。
【0011】
過剰の溶媒およびトリアルキルヨードシランを真空下に除去することにより、ビス-トリメチルシリル-3-ヨードメチル-7-アミノセフェム(3)-4-カルボン酸[式(III)]は純粋な形で単離され、NMRスペクトルによって確認することができる。
【0012】
式(III)で示されるセファロスポリン誘導体は、式(II)または式(IIa)の3-置換-7-アミノセフェム(3)-4-カルボン酸へと容易に誘導することができ、具体的には、例えば
(a) 第3級(含窒素)複素環(例、ビリジン、キノリン等)または脂肪族第3級アミンまたは脂環式第3級アミン(例、N-エチルピペリジン-N-メチルピロリジン等)、または
(b) メルカプト置換基を有する複素環チオラート・アニオン、または遊離のメルカプト複素環と酸捕獲剤、または
(c) 第2級窒素原子を有する複素環
のような求核反応試薬で置換し、所望により同時に脱保護を行なうか、もしくは置換後、引続き脱保護を行なう。
【0013】
この場合、式(III)の化合物と反応する反応試薬としては、下記に挙げるものが特に好ましい。
(a) ピリジン、キノリンのような芳香族含窒素塩基(これらは、さらに1またはそれ以上の置換基を有してもよい)、脂肪族トリアルキルアミン(アルキルはC1〜C4が好ましい)および飽和または不飽和の炭素環式第3級アミン(例えばN-エチルピペリジン、N-メチルピロリジン、キヌクリジン等)。
(b) 複素環チオール塩または酸捕捉剤を添加したメルカプト化合物。
(c) 第2級アルキル化窒素を有する複素環化合物(例えば、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピロリジン、イミダゾール)。
【0014】
上記の反応試薬との置換反応は、前記した溶媒中、-78〜+70℃、好ましくは-50〜+40℃で遂行することができる。該反応試薬が前記の溶媒に対して溶解し難い場合は、必要に応じて完全に乾燥した非プロトン性極性溶媒(例、DMF、HMPT)を添加することができる。
【0015】
次いで、式(I)の化合物を製造するために、反応混合物をそのまま、自体公知の方法によって7位に所望のアシル基を導入し、シリル基が存在している場合は、これを脱離する。
【0016】
アシル化反応のために、式(II)または(IIa):[ここで、R1は前記と同意義であり、R3は
(a) 式
【化2】

(式中、Hetはピリジン、キノリン、ピリミジンまたはチアゾール、R6はカルボキシ、カルバミド、スルホンアミドまたはβ-ラクタム化学において慣用される置換基であり、あるいは2つのR6が一緒になって、所望により置換基を有する炭素環を作ることができる)で示される芳香性窒素塩基、または
(b) 式
【化3】

(式中、R7、R8およびR9は同一または異なる基であってそれぞれ低級アルキル基または低級アルケニル基を表わし、またはR7はR8および窒素原子と一緒にR9をアルキル置換基とする5員または6員の飽和または不飽和炭素環を作り、さらにこの場合、R9はその環の1,3位または1,4位間にアルキレンまたはビニレン架橋を作ることができる)
で示される脂肪族または脂環式窒素塩基、または
【0017】
(c) 式
【化4】

(式中、Hetは5員または6員の複素環、R10およびR11はアルキル、ハロゲンまたはアルケニル基を表わし、ここでアルキル基は、さらにスルホン酸、アシルアミノ、ジアルキルアミノ、オキソまたはヒドロキシ基で置換されることができる)
で示される所望により置換基を有し得る複素環チオール残基、または
(d) 式
【化5】

(式中、Hetは低級アルキル基で置換されることもあるテトラゾール、トリアゾール、イミダゾール、ピロリジンまたはピラゾールである)
で示される残基である]
の化合物は、好ましくは該反応混合物中で製造される。これらの化合物は、下式
【化6】

(式中、R6〜R11およびHetは前記と同意義である)
で示される化合物を、式(II)または(IIa)の化合物を含有している反応混合物へ添加することによって得ることができる。
【0018】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、これによって発明の範囲を限定するものではない。実施例において温度はすべて摂氏温度で示してある。
実施例1
7-トリメチルシリルアミノ-3-ヨードメチルセフェム(3)-4-カルボン酸トリメチルシリルエステル[式(III)の化合物]
(a) 7-トリメチルシリルアミノ-3-アセトキシメチルセフェム(3)-4-カルボン酸トリメチルシリルエステル[(IV)]
7-アミノセファロスポラン酸2.5g、トリクロルシラン1.75ml、ヘキサメチルジシラザン7.65mlの乾燥クロロホルム100ml中懸濁液を沸とうさせ、この液にカドラト酸45mgを加え、この混合物を、窒素雰囲気下に1夜加熱還流する。透明な溶液を、減圧下に蒸発乾固し、7-トリメチルシリルアミノセファロスポラン酸トリメチルシリルエステルが固体の形で得られる。このものは極度に加水分解をうけ易いため、融点を測定することはできなかったが、NMRスペクトル測定によって確認した。
【0019】
1HNMR:0.15(9H,N-Si≡);0.36(s,9H,-CO2Si≡);1.43(d,I=12Hz,1H,NH);2.09(s,3H,
【化7】

;3.46(AB,I=18Hz,2H,C2-H);4.60-5.28(m,4H,CH2-I,C6-H,C7-H).
【0020】
(b) 7-トリメチルシリルアミノ-3-ヨードメチルセフェム(3)-4-カルボン酸トリメチルシリルエステル[式(III)]
N,0-ビス-シリル化7-ACA[(a)により製造]を乾燥ジクロロメタン125mlに溶解し、この溶液を0°に冷却してトリメチルヨードシラン1.87mlを滴下する。液の温度を室温に戻し、さらに2時間撹拌する。溶媒を減圧下に溜去して標題化合物を固体の形で得る。このものは加水分解され易いため、ただNMRスペクトルによって確認した。
【0021】
1HNMR(CDCl3):0.125(b,9H,N-Si≡);0.38(s,9H,-CO2Si≡);1.55(d,J=12Hz,1H,NH);3.50(AB,I=18Hz,2H,C2H);4.39(AB,I=9Hz,2H,-CH2-I);4.58(d,d,I=12Hz,4,5Hz,1H,C7-H);4.71(d,I=4,5Hz,1H,C6-H).
【0022】
この7-トリメチルシリルアミノ-3-ヨードメチルセフェム(3)-4-カルボン酸トリメチルシリルエステルから、以下に例示するような、式(II)で示される3位置換誘導体を製造することができる。
【0023】
実施例2
7-アミノ-3-ピリジウムメチルセフェム(3)-4-カルボン酸・ヨー化水素酸塩[式(IIa)]
実施例1の標題化合物の溶液を氷冷し、これにピリジン1.47mlを加え、次いでこの溶液を室温で2時間撹拌する。この溶液にメタノール1.7mlを添加すると、7-アミノ-3-ピリジウムメチルセフェム(3)-4-カルボン酸の粗製のヨー化水素酸塩が沈殿する。この固体物質を水に浸漬することによって純粋な標題化合物が得られる。mp:145°(分解)。
【0024】
1HNMR:(D2O,K2Co3);3.38(AB,I=18Hz,2H,C2-H);4.80(d,I=5,8Hz,1H,C7-H);5.10(d,I=5,8Hz,1H,C6-H);5.43(AB,I=17Hz,2H,CH2-N+≡);8.0-8.2(m,2H,ピリジン3H’s);8.41-8.63(m,1H,ピリジンC4-H);8.93(d,I=6,3Hz,2H,ピリジン-2H’s).
【0025】
実施例3
7-アミノ-3-[5-(1,2,3-トリアゾル)チオメチル]セフェム(3)-4-カルボン酸[式(IIa)]
実施例1の標題化合物のジクロルメタン溶液にN,N-ジメチルホルムアミド5mlおよび5-メルカプト-1,2,3-トリアゾールのNa塩2.26gを0°で加え、この溶液を室温でさらに2時間撹拌する。氷冷下、メタノール5mlを加えることにより、標題化合物が沈殿する。沈殿を6N-HClに溶解し、濃NaOH溶液でpH1に調節すると標題化合物が再沈殿する。分解点:190°以上。
1HNMR(DMSO;CF3CO2H):3.28(AB,I=18Hz,2H);3.95(AB,I=12,6Hz,2H);4.76(d,I=5,7Hz,1H);4.97(d,I=5,7Hz,1H);7.9(s,1H).
【0026】
実施例4
7-β-アミノ-3-(2-デヒドロキヌクリジニウム)メチルセフェム(3)-4-カルボンシラート・2塩酸塩[式(IIa)]
7-アミノセファロスポラン酸2.22gを、実施例1に記載の如く置換して7-トリメチルシリルアミノ-3-ヨードメチルセフェム(3)-4-カルボン酸トリメチルシリルエステルとする。このジクロルメタン溶液に、氷冷下、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン1gを加え、さらに室温で2時間撹拌する。エーテル性飽和HC12mlを添加して生成物を沈殿させる。粗製品を希HCl水溶液に溶解し、イソプロパノールで沈殿させる。無色の粉末を得る。140°より分解。
【0027】
1HNMR(D2O):1.70-2.50(m,4H);3.0-5.2(m);3.76および4.10(AB,I=19Hz,2H);5.34(d,I=6Hz,1H);5.53(d,I=6Hz,1H);6.70-7.3(m,2H).
【0028】
実施例5
7-β-アミノ-3-(N-メチルピロリジニウム)メチルセフェム(3)-4-カルボキシラート・塩酸塩[式(IIa)]
前記と同様に、7-アミノセファロスポラン酸10.88gを置換して7-トリメチルシリルアミノ-3-ヨードメチルセフェム(3)-4-カルボン酸トリメチルシリルエステルとする。この化合物のジクロロメタン120mlの溶液に-60°でN-メチルピロリジン4.15mlを徐々に加え、この温度で90分間撹拌する。次いで、HClガスを溶存させたエタノール100mlに反応混合物を注入する。この懸濁液のpHを2.5に調節する。1夜放置すると、固体が分離する。これを水20mlに懸濁し、濃HClでpHを0に調節する。この液に活性炭5gを加え、5分間撹拌し、不溶物および活性炭を濾去する。5N-NaOHで無色の水溶液のpHを2.5に調節し、アセトン200mlをこの溶液に徐々に注加する。冷蔵庫に2時間放置後、沈殿物をヌッツエに濾取し、アセトンおよびエーテルで洗浄する。乾燥機で乾燥することにより、無色の粉末を得る。分解点:115°。収量5.6g(理論値の42%)。
【0029】
1HNMR(CF3CO2D+D2O):5.48(1H,d,I=5,2Hz,C7-H);5.31(1H,d,I=5,2Hz,C6-H);4.73(2H,AB,I=13Hz;CH2-N-);4.1-3.47(6H,m,C2-HおよびN-メチルピロリジン-H);3.15(3H,s,CH3-N-);2.37(4H,b,N-メチルピロリジン-H).
式(I)の化合物は、以下の実施例の如くして得られる。
【0030】
実施例6
(6R,7R)-7-[2-(2-アミノ-4-チアゾリル]-(Z)-2-[(1-ジフェニルメトキシカルボニル-1-メチルエトキシ)イミノ]アセトアミド-3-(1-ピリジニウムメチル)セフェム(3)-4-カルボン酸クロリド・塩酸塩[式(I)]
7-ACA2.5g、トリクロルシラン1.75mlおよびヘキサメチルジシラザン7.65mlの乾燥クロロホルム100ml懸濁液を還流下に沸とうさせ、これにカドラト酸45mgを加え、この混合物を、窒素雰囲気下に1夜煮沸還流する。透明な溶液を減圧下に蒸発乾固すると、7-トリメチルシリルアミノセファロスポラン酸トリメチルシリルエステルが固体となって析出する。これを乾燥ジクロルメタ2ン15mlに溶解し、0°に冷却し、ヨードトリメチルシラン1.87mlを滴下する。溶液を室温に戻し、さらに2時間撹拌する。生成した7-トリメチルシリルアミノ-3-ヨードメチルセフェム(3)-4-カルボン酸トリメチルシリルエステルに乾燥ピリジン1.47mlを加え、室温で2時間撹拌する。次いで、この溶液に2-(2-アミノ-4-チアゾリル)-(Z)-2-[(1-ジフェニルメトキシカルボニル-1-メチルエトキシ)イミノ]-チオ酢酸-S-ベンゾチアゾール-2-イルエステル5.41gを加え、この混合物を2日間室温で撹拌する。次に、この反応混合物を50°に加温した濃塩酸4.5mlのイソプロパノール500mlの溶液に投入すると、標題化合物が沈殿する。この沈殿を吸引濾別し、イソプロパノールで洗浄する。乾燥し、塩酸/イソプロパノールから再結晶することによって、黄色の標題化合物を得る。mp:160°より分解。
【0031】
1H-NMR(DMSO-d6);9.84(1H,d,-N-H,I=8Hz);9.20,8.67および8.23(5H,ピリジニウム-H);7.28(10H,フェニル-H);6.98(1H,S,チアゾリル-H);6.79(1H,S,CH-Ph2);5.95(1H,dd,H7,I=8Hz,I=5Hz);5.72(2H,CH2-ピリジン);5.27(1H,d,H6,I=5Hz);3.57(2H,H2およびH2’);1.63(6H,-C(CH3)2).
【0032】
実施例7
7-[α-(エトキシカルボニルメトキシ)イミノ-1H-ピラゾール-3-イル]アセトアミド-3-[(1-メチル-1H-テトラゾール-5-イル)チオメチル]セフェム(3)-4-カルボン酸・エタノール溶媒和物[式(I)]
7-トリメチルシリルアミノ-3-ヨードメチル-3-セフェム-4-カルボン酸トリメチルシリルエステル(実施例1または実施例6により製造)3.82gの乾燥ジクロルメタン125ml溶液にジメチルホルムアミド5mlおよび1-メチル-5-メルカプト-1,2,3,4-テトラゾールのナトリウム塩1.4gを加え、この溶液を室温で2時間撹拌する。次いで(メトキシカルボニルメトキシイミノ)-1H-ピラゾール-3-イル酢酸・メルカプトベンゾチアゾリルエステルの結晶4.16gをこれに加え、反応混合物を1夜室温で撹拌し続ける。55°に加温したエタノール350mlに、この反応物を撹拌しながら加え、徐々に30°に冷却する。標題化合物の結晶種を加えることによって、標題化合物が結晶として沈殿する。これを濾取し、乾燥する。mp:119〜121°。
【0033】
実施例8
7-β-(2-チェニルアセトアミド)-3-ピリジニウムメチルセフェム(3)-4-カルボン酸・硝酸塩[式(I)]
7-トリメチルシリルアミノ-3-ヨードメチルセフェム(3)-4-カルボン酸トリメチルシリルエステル(実施例1または実施例6により製造)3.82gの乾燥ジクロルメタン125ml溶液に乾燥ピリジン1.47mlを加え、室温で2時間撹拌する。次いで、この溶液にチエニル酢酸-S-メルカプトベンゾチアゾリルエステル3.2gのジクロルメタン20ml溶液[ジクロルメタン中、チオフェン酢酸1.56g、ビス(ベンゾチアゾール-2-イル)ジスルフィド4.47gおよびフェニルホスフィン3.53gから調製し、そのまま使用する]を加え、この混合物を室温で30時間撹拌する。これにメタノール5mlを注加することにより、標題化合物の粗製品がヨウ化水素酸塩として沈殿する。この沈殿を5%重炭酸塩溶液に溶解し、不溶物を濾別し、濾液に希硝酸溶液を加えることによりpH1.8で標題化合物が硝酸塩として結晶化する。
mp:151〜152°(分解)
 
訂正の要旨 ▲1▼特許請求の範囲の請求項1を、次ぎのとおり訂正する(訂正箇所を下傍線で示す。):
「7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)またはその誘導体をシリル化して対応するN,O-ビス-シリル化物に変化させる工程、これをヨード化して対応するN,O-ビス-シリル-3-ヨードメチル化物とする工程、これを単離した後、求核反応試薬を反応させて対応するN,O-ビス-シリル-3-置換メチル化物に導く工程、これにアシル化剤を反応させ、かつ、この反応の前または後において保護基を脱離せしめることにより、対応する3-置換メチル-7-アシルアミノセファロスポラン酸化合物を製する工程から成ることを特徴とする、セファロスポリン誘導体の製造方法。」
▲2▼明細書3頁12〜13行(特許第2625647号公報2頁4欄26〜28行)、
「またこの発明の方法は、所望により全体を通じて個々の中間生産物を単離することなく実施することができる。」とあるを削除する。
▲3▼明細書6頁14行(特許第2625647号公報4頁7欄24行)、
「その際式(III)の化合物を単離する必要がない。」とあるを削除する。
異議決定日 2001-03-01 
出願番号 特願平6-289506
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C07D)
P 1 651・ 531- YA (C07D)
P 1 651・ 121- YA (C07D)
P 1 651・ 161- YA (C07D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 唐木 以知良大宅 郁治瀬下 浩一  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 小島 隆
谷口 浩行
登録日 1997-04-11 
登録番号 特許第2625647号(P2625647)
権利者 ビオヘミー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
発明の名称 セファロスポリン誘導体の新規製造方法  
代理人 江角 洋治  
代理人 田村 恭生  
代理人 小田島 平吉  
代理人 小田嶋 平吾  
代理人 田村 恭生  
代理人 青山 葆  
代理人 青山 葆  
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