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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  F16C
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  F16C
審判 全部申し立て 2項進歩性  F16C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F16C
管理番号 1044738
異議申立番号 異議2000-71840  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-04-28 
確定日 2001-04-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2974044号「すべり軸受」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2974044号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
特許第2974044号の請求項1乃至3に係る発明についての出願は、平成6年3月18日に特許出願され、平成11年9月3日にその発明について特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人・大同メタル工業株式会社により特許異議の申立てがされ、取消理由の通知がされ、その指定期間内である平成12年11月28日に訂正請求がされたものである。

II.訂正の適否について
1.訂正の内容
(1).訂正事項a
特許の願書に添付した明細書又は図面(以下、「特許明細書等」という。)における特許請求の範囲の請求項1及び2を、以下のとおりに訂正するとともに、請求項3を削除する。
【請求項1】内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受において、上記山部の高さをh、上記中間層の厚さをy、上記山部の頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたとき、上記山部の高さh、中間層の厚さyおよびオーバレイ層の厚さtを下記の数式(1)、(2)、(3)に示す範囲に設定し、また、上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径をDとしたとき、上記山部の高さhが下記の数式(4)に示す範囲であることを特徴とするすべり軸受。
1≦h≦8 …(1)
0<y≦2 …(2)
0.7h≦t≦2h …(3)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000 …(4)
ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμmとする。
【請求項2】内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受において、上記山部の高さをh、上記中間層の厚さをy、上記山部の頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたとき、上記山部の高さh、中間層の厚さyおよびオーバレイ層の厚さtを下記の数式(1’)、(2’)、(3’)に示す範囲に設定し、また、上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径をDとしたとき、上記山部の高さhが下記の数式(4)に示す範囲となるように設定したことを特徴とするすべり軸受。
3≦h≦6 …(1’)
0<y≦0.5 …(2’)
h≦t≦1.5h …(3’)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000 …(4)
ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμmとする。

(2).訂正事項b
特許明細書等の段落【0004】の記載事項を「すなわち請求項1に記載した本発明は、内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受において、上記山部の高さをh、上記中間層の厚さをy、上記山部の頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたとき、上記山部の高さh、中間層の厚さyおよびオーバレイ層の厚さtを下記の数式(1)、(2)、(3)に示す範囲に設定し、また、上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径をDとしたとき、上記山部の高さhが下記の数式(4)に示す範囲であることを特徴とするすべり軸受を提供するものである。
1≦h≦8 …(1)
0<y≦2 …(2)
0.7h≦t≦2h …(3)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000 …(4)
ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμmとする。
また、請求項2に記載した発明は、内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受において、上記山部の高さをh、上記中間層の厚さをy、上記山部の頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたとき、上記山部の高さh、中間層の厚さyおよびオーバレイ層の厚さtを下記の数式(1’)、(2’)、(3’)に示す範囲に設定し、また、上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径をDとしたとき、上記山部の高さhが下記の数式(4)に示す範囲となるように設定したことを特徴とするすべり軸受を提供するものである。
3≦h≦6 …(1’)
0<y≦0.5 …(2’)
h≦t≦1.5h …(3’)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000 …(4)
ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμmとする。」と訂正する。

(3).訂正事項c
特許明細書等の段落【0006】の記載事項中の「また、上述したように中間層3は軸受合金層2とオーバレイ層4とを密着させる目的で設けたものであるが、必要に応じてこれを省略してもよい。すなわち、特に軸受合金層2がCu系の軸受合金層2の場合には、軸受合金層2とオーバレイ層4とを充分な密着強度で密着させることができるので中間層3を省略することができ、また軸受合金層2がA〓系の軸受合金層2の場合には、軸受合金層2とオーバレイ層4との密着強度を充分に確保できた場合には、中間層3を省略することができる。」とある記載を削除する。

(4).訂正事項d
特許明細書等の図1におけるtをyと訂正すると共に、山部の高さを表す記号hの上方にオーバレイ層の厚さを表す記号tを追加し、さらに、図4における「軸受内径D」を「軸径D」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否
(1).訂正事項aは、特許明細書等の特許請求の範囲の請求項3を削除し、訂正前の請求項1及び2を特定する事項に、それぞれ請求項3に記載されている事項を加え、その際に数式の対応関係を明りょうとするために請求項1については「数式(1)、(2)、(3)に示す」及び「数式(4)に示す」なる字句を、請求項2については、「数式(1’)、(2’)、(3’)に示す」及び「数式(4)に示す」なる字句を付加して新たな請求項1及び2とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2).上記訂正事項b及びcは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3).上記訂正事項dは、明細書の記載と図面の記載との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とする訂正に該当し、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議の申立てについて

1.異議申立ての理由の概要
特許異議申立人・大同メタル工業株式会社は、証拠方法として、甲第1乃至4号証を提示し、本件の請求項1乃至3に係る発明は、甲第1及び3号証に記載された発明に該当し、又は、当業者が、甲第2乃至4号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、さらには、請求項1及び3に係る発明の特許は、特許法第36条に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、請求項1乃至3に係る発明についての特許を取り消すべき旨主張している。

2.36条違反についての判断
本件発明の要旨認定に先立ち、明細書の記載不備に係る異議申立て理由について検討する。
異議申立ての理由の概要は以下の(1)及び(2)のとおりである(異議申立書第4頁の表参照)。
(1).「図4には山部の高さhと軸受内径D(単位はmm)との関係を示していると記載されているが、請求頃3に記載のように“回転軸の軸径をD(μm)”とするならば回転中になじみ等によって軸径が小さくなる方向に寸法が径小となり、図4に記載のように“回転軸受内径をD(mm)“とするならば回転中になじみ等によって軸受の内径が大きくなる方向に寸法が径大となるのであるから、μmという極く微小な寸法設定を要件としている本件特許発明においては上記いずれであるかによって実施結果に著しい相違を生ずるものであり、図4の関係は【請求項3】の発明を裏付けるものとはなっていない。」
(2).「『上記密着層』の前に“密着層”という用語がないから、発明の構成が不明確である。また、『中間層』が『密着層』と直接的かつ一義的に同じものであるとの定義付けもなされていないから相互に読み変えることもできないものであり、発明の構成が不明確である。」
上記「II.1.(1)、(2)及び(4)」に示されているように、記載不備の原因とされる「密着層」は「中間層」に、また、図4の「軸受内径D」は「軸径D」と適法に訂正されている。
してみると、上記(1)及び(2)の明細書の記載不備は既に解消されているものと解される。
そして、他に明細書及び図面に不備な点は見当たらないから、本件特許は、特許法第36条に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものとすることができない。

3.本件発明
上記「II.」において示したように訂正が認められたことより、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、訂正請求書に添付した全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された上記「II.1.(1)」において示したとおりのものである。

4.甲号各証に記載された発明

(1).甲第1号証;特開昭62-283216号公報
すべり軸受に関し、
(a).「(1)Al系合金からなるライニング材の表面に密着層を形成し、さらにその密着層の表面にPb系合金からなるオーバレイ層を形成したすべり軸受において、上記ライニング材の表面に凹部を形成してその表面を凹凸面に形成するとともに、このライニング材の凹凸面上に、その凹凸面に倣って表面が凹凸面となる密着層を形成して上記凹部の内面を密着層で被覆し、さらに上記密着層の凹凸面上にオーバレイ層を形成して、このオーバレイ層を上記内面が密着層で被覆された凹部内に充填し、上記ライニング材の凸面まで密着層とオーバレイ層とが摩耗された際に、上記凹部内に密着層とオーバレイ層とを残存させることを特徴とするすべり軸受。……
(3)上記密着層の厚さが0.01〜2μmであることを特徴とする特許請求の範囲第1項又は第2項に記載のすべり軸受。
(4)上記ライニング材1の凹凸面の粗さが2〜20μmRzであることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第3項のいずれかに記載のすべり軸受。」(特許請求の範囲参照)、及び
(b).「このオーバレイ層4は、…その厚さは1〜25μm程度が良い。」(第3頁右上欄第11〜15行)、との記載が認められる。
これらの記載事項並びに明細書及び図面の全記載からみて、甲第1号証刊行物には以下の発明が記載されているものと認める。
(c).「内周面に、凹凸面が形成されたライニング材と、このライニング材の表面を被覆する密着層と、さらにこの密着層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、上記ライニング材の凸面までを密着層とオーバレイ層とが摩耗された際に、上記凹部内に密着層とオーバレイ層を残存させるように構成したすべり軸受において、
上記凹凸面の粗さを2〜20μmRz、上記密着層の厚さを0.01〜2μm、及びオーバレイ層の厚さを1〜25μmに設定したすべり軸受。」

(2).甲第2号証;特開昭60-205014号公報
複合滑り軸受けに関し、
(d).「1.支持作用を有する支持シエル体(1)と、この支持シエル体上に設けられた軸受け金属層(2)と、この軸受け金属層(2)上に設けられた滑り層(3)と、この滑り層および軸受け金属層(2)の間に設けられた中間層(4)とを有する複合滑り軸受けにおいて、中間層(4)を支持する軸受け金属層(2)の表面に、成形形状に従った中間層(4)の厚さ(s)の1.5倍よりも大きいが、少なくとも5ミクロンである成形深さ(t)を有する変形成形部(5)が設けられていることを特徴とする複合滑り軸受け。
2.変形成形部(5)が少なくともほぼ回転方向にのびる溝(5a)を有している特許請求の範囲第1項記載の複合滑り軸受け。」(特許請求の範囲)、
(e).「従って本発明の課題は、…複合滑り軸受けを、中間層が申し分なく作用するにもかかわらず滑り層が摩耗したばあい中間層が耐用寿命に関して影響を及ぼすことが著しく減少されるようにすることにある。」(第2頁左上欄第15〜20行)、及び
(f).「本発明の構成では、中間層を支持する軸受け金属層の表面の変形成形部によって、ほぼコンスタントな厚さで中間層を設けたばあい、下限を制限された成形深さに基づいて摩耗段階が大きな表面範囲に亘つて生ぜしめられることのない中間層の変形成形部が得られる。従つて一定比率の比較的硬質の中間層の他に常に一定比率の軟質の滑り層もしくは中間層を支持する軸受け金属層が滑り面に生ぜしめられ、従ってこれら材料によって組合わせ作用が生ぜしめられ、この組合わせ作用によつて、滑り層がすでに大部分切除されたばあいでも、局部的な摩滅の危険が著しく減少される。滑り層が適当に摩耗した後でも滑り層に中間層の変形成形部により保証されたわずかな量の中間層が存在するので、中間層の厚さを特別に考慮する必要はない。従って中間層を著しい厚さで設けることができる。」(第2頁右下欄第7行〜第3頁左上欄第4行)、との記載が認められる。
これらの記載事項並びに明細書及び図面の全記載からみて、甲第2号証刊行物には以下の発明が記載されているものと認める。
(g).「内周面に、回転方向に伸びる溝(5a)を形成した軸受け金属層(2)と、この軸受け金属層(2)の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆する滑り層とを有し、一定比率の比較的硬質の中間層の他に常に一定比率の軟質の滑り層もしくは中間層を支持する軸受け金属層が滑り面に生ぜしめられるように構成した複合滑り軸受けにおいて、
上記溝の深さを、上記中間層の厚さの1.5倍よりも大きいが、少なくとも5ミクロンに設定した複合滑り軸受け。」

(3).甲第3号証;特開平3-249426号公報
滑り軸受装置に関し、
(h).「裏金と、該裏金上に形成される軸受層と、該軸受層上に形成される軸受表面層とを具備し、前記金属軸受層は軸受表面層との境界面で軸受の長手方向において所定深さの凹凸状の条痕を形成する滑り軸受において、前記凹凸のピッチは軸受に加わる荷重の高い箇所で大きいことを特徴とする滑り軸受装置。」(特許請求の範囲)、
(i).「この発明は、回転軸から加わる荷重が高い部分において軸受表面層を早期に摩耗させることで、回転軸と軸受とのなじみを早期に起こさせ、早期に金属軸受層による支持状態を確立させるように構成を工夫する」(第2頁左上欄第5〜9行)、
(j).「この条痕の深さd1は3-6μmとなっており、一方の表面の軸受表面層の厚みd2は3-7μmの設定となっている。」(第2頁右上欄第18〜20行)、及び
(k).「軸受表面層14の境界部分16はニッケルまたは銅を主体とし、軸受表面層14と軸受層12との間の接着性の向上を意図したものであり、その厚みd3が0.5-2μmである。」(第2頁左下欄第11〜14行)、との記載が認められる。
これらの記載事項並びに明細書及び図面の全記載からみて、甲第3号証刊行物には以下の発明が記載されているものと認める。
(l).「内周面に、軸受の長手方向において凹凸状の条痕を形成した金属軸受層12と、この金属軸受層12の表面を被覆する境界部分16と、さらにこの境界部分16の表面を被覆する軸受表面層14とを有し、軸受表面層を早期に摩耗させることで金属軸受層による支持状態を確立するように構成した滑り軸受装置において、上記条痕の深さを3-6μm、境界部分16の厚さを0.5-2μm、軸受表面層の厚さを3-7μmに設定した滑り軸受装置。」

(4).甲第4号証;特開平5-99228号公報
内燃機関用すべり軸受に関し、
(m).「【0006】
【実施例】まず、第1の実施例について説明する。図2には内燃機関のクランク軸軸受の下側半分の斜視図を示す。図2を参照すると、軸受1の内周面には螺線状の溝2がほぼ円周方向に形成されている。……
【0008】図3を参照すると、溝2はクランク軸(図示せず)の回転方向Rに対して1度の角度をなして形成されている。図1には図3のI-I線に沿ってみた拡大断面図を示す。図1を参照すると、約2mmの厚さを有するSPCC製軸受本体3の上に軸受金属であるケルメット(銅鉛合金)層4が形成される。ケルメット層4の厚さは0.15〜0.30mmである。ケルメット層4の軸受面(図中上面)にはボーリング仕上げによって溝2aが形成されている。溝2aの断面形状は円弧状である。溝2aの幅Bは0.261〜0.30mmであり、溝2aの深さHは3〜6μmである。このため、溝2aの深さHに対する溝2aの幅Bの比Rは43.5〜100である。
【0009】ケルメット層4の上面にはニッケルメッキが施されてニッケルメッキ層5が形成される。ニッケルメッキ層5の厚さは1〜3μmである。ニッケルメッキ層5の上面にはさらに鉛合金(Pb-Sn-In合金)メッキ層6が形成されている。鉛合金メッキ層6の厚さは12〜20μmである。ニッケルメッキ層5および鉛合金メッキ層6は十分に薄いために、ケルメット層4上面の溝2aと相似形状の溝2が鉛合金メッキ層6上面に形成されている。」、
(n).「【0015】次に第2の実施例について説明する。図5には第2の実施例の軸受であって、図1と同様の図を示す。図5において図1と同様の部分については同一符号で示す。図5を参照すると、SPCC製軸受本体3の上に軸受金属であるアルミ合金(例えばAl-Sn-Cu)層10が形成される。アルミ合金層10の厚さは0.15〜0.30mmである。アルミ合金層10の軸受面(図中上面)には、第1の実施例と同様の溝2aが形成されている。溝2aの幅Bは0.36〜0.40mmであり、溝2aの深さHは1.5〜2.5μmである。従って、溝2aの深さHに対する溝2aの幅Bの比Rは144〜267である。
【0016】アルミ合金属10の上面にはニッケルメッキが施されてニッケルメッキ層5が形成される。このニッケルメッキ層5の厚さは0.1〜2.0μmとされ、第1の実施例に比べて薄くされている。ニッケルメッキ層5の上面にはさらに鉛合金(Pb-Sn-In合金)メッキ層6が形成されている。この鉛合金メッキ層6の厚さは12〜20μmである。この鉛合金メッキ層6上面には、第1の実施例と同様の溝2が形成される。」、
(o).「【0017】第1の実施例のように、軸受金属としてケルメットを用いると、鉛合金メッキ層6中のスズがケルメット層4に拡散するためにバリヤ層としてニッケルメッキ層5を厚くする必要がある。ところがニッケルメッキ層5を厚くすると鉛合金メッキ層6中のスズがニッケルメッキ層5のニッケルと化合し、このため鉛合金メッキ層6中のスズの量が減少して鉛腐食が発生する。この鉛腐食は軸受にかかる面圧が高い程増大する。このため、第1の実施例の軸受では軸受の面圧をさほど高くできない。
【0018】第2の実施例では軸受金属としてアルミ合金層10を使用しているために、鉛合金メッキ層6中のスズはアルミ合金層10にほとんど拡散しない。このためニッケルメッキ層5を厚くする必要がなく、ニッケルメッキ層5はアルミ合金層10と鉛合金メッキ層6との接着層として作用する。これによって、鉛合金メッキ層6中のスズはニッケルメッキ層5のニッケルとあまり化合せず、このため鉛腐食はほとんど起こらない。このために軸受の許容面圧を高めることができる。
【0019】鉛腐食が起こらないときの内燃機関の寿命期間におけるクランク軸軸受の摩耗量は最大でも10μm以下である。本実施例では鉛合金メッキ層6の厚さを12〜20μmと十分な厚さとしており、また、鉛腐食がほとんど起こらないために、摩耗によって鉛合金メッキ層6が消滅してアルミ合金層10が露出することはない。アルミ合金層10は鉛合金メッキ層6程面圧が高くないために、アルミ合金層6が露出すると許容面圧を高くすることができない。
【0020】本実施例では、前述のように鉛合金メッキ層6の厚さを十分な厚さとしているために、内燃機関の寿命期間内においてアルミ合金層10が露出することがなく、このため軸受の許容面圧を高くすることができる。例えば、第2の実施例を適用しない軸受の許容面圧を40MPaとすると、第2の実施例の軸受の許容面圧を50〜60MPaと高めることができる。」、
(p).「【0021】なお鉛合金メッキ層6は上述のPb-Sn-In合金のほかオーバレイ合金として、各種Pb系合金ならびにSn系合金を用いることができる。あるいはSnオーバレイを用いても良い。」、
(q).「【0022】
【発明の効果】溝の山の部分が摩耗し難くなるために耐摩耗性を向上せしめることができる。」、との記載が認められる。
以上の記載事項並びに明細書及び図面の全記載からみて、甲第4号証刊行物には、以下の発明が記載されているものと認められる。
(r).「内周面に、円周方向の溝を形成した軸受金属と、この軸受金属の上面を被覆するニッケルメッキ層と、さらにこのニッケルメッキ層5の上面を被覆する鉛合金メッキ層6とを有するすべり軸受において、軸受金属をケルメット層4とした場合には、上記溝の深さを3〜6μm、上記ニッケルメッキ層の厚さを1〜3μm及び鉛合金メッキ層6を12〜20μmとし、
軸受金属をアルミ合金層10とした場合には、上記溝の深さを1.5〜2.5μm、上記ニッケルメッキ層の厚さを0.1〜2.0μm及び鉛合金メッキ層6を12〜20μmとし、さらに、クランク軸の直径を67mmとしたすべり軸受。」

5.対比・判断
(1).本件発明1について
(1-1).29条1項3号違反について
(1-1-1).甲第1号証に記載された発明との対比・判断
本件発明1と甲第1号証に記載された発明を対比すると、甲第1号証に記載された発明の「ライニング材」は、本件発明1の「軸受合金層」に相当し、以下同様に、「密着層」は「中間層」に、相当するものと認める。
また、本件発明1において、山部を凸所、環状溝を凹所と考えると、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とは、「一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、凹所の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の凸所とをそれぞれ露出させる」点で共通するものと認められる。
そうすると、本件発明1と甲第1号証に記載された発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
内周面に、凹所及び凸所が形成された軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記凹所の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の凸所とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受。
<相違点>
軸受内周面に形成された凹所及び凸所の構成について、本件発明1では、「円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした」構成(以下、「構成要件A」などという。)を備えると共に、構成要件Aを前提として、当該山部の高さh、中間層の厚さy、山部の頂部におけるオーバレイ層の厚さt、及び回転軸の軸径Dの寸法範囲を、次式(1)〜(4)のように設定しているのに対して、
1≦h≦8 …(1)
0<y≦2 …(2)
0.7h≦t≦2h …(3)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000 …(4)
(ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμm)
甲第1号証に記載された発明では、上記構成要件Aを備えておらず、よって、構成要件Aを前提とする上記数式(1)〜(4)に係る寸法範囲の設定がなされていない点。
このように、本件発明1と甲第1号証に記載された発明間には、上述のとおり明確な相違点があり、この相違点に係る本件発明1の構成が周知・慣用手段と認めるに足りる証拠も見当たらないから、結局、本件発明1と甲第1号証に記載された発明を同一発明とすることはできない。
なお、異議申立人は、異議申立書において、甲第1号証に記載された発明における「凹凸面の粗さ」は、本件発明1における「山部の高さh」に相当するとの前提に立ち、甲第1号証に記載された発明における数値の設定範囲「凹凸面の粗さを2〜20μmRz、上記密着層(中間層)の厚さを0.01〜2μm、及びオーバレイ層の厚さを1〜25μm」が、本件発明1の上記数式(1)〜(3)で設定される範囲と重複すること、及び上記構成要件Aは甲第2及び4号証等に記載されているように周知技術であることから、本件発明1と甲第1号証に記載された発明は同一である旨主張している(異議申立書第2頁の表、及び第8頁第16〜28行参照)。
しかしながら、本件発明1における「山部の高さh」と甲第1号証に記載された発明における「凹凸面の粗さ」は、前者が溝の底と山の頂部との高低差であるのに対し、後者は表面粗さであること、また、両者の基となるすべり軸受内周面の形状・構造が大きく異なり、その結果、一部のオーバレイ層摩耗後のすべり軸受内周面上におけるオーバレイ層、中間層及び軸受合金層の露出態様も大きく異なることからみて、甲第1号証に記載された発明における「凹凸面の粗さ」は、本件発明1における「山部の高さh」に相当する構成であるとは直ちに認めることはできない。
さらに、上記相違点に係る本件発明1の寸法範囲の設定及び甲第1号証に記載された発明に係る数値範囲の設定は、各々の前提となる凹凸所の形状・構造、すなわち本件発明1においては構成要件A、また、甲第1号証に記載された発明においては凹凸面の形状・構造と一体のものとしてその技術的意味を考察する必要があると推察される。つまり、設定された数値は、前提となる装置の形状・構造から独立した構成要件として存在し得ないと解するべきである。
ところが、異議申立人の上記主張は、構成要件Aとは異なる甲第1号証に記載された発明の凹凸面の構成を前提とした数値範囲の設定に係る構成要件を、周知技術とされる構成要件Aと組み合わせようとしているに等しいものであるから、合理性はないというべきである。
したがって、上記主張は、到底採用できるものではない。

(1-1-2).甲第3号証に記載された発明との対比・判断
本件発明1と甲第3号証に記載された発明を対比すると、甲第3号証に記載された発明の「軸受の長手方向において凹凸状の条痕を形成した金属軸受層」は、本件発明1の「円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層」に相当し、以下同様に、「金属軸受層12」は「軸受合金層」に、「境界部分16」は「中間層」に、「軸受表面層14」は「オーバレイ層」に、「軸受表面層を早期に摩耗させることで金属軸受層による支持状態を確立する」は「一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させる」に、「滑り軸受装置」は「すべり軸受」に、「条痕の深さ」は「山部の高さ」に、それぞれ相当するものと認める。
そうすると、本件発明1と甲第3号証に記載された発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受。
<相違点>
本件発明1では、山部の高さh、中間層の厚さy、山部の頂部におけるオーバレイ層の厚さt、及び回転軸の軸径Dの寸法範囲を、次式(1)〜(4)のように設定しているのに対して、
1≦h≦8 …(1)
0<y≦2 …(2)
0.7h≦t≦2h …(3)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000 …(4)
(ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμm)
甲第3号証に記載された発明では、条痕の深さ(山部の高さ)を3-6μm、境界部分16(中間層)の厚さを0.5-2μm、軸受表面層(オーバレイ層)の厚さを3-7μmに設定している点。
そこで上記相違点についてみると、甲第1号証には、本件発明1における数式(4)に示されているような山の高さhと回転軸径Dに基づく数値範囲の設定について開示されていない。
してみると、本件発明1と甲第3号証に記載された発明間には、上述のとおり明確な相違点があり、この相違点に係る本件発明1の構成が周知・慣用手段と認めるに足りる証拠も見当たらないから、結局、本件発明1と甲第3号証に記載された発明を同一発明とすることはできない。

(1-2).29条2項違反について
本件発明1と甲第3号証に記載された発明を対比すると、上記(1-1-2)で示したとおりの一致点及び相違点が認められる。
そこで、相違点について検討する。
甲第4号証には、上記「4.(4).(r)」において示したように、「軸受金属(軸受合金層)をケルメット層4とした場合には、溝の深さ(山部の高さ)を3〜6μm、ニッケルメッキ層(中間層)の厚さを1〜3μm及び鉛合金メッキ層6(オーバレイ層)を12〜20μm」とし、さらにクランク軸の直径(回転軸の軸径)を67mmとしたすべり軸受が記載されている。そして、この滑り軸受において、溝の深さ(山部の高さ)を6μm、ニッケルメッキ層(中間層)の厚さを1〜2μm及び鉛合金メッキ層6(オーバレイ層)を12μmと数値を選択すると、本件発明1の数式(1)〜(4)により設定される数値の範囲を満たすこととなる。すなわち、上記相違点に係る本件発明1の構成を満たすものである。
してみると、甲第3号証に記載された発明に甲第4号証に記載された発明が適用可能であれば、本件発明1の構成を導き出せると推察される。
そこで、甲第3号証に記載された発明への甲第4号証に記載された発明の適用可能性について検討する。
甲第3号証に記載された発明は、上記「4.(3).(i)」に摘示した「この発明は、回転軸から加わる荷重が高い部分において軸受表面層を早期に摩耗させることで、回転軸と軸受とのなじみを早期に起こさせ、早期に金属軸受層による支持状態を確立させるように構成を工夫する」の記載によれば、軸受金属層(オーバレイ層)を早期に摩耗させ、早期に回転軸と金属軸受層(軸受合金層)とを接触させることを課題とするものと解される。
これに対し、甲第4号証に記載された発明は、上記「4.(4).(o)、(q)」に摘示した「【発明の効果】溝の山の部分が摩耗し難くなるために耐摩耗性を向上せしめることができる。」との記載、 及び「【0019】鉛腐食が起こらないときの内燃機関の寿命期間におけるクランク軸軸受の摩耗量は最大でも10μm以下である。本実施例では鉛合金メッキ層6の厚さを12〜20μmと十分な厚さとしており、また、鉛腐食がほとんど起こらないために、摩耗によって鉛合金メッキ層6が消滅してアルミ合金層10が露出することはない。アルミ合金層10は鉛合金メッキ層6程面圧が高くないために、アルミ合金層6が露出すると許容面圧を高くすることができない。
【0020】本実施例では、前述のように鉛合金メッキ層6の厚さを十分な厚さとしているために、内燃機関の寿命期間内においてアルミ合金層10が露出することがなく、このため軸受の許容面圧を高くすることができる。例えば、第2の実施例を適用しない軸受の許容面圧を40MPaとすると、第2の実施例の軸受の許容面圧を50〜60MPaと高めることができる。」との記載によれば、溝の山の部分を摩耗し難くすることを課題とし、そのため、鉛合金メッキ層6(オーバレイ層)の厚さを12〜20μm(甲第3号証に記載の発明では3〜6μm)と十分な厚さとすることで、鉛合金メッキ層6(オーバレイ層)の摩耗によっても回転軸とアルミ合金層10(軸受合金層)とが接触しないようにすることで、アルミ合金層10(軸受合金層)の溝の山の部分が摩耗しないようにしたものと解される。
すなわち、甲第3号証に記載された発明は、回転軸と軸受合金層の山の部分を早期に接触させようとするものであり、一方、甲第4号証に記載された発明は、接触させないようにするものであるから、この限りにおいて、対極的な発明であるとも解される。
また、甲第4号証に記載された発明では、溝の深さ(山部の高さ)及び鉛合金メッキ層6(オーバレイ層)の数値の範囲設定を、前者を1.5〜2.5μm又は3〜6μm、後者を12〜20μm、と、かなり幅を持たせて設定しているが、このうち、溝の深さ(山部の高さ)を6μm、鉛合金メッキ層6(オーバレイ層)の厚さを12μmとした場合のただ一点においてのみ本件発明1の数式(1)及び(3)で設定される範囲(本件発明に係る図3の斜線部参照)と一致し、全体的に本件発明の当該範囲から外れたものとなっている。
さらに、本件発明1は、「上記山部の高さと中間層の厚さとの関係だけではなく、それらの他に、さらにオーバレイ層の厚さと上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径とを変えて種々の試験を行なった結果、それらの所定の関係のもとで、従来よりも優れた初期耐焼付性、オーバレイ層の摩耗後の耐焼付性、耐摩耗性の点で優れた効果が得られることが判明した。したがって、本発明は、初期耐焼付性、オーバレイ層の摩耗後の耐焼付性、および耐摩耗性に優れたすべり軸受を提供するものである。」(段落【0003】参照)、及び「図6の試験結果に示されるように、本発明品1〜9は、耐摩耗性、打音の発生状態およびオーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性において良好な結果が得られている。」(段落【0006】、特許公報第7欄第34〜37行参照)との記載並びに図2〜4の記載から明らかなように、すべり軸受の初期耐焼付性、オーバレイ層の摩耗後の耐焼付性、耐摩耗性、及び打音の発生状態を改善するために、山部の高さと中間層の厚さの関係、山部の高さとオーバレイ層の厚さの関係、及び回転軸の軸径とオーバレイ層の厚さの関係を特定するという技術思想からなるが、このような技術思想は甲第2〜4号証には記載も示唆もされていない。
以上のことを勘案すると、甲第3号証に記載された発明への甲第4号証に記載された発明の適用は困難なものであるというほかない。
また、上述のとおり、甲第2〜4号証には、本件発明に係る上記技術思想は開示されていないから、結局、本件発明1は、当業者が、甲第2〜4号証に記載された発明に基いて容易になし得たものとすることはできない。

(2).本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に係る数式(1)〜(3)によって示される範囲をさらに減縮するものであるから、本件発明1を減縮する発明である。
したがって、本件発明2は、甲第1及び3号証に記載の発明と同一発明でないばかりか、当業者が、甲第2〜4号証に記載された発明に基いて容易になし得たものとすることができないものであることは、上記「(1).本件発明1について」における検討結果に照らし明らかである。

5.むすび
以上のとおりであるから、異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
すべり軸受
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受において、
上記山部の高さをh、上記中間層の厚さをy、上記山部の頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたとき、上記山部の高さh、中間層の厚さyおよびオーバレイ層の厚さtを下記の数式(1)、(2)、(3)に示す範囲に設定し、また、上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径をDとしたとき、上記山部の高さhが下記の数式(4)に示す範囲であることを特徴とするすべり軸受。
1≦h≦8 …(1)
0<y≦2 …(2)
0.7h≦t≦2h …(3)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000 …(4)
ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμmとする。
【請求項2】 内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受において、
上記山部の高さをh、上記中間層の厚さをy、上記山部の頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたとき、上記山部の高さh、中間層の厚さyおよびオーバレイ層の厚さtを下記の数式(1’)、(2’)、(3’)に示す範囲に設定し、また、上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径をDとしたとき、上記山部の高さhが下記の数式(4)に示す範囲となるように設定したことを特徴とするすべり軸受。
3≦h≦6 …(1’)
0<y≦0.5 …(2’)
h≦t≦1.5h …(3’)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000 …(4)
ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμmとする。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はすべり軸受に関し、より詳しくは、軸受合金層、中間層およびオーバレイ層を有するすべり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、すべり軸受として、内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受が知られている(特開昭60-205014号公報)。
このように構成したすべり軸受によれば、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際には、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とがそれぞれ露出するので、上記環状溝を設けない同種のすべり軸受のように中間層が一度に大きく露出されることがないので、該中間層が大きく露出されることによる耐焼付性の大幅な低下等の弊害を防止することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、上記公報によれば、上述した作用効果を得るためには、環状溝の深さすなわち上記山部の高さは中間層の厚さの1.5倍以上で、かつ5μm以上とする必要があると記載されている。
しかしながら、上記山部の高さと中間層の厚さとの関係だけではなく、それらの他に、さらにオーバレイ層の厚さと上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径とを変えて種々の試験を行なった結果、それらの所定の関係のもとで、従来よりも優れた初期耐焼付性、オーバレイ層の摩耗後の耐焼付性、耐摩耗性の点で優れた効果が得られることが判明した。
したがって本発明は、初期耐焼付性、オーバレイ層の摩耗後の耐焼付性、および耐摩耗性に優れたすべり軸受を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち請求項1に記載した本発明は、内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受において、
上記山部の高さをh、上記中間層の厚さをy、上記山部の頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたとき、上記山部の高さh、中間層の厚さyおよびオーバレイ層の厚さtを下記の数式(1)、(2)、(3)に示す範囲に設定し、また、上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径をDとしたとき、上記山部の高さhが下記の数式(4)に示す範囲であることを特徴とするすべり軸受を提供するものである。
1≦h≦8 …(1)
0<y≦2 …(2)
0.7h≦t≦2h …(3)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000 …(4)
ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμmとする。
また、請求項2に記載した本発明は、内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受において、
上記山部の高さをh、上記中間層の厚さをy、上記山部の頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたとき、上記山部の高さh、中間層の厚さyおよびオーバレイ層の厚さtを下記の数式(1’)、(2’)、(3’)に示す範囲に設定し、また、上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径をDとしたとき、上記山部の高さhが下記の数式(4)に示す範囲となるように設定したことを特徴とするすべり軸受を提供するものである。
3≦h≦6 …(1’)
0<y≦0.5 …(2’)
h≦t≦1.5h …(3’)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000 …(4)
ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμmとする。
【0005】
【作用】
上記構成を有する本発明によれば、後述する試験結果で示すように、従来のすべり軸受よりも優れた初期耐焼付性、オーバレイ層の摩耗後の耐焼付性、および耐摩耗性を得ることができる。
【0006】
【実施例】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1は半円筒状又は円筒状に形成したすべり軸受1の拡大断面図を示したものである。上記すべり軸受1は、図示しない裏金上に軸受合金層2を設けており、該軸受合金層2の内周面に、円周方向に沿って螺旋状の環状溝2aを形成し、軸方向に隣接する環状溝2aの間を円周方向に伸びる山部2bとしている。
上記軸受合金層2の表面は中間層3で被覆してあり、この中間層3は軸受合金層3の表面の凹凸面に倣って凹凸面となっている。そして上記中間層3の表面はオーバレイ層4で被覆してある。上記中間層3は、軸受合金層2とオーバレイ層4とを密着させる目的で設けたものである。
かかる構成においては、一部のオーバレイ層4と中間層3とがオーバレイ層4の表面側から摩耗された際には、図1の想像線しで示すように、上記環状溝2a凹部内に残存するオーバレイ層4と中間層3、および上記軸受合金層2の山部2aとがそれぞれ露出するようになる。
次に、図2は上記山部2bの高さと中間層3の厚さとの関係を示した図で、本発明においては、上記山部2bの高さをh、上記中間層3の厚さをyとしたときに、縦軸に上記yをとり、横軸に上記hをとったグラフにおいて、上記厚さyおよび高さhを次の2式の条件を満たす範囲内に設定している。この範囲を斜線で示してある。ただし、寸法単位はいずれもμmである。
1≦h≦8 …(1)
0<y≦2 …(2)
また、より望ましい範囲は、上記厚さyおよび高さhを次の2式の条件を満たす範囲である。この範囲を網目によって示してある。
3≦h≦6 …(1’)
0<y≦0.5 …(2’)
図3は上記山部2bの高さhとオーバレイ層4の厚さとの関係を示した図で、本発明においては、上記山部2bの頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたときに、縦軸に上記tをとり、横軸に上記hをとったグラフにおいて、上記厚さtおよび高さhを次の2式の条件を満たす範囲内に設定している。この範囲を斜線で示してある。
1≦h≦8 …(1)
0.7h≦t≦2h …(3)
また、より望ましい範囲は、上記厚さtおよび高さhを次の2式の条件を満たす範囲である。この範囲を網目によって示してある。
3≦h≦6 …(1’)
h≦t≦1.5h …(3’)
図4は上記山部2bの高さhと本願のすべり軸受によって軸支する回転軸の軸径Dとの関係を示した図で、本発明においては上述した範囲を満たした上で、縦軸に上記hをとり、横軸に上記Dをとったグラフにおいて、上記高さhおよび軸径Dを次式を満たす範囲に設定することが望ましい。望ましい範囲は斜線で示してあり、より望ましい範囲は網目によって示してある。
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000 …(4)
なお上記螺旋状の環状溝2aのピッチは例えば0.1〜0.4mmとすることが望ましく、0.15〜0.3mmの範囲がより望ましい。したがって図1は、縦方向の縮尺と横方向の縮尺とをかなり大きく異ならせて描いてある。
次に、すべり軸受1の使用開始初期の耐焼付性、オーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性、および耐摩耗性について行なった試験結果に基づいて本発明の効果を説明する。
図5において、試料1〜12が本発明品であり、試料a〜hは比較材である。本試験に用いた各試料は、SPCCからなる裏金に、Al-12Sn-1.5Pb-2.5Si-1Cu-0.2CrからなるAl系の軸受合金層2又はCu-15Pb-1.5SnからなるCu系の軸受合金層2のいずれかを圧接し、上記軸受合金層2の表面にピッチ0.2ミリで必要な深さの環状溝2aを形成したら、上記軸受合金層2の表面に電気メッキにより中間層3としての必要な厚さのNiメッキを施し、さらにそのNiメッキ層上に、Pb-3Sn-5InからなるPb系のオーバレイ層4又はSnからなるオーバレイ層4のいずれかを電気メッキにより必要な厚さに形成したものである。
ここで図5においては、上述したAl系の軸受合金層2をA、Cu系の軸受合金層2をB、Pb系のオーバレイ層4をC、さらにSnのオーバレイ層4をDの記号を用いて表わしてある。
この試験条件は次のとおりである。
試験機:ジャーナル型油圧式動荷重試験機
潤滑油:SAE SW-30
油温 :160℃
潤滑油:SAU5W-30
給油量:0.5リットル/min
相手軸:S50C焼入れ、硬さHv500〜600、軸径42mm、
軸粗さ1μmRz
なお、軸径Dが42mmの場合、上記(4)式を満たす山部2bの高さhの範囲は、次のとおりである。2.1μm≦h≦5.25μm。
ところで、耐摩耗性の試験は、荷重を0〜50MPaまでの間で変化させながら、3000rpmの回転数を保って50時間運転した後、軸受の肉厚の変化を測定した。
またオーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性の試験は、上記耐摩耗性の試験の後、5MPaの静荷重下で回転数を0から6000rpmまで上昇させた後、その回転数を保って荷重を上記5MPaから10MPaに上昇させて10分間運転し、次に10分間隔で荷重を10MPaずつ段階的に上昇させて焼付の発生する面圧を測定した。
さらに、すべり軸受1の使用開始初期の耐焼付性の試験は、上記耐摩耗性の試験を行なうことなく、直ちに上記オーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性の試験を行なうことによって、焼付の発生する面圧を測定した。
図5の試験結果に示されるように、本発明品は、使用開始初期の耐焼付性、オーバレイ層4の摩耗後の耐焼付き性、および耐摩耗性のいずれにおいても良好な結果が得られている。より具体的には、使用開始初期の耐焼付性については、すべり軸受と回転軸とがなじんであたりがでる前であるので、焼付面圧は60MPa以上であることが必要である。またオーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性については、すべり軸受と回転軸とは既に充分になじんでいるので、焼付面圧は50MPa以上あれば使用可能である。さらに軸径が42mmの場合、10μm以上の摩耗があるとクリアランスが大きくなりすぎ、打音が発生する危険性があるのでそれ未満であることが必要である。そして本発明の試料1〜12はそのような条件を満たしており、他方、比較材a〜hにおいてはいずれかの条件を満たしていない。
図6は、上記山部2bの高さhと軸径Dとの関係を測定した試験結果を示したもので、上記高さhと軸径Dとを種々に異ならせた際の耐摩耗性、打音の発生状態、および各試料の耐焼付性を測定した。図6において、試料1〜9が本発明のものに相当し、試料a〜cが上記以外の範囲の比較材である。
本試験に用いた各試料は、SPCCからなる裏金に、Cu-15P b-1.5SnからなるCu系の軸受合金層2を圧接し、この軸受合金層2の表面にピッチ0.2ミリで必要な深さの環状溝2aを形成したら、上記軸受合金層2の表面に電気メッキにより中間層3として厚さ1μmのNiメッキを施し、さらにそのNiメッキ層上に、Pb-3Sn-51nからなるPb系のオーバレイ層4を電気メッキにより1.2hの厚さで形成したものである。
上記耐摩耗性および打音の発生状態の試験は、実機エンジンを用いて200時間運転後における打音の発生状態を調べた後、分解して軸受の摩耗量を調べた。
打音の発生状態は、「良」、「可」、「不可」の3段階に分けた。
また耐焼付性の試験条件は次のとおりである。
試験機:ジャーナル型耐焼付試験機
周速 :2.77m/s
面圧 :10MPa/45min STEPで漸増
潤滑油:7.5W-30 SE級エンジンオイル
潤滑油温:140±1℃
オイルクリアランス:25±5μm
軸材質:S45C±焼入れ
軸硬さ:550±50HV1
軸表面粗さ:0.5±0.1μmRz
試験方法は、先ず、ならし運転として5MPaの面圧で1時間運転した後、面圧を10MPaに上げ、その後45分間隔で面圧を10MPaずつ段階的に上昇させ、摩擦トルク、軸受背面温度を記録した。焼付きは、摩擦トルクが急激に増加して10.8N.mを越えた時点の面圧をもって焼付き面圧とした。荷重上昇中に焼付きが発生した場合は、その前後の値の中間をもって焼付き面圧とした。なお、潤滑は油浴であり、試験部は完全に油浴中にある。潤滑油の温度は別に設けた給油装置で制御し、油浴層内に1dm3/minで供給循環しており、油浴温度は140℃に制御した。
図6の試験結果に示されるように、本発明品1〜9は、耐摩耗性、打音の発生状態およびオーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性において良好な結果が得られている。これに対して試料a〜dについて見てみると、試料aでは、耐摩耗性、打音の発生状態では良好な結果が得られているが、オーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性が悪くなっている。また試料b、dでは、オーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性では良好な結果が得られているが、耐摩耗性が悪く、打音の発生状態も悪くなっている。
また、図2で示す(1’)式の範囲内に含まれる本発明品においては、耐摩耗性および使用開始初期の耐焼付性に優れた結果が得られており、また(2’)式の範囲内に含まれる本発明品においては、オーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性に優れた結果が得られている。したがって図2の網目によって示された範囲内の本発明品においては、耐摩耗性、使用開始初期の耐焼付性、およびオーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性に優れた結果を得ることができる。
なお、内燃機間の軸受では、エンジンサイズにより、山部2bの高さhが0.5Dを下回る場合には耐焼付性が低下し、また1.25Dを越える場合にはクリアランス増大によりエンジン透過音が大きくなるという欠点が生じる。
さらに本発明に用いる軸受合金層2としては、上述した試料で用いたものの他に、Cu-23Pb-3Sn、又はCu-1Agが好ましく、中間層3としてはNi、Cu、Cr、又はFeを湿式メッキや乾式メッキによって施したものが好ましい。さらにオーバレイ層4としては、上述した試料で用いたものの他に、Pb-10Sn-2Cu、又は純Snが好ましく、或いはポリイミドにMoS2又はグラファイトを添加した合成樹脂材料を用いてもよい。
【0007】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、すべり軸受の作動初期時の耐焼付性、オーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性および耐摩耗性を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のすべり軸受1の軸方向の断面図。
【図2】
本発明品の範囲を示すグラフ。
【図3】
本発明品の他の範囲を示すグラフ。
【図4】
本発明品のさらに他の範囲を示すグラフ。
【図5】
本発明の使用初期の耐摩耗性、オーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性、および耐摩耗性を示す試験結果図。
【図6】
本発明の耐摩耗性、打音の発生状態、およびオーバレイ層4の摩耗後の耐焼付性を示す試験結果図。
【符号の説明】
1…すべり軸受 2…軸受合金層
2a…環状溝 2b…山部
3…中間層 4…オーバレイ層
【図面】


 
訂正の要旨 (1).訂正事項a
特許の願書に添付した明細書又は図面(以下、「特許明細書等」という。)における特許請求の範囲の請求項1及び2を、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、以下のとおりに訂正するとともに、請求項3を削除する。
【請求項1】内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受において、上記山部の高さをh、上記中間層の厚さをy、上記山部の頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたとき、上記山部の高さh、中間層の厚さyおよびオーバレイ層の厚さtを下記の数式(1)、(2)、(3)に示す範囲に設定し、また、上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径をDとしたとき、上記山部の高さhが下記の数式(4)に示す範囲であることを特徴とするすべり軸受。
1≦h≦8…(1)
0<y≦2…(2)
0.7h≦t≦2h…(3)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000…(4)
ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμmとする。
【請求項2】内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受において、上記山部の高さをh、上記中間層の厚さをy、上記山部の頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたとき、上記山部の高さh、中間層の厚さyおよびオーバレイ層の厚さtを下記の数式(1’)、(2’)、(3’)に示す範囲に設定し、また、上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径をDとしたとき、上記山部の高さhが下記の数式(4)に示す範囲となるように設定したことを特徴とするすべり軸受。
3≦h≦6… (1’)
0<y≦0.5…(2’)
h≦t≦1.5h… (3’)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000…(4)
ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμmとする。
(2).訂正事項b
特許明細書等の段落【0004】の記載事項を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「すなわち請求項1に記載した本発明は、内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受において、上記山部の高さをh、上記中間層の厚さをy、上記山部の頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたとき、上記山部の高さh、中間層の厚さyおよびオーバレイ層の厚さtを下記の数式(1)、(2)、(3)に示す範囲に設定し、また、上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径をDとしたとき、上記山部の高さhが下記の数式(4)に示す範囲であることを特徴とするすべり軸受を提供するものである。
1≦h≦8…(1)
0<y≦2…(2)
0.7h≦t≦2h…(3)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000…(4)
ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμmとする。
また、請求項2に記載した発明は、内周面に、円周方向に伸びる環状溝を軸方向に多数形成して軸方向に隣接する環状溝間を円周方向に伸びる山部とした軸受合金層と、この軸受合金層の表面を被覆する中間層と、さらにこの中間層の表面を被覆するオーバレイ層とを有し、一部のオーバレイ層と中間層とがオーバレイ層の表面側から摩耗された際に、上記環状溝の凹部内に残存するオーバレイ層と中間層、および上記軸受合金層の山部とをそれぞれ露出させるように構成したすべり軸受において、上記山部の高さをh、上記中間層の厚さをy、上記山部の頂部における上記オーバレイ層の厚さをtとしたとき、上記山部の高さh、中間層の厚さyおよびオーバレイ層の厚さtを下記の数式(1’)、(2’)、(3’)に示す範囲に設定し、また、上記すべり軸受によって軸支する回転軸の軸径をDとしたとき、上記山部の高さhが下記の数式(4)に示す範囲となるように設定したことを特徴とするすべり軸受を提供するものである。
3≦h≦6…(1’)
0<y≦0.5…(2’)
h≦t≦1.5h…(3’)
0.5D/10000≦h≦1.25D/10000…(4)
ただし、上記h、t、yおよびDの寸法単位はμmとする。」と訂正する。
(3).訂正事項c
特許明細書等の段落【0006】の記載事項中の「また、上述したように中間層3は軸受合金層2とオーバレイ層4とを密着させる目的で設けたものであるが、必要に応じてこれを省略してもよい。すなわち、特に軸受合金層2がCu系の軸受合金層2の場合には、軸受合金層2とオーバレイ層4とを充分な密着強度で密着させることができるので中間層3を省略することができ、また軸受合金層2がA=系の軸受合金層2の場合には、軸受合金層2とオーバレイ層4との密着強度を充分に確保できた場合には、中間層3を省略することができる。」とある記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として削除する。
(4).訂正事項d
明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的として、特許明細書等の図1におけるtをyと訂正すると共に、山部の高さを表す記号hの上方にオーバレイ層の厚さを表す記号tを追加し、さらに、図4における軸受内径Dを軸径Dと訂正する。
異議決定日 2001-03-28 
出願番号 特願平6-73961
審決分類 P 1 651・ 531- YA (F16C)
P 1 651・ 534- YA (F16C)
P 1 651・ 121- YA (F16C)
P 1 651・ 113- YA (F16C)
最終処分 維持  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 和田 雄二
常盤 務
登録日 1999-09-03 
登録番号 特許第2974044号(P2974044)
権利者 大豊工業株式会社
発明の名称 すべり軸受  
代理人 小塩 豊  
代理人 神崎 真一郎  
代理人 神崎 真一郎  
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