• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C22C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C22C
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C22C
管理番号 1044787
異議申立番号 異議1999-72927  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-04-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-03 
確定日 2001-03-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2853762号「成形性又は成形性とスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2853762号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2853762号の発明は、平成4年4月16日に出願した特願平4-121085号の1部を平成8年7月3日に分割して新たな特許出願としたものであって、平成10年11月20日にその特許の設定登録がなされ、その後、住友金属工業株式会社及び株式会社神戸製鋼所より特許異議の申立てがなされ、特許請求の範囲の請求項1〜8に係る特許に対して取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年3月7日に訂正請求がなされ、その後再度取消理由通知がなされ、平成12年3月7日になされた訂正請求が取り下げられると共に、その指定期間内である平成13年2月15日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項5に記載の「(VF/dF)が7以上」を「(VF/dF)が7以上(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)」と訂正する。
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項6に記載の「(VF/dF)が7以上」を「(VF/dF)が7以上(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)」と訂正する。
訂正事項c
明細書段落0012に記載の「(VF/dF)が7以上」を「(VF/dF)が7以上(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)」と訂正する。
訂正事項d
明細書段落0013に記載の「(VF/dF)が7以上」を「(VF/dF)が7以上(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)」と訂正する。
訂正事項e
明細書段落0017に記載の「(Cが0.15%以上0.3%未満の場合は、残留オーステナイトが微細に生成しやすいので7以上でよい)」を「(Cが0.15%以上0.3%未満の場合は、残留オーステナイトが微細に生成しやすいので7以上でよい(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)」と訂正する。
訂正事項f
明細書段落0019の表1に注として「*1:0.15%≦C<0.16%では7≦VF/dF<20を除く」を加入する。
訂正事項g
明細書段落0023に記載の「VF/dFを7以上とすればよい。」を「VF/dFを7以上とすればよい(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)。」と訂正する。
訂正事項h
図2に注として「*1:0.15%≦C<0.16%では7≦VF/dF<20を除く」を加入する。
訂正事項i
明細書段落0052の表3中、本発明例18のVFの値「40」を「39」に、VBの値「43」を「48」に訂正する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項a、bは、特許請求の範囲の請求項5,6に記載されたフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)を限定するものであるから、訂正事項a、bは、特許請求の範囲の減縮に該当し、また、訂正事項c〜hは、訂正された特許請求の範囲の請求項5及び6の記載と発明の詳細な説明の記載及び図面の記載との整合を図るものであるから、訂正事項c〜hは、明りょうでない記載の釈明に該当し、また、訂正事項iは誤記入された数値を正しい数値に改めようとするものであることが明らかであるから、訂正事項iは誤記の訂正に該当する。また、訂正事項a〜hは、本件の請求項5及び6に記載の発明が原出願の出願当初の明細書及び図面に記載されていないことから、本件特許に係る特許出願は分割の要件を満たしておらず、その出願日の遡及が認められなくなるのを回避するため、請求項5及び6の記載並びに明細書及び図面の記載を本件特許明細書及び図面の記載の範囲内で原出願の出願当初の明細書及び図面の記載に合わせるためのものであり、また、訂正事項iは誤記の訂正に該当するものであるから、訂正事項a〜iは、新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
ウ.独立特許要件の判断
(引用刊行物記載の発明)
訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜8に記載の発明(以下、それぞれ「本件発明1〜8」という。)に対して、当審が通知した取消理由通知で引用した刊行物1(「材料とプロセス」Vol.3(1990)No.3(平成2年3月3日)社団法人日本鉄鋼協会第797頁、特許異議申立人住友金属工業株式会社の提出した甲第1号証)、刊行物2(「材料とプロセス」Vol.4(1991)No.3(平成3年3月5日)社団法人日本鉄鋼協会第798頁、同甲第2号証)、刊行物3(特開昭63-241120号公報、同甲第3号証)、刊行物4(「材料とプロセス」Vol.5(1992)No.3(平成4年3月3日)社団法人日本鉄鋼協会第951頁、同甲第5号証)、刊行物5(特開平2-38523号公報、特許異議申立人住友金属工業株式会社の提出した甲第6号証、特許異議申立人株式会社神戸製鋼所の提出した甲第7号証)、刊行物6(特開平2-34793号公報、特許異議申立人住友金属工業株式会社の提出した甲第7号証)、刊行物7(特開平2-236224号公報、同甲第8号証)、刊行物8(特開昭64-79345号公報、特許異議申立人住友金属工業株式会社の提出した甲第9号証、特許異議申立人株式会社神戸製鋼所の提出した甲第8号証)、刊行物9(特開平2-149646号公報、特許異議申立人株式会社神戸製鋼所の提出した甲第1号証)、刊行物10(「材料とプロセス」Vol.2(1989)No.3社団法人日本鉄鋼協会第813頁、同甲第2号証)、刊行物11(「材料とプロセス」Vol.4(1991)No.3社団法人日本鉄鋼協会第782頁、同甲第3号証)、刊行物12(「材料とプロセス」Vol.3(1990)No.6社団法人日本鉄鋼協会第2012頁、同甲第4号証)、刊行物13(「鉄と鋼」第67年(1981)第14号(昭和56年10月)第136〜143頁、同甲第5号証)、刊行物14(吉田清太監修「プレス成形難易ハンドブック」(昭和62年3月20日)日刊工業新聞社第46頁、同甲第6号証)、刊行物15(特開平2-305925号公報、同甲第9号証)、刊行物16(特開平5-171345号公報、同甲第10号証)には、次の事項が記載されている。
刊行物1には、
「残留オーステナイトの活用による高強度鋼板の延性向上に関する・・・TS60kgf/mm2級を対象として製造可能性を探索した実機試験結果について報告する。」(第797頁第7〜11行)、
「Table1に示す成分の現場CCスラブを再加熱後、連続熱間圧延し、2.8mm厚とした。」(第797頁第13〜15行)、
「(1)仕上げ温度の低下により、残留オーステナイト量(γR)が増加し、全伸び、一様伸び、TS×T.ELが向上する。・・・
(2)仕上げ温度の低下により、フェライト占積率が増加し、細粒化が進行する。(Photo.1)
(3)低温仕上げ材は従来最も優れた伸びを有していたDP(Dual-Phase)鋼のレベルを1ランク越えた優れた伸びを示す。(Fig.1)
(4)ポリゴナルフェライト占積率(VPF)とポリゴナルフェライト粒径(dPF)の比(VPF/dPF)はTS×T.ELと良好な相関を持ち、C量で層別される。(Fig.2)」(第797頁第21〜27行)、
「0.1%という低C鋼においてもフェライト変態を十分に行わせることにより残留オーステナイトを5%以上得ることが可能であり、その結果、DP鋼より強度ー延性バランスの優れたTS60kgf/mm2級熱延鋼板が実機で得られた。」(第29〜31行)と記載され、また、Table1には、化学的組成(wt%)がC0.10,Si0.94,Mn1.82,P0.010,S0.001,Al0.032,N0.0036、残部Feの供試鋼が記載され、また、Fig.2には、0.23%C-1.4%Si-2.0%Mn鋼の熱延鋼板のポリゴナルフェライト占積率(VPF)とポリゴナルフェライト粒径(dPF)の比(VPF/dPF)が7程度以上になると高いTS×T.EL値が得られることが記載されており、
刊行物2には、
「Si鋼をオーステンパー処理によりベイナイト変態させると、室温で20〜30%の残留オーステナイト(γ)が得られる。」(第798頁第6,7行)、
「Fe-2%Si-1%Mn-0.59%CおよびFe-2%Al-1%Mn-0.61%C(mass%)を真空溶解により作製した。」(第798頁第12行)、
「Si鋼の出発材における残留γ量は27%、・・・Al鋼における残留γ量は30%とSi鋼と同程度であった」(第798頁第18、19行)、
「Al鋼の残留γはSi鋼のそれと比べて安定である。」(第798頁第31,32行)と記載され、
刊行物3には、
「重量%で(以下、同じ)C:0.12〜0.25%、Si:1.5〜3.0%、Mn:1.1〜2.0%、S<0.005%及びsolAl:0.02〜0.50%を含有し、・・・マルテンサイト、ベーナイト、フェライト及び残留オーステナイトからなる複合組織を得ることを特徴とする点溶接性の優れた高延性高強度複合組織鋼板の製造法」(特許請求の範囲第1項)、
「C量を低減することを前提とし、成分組成面での規制によって点溶接性が良好な低C量の鋼板において強度ー延性バランスを向上し得る方策を見い出すべく種々実験研究を重ねた結果、Si,Mn及びsolAlの同時規制により可能であることが判明した。すなわち、C量を0.25%以下にすると共に適正な連続焼鈍を行うプロセスにおいて、Siを1.5〜3.0%、Mn:1.1〜2.0%、solAlを0.02〜0.50%の範囲内にそれぞれ規制することにより、安定な残留オーステナイトが十分に得られ、強度ー延性バランスが大幅に向上することが判明した」(第2頁右下欄第7〜18行)、
「Siは・・・未変態オーステナイトへのCの濃縮を促進する効果を通じてオーステナイトの安定化に寄与する元素である。」(第3頁左下欄3〜10行)、
「solAlは鋼の脱酸剤として有効なものであるが、適当量添加することによって、強度ー延性バランスをも改善する。これは、AlもSiと同様フェライト・フォーマー元素であり、Siと同様の効果によるものと考えられる。」(第3頁右下欄第10〜14行)と記載され、
刊行物4には、
「筆者らは、残留オーステナイトを活用する高延性、高強度の熱延鋼板の開発を普通鋼成分系(C-Si-Mn系)でかつ熱延ままの条件で進めてきており、・・・ここでは、特に980MPa級でスポット溶接性を考慮し0.2%Cとした成分系での実験室的な製造条件の検討結果に基づき実機製造した結果について報告する。」(第951頁第7〜10行)、
「(1)実機薄手材の強度ー延性バランスは、TS×T-EL=30000MPa%レベルには達していないものの、20000〜25000MPa%であり、従来材より優れている(Fig.2)。
(2)実機材の残留オーステナイト量は10〜15%程度得られており延性に寄与している(Fig.3)。
(3)残留オーステナイトは、γ/α界面の他、ベイナイトのラス間にも存在しγ/α界面主体の780MPa級とは存在様式が異なる(Photo.1)。」(第951頁第17〜23行)、
「0.2%C系としたTS980MPa級でも10%以上の残留オーステナイトを得ることが可能であり、その結果、従来鋼より強度ー延性バランスの優れたTS980MPa級可溶接型薄手熱延鋼板が実機で得られた。」(第951頁第28〜31行)と記載され、Table1に実機出鋼材の化学成分(wt%)として
C0.21,Si2.02,Mn2.21,P0.013,S0.002,Al0.026,N0.0028,残部Feが記載され、また、Fig.4には、0.2%C系780MPa級熱延鋼板のフェライト占積率(V )とフェライト粒径(d )の比(V /d )が7程度以上になると高いTS×T.EL値が得られることが記載されており、
刊行物5には、
「Cuの添加は本発明を構成する主要な要件の1つであり、鋼の強化に必須な成分である。しかし、0.7%未満ではコイル巻取後の冷却中にε-Cu析出が起こらず、鋼の強化を図ることができない。また1.5%を超えるとこの効果が飽和するほか、表面疵が発生するので好ましくない。したがって、Cu量は0.7〜1.5%の範囲とする。」(第4頁右下欄第11〜17行)、
「本発明鋼の主要元素は以上のとおりであるが、固溶強化、変態組織強化などによる鋼の強度調整、スラブ表面疵の抑制、耐食性向上などを目的として、Ni,Cr,P,V,Nb,Ti及びBの1種又は2種以上を所定量で添加することができる。添加する場合、各元素の量は、Ni:0.5%以下、Crは0.5%以下、Pは0.1%以下、V,Nb及びTiはいずれも0.05%以下、Bは0.002%以下とする。これらの上限を超えると安定した残留オーステナイトの生成が図れない。」(第5頁左上欄第6〜15行)と記載され、
刊行物6には、
「Cu:
Cuは強度を向上させるのに有効であるが、1.5%を超えるとCu添加鋼特有の亀甲状割れが発生し、スケール密着性が劣化するので、Cu量は1.5%以下とする。
Ni:
Niは強度を向上させると共に、Cu割れの防止に有効であるが、1.5%を超えるとその効果は飽和し、不経済であるので、Ni量は1.5%以下とする。
Cr:
CrはCu,Niと同様に強度の向上に有効であるが、電気抵抗溶接性やフラッシュバット溶接性の点からは、好ましくないので、Cr量は0.6%以下とする。
V,Nb,Ti:
V,Nb及びTiはいずれも炭窒化物を形成し、その析出硬化作用によって強度の上昇に著しく寄与するが、V及びTiがそれぞれ0.5%を超える場合、Nbが0.10%を超える場合は、いずれもその効果が飽和するので、V及びTiの各量は0.15%以下、Nb量は0.10%以下とする。希土類元素(REM)並びにCaはいずれも非金属介在物の形状制御作用を有し、冷間加工性を向上させるが、希土類元素が0.15%を超える場合、Caが0.01%を超える場合はいずれも非金属介在物が増加し、逆に冷間加工性が劣化する。よって、希土類元素量は0.15%以下、Ca量は0.01%以下とする。」(第3頁右上欄第9行〜左下欄第17行)と記載され、
刊行物7には、
「製品の強度確保のために、Ni,Si,Cr,Mo,Cu,Nb,P等を添加することは、本発明の趣旨を損なうものではない。」(第3頁左下欄第18〜20行)と記載され、
刊行物8には、
「穴拡げ性向上のためにはSを減らし硫化物系介在物を減らすとともに、その球状化が有効である。球状化にはCaもしくはREMを添加することが有効である。それぞれ0.0005%、0.0050%未満では球状化の効果は少なく、それぞれ0.0100%、0.050%超では球状化の効果が飽和し、むしろ、介在物を増加させて逆効果となるため、それぞれ0.0005〜0.0100%、0.005〜0.050%とした。」(第6頁左下欄第3〜10行)と記載され、
刊行物9には、
「重量%で(以下、同じ)、C:0.10以上で0.15%未満、Si:0.5〜3.0%及びMn:0.5〜2.5%を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト及びベイナイトの二相マトリックス中に5%以上の残留オーステナイトが均一に分散していることを特徴とする加工性、溶接性に優れた高強度熱延鋼板。」(特許請求の範囲第1項)、
「本発明は、溶接性を悪化させないためにC含有量を0.15%より低く抑えても、TS×EL>2000の強度ー延性バランスを有し、引張強さ60kgf/mm2以上で加工性及び溶接性ともに優れた高強度熱延鋼板を提供することを目的とし、」(第2頁左下欄第18行〜右下欄第2行)と記載され、また、第1表には、供試鋼の化学成分(wt%)として、
C0.13,Si2.0,Mn2.0,P0.015,S0.0009,Al0.032、
C0.15,Si0.03,Mn1.49,P0.015,S0.0018,Al0.031、
C0.07,Si0.60,Mn2.0,P0.015,S0.0015,Al0.031、
C0.25,Si0.5,Mn1.5,P0.015,S0.0015,Al0.031
が記載され、
刊行物10には、
「強度-延性バランスを向上させる指標としてVPF/dPF(VPF:ポリゴナルフェライト占積率、dPFポリゴナルフェライト粒径)が有効であることを報告している。」(第813頁第11〜13行)、
「0.2%C-1.5%Si-1.6%Mnをベースに検討した。(1)VPF/dPF(材質予測モデルによる計算値)の増加により残留オーステナイト量(γR、実績値)は増加し強度延性バランス(実績値)は向上する。」(第813頁第19〜21行)と記載され、
刊行物11には、
「(2)いずれの成分系でもVPF/dPFの整理は強度ー延性バランスの指標として有効である(Fig.2)。」と記載され、Table1には、供試材の化学成分範囲(wt%)として
TS588/C0.07〜0.15、Si1.0〜2.0,Mn1.1〜1.9、
TS785/C0.15〜0.21、Si1.5〜2.0,Mn1.4〜1.7のものが記載され、また、Fig.2には、供試鋼TS785においてVF/DFを20以上とすればTS×T.ELが20000(MPa・%)以上になることが記載され、
刊行物12には、
「複合組織鋼中の残留γは一般に細粒(1μm以下)である」(第2012頁第7行)、
「(1)供試鋼には0.4%C-1.5%Mn-1.5%Si(mass%)熱間圧延丸棒鋼を用いた。・・・X線回折:特性X線としてCr-Kα線を用い、ψー定法にて負荷応力方向のγ相(残留オーステナイト・・・)およびα相(フェライト+マルテンサイト+ベイナイト、・・・)の試験片表面および内部方向の残留応力を測定した。」(第2012頁第11〜19行)と記載され、
刊行物13には、
「結晶粒の微細化による伸びの増加が一様伸びよりは、き裂の核生成、合体および破断にいたるまでの局部伸びの増大に起因することを示唆している。」と記載され、
刊行物14には、
「穴拡げ性(限界穴拡げ率)は引張り特性値としては破断部の局部伸び(絞りに相当)と最も良い相関がある(図2.71)。」と記載され、
刊行物15には、
「重量%(以下同じ)で、C:0.15〜0.25%、Si:2.0〜4.0%及びMn:1.0〜2.0%を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物よりなる鋼につき・・・γR(残留オーステナイト)を面積率で5〜20%有する組織を得ることを特徴とする延性の優れた高強度熱延鋼板の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)、
「強度-延性バランスに優れると共に溶接性の良好な熱延鋼板を製造し得る方法を提供することを目的とするものである。」(第2頁左上欄第13〜15行)、
「Si:
Siは少ないC量で充分なγR量を得るために非常に重要な元素である。すなわち、γ→α(フェライト)変態を促進し、かつα中のC濃度を低下することによりαの延性を向上させると共にγ中のC濃度を高めて安定化し、γRを得やすくする効果がある。」(第2頁左下欄第16行〜右下欄第2行)と記載され、また、第1表には、供試鋼の化学成分(wt%)として
C0.23,Si2.7,Mn1.7,P0.014,S0.003,Al0.03、
C0.21,Si3.2,Mn1.3,P0.014,S0.003,Al0.03、
C0.17,Si2.3,Mn1.9,P0.015,S0.002,Al0.04、Nb0.024、
C0.15,Si2.4,Mn1.6,P0.014,S0.003,Al0.02,Ca0.0046、
C0.11,Si2.3,Mn1.4,P0.015,S0.003,Al0.03、
C0.20,Si1.3,Mn1.2,P0.014,S0.002,Al0.03、
C0.19,Si2.6,Mn0.6,P0.014,S0.003,Al0.03が記載されている。
刊行物16は本件の原出願に係わる公開公報である。
(対比・判断)
本件の訂正前の請求項5及び6に記載の発明における、C:0.15〜0.16重量%未満で、フェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比VF/dF:7〜20未満である点が、本件特許の原出願の出願当初の明細書及び図面に記載されていないことから、本件特許に係る特許出願は分割の要件を満たしていないものであったが、「2.訂正の適否についての判断 イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否」に記載のとおり、上記訂正により、この点が除かれたことにより、本件特許に係る出願は分割の要件を満たすものとなった。この前提のもとに、以下に、本件発明1〜8と刊行物1〜16を対比・判断する。
(1)まず、本件発明1と刊行物1に記載のものを対比する。
刊行物1に記載のCCスラブのSi+Mnの値を求めるとSi+Mnの値は2.76%となるから、両者は、化学成分として、C、Si、Mn、P、S及びAlを含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、C、Si、Mn、P、S及びAlの含有量、Si+Mn量並びにフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が重複する成形性に優れた熱延高強度鋼板である点で一致し、本件発明1は、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上であるスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板であるのに対し、刊行物1にはこれらの点が記載されていない点で相違する。
相違点を検討する。
刊行物1、Photo.1にはミクロ組織が記載されているが、ミクロ組織についての腐食液、腐食方法が明らかにされていないので、ミクロ組織がいかなる組織からなるのか不明であり、該Photo.1のミクロ組織から、ミクロ組織がフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上である点を読みとることはできない。
刊行物2には、Si鋼の出発材における残留γ量は27%であり、また、Al鋼における残留γ量は30%とSi鋼と同程度であることが記載されているが、刊行物2に記載のものは、C量が本件発明1より高く、本件発明1とC量が相違する鋼であり、また、刊行物3には、点溶接性が良好な低C量の鋼板においてSi,Mn及びsolAlの同時規制により強度ー延性バランスを向上し得ることが記載されているが、刊行物3に記載のものはマルテンサイトを生成させた複合組織鋼板であり、マルテンサイトの生成を阻止した本件発明1と鋼板の組織を相違する。また、刊行物2、3には、熱延鋼板のミクロ組織がフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上であることを示唆する記載がない。
そして、本件発明1は、請求項1に記載の事項を構成要件とするにより、「本発明により従来にない複合特性を合わせ持つ熱延高強度鋼板、すなわち成形性、高い降伏比、優れたスポット溶接性を合わせ持つ熱延高強度鋼板が得られ、使用用途・使用条件が格段に拡がる。」(特許明細書段落0084)という特許明細書に記載のとおりの顕著な作用効果を奏するものと認められる。
以上のことから、本件発明1は、刊行物1に記載された発明であるとすることができず、また、刊行物1〜3に記載のものを寄せ集めて本件発明1を容易に構築できたものとすることができない。
本件発明2は、本件発明1においてAl添加量を0.10超〜3重量%と限定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、刊行物1〜3に記載のものを寄せ集めて本件発明2を容易に構築できたものとすることができない。
本件発明3は、本件発明1又は2において、 さらに、Cr≦0.5重量%、
Ti≦0.05重量%、
Nb≦0.05重量%、
V ≦0.05重量%、
B ≦0.002重量%、
Mo≦1.0重量%、
Cu≦1.0重量%、
Ni≦0.5重量%
のうちの1種または2種以上を含む点を限定したものであるところ、刊行物5〜7には、本件発明3と重複する量のTi、Nb、V、B、Mo、Cu及びNiの1種又は2種以上を添加した熱延鋼板が記載されているにすぎないから、本件発明1と同様の理由により、刊行物1〜3、5〜7に記載のものを寄せ集めて本件発明3を容易に構築できたものとすることができない。
本件発明4は、本件発明1〜3のいずれかにおいて、さらに、Ca=0.0005〜0.01重量%またはREM=0.005〜0.05重量%のいずれかを含有する点を限定したものであるところ、刊行物6,8には、本件発明4と重複する量のCa又はREMのいずれかを添加した熱延鋼板が記載されているにすぎないから、本件発明1と同様の理由により、刊行物1〜3、6,8に記載のものを寄せ集めて本件発明4を容易に構築できたものとすることができない。
次に、本件発明5〜8は、本件特許に係る分割出願の原出願の国内優先権主張の基礎とされた先の出願である特願平3-153795号出願の願書に最初に添付した明細書及び図面(異議申立人住友金属工業株式会社の提出した甲第4号証)に記載された発明でないから、優先権の効果を認められない。この前提で、本件発明5〜8について次のとおり対比・判断する。
本件発明5と刊行物4に記載のものを対比する。
刊行物4に記載のTable1の実機出鋼材のSi+Mnの値を求めるとSi+Mnの値は4.23%となるから、両者は、化学成分として、C、Si、Mn、P、S及びAlを含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、C、Si、Mn、P、S及びAlの含有量、Si+Mn量並びにフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が重複する成形性に優れた熱延高強度鋼板である点で一致し、本件発明5は、2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上である高降伏比型熱延高強度鋼板であるのに対し、刊行物4にはこの点が記載されていない点で相違する。
相違点を検討する。
刊行物4、Photo.1にはミクロ組織が記載されているが、ミクロ組織についての腐食液、腐食方法が明らかにされていないので、ミクロ組織がいかなる組織からなるのか不明であり、該Photo.1のミクロ組織から、2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上である点を読みとることはできない。
刊行物1には0.23%C-1.4%Si-2.0%Mn鋼の熱延鋼板のポリゴナルフェライト占積率(VPF)とポリゴナルフェライト粒径(dPF)の比(VPF/dPF)が7程度以上になると高いTS×T.EL値が得られることが記載されているが、刊行物1には、2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上である点を示唆する記載がない。また、前記のとおり、刊行物3に記載のものは、マルテンサイトを生成させた複合組織鋼板であり、マルテンサイトの生成を阻止した本件発明5と鋼板の組織を相違するものである。
以上のことから、本件発明5は刊行物4に記載された発明であるとすることができず、また、刊行物1、3及び4に記載のものを寄せ集めて本件発明5を容易に構築できたものとすることができない。
次に、本件発明6と刊行物4に記載のものを対比すると、両者は、化学成分として、C、Si、Mn、P、S及びAlを含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、C、Si、Mn、P及びSの含有量、Si+Mn量並びにフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が重複する成形性に優れた熱延高強度鋼板である点で一致し、本件発明6のAl含有量が刊行物4に記載のものと相違し、また、本件発明6は、2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上である高降伏比型熱延高強度鋼板であるのに対し、刊行物4にはこの点が記載されていない点で相違する。
相違点を検討する。
前記のとおり、刊行物4、Photo.1にはミクロ組織が記載されているが、該Photo.1のミクロ組織から、2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上である点を読みとることはできず、また、刊行物1には0.23%C-1.4%Si-2.0%Mn鋼の熱延鋼板のポリゴナルフェライト占積率(VPF)とポリゴナルフェライト粒径(dPF)の比(VPF/dPF)が7程度以上になると高いTS×T.EL値が得られることが記載されているが、刊行物1には、2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上である点を示唆する記載がない。また、刊行物2には、Al鋼の残留γはSi鋼と比べて安定なことが記載されているが、刊行物2に記載のものは、C量が本件発明6と相違するものであり、刊行物3には、本件発明6と重複する量のAlを含有させることが記載されているが、前記のとおり、刊行物3に記載のものは、マルテンサイトを生成させた複合組織鋼板であり、マルテンサイトの生成を阻止した本件発明6と鋼板の組織を相違するものである。
以上のことから、刊行物1〜4に記載のものを寄せ集めて本件発明6を容易に構築できたものとすることができない。
本件発明7は、本件発明5又は6において、
さらに、Cr≦0.5重量%、
Ti≦0.05重量%、
Nb≦0.05重量%、
V ≦0.05重量%、
B ≦0.002重量%、
Mo≦1.0重量%、
Cu≦1.0重量%、
Ni≦0.5重量%
のうちの1種または2種以上を含む点を限定したものであるところ、刊行物5〜7には、本件発明7と重複する量のTi、Nb、V、B、Mo、Cu及びNiの1種又は2種以上を添加した熱延鋼板が記載されているにすぎないから、本件発明5又は6と同様の理由により、刊行物1,3〜7又は刊行物1〜7に記載のものを寄せ集めて本件発明7を容易に構築できたものとすることができない。
本件発明8は、本件発明5〜7のいずれかにおいて、さらに、Ca=0.0005〜0.01重量%またはREM=0.005〜0.05重量%のいずれかを含有する点を限定したものであるところ、刊行物6,8には、本件発明8と重複する量のCa又はREMのいずれかを添加した熱延鋼板が記載されているにすぎないから、本件発明5又は6と同様の理由により、刊行物1,3,4,6及び8又は刊行物1〜4、6,8に記載のものを寄せ集めて本件発明8を容易に構築できたものとすることができない。
(2)本件発明1と刊行物9に記載のものを対比する。
刊行物9に記載の鋼板のSi+Mnの値を求めると、刊行物9に記載のもののSi+Mnの値は本件発明1と重複する値となり、また、刊行物9の鋼板のP,S及びAlの含有量は、供試鋼の化学成分からすれば、本件発明1と重複するものと認められるから、両者は、化学成分として、C、Si、Mn、P、S及びAlを含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、C、Si、Mn、P、S及びAlの含有量並びにSi+Mn量が重複する成形性に優れた熱延高強度鋼板である点で一致し、本件発明1は、(a)フェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が20以上で(b)2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上であるスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板であるのに対し、刊行物9にはこれらの点が記載されていない点で相違する。
相違点を検討する。
相違点(a)について、刊行物10には、VPF/dPFの増加により残留オーステナイト量は増加し強度延性バランスは向上することが記載され、また、刊行物11には、C0.15〜0.21wt%、Si1.5〜2.0wt%,Mn1.4〜1.7wt%の供試鋼のフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(DF)の比(VF/DF)を20以上とすればTS×T.ELが20000(MPa・%)以上となること及びいずれの成分系でもVPF/dPFの整理は強度ー延性バランスの指標として有効であることが記載されていることから、C含有量が刊行物11に記載のものより低い熱延高強度鋼板において、フェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が20以上とする程度のことは当業者が任意に想到しうることである。
相違点(b)について、刊行物12には、複合組織鋼中の残留γは一般に細粒(1μm以下)であることが記載されているが、刊行物12に記載のものは、本件発明1で生成を阻止したマルテンサイトを有する複合組織鋼であり、また、刊行物13には結晶粒の微細化によって局部伸びが増大することが記載され、刊行物14には、穴拡げ性と局部伸びには良い相関があることが記載されているにすぎないから、2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上である点を限定することは刊行物12〜14に記載のものに基づいて当業者が任意に想到することができたものとすることはできない。
以上のことから、刊行物9〜14の記載のものを寄せ集めることによって当業者が本件発明1を容易に構築できるものとすることができない。
本件発明3について、刊行物5には、本件発明3と重複する量のTi、Nb、V、B、Mo、Cu及びNiの1種又は2種以上を添加した熱延鋼板が記載されているにすぎないから、本件発明1と同様の理由により、刊行物5,9〜14に記載のものを寄せ集めて本件発明3を容易に構築できたものとすることができない。
本件発明4について、刊行物8には、本件発明4と重複する量のCa又はREMのいずれかを添加した熱延鋼板が記載されているにすぎないから、本件発明1と同様の理由により、刊行物8〜14に記載のものを寄せ集めて本件発明4を容易に構築できたものとすることができない。
次に、本件発明5と刊行物8に記載のものを対比する。
刊行物8に記載のもののSi+Mnの値を求めると、刊行物8に記載のもののSi+Mnの値は本件発明5と重複し、また、刊行物8第1表に記載の化学成分からすると、刊行物8に記載のものは、P0.010〜0.021wt%、S0.001〜0.003wt%を含有するから、刊行物8に記載のものは、P及びS含有量が本件発明5と重複するので、両者は、化学成分として、C、Si、Mn、P及びSを含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、C、Mn、P及びSの含有量、Si+Mn量並びにフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が重複する成形性に優れた熱延高強度鋼板である点で一致し、本件発明5は、(a)Si2.0超〜3.0重量wt%、Al0.005〜0.10重量%を含有し、(b)2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上である高降伏比型熱延高強度鋼板であるのに対し、刊行物8にはこの点が記載されていない点で相違する。
相違点を検討する。
相違点(a)について、刊行物15には、強度-延性バランスに優れると共に溶接性の良好な熱延鋼板を製造において、γ→α(フェライト)変態を促進し、かつα中のC濃度を低下することによりαの延性を向上させると共にγ中のC濃度を高めて安定化し、γRを得やすくするためSi:2.0〜4.0wt%含有することが記載され、また、第1表には供試鋼の化学成分としてAl0.02〜0.04wt%とすることが記載されているから、成形性に優れた熱延高強度鋼板として刊行物15に記載のものを適用し、Si2.0超〜3.0重量wt%、Al0.005〜0.10重量%含有させるようなことは当業者が任意に想到しうることである。
相違点(b)について、前記のとおり、刊行物12には、複合組織鋼中の残留γは一般に細粒(1μm以下)であることが記載されているが、刊行物12に記載のものは、本件発明1で生成を阻止したマルテンサイトを有する複合組織鋼であり、また、刊行物13には、結晶粒の微細化によって局部伸びが増大することが記載され、刊行物14には、穴拡げ性と局部伸びには良い相関があることが記載されているにすぎないから、2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上である点を限定することは刊行物12〜14に記載のものに基づいて当業者が任意に想到することができたものとすることはできない。
以上のことから、刊行物8,12〜15の記載のものを寄せ集めることによって当業者が本件発明5を容易に構築できるものとすることができない。
本件発明7について、刊行物5には、本件発明3と重複する量のTi、Nb、V、B、Mo、Cu及びNiの1種又は2種以上を添加した熱延鋼板が記載されているにすぎないから、本件発明5と同様の理由により、刊行物5,8,12〜15に記載のものを寄せ集めて本件発明7を容易に構築できたものとすることができない。
本件発明8について、刊行物8には、本件発明4と重複する量のCa又はREMのいずれかを添加した熱延鋼板が記載されているにすぎないから、本件発明5と同様の理由により、刊行物5,8,12〜15又は刊行物8,12〜15に記載のものを寄せ集めて本件発明8を容易に構築できたものとすることができない。
次に、請求項3、7に記載のものについて、本件特許の原出願及び本件特許の出願の出願当初の明細書には、「強度確保、細粒化を目的に特性を劣化させない範囲でNb、Ti、Cr、Cu、Ni、V、B、Moを1種または2種以上添加してもよい。」(本件特許の原出願の出願当初の明細書段落0048、本件特許の出願の出願当初の明細書段落0032)と記載されており、また、原審において被請求人が挙げた公知文献から、請求項3,7に記載のものが、強度確保、細粒化を目的に特性を劣化させない範囲で添加したものであることが明らかであるから、請求項3,7に記載のものは、本件特許の原出願及び本件特許の出願の出願当初の明細書に記載されていたに等しいものといえるので、本件特許に係る出願が分割の要件を満たしており、また、請求項3,7に記載の事項は明細書の要旨を変更しないものであるものと認められる。
以上のことから、本件特許に係る出願の出願日の遡及は認められるので、本件特許の原出願の公開公報である刊行物16を公知文献として請求項1〜8に記載の発明の新規性及び進歩性を否定することはできないものと認められる。
(3)以上のとおりであるから、本件発明1は、刊行物1に記載された発明であるとすることができず、本件発明5は、刊行物4に記載された発明であるとすることができず、また、本件発明1〜8は、刊行物16に記載された発明であるとすることができず、更に、本件発明1〜8は、刊行物1〜16に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができたものとすることができない。
(4)次に、上記訂正により、取消理由で指摘した明細書の記載不備は解消したものと認められる。
したがって、本件発明1〜8は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
エ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立てについて
ア.申立ての理由の概要
特許異議申立人住友金属工業株式会社は、証拠として、甲第1〜9号証を提出し、本件の請求項1に記載の発明は、甲第1号証に記載された発明であり、また、請求項5に記載の発明は、甲第5号証に記載された発明であり、また、請求項1〜8に記載の発明は、甲第1〜9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、5に記載の発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定により、特許を受けることができないものであり、また、請求項1〜8に記載の発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるので、請求項1〜8に記載の発明に係る特許は取り消すべきである旨主張し、また、特許異議申立人株式会社神戸製鋼所は、証拠として、甲第1〜10号証を提出し、請求項1、3〜5、7,8に記載の発明は、甲第1〜10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜8に記載の発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、また、請求項5,7,8に係る特許は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされているので、請求項1〜8に記載の発明に係る特許は取り消すべきである旨主張している。
イ.対比・判断
特許異議申立人住友金属工業株式会社が提出した甲第1〜9号証には、「ウ.独立特許要件の判断 (引用刊行物記載の発明)」に記載した事項が記載されており、本件発明1は「ウ.独立特許要件の判断 (対比・判断)」に記載した理由により、甲第1号証に記載された発明であるとすることができず、また、本件発明5は「ウ.独立特許要件の判断 (対比・判断)」に記載した理由により、甲第5号証に記載された発明であるとすることができず、また、本件発明1〜8は「ウ.独立特許要件の判断 (対比・判断)」に記載した理由により、甲第1〜9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
また、特許異議申立人株式会社神戸製鋼所が提出した甲第1〜10号証には、「ウ.独立特許要件の判断 (引用刊行物記載の発明)」に記載した事項が記載されており、本件発明1,3〜5、7,8は「ウ.独立特許要件の判断 (対比・判断)」に記載した理由により、甲第1〜10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができず、また、「ウ.独立特許要件の判断 (対比・判断)(4)」に記載した理由により請求項5,7,8に係る特許は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされているとすることはできない。
ウ.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した証拠及び理由によっては、本件発明1〜8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
成形性又は成形性とスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 化学成分として、
C=0.05〜0.15重量%未満、
Si=0.5〜3.0重量%、
Mn=0.5〜3.0重量%、
Si+Mn=1.5超〜6.0重量%、
P≦0.02重量%、
S≦0.01重量%、
Al=0.005〜0.10重量%
を含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、かつフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が20以上で2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上であることを特徴とする成形性とスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【請求項2】 化学成分として、
C=0.05〜0.15重量%未満、
Si=0.5〜3.0重量%、
Mn=0.5〜3.0重量%、
Si+Mn=1.5超〜6.0重量%、
P≦0.02重量%、
S≦0.01重量%、
Al=0.10超〜3.0重量%
を含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、かつフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が20以上で2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上であることを特徴とする成形性とスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【請求項3】 さらに、
Cr≦0.5重量%、
Ti≦0.05重量%、
Nb≦0.05重量%、
V ≦0.05重量%、
B ≦0.002重量%、
Mo≦1.0重量%、
Cu≦1.0重量%、
Ni≦0.5重量%
のうちの1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的元素からなることを特徴とする請求項1または2記載の成形性とスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【請求項4】 さらに、
Ca=0.0005〜0.01重量%
または
REM=0.005〜0.05重量%
のいずれかを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の成形性とスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【請求項5】 化学成分として、
C=0.15〜0.30重量%未満、
Si=2.0超〜3.0重量%、
Mn=0.5〜3.0重量%、
Si+Mn=2.5超〜6.0重量%、
P≦0.02重量%、
S≦0.01重量%、
Al=0.005〜0.10重量%
を含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、かつフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が7以上(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)で2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上であることを特徴とする成形性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【請求項6】 化学成分として、
C=0.15〜0.30重量%未満、
Si=2.0超〜3.0重量%、
Mn:0.5〜3.0重量%、
Si+Mn=2.5超〜6.0重量%、
P≦0.02重量%、
S≦0.01重量%、
Al=0.10超〜3重量%
を含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、かつフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が7以上(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)で2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上であることを特徴とする成形性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【請求項7】 さらに、
Cr≦0.5重量%、
Ti≦0.05重量%、
Nb≦0.05重量%、
V ≦0.05重量%、
B ≦0.002重量%、
Mo≦1.0重量%、
Cu≦1.0重量%、
Ni≦0.5重量%
のうちの1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的元素からなることを特徴とする請求項5または6記載の成形性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【請求項8】 さらに、
Ca=0.0005〜0.01重量%
または
REM:0.005〜0.05重量%
のいずれかを含有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか記載の成形性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は自動車、産業用機械等に使用することを目的とした高延性を有する成形性あるいは成形性とスポット溶接性に優れた熱延高強度鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用鋼板の軽量化と衝突時の安全確保を主な背景として鋼板の高強度化の要請は強い。しかし、高強度鋼板といえどもその加工性に対する要求は高く、強度と加工性を両立させる鋼板が必要とされている。従来、良好な延性を必要とする用途に供される熱延鋼板として、フェライトとマルテンサイトにより構成されるDual phase鋼(以下DP鋼と称す)がある。このDP鋼は固溶強化型高強度鋼板、析出強化型高強度鋼板よりすぐれた強度・延性バランスを示すことが知られている。しかし、その強度・延性バランスの限界はTS×T.El≦2000であり、より厳しい要求には耐えられないのが現状である。
【0003】
この現状を打破してTS×T.El>2000が得られるシーズとして残留オーステナイトの利用がある。その一例としてAr3〜Ar3+50℃で熱間圧延後、鋼板を450〜650℃の温度範囲で4〜20秒保持し、次いで350℃以下で巻取り、残留オーステナイトを有する鋼板を製造する方法が特開昭60-43425号公報に、更に他の例として仕上温度850℃以上で全圧下率80%以上かつ最終3パスの合計圧下率60%以上、最終パス圧下率20%以上の大圧下圧延を行い、続いて50℃/s以上の冷却速度で300℃以下まで冷却し、残留オーステナイトを有する鋼板を製造する方法が特開昭60-165320号公報に示されている。
【0004】
しかしながら、省エネルギー、生産性向上の点からすると、冷却途中、450〜650℃での4〜20秒の保持、および350℃以下の低温巻取あるいは大圧下圧延等を必要とする従来方法は操業上好ましくない。それにもかかわらず、これらの方法によって得られた鋼板の加工性はTS×T.El<2400であり、かならずしも使用者側の要求レベルをすべて満たしているとは言い難い。より高いTS×T.El値(望ましくは2400以上)を持つ鋼板、およびより生産性の高いその製造方法が求められていた。一方、実成形を考えた場合、強度-延性バランスが良いだけでなく、それとともに優れた一様伸び(張り出し性)、穴拡げ性(伸びフランジ性)、曲げ性、2次加工性、靱性を有することが必要である。また、この種鋼板の使用分野においてはスポット溶接の適用率が増大し、スポット溶接にも優れていることが望まれている。さらには強度保証という観点から高い引張強さはもとより、高い降伏比(高い降伏強度)も望まれている。
【0005】
すなわち、上記した複合特性を両立させることによって、実使用に供せられる用途が格段に広がるのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来技術の限界を越えてTS×T.El≧2000を得る残留オーステナイトを含有する加工性に優れた熱延高強度鋼板を提供するものであり、更に、優れた成形性(強度-延性バランス、一様伸び、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性)、高い降伏比、優れたスポット溶接性を合わせ持つ熱延高強度鋼板を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、本発明は以下の(1)〜(8)の手段を採用する。
【0008】
(1) 化学成分として、
C=0.05〜0.15重量%未満、
Si=0.5〜3.0重量%、
Mn=0.5〜3.0重量%、
Si+Mn=1.5超〜6.0重量%、
P≦0.02重量%、
S≦0.01重量%、
Al=0.005〜0.10重量%
を含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、かつフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が20以上で2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上であることを特徴とする成形性とスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【0009】
(2) 化学成分として、
C=0.05〜0.15重量%未満、
Si=0.5〜3.0重量%、
Mn=0.5〜3.0重量%、
Si+Mn=1.5超〜6.0重量%、
P≦0.02重量%、
S≦0.01重量%、
Al=0.10超〜3重量%
を含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、かつフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が20以上で2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上であることを特徴とする成形性とスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【0010】
(3) さらに、
Cr≦0.5重量%、
Ti≦0.05重量%、
Nb≦0.05重量%、
V≦0.05重量%、
B≦0.002重量%、
Mo≦1.0重量%、
Cu≦1.0重量%、
Ni≦0.5重量%
のうちの1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的元素からなることを特徴とする前記(1)または(2)の成形性とスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【0011】
(4) さらに、
Ca=0.0005〜0.01重量%
または
REM=0.005〜0.05重量%
のいずれかを含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかの成形性とスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【0012】
(5) 化学成分として、
C=0.15〜0.30重量%未満、
Si=2.0超〜3.0重量%、
Mn=0.5〜3.0重量%、
Si+Mn=2.5超〜6.0重量%、
P≦0.02重量%、
S≦0.01重量%、
Al=0.005〜0.10重量%
を含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、かつフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が7以上(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)で2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上であることを特徴とする成形性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【0013】
(6) 化学成分として、
C=0.15〜0.30重量%未満、
Si=2.0超〜3.0重量%、
Mn=0.5〜3.0重量%、
Si+Mn=2.5超〜6.0重量%、
P≦0.02重量%、
S≦0.01重量%、
Al=0.10超〜3重量%
を含み、残部がFeおよび不可避的元素からなり、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、かつフェライト占積率(VF)とフェライト粒径(dF)の比(VF/dF)が7以上(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)で2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上であることを特徴とする成形性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【0014】
(7) さらに、
Cr≦0.5重量%、
Ti≦0.05重量%、
Nb≦0.05重量%、
V ≦0.05重量%、
B ≦0.002重量%、
Mo≦1.0重量%、
Cu≦1.0重量%、
Ni≦0.5重量%
のうちの1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的元素からなることを特徴とする前記(5)または(6)の成形性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【0015】
(8) さらに、
Ca=0.0005〜0.01重量%
または
REM:0.005〜0.05重量%
のいずれかを含有することを特徴とする前記(5)〜(7)のいずれかの成形性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板。
【0016】
【作用】
本発明者らは種々の実験検討を重ねた結果、従来技術が持つ問題点を解消し、優れた成形性、高い降伏比、優れたスポット溶接性を合わせ持つ熱延高強度鋼板を発明した。
【0017】
第1に、優れた成形性と高い降伏比を両立させるための鋼板ミクロ組織は、2ミクロン以下の残留オーステナイトを5%以上の占積率で含有し、VF/dF(VF:フェライト占積率;%、dF:フェライト粒径;ミクロン)が20以上(Cが0.15%以上0.3%未満の場合は、残留オーステナイトが微細に生成しやすいので7以上でよい(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く))であるフェライト+ベイナイト+残留オーステナイトの3相よりなる組織である。
【0018】
表1にその関係を示すように、ポイントは以下の▲1▼〜▲3▼である。
【0019】
【表1】

【0020】
▲1▼ 残留オーステナイトの増加は強度-延性バランスの向上、一様伸びの向上に寄与し、その効果は残留オーステナイトの微細化により高まる。一方、残留オーステナイトを微細化することにより穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性は優れたレベルを維持することが可能となる。すなわち、残留オーステナイトを5%以上含有させ、かつ、そのサイズを2μm以下とすることにより、はじめて、優れた強度-延性バランス、優れた一様伸び、優れた穴拡げ性、優れた曲げ性、優れた2次加工性、優れた靱性を両立させることができるのである。
【0021】
▲2▼ VF/dFの増加はフェライト占積率の増加、フェライト粒の微細化を通じて2次加工性の向上、靱性の向上、降伏比の増加に寄与する。
【0022】
▲3▼ ミクロ組織を構成する相をフェライト+ベイナイト+残留オーステナイトの3相とすることにより、すなわち、パーライト、マルチンサイトの混在を回避することにより、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性は優れたレベルを維持することが可能となる。また、それにより、高降伏比の維持も可能となる。
【0023】
第2に、2ミクロン以下の残留オーステナイトを5%以上の占積率で含有するためには、図1、2に示すごとく、Cが0.05〜0.15重量%未満の場合はSiを0.5〜3.0重量%、Mnを0.5〜3.0重量%、Si+Mnを1.5超〜6.0重量%と制御したうえで、VF/dFを20以上、またCが0.15〜0.30%未満の場合はSiを2.0〜3.0%、Mnを0.5〜3.0%、Si+Mnを2.5超〜6.0%と制御したうえでVF/dFを7以上とすればよい(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)。
【0024】
第3に、図3に示すごとく、最良のスポット溶接性(ナゲット内破断=0)を得るためにはC<0.15重量%、Si+Mn≦6%、Si、Mn≦3.0%、P≦0.02%とする。
【0025】
第4に、非常に厳格な表面性状が要求される場合、加熱温度≦1170℃ないしはSi=1.0〜2.0%の規制が有効である。
【0026】
第5に、図4に示すごとく、優れた穴拡げ性(d/d0≧1.4)を得るにはC<0.15重量%、S≦0.01重量%とすることが必要であり、CaないしはREM添加も有効である。また、特に優れた穴拡げ性(d/d0≧1.5)を得るには、さらにC<0.10重量%とすることが必要である。
【0027】
すなわち、本発明の厳格な成分制御および厳格な組織制御によって、はじめて、熱延高強度鋼板に要求される種々の複合特性を満足しうる。
【0028】
さらに、前記ミクロ組織を達成する熱延条件を検討し、その製造方法を開発した。
【0029】
以下、まず成分規制の値とその制限理由を説明する。
【0030】
Cは残留オーステナイト(以下、残留γと称する)の確保のために、0.05重量%以上0.30重量%未満添加するが、溶接部の脆化を防止して最良なスポット溶接性を得、さらにd/d0≧1.4以上の優れた穴拡げ性を得るためには、その添加上限を0.15重量%未満とする。さらにd/d0≧1.5以上の最良の穴拡げ性が要求される場合は、その上限を0.10重量%未満とする。なお、Cは強化元素でもあり、Cの増加とともに引張強さが増加するが、それとともにd/d0が低下し、スポット溶接性に不利となるのは避けられない。
【0031】
Si、Mnは強化元素である。また、Siはフェライト(以下、αと称する)の生成を促進し、炭化物の生成を抑制することにより、残留γを確保する作用があり、Mnはγを安定化して残留γを確保する作用がある。SiとMnのその作用を十分に発揮するためには、Si、Mnの各々単独の添加下限量の規制を行うとともに、Si+Mnの添加下限量を規制することが必要である。すなわち、Si、Mnの各々単独の添加下限量は0.5重量%以上、Si+Mnの添加下限量は1.5重量%超とする必要がある。ただし、Si、Mnを過度に添加しても上記効果は飽和し、かえって溶接性劣化、鋳片割れを生ずるため、Si、Mnの各々単独の添加上限量は3.0重量%以下、Si+Mnの添加上限量は6.0重量%以下とする必要がある。また、特に優れた表面性状が要求される場合はSi=1.0〜2.0重量%が望ましい。
【0032】
Pは残留γの確保に効果があるが、本発明では2次加工性、靱性、溶接性を最良に保つため、上限量を0.02重量%としている。これら特性の要求が厳格でない場合は、残留γの増加を助けるため、0.2%まで添加してもよい。
【0033】
Sは硫化物系介在物により穴拡げ性が劣化するのを防ぐため、その上限量を0.01重量%とする。
【0034】
Alは脱酸とAlNによるγの細粒化を経たα占積率の増加、αの細粒化、残留γの増加、細粒化を目的に0.005重量%以上0.10重量%添加する。また、残留γの増加を助けるため、Alを3%まで添加してもよく、この場合も本発明の範囲に含まれる。
【0035】
Caは硫化物系介在物の形状制御(球状化)により、穴拡げ性をより向上させるために0.0005重量%以上添加するが、効果の飽和、さらには介在物の増加による逆効果(穴拡げ性の劣化)の点からその上限を0.01重量%とする。また、REMも同様の理由からその添加量を0.005〜0.05重量%とする。
【0036】
以上が主たる成分の添加理由であるが、強度確保、細粒化を目的に特性を劣化させない範囲でNb、Ti、Cr、Cu、Ni、V、B、Moを1種または2種以上添加してもよい。
【0037】
次に、前記したミクロ組織を如何に達成するかという観点から加熱規制、圧延規制、冷却規制、巻取規制等の値とその制限理由を説明する。
【0038】
仕上げ圧延の終了温度の下限は加工組織(加工α)の出現による加工性の劣化、特に強度-延性バランスの劣化(伸びの劣化)を防ぐため、Ar3-50℃とする。また、仕上げ圧延の終了温度の上限は1段冷却(図5)の場合、α占積率の増加効果、αの細粒化効果、細粒残留γの増加効果を圧延工程で確保するためにAr3+50℃とする。2段冷却、3段冷却(図5)の場合は後述するごとく冷却工程でα占積率の増加効果、αの細粒化効果、細粒残留γの増加効果が期待できるため、特に仕上げ圧延の終了温度の上限を定める必要はないが、前記効果をより高めるために好ましくは上限をAr3+50℃とする。
【0039】
仕上げ圧延の全圧下率はα占積率の増加効果、αの細粒化効果、細粒残留γの増加効果を確保するために80%以上とする。好ましくは前段4パスの各圧下率を40%以上とする。
【0040】
図5に示す1段冷却の冷却速度はパーライトの生成防止のため、下限を30℃/秒とする。
【0041】
図5に示す2段冷却においては、初段の冷却はα占積率の増加効果、細粒残留γの増加効果を得るため、30℃/秒未満の冷却速度でAr3以下まで降温させるが、パーライトの生成を避けるため、Ar1超から2段目の冷却を30℃/秒以上の冷却速度で開始する。なお、Ar3以下〜Ar1超で等温保持してもさしつかえない。ただし、広範囲の歪領域にわたってTRIP現象を維持し、優れた特性を得るためには初段の冷却速度は5〜20℃/秒とすることが望ましい。
【0042】
図5に示す3段冷却においては、初段の冷却はαの細粒化のため、30℃/秒以上でAr3以下まで冷却する。2段目の冷却はα占積率の増加効果、細粒残留γの増加効果を得るため、30℃/秒未満とするが、パーライトの生成を避けるため、Ar1超から3段目の冷却を30℃/秒以上の冷却速度で開始する。なお、Ar3以下〜Ar1超で等温保持してもさしつかえない。ただし、広範囲の歪領域にわたってTRIP現象を維持し、優れた特性を得るためには2段目の冷却速度は5〜20℃/秒とすることが望ましい。
【0043】
また、1段冷却、2段冷却、3段冷却のいずれの方法においてもα占積率の増加効果、αの細粒化効果、細粒残留γの増加効果、さらには冷却テーブル長の低減を狙って、圧延直後急冷を行ってもよい。
【0044】
巻取温度はマルテンサイトの生成を防止して残留γを確保するため、その下限を350℃超とする。その上限はパーライトの生成を防止しつつ、過度のベイナイト変態を抑制して残留γを確保するため、500℃未満とする。
【0045】
以上が本発明鋼板を製造する場合の規制理由であるが、α占積率の増加効果、αの細粒化効果、細粒残留γの増加効果を高めるため、▲1▼加熱温度上限を1170℃とする、▲2▼仕上げ圧延の開始温度を仕上げ圧延終了温度+100℃以下とする等の手段を単独ないしは複合で行ってもよい。また、最良な表面性状の確保のために上限を1170℃としてもよい。
【0046】
さらに、巻取後の冷却は放冷を行ってもよいし、強制冷却でもよい。過度のベイナイト変態を抑制して残留γを確保する効果を高めるため、200℃未満まで30℃/時以上で冷却してもよい。上記の加熱温度規制、仕上げ圧延開始温度規制と組み合わせてもよい。
【0047】
なお、圧延に供する鋼片はいわゆる冷片再加熱、HCR、HDRのいずれであってもかまわない。また、いわゆる薄肉連続鋳造による鋼片であってもかまわない。
【0048】
また、本発明による熱延鋼板をめっき原板としてもよい。
【0049】
【実施例】
供試鋼のFe以外の化学成分を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
本発明例および比較例の熱延鋼板を表3、4に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
No.1〜18は本発明例であり、優れた成形性、優れたスポット溶接性を合わせ持つ高降伏比型熱延高強度鋼板が得られている。ただし、No.18はCが高いためスポット溶接性は他に比べ幾分劣る。しかし成形性は良好である。
【0055】
また、表面性状も良好である。No.1、3、5、7〜15はSi=1.0〜2.0重量%であるため、特に優れた表面性状が得られている。
【0056】
No.19〜23は比較例である。No.19は鋼のSi含有量およびSi+Mn含有量が下限を下回っているため、残留γが得られず、強度-延性バランス、一様伸びが劣化している。No.20はパーライトが混入し、残留γが5%を下回っているため、強度-延性バランス、一様伸び、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性が劣化している。No.21はマルテンサイトが混入し、残留γが5%を下回っているため、強度-延性バランス、一様伸び、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性が劣化し、さらに、降伏比が60%を下回っている。No.22は残留γ量は5%を確保しているもののそのサイズが2μmを越えているため、強度-延性バランス、一様伸び、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性が劣化している。No.23は鋼のC量が上限を越えているためスポット溶接性、穴拡げ性が劣化している。
【0057】
なお、表2の鋼種G〜L、R〜V、Xにおいても優れた成形性、優れたスポット溶接性を合わせ持つ高降伏比型熱延高強度鋼板が得られ、その表面性状も良好であった。
【0058】
本発明例および比較例の熱延鋼板の製造方法を表5〜10に示す。
【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【0062】
【表8】

【0063】
【表9】

【0064】
【表10】

【0065】
表5、6は冷却テーブルでの冷却が図5に示す1段冷却の場合の本発明鋼板の製造例および比較例鋼板の製造例である。
【0066】
No.24〜30は本発明鋼板の製造例であり、優れた成形性、優れたスポット溶接性を合わせ持つ高降伏比型熱延高強度鋼板が得られ、その表面性状も良好である。
【0067】
No.31〜35は比較例であり、これによっては、本発明鋼板は得られない。No.31は圧延終了温度が下限を下回り、巻取温度が上限を越えているため、加工組織(加工α)、パーライトを生成し、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性が劣化している。No.32は冷却速度が下限を下回っているため、パーライトを生成し、2μm以下の残留7を5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性が劣化している。No.33は巻取温度が上限を越えているため、パーライトを生成し、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性が劣化している。No.34は巻取温度が下限を下回っているため、マルテンサイトを生成し、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性が劣化しており、降伏比も60%を下回っている。No.35は圧延終了温度が上限を越えているため、VF/dF≧20に到達せず、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、2次加工性、靱性が劣化した。
【0068】
表7、8は冷却テーブルでの冷却が図5に示す2段冷却の場合の本発明鋼板の製造例および比較例鋼板の製造例である。
【0069】
No.36〜41は本発明鋼板の製造例であり、優れた成形性、優れたスポット溶接性を合わせ持つ高降伏比型熱延高強度鋼板が得られ、その表面性状も良好である。
【0070】
No.42〜47は比較鋼板の製造例である。No.42は圧延終了温度が下限を下回り、巻取温度が上限を越えているため、加工組織(加工α)、パーライトを生成し、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性が劣化している。No.43は仕上げ圧延の全圧下率が下限を下回っているため、VF/dF≧20に到達せず、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、2次加工性、靱性が劣化している。No.44は第1段目の冷却速度が上限を越えているため、VF/dF≧20に到達せず、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、2次加工性、靱性が劣化している。No.45は第2段目の冷却速度が下限を下回っているため、パーライトを生成し、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性が劣化している。No.46は巻取温度が上限を越えているため、パーライトを生成し、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性が劣化した。No.47は第1段目の冷却終了温度(冷却速度変更温度T1)が上限を越えているため、VF/dF≧20に到達せず、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、2次加工性、靱性が劣化している。
【0071】
表9、10は冷却テーブルでの冷却が図5に示す3段冷却の場合の本発明鋼板の製造例および比較例鋼板の製造例である。
【0072】
No.48〜53は本発明鋼板の製造例であり、優れた成形性、優れたスポット溶接性を合わせ持つ高降伏比型熱延高強度鋼板が得られ、その表面性状も良好である。
【0073】
No.54〜56は比較鋼板の製造例である。No.54は第2段目の冷却速度が上限を越えているため、VF/dF≧20に到達せず、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、2次加工性、靱性が劣化している。No.55は第3段目の冷却速度が下限を下回っているため、パーライトを生成し、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、穴拡げ性、曲げ性、2次加工性、靱性が劣化している。No.56は第1段目および第2段目の冷却終了温度(冷却速度変更温度T1、T2)が上限を越えているため、VF/dF≧20に到達せず、2μm以下の残留γを5%以上得ることができず、その結果、強度-延性バランス、一様伸び、2次加工性、靱性が劣化している。
【0074】
なお、表2の鋼種G〜L、R〜V、Xにおいても同様の製造方法により優れた成形性、優れたスポット溶接性を合わせ持ち、表面性状の良好な高降伏比型熱延高強度鋼板が得られた。
【0075】
以上より明らかなごとく、実使用上の種々のケース・部品を想定した場合、複合特性を備えた本発明によってはじめて実用化が可能となるといえる。
【0076】
なお、特性評価は以下の方法で実施した。
【0077】
引張試験はJIS5号にて実施し、引張強度(TS)、降伏強度(YP)、降伏比(YR=100×YP/TS)、全伸び(T.EL)、一様伸び(U.EL)、強度-延性バランス(TS×T.EL)を求めた。
【0078】
穴拡げ性は20mmの打ち抜き穴をバリのない面から30度円錐ポンチで押し拡げ、クラックが板厚を貫通した時点での穴径(d)と初期穴径(d0、20mm)との穴拡げ比(d/d0)で示す。
【0079】
曲げ性は35mm×70mmの試験片をバリを外側にして、先端0.5Rの90度V曲げ(曲げ軸は圧延方向)を行い、1mm以上のクラックが無いときは○で有るときは×で示す。
【0080】
2次加工性は90mmφの打ち抜き板を絞り比1.8でカップ成形したものを-50℃で圧壊し、割れが無いときは○で有るときは×で示す。
【0081】
靱性は遷移温度が-120℃以下を満足するときは○で満足しないときは×で示す。
【0082】
スポット溶接性はスポット溶接試験片をたがねで剥離したときのナゲット(スポット溶接時に溶融し、その後凝固した部分)内の破断が無いときは○で有るときは×で示す。
【0083】
また、表面性状は目視で非常に良好な場合◎で、良好な場合○で示す。
【0084】
【発明の効果】
本発明により従来にない複合特性を合わせ持つ熱延高強度鋼板、すなわち成形性、高い降伏比、優れたスポット溶接性を合わせ持つ熱延高強度鋼板が得られ、使用用途・使用条件が格段に拡がる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
2ミクロン以下の残留γを5%以上得るための条件を示す図である。
【図2】
2ミクロン以下の残留γを5%以上得るための条件を示す図である。
【図3】
スポット溶接性を向上させる条件を示す図である。
【図4】
穴拡げ比を向上させるための条件を示す図である。
【図5】
冷却テーブルでの冷却方法を示す図である。
【図面】





 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項5に記載の「(VF/dF)が7以上」を「(VF/dF)が7以上(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)」と訂正する。
訂正事項b
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項6に記載の「(VF/dF)が7以上」を「(VF/dF)が7以上(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)」と訂正する。
訂正事項c
明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書段落0012に記載の「(VF/dF)が7以上」を「(VF/dF)が7以上(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)」と訂正する。
訂正事項d
明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書段落0013に記載の「(VF/dF)が7以上」を「(VF/dF)が7以上(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)」と訂正する。
訂正事項e
明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書段落0017に記載の「(Cが0.15%以上0.3%未満の場合は、残留オーステナイトが微細に生成しやすいので7以上でよい)」を「(Cが0.15%以上0.3%未満の場合は、残留オーステナイトが微細に生成しやすいので7以上でよい(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)」と訂正する。
訂正事項f
明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書段落0019の表1に注として「*1:0.15%≦C<0.16%では7≦VF/dF<20を除く」を加入する。
訂正事項g
明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書段落0023に記載の「VF/dFを7以上とすればよい。」を「VF/dFを7以上とすればよい(但し、C:0.15〜0.16重量%未満ではVF/dF:7〜20未満を除く)。」と訂正する。
訂正事項h
明りょうでない記載の釈明を目的として、図2に注として「*1:0.15%≦C<0.16%では7≦VF/dF<20を除く」を加入する。
訂正事項i
誤記の訂正を目的として、明細書段落0052の表3中、本発明例18のVFの値「40」を「39」に、VBの値「43」を「48」に訂正する。
異議決定日 2001-03-08 
出願番号 特願平8-191617
審決分類 P 1 651・ 531- YA (C22C)
P 1 651・ 121- YA (C22C)
P 1 651・ 113- YA (C22C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小柳 健悟小川 武  
特許庁審判長 三浦 悟
特許庁審判官 柿沢 恵子
刑部 俊
登録日 1998-11-20 
登録番号 特許第2853762号(P2853762)
権利者 新日本製鐵株式会社
発明の名称 成形性又は成形性とスポット溶接性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板  
代理人 植木 久一  
代理人 小谷 悦司  
代理人 秋沢 政光  
代理人 秋沢 政光  
代理人 今井 毅  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ