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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01D
管理番号 1044819
異議申立番号 異議2000-74299  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-07-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-29 
確定日 2001-04-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3046347号「脱臭用フィルター濾材およびその製造法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3046347号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1)手続の経緯
特許3046347号の請求項1〜3に係る発明は、平成2年11月28日に特許出願され、平成12年3月17日に特許の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年3月12日に訂正請求がなされたものである
(2)訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
訂正事項a.
明細書第22頁第16〜18行目
「比較例5
実施例4と同じ配合で抄紙し、シート乾燥のみを190℃で行った。」を不明りょうな記載の釈明を目的として削除する。
訂正事項b.
明細書第24頁の表5において、比較例5の列を不明瞭な記載の釈明を目的として削除する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a.及びb.は、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
ウ.むすび
以上のとおり、上記訂正は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書および第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
(2)特許異議申立についての判断
ア.本件発明
【請求項1】高融点合成樹脂を芯成分とし、且つ、低融点合成樹脂を鞘成分とする複合繊維と活性炭素繊維を必須成分とし、これらの繊維を含有する水性スラリ-を湿式抄紙法により抄紙し、鞘成分の融点より高く芯成分より低い温度で乾燥し、活性炭素繊維と複合繊維を融着させた後、得られたシートを乾燥温度より高く、複合繊維の芯成分の融点より低い温度で熱処理する工程を経て得られたフィルター濾材であって、シート重量に対し活性炭素繊維を50〜97重量%含有し、坪量50〜300g/m2の範囲で密度が0.08g/cm3以下である脱臭用フィルター濾材。
【請求項2】潜在捲縮性繊維、高収縮性繊維、顕在捲縮繊維、異形断面繊維から選ばれた1種以上の繊維を含有する請求項1記載の脱臭用フィルター濾材。
【請求項3】高融点合成樹脂を芯成分とし、且つ、低融点合成樹脂を鞘成分とする複合繊維と活性炭素繊維を必須成分とし、これらの繊維を含有する水性スラリ-を湿式抄紙法により抄紙し、鞘成分の融点より高く芯成分の融点より低い温度で乾燥し、活性炭素繊維と複合繊維を融着させた後、得られたシートを乾燥温度より高く、複合繊維の芯成分の融点より低い温度で熱処理することを特徴とする脱臭用フィルター濾材の製造法。
イ. 特許異議申立の理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証「特公昭61-35320号公報」を提出し、請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、また、請求項1〜3に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべき旨主張する。
更にまた、特許異議申立人は、特許明細書には、記載不備があるから、特許法第36条第3項及び第4項の規定に違反すると主張する。
ウ.甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
「低伸度の繊維状物80〜10重量%と、伸度100%以上、繊維長10〜25mmの実質的に顕在捲縮のない熱接着性複合繊維20〜90重量%とを混合抄紙し、乾燥、加熱して該複合繊維の熱接着によって繊維間の結合を行わしめることを特徴とする低伸度の繊維状物を含有する高伸度湿式不織布の製造方法。」(特許請求の範囲)
「複合繊維を更に説明すると10℃以上好ましくは20℃以上の融点差のある高低両融点成分から成り、低融点成分が繊維表面の少なくとも一部を占め、・・・または鞘芯型複合構造を有するものが有効に用いられ」(第3欄)
「低伸度繊維状物としては・・・炭素繊維(活性炭繊維含む)等の無機繊維等が・・・用いられる。」(第4欄)
「このような不織布は、衛生材料として、或は産業資材として・・・用途が広い。」(第5欄)
エ.対比・判断
(a)特許法第29条第1項第3号及び第2項違反について
請求項3に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には、請求項3に係る発明の構成である「複合繊維と活性炭素繊維を必須成分とする繊維を含有する水性スラリ-を湿式抄紙法により抄紙し、鞘成分の融点より高く芯成分より低い温度で乾燥加熱し、活性炭素繊維と複合繊維を融着させた後に、得られたシートを乾燥温度より高く、複合繊維の芯成分の融点より低い温度で熱処理することによってフィルター濾材を得ること」については、記載もなければ示唆もない。
よって、請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一でもなければ、該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
甲第1号証には、請求項1〜2に係る発明の構成要件である「複合繊維と活性炭素繊維を必須成分とする繊維を含有する水性スラリ-を湿式抄紙法により抄紙し、鞘成分の融点より高く芯成分より低い温度で乾燥加熱し、活性炭素繊維と複合繊維を融着させた後に、得られたシートを乾燥温度より高く、複合繊維の芯成分の融点より低い温度で熱処理する工程を経て得られたフィルター濾材」とすることも「シート重量に対し活性炭素繊維を50〜97重量%含有し、坪量50〜300g/m2の範囲で密度が0.08g/cm3以下である脱臭用フィルター濾材」についても、記載もなければ示唆もない。
したがって、請求項1〜2に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(b)特許法第36条第3項及び第4項違反について
特許異議申立人は、明細書の記載事項「高融点合成樹脂を芯成分とし、且つ、低融点合成樹脂を鞘成分とする複合繊維」、「密度が0.08g/cm3以下」、「鞘成分の融点より高く芯成分の融点より低い温度で乾燥し、活性炭素繊維と複合繊維を融着させる」と、明細書中に「複合繊維における鞘成分と芯成分の比」が明記されていない点等に関して、明細書の記載不備を主張するが、当該技術分野における技術常識を参酌すれば明細書の発明の詳細な説明中には、当業者が容易に発明を実施できる程度に記載されていると認められ、また、特許請求の範囲には、特許を受けようとする本件発明の必須の構成要件が記載されているものと認められる。したがって、本件明細書に記載不備があるとすることはできない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、請求項1〜3に係る発明の特許は、特許異議申立の理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、請求項1〜3に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものではない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
脱臭用フィルター濾材およびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 高融点合成樹脂を芯成分とし、且つ、低融点合成樹脂を鞘成分とする複合繊維と活性炭素繊維を必須成分とし、これらの繊維を含有する水性スラリーを湿式抄紙法により抄紙し、鞘成分の融点より高く芯成分の融点より低い温度で乾燥し、活性炭素繊維と複合繊維を融着させた後、得られたシートを乾燥温度より高く、複合繊維の芯成分の融点より低い温度で熱処理する工程を経て得られたフィルター濾材であって、シート重量に対し活性炭素繊維を50〜97重量%含有し、坪量50〜300g/m2の範囲で密度が0.08g/cm3以下である脱臭用フィルター濾材。
【請求項2】 潜在捲縮性繊維、高収縮性繊維、顕在捲縮繊維、異形断面繊維から選ばれた1種以上の繊維を含有する請求項1記載の脱臭用フィルター濾材。
【請求項3】 高融点合成樹脂を芯成分とし、且つ、低融点合成樹脂を鞘成分とする複合繊維と活性炭素繊維を必須成分とし、これらの繊維を含有する水性スラリーを湿式抄紙法により抄紙し、鞘成分の融点より高く芯成分の融点より低い温度で乾燥し、活性炭素繊維と複合繊維を融着させた後、得られたシートを乾燥温度より高く、複合繊維の芯成分の融点より低い温度で熱処理することを特徴とする脱臭用フィルター濾材の製造法。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は湿式抄紙法を用い抄紙した、活性炭素繊維を特定量含有する、低密度の通気性の良いシートで、脱臭を目的としたフィルター濾材として利用できる。またその製造法に関するものである。
[従来の技術]
近年、悪臭や有機溶剤等の有毒ガスや粉塵等の浮遊微小粒子が公害問題として論議される場が多くなってきている。
微小粒子の除去に関しては、活性炭フィルターとは別に微小粒子除去用のフィルターを用いる場合や活性炭フィルターと微小粒子除去フィルターを組合せ二次加工したフィルターを用いる場合がある。
有毒ガスを防ぐ手だてとして、吸着性物質、特に活性炭が利用されており、微粒子除去用のフィルターとは別に用いる活性炭フィルターに要求される性能は吸着力が大きく、吸着速度が速く、圧力損失が低いことである。
活性炭素繊維はガス吸着力が大きく、吸着速度が極めて速い等の理由から、急速に展開が図られている。
活性炭素繊維をフィルターとして用いる場合、シート化しもちいられている。活性炭素繊維をシート化するには、乾式法と湿式法があるが、乾式法を用い得られたシートは通気性は良いものの、シートの地合が悪く、また、活性炭素繊維を開繊する工程で繊維が折れて、活性炭素繊維の歩留まりが悪くなり、不経済である。
湿式法を用い抄紙したシートは、シートが均一で地合が良好である。また、活性炭素繊維の歩留まりが良いことが上げられる。しかしながら、従来の方法では、シートの通気性が悪く、脱臭用フィルター濾材としては不適当であった。
また活性炭素繊維には自着性がないため、バインダーが必要である。活性炭素繊維のバインダーとしては種々の溶液型やエマルジョン型の液状バインダーおよび繊維状バインダーが一般的である。
液状バインダーの使用は、活性炭素繊維の細孔を塞ぎ吸着能力を低下させるため好ましくない。
繊維状バインダーを使用した場合は、従来の方法では活性炭素繊維の脱落を防止し、充分な強度をもったシートを得るためには多量の繊維状バインダーを必要としシート内の活性炭素繊維の含有量を低下させる。バインダーの使用量を減少させるためセルロース系のパルプ繊維がバインダーとしてよく用いられているが、シート密度が大きくなり、通気性が悪くなることは避けられないだけでなく、シートが可燃性となり好ましくない。
[発明が解決しようとする課題]
本発明は、上記従来の問題点を解決するものであり、活性炭素繊維と、高融点合成樹脂を芯成分としかつ低融点合成樹脂を鞘成分とする複合繊維を用い、湿式抄紙法により、通気性の良い脱臭用フィルター濾材を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段]
本発明者は前記の課題を解決するため鋭意研究を行った。
従来、熱融着性繊維を用いたシートは強度アップを図る目的で、抄紙乾燥後、熱カレンダーあるいは熱処理を行うが、本発明では熱処理温度と方法を特定の範囲で行った。その結果、活性炭素繊維、高融点合成樹脂を芯成分としかつ低融点合成樹脂を鞘成分とする複合繊維を必須成分とし、これらの繊維を含有する水性スラリーを抄紙し、鞘成分の融点より高く芯成分の融点より低い温度で乾燥し、活性炭素繊維と複合繊維を融着させたのち、得られたシートを乾燥温度より高く、複合繊維の芯成分の融点より低い温度で熱処理する工程を経て得られるシートが強度アップしているだけでなく、シート密度が大幅に低下し、同時に優れた通気性を持つという予想外の効果を見い出した。またさらに潜在捲縮性繊維、高収縮性繊維、顕在捲縮繊維、異形断面繊維から選ばれた1種類以上の繊維を含有し、同様の熱処理を行うことでも、強度アップした通気性のよいシートが得られることが見い出された。さらに、熱処理を行うことで、抄紙時に用いられる水に含まれ活性炭素繊維に吸着した不純物が除かれシートに含有される活性炭素繊維の有効比表面積が増加するという効果を見い出した。
これらの結果から湿式法で得られるこれらのシートの密度を0.08g/cm3以下とすることで、湿式法の利点である歩留まりの高さ、シートの均一性を損なうことなく、通気性の高い活性炭素繊維シートが見いだされた。
本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。
高融点合成樹脂を芯成分とし、且つ、低融点合成樹脂を鞘成分とする複合繊維と活性炭素繊維を必須成分とし、これらの繊維を含有する水性スラリーを湿式抄紙法により抄紙し、鞘成分の融点より高く芯成分の融点より低い温度で乾燥し、活性炭素繊維と複合繊維を融着させた後、得られたシートを乾燥温度より高く、複合繊維の芯成分の融点より低い温度で熱処理する工程を経て得られたフィルター濾材であって、シート重量に対し活性炭素繊維を50〜97重量%含有し、坪量50〜300g/m2の範囲で密度が0.08g/cm3以下である脱臭用フィルター濾材である。さらに上記配合に潜在捲縮性繊維、高収縮性繊維、顕在捲縮繊維、異形断面繊維から選ばれた1種類以上の繊維を含有する脱臭用フィルター濾材である。さらに、上記の脱臭用フィルター濾材の製造法に関するものである。
以下本発明の詳細な説明を行う。
本発明で用いられる活性炭素繊維は目的に応じて選択でき、水に分散するものであればよいが、比表面積は濾材の脱臭性能を高度に保つため500m2/g以上のものが好ましい。水に分散しにくい場合は粘剤や分散剤を適宜添加し攪拌すればよい。平均繊維長は3mm〜20mmで、好ましくは5mm〜15mmである。3mmより短いとシートが緻密になりシートの通気性が低下し活性炭素繊維の脱落が生じ、20mmより長いと水中での分散が悪くなり、均一で地合のよいシートが得られない。平均繊維径は5μm〜30μmで、好ましくは10μm以上である。5μmより細いとシートが緻密になりシートの通気性が低下し、30μmより太いとワイヤーからのピックアップが困難で均一で地合のよいシート(濾材)が得られない。
本発明で用いられる複合繊維としては芯成分にはポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド等の各種合成樹脂が使用され、鞘成分には芯成分の合成樹脂より少なくとも40℃以下の融点を持つものが望ましい。またこれら複合繊維は、ストレートあるいは捲縮形状であっても差し仕えはない。あるいは加熱することにより捲縮を発現するものであってもよい。
複合繊維の平均繊度は15デニール以下が好ましい。15デニールを越えるとシート内の複合繊維本数が少なくなり、結合力が弱く、複合繊維の添加量を増やす必要があり、活性炭素繊維の含有量が減少するため好ましくない。平均繊維長は3mm〜20mmで、好ましくは5mm〜15mmである。3mmより短いとシートが緻密になりシートの通気性が低下し活性炭素繊維の脱落が生じ、20mmより長いと水中での分散が悪くなり、均一で地合のよいシート(濾材)が得られない。
活性炭素繊維/複合繊維の配合比は97/3〜50/50である。すなわち、複合繊維の配合量は脱臭用フィルター濾材重量に対し3重量%〜50重量%で、さらに好ましくは5重量%〜30重量%である。3重量%より少ないと濾材の強度は弱く、50重量%より多いと溶融した樹脂で活性炭素繊維の細孔が塞がれ比表面積が減少し、吸着性能の低下をもたらす。
次に本発明の濾材の製造方法を具体的に示す。まず上記の活性炭素繊維と複合繊維を水中に均一に混合分散し、通常の湿式抄紙機で抄紙、乾燥する。乾燥はシリンダードライヤーやエアードライヤーを用いることができる。乾燥温度は複合繊維の鞘成分の融点より高く、芯成分の融点より低い温度で行う。
次に得られたシートを乾燥温度より高く、複合繊維の鞘成分の融点より低い温度で熱処理を行う。熱処理はヤンキードライヤーやエアードライヤーを用いることができるが、エアードライヤーを用いるのが好ましい。エアードライアーの風速は3m/秒〜20m/秒の範囲で用いることができる。シートのばらつきを抑えるため上からの風速を強めで行うのが好ましい。ヤンキードライヤーを用いる場合はシートの厚み方向になるべく荷重がかからないよう、シートのテンションに留意する必要がある。
また、本発明は上記のシートにさらに潜在捲縮性繊維、高収縮性繊維、顕在捲縮繊維、異形断面繊維から選ばれた1種類以上の繊維を含有させることにおいても達成することができる。
本発明で用いる潜在捲縮繊維とは特開平2-91217号公報、特開平2-84512号公報、特開平2-53916号公報、特開平2-68311号公報、特開平1-321916号公報に例示されているように、異なる2成分が平行あるいは偏芯的に複合してなるもので、加熱乾燥あるいは熱処理により、捲縮を発現あるいは捲縮数を増加する繊維を言う。
本発明で用いる高収縮性繊維とは、乾燥あるいは加熱による収縮率が30%以上のものを言う。
捲縮や収縮の発現温度はシートの乾燥温度より高いことが好ましく、ドライヤーでの熱処理温度より低いこと、複合繊維の芯成分の融点より低いことが必要とされる。
本発明で用いる顕在捲縮繊維とは、自然に或は機械的に捲縮が与えられており、分散、抄紙する以前から捲縮しているものを言う。
本発明で用いる異形断面繊維とは、繊維断面がいわゆる円形、楕円形を有しない繊維である。例えばT型、Y型、U型、星型等の断面を有するものであるが、断面形状に関してはこの限りではない。
上記の潜在捲縮性繊維、高収縮性繊維、顕在捲縮繊維、異形断面繊維の平均繊度は15デニール以下が好ましいが、この限りではない。平均繊維長は3mm〜20mmで、好ましくは5mm〜15mmである。3mmより短いとシートが緻密になり濾材の通気性が低下し好ましくない。20mmより長いと水中での分散が悪くなり、均一で地合のよいシート(濾材)が得られない。
これらの繊維の濾材内の含有量はシート重量に対し、1〜48重量%が好ましく、さらに好ましくは3〜40重量%である。1重量%未満であると繊維を新たに混合した効果は少ない。48重量%を超えるとシート強度を充分に維持できる範囲では活性炭素繊維の含有量が少なくなり、好ましくない。これらの繊維が含有されていても、活性炭素繊維の濾材内での含有量は変わらない。しかし、複合繊維の量が同じ場合シート強度がアップするので、複合繊維の含有量を減じることが可能である。すなわち、濾材重量に対し、活性炭素繊維は50〜97重量%、複合繊維は2〜49重量%である。
また、複合繊維、潜在捲縮性繊維、高収縮性繊維、顕在捲縮繊維、異形断面繊維は、それぞれ単独あるいは二種類以上の特徴を合わせ持ったものであってもよく、また二種類以上の繊維を混合し用いることも可能である。
この濾材も先に述べた濾材と同様の方法で製造することができる。すなわち活性炭素繊維と複合繊維、さらに潜在捲縮性繊維、高収縮性繊維、顕在捲縮繊維、異形断面繊維から選ばれた一種類以上の繊維を水中に均一に混合分散し、通常の湿式抄紙機で抄紙し、複合繊維の鞘成分の融点より高く、芯成分の融点より低い温度で乾燥融着を行いシートを得ることができる。得られたシートをヤンキードライヤーやエアードライヤー等を用い熱処理を行う。熱処理温度は複合繊維の鞘成分の融点より低く、シート形成温度より低い温度、かつ捲縮あるいは収縮が発現する温度以上で熱処理を行うことで、本発明の濾材が得られる。
以上の濾材の坪量は、50〜300g/m2が好ましい。50g/m2未満では活性炭素繊維の量が少なくなり、好ましくない。300g/m2を超えると抄紙後の乾燥が困難である。また、濾材の厚みが厚くなり加工しづらくなる。
本発明の脱臭用フィルター濾材は必要であれば、溌水剤をスプレー、塗布、含浸し、乾燥することにより、溌水加工してもよい。また、サイズ剤をスラリーに混合し、抄紙してもよい。
また本発明の濾材は必要であれば、他の天然繊維、合成繊維、無機繊維を混合し、抄紙することも可能である。また、無機填料を混合し、抄紙することも可能である。さらに、天然・化学消臭剤、天然・合成香料を含有させることも可能である。ただし、これらの物質を含有量が本発明の濾材の性能を阻害する範囲であってはならない。
本発明は濾材は必要であれば、裏打ち材を接着あるいは交絡することも可能である。裏打ち材は通気性の良いものが好ましい。接着方法は市販の接着剤を使用しても良いし、裏打ち材が熱溶融性であれば熱融着してもよい。交絡方法としてはニードルパンチ、ウォータージェットにより行うことが効果的である。特に除塵機能を付与する目的で本発明のシートに電石不織布や中性能、高性能のフィルター等の濾材を組み合わせることは効果的である。
本発明の濾材はカッター、スリッター等で容易に切断加工可能でユニットなどに組み込み、フィルターとして使用可能である。また、ひだ折り加工、波型加工を施しても破損することがなく、片面あるいは両面段ボールを作成し、波型の稜線方向が、平行または直行するように積層し、あるいは円筒状に巻き付けハニカム構造体とし、フィルターとして使用することも有効である。
なお、濾材の坪量が50〜300g/m2と範囲の特定が有るが、あくまで1度の本発明の製造工程で製造される範囲である。濾材を加工後これを積層し、もち用いることに何等制限はない。
[作用]
本発明の脱臭用フィルター濾材は、活性炭素繊維とバインダーとして複合繊維を含有し、特定の熱処理が行われた通気性の極めて高い濾材である。さらに、潜在捲縮性繊維、高収縮性繊維、顕在捲縮繊維、異形断面繊維から選ばれた1種類以上の繊維を含有させることで、さらに強度の大きい、通気性の高い濾材として有効に作用する。
[実施例]
以下に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
実施例において記載の部、%はすべて重量部、重量%によるものである。
実施例1〜3
活性炭素繊維(アドールA-10、繊維長6m、比表面積1000m2/g、アドール社製)を水中に添加し、0.3%濃度に調製し、SV型往復反転式攪拌機(島崎製作所製、アジター)で分散後、複合繊維として融着温度110℃の芯鞘タイプのポリエステルバインダー繊維(メルティー4080、2d×5mm、ユニチカ社製)をアジターで攪拌しながら添加混合した。このとき活性炭素繊維/ポリエステルバインダー繊維の混合比を90/10(実施例1)、80/20(実施例2)、60/40(実施例3)の3水準調製した。ついで該スラリーに水を加え各々0.1%に希釈し、乾燥重量で200g/m2のシートを角型手抄装置(金網80メッシュ-金網寸法25cm×25cm)で抄紙後、プレス、110℃でシリンダードライヤーを用い乾燥した。その後、エアードライヤーを190℃に設定し、風速5m/sで熱処理を1分間行い脱臭用フィルター濾材を得た。
実施例4
実施例2と同じ方法で坪量70g/m2の脱臭用フィルター濾材を得た。
比較例1
実施例2と同様の方法で濾材を作製したが、シリンダードライヤーの乾燥のみ(110℃)を行い、熱処理は行わなかった。
比較例2
比較例1と同様の方法で、シート乾燥を190℃で行った。
実施例5
実施例2と同じ方法で濾材を作製した。但し、複合繊維(バインダー繊維)は芯がポリプロピレン、鞘がポリオレフィンの繊維(NBF繊維、Eタイプ、鞘成分の融点100℃、2d×5mm、大和紡績社製)をもちい、エアドライヤー温度は170℃で行った。
比較例3
実施例5と同様の方法で濾材を作製したが、シリンダードライヤーの乾燥のみ(110℃)を行い、熱処理は行わなかった。
比較例4〜5
乾式活性炭繊維シートの市販品(デキシー、RMS-B040、FMS-B120、ユニチカ社製)の物性を測定した。
以上の結果を表1、2、3に示す。
なお、坪量は絶乾坪量、圧力損失はJIS-B9908の形式1により風速5.3cm/sで測定した。比表面積は窒素吸着法を用いた。



*含有量は活性炭素繊維含有量を示す。
実施例から明らかなように、密度を0.08g/cm3以下の濾材では圧力損失が0.5mmAq以下となり、非常に通気性の高い濾材であることが判る。
一方比較例1〜3の従来の方法で製造した密度が0.08g/cm3を超える濾材では通気性が悪かった。また、従来の方法で見られるように、シリンダードライヤーのみで乾燥しても高温(190℃)で乾燥すると、厚みが薄くなり、密度が低下し、通気性が悪くなるだけでなく、バインダー繊維と活性炭素繊維に接触した、バインダー繊維の樹脂分が溶融し、細孔を塞ぎ比表面積の低下が見られる。低温(110℃)での乾燥ではシート強度が弱いこと、水中の不純物の吸着が原因と考えられる、比表面積の低下が上げられる。実施例の濾材は乾式の市販品と比べても、同等以上の通気性を示す。また、実施例5から判るようにバインダー繊維は、ポリエステル系に限られるものではない。
実施例6
実施例1〜3と同じ方法で活性炭素繊維、ポリエステルバインダー繊維と、さらに潜在捲縮繊維(ポリエステル繊維、2.5d×10mm、帝人社製)(実施例4)を混合し濾材を作製した。活性炭素繊維/ポリエステルバインダー繊維/潜在捲縮繊維の配合比は60/20/20である。
実施例7〜9
実施例6と同じ方法で濾材を作製した。ただし、潜在捲縮繊維のかわりに、高収縮繊維(アクリル繊維、1.5d×10mm、三菱レーヨン社製)(実施例7)、顕在捲縮繊維(ポリエステル繊維、12d×10mm、帝人社製)(実施例8)、Y型繊維(ビニロン繊維、2d×6mm、クラレ社製)(実施例9)を用いた。
比較例6
実施例4と同じ配合で抄紙し、エアドライヤーのみを用い乾燥を行った。乾燥温度は190℃。
比較例7
実施例8と同様の方法で濾材を作製した。ただし、Y型ビニロン繊維の代わりに通常の捲縮を有しないストレートで、断面形状が楕円形で、収縮率が10%未満で、熱処理を行っても捲縮を発現しない2d×6mmのビニロン繊維(クラレ社製)を用いた。
以上の結果を表4、5に示す。


潜在捲縮性繊維、高収縮性繊維、捲縮繊維、異形断面繊維から選ばれた1種類以上の繊維を含有させ、密度を0.08g/cm3以下とすることで本発明の目的とする通気性のよい濾材が得られることが判る。これに対し、比較例のように、乾燥あるいは熱処理工程が1回ではいずれの方法でも、十分な通気性を有する濾材は得られなかった。ストレートの繊維を用いたときも同様であった。
また、活性炭素繊維とバインダー繊維のみの濾材より強度がアップした。
[発明の効果]
本発明の脱臭用フィルター濾材は活性炭素繊維と熱接着性を有する複合繊維を含有し、特定の熱処理を行い得られた濾材である。本発明の濾材は湿式抄紙法により作られるので材料の歩留まりがよく、かつ優れた通気性を有するものである。また、潜在捲縮性繊維、高収縮性繊維、捲縮繊維、異形断面繊維から選ばれた1種類以上の繊維を含有させることで、さらに強度の大きい、通気性の高い脱臭フィルター濾材となる。
 
訂正の要旨 訂正事項a.
明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書第22頁第16〜18行目
「比較例5
実施例4と同じ配合で抄紙し、シート乾燥のみを190℃で行った。」を不明りょうな記載の釈明を目的として削除する。
訂正事項b.
明細書第24頁の表5において、比較例5の列を不明瞭な記載の釈明を目的として削除する。
異議決定日 2001-03-16 
出願番号 特願平2-327045
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B01D)
最終処分 維持  
特許庁審判長 加藤 孔一
特許庁審判官 野田 直人
山田 充
登録日 2000-03-17 
登録番号 特許第3046347号(P3046347)
権利者 三菱製紙株式会社
発明の名称 脱臭用フィルター濾材およびその製造法  

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