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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 A01N 審判 全部申し立て 2項進歩性 A01N 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 A01N |
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管理番号 | 1045035 |
異議申立番号 | 異議2001-70889 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-10-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-03-21 |
確定日 | 2001-08-27 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第3090533号「衣類用防虫殺虫剤組成物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3090533号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)本件発明 特許第3090533号(平成4年3月25日出願、平成12年7月21日特許権の設定の登録)の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 エンペントリンとn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとを含有し、それらの混合割合が重量比で1:1〜100:1である衣類用防虫殺虫剤組成物。」 (以下、本件発明という。) (2)特許異議申立ての理由の概要 (2-1)特許異議申立人アース製薬株式会社は、証拠方法として甲第1号証(特開平3-72409号公報)、甲第2号証(特開昭63-48201号公報)、甲第3号証(特許第2929654号公報)を提出し、(ア)本件請求項1に係る発明は甲第1号証〜甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、(イ)本件特許明細書には記載不備があるから、本件特許は特許法第36条に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものであると主張している。 なお、異議申立人は(イ)について、特許法第36条第3項の規定としているが、本件特許の出願は平成4年であるから、明細書の記載不備に関して拒絶をしなければならない根拠条文となるのは、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項の規定により、平成2年法律第30号附則により改正された特許法第36条第4項又は第5項であるから、異議申立て理由についてはその点について検討する。 (2-2)特許異議申立人鈴木靖幸は、証拠方法として甲第1号証(特開平3-72409号公報)、甲第2号証(「9285の化学商品」(化学工業日報社、昭和60年1月30日発行)p.762〜764)、甲第3号証(特開平2-225403号公報)を提出し、(ウ)本件請求項1に係る発明は甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものであると主張している。 (3)甲号各証に記載された発明 (特許異議申立人アース製薬株式会社の証拠方法) (3-1)甲第1号証(特開平3-72409号公報)には、 「式〔I〕 〔I〕 で示される有効成分化合物と下記群〔II〕より選ばれる一種以上の化合物とを含有することを特徴とする防虫組成物。 2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール) 2,2-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール) 2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ- 5-メチルベンジル)-4-メチルフェニル アクリレート 〔II〕2,4-ジ-tert-ブチルフェニル 3,5-ジ-tert-ブチル-4 -ヒドロキシベンゾエート ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン) セバケート テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4- ヒドロキシフェニル)プロピオナート〕メタン」 (特許請求の範囲第1項)の発明が記載されており、 さらに、「式〔I〕(式略)で示される1-エチニル-2-メチル-2-ペンテニル クリサンテマートは特公昭55-42045号公報に記載の殺虫性化合物で、衣類害虫に対する食害の防止効果に優れることが知られている。」(公報2頁右上欄9〜20行)、「本発明において、式〔I〕で示される有効成分化合物と群〔II〕より選ばれる化合物との混合比は重量比で通常1:1〜100:1であり、好ましくは5:1〜100:1である。」(公報2頁右下欄19行〜3頁左上欄2行)、「本発明組成物は例えば衣類用防虫剤として用いることができる。その場合、本発明組成物をそのまま例えば、洋服タンス、和ダンス、整理ダンスなどの衣類収納家具内に適用することもできるが、通常は適当な担体を用いて例えば板状の形態などの製剤形態に調整して使用する。その際、製剤中に含まれる本発明組成物の含量は通常0.1〜80重量%である。」(公報3頁左下欄5〜12行)、「本発明の防虫組成物は、異臭の発生を確実に防止でき、さらに群〔III〕より選ばれる化合物の添加によって銅変色の防止をも確実にできる優れた組成物である。」(公報5頁右上欄2〜5行)という記載がある。 (3-2)甲第2号証(特開昭63-48201号公報)には、 「殺虫液中に多孔質吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱することにより吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、上記殺虫液として、炭素数12〜18の脂肪族炭化水素に殺虫剤と共に、……2,2-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、……ステアリル-β-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、……からなる群から選ばれた110〜140℃の加熱温度で実質的に揮散しない少なくとも1種の化合物を0.003〜0.1重量%含有させてなる殺虫液を用いると共に、多孔質吸液芯として無機粉体を糊剤で粘結させた多孔質吸液芯を用い、かつ、該吸液芯の上部を110〜140℃の温度に間接加熱することを特徴とする加熱蒸散殺虫方法。」(特許請求の範囲第1項)の発明が記載されており、さらに、 「本発明で用いられる殺虫剤としては、従来より用いられている各種揮散性殺虫剤を用いることができ、ピレスロイド系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤、有機リン系殺虫剤等を挙げることができる。一般に安全性が高いことからピレスロイド系殺虫剤が好適に用いられ、例えば以下の如き殺虫剤である。 …… ○ 1-エチニル-2-メチル-2-ペンテニル シス/トランス-クリサンテマート(一般名ベーパスリン) …… また、殺虫液中の有効殺虫成分の濃度は、0.5重量%以上10重量%以下が良好であり、好ましくは0.5〜8重量%の範囲の濃度で用いる。」(公報4頁右下欄3行〜5頁左下欄17行)、 「本発明で用いられる化合物は110〜140℃の加熱温度で実質的に揮散しない酸化防止剤であり、次の化合物が使用できる。 ○ ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート …… これらの化合物は、単独でも、また2種以上を組み合わせて混合使用することもできる。使用濃度としては0.003〜0.1重量%、好ましくは0.005〜0.05重量%の割合で用いる。添加量が0.003重量%未満の場合には長時間の加熱により揮散量が低下し、一方、0.1重量%を超えると殺虫液の粘度上昇等により、長時間にわたって充分な吸液速度を持続することが困難となる。」(公報5頁左下欄18行〜6頁左上欄20行)という記載もある。 そして、実施例の例16では、A(ステアリル-β-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)0.03重量%とベーパスリン(1-エチニル-2-メチル-2-ペンテニル シス/トランス-クリサンテマート)3重量%の脂肪族飽和炭化水素溶液が具体的に開示されている。 (3-3)甲第3号証(特許第2929654号公報)は、甲第1号証(特開平3-72409号公報)に対応する特許公報であり、式〔I〕(前記式〔I〕と同じ)で示される有効成分化合物に下記群〔II〕(前記式〔II〕と同じ)より選ばれる一種以上の化合物を添加することを特徴とする該有効成分を含有する防虫剤の異臭防止方法に係る発明が記載されている。 (特許異議申立人鈴木靖幸の証拠方法) (3-4)甲第1号証(特開平3-72409号公報)は、特許異議申立人アース製薬株式会社の甲第1号証と同じである(記載された事項は前記(3-1)のとおり)。 (3-5)甲第2号証(「9285の化学商品」(化学工業日報社、昭和60年1月30日発行)p.762〜764)には、プラスチックス用酸化防止剤が記載されており、その中のフェノール系酸化防止剤としてステアリル-β-(3,5-ジ-第三-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-第三-ブチルフェノール)、2,2-メチレン-ビス-(4-エチル-6-第三-ブチルフェノール)が挙げられている。 (3-6)甲第3号証(特開平2-225403号公報)には、 「薬液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に薬液を吸収すると共に、該芯の上部を加熱することにより吸液された薬液を蒸散させる加熱蒸散方法において、トリエチレングリコール-ビス(3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6-ヘキサンジオール-ビス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、2,2-チオ-ジエチレンビス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、N,N'-ビス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルヒドラジン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート及び2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有する吸液芯及び/又は薬液組成物を用いることを特徴とする加熱蒸散方法。」(特許請求の範囲第1項)の発明が記載されており、さらに、 「また、本発明においては、前記した特定の化合物と組み合わせて、経時安定性を主体とし、長期加熱時に揮散又は分解してしまうような他の酸化防止剤を混合使用することもできる。例えば、2,2-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、……ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート……などが挙げられ、これらの酸化防止剤は長期に亘る経時安定性に対し、特に有効となり、長期加熱揮散に対しては本発明の化合物が有効に作用する。」(公報5頁左下欄13行〜6頁右上欄11行)、 「本発明で用いられる殺虫剤としては、従来より用いられている各種揮散性殺虫剤を用いることができ、ピレスロイド系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤、有機リン系殺虫剤等を挙げることができる。一般に安全性が高いことからピレスロイド系殺虫剤が好適に用いられ、例えば以下の如き殺虫剤である。 …… ○ 1-エチニル-2-メチル-2-ペンテニル シス/トランス-クリサンテマート(一般名ベーパスリン) …… また、殺虫液中の有効殺虫成分の濃度は、0.5重量%以上10重量%以下が良好であり、好ましくは0.5〜8重量%の範囲の濃度で用いる。」(公報7頁右下欄13行〜8頁右下欄9行)という記載もされている。 (4)異議申立て理由(ア)について 本件発明と甲第1号証に記載された発明を比較すると、甲第1号証の式〔I〕で示される1-エチニル-2-メチル-2-ペンテニル クリサンテマートは、一般名エムペンスリン、すなわち本件発明のエンペントリンでありるから、いずれも衣類用防虫殺虫組成物の発明において、エンペントリンを防虫殺虫のための有効成分とするものである点で一致し、他の成分として、本件発明がn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを含有しているのに対し、甲第1号証に記載された発明では、 2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール) 2,2-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール) 2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ- 5-メチルベンジル)-4-メチルフェニル アクリレート 2,4-ジ-tert-ブチルフェニル 3,5-ジ-tert-ブチル-4 -ヒドロキシベンゾエート ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン) セバケート テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4- ヒドロキシフェニル)プロピオナート〕メタン」 の6種類の化合物から選ばれるものを含有している点で相違している。 エンペントリンと他の成分との混合割合については、いずれも1:1〜100:1で一致している。 甲第1号証には、上記6種類の化合物は異臭の発生のために用いることが記載されているが、それらに代えて、他の化合物を使用することについて示唆するところはない。 甲第2号証には、加熱蒸散殺虫方法に係る発明が記載されており、それに用いる殺虫液の殺虫成分として、1-エチニル-2-メチル-2-ペンテニル シス/トランス-クリサンテマート(一般名ベーパスリン)が用いられており、これは本件発明のエンペントリンに相当するものである。そして、殺虫液の酸化防止成分として、甲第1号証に記載された発明で用いられている2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)と並列してステアリル-β-(3,5-ジ-第三-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、すなわち、本件発明のn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが使用されることが記載されている。 しかしながら、甲第2号証には、その殺虫方法が衣類の防虫の目的であることについて記載はなく、殺虫液を衣類用の防虫剤として用いるときに問題となる、蒸散した殺虫液が衣類に付着したとき着色を起こさないという課題について考慮はされていない。 そして、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを使用した場合に、酸化防止剤として2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)を使用したとき、蒸散した殺虫液が付着したときに起る着色が起らないということについて記載あるいは示唆はされていない。 一方、甲第1号証では含銅染料による染色部位などにおける変色の防止方法としては酸化防止剤の他にベンゾトリアゾール等の添加を示唆しており、酸化防止剤を6種類のもの以外のものとすることについては教えるところがない。 本件発明は、酸化防止剤として知られている化合物のうち特定のものを選択することにより、防虫液の付着時の変色を防止することができたものであり、そのような発明の構成は甲第1〜2号証に記載された発明から容易に想到するものではないし、その構成に基づく本件発明の効果は甲第1〜2号証の記載から予測することのできるものではない。それは、甲第3号証を考慮に入れても同様である。 よって、本件発明が甲第1号証〜甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明の特許が特許法第29条の規定に違反してされたものとすることはできない。 (5)異議申立て理由(イ)について 異議申立人アース製薬株式会社は、(a)本件発明の実施例1と甲第1号証に記載された発明との差は含浸体を着色させないことのみである、(b)本件発明の組成物をそのまま防虫剤として用いた場合含浸体を着色させない点は問題とならないから甲第1号証に記載された発明と同一の効果を奏する、(c)甲第3号証を参酌すると本願の請求項は白色含浸体の着色防止方法としなければならない、の3つの理由により本件発明の明細書は特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の対応関係が不明瞭であるから、本件発明の明細書には記載不備があるという主張をしている。 しかしながら、本件明細書の発明の詳細な説明には、その特許請求の範囲に記載された発明について、その発明の構成及びその構成に基づく効果が十分に説明されており、その両者に対応関係が不明瞭な点はない。 すなわち、発明の効果を請求項に記載された発明の構成として記載するかどうかは出願人の選択であり、上記(a)(c)はその点から記載不備の理由とはならない。また、溶媒を用いないときも、着色の問題はあると考えられるので(b)の理由による記載不備はない。 よって、本件発明の特許が特許法第36条に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとすることはできない。 (6)異議申立て理由(ウ)について 本件発明と甲第1号証に記載された発明との比較は、前記(4)で述べたとおりである。 その相違点について、異議申立人鈴木靖幸の提出した甲第2〜3号証を検討する。 甲第2号証はプラスチックの酸化防止剤一般に関する文献であり、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートは2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)と同様に酸化防止剤として使用されうることについて示唆はあるものの、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを使用した場合に、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)を使用したとき、蒸散した殺虫液が付着したときに起る着色が起らないということについて記載あるいは示唆はされていない。 甲第3号証に記載された発明は、異議申立人アース製薬株式会社の甲第2号証と同様、加熱蒸散殺虫方法に係るものであり、殺虫成分としてのエンペントリン、酸化防止剤としてのn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートに関する記載はあるが、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを使用した場合に、蒸散した殺虫液が付着したときに起る着色が起らないということについて記載あるいは示唆はされていない。 一方、甲第1号証では含銅染料による染色部位などにおける変色の防止方法としては酸化防止剤の他にベンゾトリアゾール等の添加を示唆しており、酸化防止剤を6種類のもの以外のものとすることについては教えるところがない。 本件発明は、酸化防止剤として知られている化合物のうち特定のものを選択することにより、防虫液の付着時の変色を防止することができたものであり、そのような発明の構成は甲第1〜3号証に記載された発明から容易に想到するものではないし、その構成に基づく本件発明の効果は甲第1〜3号証の記載から予測することのできるものではない。 よって、本件発明が甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明の特許が特許法第29条の規定に違反してされたものとすることはできない。 (7)むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立人の提出した証拠方法及び申し立てた理由によって本件発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-08-01 |
出願番号 | 特願平4-97293 |
審決分類 |
P
1
651・
534-
Y
(A01N)
P 1 651・ 531- Y (A01N) P 1 651・ 121- Y (A01N) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 原 健司 |
特許庁審判長 |
脇村 善一 |
特許庁審判官 |
西川 和子 岩瀬 眞紀子 |
登録日 | 2000-07-21 |
登録番号 | 特許第3090533号(P3090533) |
権利者 | エステー化学株式会社 |
発明の名称 | 衣類用防虫殺虫剤組成物 |
代理人 | 小野 信夫 |
代理人 | 秦 正則 |