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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない E04G 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない E04G |
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管理番号 | 1046418 |
審判番号 | 審判1997-5424 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-07-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1997-04-04 |
確定日 | 1998-03-02 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2076122号発明「コンクリート型枠用軸足被覆スリーブおよびそれを用いたコンクリート打設工法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
I.本件の特許請求の範囲に記載の請求項1、2の発明(以下、本件発明1、2という)は、特許請求の範囲に記載された下記のとおりのものと認める。 「請求項1 コンクリート中に埋め込まれる丸セパの端部に接続ナットを介して連結されてパネル型枠に挿通固定される軸足に外挿されることにより、該軸足へのコンクリートの固着を防止するコンクリート型枠用軸足被覆スリーブであって、 径方向の弾性変形が許容されると共に、軸方向一方の端面が前記接続ナットに当接されて開口が閉塞されることにより、前記軸足のコンクリートに接する外周面を覆うことを特徴とするコンクリート型枠用軸足被覆スリーブ。 請求項2 コンクリート中に埋め込まれる丸セパの両端部に、それぞれ、接続ナットを介して、軸足を螺着せしめて連結すると共に、それら軸足を、それぞれパネル型枠に貫通固定せしめることにより、それら二枚のパネル型枠を、互いに所定間隔を隔てて対抗位置せしめて枠組みし、かかる枠組みされたパネル型枠間にコンクリートを打設せしめた後、前記型枠および前記軸足を、それぞれ取り外すコンクリート打設工法において、 径方向に弾性変形可能な被覆スリーブを、前記軸足に対して外挿し、その軸方向一方の端面を、前記接続ナットに当接させて、開口を閉塞せしめることにより、かかる軸足における少なくとも前記コンクリートに接する面を覆うように装着し、前記コンクリートの打設後、前記軸足の取外しと同時に若しくは該軸足の取外し後に、かかる被覆スリーブを、コンクリートから除去することを特徴とするコンクリート打設工法。 なお、本件明細書及び図面の記載を参酌すると、請求項1に記載の「径方向の弾性変形が許容される」、及び、請求項2に記載の「径方向に弾性変形可能な被覆スリーブ」は、被覆スリーブの材質が弾性変形が可能な合成樹脂材料等からなるもので、径方向からの外力に対して弾性変形が生じることを意味するのではなく、被覆スリーブは、筒状部と脚部とから構成され、該スリーブが軸足に外挿された際、脚部の作用によって、その筒状部が軸足と略同一軸状に保持され、また、脚部を介して、筒状部に拡径力が及ぼされるこよにより、該筒状部が、僅かに拡径変形せしめられることを意味するものと解され、また、請求項1に記載の「軸方向一方の端面が前記接続ナットに当接されて開口が閉塞される」、及び、請求項2に記載の「軸方向一方の端面を、前記接続ナットに当接させて、開口を閉塞せしめる」のうち「開口」とは、該スリーブの内径が軸足の外径より大きいために、該スリーブと軸足との間に生じる開口部を意味するのではなく、被覆スリーブは、筒状部と脚部とから構成されており、脚部外の筒状部の内側に生じる開口部を意味するものと解される(公報第2頁右欄第24行ないし29行目、第3頁右欄第3行ないし7行目、第3頁右欄第13行ないし22行目及び第4頁左欄第24行ないし31行目を参照)。 II.これに対して、請求人は、 (1)本件発明1、2は、甲第2号証、甲第4号証、甲第号5証あるいは甲第6号証記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当する発明であり、もしそうでないとしても、特許法第29条第2項に規定する発明である(以下、「第1の理由という。)か、または、 (2)甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証ないし甲第6号証記載の発明と甲第7号証記載の発明とを組み合わせることにより、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項に規定する発明である(以下、「第2の理由」という。)旨主張している。 III.そこで、まず上記第1の理由について検討する。 請求人の提出した甲第3号証は、いわゆる私人の証明書であり、その記名・押印から、特許法第119条の規定で準用する同法第151条をもって更に準用する民事訴訟法第325条、第326条の規定により真正に成立しているものとは認められるが、甲第3号証のみによって、甲第2号証が1990年2月に印刷されたとしても、本件出願前に頒布されたものであるとは認定できない。そして、この認定を覆すに足る証拠はない。 また、請求人の提出した甲第2号証が本件出願前に頒布されたものであるとしても、以下の理由により、本件特許発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明、ないしは、特許法第29条第2項に規定する発明であるとは認められない。 請求人の提出した甲第2号証の「エスレンTYKフォーム/土木・建築用コンクリート化粧型枠」の第4頁、5.型枠の組立の欄中、エスレンTYKフォームのセパレータ固定方法の説明図の右上の図には、「コンクリート中に埋め込まれるセパレータの端部に六角ジョイントナットを介して連結されて、コンパネに挿通固定される短セパレーターに外挿することにより、該短セパレーターをコンクリートから抜き易くするする短セパレーターを被覆したビニールチューブであって、軸方向一方の端面が前記六角ジョイントナットに当接されており、該短セパレーターのコンクリートに接する外周面を覆う短セパレーター被覆ビニールチューブ、及び、該ビニールチューブを用いることにより、短セパレーターを抜き易くするセパレータ固定方法」が記載されている。 本件発明1(前者)と甲第2号証記載の発明(後者)とを対比判断すると、 後者の「セパレータ」、「六角ジョイントナット」、「コンパネ」「短セパレーター」及び「短セパレーター被覆ビニールチューブ」は、前者の「丸セパ」、「接続ナット」、「パネル型枠」、「軸足」及び「コンクリート型枠用軸足被覆スリーブ」に相当するから、 両者は、 「コンクリート中に埋め込まれる丸セパの端部に接続ナットを介して連結されてパネル型枠に挿通固定される軸足に外挿されることにより、該軸足へのコンクリート型枠用軸足被覆スリーブであって、 軸方向一方の端面が前記接続ナットに当接されており、前記軸足のコンクリートに接する外周面を覆うことを特徴とするコンクリート型枠用軸足被覆スリーブ。」 である点で一致し、 (1)径方向の弾性変形に関して、 前者が、被覆スリーブは、筒状部と脚部とから構成されることにより、該スリーブが軸足に外挿された際、脚部の作用によって、その筒状部が軸足と略同一軸状に保持され、また、脚部を介して、筒状部に拡径力が及ぼされることにより、該筒状部が、僅かに拡径変形せしめられるのに対して、後者は、短セパレーター被覆ビニールチューブが筒状部のみから構成されているため、筒状部に拡径力が及ぼされていない点、 (2)接続ナットに当接されて閉塞される開口に関して、 前者が、被覆スリーブは、筒状部と脚部とから構成されており、脚部外の筒状部の内側に生じる開口部を接続ナットの当接により閉塞されるのに対して、後者は、短セパレーター被覆スリーブの筒状部と軸足との間に開口部がない点、 以上の点で相違しているものと認められる。 相違点(1)について検討する。 後者には、相違点(1)が記載されていないし示唆もされていない。 相違点(2)について検討する。 後者には、相違点(2)が記載されていないし示唆もされていない。 そして、前者は、後者との相違点(1)、(2)を備えることにより後者が奏し得ない「軸足に外挿するという簡単な操作によって、軸足に対するコンクリートの固着を効果的に防止せしめ得ると共に、被覆スリーブそれ自体も、弾性変形が許容されていることによって、コンクリート打設後に容易に取外すことができるのであり、それ故、コンクリート打設後のおける軸足の取外し等の型枠のバラシが容易となるのである。」との効果(公報第5頁左欄第34行ないし右欄第1行目)を奏するものであるから、 本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明、ないしは、特許法第29条第2項に規定する発明であるとは認められない。 次に、本件発明2(前者)と甲第2号証記載の発明(後者)とを対比判断する。 後者の「セパレータ」、「六角ジョイントナット」、「コンパネ」、「短セパレーター」、「短セパレーター被覆ビニールチューブ」及び「セパレータ固定方法」は、前者の「丸セパ」、「接続ナット」、「パネル型枠」、「軸足」、「コンクリート型枠用軸足被覆スリーブ」及び「コンクリート打設工法」に相当するから、 両者は、 「コンクリート中に埋め込まれる丸セパの両端部に、それぞれ、接続ナットを介して、軸足を螺着せしめて連結すると共に、それら軸足を、それぞれパネル型枠に貫通固定せしめることにより、それら二枚のパネル型枠を、互いに所定間隔を隔てて対抗位置せしめて枠組みし、かかる枠組みされたパネル型枠間にコンクリートを打設せしめた後、前記型枠および前記軸足を、それぞれ取り外すコンクリート打設工法において、 被覆スリーブを、前記軸足に対して外挿し、その軸方向一方の端面を、前記接続ナットに当接させることにより、かかる軸足における少なくとも前記コンクリートに接する面を覆うように装着し、前記コンクリートの打設後、前記軸足の取外しと同時に若しくは該軸足の取外し後に、かかる被覆スリーブを、コンクリートから除去することを特徴とするコンクリート打設工法。」 である点で一致し、 (1)被覆スリーブに関して、 前者が、被覆スリーブは、筒状部と脚部とから構成されることにより、該スリーブが軸足に外挿された際、脚部の作用によって、その筒状部が軸足と略同一軸状に保持され、また、脚部を介して、筒状部に拡径力が及ぼされることにより、該筒状部が、僅かに拡径変形せしめられる被覆スリーブであるのに対して、後者は、筒状部のみから構成される被覆スリーブである点、 (2)開口の閉塞の仕方に関して、 前者が、被覆スリーブは、筒状部と脚部とから構成されており、脚部外の筒状部の内側に生じる開口部を接続ナットの当接により閉塞されるのに対して、後者は被覆スリーブの筒状部と軸足との間に開口部がない点、 以上の点で相違しているものと認められる。 相違点(1)について検討する。 後者には、相違点(1)が記載されていないし示唆もされていない。 相違点(2)について検討する。 後者には、相違点(2)が記載されていないし示唆もされていない。 そして、前者は、後者との相違点(1)、(2)を備えることにより後者が奏し得ない上記の効果(公報第5頁左欄第34行ないし右欄第1行目)を奏するものであるから、 本件発明2は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明、ないしは、特許法第29条第2項に規定する発明であるとは認められない。 また、請求人の提出した甲第4号証は、本件出願後に印刷されたものであり、甲第5号証及び甲第6号証は、本件出願前に頒布されたものであるとは認定できず、更に、甲各号証に記載された事項に係る製品が市場に出回っていた事実も認めることもできない。そして、この認定を覆すに足る証拠はない。 一方、請求人の提出した甲第5、6号証が本件出願前に頒布されたものであるとしても、すでに上述した理由により、本件発明1、2は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明、ないしは、特許法第29条第2項に規定する発明であるとは認められない。 IV.つぎに、上記第2の理由について検討する。 甲第7号証には、固定具のコーン22と化粧版の嵌合孔13との間に楔環状の空間が生じてこの空間にコンクリートが流れ込み、成形品の表面にカルデラ状のバリが生じ、これを削除するのに多大な作業時間が必要であるという課題に対して、固定具14の大径側端部にストレート部2を有する裁頭円錐形の合成樹脂製のコーン1と該ストレート部2に可撓性パイプ3を嵌装することにより該課題を解決したものであり、本件特許の課題と相違すると共に、上述した相違点(1)、(2)が記載されていないし、示唆もされていない。このことから、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証ないし甲第6号証記載の発明と甲第7号証記載の発明とを組み合わせることにより、本件発明1、2が容易に発明できたとする請求人の主張は採用できない。 V.したがって、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1997-12-02 |
結審通知日 | 1998-01-06 |
審決日 | 1998-01-13 |
出願番号 | 特願平5-312202 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
Y
(E04G)
P 1 112・ 113- Y (E04G) |
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
佐藤 荘助 |
特許庁審判官 |
田中 英穂 佐田 洋一郎 |
登録日 | 1996-07-25 |
登録番号 | 特許第2076122号(P2076122) |
発明の名称 | コンクリート型枠用軸足被覆スリーブおよびそれを用いたコンクリート打設工法 |
代理人 | 西 孝雄 |
代理人 | 池田 治幸 |
代理人 | 中島 三千雄 |
代理人 | 神戸 典和 |