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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 G06F 審判 全部申し立て 2項進歩性 G06F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G06F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G06F |
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管理番号 | 1046724 |
異議申立番号 | 異議2000-74172 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-02-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-11-15 |
確定日 | 2001-06-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3042599号「印刷装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3042599号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第3042599号の請求項1に係る発明についての出願は、平成8年8月5日に特許出願され、平成12年3月10日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人キャノン株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成13年2月20日に取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年4月26日に特許異議意見書が提出されるとともに訂正請求がされたものである。 2.訂正の適否について 〔2-1〕訂正の内容 特許権者が求めている訂正の内容は次のとおりのものである。 (1) 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の記載 「【請求項1】 少なくとも障害情報を含む通信情報を装置自らネットワーク上の端末へ発信可能な印刷装置において、前記ネットワーク上から前記端末が発信する発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータを受信するネットワークインターフェースと、前記ネットワークインターフェースで受信した前記パケットデータに基づいて前記端末の前記ネットワーク上で稼動しているものの前記発信元アドレス及び前記通信プロトコルを端末稼動情報として読み出すパケット通信監視部と、前記パケット通信監視部で読み出された前記端末稼動情報を保持する通信リストと、装置自ら前記通信情報を発信するときに前記通信リストにおける前記端末稼動情報を参照して前記端末のうちの前記ネットワーク上で稼動しているものに対して前記通信情報を発信するパケット通信制御部とを備えたことを特徴とする印刷装置。」を、 「【請求項1】 少なくとも障害情報を含む通信情報を装置自らネットワーク上の端末へ発信可能な印刷装置において、前記ネットワーク上から前記端末が発信する発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータを受信するネットワークインターフェースと、前記ネットワークインターフェースで受信した前記パケットデータに基づいて前記端末の前記ネットワーク上で稼動しているものの前記発信元アドレス及び前記通信プロトコルを端末稼動情報として読み出すパケット通信監視部と、前記パケット通信監視部で読み出された前記端末稼動情報を一定の時間のみ保持する通信リストと、装置自ら前記通信情報を発信するときに前記通信リストにおける前記端末稼動情報を参照して前記端末のうちの前記通信リストにある発信元アドレスに前記通信情報を発信するパケット通信制御部とを備えたことを特徴とする印刷装置。」と訂正する。 (2) 訂正事項b 特許掲載公報の第2頁左欄第22〜37行目の段落【0006】の記載 「【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明によれば、少なくとも障害情報を含む通信情報を装置自らネットワーク上の端末へ発信可能な印刷装置において、ネットワーク上から端末が発信する発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータを受信するネットワークインターフェースと、ネットワークインターフェースで受信したパケットデータに基づいて端末のネットワーク上で稼動しているものの発信元アドレス及び通信プロトコルを端末稼動情報として読み出すパケット通信監視部と、パケット通信監視部で読み出された端末稼動情報を保持する通信リストと、装置自ら通信情報を発信するときに通信リストにおける端末稼動情報を参照して端末のうちのネットワーク上で稼動しているものに対して通信情報を発信するパケット通信制御部とを備えた印刷装置が得られる。」を、 「【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明によれば、少なくとも障害情報を含む通信情報を装置自らネットワーク上の端末へ発信可能な印刷装置において、ネットワーク上から端末が発信する発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータを受信するネットワークインターフェースと、ネットワークインターフェースで受信したパケットデータに基づいて端末のネットワーク上で稼動しているものの発信元アドレス及び通信プロトコルを端末稼動情報として読み出すパケット通信監視部と、パケット通信監視部で読み出された端末稼動情報を一定の時間のみ保持する通信リストと、装置自ら通信情報を発信するときに通信リストにおける端末稼動情報を参照して前記端末のうちの前記通信リストにある発信元アドレスに通信情報を発信するパケット通信制御部とを備えた印刷装置が得られる。」と訂正する。 〔2-2〕訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項aについて 上記訂正事項aは、パケット通信監視部で読み出された端末稼働情報を一定の時間のみ保持するもののみに限定するとともに、装置自ら通信情報を発信するときにパケット通信制御部が通信情報を発信する相手を通信リストにある発信元アドレスに発信するものとするものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。 また、上記訂正事項aは、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項bについて 上記訂正事項bは、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。 また、上記訂正事項bは、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 〔2-3〕むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する第126条第2、3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立てについて 〔3-1〕申立ての理由の概要 特許異議申立人キャノン株式会社は、甲第1号証(特開平7-152515号公報)を証拠として提出し、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である、もしくは甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29第1項第3号もしくは特許法第29第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1に係る発明の特許は特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである旨、また、本件特許の明細書は記載が不備であり、請求項1に係る特許は特許法第36条第4、6項(異議申立人は第36条第3、4項としているが、第4、6項の誤りであることは明らかである。)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、特許法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである旨、主張する。 〔3-2〕本件発明 上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記2.〔2-1〕(1)訂正事項aを参照。) 〔3-3〕第29条第1項第3号及び第29条第2項 (3-3-1) 甲第1号証 特許異議申立人が証拠として提出した甲第1号証には、次の事項が記載されている。 (i) 「【産業上の利用分野】 本発明は、複数台の外部装置と接続された出力装置における出力方法に関する。」 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 しかし、印刷装置の内部情報が第1の外部装置に返送される前に、第2の外部装置から新たに異なる通信プロトコル、すなわち、異なる情報フォーマットと情報交信方法を用いて印刷情報を入力していた場合、第1の外部装置が要求した印刷装置の内部情報が第2の外部装置に送信されることになる。従って、第2の外部装置に送信する際に用いられた情報フォーマットおよび情報交信方法が、第2の外部装置の用いた情報フォーマットおよび情報交信方法と相違し、第2の外部装置は印刷装置の内部情報を解析することができないという問題点があった。」(段落【0001】、【0004】の記載を参照。) ・・・(中略)・・・ フォーマット制御部21は、入出力制御部211と、コマンド解析部212と、コマンド実行部213と、出力制御部214と、CPU215とを有する。入出力制御部211は、入力処理部2112と、情報フォーマット解析部2113と、出力処理部2111とを有する。入力処理部2112は外部装置グループ1からの印刷情報を双方向通信回線を介して受信するものである。情報フォーマット解析部2113は入力処理部2112で受信した印刷情報を解析して通信プロトコル、すなわち入力した印刷情報に関する情報フォーマットおよび情報交信方法を判別するものである。出力処理部2111は外部装置グループ1にレーザビームプリンタ2の内部情報を返送するものである。」(段落【0009】〜【0012】の記載を参照。) (iii) 「図3は図1に示すフォーマット制御部21による処理手順の一例を示すフローチャートであり、・・・ ステップ101にて、双方向の通信回路である入出力部211の入力処理部2112により、外部装置グループ1からの印刷情報を受信し、CPU215は受信した印刷情報を受信バッファ2122にバッファリングする。ステップ102にて、受信した印刷情報が、外部装置グループ1のいずれの外部装置から送られたものであるかを、入力処理部2112で解析し、外部装置識別子を外部情報保持部2234内のテーブル(図5を参照)に格納する。ついで、ステップ103にて、受信された印刷情報が情報フォーマット解析部2113によりどのような情報フォーマットおよび情報交信方法かを解析し、ステップ104にて、現在の情報フォーマットおよび情報交信方法を外部情報保持部2134内のテーブル(図5を参照)に格納する。情報フォーマットの一例を図9に示す。なお、図9に示すタイプは、情報フォーマットおよび情報交信方法を示す。 ステップ105にて、取り込んだコマンドが描画処理関係のコマンドであるか否かをCPOU215は、印刷情報処理部2121により判定する。判定した結果、肯定判定された場合は、ステップ106に移行し、ステップ106にて、描画コマンドに従ってビットマップに対して描画処理を行い、その後、ステップ101に戻る。他方、ステップ105にて否定判定された場合は、ステップ107に移行する。 ステップ107にて、取り込んだコマンドがステータス要求コマンドであるか否かを判定する。ここで、ステータス要求コマンドとは、ステータス要求削除コマンドが発行されるまで、コマンドで指定された一定時間ごとに、レーザビームプリンタ2の内部情報を外部装置に返送することを要求するコマンドをいう。ステータス要求コマンドの一例を図7に示す。図7において、ESCはエスケープコードを表し、STSはステータスを、10は10秒を、¥は終りを表す。ステップ107にて判定した結果、肯定判定された場合は、ステップ108に移行する。ステップ108にて、外部情報保持部2134のテーブルから、情報フォーマットおよび情報交信手段と、外部装置識別子を読み出し、内部情報処理部2133内のステータス返送方法テーブル(図6を参照)に登録する。登録終了後、ステップ101に戻る。他方、ステップ107にて否定判定された場合は、ステップ109に移行する。」(段落【0023】〜【0026】の記載を参照。) (iv) 「ステップ201にて、内部情報処理部2133内のステータス返送処理テーブル(図6を参照)にステータス要求が登録されているか否かを判定し、判定した結果、否定判定された場合は、ステップ201に戻る。他方、肯定判定された場合は、ステップ202に移行し、ステップ202にて、登録された時間が経過したか否かを判定する。図7に示すステータス要求コマンドである場合は、10秒が経過したか否かを判定する。判定した結果、否定判定された場合は、ステップ201に戻る。他方、肯定判定された場合は、ステップ203に移行する。ステップ203にて、レーザビームプリンタ2の内部情報を、返送するステータスとして構築する。ついで、ステップ204にて、情報フォーマットおよび交信方法を出力処理部2111に指示し、出力処理部2111において、登録されている情報フォーマットに変換し、ステップ205にて、レーザビームプリンタ2の内部情報を、出力処理部2111により、登録されている外部装置識別子に基づき、ステータス要求コマンドを発行した外部装置に返送する。その後、ステップ201に戻る。 本実施例では、ステータス返送処理テーブルに登録可能なステータス要求が単一である例を説明したが、図10に示すように、登録可能なステータス返送処理テーブルを複数持って、複数の外部装置からのステータス要求に応じるようにすることもできる。」(段落【0031】〜【0032】の記載を参照。) (v) 「<第2実施例> 本実施例は第1実施例との比較でいえば、外部装置に返送される内容が相違する。すなわち、第1実施例では、ステータス要求コマンドが取り込まれた場合、ステータス要求削除コマンドが発行されるまで、ステータス要求コマンドで指定された時間ごとに繰り返し外部装置にレーザビームプリンタの内部情報を返送するようにした。これに対して、第2実施例では、図11に示すように構成し、所定のコマンドが取り込まれた場合、内部情報処理部2136が常に出力処理部2142の状態を監視し、エンジン制御部22の異常や、用紙カセット1008の用紙切れが監視された場合、その旨を任意のタイミングで外部装置に対して通知するようにした。」(段落【0034】の記載を参照。) (3-3-2) 対比・判断 本件発明と上記甲第1号証に記載されたものとを対比する。甲第1号証に記載されたものは、上記記載事項(i)に示されているように、印刷装置の内部情報が第1の外部装置に返送される前に、第2の外部装置から新たに異なる通信プロトコル、すなわち、異なる情報フォーマットと情報交信方法を用いて印刷情報を入力していた場合、第1の外部装置が要求した印刷装置の内部情報が第2の外部装置に送信されることになる。従って、第2の外部装置に送信する際に用いられた情報フォーマットおよび情報交信方法が、第2の外部装置の用いた情報フォーマットおよび情報交信方法と相違し、第2の外部装置は印刷装置の内部情報を解析することができないという課題を解決しようとするものである。これに対し、本件発明は、ネットワークを介して印刷装置と接続された複数のコンピュータで印刷装置を共有する印刷システムにおいて、印刷装置に障害が発生した場合などに、印刷装置のプリンタから自発的に情報を発信する際、同報通信を用いると、送信先のコンピュータが起動されていなかったり、送信先が公衆回線等を経由した遠隔地であると、印刷装置において通知先のコンピュータが何処に存在し、又如何なる状態にあるのか判らないまま通知するときがあり、こうした場合に印刷装置からの送信が公衆回線を接続状態にして回線を無駄に接続してしまうことがあるという課題を解決しようとするものであり、甲第1号証に記載されたものとは解決しようとする課題が全く異なるものである。甲第1号証の記載事項(iii)には、レーザビームプリンタがステータス要求コマンドを受信すると、ステータス要求削除コマンドが発行されるまで一定時間ごとに自動的に、内部情報を外部装置に送信することが、同記載事項(v)には、プリンタは所定のコマンドが取り込まれると、エンジン制御部の異常や用紙切れが監視された場合、その旨を外部装置に通知することが、それぞれ示されており、プリンタのエンジン制御部の異常や用紙切れを障害情報として外部装置に通知するものであるとしても、その通知は外部装置からステータス要求コマンドを受信したときに行うものであり、本件発明のように印刷装置自らネットワーク上の端末に障害情報を含む通信情報を発信するものとは異なるものである。甲第1号証の記載事項(ii)、(iii)には、入出力部の入力処理部が外部装置から印刷情報を受信すると、外部装置識別子と通信プロトコルである情報フォーマット及び情報交信方法が求められることが示されており、甲第1号証の記載事項(iv)には、内部情報を登録されている情報フォーマットに変換し、登録されている外部装置識別子に基づき、内部情報をステータス要求コマンドを発行した外部装置に送信することが示されているものの、情報フォーマット及び情報交信方法を外部情報保持部2134内のテーブルに一定の時間のみ保持することは何ら示されていない。本件発明は、通信リストがパケット通信監視部で読み出された端末稼働情報を一定の時間のみ保持するものであり、このことにより、適切な端末に情報を送信して回線の不要な使用や接続を回避することができ、無駄なく回線を利用し得るものである。 したがって、本件発明は、上記甲第1号証に記載された発明であるとすることはできず、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 〔3-4〕第36条 異議申立人は、本件発明の「前記ネットワークインターフェースで受信した前記パケットデータに基づいて前記端末の前記ネットワーク上で稼動しているものの前記発信元アドレス及び前記通信プロトコルを端末稼動情報として読み出すパケット通信監視部」、及び、「前記パケット通信監視部で読み出された前記端末稼動情報を保持する通信リストと、装置自ら前記通信情報を発信するときに前記通信リストにおける前記端末稼動情報を参照して前記端末のうちの前記ネットワーク上で稼動しているものに対して前記通信情報を発信するパケット通信制御部」に関し、当業者が実施することが可能な程度に記載されていない旨主張する。 そこで検討する。本件発明のパケット通信監視部に関する記載はそれ自体明りょうでないとはいえず、端末稼働情報はネットワークインターフェースで受信したパケットデータに基づいて読み出されるものであることは明らかである。このことに関し、本件明細書の段落【0015】には、「複数のコンピュータ6の特定のものからネットワーク5を介してパケットデータが印刷装置7に受信される場合・・・」と記載され、段落【0016】には、「ここでは、コンピュータ6の特定のものからネットワーク5を介して発信されたパケットデータが印刷装置7に受信されると、そのパケットデータはネットワークインターフェース1に送出された後、パケット通信部2に引き渡される。」と記載され、段落【0017】には、「パケット通信部2において、パケット通信監視部21では入力されたパケットデータが何処のコンピュータから発信されたものか、如何なる通信プロトコルかを解析し、そのコンピュータの送信元(発信元)アドレス,通信プロトコルを読み出し(ステップS1)、通信リスト制御部22に引き渡す。通信リスト制御部22では、送信元アドレス,通信プロトコルを記憶装置3の通信リスト31へ保存(ステップS2)する。この処理は、送信元のコンピュータがネットワーク5上で稼働していることを記憶するためのものである。通信リスト31は、通信リスト制御部22のタイマ221で制御され、その時間がプログラムで任意に設定できるものとなっている。このタイマ221によりネットワーク5上の通信状況が一定の時間で定期的に更新される。」と記載されており、当業者が実施することができる程度に記載されていないとすることはできない。また、パケット通信制御部については、「装置自ら前記通信情報を発信するときに前記通信リストにおける前記端末稼動情報を参照して前記端末のうちの前記通信リストにある発信元アドレスに前記通信情報を発信するパケット通信制御部」と訂正されたことにより、装置自ら通信情報を発信するときにパケット通信制御部が通信情報を発信する相手を通信リストにある発信元アドレスとすることが明確になった。 したがって、本件明細書の記載に不備があるとすることはできない。 〔3-5〕むすび 以上のとおりであるから、本件の請求項1に係る発明の特許は、特許異議申立ての理由及び証拠によっては取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 印刷装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも障害情報を含む通信情報を装置自らネットワーク上の端末へ発信可能な印刷装置において、前記ネットワーク上から前記端末が発信する発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータを受信するネットワークインターフェースと、前記ネットワークインターフェースで受信した前記パケットデータに基づいて前記端末の前記ネットワーク上で稼動しているものの前記発信元アドレス及び前記通信プロトコルを端末稼動情報として読み出すパケット通信監視部と、前記パケット通信監視部で読み出された前記端末稼動情報を一定の時間のみ保持する通信リストと、装置自ら前記通信情報を発信するときに前記通信リストにおける前記端末稼動情報を参照して前記端末のうちの前記通信リストにある発信元アドレスに前記通信情報を発信するパケット通信制御部とを備えたことを特徴とする印刷装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、主として障害情報を含む通信情報を装置自らネットワーク上の端末へ発信可能な印刷装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、この種の印刷装置は、コンピュータと直接ケーブルで接続されて利用されることがあるが、近年ではネットワークを介して複数のコンピュータと接続され、複数のコンピュータから直接印刷装置ヘデータを送って印刷装置を共有するような印刷システムも開発されている。 【0003】このような印刷システムでは、印刷装置をネットワークを介して複数のコンピュータで共有しているため、各コンピュータに印刷装置と通信するためのソフトウェアを導入することによって印刷装置の状態や印刷履歴を確認できる機能が構築されている。例えば特開平7-73128号公報記載の情報出力装置には、ネットワーク上に存在する複数のコンピュータからの印刷要求をコンピュータ毎に計数する技術が開示されており、ここでは更に印刷装置に障害が発生した場合にコンピュータ側に通知する技術も開示されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上述した印刷システム(情報出力装置)において、印刷装置のプリンタから自発的に情報を発信する際、同報通信を用いると、送信先のコンピュータが起動されていなかったり、ネットワークが公衆回線等を経由して遠隔地のネットワークに接続されていると、印刷装置からの送信が公衆回線を接続状態にして回線を無駄に接続してしまうことがある。 【0005】本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、適切な端末に情報を送信することで回線の不要な使用や接続を回避でき、無駄無く回線を利用し得る印刷装置を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明によれば、少なくとも障害情報を含む通信情報を装置自らネットワーク上の端末へ発信可能な印刷装置において、ネットワーク上から端末が発信する発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータを受信するネットワークインターフェースと、ネットワークインターフェースで受信したパケットデータに基づいて端末のネットワーク上で稼動しているものの発信元アドレス及び通信プロトコルを端末稼動情報として読み出すパケット通信監視部と、パケット通信監視部で読み出された端末稼動情報を一定の時間のみ保持する通信リストと、装置自ら通信情報を発信するときに通信リストにおける端末稼動情報を参照して前記端末のうちの前記通信リストにある発信元アドレスに通信情報を発信するパケット通信制御部とを備えた印刷装置が得られる。 【0007】 【発明の実施の形態】以下に実施例を挙げ、本発明の印刷装置及びそれを用いた印刷システムについて、図面を参照して詳細に説明する。 【0008】図1は、本発明の一実施例に係る印刷装置を含む印刷システムの基本構成を示したブロック図である。 【0009】この印刷システムは、ネットワーク5を介して複数のコンピュータ(端末)6及び印刷装置7が接続されて成っており、複数のコンピュータ6は発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータをネットワーク5を介して発信可能な構成となっている。 【0010】ここでの印刷装置7は、少なくとも障害情報を含む通信情報を装置自らネットワーク5上の複数のコンピュータ6へ発信可能なものであり、複数のコンピュータ6から発信された発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータをネットワーク5を介して受信するネットワークインターフェース1と、ネットワークインターフェース1で受信したパケットデータに基づいて複数のコンピュータ6のネットワーク5上で稼動しているものの発信元アドレス及び通信プロトコルを端末稼動情報として読み出すパケット通信監視部21と、パケット通信監視部21で読み出された端末稼動情報を保持する通信リスト31と、装置自ら通信情報を発信するときに通信リスト31における端末稼動情報を参照して複数のコンピュータ6のうちのネットワーク5上で稼動しているものに対して通信情報を発信するパケット通信制御部23とを備えている。 【0011】このうち、パケット通信監視部21及びパケット通信制御部23は後述するようにパケット通信部2に備えられ、通信リスト31は記憶部3に備えられる。こうした構成により、パケット通信部2では、ネットワークインターフェース1で受信された発信元アドレス及び通信プロトコルに基づいて複数のコンピュータ6のうちのネットワーク5上で通信稼動するものの端末稼動情報を記憶装置3内に記憶保持させて通信リスト31を作成し、例えば通信情報として障害情報のパケット送信を行うときには、パケット通信制御部23が通信リスト31を参照してネットワーク5上で現在稼動しているコンピュータ6に対して障害情報を通知することができる。 【0012】具体的に言えば、印刷装置7は、複数のコンピュータ6との間でネットワーク5を介してパケットデータを送信及び受信するためのネットワークインターフェース1と、プログラム制御により動作してパケットデータの内容に応じて発信元アドレス及び通信プロトコルに基づく通信リスト31の作成処理,印刷データに関する印刷指示処理,並びに通知要データ又は通信要求データを含む送信データに関する複数のコンピュータ6のうちのネットワーク5上で通信稼働するもののに対する通信リスト31を参照しての送信処理を含む通信処理を行うパケット通信部2と、発信元アドレス及び通信プロトコルを通信リスト31として記憶すると共に、その他の情報を記憶する記憶装置3と、印刷指示に従って印刷を行うプリンタ4とを基本構成として備えている。 【0013】このうち、パケット通信部2は、ネットワークインターフェース1を介して受信されるパケットデータを解析するパケット通信監視部21と、記憶装置3の通信リスト31のデータの制御及び管理を行うと共に、タイマー221により通信リスト31を定期的に管理する通信リスト制御部22と、印刷装置7からパケットを送信するときに通信リスト31のデータ(端末稼動情報)に基づいて通信制御を行うパケット通信制御部23と、受信したパケットデータを処理して印刷データであればプリンタ4へ引き渡すと共に、プリンタ4から送信データがあればそれを受けてパケット通信用のデータを作成するパケットデータ処理部24とを備えている。 【0014】以下は、このような印刷システムにおいて、ネットワーク5にはLAN(イーサネットのローカルアリアネットワーク),通信プロトコルにはTCP/IP,記憶装置3にはRAM(ランダムアクセスメモリ)を用いるものとしてその動作を説明する。 【0015】先ず、複数のコンピュータ6の特定のものからネットワーク5を介してパケットデータが印刷装置7に受信される場合の印刷装置7における動作処理を図2に示すフローチャートを参照して説明する。 【0016】ここでは、コンピュータ6の特定のものからネットワーク5を介して発信されたパケットデータが印刷装置7に受信されると、そのパケットデータはネットワークインターフェース1に送出された後、パケット通信部2に引き渡される。 【0017】パケット通信部2において、パケット通信監視部21では入力されたパケットデータが何処のコンピュータから発信されたものか、如何なる通信プロトコルかを解析し、そのコンピュータの送信元(発信元)アドレス,通信プロトコルを読み出し(ステップS1)、通信リスト制御部22に引き渡す。通信リスト制御部22では、送信元アドレス,通信プロトコルを記憶装置3の通信リスト31へ保存(ステップS2)する。この処理は、送信元のコンピュータがネットワーク5上で稼働していることを記憶するためのものである。通信リスト31は、通信リスト制御部22のタイマ221で制御され、その時間がプログラムで任意に設定できるものとなっている。このタイマ221によりネットワーク5上の通信状況が一定の時間で定期的に更新される。 【0018】引き続き、宛先が自分宛てか否かを判定(ステップS3)し、宛先が自分宛てのパケットならばパケットデータ処理部24にパケットデータを引き渡し、パケットデータ処理部24ではパケットデータの内容に応じてパケットデータ処理(ステップS4)を行い、印刷データである場合にはプリンタ4に引き渡すための処理を行ってから処理を終了するが、自分宛てのパケットでなければ直ちに処理を終了する。 【0019】次に、印刷装置7からネットワーク5を介して障害情報を発信する場合の印刷装置7における動作処理を図3に示すフローチャートを参照して説明する。 【0020】ここでは、プリンタ4において何らかの障害が発生して通知要データを生じた場合、パケットデータ処理部24がプリンタ4より通知要データを送信データとして受け取り(ステップS1)、パケットデータ作成(ステップS2)を行う。ここで、作成されたパケットデータはパケット通信制御部23に引き渡され、パケット通信制御部23では通信リスト31の確認(ステップS3)を行う。 【0021】引き続き、パケット通信制御部23は通信リスト31に送信元アドレスが有るか否かを判定(ステップS4)し、送信元アドレスが通信リスト31にあれば、通信リスト31内のアドレスとプロトコルとを用いてそれぞれのアドレスに障害通知パケット送信(ステップS5)を行ってから処理を終了する。送信元アドレスが通信リスト31に無ければ送信せずに処理を終了する。 【0022】因みに、通知要データを対象とする動作処理としては、例えばプリンタ4でトナー無し等のエラーが発生して印刷装置7側から複数のコンピュータ6の特定のものにプリンタ4からのエラー情報に基づいてパケットデータを送信する場合等が挙げられる。 【0023】ところで、通信リスト31では、上述したように通信リスト制御部22のタイマ221で時間が0,1の2つに区別され、これらの値によって2つの通信先のリストを切り替え保存することになる。これにより、パケットデータを受信した直後に通信リスト31からパケットデータが消去されないようになる。例えばタイマ221の値を1分間にすることで通信リスト31の1つは1分間おきに更新され、2分間隔で現在ネットワーク5上で動作しているコンピュータのリストが作成されることになる。 【0024】図4は、印刷装置7で受信されて通信リスト31に記憶されるイーサネットパケットデータを例示したもので、同図(a)は時間0の送信元アドレスに関するもの,同図(b)は時間1の送信元アドレスに関するものである。又、図5は印刷装置7により通信されるパケットデータを例示したものである。 【0025】ここでは、パケットタイプが13バイトから14バイトの“0800”で表わされ、0800はプロトコルがIPであることを表わしている。 【0026】時間0の送信元アドレスに関して、送信アドレスは27バイトから30バイトの“7E000108”で、宛先アドレスは31バイトから34バイトの“7E000362”である。又、時間1の送信元アドレスに関して、送信アドレスは“12345678”である。 【0027】印刷装置7におけるパケットデータの受信時には、このような送信アドレス及び通信プロトコルが通信リスト制御部22により通信リスト31に保存される。その後は図2で説明したように、宛先アドレスが自分宛てのアドレスならば、その後にパケットデータ処理部24へ引き渡されるが、宛先アドレスが自分宛てでなければ処理動作はそのまま終了する。 【0028】又、印刷装置7からの障害情報パケットの送信時には、パケット通信制御部23によって送信先であるコンピュータ6の送信元アドレスを通信リスト31から例えば図4(a)に示される”7E000108”を確認したら、プロトコル008を使用してネットワーク5上の該当するコンピュータ6にネットワークインターフェース1を介して障害通知パケットを送信する。引き続いて、他方の通信リスト31を参照し、図4(b)に示される”12345678”の登録を確認したら、プロトコル008を介して送信する。 【0029】 【発明の効果】以上に述べた通り、本発明の印刷装置によれば、ネットワーク上の通信状態を監視し、ネットワーク上で稼働しているコンピュータの発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータを受信解析して記憶することで通信リストを作成し、障害通知パケット送信時に同報通信を使用せず、その通信リストを参照してネットワーク上で稼動しているコンピュータにパケット送信を行うため、適切な端末に情報を送信して回線の不要な使用や接続を回避することができ、無駄無く回線を利用し得るようになる。又、公衆回線等に接続されたネットワークにより複数のコンピュータに接続してなる印刷システムでは、同報通知によるパケット送信が無くなり、不要な接続が無くなるため、接続時にかかる費用を削減できるようになる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例に係る印刷装置を含む印刷システムの基本構成を示したブロック図である。 【図2】図1に示す印刷システムにおいて複数のコンピュータの特定のものからネットワークを介してパケットデータが印刷装置に受信される場合の印刷装置における動作処理を示したフローチャートである。 【図3】図1に示す印刷システムにおいて印刷装置からネットワークを介して障害情報を発信する場合の印刷装置における動作処理を示したフローチャートである。 【図4】図1に示す印刷システムの印刷装置で受信されて通信リストに記憶されるイーサネットパケットデータを例示したもので、(a)は特定時間の送信元アドレスに関するもの,(b)は別な時間の送信元アドレスに関するものである。 【図5】図1に示す印刷システムの印刷装置により通信されるパケットデータを例示したものである。 【符号の説明】 1 ネットワークインターフェース 2 パケット通信部 3 記憶装置 4 プリンタ 5 ネットワーク 6 コンピュータ 7 印刷装置 21 パケット通信監視部 22 通信リスト制御部 23 パケット通信制御部 24 パケットデータ処理部 31 通信リスト 221 タイマ |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の記載 「【請求項1】 少なくとも障害情報を含む通信情報を装置自らネットワーク上の端末へ発信可能な印刷装置において、前記ネットワーク上から前記端末が発信する発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータを受信するネットワークインターフェースと、前記ネットワークインターフェースで受信した前記パケットデータに基づいて前記端末の前記ネットワーク上で稼動しているものの前記発信元アドレス及び前記通信プロトコルを端末稼動情報として読み出すパケット通信監視部と、前記パケット通信監視部で読み出された前記端末稼動情報を保持する通信リストと、装置自ら前記通信情報を発信するときに前記通信リストにおける前記端末稼動情報を参照して前記端末のうちの前記ネットワーク上で稼動しているものに対して前記通信情報を発信するパケット通信制御部とを備えたことを特徴とする印刷装置。」を、 「【請求項1】 少なくとも障害情報を含む通信情報を装置自らネットワーク上の端末へ発信可能な印刷装置において、前記ネットワーク上から前記端末が発信する発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータを受信するネットワークインターフェースと、前記ネットワークインターフェースで受信した前記パケットデータに基づいて前記端末の前記ネットワーク上で稼動しているものの前記発信元アドレス及び前記通信プロトコルを端末稼動情報として読み出すパケット通信監視部と、前記パケット通信監視部で読み出された前記端末稼動情報を一定の時間のみ保持する通信リストと、装置自ら前記通信情報を発信するときに前記通信リストにおける前記端末稼動情報を参照して前記端末のうちの前記通信リストにある発信元アドレスに前記通信情報を発信するパケット通信制御部とを備えたことを特徴とする印刷装置。」と訂正する。 ▲2▼訂正事項b 特許掲載公報の第2頁左欄の第22行から第37行の段落0006の記載 「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明によれば、少なくとも障害情報を含む通信情報を装置自らネットワーク上の端末へ発信可能な印刷装置において、ネットワーク上から端末が発信する発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータを受信するネットワークインターフェースと、ネットワークインターフェースで受信したパケットデータに基づいて端末のネットワーク上で稼動しているものの発信元アドレス及び通信プロトコルを端末稼動情報として読み出すパケット通信監視部と、パケット通信監視部で読み出された端末稼動情報を保持する通信リストと、装置自ら通信情報を発信するときに通信リストにおける端末稼動情報を参照して前記端末のうちの前記ネットワーク上で稼動しているものに対して通信情報を発信するパケット通信制御部とを備えた印刷装置が得られる。」を、 「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明によれば、少なくとも障害情報を含む通信情報を装置自らネットワーク上の端末へ発信可能な印刷装置において、ネットワーク上から端末が発信する発信元アドレス及び通信プロトコルを含むパケットデータを受信するネットワークインターフェースと、ネットワークインターフェースで受信したパケットデータに基づいて端末のネットワーク上で稼動しているものの発信元アドレス及び通信プロトコルを端末稼動情報として読み出すパケット通信監視部と、パケット通信監視部で読み出された端末稼動情報を一定の時間のみ保持する通信リストと、装置自ら通信情報を発信するときに通信リストにおける端末稼動情報を参照して前記端末のうちの前記通信リストにある発信元アドレスに通信情報を発信するパケット通信制御部とを備えた印刷装置が得られる。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-06-01 |
出願番号 | 特願平8-206072 |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YA
(G06F)
P 1 651・ 536- YA (G06F) P 1 651・ 113- YA (G06F) P 1 651・ 121- YA (G06F) |
最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
片岡 栄一 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 今井 義男 |
登録日 | 2000-03-10 |
登録番号 | 特許第3042599号(P3042599) |
権利者 | 日本電気株式会社 |
発明の名称 | 印刷装置 |
代理人 | 小林 将高 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 京本 直樹 |
代理人 | 河合 信明 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 京本 直樹 |
代理人 | 河合 信明 |