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審決分類 審判 審判種別コード:11 1項3号刊行物記載  B44C
管理番号 1047903
審判番号 審判1992-24603  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-08-14 
種別 無効の審決 
審判請求日 1992-12-24 
確定日 2001-10-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第1680962号「転写印刷シート」の特許無効審判事件についてされた平成7年6月28日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成7(行ケ)年第195号、平成9年2月13日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第1680962号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 
理由 1、手続の経緯
本件特許第1680962号に係る出願等についての手続の経緯は次のとおりである。
昭和59.11.30 特許出願(特願昭63-291862号;特願昭 59-254534号出願の分割出願)
平成02.10.25 出願公告(特公平02-48440号公報)
平成04.07.31 設定登録(特許第1680962号)
平成04.12.24 特許無効の請求(平成4年審判第24603号)
平成05.02.03 訂正請求(平成5年審判第1769号)
平成05.11.08 請求公告(特許審判請求公告第772号)
平成07.03.15 審決(訂正認容)
平成07.06.06 訂正の確定登録
平成07.06.20 口頭審理
平成07.06.28 審決(無効請求棄却)
平成07.08.11 出訴(平成7年(行ケ)第195号)
平成09.02.13 判決言渡(審決取消)
平成09.02.26 上告(平成9年(行ツ)第121号)
平成09.09.09 判決言渡(上告棄却)
(年月日については、例えば平成13年7月18日を平成13.07.18のように略記している。)

2、本件発明
本件特許第1680962号に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものである。
「1.離型性を有する剥離シート(A)の離型性保有面に、接着剤による所定のパターンの印刷層(B)を設け、ついで該印刷層(B)上に、前記と実質状同一のパターンを描くようにインクによる単色または多色の印刷層(C)を設け、さらにその印刷層(C)の上から、前記パターンよりも広い面積を覆う剥離可能な保護シート(D)を設けた構成を有する転写印刷シート。」

3、審判請求人の主張
審判請求人は、平成7年6月20日に行われた口頭審理においてした陳述1(口頭審理調書第3頁参照。)によれば、「請求の趣旨および請求の理由は、平成7年4月29日付口頭審理陳述要領書記載のとおりである。」とのことである。
したがって、審判請求人は証拠方法として、
甲第1号証;特公昭38-10663号公報
甲第2号証;実公昭58-35493号公報
甲第5号証;特開昭51-150414号公報
参考資料1;実公昭53-22006号公報
参考資料2:特公昭54-31405号公報
(甲第3号証〜甲第4号証:欠番)
を提示したうえで、以下のとおりの主張をしているものと認められる。

(1)本件発明は「物の発明」であるから、その製造方法は発明の構成要件ではない。現に、本件明細書の発明の詳細な説明には、「本発明の転写印刷シートは、A/B/C/Dの層構成を有するものであり、(中略)通常はAの側から各層を順に形成していくが、最終的にこの層構成が形成されていればよく、その形成順序を限定するものではない」(出願公告公報7欄27行ないし31行)ことが明記されている(もっとも、発明の詳細な説明の上記記載部分は、訂正によって削除されたが、これによって本件発明が「製造方法が限定された物」に変わったわけではない。)。そして、本件明細書には、製造方法を限定することの目的、あるいは、製造方法を限定することによって奏される作用効果は、全く記載されていない。
したがって、被請求人の、「層構成の形成順序に関する記載を含めて、(中略)特許請求の範囲に記載されたとおりのものが本件発明の要旨というべきである。」ということは誤りである。

(2)そして、甲第1号証記載の転写材料は、本件発明の剥離シートAに当たる「挿入用紙」(2頁左欄32行)、本件発明の印刷層Bに当たる「図を覆っている或は図と実質的に符号(注;符合の誤記)している感圧性接着剤」、本件発明の印刷層Cに当たる「印刷インキの図」、本件発明の保護シートDに当たる「担体シート」を具備している。
また、甲第2号証記載の感庄接着転写紙は、本件発明の剥離シートAに当たる「可剥紙5」、本件発明の印刷層Bに当たる「感圧性接着剤層4」、本件発明の印刷層Cに当たる「転写絵柄の印刷層3」、本件発明の保護シートDに当たる「台紙1」を具備している。
さらに、甲第5号証記載の製造方法によって製造された転写ワッペンは、本件発明の剥離シートAに当たる「離型性シート(6)」、本件発明の印刷層Bに当たる「溶着フイルム層(7)」、本件発明の印刷層Cに当たる「装飾層(8)」、本件発明の保護シートDに当たる「転写シート(10)」を具備している。
したがって、甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証に記載されているものは、いずれも本件発明と同一の構成を有するものである。

(3)なお、仮に、層構造の形成順序が本件発明の構成要件であるとしても、甲第5号証記載の転写ワッペンの製造方法は、本件発明の剥離シートAに当たる「離型性シート(6)」、本件発明の印刷層Bに当たる「溶着フイルム層(7)」、本件発明の印刷層Cに当たる「装飾層(8)」、本件発明の保護シートDに当たる「転写シート(10)」を、この順序で形成するものであるから、本件発明の構成と同一であることは明らかである。

4、被請求人の主張
被請求人は、平成7年6月20日に行われた口頭審理においてした陳述1、2(口頭審理調書第3頁参照。)によれば、「答弁の趣旨および答弁の理由は、平成7年5月29日付口頭審理陳述要領書記載のとおりである。但し、同口頭審理陳述要領書第15頁第6行ないし第16頁第18行の主張および乙第4号証、乙第5号証を撤回する。」とのことである。
したがって、無効審判被請求人は、証拠方法として、
乙第1号証;訂正請求書写し(平成5年審判第1769号)
乙第2号証;訂正請求書写し(平成5年審判第1768号)
乙第3号証;特開平2-560号公報
を提示したうえで、以下のとおりの主張をしているものと認められる。

(1)請求人は、本件発明は「物の発明」であるからその製造方法は発明の構成要件ではないと主張する。
しかしながら、特許請求の範囲のカテゴリーを「物」、「方法」あるいは「物を生産する方法」のいずれとするかは、出願人が自由に決めうることであって、カテゴリーによって発明の要旨が決定されるわけではない。発明の要旨は、発明の構成に欠くことができない事項として特許請求の範囲に記載された技術的事項に基づいて決定すべきものである。
特に、印刷とは液状のインクによって形成したミクロン単位の極薄の液膜パターンを乾燥あるいは硬化させて被膜パターンとすることであって、本件発明の転写印刷シートの層構成も、その要旨とする形成順序によらなければ得ることができないから、無効審判請求人の前記主張は失当である。

(2)層構成の形成順序が本件発明の必須要件である以上、甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証記載のものの構成が、いずれも本件発明の構成と異なることは明らかである。
なお、無効審判請求人は、引用例3記載の離型シート(6)が本件発明の剥離シートAに相当することに疑問の余地はないと主張する。
しかしながら、甲第5号証記載の離型シート(6)は転写ワッペンの製造工程中に除去されるものであり、離型シート(6)を除去したものが甲第5号証記載の発明が目的とする転写ワッペンであるから、甲第5号証記載の転写ワッペンは、本件発明の剥離シートを有していないものである。

5、当審の判断

イ、訂正前の本件明細書(特公平2-48440号公報参照)には、本件発明の技術的課題(目的)、構成及び作用効果が次のように記載されていることが認められる。

(1)技術的課題(目的)
本発明は、被写体に、直刷りした場合と同様のパターンをワンタッチで転写印刷しうる転写印刷シートに関する(公報1欄12行ないし14行)。
従来、転写印刷紙としては水転写タイプのものとアルコール転写タイプのものが知られ(公報1欄16行、17行)、転写印刷紙ではないが、ステッカーも被写体にパターンを付する目的で広く普及しており(公報2欄16行、17行)、このステッカーを発展させたものに抜き文字ステッカーがある(公報3欄2行、3行)。
しかし、水転写タイプの転写印刷紙は、転写紙または印刷層のスライド操作に際し、印刷膜が崩れるおそれがある等の問題点があり(公報3欄15行ないし26行)、アルコール転写タイプの転写印刷紙は、被写体と一定強度以上の接着力を有するようになるまでに時間が長くかかること等の問題点がある(公報3欄27行ないし37行)。また、通常のステッカーは、印刷パターンより広い面積のシートが残るので美麗さを欠くこと等の問題点があり(公報3欄38行ないし42行)、抜き文字ステッカーは、文字抜きを行う金型が多数必要となるので金型代がかさむこと等の問題点がある(公報3欄42行ないし4欄4行)。
本件発明は、このような従来の問題点を根本的に解決することを技術的課題(目的)とするものである(公報4欄5行、6行)。

(2)構成
上記課題を解決するために、本件発明は、その特許請求の範囲記載の構成を採用したものである(公報1欄2行ないし9行)。
本件発明は、剥離シートAの離型性保有面に、まず界面活性剤を配合した接着剤組成物による所定のパターン(文字、図形、模様など)の印刷層Bを設け(公報4欄34行ないし37行)、その接着剤組成物印刷層B上に、それと実質状同一パターンを描くようにインクによる単色または多色の印刷層Cを設ける(公報6欄41行ないし43行)。そして、印刷層Cの上から、上記パターンよりも広い面積を覆う剥離可能な保護シートDを貼付等の手段により設けることによって、転写印刷シートの製造が完了する(公報7欄12行ないし16行)。
本件発明の転写印刷シートはA/B/C/Dの層構成を有するものであり、通常はAの側から各層を順に形成していくが、最終的にこの層構成が形成されていればよく、その形成順序を限定するものではない(公報7欄27行ないし31行。ただし、上記記載部分を削除する訂正を認める審決が、平成7年3月15日付けでなされたことが認められる。)。

(3)作用効果
本件発明によれば、i, 被写体に鮮明で美麗なパターンをワンタッチで転写印刷できる、ii, 転写に要する時間が極めて短くてすみ、しかも転写操作に熟練を要しない、iii, 接着剤組成物のはみ出しがない、iv, 水やアルコールに冒される被写体にも適用できる、v, 被写体の要求性能に応じた設計が可能となる、vi, 製法の簡素化、デザインの優位性がある等の優れた作用効果が奏される(公報9欄23行ないし10欄15行)。

ロ、本件発明の要旨認定について
請求人は、本件発明は「物の発明」であって、その製造方法は発明の構成要件ではないから、「層構成の形成順序に関する記載を含めて、(中略)特許請求の範囲に記載されたものが本件発明の要旨というべきである」とした平成7年6月28日にされた先の審決の判断は誤りであると主張し、これに対し、被請求人は、発明の要旨は、発明の構成に欠くことができない事項として特許請求の範囲に記載された技術的事項に基づいて決定すべきものであるから、当該先の審決の上記判断に誤りはない旨主張する。

特許発明は、「物の発明」と「方法の発明」とに大別される(特許法2条3項等)が、ここに「物の発明」とは、技術的思想の創作が物の形で具体的に表現され、かつ経時的要素を要しないものというべきところ、本件発明は、発明の名称を「転写印刷シート」とするものであること、本件発明の特許請求の範囲には、層の形成順序が記載されているが、特許請求の範囲の記載に前記イ認定の本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、本件発明は剥離シートA、印刷層B、印刷層C及び保護シートDの4つの構成要素がその順序で配置され膚構成を形成している転写印刷シートであり、「物の発明」の範疇に含まれるというべきである。

ところで、特許発明が特許法29条1項に定める特許要件を具備するかの判断に当たっては、当該発明を同項所定の発明と対比するために当該発明の要旨を認定する必要がある。そして、その要旨の認定は、特許請求の範囲の記載に基づいてなすべきところ、「物の発明」において特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているときは、その発明は、全体としてみれば、製造方法の如何にかかわらず、最終的に得られた製造物であって、記載された製造方法は、便宜的になされた最終的な製造物を特定する一手段にすぎないというべきである。したがって、当該発明の要旨は、特許請求の範囲に記載された製造方法によって製造された物に限定されないことが明らかである。

これを本件発明についてみると、その特許請求の範囲には、前記のとおり層構成の形成順序(すなわち、離型性シートAの特定面に、印刷層B、印刷層C及び保護シートDを、この順序で設けるべきこと)が記載されているが、この形成順序を「物の発明」である本件発明の必須要件と解することはできず、本件発明の要旨は、あくまで、結果として得られる離型性シートA、印刷層B、印刷層C及び保護シートDの4要素が、A/B/C/Dの順序で配置されている転写印刷シートの構造であると解すべきである。本件明細書の発明の詳細な説明に存した「本発明の転写印刷シートは、A/B/C/Dの層構成を有するものであり、(中略)通常はAの側から各層を順に形成していくが、最終的にこの層構成が形成されていればよく、その形成順序を限定するものではない」(特公平2-48440号公報7欄27行ないし31行)という記載を削除する訂正を認める審決がなされたことは、上記判断を左右するものでない。

したがって、「層構成の形成順序に関する記載を含めて、(中略)特許請求の範囲に記載されたとおりのものが本件発明の要旨というべきである。」ということはできない。

ハ、本件発明と甲第1号証記載の発明との対比について
甲第1号証記載の発明は名称を「転写材料」とする発明であって、甲第1号証には、
a 「本発明は(中略)張力をかけたときには容易に伸張することができる透明或は半透明の1枚のフイルムから成立つ担体シートから成り、この担体シートには印刷インキで図がつけられ、(中略)薄い一層の感圧接着剤が前記図と合致して或は印刷した側の担体シートの印刷城の全体にわたってつけられており、前記図と担体シートとの間の接着は担体シートの範囲でこれを局部的に伸長することにより弱めることができ、感圧接着剤は50 lb/in2下の圧力の下では殆んど接着性がない転写材料を提供するものである。」(1頁右欄33行ないし2頁左欄7行)

b 「本発明転写材料はかなりの圧力がかけられない限りその感圧接着剤がこれと接触状態にある他のものへくっつかないので取扱い易い。従って接着面に半永久的に貼りつけられた保護用シートを用意する必要はない。実際には転写材料に例えばシリコン処理をした挿入用紙を間にはさむことが望ましいが、この紙は接着層に対してかたく接着することはなくそれ自身の重みではなれるのが普通である。」(2頁左欄28行ないし34行)

c 「使用したいときにこれを転写すべき面へ当てがって担体の裏から50 lb/in2以上の圧力をかけるだけで済む。このようにすると図は支持体シートからはなれて前記面へ接着する。」(2頁左欄38行ないし41行)

d 「接着剤を印刷図の上にだけつけ、且これと正しく整合をとってつければ、接着剤が転写された図にふちを形成し汚れを吸収するような危険はない。」(2頁左欄45行ないし47行)
と記載されていることが認められる。

上記のような甲第1号証の記載事項と本件発明とを対比してみると、引用例1記載の「担体シート」は、a及びcの記載から本件発明の「保護シートD」に当たり、甲第1号証記載の「図」は、aに記載されているようにインキで印刷されるものであるから本件発明の「インクによる印刷層C」に当たることが明らかであるし、甲第1号証記載の「感圧接着剤」が、a及びdの記載から本件発明の「接着剤による印刷層B」に当たることも明らかである。そして、上記の記載を総合すれば、甲第1号証記載の転写材料は、「担体シート」、「図」及び「感圧接着剤」を、この順序で配置してなるものであって、このことは、甲第1号証によって認められる「張力を与えると容易に延伸できる透明又は半透明なフイルムのシートよりなる担体シートとこの担体シートにより保有された印刷インキの図(中略)と、前記担体シート上の被覆として適用された而も前記図を覆っている或は図と実質的に符合している感圧接着剤(中略)とよりなり」(4頁左欄12行ないし右欄7行)という特許請求の範囲の記載からも疑いの余地がないところである。

さらに、前記bに記載されている「挿入用紙」は、「感圧接着剤がこれと接触状態にある他のものへくっつ」くことを防止するためのものであり、「この紙は接着層に対してかたく接着することはな」いものであるから、本願発明の「離型シートA」に相当するということができる。

そうすると、甲第1号証には、「担体シート」、「図」、「感圧接着剤」及び「挿入用紙」を、この順序で配置した転写材料の構成が開示されていることになるが、この構成は、本願発明が要旨とする「離型シートA」、「接着剤による印刷層B」、「インクによる印刷層C」及び「保護シートD」をこの順序で配置する構成を、反対側から表したものにほかならず、本件発明の構成と甲第1号証に開示されている構成とが同一であることは明らかである。

ニ、以上のとおりであるから、その余の無効事由について検討するまでもなく、本件発明は、甲第1号証に記載された発明である。

(なお、この、「5、当審の判断」は、実質上平成9年2月13日言渡の平成7年(行ケ)第195号に係る判決の判示事項と同一である。)

6、むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第1号の規定に該当し無効とされるべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第89条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-08-16 
結審通知日 2001-08-21 
審決日 1995-06-28 
出願番号 特願昭63-291862
審決分類 P 1 11・ 113- Z (B44C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 美知子大矢 弘昭  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 岡田 和加子
和泉 等
松下 聡
岩崎 晋
登録日 1992-07-31 
登録番号 特許第1680962号(P1680962)
発明の名称 転写印刷シート  
代理人 永井 義久  
代理人 大石 征郎  
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