ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) F42B |
---|---|
管理番号 | 1048624 |
判定請求番号 | 判定2001-60043 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 1999-08-27 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2001-04-02 |
確定日 | 2001-11-02 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3141155号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「クラッカー」は、特許第3141155号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
【1】請求の趣旨 本件判定請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す「クラッカー」は、特許第3141155号の特許発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 【2】特許第3141155号発明 本件特許発明は、願書に添付した明細書(以下「特許明細書」という。)及び図面の記載からみて、特許請求の範囲に記載されたとおりのものであって、また、目的、作用効果は特許明細書に記載された以下のとおりのものと認める。 1.構成 本件特許発明を、その構成要件毎にA〜Eの符号を附して示せば、次のとおりのものと認める。 A:円筒もしくは多角形筒形の筒体(11)の内部に引玉受座(21)が設けられ、 B:この引玉受座(21)と筒体(11)の先端部との間の筒体(11)内部に、前記筒体(11)の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形に形成された可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され、 C:該可動受圧体(41)と前記引玉受座(21)との間の筒体(11)内部の空間に、引紐(32)の引張り操作で爆発しかつ爆発時の爆風で上記可動受圧体(41)を筒体(11)の先端部側に押し出す火薬体(31)が配備され、 D:筒体(11)内部における上記可動受圧体(41)と筒体(11)の先端部との間の空間に、爆風で押し出された上記可動受圧体(41)に押されて筒体(11)の先端部から放出される被放出物(51)が装填されていること E:を特徴とするクラッカー。 2.目的 「ところで、近時においては、劇場やホールなどでは、小巻テープや紙片を遠方まで飛ばしてクラッカーを楽しみたいという要求がある。 本発明は、上記要望に応えるべく小巻テープや紙片などの被放出物を遠くに飛ばして楽しむことのできるクラッカーを提供することを目的とする。」(特許明細書の〔発明が解決しようとする課題〕の項目、段落【0004】及び【0005】参照) 3.作用効果 「上記構成のクラッカーにおいて、引紐を引張って火薬体を爆発させると、その爆発に伴う爆風によって可動受圧体が筒体の中を勢いよく瞬時に先端部側へ移動し、そのような可動受圧体の瞬間的な移動により被放出物が押されて筒体の先端部から勢いよく放出される。その際、筒体は円筒もしくは多角形筒形に形成されているので、可動受圧体が筒体の先端部に移動するまでの間においては、火薬体の爆発に伴う爆風が可動受圧体の筒体の内面との摺動面間の隙間から逃げることが少なくて筒体の内部における引玉受座と可動受圧体との間の空間に閉じ込められ続ける。そのため、被放出物を遠方にまで飛ばすことができる。」(特許明細書の〔作用〕の項目、段落【0007】参照) 「本発明によれば、小巻テープや紙片などの被放出物を遠くに飛ばしてクラッカーCを楽しむことができるという効果がある。」(特許明細書の〔効果〕の項目、段落【0023】参照) 【3】当事者の主張 1.請求人の主張 (1)本件特許発明について i.発明の目的と達成する主要な構成 平成13年9月18日の口頭審理における請求人の主張によれば、請求人は、本件特許発明の目的である「被放出物を遠くに飛ば」すことを達成する主要な構成は、可動受圧体(41)の「前記筒体(11)の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形」であるとしている。そして、このことは、可動受圧体(41)の上記の「形」は、可動受圧体(41)が筒体(11)内で傾かない構成を持つことを意味し、特許明細書に記載がなくても図面に示される事項から明りょうである旨主張する。(口頭審理調書参照) ii.「移動可能」の意味 請求人は、本件特許明細書の特許請求の範囲の「移動可能」の意味について、特許請求の範囲において火薬の着火前に移動可能と限定していないから、爆発後に移動可能であれば足りる旨主張する。(口頭審理調書参照) (2)イ号「クラッカー」について イ号説明書において、請求人は、イ号図面に示す「クラッカー」は、 i. 筒体10、引玉受座20、可動受圧体30、火薬体40、引紐50、及び被放出物60を備え、 ii. 筒体10は円筒形状に形成されている. iii. 引玉受座20は、小型の円錐筒状に成形されたプラスチック成形品であって、筒体10の内面に貼付け固定されたそれより大型の厚紙製の円錐筒体70の内部に保持固定されることにより筒体10の内部に設置されている. iv. 可動受圧体30は、発泡プラスチック製の円盤体からなり、この円盤体は筒体10の内周形状に合った断面円形状に形成されて軸線方向に延びる外周面30aと、この外周面30aの軸線方向両端に形成される両端面30b,30cとを有する形に形成され、そして、この可動受圧体30は引玉受座20と筒体10の先端部との間の筒体10内部に筒体10の軸線方向に移動可能に配備されている. v. 火薬体40は、引紐50の先端部に装備されており、可動受圧体30と引玉受座20との間の筒体10内部の空間に配備され、そして、火薬体40は引玉受座20の内部に受け止められた状態に収納され、引紐50は引玉受座20の底中央部の孔20aに通されて筒体10の後端より外部へ導出されている. vi. 被放出物60は、多数個の小巻きメタリックテープからなって、筒体10の内部における可動受圧体30と筒体10の先端部との間の空間に充填されている. vii. 引紐50を引張って火薬体40を爆発させると、その爆発に伴う爆風によって可動受圧体30が筒体10の中を勢いよく瞬時に先端部側へ移動し、そのような可動受圧体30の瞬間的な移動により被放出物60が押されて筒体10の先端部から勢いよく放出される.その際、筒体10は円筒形状に形成され、可動受圧体30は筒体10の内周形状に合った円盤形状に形成されているので、可動受圧体30が筒体10の先端部に移動するまでの間においては、火薬体40の爆発に伴う爆風が可動受圧体30の筒体10の内面との摺動面間の隙間から逃げることが少なくて筒体10の内部における引玉受座20と可動受圧体30との間の空間に閉じ込められ続け、そのため、被放出物60を遠方にまで飛ばすことができる. としている。 また、請求人は、前記口頭審理において、判定を求めるイ号「クラッカー」は、「筒体10」と「可動受圧体30」の形状及び寸法は「きっちり」はまる関係にあり、爆発前は、筒体10の内周面と可動受圧体30の外周面との摩擦によって、可動受圧体30が静止しているものであるとした。 2.被請求人の主張 (1)本件特許発明について i.発明の目的と達成する主要な構成 本件特許明細書の記載からみて、「筒体(11)」と「可動受圧体(41)」との間に形成された寸法管理された「隙間」が、本件特許発明の目的である「被放出物を遠くに飛ば」すことを実現する主要な構成であり、特許請求の範囲の「移動可能」と表現された事項である旨主張する。(口頭審理調書参照) ii.「移動可能」の意味 本件特許明細書の記載からみて、「筒体(11)」と「可動受圧体(41)」との間に寸法管理された「隙間」が形成されることを、「移動可能」と表現したものである旨主張する。(口頭審理調書参照) (2)イ号「クラッカー」について 答弁書において、被請求人が実施する「クラッカー(品番SQ-1-4300)」は、 i. 円筒の筒体10の内部に引玉受座20が設けられ、 ii. この引玉受座20と筒体10の先端部との間の筒体10内部には、軸線方向の長さが直径の約1/3である円板状の密閉受圧板30が圧入されて、その外周面30aは筒体10の内面に密着し、火薬体40の爆発前の通常状態においては該密閉受圧板30は一切移動不可の停止状態に配備されてなり、 iii. 該密閉受圧板30と前記引玉受座20との間の筒体10内部の空間に、引紐50の引張り操作で爆発し且つその爆発により、密閉受圧板30と引玉受座20との間の空気を所定値まで圧縮し、その圧縮空気の膨張作用によって密閉受圧板30が筒体10内面に擦れながら一気にその先端部から放出される火薬体40が配備され、 iv. 筒体10内部における上記密閉受圧板30と筒体10の先端部との間の空間に、筒体10の先端部から密閉受圧板30が飛び出す瞬間における圧縮空気のエネルギーの解放により、密閉受圧板30と共に筒体10の先端部から放出される被放出物60が装填されている v.クラッカー. である旨主張する。 【4】当審の判断 1.本件特許発明について (1)本件特許発明は、「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」る点を構成要件としているものと認める(構成要件B参照)。「可動受圧体(41)」は、その名称のとおり「可動」であり、当該部材のクラッカーにおける機能を考慮すると、火薬体の爆発時に当該部材が筒体(11)の軸線方向に移動するものであることは、「軸線方向に移動可能」であることの限定を待つまでもなく自明な事項であり、構成要件Bの「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」とは、このことを示すものと認めることもできるが、他方で、火薬体の爆発前において、当該部材が軸線方向に移動可能であっても、クラッカーの機能を失うものでもなく、また、特許請求の範囲が火薬体の爆発前のクラッカーの構成に欠くことができない事項を記載しているものであることを前提にすると、上記「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」とは、火薬体の爆発前において、当該部材が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備されることを示しているとも認めることができる。 このように、構成要件Bの「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」とは、その意義を一義的に明確に理解することができない。 (2)そこで、本件特許発明の目的が「被放出物を遠くに飛ば」すことであることを前提として本件特許明細書の記載を精査すると、以下の記載が摘記できる。 i.「筒体は円筒もしくは多角形筒形に形成されているので、可動受圧体が筒体の先端部に移動するまでの間においては、火薬体の爆発に伴う爆風が可動受圧体の筒体の内面との摺動面間の隙間から逃げることが少なくて筒体の内部における引玉受座と可動受圧体との間の空間に閉じ込められ続ける。そのため、被放出物を遠方にまで飛ばすことができる。」(【0007】参照) ii.「上記クラッカーCにおいて、火薬体31の火薬量を増やしたり火薬体31の数を増やしたりして爆発に伴う爆風の風圧を増大させると、それだけ可動受圧体41が筒体11内で速く移動して被放出物51が遠方まで飛ばされる。」(【0015】参照) iii.「上記クラッカーCにおいて、筒体11の軸線に直交する仮想直線Lにおける上記筒体11の内面11aの相反する側の2つの位置との交差点a,bの相互間の長さをD1、上記仮想直線における上記可動受圧体の外面の相反する側の2つの位置との交差点a’,b’の相互間の長さをD2としたときのD1-D2の寸法値Aを、 A=(4×D2/1000)〜(4×D2/50)mm ……(1) にしておくことが望まれる(図3および図4参照)。上記D1とD2との長さの関係がこのようになっていると、火薬体31が爆発したときに可動受圧体41が筒体11の内面とあまり擦れ合わずに動くようになり、そのために、被放出物51が遠くに飛びやすくなった。これは、爆風によって可動受圧体41が筒体11の中を先端部側へ移動するときに、筒体11と可動受圧体41との隙間に薄い空気層が発生し、その空気層が筒体と可動受圧体との擦れ合いを抑制するからであろうと推察される。この場合において、Aが(4×D2/1000)mmよりも小さいと、上記の空気層が形成されにくくなって筒体11と可動受圧体41とが擦れ合いやすくなり、その逆に、上記寸法差が(4×D2/50)mmよりも大きいと、隙間が広くなりすぎ、火薬体31の爆発によって発生する爆風が筒体11と可動受圧体41との隙間から逃げやすくなり、いずれの場合も被放出物51を遠方まで飛ばす上で好ましくないことが判っている。」(【0016】参照) iv.「ここで、筒体11が円筒である場合、図3に示すように、上記D1は筒体11の内径寸法に相当し、D2は可動受圧体41の円筒状の外周面の直径寸法に相当する。そして、たとえば可動受圧体41の外周面の直径寸法(D2)が25mmである場合には、上記(1)式により、A=0.1〜2mmとなり、Aが0.1mmよりも小さいと、上記の空気層が形成されにくくなって筒体11と可動受圧体41とが擦れ合いやすくなり、その逆に、上記寸法差が2mmよりも大きいと、隙間が広くなりすぎ、火薬体31の爆発によって発生する爆風が筒体11と可動受圧体41との隙間から逃げやすくなり、いずれの場合も被放出物51を遠方まで飛ばす上で好ましくない。そして、特に、A=0.2〜0.5mmであると、筒体11から煙や臭いがほとんど出ず、音を小さくなる割に、被放出物51を遠方に飛ばすことができた。」(【0017】参照) v.「(2)火薬体を増量する代わりに、火薬体の数を増加する。このようにすると、火薬体を増量した場合と同様に、被放出物を遠方にまで飛ばすことができる。」(【0022】参照) (3)そして、これらの記載を参照すると、発明の詳細な説明に、「被放出物を遠くに飛ば」すことができる理由として、 a.火薬体の爆発に伴う爆風が可動受圧体の筒体の内面との摺動面間の隙間から逃げることが少なくて筒体の内部における引玉受座と可動受圧体との間の空間に閉じ込められ続けること. b.火薬量を増やしたり火薬体31の数を増やしたりして爆発に伴う爆風の風圧を増大させること. c.可動受圧体41が筒体11の内面とあまり擦れ合わずに動くようにすること. d.ただし、上記a及びcを同時に満たすこと. が記載され、 上記dの実施例として A=(4×D2/1000)〜(4×D2/50)mm とする点が記載されているものと認められる。 一方、「可動受圧体41」の形状については、「可動受圧体41の形状は筒体11の形状に合わせておくことが望ましく、そうしておくことにより、火薬体31の爆発に伴って発生する爆風の風圧が可動受圧体41に加わりやすくなる。」(【0019】参照)との記載はあるものの、特許請求の範囲に記載された可動受圧体41の「軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形」と「被放出物を遠くに飛ば」すこととの関連を示す記載は見当たらない。 (4)そこで、上記a〜dの理由に対して特許請求の範囲を検討すると、「火薬量」又は「火薬体の数」についての構成は存在せず、「可動受圧体(41)」と「筒体(11)」との関係について、「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」との構成があり、当該「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」との構成が上記dを満たすものとして、本件特許発明は理解されるべきものである。 そうすると、当該「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」との構成は、上記a及びcを同時に満たすものであり、爆風が可動受圧体と筒体の内面との摺動面間から逃げることが少なく、かつ、可動受圧体(41)が筒体(11)の内面とあまり擦れ合わずに動く隙間が存在するものを意味するものと認められる。 (5)なお、請求人は、本件特許発明の目的である「被放出物を遠くに飛ば」すことを達成する主要な構成について、前記「【3】当事者の主張」の「1.請求人の主張」の「(1)本件特許発明について」の「i.発明の目的と達成する主要な構成」に示すとおり主張するが、目的を達成する構成として明細書にその作用が明記された構成に優先して、明細書に発明の目的と関連付けた記載のない構成を、本件発明の目的を達成する主張な構成とする上記請求人の主張は採用できない。 (6)更に、他方、本体を構成する円筒内に、該円筒の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向一端に形成される端面とを有する形に形成された密閉状内筒を内装し、爆薬の作用によって前記密閉状内筒を移動させるクラッカーが、本件特許の出願前公然知られたものと認められる(実公昭49-45195号公報)ことからも、可動受圧体(41)の「前記筒体(11)の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形」に進歩性を認めることはできないので、本件特許発明における「移動可能」を、単に、爆発時に移動可能と解釈するのは適切ではなく、上記のとおり理解するのが自然である。 2.イ号「クラッカー」について (1)争いのない点 請求人及び被請求人の主張を対比すると、イ号クラッカーが以下の構成を有する点については、争いがないものと認められる。 a.円筒の筒体10の内部に引玉受座20が設けられている点、 b.この引玉受座20と筒体10の先端部との間の筒体10内部には、前記筒体10の内周形状に合わせた断面形状を有する形に形成された受圧体30が、火薬体の爆発時に筒体10の軸線方向に移動可能に配備されている点、 c.該受圧体30と前記引玉受座20との間の筒体10内部の空間に、引紐50の引張り操作で爆発し、上記受圧体30を筒体10の先端部側に押し出す火薬体40が配備されている点、 d.筒体10内部における上記受圧体30と筒体10の先端部との間の空間に、押し出された上記受圧体30に押されて筒体10の先端部から放出される被放出物60が装填されている点 (2)争いのある点 i.受圧体について 請求人は、受圧体が、「軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形に形成された」たものであり、「筒体10の軸線方向に移動可能」な「可動受圧体30」であるとするのに対して、 被請求人は、受圧体が、「軸線方向の長さが直径の約1/3である円板状の密閉受圧板30」であって、筒体10に「圧入されて、その外周面30aは筒体10の内面に密着し、火薬体40の爆発前の通常状態においては該密閉受圧板30は一切移動不可の停止状態」であるとする点 ii.火薬体について 請求人は、火薬体は、その爆発時の「爆風で」で受圧体30を筒体10の先端部側に押し出すとするのに対して、 被請求人は、火薬体は、爆発により、受圧体と引玉受座との間の空気を所定値まで圧縮し、その圧縮空気の膨張作用によって受圧体を先端部側に押し出すとする点 iii.被放出物に対して 請求人は、被放出物は、「可動受圧体30に押されて筒体10の先端部から放出される」とするのに対して、 被請求人は、被放出物は、「密閉受圧板30が飛び出す瞬間における圧縮空気のエネルギーの解放により、密閉受圧板30と共に筒体10の先端部から放出される」としている点 3.対比・判断 (1)イ号「クラッカー」が本件特許発明の構成要件Aを充足することに、請求人及び被請求人に争いはない。 (2)次に、構成要件Bについて検討する。 請求人が判定の対象としたイ号クラッカーも、被請求人が実施品とする品番SQ-1-4300のクラッカーも、受圧体30が筒体10の内周形状に合わせた断面形状を有する形に形成された点については争いがないものと認められ、また、請求人の前記「『筒体10』と『可動受圧体30』の形状及び寸法は『きっちり』はまる関係にあり、爆発前は、筒体10の内周面と可動受圧体30の外周面との摩擦によって、可動受圧体30が静止しているものである」との主張、被請求人の「密閉受圧板30が圧入されて、その外周面30aは筒体10の内面に密着し、火薬体40の爆発前の通常状態においては該密閉受圧板30は一切移動不可の停止状態に配備されてなり」との主張から、請求人が判定の対象としたイ号クラッカーと品番SQ-1-4300のクラッカーとは、いずれも筒体10と受圧体30との間に「隙間」が存在しないものと認められる。 (3)一方、前記「【4】当審の判断」の「1.本件特許発明について」に説示のとおり、本件特許発明における「移動可能」を、爆風が可動受圧体と筒体の内面との摺動面間から逃げることが少なく、かつ、可動受圧体(41)が筒体(11)の内面とあまり擦れ合わずに動く隙間が存在するものを意味するものと理解するのが自然であるから、請求人が判定の対象としたイ号「クラッカー」は、本件特許発明の構成要件である「この引玉受座(21)と筒体(11)の先端部との間の筒体(11)内部に、前記筒体(11)の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形に形成された可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され、」を充足しない。 (4)したがって、イ号「クラッカー」が本件特許発明の構成要件C及びDを充足するか否かについては、検討すること要しない。 【5】むすび 以上のとおりであるから、イ号図面及びその説明書に示す「クラッカー」は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
|
判定日 | 2001-10-23 |
出願番号 | 特願平10-338914 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(F42B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 島田 信一 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
溝渕 良一 粟津 憲一 |
登録日 | 2000-12-22 |
登録番号 | 特許第3141155号(P3141155) |
発明の名称 | クラッカー |
代理人 | 薬丸 誠一 |
代理人 | 藤本 昇 |
代理人 | 鈴江 孝一 |
代理人 | 鈴江 正二 |
代理人 | 中谷 寛昭 |
代理人 | 岩田 徳哉 |
代理人 | 大中 実 |
代理人 | 鈴木 活人 |