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審決分類 審判 訂正 判示事項別分類コード:83 訂正する B44C
管理番号 1049318
審判番号 訂正2000-39150  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1986-06-19 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2000-12-08 
確定日 2001-08-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第1677709号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1677709号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 1、本件訂正の請求に係る出願等の経緯

S59.11.30 特許出願(特願昭59-254534号)
H02.10.25 出願公告(特公平02-48439号公報)
H04.07.13 設定登録(特許第1677709号)
H04.09.30 特許無効の請求(平成4年審判第18472号)
H05.02.03 訂正の請求(平成5年審判第1768号)
H05.11.08 特許審判請求公告第771号
H07.03.10 訂正認容
H07.05.30 訂正の確定登録
H07.06.28 審決(無効請求棄却)
H07.08.11 出訴(平成7年(行ケ)第194号)
H09.02.13 判決言渡(審決取消)
H09.02.26 上告(平成9年(行ツ)第120号)
H09.09.09 判決言渡(上告棄却)
H12.12.08 本件訂正の請求(訂正2000-39150号)
(年月日については、例えば平成12年12月8日をH12.12.08のように略記している。)

2、訂正の請求の要旨
本件訂正の請求に係る特許第1677709号発明は、上記1に記載した経緯を経たものであって、その訂正の要旨は、願書に添付した明細書{以下、「請求公告明細書」という。特許審判請求公告第771号公報(以下、「請求公告公報」という。)参照。}について、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として平成12年12月8日付けでした訂正審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに以下の訂正しようとするものである。

A,訂正事項a
請求公告明細書の特許請求の範囲(請求公告公報第1頁参照。なお、請求公告公報において記号(A)ないし(D)に括弧がないのは公報編纂時の誤記である。)の記載、
「1.離型性を有する剥離シート(A)の離型性保有面に、界面活性剤を配合した接着剤組成物による所定のパターンの印刷層(B)を設け、ついで該印刷層(B)上に、前記と実質状同一のパターンを描くようにインクによる単色または多色の印刷層(C)を設け、さらにその印刷層(C)の上から、前記パターンよりも広い面積を覆う剥離可能な保護シート(D)を設けた構成を有する転写印刷シート。
2.界面活性剤の配合量が、接着剤組成物全量に対し0.00001〜20重量%である特許請求の範囲第1項記載の転写印刷シート。
3.接着剤組成物に配合する界面活性剤の少なくとも一部に、ジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の転写印刷シート。」
を、
「1.その上に印刷を行うための離型性を有する剥離シート(A)の離型性保有面に、配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧接着剤組成物による所定のパターンの印刷層(B)を設け、ついで該印刷層(B)上に、前記と実質状同一のパターンを描くようにインクによる単色または多色の印刷層(C)を設け、さらにその印刷層(C)の上から、前記パターンよりも広い面積を覆うための、軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理が施された透明なフィルムまたはシートからなる剥離可能な保護シート(D)を貼付設置した構成を有する転写印刷シート。
2.界面活性剤の配合量が、接着剤組成物全量に対し0.00001〜20重量%である特許請求の範囲第1項記載の転写印刷シート。」
と訂正する。(下線部は訂正個所を示す。以下、同じ。)

B,訂正事項b
請求公告明細書の6頁20行(請求公告公報2頁右欄35行)の記載、
「離型性を有する」を、
「その上に印刷を行うための離型性を有する」
と訂正する。

C,訂正事項c
請求公告明細書の7頁1〜2行(請求公告公報2頁右欄36〜37行)の記載、
「界面活性剤を配合した」
を、
「配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧」
と訂正する。

D,訂正事項d
請求公告明細書の7頁7行(請求公告公報2頁右欄41行)の記載、
「覆う」
を、
「覆うための、軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理が施された透明なフィルムまたはシートからなる」
と訂正する。

E,訂正事項e
請求公告明細書の7頁8行(請求公告公報2頁右欄42行)の記載、
「設けた」
を、
「貼付設置した」
と訂正する。

F,訂正事項f
請求公告明細書の8頁7行(請求公告公報3頁左欄18行)の記載、
「上記の」
を、
「その上に印刷を行うための」
と訂正する。

G,訂正事項g
請求公告明細書の8頁9行(請求公告公報3頁左欄19〜20行)の記載、
「接着剤組成物」
を、
「感圧接着剤組成物」
と訂正する。

H,訂正事項h
請求公告明細書の8頁12〜15行(請求公告公報3頁左欄22〜25行)の記載、
「ここで接着剤組成物としては、感圧接着剤(粘着剤)組成物が好適に使用されるが、場合によっては感熱接着剤組成物、再湿接着剤組成物も使用される。」
を、
「以下、接着剤組成物とは、感圧接着剤組成物を意味するものとする。」
と訂正する。

I,訂正事項i
請求公告明細書の13頁12行(請求公告公報4頁左欄34行)の記載、
「これらの界面活性剤の中では、」
を、
「そして本発明においては、これらの界面活性剤のうち、本発明の目的にとって特に好ましい」
と訂正する。

J,訂正事項j
請求公告明細書の13頁16〜17行(請求公告公報4頁左欄38〜39行)の記載、
「用いることが、本発明の目的にとって特に好ましい。」
を、
「用いる。」
と訂正する。

K,訂正事項k
請求公告明細書の16頁10行(請求公告公報5頁左欄2行)の記載、
「覆う」
を、
「覆うための」
と訂正する。

L,訂正事項l
請求公告明細書の16頁10〜11行(請求公告公報5頁左欄3〜4行)の記載、
「貼付等の手段により設ける。」
を、
「貼付設置する。」
と訂正する。

M,訂正事項m
請求公告明細書の16頁11行(請求公告公報5頁左欄4行)の記載、
「設置」
を、
「貼付設置」
と訂正する。

N,訂正事項n
請求公告明細書の16頁18行(請求公告公報5頁左欄10行)の記載、
「必要に応じ軽度の粘着力」
を、
「軽度の粘着力」
と訂正する。

O,訂正事項o
請求公告明細書の17頁2〜3行(請求公告公報5頁左欄13〜15行)の記載、
「特殊な場合は、紙を保護シート(D)として用いることもできる。」
を削除する。

P,訂正事項p
請求公告明細書の25頁15行〜26頁3行(請求公告公報7頁左欄9〜16行)の実施例6に係る記載、
「実施例6
実施例2で得たアクリル共重合体100部に対し、消泡材ノプコ8034(サンノプコ株式会社製)0.2部、ヒドロキシエチルセルローズ3%水溶液を20部、界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフエノールエーテルを3部混合して接着剤組成物を得、以下、実施例4と同様にして実験を行った。結果を第2表に合せて示す。」
を削除する。

Q,訂正事項q
請求公告明細書の26頁(請求公告公報7頁左欄)の第2表のうち実施例6の列(縦1列)を削除する。


3、訂正の適否
イ、訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否

A,訂正事項aについて
特許請求の範囲の第1項について、
剥離シート(A)について、「その上に印刷を行うための離型性を有する剥離シート(A)」とした点は、剥離シート上に印刷を行う点を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、第1図及び第1図についての説明の欄に記載されている事項であるから、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正である。
また、印刷は剥離シート(A)上に行うことを確認的に記載するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
また、パターンの印刷層(B)が、「配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧接着剤組成物」である点は、請求公告明細書の特許請求の範囲第3項に記載されていた事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
さらに、剥離可能な保護シート(D)が、「軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理が施された透明なフィルムまたはシートからなる」ものである点は、請求明細書の20頁11〜16行(請求公告公報5頁右欄37〜41行)に、「ついで、上記インク印刷層(C)の上からアプリケーション(軽度の粘着性を有する感圧接着剤を塗布したポリプロピレンフィルム)と称される保護シート(D)の粘着処理側を重ね合せてゴムローラーで圧着し、目的とする転写印刷シートを得た。」と記載されていたものであり、保護シート(D)の材質を限定するものであって実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
また、剥離可能な保護シート(D)が、「貼付設置した」構成とした点は、請求公告明細書の16頁8〜11行(請求公告公報5頁左欄1〜4行)に、「そして本発明においては、さらに上記の印刷層(C)の上から、前記パターンよりも広い面積を覆う剥離可能な保護シート(D)を貼付等の手段により設ける。」と記載されていたものであり、保護シート(D)の設置の態様を限定するものであって実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

よって、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではないものと認められる。

B,訂正事項bについて
「離型性を有する」を、「その上に印刷を行うための離型性を有する」と訂正した点は、発明の詳細な説明の欄の記載について上記訂正事項aによる特許請求の範囲の記載と整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

C,訂正事項cについて
「界面活性剤を配合した」を、「配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧」
と訂正した点は、発明の詳細な説明の欄の記載について上記訂正事項aによる特許請求の範囲の記載と整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

D,訂正事項dについて
「覆う」を、「覆うための、軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理が施された透明なフィルムまたはシートからなる」と訂正した点は、発明の詳細な説明の欄の記載について上記訂正事項aによる特許請求の範囲の記載と整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

E,訂正事項eについて
「設けた」を、「貼付設置した」と訂正した点は、発明の詳細な説明の欄の記載について上記訂正事項aによる特許請求の範囲の記載と整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

F,訂正事項fについて
「上記の」を、「その上に印刷を行うための」と訂正した点は、剥離シート(A)上に印刷を行う点を特許請求の範囲第1項に記載したことに伴う発明の詳細な説明の欄の記載と特許請求の範囲の記載との整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

G,訂正事項gについて
「接着剤組成物」を、「感圧接着剤組成物」と訂正した点は、発明の詳細な説明の欄の記載について上記訂正事項aによる特許請求の範囲の記載と整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

H,訂正事項hについて
「ここで接着剤組成物としては、感圧接着剤(粘着剤)組成物が好適に使用されるが、場合によっては感熱接着剤組成物、再湿接着剤組成物も使用される。」を、「以下、接着剤組成物とは、感圧接着剤組成物を意味するものとする。」と訂正した点は、本件の訂正後の発明が、感圧接着剤(粘着剤)組成物が使用されるが、感熱接着剤組成物、再湿接着剤組成物を使用することがない点を明らかにしたものであるから、発明の詳細な説明の欄の記載について上記訂正事項aによる特許請求の範囲の記載と整合をとるためのものと認められ、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

I,訂正事項iについて
「これらの界面活性剤の中では、」を、「そして本発明においては、これらの界面活性剤のうち、本発明の目的にとって特に好ましい」と訂正した点は、特許請求の範囲第1項記載の発明が、「剥離シート(A)の離型性保有面に、配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧接着剤組成物による所定のパターンの印刷層(B)を設け」るものである点が限定されたことにより必要となった発明の詳細な説明の欄の記載と特許請求の範囲の記載との整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

J,訂正事項jについて
「用いることが、本発明の目的にとって特に好ましい。」を、「用いる。」と訂正した点は、特許請求の範囲第1項記載の発明が、「剥離シート(A)の離型性保有面に、配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧接着剤組成物による所定のパターンの印刷層(B)を設け」るものである点に限定され、好ましいか否かは問題ではなくなったことにより必要となった発明の詳細な説明の欄の記載と特許請求の範囲の記載との整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

K,訂正事項kについて
「覆う」を、「覆うための」と訂正した点は、特許請求の範囲第1項記載の発明が、「パターンよりも広い面積を覆うための、軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理が施された透明なフィルムまたはシートからなる・・・」と訂正されたことにより必要となった発明の詳細な説明の欄の記載と特許請求の範囲の記載との整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

L,訂正事項lについて
「貼付等の手段により設ける。」を、「貼付設置する。」と訂正した点は、特許請求の範囲第1項記載の発明が、「保護シート(D)を貼付設置した構成」と訂正されたことにより必要となった発明の詳細な説明の欄の記載と特許請求の範囲の記載との整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

M,訂正事項mについて
「設置」を、「貼付設置」と訂正した点は、特許請求の範囲第1項記載の発明が、「保護シート(D)を貼付設置した構成」と訂正されたことにより必要となった発明の詳細な説明の欄の記載と特許請求の範囲の記載との整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

N,訂正事項nについて
「必要に応じ軽度の粘着力」を、「軽度の粘着力」と訂正した点は、特許請求の範囲第1項記載の発明が、「軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理が施された透明なフィルムまたはシート」と訂正されたことにより必要となった発明の詳細な説明の欄の記載と特許請求の範囲の記載との整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

O,訂正事項oについて
「特殊な場合は、紙を保護シート(D)として用いることもできる。」を削除する訂正は、特許請求の範囲第1項記載の発明が、「透明なフィルムまたはシート」と訂正されたことにより必要となった発明の詳細な説明の欄の記載と特許請求の範囲の記載との整合をとるためのものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

P,訂正事項pについて
「実施例6
実施例2で得たアクリル共重合体100部に対し、消泡材ノブコ8034(サンノブコ株式会社製)0.2部、ヒドロキシエチルセルローズ3%水溶液を20部、界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフエノールエーテルを3部混合して接着剤組成物を得、以下、実施例4と同様にして実験を行った。結果を第2表に合せて示す。」を削除する訂正は、特許請求の範囲第1項記載の発明が、「配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧接着剤組成物」と訂正されたことにより必要となった発明の詳細な説明の欄の記載と特許請求の範囲の記載との整合をとるために不要となった実施例を削除することを目的とするものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

Q,訂正事項qについて
請求公告明細書の26頁(請求公告公報7頁左欄)の第2表のうち実施例6の列(縦1列)を削除する訂正は、上記Pに係る実施例6の削除に伴って必要となった第2表の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。


以上のとおりであるから、本件訂正の請求に係る訂正事項は、特許請求の範囲の減縮及びそれに伴って必要となった明細書の記載についての明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、請求公告明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正の請求は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項但し書き及び第1号、第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第2項の規定に適合する。


ロ、独立特許要件についての判断
A,本件発明
本件訂正の請求に係る特許出願の発明の要旨は、平成12年12月8日付けでした訂正審判請求書に添付された訂正明細書及び請求公告明細書の図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本件発明」という。)
「1.その上に印刷を行うための離型性を有する剥離シート(A)の離型性保有面に、配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧接着剤組成物による所定のパターンの印刷層(B)を設け、ついで該印刷層(B)上に、前記と実質状同一のパターンを描くようにインクによる単色または多色の印刷層(C)を設け、さらにその印刷層(C)の上から、前記パターンよりも広い面積を覆うための、軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理が施された透明なフィルムまたはシートからなる剥離可能な保護シート(D)を貼付設置した構成を有する転写印刷シート。」

B,引用例
引用例1;特公昭38-10663号公報
引用例2;実公昭58-35493号公報
引用例3;特開昭51-150414号公報
引用例4;特公昭50-18409号公報
参考資料1;実公昭53-22006号公報
参考資料2;特公昭54-31405号公報
参考資料3;相原次郎ほか編著「印刷インキ技術」株式会社シーエムシー、1982年8月発行、第122〜128頁
参考資料4;刈米孝夫著「界面活性剤の性質と応用」第二版、幸書房、昭和63年7月発行、第94〜95頁、第230〜235頁

C,引用例記載の発明
引用例1記載の発明;
引用例1には、その特許請求の範囲の欄に、
「温度及び湿度に関して普通に変化する条件下で高い寸法安定性を有するが、張力を与えると容易に延伸できる透明な又は半透明なフィルムのシートよりなる担体シートとこの担体シートにより保有された印刷インキの図、(このインキは本質的に重合体材料に基いており而も可塑剤を含んでいて比較的非延伸性の図を形成する)と、前記担体シート上の被覆として適用された而も前記図を覆っている或は図と実質的に符合している感圧性接着剤(この接着剤は高粘着性感圧接着剤と非粘着性成分との混合物よりなり、而も約50 1b/in2 より小さい圧力下での低粘着性と約50 1b/in2 以上の圧力下での実質的な粘着性とを有する)とよりなり、前記図と前記担体シートとの間の接着力はシートの局部でシートを部分的に延伸することにより低下でき、前記感圧接着剤は、前記担体シートに約50 1b/in2以上の圧力を加えて前記インキ図を、そっくりそのまま何の破損もなしに、転写表面に移動させるに役立ち、而も前記接着剤と前記担体との間の接着力は前記図と前記担体との間の接着力より実質的に大きく、それにより前記図の周りの接着剤は実質的に、前記転写表面に移動しないことを特徴とする転写材料。」
と記載され、また、1頁右欄33行ないし2頁左欄7行には、
「本発明は(中略)張力をかけたときには容易に伸張することができる透明或は半透明の1枚のフィルムから成立つ担体シートから成り、この担体シートには印刷インキで図がつけられ、(中略)薄い一層の感圧接着剤が前記図と合致して或は印刷した側の担体シートの印刷域の全体にわたってつけられており、前記図と担体シートとの間の接着は担体シートの範囲でこれを局部的に伸長することにより弱めることができ、感圧接着剤は50 1b/in2 下の圧力の下では殆んど接着性がない転写材料を提供するものである。」
と記載され、2頁左欄28行ないし34行には、
「本発明転写材料はかなりの圧力がかけられない限りその感圧接着剤がこれと接触状態にある他のものへくっつかないので取扱い易い。従って接着面に半永久的に貼りつけられた保護用シートを用意する必要はない。実際には転写材料に例えばシリコン処理をした挿入用紙を間にはさむことが望ましいが、この紙は接着層に対してかたく接着することはなくそれ自身の重みではなれるのが普通である。」
と記載され、2頁左欄38行ないし41行には、
「使用したいときにこれを転写すべき面へ当てがって担体の裏から50 1b/in2 以上の圧力をかけるだけで済む。このようにすると図は支持体シートからはなれて前記面へ接着する。」
と記載され、2頁左欄45行ないし47行には、
「接着剤を印刷図の上にだけつけ、且これと正しく整合をとってつければ、接着剤が転写された図にふちを形成し汚れを吸収するような危険はない。」
と記載されている。
また、さらに、実施例の説明として、3頁右欄20行ないし39行には、「高圧に感じる接着剤を次のようにして配合する。(中略)非イオン性表面活性剤1.2部、陰イオン性表面活性剤 0.3部(中略)これをスクリーン法によって印刷し蒸発して乾かす。得られた層は非常に粘着性が低いものである。(中略)この接着剤は(中略)はなれ易く、接着性に優れ、且細部のまわりからきれいにきり取れる。」
と記載されている。

引用例2記載の発明;
引用例2には、その実用新案登録請求の範囲に、
「剥離性及び印刷適性を持つ合成紙からなる台紙1上に、絵柄の印刷面積にほぼ合わせた透明合成樹脂系フィルムの保護層2を設け、その保護層2上に転写絵柄の印刷層3と、保護層2の形成面積に合致させた感圧性接着剤層4を形成し、さらに台紙1との間で前記各層2,3,4を挟む可剥紙5を前記接着剤層により接着して重ねたことを特徴とする感圧接着転写紙。」
と記載され、また、3欄24〜27行には、
「第3図に例示するように可剥紙5を剥ぎ取ってから器物、器具11等の表面に感圧性接着剤層4を接合し、合成紙からなる台紙1を裏面からよく擦過して感圧により接着する。」
と記載されている。

引用例3記載の発明;
引用例3には、「転写ワッペンの製造方法において、能型シート(6)/(熱可塑性樹脂からなる)溶着フィルム層(7)/装飾層(8)の構成を有するシートを作製し、吸湿性の転写シート(10)に熱可塑性樹脂を印刷塗布して点状又は線状の転着層(11)を形成したものを前記離型シート(6)の装飾層(8)に重ね合せ、転着層(11)を離型シート(6)に熱プレスして装飾層(8)及び溶着フィルム層(7)を離型シート(6)より転写シート(10)に転写する点」が記載されているものと認められる。
具体的には、2頁左下欄7〜10行に、
「即ちこの熱プレス時に転着層(11)が溶融して転写シート(10)に含浸し、装飾層(8)が転写シート(10)に接着すると共に、溶着フィルム層(7)が軟化して離型シート(6)より剥離する。」
と記載されている。

引用例4記載の発明;
引用例4には、「ろう被覆紙のような離型しうる裏材シート、シリコンで被覆または含浸された離型しうる紙または可撓性フィルム、可撓性フィルム上に顔料又は所望の電気的性質を有する物質を含有するデザイン層を形成させた転写材」が記載されている。

参考資料1記載の発明;
参考資料1には、その実用新案登録請求の範囲の欄に、
「マスキングテープ1を構成する第一感圧性接着剤3上に直接若しくは間接的にインキ層5を設けると共に該インキ層5上に直接若しくは間接的に設けた第二感圧性接着剤6の占有する面積を前記インキ層5と接触している透明層4の占有する面積と略同じか若しくは小さくする一方前記第二感圧接着剤6上に剥離紙7を設けてなる転写マーク紙。」
が記載されている。

参考資料2記載の発明;
参考資料2には、その特許請求の範囲に、
「吸水により柔軟性となる基材の片面に剥離性を有する柔軟なフィルム層を形成した台紙を構成し、該台紙のフィルム層上に耐熱性及び耐溶剤性を有する印刷インキで所望の図柄などを印刷し、さらにその上に耐熱性及び耐溶剤性を有する粘着剤を印刷した転写紙を用意し、該転写紙を必要に応じ界面活性剤を添加した水に浸漬して転写紙の初期接着性を低下させ、かかる状態の転写紙を被着体に仮着して位置決めをした後転写紙をしごいて接着面から水分を除去することにより被着体に該転写紙を圧着し、台紙をはがして被着体に図柄を転写し、乾燥後該図柄をクリヤ塗装によってオーバーコートし、焼付けることを特徴とする粘着転写による図柄などの形成方法。

参考資料3記載の発明;
参考資料3には、印刷インキの原材料や各種添加剤について記載されおり、インキ組成について解説してあるものと認められる。

参考資料4記載の発明;
参考資料4には、界面活性剤の基礎的知識と化粧品工業において用いられる界面活性剤についての記述がある。


D,対比・判断
本件発明と、引用例1記載の発明を対比すると、引用例1記載の「担体シート」は、印刷インキを担持する点からみて、本件発明の「保護シートD」に相当し、以下、同様に、「挿入用紙」は感圧接着剤を覆う点からみて「剥離シートA」に相当する。
さらに、接着と図形の表示という機能からみて、引用例1記載の「感圧接着剤」「印刷インキ」はそれぞれ本件発明の「感圧接着剤組成物による所定のパターンの印刷層B」「インクによる単色または多色の印刷層C」に相当する。

したがって、本件発明と、引用例1記載の発明は、
「離型性を有する剥離シート(A)の離型性保有面に、所定のパターンの印刷層(B)を設け、ついで該印刷層(B)上に、前記と実質状同一のパターンを描くようにインクによる単色または多色の印刷層(C)を設け、さらにその印刷層(C)の上から、フィルムまたはシートからなる剥離可能な保護シート(D)を設置した構成を有する転写印刷シート。」
である点で一致し、以下の点で相違がある。

相違点a;引用例1記載の「担体シート」は「印刷インキで図がつけられ、さらに接着剤を印刷図の上だけにつけた」ものであるのに対し、本件発明の「保護シートD」は、「印刷層(C)の上から、前記パターンよりも広い面積を覆うための、軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理が施された透明なフィルムまたはシートからなる剥離可能な保護シート(D)を貼付設置した構成」であり、単に印刷インキCを覆い保護するものであって印刷自体がなされるものではない点。

相違点b;引用例1記載の「挿入用紙」は感圧接着剤を保護するために単に感圧接着剤を覆っているだけのものであるのに対し、本件発明の「剥離シートA」はその上に順次接着剤、印刷インキを印刷手段で担持させるものである点。

相違点c;引用例1記載の「感圧接着剤」は、「非イオン性表面活性剤1.2部と陰イオン性表面活性剤 0.3部」を配合界面活性剤として含むものであるのに対し、本件発明の「感圧接着剤組成物による所定のパターンの印刷層B」は、「配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤」を含むものである点。

そこで、これらの相違点について検討する。
相違点aについては、印刷層を保護するシートか接着層を保護するシートの相違はあるが、共に保護が必要な部分を覆うシートであって、その目的と形状が同一であり、かつ、軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理を施す程度のことは、転写印刷を行う前にはシートを保持しておく必要があり、転写印刷後には剥離する必要があるシートである点からみて、当業者が必要に応じて適宜採用できる程度のものであって、格別の相違ではない。

相違点bについて検討すると、本件発明にあっては、転写印刷シートの製造時に、転写印刷を行う直前に取り除く剥離シートA上に接着剤、図形の順に印刷するのに対し、引用例1記載の発明にあっては、転写印刷シートの製造時に、担体シート(保護シートDに相当)上に図形、接着剤の順に印刷しており、挿入用紙(剥離シートAに相当)には印刷等は行っていないことから生じる構成上の相違である。
そして、その結果、引用例1記載のものは図形が逆相(鏡像の関係)の印刷が必要となるのに対し、本件発明に係る印刷は順相(通常の位相)でよく、図形の印刷時に図形の確認が容易となるものである。
また、転写後の図形印刷部は転写シートの製造時に接着剤、図形の順に印刷する(本件発明)か、図形、接着剤の順に印刷する(引用例1記載の発明)かの相違に基づき、図形印刷部の端部に下記の相違が生じうるものと認められる。
すなわち、接着剤もインクも印刷時には液体或いは粘性体であるから、印刷時、特にこの技術分野で普通の用いられるスクリーン印刷時にその端縁部は印刷圧力や重力や濡れ性(インクや接着剤が印刷するシートと馴染もうとする性質)によってだれた(外側に広がる傾斜をもった)形状になる。
その印刷部分の端縁部がだれた形状になることは、本件発明においても甲第1号証記載の発明においても同様ではあるが、本件発明においては接着剤、図形の順に印刷し、引用例1記載の発明においては図形、接着剤の順に印刷しているから、本件発明においては、転写後の図形印刷部の端部は重力や濡れ性によってだれた(外側に広がる傾斜をもった)形状のままであるのに対し、引用例1記載の発明においては逆相(鏡像の関係)で転写するから転写後の図形印刷部の端部は重力や濡れ性によってだれた(傾斜をもった)形状が反転し、滑らかな形状にはならない。
このことは、転写後の図形印刷部の端部が滑らかか、滑らかとはならないかの相違が生じ、引用例1記載の転写印刷シートで転写した転写印刷面は、被転写物を布等でこすり洗い等をした場合に図形の端部に引っかかりが生じたり、超音速で飛行する物体のマーク等では好ましくない空気の乱流が生じる可能性もあるのに対し、本件発明の転写印刷シートで転写した転写印刷面は、図形の端部が滑らかで上記の不都合が生じ難く美観にも優れたものとなる。

さらに、引用例2ないし4及び参考資料1ないし4には、上記相違点bに係る、『「剥離シートA」はその上に順次接着剤、印刷インキを印刷手段で担持させる』ことにより印刷は順相(通常の位相)でよく、転写後の図形印刷部の端縁部のだれた(外側に広がる傾斜をもった)形状に係る上記の利点について記載も示唆もない。

相違点cについては、本件発明の「剥離シートA」上の接着剤は、「配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧接着剤組成物」を印刷により設けるものであるために、「接着剤組成物の剥離シート(A)上への印刷は、各種平凹刷印刷によっても行われるが、シルクスクリーン印刷(スクリーン印刷)によることが多い。シルクスクリーン印刷を行うときは、印刷工程での発泡を防止するためしばしば消泡剤やその他の添加剤を混和することが多く、これは印刷面のハジキ、ヘコミの原因となりやすい。しかしながら、上記のように特定量の界面活性剤を配合することにより、この種のトラブルは回避される。」という明細書記載の効果を奏するものであるのに対し、
引用例1記載の接着剤は、非イオン性表面活性剤1.2部及び陰イオン性表面活性剤を含有するものであって、「高圧に感じる接着剤を次のようにして配合する。(中略)非イオン性表面活性剤1.2部陰イオン性表面活性剤 0.3部(中略)これをスクリーン法によって印刷し蒸発して乾かす。得られた層は非常に粘着性が低いものである。(中略)この接着剤は(中略)はなれ易く、接着性に優れ、且細部のまわりからきれいにきり取れる。」との記載を参酌しても、本件発明の接着剤と同一であるか、或いは当業者が容易に想到可能な範囲のものであると認めるに足る理由までは見出せない。

さらに、本件発明の界面活性剤は印刷面の平滑化・美化を目的としているのに対し、引用例1記載の発明の界面活性剤は、低圧では接着せず高圧で接着するためのものであって、界面活性剤を含有させる目的から相違しており、この観点からも異なった界面活性剤を含有する本件発明の接着剤と引用例1記載の発明の接着剤とが同一であるか、或いは当業者が容易に想到可能な範囲のものであると認めることができない。

また、引用例2ないし4及び参考資料1ないし4には、上記相違点cに係る、『「剥離シートA」上の接着剤は、「配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧接着剤組成物」』である点について、少なくとも転写印刷シートに用いる接着剤について適用する点までは直接的な記載や示唆がなく、この点が容易に想到できるものとの理由は見出せない。

以上のとおりであるから、本件発明(上記の定義のとおり、本件訂正の請求に係る訂正後の発明)は、上記相違点b,cに係る構成を有することにより、引用例1に記載された発明であるとも、引用例1ないし4及び参考資料1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともできないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものと認められる。
したがって、本件訂正の請求は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合する。

4、むすび
よって、本件訂正の請求は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項但し書き及び第1号、第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第2、3項の規定に適合するから、本件訂正を認める。。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
転写印刷シート
(57)【特許請求の範囲】
1.その上に印刷を行うための離型性を有する剥離シート(A)の離型性保有面に、配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧接着剤組成物による所定のパターンの印刷層(B)を設け、ついで該印刷層(B)上に、前記と実質状同一のパターンを描くようにインクによる単色または多色の印刷層(C)を設け、さらにその印刷層(C)の上から、前記パターンよりも広い面積を覆うための、軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理が施された透明なフィルムまたはシートからなる剥離可能な保護シート(D)を貼付設置した構成を有する転写印刷シート。
2.界面活性剤の配合量が、接着剤組成物全量に対し0.00001〜20重量%である特許請求の範囲第1項記載の転写印刷シート。
【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野
本発明は、被写体に、直刷りした場合と同様の美麗で鮮明なパターンをワンタッチで転写印刷しうる転写印刷シートに関するものである。
従来の技術
従来、転写印刷紙としては、水転写タイプのものとアルコール転写タイプのものが知られている。
水転写タイプの転写印刷紙は、転写シート(紙の片面全面に水糊を塗布したもの)の水糊層の上から所定のパターンを印刷し、ついでその印刷層の上からニス塗りし、さらにそのニス層の上からブロッキング防止のための剥離紙をかぶせたものである。転写操作は、まず剥離紙を除いてから、全体を水で湿潤して水糊層を膨潤させると共に、転写紙側を被写体に当てながら転写紙側または印刷層側をずらしていくことによりなされる。
また、アルコール転写タイプの転写印刷紙は、複紙転写シート(不透明の紙に剥離加工を施した半透明の薄い紙の剥離加工面側を貼り、さらにその半透明の紙の表面に水糊を塗布した構成を有するもの)の水糊層の上から所定のパターンを印刷し、ついでその印刷層の上からアルコール活性型接着剤を前記パターンの輪郭よりも大きく塗布し、最後にその上からブロッキング防止のための剥離紙をかぶせたものである。転写操作は、転写印刷紙から剥離紙と不透明の紙を除き、被写体側をアルコールで濡らすと共に、被写体にアルコール活性化型接着剤塗布面を当て、時間を見はからって接着がなされた頃に半透明の紙側に水をつけて水糊層を膨潤させた後、この半透明の紙を除去することによりなされる。
なお、転写印刷紙ではないが、ステッカーも被写体にパターンを付する目的で広く普及している。
ステッカーは、タック紙(剥離紙の片面全面に粘着剤を塗布し、さらにその粘着剤層の上からフィルムや紙を貼付したもの)のフィルムまたは紙の表面に所定のパターンの印刷を施し、さらに必要に応じてその印刷層の上から、印刷層保護のためにポリプロピレンフィルムなどをラミネートし、ついで金型で打ち抜きを入れたもので、使用に際しては、剥離紙からステッカーを剥離除去してから、被写体へ粘着剤塗布面側を圧着することにより、ワンタッチで貼着が図られる。
このステッカーをさらに発展させたものに抜き文字ステッカーがある。抜き文字ステッカーは、粘着剤を片面全面に塗布した剥離紙の粘着剤層の上から印刷層を設け、ついで文字の輪郭形状を有する金型で打ち抜きを入れると共に、文字の部分以外の不要の部分を手作業により除去し、ついで印刷層の上からアプリケーションと称される低粘着性の粘着剤を塗布した透明シートをかぶせたものである。使用に際しては、剥離紙を剥離除去してから、被写体へ粘着剤塗布面側を圧着し、ついでアプリケーションを剥離除去することにより、文字の貼着が図られる。
発明が解決しようとする問題点
しかしながら、上記従来の水転写タイプの転写印刷紙にあっては、転写操作に際して転写印刷紙を水で湿潤させたり、転写紙側または印刷層側をスライドさせる操作が要求されるため、水に冒される被写体には適用できないこと、スライド操作に際し、印刷膜が水で柔弱となっているため、転写シートと分離しにくく、印刷膜が崩れるおそれがあること、被写体と一定強度以上の接着力を有するようになるまでに時間が長くかかること、印刷膜を保護するニス層を印刷層の輪郭よりも若干大きくしなければならないため、仕上りが必ずしも美麗でないことなどの問題点があった。
また、上記従来のアルコール転写タイプの転写印刷紙にあっては、転写操作に際してアルコールや水で湿潤させる操作があるため、アルコールや水に冒される被写体には適用できないこと、被写体と一定強度以上の接着力を有するようになるまでに時間が長くかかること、アルコール活性型接着剤層を印刷層の輪郭よりも若干大きくしなければならないため(さもないとはみ出た部分の印刷膜が切れる)、仕上りが必ずしも美麗でないこと、印刷を逆刷りで行わなければならないため、誤認するおそれがあることなどの問題点があった。
さらにまた、通常のステッカーにあっては、印刷パターンより広い面積のシートが残るため美麗さを欠くこと、被写体の要求物性に十分対応できるシート素材が得られにくいことなどの問題点があり、抜き文字ステッカーにあっては、文字抜きを行う金型が多数必要となるため金型代がかさむこと、金型で打ち抜きを入れた後の文字以外の部分を除去する作業が手作業によるため、生産性が劣り、人件費も高くつくこと、文字を金型で打ち抜くため小さな文字や複雑な文字には適用できないことなどの問題点があった。
本発明は、このような従来の問題点を根本的に解決することを目的になされたものである。
問題点を解決するための手段
本発明の転写印刷シートは、その上に印刷を行うための離型性を有する剥離シート(A)の離型性保有面に、配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧接着剤組成物による所定のパターンの印刷層(B)を設け、ついで該印刷層(B)上に、前記と実質状同一のパターンを描くようにインクによる単色または多色の印刷層(C)を設け、さらにその印刷層(C)の上から、前記パターンよりも広い面積を覆うための、軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理が施された透明なフィルムまたはシートからなる剥離可能な保護シート(D)を貼付設置した構成を有するものであって、このような特定の構成を見出すことにより、上記のような問題点を一挙に解決するに至った。
本発明における離型性を有する剥離シート(A)としては、紙やプラスチックスシートなどのシートの片面を剥離剤で処理したものが用いられる。剥離剤としては、長鎖アルキルアクリレート共重合体、長鎖アルキルビニルエステル共重合体、長鎖アルキルビニルエーテル共重合体、長鎖アルキルアクリルアミド共重合体、長鎖アルキルアリルエステル共重合体、マレイン酸の長鎖アルキル誘導体の共重合体、長鎖アルキルエステル化したポリマー、長鎖アルキルカルバメート化したポリマー、ポリエチレンイミン誘導体、過フッ化アルキル基含有化合物(フッ素系樹脂を含む)、シリコーン、パラフィン類などが例示できる。そのほか、シート自体が離型性を有する素材で形成されたもの、あるいは、シート製造時に剥離剤を内部添加したものも用いることができる。
そして本発明においては、その上に印刷を行うための剥離シート(A)の離型性保有面に、まず界面活性剤を配合した感圧接着剤組成物による所定のパターン、たとえば文字、図形、模様などの印刷層(B)を設ける。
以下、接着剤組成物とは、感圧接着剤組成物を意味するものとする。
接着剤組成物は、接着主要素を主体とし、これに必要に応じて粘着付与剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、加硫剤、架橋剤、着色剤、その他の添加剤を適当な比率で配合したものからなる。
接着主要素としては、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、ブチルゴム、ポリイソブチレン、シリコーンゴム、ポリビニルイソブチルエーテル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、グラフトゴム、再生ゴムなどのエラストマー;α,β-エチレン性不飽和化合物の重合体または共重合体、たとえば、オレフィン(エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、スチレン系モノマー(スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなど)、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリル、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、ビニルエーテル(ビニルイソブチルエーテルなど)、不飽和カルボン酸系モノマー(アクリル酸、メタクリル酸、それらのエステル、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールのモノないしペンタアクリレート、クロトン酸またはそのエステル、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、それらのエステルまたは無水物、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルアルコール、塩化ビニルなど)の化合物の重合体または共重合体;エポキシ化ポリブタジエンなどが例示できる。
これらの中では、アクリル系粘着剤、すなわち、炭素数4〜12のアルキル基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(X)、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸(Y)および短鎖アルキル基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、酢酸ビニル、ジアリルフタレートなどの不飽和化合物(Z)を共重合したアクリル系感圧接着剤が、粘着特性、耐候性、透明性等の性質がすぐれているので、特に実用性が大きい。
粘着付与剤としては、ロジン、エステルガム、エステルガムH、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂などが例示できる。
軟化剤としては、各種の可塑剤、ポリブテン、液状粘着付与樹脂、ポリイソブチレン低重合物、ポリビニルイソブチルエーテル低重合物、ラノリン、解重合ゴム、プロセスオイル、加硫オイルなどが例示できる。
充填剤としては、酸化チタン、亜鉛華、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、マイカ、酸化鉄、各種岩石、デンプンをはじめ、各種の充填剤が用いられる。
老化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、メルカプトベンゾイミダゾール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェノール)シクロヘキサン、フェニル-β-ナフチルアミンをはじめ、各種の老化防止剤が用いられる。
そのほか、ある種の高分子、たとえばセルロース誘導体、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ゼラチンなどを配合することもできる。
上記のような接着剤組成物に配合する界面活性剤としては、石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩またはその重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸塩などのアニオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックポリマー、ソルビタンモノアルキレートなどのノニオン界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、第4級アンモニウム系などのカチオン界面活性剤があげられる。そのほか、有機ケイ素系化合物、すなわちジアルキルシロキサン構造で示される各種のシリコーンオイル、エポキシ化シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、その他各種の変性シリコーンオイルなど、フッ素系化合物、すなわちパーフルオロアルキル基を含有するスルホン酸塩、カルボン酸塩、エチレンオキサイド付加物、トリメチルアンモニウム塩、リン酸エステル、これらのオリゴマー、ウレタン誘導体なども用いられる。これらの界面活性剤は2種以上を併用することも多い。
そして本発明においては、これらの界面活性剤のうち、本発明の目的にとって特に好ましいジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を、配合する界面活性剤の少なくとも一部として用いる。
界面活性剤の配合量は、接着剤組成物全量に対し、0.00001〜20重量%の範囲から選ぶことが望ましく、さらには0.0001〜5重量%の範囲から選択することが好ましい。界面活性剤の配合量が余りに少ないと、剥離シート(A)上に印刷したとき印刷面にハジキ、ヘコミ等を生じて安定した品質が得られず、一方、その配合量が余りに多いと、接着剤塗膜としての耐水性、耐溶剤性が劣り、また、被写体との接着強度や上面に設けたインク皮膜との接着強度が低下するようになる。
接着剤組成物の剥離シート(A)上への印刷は、各種平凹刷印刷によっても行われるが、シルクスクリーン印刷(スクリーン印刷)によることが多い。シルクスクリーン印刷を行うときは、印刷工程での発泡を防止するためしばしば消泡剤やその他の添加剤を混和することが多く、これは印刷面のハジキ、ヘコミの原因となりやすい。しかしながら、上記のように特定量の界面活性剤を配合することにより、この種のトラブルは回避される。
接着剤組成物を剥離シート(A)上にシルクスクリーン印刷により印刷する場合、接着剤組成物の粘度は広く変えうるものの、通常は粘度を1〜300ポイズ(BH型回転粘度計表示、25℃)に調整することが多い。1ポイズ未満ではハジキ、ヘコミ等が生じやすく、一方300ポイズを越えるときは、版から接着剤組成物が塗着されにくく、かつ印刷表面の平滑性も得られにくくなるため、印刷作業効率が低下する傾向がある。
印刷層(B)は、2層以上の複層に形成することができる。多層に形成する場合は、接着特性の異なる接着剤組成物を用いることもできる。
上述のようにして、離型性を有する剥離シート(A)の離型性保有面に界面活性剤配合接着剤組成物による所定のパターンの印刷層(B)を設けた後は、その接着剤組成物印刷層(B)上に、前記と実質状同一のパターンを描くようにインクによる単色または多色の印刷層(C)を設ける。インクとしては、色料非配合インク、色料配合インク、紫外線硬化型インク、電子線硬化型インク、機能性(導電性、示温性、蛍光性、蓄光性、反射性、芳香性、磁性、OCR、減感、レジスト、転写捺染等)インクをはじめ、従来使用されている種々のインクが用いられる。印刷にあたっては、重ね刷りを行ってもよい。印刷層をパターンの全体にわたってまたは部分的に肉厚に形成すれば、立体感が得られる。なお、印刷最上層を無色のインクによるオーバーコート層とすることも望ましく、この層は転写後に印刷層に光沢を付与したり、印刷層を保護したりする役割を果たす。
そして本発明においては、さらに上記の印刷層(C)の上から、前記パターンよりも広い面積を覆うための剥離可能な保護シート(D)を貼付設置する。この保護シート(D)の貼付設置により、目的とする転写印刷シートの製造が完了する。
保護シート(D)としては、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、セルロース系誘導体、ポリアセタールなどの透明なフィルムまたはシートの表面に、軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理を全面にまたは部分的に施したものが好適に使用される。保護シート(D)を複数枚重ねて腰を強くすることもできる。
転写操作を容易にするため、剥離シート(A)と界面活性剤配合接着剤組成物印刷層(B)との間の密着強度Fab、インクによる印刷層(C)と保護シート(D)との間の密着強度Fcd、被写体と界面活性剤配合接着剤組成物印刷層(B)との間の密着強度Fbxは、
Fbx > Fcd > Fab
の関係を満足するように留意する。
第1図は剥離シート(A)上に界面活性剤配合接着剤組成物による所定のパターンの印刷層(B)を設けた状態を示した模式断面図である。
第2図は本発明の転写印刷シートの一例を示した一部切欠き斜視図、第3図はその模式断面図、第4図はその分解図である。
図中、(A)は離型性を有する剥離シート、(B)は界面活性剤配合接着剤組成物印刷層、(C)はインクによる単色または多色の印刷層、(D)は保護シートである。
このようにして作成された転写印刷シートを用いて被写体に転写印刷を行う。被写体の材質は、金属、プラスチックス、木竹類、セラミックス、紙、織布、不織布、皮革、無機質をはじめ材質を問わない。陶磁器を形成する焼入れ前の素面にも適用が可能である。
転写操作は、まず剥離シート(A)を静かに剥ぎ取ってから接着剤組成物印刷層(B)面を被写体に貼着して圧着し、ついで保護シート(D)を剥ぎ取るだけでよい。
次に実施例をあげて、本発明をさらに詳細に説明する。以下、「部」、「%」とあるのは、重量基準で表わしたものである。
実施例1
かくはん機、温度計、コンデンサー、滴下ロートおよび窒素ガス吹き込み装置を備えたフラスコにキシレン500部を仕込み、かくはんおよび窒素ガスの吹き込みを続けながら110℃まで昇温し、ついで温度を105〜110℃に保ちながら、2-エチルヘキシルアクリレート300部、ブチルアクリレート250部、メタクリル酸30部、ヒドロキシエチルアクリレート20部よりなる混合液を滴下ロートより3時間かけて滴下し、別のロートからt-ブチルハイドロパーオキサイド(重合開始剤)5部を3.5時間かけて滴下した。さらに同温度で3時間反応を続けることによって、数平均分子量18000、不揮発分50%のアクリル共重合体を得た。
次に、上記で得たアクリル共重合体100部に対し、エマルジョン型のシリコーンである信越シリコーン株式会社製のKM85を0.5部、溶剤としてのイソホロンを50部、ジメチルシリコーンオイルである信越シリコーン株式会社製のKF69を0.2部混合し、2種のシリコーンを含む界面活性作用、消泡作用、レベリング作用を併せ有する界面活性剤配合接着剤組成物を得た。
剥離シート(A)として不二紙工株式会社製8Eアイボリーを準備し、その離型性保有面に上記で得た接着剤組成物を用いてパターンをシルクスクリーン印刷後、70℃で5分間乾燥し、界面活性剤配合接着剤組成物印刷層(B)を形成させた。
次に、その界面活性剤配合接着剤組成物印刷層(B)の上から、シルクスクリーン用インキ白(田中インキ化学工業株式会社製ビニールグロス)を用いて、上記の印刷パターンに正確に重ねてシルクスクリーン印刷を施し、70℃で10分間乾燥してインクによる印刷層(C)を形成させた。
ついで、上記インク印刷層(C)の上からアプリケーション(軽度の粘着性を有する感圧接着剤を塗布したポリプロピレンフィルム)と称される保護シート(D)の粘着処理側を重ね合せてゴムローラーで圧着し、目的とする転写印刷シートを得た。
このようにして得られた転写印刷シートから剥離シートを剥離除去し、その剥離した面(界面活性剤配合接着剤組成物印刷層(B)を設けた面)をABS板に貼着し、指で数回押さえつけた後、静かに保護シート(D)を剥離除去したところ、ABS板には(B)/(C)からなるパターンのみが残存し、転写が完了した。
保護シート(D)剥離後、室温に7日間放置し、被写体であるABS板への付着性、耐水性、耐湿性等を調べた。結果を第1表に示す。
実施例2
実施例1で得たアクリル共重合体100部に対し、エマルジョン型のシリコーンである信越シリコーン株式会社製KM85を0.5部、溶剤としてのイソホロンを50部、界面活性剤としてのジアルキルスルホコハク酸塩系界面活性剤(第一工業製薬株式会社製ネオコールSWC)を1部混合して接着剤組成物を得、以下、実施例1と同様にして実験を行った。結果を第1表に合せて示す。
実施例3
実施例1で得たアクリル共重合体100部に対し、エマルジョン型のシリコーンである信越シリコーン株式会社製KM85を0.5部、溶剤としてのイソホロンを50部、界面活性剤としてのポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックポリマー(第一工業製薬株式会社製エパン420)を1部混合して接着剤組成物を得、以下、実施例1と同様にして実験を行った。結果を第1表に併せて示す。

印刷適性は、接着剤組成物をシルクスクリーン印刷し、70℃で5分間乾燥後の印刷面で目視判定した。
仕上り性は、接着剤組成物印刷層上に白インキを印刷し、70℃で10分間乾燥後に、表面のハジキ、フクレ、ヘコミ等の外観を目視判定した。 付着性は、貼着インク層上にカミソリ刃で×印に切口を入れ、セロハン粘着テープにて剥離テストした。
耐水性は、転写印刷を施した被写体を常温水中に48時間浸漬し、引上げ直後の状態を目視判定した。
耐湿性は、転写印刷を施した被写体を40℃、95%RHの条件下に24時間放置し、取出し直後の状態を目視判定した。
比較例1
接着剤組成物の調製に際し界面活性剤の配合を省略したほかは、実施例1と同様にして実験を行ったが、
接着剤の印刷適性 ハジキ多い
印刷後の仕上り性 ヘコミ多い
被写体への付着性 弱い
耐水性 ハガレあり
耐湿性 フクレあり
という結果が得られた。
実施例4
かくはん機、温度計、コンデンサー、滴下ロートおよび窒素ガス吹き込み装置を備えたフラスコに水340部と乳化剤としてのネオゲンR(第一工業製薬株式会社製)を仕込み、かくはんおよび窒素ガスの吹き込みを続けながら80℃まで昇温し、ついで温度を78〜82℃に保ちながら、2-エチルヘキシルアクリレート315部、ブチルアクリレート250部、メタクリル酸29部、ヒドロキシエチルアクリレート5部、ジアリルフタレート1部よりなる混合液を滴下ロートより3時間かけて滴下し、別のロートから過硫酸アンモニウム2%液(重合開始剤)150部を3.5時間かけて滴下した。さらに同温度で3時間反応を続けることによって、数平均分子量152000、不揮発分50%のアクリル共重合体を得た。
次に、上記で得たアクリル共重合体100部に対し、消泡剤としてノプコ8034(サンノプコ株式会社製)を0.2部、ヒドロキシエチルセルロース3%水溶液を20部、界面活性剤としてフッ素系界面活性剤の1%水溶液を10部混合し、界面活性剤配合接着剤組成物を得た。
以下、実施例1と同様にして実験を行った。ただし、シルクスクリーン印刷によるインクの印刷は、多色の重ね刷りとし、また最上層は無色のインクを用いて行った。
結果を第2表に示す。
実施例5
実施例2で得たアクリル共重合体100部に対し、消泡剤としてノプコ8034(サンノプコ株式会社製)を0.2部、ヒドロキシエチルセルロース3%水溶液を20部、界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸塩系界面活性剤を1部混合して接着剤組成物を得、以下、実施例4と同様にして実験を行った。結果を第2表に合せて示す。

比較例2
接着剤組成物の調製に際し界面活性剤の配合を省略したほかは、実施例4と同様にして実験を行ったが、
接着剤の印刷適性 ハジキ多い
印刷後の仕上り性 ヘコミ多い
被写体への付着性 弱い
耐水性 ハガレ、フクレあり
耐湿性 ハクリ
という結果が得られた。
発明の効果
本発明においては、次に列挙するようなすぐれた効果が奏される。
被写体に、直刷りしたのと変らないような鮮明で美麗なパターンをワンタッチで転写印刷できる。
剥離シート上に接着剤組成物を印刷しているにもかかわらず、印刷をたとえばシルクスクリーン印刷で行っても、印刷面にハジキ、ワレ、収縮、ヘコミ等を生じない。
被写体に貼着後直ちに保護シートの剥離除去ができるので、転写に要する時間が極めて短かくてすみ、しかも転写操作に熟練を要しない。
接着剤組成物による印刷層とインクまたは塗料による印刷層とが実質状同一パターンであるので、接着剤組成物のはみ出しがない。
事前に転写印刷シートや被写体を水やアルコールで湿潤させておく必要がないので、水やアルコールに冒される被写体にも適用できる。
印刷によって構成された層のみが転写されるため、屋外耐候性、柔軟性、耐熱性など被写体の要求性能に応じた設計が可能となる。
印刷のみによって得られた転写印刷シートであるため、打ち抜きや余分なスペースを必要とせず、製法の簡素化、デザインの優位性がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は剥離シート(A)上に界面活性剤配合接着剤組成物による所定のパターンの印刷層(B)を設けた状態を示した模式断面図である。
第2図は本発明の転写印刷シートの一例を示した一部切欠き斜視図、第3図はその模式断面図、第4図はその分解図である。
(A)…離型性を有する剥離シート、(B)…界面活性剤配合接着剤組成物による印刷層、(C)…インクによる印刷層、(D)…保護シート
 
訂正の要旨 A,訂正事項a
請求公告明細書の特許請求の範囲(請求公告公報第1頁参照。なお、請求公告公報において記号(A)ないし(D)に括弧がないのは公報編纂時の誤記である。)の記載、
「1.離型性を有する剥離シート(A)の離型性保有面に、界面活性剤を配合した接着剤組成物による所定のパターンの印刷層(B)を設け、ついで該印刷層(B)上に、前記と実質状同一のパターンを描くようにインクによる単色または多色の印刷層(C)を設け、さらにその印刷層(C)の上から、前記パターンよりも広い面積を覆う剥離可能な保護シート(D)を設けた構成を有する転写印刷シート。
2.界面活性剤の配合量が、接着剤組成物全量に対し0.00001〜20重量%である特許請求の範囲第1項記載の転写印刷シート。
3.接着剤組成物に配合する界面活性剤の少なくとも一部に、ジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の転写印刷シート。」
を、
「1.その上に印刷を行うための離型性を有する剥離シート(A)の離型性保有面に、配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧接着剤組成物による所定のパターンの印刷層(B)を設け、ついで該印刷層(B)上に、前記と実質状同一のパターンを描くようにインクによる単色または多色の印刷層(C)を設け、さらにその印刷層(C)の上から、前記パターンよりも広い面積を覆うための、軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理が施された透明なフィルムまたはシートからなる剥離可能な保護シート(D)を貼付設置した構成を有する転写印刷シート。
2.界面活性剤の配合量が、接着剤組成物全量に対し0.00001〜20重量%である特許請求の範囲第1項記載の転写印刷シート。」
と訂正する。(下線部は訂正個所を示す。以下、同じ。)
B,訂正事項b
請求公告明細書の6頁20行(請求公告公報2頁右欄35行)の記載、
「離型性を有する」を、
「その上に印刷を行うための離型性を有する」
と訂正する。
C,訂正事項c
請求公告明細書の7頁1〜2行(請求公告公報2頁右欄36〜37行)の記載、
「界面活性剤を配合した」
を、
「配合界面活性剤の少なくとも一部にジアルキルスルホコハク酸塩、有機ケイ素系化合物、フッ素系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤を用いた界面活性剤配合感圧」
と訂正する。
D,訂正事項d
請求公告明細書の7頁7行(請求公告公報2頁右欄41行)の記載、
「覆う」
を、
「覆うための、軽度の粘着力を有する接着剤によるコーティング処理が施された透明なフィルムまたはシートからなる」
と訂正する。
E,訂正事項e
請求公告明細書の7頁8行(請求公告公報2頁右欄42行)の記載、
「設けた」
を、
「貼付設置した」
と訂正する。
F,訂正事項f
請求公告明細書の8頁7行(請求公告公報3頁左欄18行)の記載、
「上記の」
を、
「その上に印刷を行うための」
と訂正する。
G,訂正事項g
請求公告明細書の8頁9行(請求公告公報3頁左欄19〜20行)の記載、
「接着剤組成物」
を、
「感圧接着剤組成物」
と訂正する。
H,訂正事項h
請求公告明細書の8頁12〜15行(請求公告公報3頁左欄22〜25行)の記載、
「ここで接着剤組成物としては、感圧接着剤(粘着剤)組成物が好適に使用されるが、場合によっては感熱接着剤組成物、再湿接着剤組成物も使用される。」
を、
「以下、接着剤組成物とは、感圧接着剤組成物を意味するものとする。」
と訂正する。
I,訂正事項i
請求公告明細書の13頁12行(請求公告公報4頁左欄34行)の記載、
「これらの界面活性剤の中では、」
を、
「そして本発明においては、これらの界面活性剤のうち、本発明の目的にとって特に好ましい」
と訂正する。
J,訂正事項j
請求公告明細書の13頁16〜17行(請求公告公報4頁左欄38〜39行)の記載、
「用いることが、本発明の目的にとって特に好ましい。」
を、
「用いる。」
と訂正する。
K,訂正事項k
請求公告明細書の16頁10行(請求公告公報5頁左欄2行)の記載、
「覆う」
を、
「覆うための」
と訂正する。
L,訂正事項l
請求公告明細書の16頁10〜11行(請求公告公報5頁左欄3〜4行)の記載、
「貼付等の手段により設ける。」
を、
「貼付設置する。」
と訂正する。
M,訂正事項m
請求公告明細書の16頁11行(請求公告公報5頁左欄4行)の記載、
「設置」
を、
「貼付設置」
と訂正する。
N,訂正事項n
請求公告明細書の16頁18行(請求公告公報5頁左欄10行)の記載、
「必要に応じ軽度の粘着力」
を、
「軽度の粘着力」
と訂正する。
O,訂正事項o
請求公告明細書の17頁2〜3行(請求公告公報5頁左欄13〜15行)の記載、
「特殊な場合は、紙を保護シート(D)として用いることもできる。」
を削除する。
P,訂正事項p
請求公告明細書の25頁15行〜26頁3行(請求公告公報7頁左欄9〜16行)の実施例6に係る記載、
「実施例6
実施例2で得たアクリル共重合体100部に対し、消泡材ノブコ8034(サンノブコ株式会社製)0.2部、ヒドロキシエチルセルローズ3%水溶液を20部、界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフエノールエーテルを3部混合して接着剤組成物を得、以下、実施例4と同様にして実験を行った。結果を第2表に合せて示す。」
を削除する。
Q,訂正事項q
請求公告明細書の26頁(請求公告公報7頁左欄)の第2表のうち実施例6の列(縦1列)を削除する。
審理終結日 2001-07-24 
結審通知日 2001-07-30 
審決日 2001-08-15 
出願番号 特願昭59-254534
審決分類 P 1 41・ 83- Y (B44C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 美知子大矢 弘昭  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 岡田 和加子
和泉 等
登録日 1992-07-13 
登録番号 特許第1677709号(P1677709)
発明の名称 転写印刷シ-ト  
代理人 大石 征郎  
代理人 大石 征郎  

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