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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A01K
管理番号 1050860
審判番号 無効2000-35477  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-07-21 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-09-06 
確定日 2001-12-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第3013247号発明「アコヤガイの養殖方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3013247号の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3013247号発明は、平成10年10月22日(優先権主張平成9年10月28日)に出願され、平成11年12月17日にその特許権の設定の登録がなされ、平成12年9月6日に社団法人日本真珠振興会らから本件特許を無効にすることについての審判が請求され、平成13年6月28日に特許庁審判廷において、口頭審理並びに西村愼吾、山本とし隆及び平井善正の証人尋問が行われたものである。

2.本件発明
本件特許第3013247号の請求項1ないし2に係る発明(以下、「本件請求項1に係る発明」、「本件請求項2に係る発明」という)は、特許明細書の記載からみて特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載されたとおりの、
「【請求項1】 日本の環境水域において中国産天然雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、日本産天然雌アコヤガイの卵子を人工採取し、人工採取した該卵子と精子を合わせて人工交配させ、人工交配によって生まれた幼生を日本の環境水域で養育し稚貝を養殖することを特徴とするアコヤガイの養殖方法。
【請求項2】 日本の環境水域において日本産天然雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、中国産天然雌アコヤガイの卵子を人工採取し、人工採取した該卵子と精子を合わせて人工交配させ、人工交配によって生まれた幼生を日本の環境水域で養育し稚貝を養殖することを特徴とするアコヤガイの養殖方法。」
である。

3.請求人らの主張
請求人らは、下記の証拠方法を提示し、本件発明の特許は次の理由により特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきである旨主張する。
(1)本件特許発明は、甲第7号証ないし甲第16号証のとおり、特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明若しくは公然実施をされた発明であり、特許法第29条第1項第1号ないし同第2号の規定により特許を受けることができないものである。
(2)本件特許発明は、甲第7号証ないし甲第16号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(i)書証
甲第1号証:社団法人日本真珠振興会の定款
甲第2号証:団体等の組織概要図
甲第3号証:被請求人の平成12年3月10日付証拠保全申立書
甲第4号証:松山地方裁判所宇和島支部の平成12年4月7日付呼出状
甲第5号証:被請求人代理人作成の平成12年5月2日付通知書
甲第6号証:請求人代理人作成の平成12年5月12日付回答書
甲第7号証の1〜3:平成8年2月22日に農林水産省で行われた「平成7年度新品種作出基礎技術開発事業年度末報告会議」において配布された文献
甲第8号証の1〜3:平成9年2月25日に農林水産省で行われた「平成8年度新品種作出基礎技術開発事業年度末報告会議」において配布された文献
甲第9号証の1〜3:平成7年10月4日に松山市「にぎたつ会館」で行われた「平成7年度『新品種作出基礎技術開発事業』貝類第一チーム(アコヤガイ)中間報告会」において配布された文献
甲第10号証の1〜3:平成8年10月1日に麻布大学本館第1会議室で行われた「『新品種作出基礎技術開発事業』貝類第一(アコヤガイ)チーム 平成8年度中間検討会」において配布された文献
甲第11号証の1〜2:平成8年10月に水産庁研究部研究課が発行した「平成7年度 新品種作出基礎技術開発事業研究成果の概要」の275〜280頁
甲第12号証:昭和52年8月2日付「夕刊三重」の新聞記事の抜粋
甲第13号証:昭和52年8月18日付「朝日新聞」の新聞記事の抜粋
甲第14号証:昭和57年9月21日付「真珠新聞」の新聞記事の抜粋
甲第15号証:1984年(昭和59年)に養殖研究所が発行した「養殖研究所研究報告 第6号」の121〜157頁
甲第16号証:昭和54年4月に三重県浜島水産試験場が発行した「アコヤガイ人工採苗の手引き」
甲第17号証:「水産業改良普及事業の運用について」の水産庁長官通達
甲第18号証:「『水産業改良普及事業推進要綱』等の制定について」の農林事務次官依命通達
甲第19号証:「愛媛県行政組織規則」の一部
甲第20号証:愛媛県発行の愛媛県水産試験場の「パンフレット」
甲第21号証:1991年2月19日発行の和田浩爾著「科学する真珠養殖」41頁記事
甲第22号証の1:西村真珠有限会社から日本真珠振興会への1999年12月10日付け書面の写し
甲第22号証の2:西村真珠有限会社における「中国貝交配の経過一覧」写し
甲第22号証の3:西村真珠有限会社における「採苗報告書」写し
(ii)人証
宮下 豊
愛媛県北宇和郡津島町成223番地
高橋 雅治
愛媛県宇和島市明倫町3丁目81番
西村 愼吾
長崎県西彼杵郡西彼町亀浦郷1070
山本 とし隆(「とし」は、りっしんべんに喜)
三重県志摩郡志摩町御座270番地
平井 善正
長崎県下県郡豊玉町大字嵯峨247番地

4.被請求人の主張
被請求人は、下記の証拠方法を提示し、甲第7号証〜甲第11号証は、愛媛県水産試験場と内海村海洋資源開発センターの担当者が自らの行った業務内容を所属部所あるいは関係部所に報告するために作成されたものであり、研究発表論文等とは相違して、不特定人に公開することを目的として作成されたものではないから、この報告書等が公然と知り得る状態におかれたものであるとは到底推認することはできないので、この甲第7号証〜甲第11号証によって「中国産アコヤガイと日本産アコヤガイとを人工交配させて養殖する方法」が本件出願前公然と知られたものであるか否かを判断することはできない。
また、仮に、甲第7号証〜甲第11号証の報告書等が、公然と知られたものであると仮定しても、これら甲号証には本件特許発明の一部が示唆されているに過ぎず、また、本件発明の効果はこれら甲号証記載の発明から予測できるものではないから、本件特許発明が甲第7号証〜甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者により容易に発明をすることができたものではない。

乙第1号証:全真連だより(第14号)
乙第2号証:朝日新聞 1998年4月21日朝刊
乙第3号証:朝日新聞 2000年6月6日朝刊
乙第4号証:愛媛新聞 2000年4月20日朝刊

5.当審の判断
5-1.甲号証の公知性につて
甲第11号証は、平成8年10月に水産庁研究部研究課が「平成7年度 新品種作出基礎技術開発事業 研究成果の概要」として発行したものであり、本件出願前に頒布された刊行物であると認められる。
甲第7号証ないし甲第10号証は、愛媛県水産試験場と内海村海洋資源開発センターが「新品種作出基礎技術開発事業」として研究していた「四国地域優良真珠母貝の育成」に関する文献であり、これら文献は、各県の水産試験場、漁業センター、水産研究センター等が新品種作出基礎技術開発についての研究成果を報告するための会議において、出席者に配布されたものであり、その会議は特定の利益団体の者のみが参加するものではなく、各県の水産試験場、漁業センター、水産研究センター等が互いにその研究成果を発表しあうためのものと思料され、その会議の性格、及び水産試験場等が試験研究成果の普及をその目的の一つとしている(甲第20号証)こと等を考慮すると、前記会議で発表された内容について出席者に守秘義務が課せられているとは到底考えられない(現に、西村愼吾の証人調書によると、証人西村愼吾は、愛媛県のデータや水産庁のデータは依頼すると、簡単に入手できること、また、愛媛県水産試験場が中国貝と日本貝との交配をしたニュースをキャッチして平成8年に中国貝と日本貝との交配をおこなったと証言している。平井善正の証人調書によると、証人平井善正は、「愛媛水産試験場には度々行っておりますから、お願いすれば入手できます。」と証言している)から、甲第7号証ないし甲第10号証は本件出願前に頒布された刊行物であるということができる。
たとえ、研究途中におけるものには守秘義務があると仮定したとしても、甲第9号証は、平成7年度新品種作出基礎技術開発事業における貝類第一チーム(アコヤガイ)が平成7年10月4日に行った中間報告会において配布され、甲第7号証は、平成8年2月22日に行われた平成7年度新品種作出基礎技術開発事業年度末報告の会議において配布されたものであるが、その後、甲第9号証及び甲第7号証における平成7年度新品種作出基礎技術開発の研究結果は、平成8年10月に「平成7年度 新品種作出基礎技術開発事業研究成果の概要」(甲第11号証)としてまとめられ水産庁研究部研究課から報告書が出されているのであるから、平成7年度新品種作出基礎技術開発事業に関する文献である甲第9号証及び甲第7号証を平成8年10月以降においてもなお秘密にする理由があるとは考えられない。
5-2.甲号証に記載された事項
甲第9号証の3である「平成7年度 アコヤガイ新品種作出基礎技術開発研究 中間報告会資料」の3頁には、
「平成7年度の種苗生産経過
1 親貝の内訳を示した。(表5)
・・・
2 採苗区分
・・・
D 中国区
業者から入手した中国産のアコヤガイを親貝とした。(♂2個体:♀3個体)
E 中国×日本区
中国産のアコヤガイ(♂)と内海産のアコヤガイ(♀)を親貝とした。
(♂3個体:♀3個体)
・・・
4 採卵・媒精
切開法による採卵を行った。各区とも,(マル1)雌を解体して,10リットルのアンモニア添加海水中に全個体の卵を振り出す。(マル2)雄を解体して,全個体の精子を振り出し,精子濃度活性を確認した後に媒精した。(マル3)媒精後に,直ちに20μメッシュで洗卵を行う。(マル4)25℃の30リットルのパンライトの孵化水槽に収容した。
5 浮遊幼生飼育・採苗
D型幼生になった時点で30〜1,000リットルの飼育水槽に収容した。・・・眼点の出現した時点で付着器を投入し,3〜5日後に付着幼生の剥離作業を行った。」と記載されている。
また、「表5 平成7年度生産に用いた親貝調査結果」中には、炭酸脱水酵素が、中国貝では「27.3」であり、内海・高知の貝では「25.0」であり、「表6 各区の採苗結果」中には、採苗区Eでは、排卵日が6/1であり、推定1180万粒の産卵数があり、推定5万個体の採苗数があったことが示されている。
また、同号証の4頁には、
「中国産アコヤガイについて
真珠業者から平成7年2月に持ち込まれた中国産のアコヤガイについて調査した。
(マル1) 中国産アコヤガイの貝殻
内海の天然貝にくらべて殻幅が厚く,貝殻強度が高いことが特徴的であった。(表7)
・・・
(マル2) 中国産アコヤガイの肉質
中国産のアコヤガイは・・・貝柱が大きく,クリコーゲン量が多かった。又,充実度も高いことから肉質的には優良な母貝と思われる。
・・・
(マル3) 中国産アコヤガイの抑制中の変化
抑制中の貝の衰弱が少なく,又,筋肉の破断エネルギーが高いことから挿核後のへい死も少ないと思われた。又,抑制中の衰弱が少ない点も抑制貝に適していると考えられた。(表9)」と記載されており、「表7 中国産アコヤガイの貝殻の特徴」中には、貝殻強度が、中国産の貝では「8.5」であり、内海天然の貝では「4.5」であることが、「表8 中国産アコヤガイの肉質について」中には、グリコーゲン量が、中国産の貝では「2.6」であり、内海の貝では「1.3」であることが、「表9 抑制後の肉質について」中には、グリコーゲン量が、中国産では「0.40」であり、下灘の貝では「0.33」であることが、それぞれ示されている。
上記記載によると、甲第9号証には、
中国産雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、内海産の雌アコヤガイの卵子を人工採取し、人工採取した該卵子と精子を合わせて人工交配させ、人工交配によって生まれた幼生を養育し稚貝を養殖するアコヤガイの養殖方法(以下、「甲第9号証の発明」という)が記載されていると認められる。
甲第11号証の2には、「四国地域優良真珠母貝の育成」に関し、
「(マル3) 平成7年度の種苗生産は、5試験区で各区、雌雄2〜5貝使用して採苗を行った。推定フ化率は、40〜60%で、沖出し時の採苗数は1〜15万貝であった。」(275頁下から3行〜末行)と、
「(マル3) 種苗生産
平成5年度に生産した貝を親貝として第2世代の種苗生産を行った。又、中国産のアコヤガイを親貝とした交配も行った。
選抜を終了して内海で養成中の貝を内海村海洋資源開発センターに搬入し、室内で仕立てた後、生殖巣を切開して人工授精した。幼生の飼育は1トンパンライト水槽で行い、餌料はPavlova及びCheatocerosを与えた。生産した稚貝は遮光ネットに付着させ、殻長が約2mmになるまで育成してから40目ネット籠に入れて沖だしを行った。」(277頁1〜8行)と、
「(マル3) 平成7年度種苗生産結果
平成5年度生産貝を親貝としたF2の生産及び、中国産のアコヤガイを親貝とした種苗生産を行った。種苗生産に用いた親貝の調査結果を表8に、各区の採苗結果を表9に示した。・・・中国貝は、日本産アコヤガイにくらべ、殻幅が大きい点と貝殻真珠層色の黄色度が大きいのが特徴であった。」(279頁下から4行〜280頁3行)と記載されている。
そして、280頁の「表8 平成7年度種苗生産に用いた親貝調査結果」中には、血清亜鉛が、中国貝では「5.5」であり、内海・高知の貝では「5.0」であり、炭酸脱水酵素が、中国貝では「0.27」であり、内海・高知の貝では「0.25」であることが、また、「表9 平成7年度生産の採苗結果」中には、親貝数が「♂3:♀3」の「中国×日本」を6/1に採卵し、推定1180万粒の産卵数があり、推定5万個体の採苗数があったことが示されている。
上記記載によると、「生殖巣を切開して人工授精し」ているので、甲第11号証には、
中国産雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、日本産雌アコヤガイの卵子を人工採取し、人工採取した該卵子と精子を合わせて人工交配させ、人工交配によって生まれた幼生を養育し稚貝を養殖するアコヤガイの養殖方法(以下、「甲第11号証の発明」という)が記載されていると認められる。
甲第15号証には、「実験II母集団としては,天然種苗の主産地である高知県竜串の天然生息貝より無作為に選んだ数10個体より,採卵された英虞湾で育成されたものを用いた。」(122頁24〜25行)

5-3.対比・判断
5-3-1.本件請求項1に係る発明について
5-3-1-1.本件発明と甲第9号証の発明との対比
本件請求項1に係る発明と甲第9号証の発明とを対比すると、甲第9号証の発明の「内海産の雌アコヤガイ」は「日本産雌アコヤガイ」に相当するから、両者は、
中国産雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、日本産雌アコヤガイの卵子を人工採取し、人工採取した該卵子と精子を合わせて人工交配させ、人工交配によって生まれた幼生を養育し稚貝を養殖するアコヤガイの養殖方法で一致し、
(A)本件請求項1に係る発明では、「日本の環境水域において中国産天然雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、日本産天然雌アコヤガイの卵子を人工採取し」ているのに対し、甲第9号証の発明では、中国産雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、日本産雌アコヤガイの卵子を人工採取している点
(B)本件請求項1に係る発明では、「幼生を日本の環境水域で養育し稚貝を養殖する」のに対し、甲第9号証の発明では、幼生を日本の環境水域で養育し稚貝を養殖しているか不明である点
で構成が相違している。
まず、上記(A)の相違点について検討する。
甲第9号証の発明は、日本において中国産雄アコヤガイの精子を人工採取しているのであるから、日本の環境水域の海水、すなわち、日本の環境水域において中国産雄アコヤガイの精子を人工採取している(これに関し、証人西村愼吾は、日本で人工交配をする場合には日本の海水以外は考えられないと証言している)といえる。
また、育種において、親貝に人工貝を使うか天然貝を使うか(甲第15号証参照、証人平井善正は「まず最初は天然を使います。」と証言している)は、当業者が適宜選択して行うことであるから、甲第9号証の発明において、中国産雄アコヤガイと日本産雌アコヤガイを天然のものにすることは当業者が容易に想到できることである。
次に、上記(B)の相違点について検討すると、甲第9号証の発明は、日本において幼生を養育し稚貝を養殖しているのであるから、日本の環境水域の海水、すなわち、日本の環境水域で幼生を養育し稚貝を養殖しているといえる。
そして、本件請求項1に係る発明が奏する効果は、中国貝が、炭酸脱水酵素が多く、グリコーゲンが高く、水温の高いところで生息していて夏に強く、強靱であること、また、育種において雑種強勢といわれていること等を考慮すると甲第9号証に記載された発明から予測できる程度のことであって格別顕著なものとはいえない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5-3-1-2.本件発明と甲第11号証の発明との対比
本件請求項1に係る発明と甲第11号証の発明とを対比すると、両者は、
中国産雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、日本産雌アコヤガイの卵子を人工採取し、人工採取した該卵子と精子を合わせて人工交配させ、人工交配によって生まれた幼生を養育し稚貝を養殖するアコヤガイの養殖方法で一致し、
(A)本件請求項1に係る発明では、「日本の環境水域において中国産天然雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、日本産天然雌アコヤガイの卵子を人工採取し」ているのに対し、甲第11号証の発明では、中国産雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、日本産雌アコヤガイの卵子を人工採取している点
(B)本件請求項1に係る発明では、「幼生を日本の環境水域で養育し稚貝を養殖する」のに対し、甲第11号証の発明では、幼生を日本の環境水域で養育し稚貝を養殖しているか不明である点
で構成が相違している。
まず、上記(A)の相違点について検討する。
甲第11号証の発明は、日本において中国産雄アコヤガイの精子を人工採取しているのであるから、日本の環境水域において中国産雄アコヤガイの精子を人工採取しているといえる。
また、育種において、親貝に人工貝を使うか天然貝を使うかは、当業者が適宜選択して行うことであるから、甲第11号証の発明において、中国産雄アコヤガイと日本産雌アコヤガイを天然のものにすることは当業者が容易に想到できることである。
次に、上記(B)の相違点について検討すると、甲第11号証の発明は、日本において幼生を養育し稚貝を養殖しているのであるから、日本の環境水域で幼生を養育し稚貝を養殖しているといえる。
そして、本件請求項1に係る発明が奏する効果は、中国貝が、炭酸脱水酵素が多く、水温の高いところで生息していて夏に強いこと、また、育種において雑種強勢といわれていること等を考慮すると甲第11号証に記載された発明から予測できる程度のことであって格別顕著なものとはいえない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-3-2.本件請求項2に係る発明について
5-3-2-1.本件発明と甲第9号証の発明との対比
本件請求項2に係る発明と甲第9号証の発明とを対比すると、両者は、
中国産アコヤガイと日本産アコヤガイから人工採取した卵子と精子を合わせて人工交配させ、人工交配によって生まれた幼生を養育し稚貝を養殖するアコヤガイの養殖方法で一致し、
(A)本件請求項2に係る発明では、「日本の環境水域において日本産天然雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、中国産天然雌アコヤガイの卵子を人工採取し」ているのに対し、甲第9号証の発明では、中国産雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、日本産雌アコヤガイの卵子を人工採取している点
(B)本件請求項2に係る発明では、「幼生を日本の環境水域で養育し稚貝を養殖する」のに対し、甲第9号証の発明では、幼生を日本の環境水域で養育し稚貝を養殖しているか不明である点
で構成が相違している。
まず、上記(A)の相違点について検討する。
甲第9号証の発明は、日本において中国産雄アコヤガイの精子を人工採取しているのであるから、日本の環境水域において中国産雄アコヤガイの精子を人工採取しているといえる。
そして、甲第9号証の発明では、雄アコヤガイを中国産とし、雌アコヤガイを日本産としているが、この雄雌を逆にし、雄アコヤガイを日本産とし、雌アコヤガイを中国産として育種しようとすることは当業者なら容易に想到できることであり、しかも、育種において、親貝に人工貝を使うか天然貝を使うかは、当業者が適宜選択して行うことであるから、甲第9号証の発明において、親貝を、日本産天然雄アコヤガイと中国産天然雌アコヤガイにすることは当業者が容易にできることである。
次に、上記(B)の相違点について検討すると、甲第9号証の発明は、日本において幼生を養育し稚貝を養殖しているのであるから、日本の環境水域で幼生を養育し稚貝を養殖しているといえる。
そして、本件請求項2に係る発明が奏する効果は、中国貝が、炭酸脱水酵素が多く、グリコーゲンが高く、水温の高いところで生息していて夏に強く、強靱であること、また、育種において雑種強勢といわれていること等を考慮すると甲第9号証に記載された発明から予測できる程度のことであって格別顕著なものとはいえない。
したがって、本件請求項2に係る発明は、甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5-3-2-2.本件発明と甲第11号証の発明との対比
本件請求項2に係る発明と甲第11号証の発明とを対比すると、両者は、
中国産アコヤガイと日本産アコヤガイから人工採取した卵子と精子を合わせて人工交配させ、人工交配によって生まれた幼生を養育し稚貝を養殖するアコヤガイの養殖方法で一致し、
(A)本件請求項2に係る発明では、「日本の環境水域において日本産天然雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、中国産天然雌アコヤガイの卵子を人工採取し」ているのに対し、甲第11号証の発明では、中国産雄アコヤガイの精子を人工採取すると共に、日本産雌アコヤガイの卵子を人工採取している点
(B)本件請求項2に係る発明では、「幼生を日本の環境水域で養育し稚貝を養殖する」のに対し、甲第11号証の発明では、幼生を日本の環境水域で養育しているか不明である点
で構成が相違している。
まず、上記(A)の相違点について検討する。
甲第11号証の発明は、日本において中国産雄アコヤガイの精子を人工採取しているのであるから、日本の環境水域において中国産雄アコヤガイの精子を人工採取しているといえる。
そして、甲第11号証の発明では、雄アコヤガイを中国産とし、雌アコヤガイを日本産としているが、この雄雌を逆にし、雄アコヤガイを日本産とし、雌アコヤガイを中国産として育種しようとすることは当業者なら容易に想到できることであり、しかも、育種において、親貝に人工貝を使うか天然貝を使うかは、当業者が適宜選択して行うことであるから、甲第11号証の発明において、親貝を、日本産天然雄アコヤガイと中国産天然雌アコヤガイにすることは当業者が容易にできることである。
次に、上記(B)の相違点について検討すると、甲第11号証の発明は、日本において幼生を養育し稚貝を養殖しているのであるから、日本の環境水域で幼生を養育し稚貝を養殖しているといえる。
そして、本件請求項2に係る発明が奏する効果は、中国貝が、炭酸脱水酵素が多く、水温の高いところで生息していて夏に強いこと、また、育種において雑種強勢といわれていること等を考慮すると甲第11号証に記載された発明から予測できる程度のことであって格別顕著なものとはいえない。
したがって、本件請求項2に係る発明は、甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-4.むすび
以上のとおり、本件の請求項1ないし2に係る発明は、甲第9号証又は甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたもであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-10-04 
結審通知日 2001-10-10 
審決日 2001-11-12 
出願番号 特願平10-301446
審決分類 P 1 112・ 121- Z (A01K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長井 啓子  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 二宮 千久
村山 隆
登録日 1999-12-17 
登録番号 特許第3013247号(P3013247)
発明の名称 アコヤガイの養殖方法  
代理人 中村 智廣  
代理人 中村 智廣  
代理人 川村 恭子  
代理人 佐々木 功  
代理人 飯田 堅太郎  
代理人 三原 研自  
代理人 飯田 昭夫  
代理人 川村 恭子  
代理人 中村 智廣  
代理人 三原 研自  
代理人 佐々木 功  
代理人 三原 研自  
代理人 川村 恭子  
代理人 三原 研自  
代理人 中村 智廣  
代理人 三原 研自  
代理人 佐々木 功  
代理人 川村 恭子  
代理人 川村 恭子  
代理人 佐々木 功  
代理人 中村 智廣  
代理人 中村 智廣  
代理人 三原 研自  
代理人 佐々木 功  
代理人 佐々木 功  
代理人 佐々木 功  
代理人 川村 恭子  
代理人 三原 研自  
代理人 中村 智廣  
代理人 川村 恭子  
代理人 川村 恭子  
代理人 川村 恭子  
代理人 中村 智廣  
代理人 佐々木 功  
代理人 中村 智廣  
代理人 中村 智廣  
代理人 川村 恭子  
代理人 佐々木 功  
代理人 佐々木 功  
代理人 川村 恭子  
代理人 佐々木 功  
代理人 川村 恭子  
代理人 三原 研自  
代理人 飯田 堅太郎  
代理人 佐々木 功  
代理人 佐々木 功  
代理人 中村 智廣  
代理人 佐々木 功  
代理人 川村 恭子  
代理人 佐々木 功  
代理人 佐々木 功  
代理人 中村 智廣  
代理人 飯田 昭夫  
代理人 中村 智廣  
代理人 中島 健一  
代理人 川村 恭子  
代理人 三原 研自  
代理人 佐々木 功  
代理人 佐々木 功  
代理人 三原 研自  
代理人 三原 研自  
代理人 江間 路子  
代理人 中村 智廣  
代理人 川村 恭子  
代理人 中村 智廣  
代理人 中村 智廣  
代理人 佐々木 功  
代理人 三原 研自  
代理人 三原 研自  
代理人 川村 恭子  
代理人 中村 智廣  
代理人 佐々木 功  
代理人 三原 研自  
代理人 三原 研自  
代理人 三原 研自  
代理人 川村 恭子  
代理人 三原 研自  
代理人 佐々木 功  
代理人 三原 研自  
代理人 中村 智廣  
代理人 中村 智廣  
代理人 川村 恭子  
代理人 川村 恭子  
代理人 佐々木 功  
代理人 中村 智廣  
代理人 中村 智廣  
代理人 中村 智廣  
代理人 川村 恭子  
代理人 三原 研自  
代理人 中村 智廣  
代理人 川村 恭子  
代理人 三原 研自  
代理人 佐々木 功  
代理人 川村 恭子  
代理人 江間 路子  
代理人 川村 恭子  
代理人 川村 恭子  
代理人 佐々木 功  
代理人 中村 智廣  
代理人 中村 智廣  
代理人 川村 恭子  
代理人 三原 研自  
代理人 佐々木 功  
代理人 三原 研自  
代理人 三原 研自  
代理人 三原 研自  
代理人 中島 健一  
代理人 三原 研自  
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