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審決分類 |
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない C08L |
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管理番号 | 1051028 |
審判番号 | 審判1999-39087 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1991-01-07 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 1999-10-26 |
確定日 | 2001-11-07 |
事件の表示 | 特許第2662070号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]請求の要旨 本件審判の請求の要旨は、特許第2662070号(平成2年2月16日出願 優先日平成1年2月16日 平成9年6月13日設定登録)の明細書を、審判請求書に添付した明細書のとおり、訂正しようとするものである。 [2]訂正事項 本件審判請求には、次の(1)、(2)の訂正事項が含まれている。 (1)特許請求の範囲の請求項1の「環状オレフィン系樹脂から成形されるインジェクションブロー成形品」なる記載を、「環状オレフィン系樹脂から、ブロー成形時のプリフォーム樹脂温度を前記環状オレフィン系樹脂の軟化温度(TMA)から(TMA-10)℃の範囲でインジェクションブロー成形して得られたインジェクションブロー成形品」と訂正する。 (2)明細書第66頁第18〜20行(本件特許公報第24頁第47欄第34〜36行)の「プリフオームの温度は、使用樹脂のTMAの±50℃の範囲になるようにするのが好ましい。」との記載を、「ブロー成形時のプリフォーム樹脂温度は、使用樹脂(環状オレフィン系樹脂)のTMAから(TMA-10)℃の範囲である。」と訂正する。 [3]訂正拒絶理由の概要 当審における、平成12年1月26日付けの訂正拒絶理由の概要は、上記訂正事項(1)、(2)は、いずれも、ブロー成形時のプリフォーム樹脂温度が、使用樹脂(環状オレフィン系樹脂)の軟化温度(TMA)から(TMA-10)℃の範囲であることを記載するものであるが、願書に添付した明細書又は図面には、ブロー成形時のプリフォーム樹脂温度と、使用樹脂(環状オレフィン系樹脂)の軟化温度を互いに関連付ける記載がなく、まして、両者の温度差を特定することに関して何も記載されていないから、これらの訂正事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではなく、したがって、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書の規定に適合しないというものである。 [4]判断 請求人は、訂正拒絶理由に対して、平成12年4月3日付けで意見書を提出し、訂正拒絶理由は、インジェクションブロー成形における技術常識あるいは技術的背景を全く考慮することなく本件特許明細書を極めて形式的に解釈したものであると主張している。 そして、請求人は、インジェクションブロー成形としてはホットパリソン法およびコールドパリソン法が知られており、このうちホットパリソン法が最も一般的な方法であること、ホットパリソン法では射出成形されたプリフオームは、加熱ポジションで温度調節されてブロー成形に適した温度(ブロー成形温度)とされ、このようにブロ一成形温度に調節されたプリフオームは、次いでブロー成形部へ移行され、割型で挟んでエアを吹き込みブロー成形されること(以下この方法を「ホットパリソン法A」という)を述べている。 そして、本件特許明細書の記載、特に、特許明細書の『射出等によってプリフォームを形成する場合の条件は、環状オレフィン系共重合体のTMAあるいはMFRによって相違するが、一般に樹脂温度150〜300℃、金型温度50〜150℃、射出圧力;一次圧600〜1500kg/cm2、二次圧400〜1200kg/cm2の範囲である。プリフォームの温度は、使用樹脂のTMAの±50℃の範囲になるようにするのが好ましい。 このようなプリフォーム10はブロー成形部へ移行した後、割型で挟んでエアを吹き込みブロー成形を行う。また、プリフォーム10の延伸倍率は容積比で2〜20倍の範囲が好ましい。』(本件公報第24頁第47欄第30〜40行)なる記載(以下この記載を「記載A」という)を、ホットパリソン法Aに基づいて解釈し、 『ホットパリソン法Aにおいて、プリフオームは、加熱ポジションなどで予熱を利用するなどして温度調節されてブロー成形に適した温度(ブロー成形温度)とされ、この際のプリフオームの温度が、本件特許明細書でいう「プリフオームの温度」であり、記載Aの「プリフォームの温度は、使用樹脂のTMAの±50℃の範囲になるようにするのが好ましい」との記載からみて、ブロー成形時のプリフォーム樹脂温度と、使用樹脂(環状オレフィン系樹脂)の軟化温度の関連は記載されている旨の主張』(以下、この主張を、「主張1」という)をしている。 そこで、まず、主張1について検討する。 請求人は、上述のとおり、本件特許明細書の記載を、ホットパリソン法Aに基づいて解釈しているが、本件特許明細書又は図面には、インジェクションブロー成形をホットパリソン法Aによって行った旨の記載はない。まして、本件特許明細書でいう「プリフオームの温度」が、加熱ポジションなどで予熱を利用するなどして温度調節されてブロー成形に適した温度(ブロー成形温度)とされる際のプリフオームの温度を意味する旨の記載はない。したがって、記載Aを含め、本件特許明細書に記載されたインジェクションブロー成形方法を、ホットパリソン法Aを前提として解釈することはできないし、本件特許明細書でいう「プリフオームの温度」の意味を、主張1のように解釈することもできない。 そして、訂正拒絶理由に示したとおり、記載Aにおける「プリフオームの温度」は、「射出等によってプリフォームを形成する場合のプリフォームの温度」を意味し、ブロー成形時のプリフォームの温度を意味するものではない。 この点について、以下に詳しく説明する。 まず、特許明細書には、記載Aを含め、次のとおり記載されている(特許公報第24頁左欄第18〜40行)。 「(成形方法) 本発明に係る成形品は、インジェクションブローにより成形される。 第1図に、本発明に係るインジェクションブロー成形品を製造する際に使用されるプリフォームの断面図を示す。第1図に示すプリフォーム10はコア型とキャビティ型で構成される型内部に溶融樹脂を射出することにより成形され、溶融樹脂は環状オレフィン系重合体からなっている。プリフォーム10は有底12を有し、プリフォームの壁肉厚A(例えば4.5mmt程度)は容易にコントロールが可能で偏肉がない。また、容器口部14はシーリングやキャピングに要求される精度を充分有している。 射出等によってプリフォームを形成する場合の条件は、環状オレフィン系共重合体のTMAあるいはMFRによって相違するが、一般に樹脂温度150〜300℃、金型温度50〜150℃、射出圧力;一次圧600〜1500kg/cm2、二次圧400〜1200kg/cm2の範囲である。プリフォームの温度は、使用樹脂のTMAの±50℃の範囲になるようにするのが好ましい。(以下、この段落を、「前段」という。) このようなプリフォーム10はブロー成形部へ移行した後、割型で挟んでエアを吹き込みブロー成形を行う。また、プリフォーム10の延伸倍率は容積比で2〜20倍の範囲が好ましい。(以下、この段落を、「後段」という。)」 上記記載は、本件特許発明に係るインジェクションブロー成形品の成形方法を記載したものである。そして、前段は、「射出等によってプリフォームを形成する場合の条件は、」なる文章で始まることから明らかなように、射出等によってプリフォームを形成する場合の条件を記載した段落である。また、後段は、「このようなプリフォーム10はブロー成形部へ移行した後、・・・ブロー成形を行う。」という文章から始まることから明らかなように、ブロー成形に関して記載した段落である。 そして、「プリフォームの温度は、使用樹脂のTMAの±50℃の範囲になるようにするのが好ましい。」との記載は前段にあるから、ここでいう「プリフォームの温度」は、当然、射出等によってプリフォームを形成する場合のプリフォームの温度を意味し、後段におけるブロー成形時のプリフォームの温度を意味するものではない。 仮に、請求人が主張するように、記載Aが、ホットパリソン法Aを前提として記載されたと仮定しても、「プリフオームの温度」を、「射出等によってプリフォームを形成する場合のプリフォームの温度」と解釈することに、何の矛盾もない。 また、請求人は、 『本件特許明細書には、「プリフオームの温度」および「プリフオームの温度」(「プリフオーム温度」の誤記と認められる)という表現は、本件公報第24頁の「プリフォームの温度は、使用樹脂のTMAの±50℃の範囲になるようにするのが好ましい。」および本件公報第25頁の表1の「ブロー条件、プリフオーム温度(℃)」にしか現れておらず、両者が同一の意味を有する解釈することに何らの不自然さもなく、インジェクションブロ一分野における当業者であれば、両者が同一の意味を有すると解することはごく当然のことである。むしろ両者が異なる意味を有すると解する方が不自然かつ不合理である。』 とも主張している。 しかし、表1における「ブロー条件 プリフォーム温度(℃)」におけるプリフォーム温度とは、実施例1〜4で採用されたブロー成形時のプリフォーム温度であって、このプリフォーム温度は、上記「記載A」とは何の関連もなく記載されている。したがって、表1にブロー成形時のプリフォーム温度が記載されているからといって、表1とは関係のない別の箇所の「記載A」における「プリフォームの温度」まで、ブロー成形時のものと解することはできない。 また、仮に、記載Aにおける、「プリフォームの温度は、使用樹脂のTMAの±50℃の範囲になるようにするのが好ましい。」との記載を、「ブロー成形時のプリフォームの温度は、使用樹脂のTMAの±50℃の範囲になるようにするのが好ましい」と解釈するのであれば、環状オレフィン系樹脂のTMAより15℃低いプリフォーム温度ではブロー成形自体ができなかったことを示す、本件審判請求書第13〜24頁の(5)の記載とは矛盾することになる。 以上の点からみて、主張1は採用できない。 さらに、請求人は、ホットパリソン法には、ホットパリソン法A以外に、プリフォームを特に大きな温度調整することなくブロー成形する方法(以下、「ホットパリソン法B」という)もあること、また、コールドパリソン法も知られていることを述べ、『本件特許明細書におけるインジェクションブロー成形方法を、これらの方法に基づいて解釈しても、「プリフオームの温度」を「ブロー成形時のプリフオーム温度」と解することに何らの不自然さもないとの主張』(以下、この主張を、「主張2」という)をしている。 しかし、本件特許明細書には、インジェクションブロー成形をホットパリソン法Bや、コールドパリソン法によって行った旨の記載もない。したがって、本件特許明細書に記載されたインジェクションブロー成形方法を、これらの方法を前提として解釈すること自体適切ではない。 そして、記載Aにおける「プリフオームの温度」が、特許明細書の記載からみて、射出等によってプリフォームを形成する場合のプリフォームの温度を意味し、ブロー成形時のプリフォームの温度を意味するものではないことは上述のとおりである。そして、記載Aが、ホットパリソン法Bやコールドパリソン法を前提として記載されたと仮定しても、「プリフオームの温度」を、「射出等によってプリフォームを形成する場合のプリフォームの温度」と解釈することに、何の矛盾もない。 したがって、主張2も採用できない。 さらに、記載A以外の特許明細書又は図面の記載を検討しても、ブロー成形時のプリフォーム樹脂温度が、使用樹脂(環状オレフィン系樹脂)の軟化温度(TMA)から(TMA-10)℃の範囲であることの記載はなされていない。 したがって、訂正事項(1)、(2)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではない。 [5]むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書の規定に適合しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-06-29 |
結審通知日 | 2000-07-11 |
審決日 | 2000-08-01 |
出願番号 | 特願平2-35254 |
審決分類 |
P
1
41・
841-
Z
(C08L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杉原 進、天野 宏樹 |
特許庁審判長 |
柿崎 良男 |
特許庁審判官 |
船岡 嘉彦 石井 あき子 |
登録日 | 1997-06-13 |
登録番号 | 特許第2662070号(P2662070) |
発明の名称 | インジェクションブロー成形品 |
代理人 | 牧村 浩次 |
代理人 | 鈴木 俊一郎 |