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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C07D
審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C07D
審判 一部申し立て 発明同一  C07D
管理番号 1051387
異議申立番号 異議2001-70388  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-02 
確定日 2001-09-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3078244号「環状アミン誘導体」の請求項1、3、6ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3078244号の請求項1、3、6ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3078244号発明は、昭和63年6月22日(優先権主張昭和62年6月22日、日本国)に出願した特願昭63-153852号の一部を平成6年11月25日に新たな特許出願とした特願平6-291169号の一部をさらに平成9年7月11に新たな特許出願としたものであって、平成12年6月16日にその特許権の設定登録がなされ、その後、鈴木教子より特許異議申立がなされ、当審より取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年7月13日に訂正請求(後日取下)がなされた後、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年8月8日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(a)訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1が
「 次の一般式(I-1)で表される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩。……
ただし、以下の(1)〜(9)である場合を除く。
……又はシクロアルキル基である場合。]」とあるのを
「次の一般式(I-1)で表される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩。……
ただし、以下の(1)〜(16)である場合を除く。
……又はシクロアルキル基である場合。
(10) 次式で表される化合物
【化3】

(式中、Phはフェニル基、K11は、-CO(CH2)CH3、-COCH(CH3)2、-CO(CH2)3CH3、-CO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3、メチル基、フェネチル基、3,4-ジメトキシフェニルエチル基又は3,4-ジアセトキシフェニルエチル基を意味する。)
(11) 次式で表される化合物
【化4】

(式中、K12は、-(CH2)2CH(CH3)2、フェネチル基、シンナミル基、式
【化5】


で表される基、又は式
【化6】


で表される基を意味する。)
(12) 次式で表される化合物
【化7】


(式中、n'は0又は1、qは1又は2、K13は置換基としてハロゲンを有していてもよいフェニルアルキル(アルキルの炭素数1〜2)基、低級アルキル基、シクロアルキル(シクロアルキルの炭素数3〜6)アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基を意味する。)
(13) 次式で表される化合物
【化8】

(式中、J112は3-メトキシフェニル基又は3,4,5-トリメトキシフェニル基、Meはメチル基を意味する。)
(14) 次式で表される化合物
【化9】


(式中、J111はメチル基又はiso-プロピル基、Phはフェニル基を意味する。)
(15) 1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルベンジル)ピペリジン
(16) 次式で表される化合物
【化10】

(式中、Meはメチル基を意味する。)]」と訂正するものである。
訂正事項b
明細書【0013】が
「qは1又は2を意味する。但し、以下の(1)〜(9)である場合を除く。
(1)J1-1が置換又は無置換のフェニル基、……
(2)J1-1低級アルキル基、……
(3)J1-1が置換又は無置換のフェニル基、……
(4)J1-1が低級アルキル基、……
(5)J1-1が低級アルキルあるいは……
(6)J1-1がピリジル基、……
(7)J1-1が低級アルキル基、……
(8)J1-1がフリル基、……
(9)qが1で、J1-1が低級アルキル基……又はシクロアルキル基である場合。]……」あるのを
「qは1又は2を意味する。但し、以下の(1)〜(16)である場合を除く。
(1)Jが置換又は無置換のフェニル基、……
(2)Jが低級アルキル基、……
(3)Jが置換又は無置換のフェニル基、……
(4)Jが低級アルキル基、……
(5)Jが低級アルキルあるいは……
(6)Jがピリジル基、……
(7)Jが低級アルキル基、……
(8)Jがフリル基、……
(9)qが1で、Jが低級アルキル基……又はシクロアルキル基である場合。
(10) 次式で表される化合物
【化15】

(式中、Phはフェニル基、K11は、-CO(CH2)CH3、-COCH(CH3)2、-CO(CH2)8CH3、-CO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3、メチル基、フェネチル基、3,4-ジメトキシフェニルエチル基又は3,4-ジアセトキシフェニルエチル基を意味する。)
(11) 次式で表される化合物
【化16】

(式中、K12は、-(CH2)2CH(CH3)2、フェネチル基、シンナミル基、式
【化17】

で表される基、又は式
【化18】

で表される基を意味する。)
(12) 次式で表される化合物
【化19】

(式中、n'は0又は1、qは1又は2、K13は置換基としてハロゲンを有していてもよいフェニルアルキル(アルキルの炭素数1〜2)基、低級アルキル基、シクロアルキル(シクロアルキルの炭素数3〜6)アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基を意味する。)
(13) 次式で表される化合物
【化20】


(式中、J112は3-メトキシフェニル基又は3,4,5-トリメトキシフェニル基、Meはメチル基を意味する。)
(14) 次式で表される化合物
【化21】


(式中、J111はメチル基又はiso-プロピル基、Phはフェニル基を意味する。)
(15) 1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルベンジル)ピペリジン
(16) 次式で表される化合物
【化22】


(式中、Meはメチル基を意味する。)]……」と訂正するものである。

(b)訂正の目的の適否、拡張・変更の存否、及び新規事項の追加の有無
訂正事項aは、願書に添付された明細書の請求項1に記載されている化合物に包含される化合物である(10)〜(16)を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許明細書に記載された範囲内のものとみなされるものである。
訂正事項bは、特許請求の範囲の訂正に伴って、明細書の記載を特許請求の範囲の記載に整合させるものであり、かつ、(1)〜(9)においてJ1-1と記載されていた置換基記号は、【0008】に記載されている一般式(I)の置換基記号Jに対応することは明らかであるから、J1-1はJの誤記である。
したがって、この訂正は明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正に該当し、特許明細書に記載された範囲内のものである。
また、これらの訂正は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立についての判断
(a)本件特許発明
本件特許の異議の申立てに係る特許請求の範囲の請求項1、3、6〜8により特定された特許発明は、訂正された特許明細書の記載からみて、特許請求の範囲に記載されたとおりの
「【請求項1】次の一般式(I-1)で表される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩。
【化1】


〔式中、J1-1は炭素数1〜6の低級アルキル基(以下単に低級アルキル基という);シクロヘキシル基;置換基として低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基(以下単に低級アルコキシ基という)、ニトロ基、ハロゲン、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、炭素数1〜6の脂肪族飽和モノカルボン酸から誘導されるアシルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、低級アルキルアミノカルボニル基、低級アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン化低級アルキル基、水酸基、ホルミル基又は低級アルコキシ低級アルキル基を有していてもよいフェニル基、ピリジル基あるいはピラジル基;式
【化2】


で示される基;キノリル基;キノキサリル基;フリル基又は式 R1-CH=CH-(式中、R1は水素原子又は低級アルコキシカルボニル基を意味する) で示される基を意味する。
Bは式-(CH2)n-で示される基、式-NR2-(CH2)n-(式中、R2は水素原子、低級アルキル基、フェニル基又は低級アルキルスルホニル基を意味する)で示される基、式-CONR3-(CH2)n-(式中、R3は水素原子、低級アルキル基、置換基として低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン又は水酸基を有してもよいフェニル基、ベンジル基又はピリジル基を意味する)で示される基、式-NH-CO-(CH2)n-で示される基、式-CH2-CO-NH-(CH2)n-で示される基、式-CO-CH2-CH(OH)-CH2-で示される基、式-CO-(CH2)n-で示される基、式-C(OH)-(CH2)n-で示される基又は式-CO-CH=CH-CH2-で示される基(以上の式中、nは0又は1〜10の整数を意味する)を意味する。
T1は炭素原子を意味する。
Kはフェニル基が置換基として低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、炭素数1〜6の脂肪族飽和モノカルボン酸から誘導されるアシルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、低級アルキルアミノカルボニル基、低級アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン化低級アルキル基、水酸基、ホルミル基又は低級アルコキシ低級アルキル基を有していてもよいフェニルアルキル(アルキルの炭素数1〜2)基;シンナミル基;低級アルキル基;ピリジルメチル基;シクロアルキル(シクロアルキルの炭素数3〜6)アルキル基;アダマンタンメチル基;フルフリル基;炭素数3〜6のシクロアルキル基又はアシル基を意味する。
qは1又は2を意味する。
但し、以下の(1)〜(16)である場合を除く。
(1)J1-1が置換又は無置換のフェニル基、Bが-CONR3-(CH2)n-で、R3が水素原子、低級アルキル基又はベンジル基、nが0又1、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フルフリル基である場合。
(2)J1-1が低級アルキル基、Bが-CONR3-(CH2)n-で、R3が置換又は無置換のフェニル基、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、低級アルキル基、シクロアルキルアルキル基又はフルフリル基である場合。
(3)J1-1が置換又は無置換のフェニル基、Bが-(CH2)n- 、-CO-(CH2)n-又は-C(OH)-(CH2)n-で、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基又はアシル基である場合。
(4)J1-1が低級アルキル基、シクロアルキル基又はR1-CH=CH-(R1は前記の意味を有する)、Bが-(CH2)n- 、-NR2-(CH2)n-又は-C(OH)-(CH2)n-(R2及びnは前記の意味を有する)で、Kが低級アルキル基又はアシル基である場合。
(5)J1-1が低級アルキル基あるいは置換又は無置換のフェニル基、Bが-NR2-(CH2)n-で、R2が水素原子又はフェニル基、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基又は低級アルキル基である場合。
(6)J1-1がピリジル基、Bが-NR2-(CH2)n-で、R2が水素原子、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基又は低級アルキル基である場合。
(7)J1-1が低級アルキル基、Bが-CO-(CH2)n-、nが0、Kが低級アルキル基である場合。
(8)J1-1がフリル基、Bが-CONR3-(CH2)n-で、R3が置換又は無置換のフェニル基、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、低級アルキル基又はシクロアルキル基である場合。
(9)qが1で、J1-1が低級アルキル基あるいは置換又は無置換のフェニル基、Bが-NHCH2-、-NR2-(R2が水素原子、低級アルキル基又はフェニル基)、-CONR3-(R3が水素原子、低級アルキル基、置換又は無置換のフェニル基もしくはベンジル基)又は-CONHCH2-、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、低級アルキル基又はシクロアルキル基である場合。
(10) 次式で表される化合物
【化3】


(式中、Phはフェニル基、K11は、-CO(CH2)CH3、-COCH(CH3)2、-CO(CH2)8CH3、-CO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3、メチル基、フェネチル基、3,4-ジメトキシフェニルエチル基又は3,4-ジアセトキシフェニルエチル基を意味する。)
(11) 次式で表される化合物
【化4】


(式中、K12は、-(CH2)2CH(CH3)2、フェネチル基、シンナミル基、式
【化5】


で表される基、又は式
【化6】


で表される基を意味する。)
(12) 次式で表される化合物
【化7】


(式中、n’は0又は1、qは1又は2、K13は置換基としてハロゲンを有していてもよいフェニルアルキル(アルキルの炭素数1〜2)基、低級アルキル基、シクロアルキル(シクロアルキルの炭素数3〜6)アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基を意味する。)
(13) 次式で表される化合物
【化8】


(式中、J112は3-メトキシフェニル基又は3,4,5-トリメトキシフェニル基、Meはメチル基を意味する。)
(14) 次式で表される化合物
【化9】


(式中、J111はメチル基又はiso-プロピル基、Phはフェニル基を意味する。)
(15) 1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルベンジル)ピペリジン
(16) 次式で表される化合物
【化10】


(式中、Meはメチル基を意味する。)]
【請求項3】nが0又は1〜3の整数である請求項1又は2記載の環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項6】請求項1〜5のいずれか一項に記載の環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩を有効成分とするアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
【請求項7】請求項1〜5のいずれか一項に記載の環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩を有効成分とする各種老人性痴呆症治療・予防剤。
【請求項8】各種老人性痴呆症がアルツハイマー型老年痴呆である請求項7記載の治療・予防剤。」と認められる。

(b)異議申立の概要
異議申立人は、甲第1号証(NTIS From Gov.Rep.Announce Index:United States Army Enviromental Hygiene Agency-Report,(1980))、甲第2号証(米国特許第3,404,145号明細書、(1968))、甲第3号証(米国特許第3,300,434号明細書、(1967))、甲第4号証(J.O.C.Vol.30,1840-1844(1965))、甲第5号証(Tetahedron Vol.41,No.9,1753-1762(1985))、甲第6号証(J.M.C.Vol.9,555-558(1966))、甲第7号証(Arzneim.Forsch.,Vol.17,1145-1149(1967))、甲第8号証(Arch.Pharm.(Weinheim Ger.)Vol.312,670-681(1979))、甲第9号証(三共研究所年報、Ann.Sankyo Res.Lab.Vol.23,104-116(1971))、甲第10号証(Med.Parazitol.Parazit.Bolezni(1983),Vol.52,No.1,46-8及び対応するケミカルアブストラクト)及び甲第11号証(特願昭62-106518号の願書に最初に添付した明細書:特開昭62-277353号公報、以下、先願明細書という。)を提出して、請求項1及び3に係る発明は甲第1〜10号証に記載された発明であり、また、先願発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号又は第29条の2の規定に違反してされたものであり、及び、請求項6〜8に係る発明について、特許明細書に当業者が容易に実施できるように記載されてないので、同法第36条第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許された旨主張している。

(c)特許法第29条第1項第3号について
甲第1号証には、昆虫忌避剤AI3-37136及びAI3-37157がそれぞれ1-(1-オキソブチル)-4-(フェニルメチル)ピペリジン及び1-(2-メチル-1-オキソプロピル)-4-(フェニルメチル)ピペリジンであることが記載されているが、これらの化合物は、本件請求項1及び3に係る発明において、請求の範囲から除く化合物として定義されている化合物(以下、単に除く化合物ともいう。)のうち、(10)の構造式のK11が-CO(CH2)2CH3、又は-COCH(CH3)2を表す化合物に相当するものである。
甲第2号証及び甲第3号証にはポリ塩化ビニルの可塑剤を用途とする化合物に関する発明が記載され、甲第2号証の実施例47にN-デカノイル-4-ベンジルピペリジンを製造し、それを同定したことが記載されている。この化合物は、除く化合物(10)の構造式のK11が-CO(CH2)8CH3を表す化合物に相当するものである。
甲第3号証の実施例44には、N-オレオイル-4-ベンジルピペリジンが記載されている。この化合物は、除く化合物(10)の構造式のK11が-CO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3を表す化合物に相当するものである。
甲第4号証には、ヘキサヒドロ-1-メチル-4-アセトキシアゼピンの製法にについて記載され、その中に、1‐メチル-4-ベンジルピペリジンが得られたことが記載されている。このピペリジン誘導体は、除く化合物(10)の構造式のK11がメチル基に相当するものである。
甲第5号証には、4-(アリールメチル)ピペリジンの環化反応等について記載され、その中に4-(3-メトキシベンジル)-1-メチルピペリジン沃素酸塩及び1-メチル-4-(3,4,5-トリメトキシベンジル)ピペリジンが製造されたことが記載されている。これらのピペリジン誘導体は、除く化合物(13)の構造式において、J112が3-メトキシフェニル基又は3,4,5-トリメトキシフェニル基を表す化合物に相当する。
甲第6号証には、寄生線虫の一種であるHaemonchus contortus Larvaeに対するピペリジン誘導体の活性について記載され、表IIに、4位がiso-プロピル又はメチル基であるN-フェネチルピペリジンについて上記活性の試験結果が記載されている。
該ピペリジン誘導体は、除く化合物(14)の構造式において、J111がメチル基又はiso-プロピル基を表す化合物に相当する。
甲第7号証には、2-(p-クロロフェニル)-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-2H-ベンゾ[a]キノリジンアナログの合成について記載され、ピペリジン及びピロリジン誘導体と題する表6に3-(p-クロロベンジル)-1-(3,4-ジメトキシフェネチル)-ピロリジン及び4-ベンジル-1-(3,4-ジメトキシフェネチル)-ピペリジンが記載されている。
上記ピロリジン誘導体は除く化合物(16)の化合物に相当し、ピペリジン誘導体は除く化合物(10)の構造式におけるK11が3,4-ジメトキシフェニルエチル基を表す化合物に相当する。
甲第8号証には、ドーパミンアナログのピペリジン及びピペラジン誘導体の向精神活性と題してその化学構造と活性の関係が記載され、その試験化合物の中に4-ベンジル-1-(3,4-ジメトキシフェニルエチル)-ピペリジン及び4-[2-(ベンジル-1-ピペリジル)-エチル]-o-フェニレンジアセテートが記載されている。前者のピペリジン誘導体は、甲第7号証に記載のピペリジン誘導体と同一化合物であるから、除く化合物(10)の構造式におけるK11が3,4-ジメトキシフェニルエチル基を表す化合物に相当し、後者のピペリジン誘導体は除く化合物(10)の構造式においてK11が3,4-ジアセトキシフェニルエチル基を表す化合物に相当する。
甲第9号証には、1-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エチル]-4-p-クロロベンジルピペリジン塩酸塩及びその関連化合物の合成と薬理作用について記載され、試験化合物の中に1位にイソペンチル基、フェネチル基、シンナミル基、2-ヒドロキシベンゾイル基、又は3-アリル-2-ヒドロキシベンゾイル基が置換している4-p-クロロベンジルピペリジン誘導体が記載されている。これらの化合物は、除く化合物(11)で定義される化合物、すなわち、K12が、-(CH2)2CH(CH3)2、フェネチル基、シンナミル基、式

で表される基、又は式

で表される基で表される化合物に相当する。
甲第10号証には、昆虫忌避活性について検討した化合物の中に1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルベンジル)ピペリジン(化合物No.6)が記載されている。No.6の化合物は除く化合物(16)に相当する。
したがって、請求項1及び3に係る発明は、上記のとおり、甲第1〜10号証に記載されている化合物を除いた残りの化合物に係るものであるから、甲号各証に記載されたものではない。

(d)特許法第29条の2について
先願明細書には、
一般式I:


[式中、RはC1〜C20-アルキル基、……C3〜C12-シクロアルキル基、……C4〜C20-シクロアルキル-アルキル基、アリール基、ハロゲンアリール基……又はC5〜C20-アリールオキシ-アルキル基を表し、
mは1又は2を表し、
nは0又は1を表す]で示されるN-置換ピロリジン-及びピペリジン誘導体並びにその植物生理学的に許容される塩(特許請求の範囲第1項)が記載されているが、これらの化合物のうち、訂正前の請求項1及び3に包含される化合物は、除く化合物(12)に相当するものである。
したがって、請求項1及び3に係る特許発明は、先願明細書に記載された化合物を除いているのであるから、先願明細書に記載された発明とは同一ではない。

(e)特許法第36条第3項について
異議申立人は、請求項6〜8に係る発明は、いわゆる医薬用途発明に関するものであるが、該発明の対象としている化合物、殊に甲第1〜10号証に記載されている公知化合物について薬理効果を裏付ける記載がないので、請求項6〜8に係る発明について容易に実施できるように記載されていないと主張している。しかし、対象化合物について、特許明細書【0066】〜【0073】にアセチルコリンエステラーゼ阻害作用及びスコポラミンの受動回避学習障害に対する作用についての薬理試験結果が記載されている。そして、甲第1〜10号証に記載されている化合物は対象化合物から除かれたので、請求項6〜8に係る発明の対象化合物については上記のとおり、薬理効果を裏付ける記載がある。
したがって、訂正後の明細書の記載は、請求項6〜8に係る発明について当業者が容易に実施できるように記載されているから、不備はない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1、3及び6〜8に係る特許発明が特許法第29条第1項第3号第29条の2の規定に違反して特許されたものではなく、同法第36条第3項に規定する要件を満たしていないものではない。
また、本件特許については、他に取消理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
環状アミン誘導体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の一般式(I-1)で表される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩。
【化1】

〔式中、
J1-1は炭素数1〜6の低級アルキル基(以下単に低級アルキル基という);シクロヘキシル基;置換基として低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基(以下単に低級アルコキシ基という)、ニトロ基、ハロゲン、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、炭素数1〜6の脂肪族飽和モノカルボン酸から誘導されるアシルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、低級アルキルアミノカルボニル基、低級アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン化低級アルキル基、水酸基、ホルミル基又は低級アルコキシ低級アルキル基を有していてもよいフェニル基、ピリジル基あるいはピラジル基;式
【化2】

で示される基;キノリル基;キノキサリル基;フリル基又は式R1-CH=CH-(式中、R1は水素原子又は低級アルコキシカルボニル基を意味する)で示される基を意味する。
Bは式-(CH2)n-で示される基、式-NR2-(CH2)n-(式中、R2は水素原子、低級アルキル基、フェニル基又は低級アルキルスルホニル基を意味する)で示される基、式-CONR3-(CH2)n-(式中、R3は水素原子、低級アルキル基、置換基として低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン又は水酸基を有してもよいフェニル基、ベンジル基又はピリジル基を意味する)で示される基、式-NH-CO-(CH2)n-で示される基、式-CH2-CO-NH-(CH2)n-で示される基、式-CO-CH2-CH(OH)-CH2-で示される基、式-CO-(CH2)n-で示される基、式-C(OH)-(CH2)n-で示される基又は式-CO-CH=CH-CH2-で示される基(以上の式中、nは0又は1〜10の整数を意味する)を意味する。
T1は炭素原子を意味する。
Kはフェニル基が置換基として低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、炭素数1〜6の脂肪族飽和モノカルボン酸から誘導されるアシルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、低級アルキルアミノカルボニル基、低級アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン化低級アルキル基、水酸基、ホルミル基又は低級アルコキシ低級アルキル基を有していてもよいフェニルアルキル(アルキルの炭素数1〜2)基;シンナミル基;低級アルキル基;ピリジルメチル基;シクロアルキル(シクロアルキルの炭素数3〜6)アルキル基;アダマンタンメチル基;フルフリル基;炭素数3〜6のシクロアルキル基又はアシル基を意味する。
qは1又は2を意味する。
但し、以下の(1)〜(16)である場合を除く。
(1)J1-1が置換又は無置換のフェニル基、Bが-CONR3-(CH2)n-で、R3が水素原子、低級アルキル基又はベンジル基、nが0又1、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フルフリル基である場合。
(2)J1-1が低級アルキル基、Bが-CONR3-(CH2)n-で、R3が置換又は無置換のフェニル基、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、低級アルキル基、シクロアルキルアルキル基又はフルフリル基である場合。
(3)J1-1が置換又は無置換のフェニル基、Bが-(CH2)n-、-CO-(CH2)n-又は-C(OH)-(CH2)n-で、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基又はアシル基である場合。
(4)J1-1が低級アルキル基、シクロアルキル基又はR1-CH=CH-(R1は前記の意味を有する)、Bが-(CH2)n-、-NR2-(CH2)n-又は-C(OH)-(CH2)n-(R2及びnは前記の意味を有する)で、Kが低級アルキル基又はアシル基である場合。
(5)J1-1が低級アルキル基あるいは置換又は無置換のフェニル基、Bが-NR2-(CH2)n-で、R2が水素原子又はフェニル基、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基又は低級アルキル基である場合。
(6)J1-1がピリジル基、Bが-NR2-(CH2)n-で、R2が水素原子、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基又は低級アルキル基である場合。
(7)J1-1が低級アルキル基、Bが-CO-(CH2)n-、nが0、Kが低級アルキル基である場合。
(8)J1-1がフリル基、Bが-CONR3-(CH2)n-で、R3が置換又は無置換のフェニル基、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、低級アルキル基又はシクロアルキル基である場合。
(9)qが1で、J1-1が低級アルキル基あるいは置換又は無置換のフェニル基、Bが-NHCH2-、-NR2-(R2が水素原子、低級アルキル基又はフェニル基)、-CONR3-(R3が水素原子、低級アルキル基、置換又は無置換のフェニル基もしくはベンジル基)又は-CONHCH2-、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、低級アルキル基又はシクロアルキル基である場合。
(10) 次式で表される化合物
【化3】

(式中、Phはフェニル基、K11は、-CO(CH2)2CH3、-COCH(CH3)2、-CO(CH)8CH3、-CO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3、メチル基、フェネチル基、3,4-ジメトキシフェニルエチル基又は3,4-ジアセトキシフェニルエチル基を意味する。)
(11) 次式で表される化合物
【化4】

(式中、K12は、-(CH2)2CH(CH3)2、フェネチル基、シンナミル基、式
【化5】

で表される基、又は式
【化6】

で表される基を意味する。)
(12) 次式で表される化合物
【化7】

(式中、n’は0又は1、qは1又は2、K13は置換基としてハロゲンを有していてもよいフェニルアルキル(アルキルの炭素数1〜2)基、低級アルキル基、シクロアルキル(シクロアルキルの炭素数3〜6)アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基を意味する。)
(13) 次式で表される化合物
【化8】

(式中、J112は3-メトキシフェニル基又は3,4,5-トリメトキシフェニル基、Meはメチル基を意味する。)
(14) 次式で表される化合物
【化9】

(式中、J111はメチル基又はiso-プロピル基、Phはフェニル基を意味する。)
(15) 1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルベンジル)ピペリジン
(16) 次式で表される化合物
【化10】

(式中、Meはメチル基を意味する。)〕
【請求項2】 次の一般式(I-2)で表される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩。
【化11】

[式中、
J1-2は置換基として炭素数1〜6の低級アルキル基又は炭素数1〜6の低級アルコキシ基を有してもよいインダノニル基を意味する。
T2は窒素原子を意味する。
B,K及びqは前記の意味を有する。]
【請求項3】 nが0又は1〜3の整数である請求項1又は2記載の環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項4】 下記式で表される化合物群から選択される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩。
【化12】

【化13】

【請求項5】 下記の化合物群から選択される化合物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩。
(1)3-{N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕カルボキシアミド}-2-ピラジンカルボン酸イソプロピルエステル
(2)N-{2-〔1-(4-ハイドロキシベンジル)ピペリジン-4-イル〕エチル}-2-キノキサリンカルボン酸アミド
(3)N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-2-キノキサリンカルボン酸アミド
(4)N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕アセトアニリド
(5)N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N-〔2-(1-ベンジルピペリジル-4-イル)エチル〕-4-フロロけい皮酸アミド
(6)N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-フェニルイソニコチン酸アミド
(7)4-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)プロピオンアニリド
(8)N-〔(1-ベンジルピロリジン-3-イル)メチル〕ベンズアミド
(9)4-(N-ベンジルピペリジン-4-イル)-(4-メトキシ)ブチロフェノン
(10) N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-3-フランカルボン酸アミド
(11) N-メチル-N-〔2-(1-アダマンタンメチルピペリジン-4-イル)エチル〕ベンズアミド
(12) N-〔2-(1-シクロヘキシルメチルピペリジン-4イル)エチル〕-N-メチルベンズアミド
(13) 4-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-1-(4-ピリジル)ブタノン
(14) N-(4-ピリジル)-3-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)プロピオン酸アミド
(15) 3-{N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕カルボキシアミド}-2-ピラジンカルボン酸エチルエステル
(16) N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-フェニル-4-フルオロベンズアミド
(17) N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-フェニル ベンズアミド
(18) N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-フェニルピラジンカルボキシアミド
(19) N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-(4-ピリジル)アセトアミド
(20) N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-メチルフランカルボン酸アミド
(21) N-〔2-(1-フルフリルピペリジン-4-イル)エチル〕ベンズアミド
(22) 1-ベンジル-4-(5,6-ジメトキシ-1-インダノン-2-イル)メチルピペラジン
【請求項6】 請求項1〜5のいずれか一項に記載の環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩を有効成分とするアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
【請求項7】 請求項1〜5のいずれか一項に記載の環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩を有効成分とする各種老人性痴呆症治療・予防剤。
【請求項8】 各種老人性痴呆症がアルツハイマー型老年痴呆である請求項7記載の治療・予防剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、医薬として優れた作用を有する新規環状アミン誘導体に関する。
【0002】
【発明に至る背景及び従来技術】
老年人口が急激に増大する中で、アルツハイマー型老年痴呆などの老年痴呆の治療法を確立することが渇望されている。
しかしながら、現在のところ、老年痴呆を薬物で治療する試みは種々なされているが、これらの疾患に根本的に有効とされる薬剤は今のところ存在しない。
【0003】
これらの疾患の治療薬の開発は種々の方向から研究されているが、有力な方向としてアルツハイマー型老年痴呆は、脳のコリン作動性機能低下を伴うことから、アセチルコリン前駆物質、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の方向から開発することが提案され、実際にも試みられている。代表的なものとして、抗コリンエステラーゼ阻害剤として、フィゾスチグミン、テトラヒドロアミノアクリジンなどがあるが、これらの薬剤は効果が十分でない、好ましくない副作用があるなどの欠点を有しており、決定的な治療薬はないのが現状である。
【0004】
そこで本発明者らは、作用持続時間が長く、安全性が高い薬剤を開発すべく、長年にわたって種々の化合物について鋭意研究を重ねてきた。
その結果、後で述べる一般式(I)で示される環状アミン誘導体等が、所期の目的を達することが可能であることを見出した。
具体的には本発明に係わる環状アミン誘導体は、強力かつ選択性の高い抗アセチルコリンエステラーゼ活性を有し、脳内のアセチルコリンを増量すること、記憶障害モデルで有効であること、及び従来この分野で汎用されているフィゾスチグミンと比較し、作用持続時間が長く、安全性が高いという大きな特徴を有しており、本発明の価値は極めて高い。
【0005】
本発明化合物は、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用に基づいて見出されたもので、従って中枢性コリン機能、即ち神経伝達物質としてのアセチルコリンの生体内の欠乏が原因とされる種々の疾患の治療・予防に有効である。
代表的なものとしては、アルツハイマー型老年痴呆に代表される各種痴呆があるが、そのほかハンチントン舞踏病、ピック病、晩発性運動異常症などを挙げることができる。
【0006】
従って、本発明の目的は、医薬としてとりわけ中枢神経系の疾患の治療・予防に有効な新規環状アミン誘導体を提供すること、この新規環状アミン誘導体の製造方法を提供すること、及びそれを有効成分とする医薬を提供することである。
【0007】
【発明の構成及び効果】
本発明の目的化合物としては、次の一般式(I)で表される環状アミン誘導体及びその薬理学的に許容できる塩が挙げられる。
【0008】
【化14】

【0009】
〔式中、
Jは置換されていてもよいインダノニル基、低級アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、置換フェニル基、ピリジル基、置換ピリジル基、ピラジル基、置換ピラジル基、キノリル基、キノキサリル基、フリル基、又は式R1-CH=CH-(式中、R1は水素原子又は低級アルコキシカルボニル基を意味する)で示される基を意味する。
【0010】
Bは式-(CH2)n-で示される基、式-NR2-(CH2)n-(式中、R2は水素原子、低級アルキル基、フェニル基又は低級アルキルスルホニル基を意味する)で示される基、式-CONR3-(CH2)n-(式中、R3は水素原子、低級アルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基又はピリジル基を意味する)で示される基、式-NH-CO-(CH2)nで示される基、式-CH2-CO-NH-(CH2)n-で示される基、式-CO-CH2-CH(OH)-CH2-で示される基、式-CO-(CH2)n-で示される基、式-C(OH)-(CH2)n-で示される基又は式-CO-CH=CH-CH2-で示される基(以上の式中、nは0又は1〜10の整数を意味する)を意味する。
【0011】
Tは窒素原子又は炭素原子を意味する。但し、Jが置換されていてもよいインダノニル基であるとき、Tは窒素原子であり、それ以外は炭素原子である。
【0012】
Kはフェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、シンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フルフリル基、シクロアルキル基又はアシル基を意味する。
【0013】
qは1又は2を意味する。
但し、以下の(1)〜(16)である場合を除く。
(1)Jが置換又は無置換のフェニル基、Bが-CONR3-(CH2)n-で、R3が水素原子、低級アルキル基又はベンジル基、nが0又1、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フルフリル基である場合。
(2)Jが低級アルキル基、Bが-CONR3-(CH2)n-で、R3が置換又は無置換のフェニル基、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、低級アルキル基、シクロアルキルアルキル基又はフルフリル基である場合。
(3)Jが置換又は無置換のフェニル基、Bが-(CH2)n-、-CO-(CH2)n-又は-C(OH)-(CH2)n-で、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基又はアシル基である場合。
(4)Jが低級アルキル基、シクロアルキル基又はR1-CH=CH-(R1は前記の意味を有する)、Bが-(CH2)n-、-NR2-(CH2)n-又は-C(OH)-(CH2)n-(R2及びnは前記の意味を有する)で、Kが低級アルキル基又はアシル基である場合。
(5)Jが低級アルキル基あるいは置換又は無置換のフェニル基、Bが-NR2-(CH2)n-で、R2が水素原子又はフェニル基、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基又は低級アルキル基である場合。
(6)Jがピリジル基、Bが-NR2-(CH2)n-で、R2が水素原子、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基又は低級アルキル基である場合。
(7)Jが低級アルキル基、Bが-CO-(CH2)n-、nが0、Kが低級アルキル基である場合。
(8)Jがフリル基、Bが-CONR3-(CH2)n-で、R3が置換又は無置換のフェニル基、nが0、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、低級アルキル基又はシクロアルキル基である場合。
(9)qが1で、Jが低級アルキル基あるいは置換又は無置換のフェニル基、Bが-NHCH2-、-NR2-(R2が水素原子、低級アルキル基又はフェニル基)、-CONR3-(R3が水素原子、低級アルキル基、置換又は無置換のフェニル基もしくはベンジル基)又は-CONHCH2-、Kが置換又は無置換のフェニルアルキル基、低級アルキル基又はシクロアルキル基である場合。
(10) 次式で表される化合物
【化15】

(式中 、Phはフェニル基、K11は、-CO(CH2)2CH3、-COCH(CH3)2、-CO(CH2)8CH3、-CO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3、メチル基、フェネチル基、3,4-ジメトキシフェニルエチル基又は3,4-ジアセトキシフェニルエチル基を意味する。)
(11) 次式で表される化合物
【化16】

(式中 、K12は、-(CH2)2CH(CH3)2、フェネチル基、シンナミル基、式
【化17】

で表される基、又は式
【化18】

で表される基を意味する。)
(12) 次式で表される化合物
【化19】

(式中、n’は0又は1、qは1又は2、K13は置換基としてハロゲンを有していてもよいフェニルアルキル(アルキルの炭素1〜2)基、低級アルキル基、シクロアルキル(シクロアルキルの炭素3〜6)アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基を意味する。)
(13) 次式で表される化合物
【化20】

(式中、J112は3-メトキシフェニル基又は3,4,5-トリメトキシフェニル基、Meはメチル基を意味する。)
(14) 次式で表される化合物
【化21】

(式中、J111はメチル基又はiso-プロピル基、Phはフェニル基を意味する。)
(15) 1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルベンジル)ピペリジン
(16) 次式で表される化合物
【化22】

(式中、Meはメチル基を意味する。)〕
また上記以外の本発明の目的化合物として、下記式で表される化合物群から選択される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩が挙げられる。
【0014】
【化23】

【0015】
【化24】

【0016】
本発明化合物(I)における上記の定義において、J,K,R2,R3にみられる低級アルキル基とは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基:sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基(アミル基)、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基などを意味する。これらのうち好ましい基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などを挙げることができ、最も好ましいものはメチル基である。
【0017】
Jにおける定義において、インダノニル基の置換基としては、低級アルキル基又は低級アルコキシ基をあげることができる。更に、フェニル環の隣りあう炭素間でメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基などのアルキレンジオキシ基で置換されていてもよい。
置換されていてもよいインダノニル基のうち最も好ましい場合は、無置換若しくはメトキシ基が1〜3個置換されている場合である。
【0018】
Jにおける定義において、置換フェニル基、置換ピリジル基、置換ピラジル基の置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの炭素数1〜6の低級アルキル基;メトキシ基、エトキシ基など上記の低級アルキル基に対応する低級アルコキシ基;ニトロ基;塩素、臭素、フッ素などのハロゲン;カルボキシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、n-ブチロキシカルボニル基など、上記の低級アルコキシ基に対応する低級アルコキシカルボニル基;アミノ基;モノ低級アルキルアミノ基;ジ低級アルキルアミノ基;カルバモイル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基、イソブチリルアミノ基、バレリルアミノ基、ピバロイルアミノ基など、炭素数1〜6の脂肪族飽和モノカルボン酸から誘導されるアシルアミノ基;シクロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル基;メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基などの低級アルキルアミノカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基など前記に定義した低級アルキル基に対応する低級アルキルカルボニルオキシ基;トリフルオロメチル基などに代表されるハロゲン化低級アルキル基;水酸基;ホルミル基;エトキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などの低級アルコキシ低級アルキル基などを挙げることができる。上記の置換基の説明において、「低級アルキル基」、「低級アルコキシ基」とは、前記の定義から派生する基をすべて含むものとする。置換基は同一又は異なる1〜3個で置換されていてもよい。
【0019】
更にフェニル基の場合は、次の如き場合も置換されたフェニル基に含まれるものとする。即ち、
【0020】
【化25】

【0021】
Eは炭素原子又は窒素原子を意味する。
これらのうち、フェニル基に好ましい置換基としては、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン化低級アルキル基、低級アルコキシカルボニル基、ホルミル基、水酸基、低級アルコキシ低級アルキル基、ハロゲン、ベンゾイル基、ベンジルスルホニル基などを挙げることができ、置換基は同一又は相異なって2つ以上でもよい。
ピリジル基に好ましい置換基としては、低級アルキル基、アミノ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
ピラジル基に好ましい置換基としては、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アシルアミノ基、カルバモイル基、シクロアルキルオキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0022】
また、Jとしてのピリジル基は、2-ピリジル基、3-ピリジル基又は4-ピリジル基が望ましく、ピラジル基は2-ピラジル基が望ましく、キノリル基は2-キノリル基又は3-キノリル基が望ましく、キノキサリル基は2-キノキサリル基又は3-キノキサリル基が望ましく、フリル基は2-フリル基が望ましい。
【0023】
Bの定義において、nは0又は1〜10の整数を示すが、好ましくはnは0又は1〜3の整数である。
また、Bの一連の基において、基内にアミド基を有する場合も好ましい基の一つである。
【0024】
【化26】

【0025】
Kの定義における「フェニル基が置換されていてもよいアリールアルキル基」において、置換基は前記のJの定義において、置換フェニル基の置換基として例示されたものと同一のものである。
アリールアルキル基とは、フェニル環が上記の置換基で置換されるか、無置換のベンジル基、フェネチル基などを意味する。
ピリジルメチル基とは具体的には、2-ピリジルメチル基、3-ピリジルメチル基、4-ピリジルメチル基などを挙げることができる。
【0026】
Kについては、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、シンナミル基が最も好ましい。
好ましいアリールアルキル基は、具体的には例えばベンジル基、フェネチル基などをいい、これらはフェニル基が炭素数1〜6の低級アルコキシ基、炭素数1〜6の低級アルキル基、水酸基などで置換されていてもよい。
【0027】
本発明において、薬理学的に許容できる塩とは、例えば塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、燐酸塩などの無機酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。
また置換基の選択によっては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機アミン塩、アンモニウム塩などを形成する場合もある。
【0028】
なお、本発明化合物は、置換基の種類によっては不斉炭素を有し、光学異性体が存在しうるが、これらは本発明の範囲に属することはいうまでもない。
具体的な例を一つ述べれば、Jがインダノン骨格を有する場合、不斉炭素を有するので幾何異性体、光学異性体、ジアステレオマーなどが存在しうるが、何れも本発明の範囲に含まれる。
【0029】
これらの定義を総合して特に好ましい化合物群をあげれば次のとおりである。
【0030】
(1)3-{N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕カルボキシアミド}-2-ピラジンカルボン酸イソプロピルエステル
(2)N-{2-〔1-(4-ハイドロキシベンジル)ピペリジン-4-イル〕エチル}-2-キノキサリンカルボン酸アミド
(3)N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-2-キノキサリンカルボン酸アミド
(4)N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕アセトアニリド
(5)N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N-〔2-(1-ベンジルピペリジル-4-イル)エチル〕-4-フロロけい皮酸アミド
(6)N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-フェニルイソニコチン酸アミド
(7)4-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)プロピオンアニリド
(8)N-〔(1-ベンジルピロリジン-3-イル)メチル〕ベンズアミド
(9)4-(N-ベンジルピペリジン-4-イル)-(4-メトキシ)ブチロフェノン
(10) N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-3-フランカルボン酸アミド
(11) N-メチル-N-〔2-(1-アダマンタンメチルピペリジン-4-イル)エチル〕ベンズアミド
(12) N-〔2-(1-シクロヘキシルメチルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-メチルベンズアミド
(13) 4-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-1-(4-ピリジル)ブタノン
(14) N-(4-ピリジル)-3-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)プロピオン酸アミド
(15) 3-{N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕カルボキシアミド}-2-ピラジンカルボン酸エチルエステル
(16) N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-フェニル-4-フルオロベンズアミド
(17) N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-フェニルベンズアミド
(18) N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-フェニルピラジンカルボキシアミド
(19) N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-(4-ピリジル)アセトアミド
(20) N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-メチルフランカルボン酸アミド
(21) N-〔2-(1-フルフリルピペリジン-4-イル)エチル〕ベンズアミド
(22) 1-ベンジル-4-(5,6-ジメトキシ-1-インダノン-2-イル)メチルピペラジン
本発明化合物の製造方法は種々考えられるが、代表的な方法について述べれば以下の通りである。
【0031】
製造方法A
〔一般式(1)において、Bが式-CONR3-(CH2)n- (式中、n,R3は前記の意味を有する)で示される基を意味する場合〕
【0032】
【化27】

【0033】
(式中、J,R3,n,T,q,Kは前記の意味を有し、Halはハロゲン原子を意味する。)
即ち、一般式(II)で表される酸ハロゲン化物と、一般式(III)で表される環状アミン誘導体を、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミンなどの脱塩剤の存在下に、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、ジオキサン、テトラハイドロフラン、ジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶媒中、氷冷、室温もしくは加熱により反応させ、容易に目的物質の一つである化合物(IV)を得ることができる。
【0034】
製造方法B
一般式(I)において、
【0035】
【化28】

【0036】
Bが式-CONH-(CH2)n-で表される基である場合は次の製造方法でも製造することができる。
【0037】
【化29】

【0038】
即ち、2,3-ピラジルカルボン酸無水物(V)を、例えばイソプロピルアルコール中に加え還流する。アルコールを留去したのち、一般式(VI)で表される化合物と、例えばテトラヒドロフランなどの溶媒中反応させることにより、目的物質の一つである化合物(VII)を得ることができる。
【0039】
製造方法C
一般式(I)において、Jが置換されてもよいフェニル基であり、Bが式
【0040】
【化30】

【0041】
で示される基である場合は、次の方法によっても製造することができる。下記の式中、R4は前記のJの定義における置換基を意味する。
【0042】
【化31】

【0043】
即ち、例えばテトラヒドロフランなどの溶液中で、ジイソプロピルアミン、n-ブチルリチウム/ヘキサン溶液を加え、約-80℃の温度にて、一般式(VIII)で表されるアセトフェノンと、一般式(IX)で表される化合物と縮合し、化合物(X)を得る。これを、例えばp-トルエンスルホン酸の存在下、例えばトルエンなどの溶媒中で脱水した後、常法により接触還元すると、目的物質の一つである化合物(XI)が得られる。
【0044】
製造方法D
本発明において、Jがフェニル基が置換されてもよいインダノニル基であり、Bが式-(CH2)n-で示される基である場合は、例えば次の二つの方法によって製造できる。
【0045】
【化32】

【0046】
(式中、J1はJが上記の定義である場合を示し、B1は上記のBの定義において最左端の炭素原子に結合している基を除いた残基を意味する。)
即ち、一般式(XII)で表されるホスホナートに一般式(XIII)で表されるアルデヒド化合物を反応せしめて(wittig反応)、目的物質の一つである一般式(XIV)で表される化合物を得、次いでこれを接触還元して目的物質の一つである化合物(XV)を得ることができる。
【0047】
Wittig反応を行う際の触媒としては、例えばナトリウムメチラート(MeONa)、ナトリウムエチラート(EtONa)、t-BuOK、NaHなどを挙げることができる。この際溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、エーテル、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)などを挙げることができる。また、反応温度は室温から100℃程度が好ましい結果を与える。
接触還元を行う際は、例えばパラジウム炭素、ラネーニッケル、ロジウム炭素などを触媒として用いることが好ましい結果を与える。
【0048】
【化33】

【0049】
【化34】

【0050】
【化35】

【0051】
即ち、一般式(XVI)で表される置換若しくは無置換のインダノンなどの化合物と一般式(XIII)で表されるアルデヒド体と、常法によりアルドール縮合を行い、目的物質の一つである一般式(XIV)で表される化合物を得る。
本反応は、例えばテトラヒドロフランなどの溶媒中でジイソプロピルアミンとn-ブチルリチウムヘキサン溶液によりリチウムジイソプロピルアミドを生成させ、好ましくは約-80℃の温度でこれに上記の一般式(XVI)で表される化合物を加える。次いで一般式(XIII)で表されるアルデヒド体を加えて常法により反応せしめ、室温まで昇温させることによって脱水させ、エノン体である一般式(XIV)で表される化合物を得る。
【0052】
本反応の別方法として、両者((XVI)と(XIII))をテトラヒドロフランなどの溶媒に溶解し、約0℃にて、例えばナトリウムメチラートなどの塩基を加えて、室温にて反応させることによる方法によっても製造することができる。
【0053】
上記の製造方法によって得られたエノン体(XIV)を前記に示したと同様の方法により還元することにより、一般式(XV)で表される化合物を得ることができる。
【0054】
なお、製造方法Dにおいて、出発物質として用いるインダノン類は市販品を用いるか又は以下の方法により製造される。
【0055】
【化36】

【0056】
一方、アルデヒド体は例えば以下の方法により製造することができる。
【0057】
【化37】

【0058】
即ち上記の如く、式(i)又は式(ii)で示される化合物を出発物質とし〔ただし式(ii)で示される化合物の場合は上記の方法によりアルデヒド体とした後〕、これらを下記に示すウィテッヒ反応などを繰り返したり、組み合わせたりすることにより増炭反応を行い、目的とする出発物質を得ることができる。
【0059】
ウィテッヒ試薬としては、例えば1炭素増長のときはメトキシメチレントリフェニルホスホランを用い、2炭素増長のときはホルミルメチレントリフェニルホスホランを用いる。
メトキシメチレントリフェニルホスホランは、メトキシメチレントリフェニルホスホニウムクロライドとn-ブチルリチウムとから、例えばエーテル又はテトラヒドロフラン中で生成させる。この中にケトン体又はアルデヒド体を加えてメトキシビニル体とした後、酸処理によってアルデヒドを合成することができる。
特定の場合の具体例を以下に示す。
【0060】
【化38】

【0061】
一方、ホルミルメチレントリフェニルホスホランを用いる場合は、原料となるケトン体又はアルデヒド体のエーテル、テトラヒドロフラン又はベンゼン溶液中にウィテッヒ試薬を加え、室温から加熱還流することによって合成することができる。
【0062】
このようにして合成した不飽和アルデヒド体は、必要により接触還元して飽和アルデヒド体とすることができる。この際の触媒としては、パラジウム炭素、ラネーニッケル、ロジウム炭素などが好ましい。
【0063】
【化39】

【0064】
以上のようにして得られる本発明に係わる環状アミン誘導体及びその酸付加塩は各種老人性痴呆症、特にアルツハイマー型老年痴呆の治療に有用である。
【0065】
本発明に係わる環状アミン誘導体及びその酸付加塩の有用性を示すために、薬理試験結果を以下に説明する。
【0066】
実験例1
In vitroアセチルコリンエステラーゼ阻害作用
アセチルコリンエステラーゼ源として、マウス脳ホモジネートを用いて、Ellmanらの方法1)に準拠してエステラーゼ活性を測定した。マウス脳ホモジネートに、基質としてアセチルチオコリン、被検体及びDTNBを添加し、インキュベーション後、産生したチオコリンがDTNBと反応し、生じる黄色産物を412nmにおける吸光度変化として測定し、アセチルコリンエステラーゼ活性を求めた。検体のアセチルコリンエステラーゼ阻害活性は50%阻害濃度(IC50)で表した。
結果を表1に示す。
【0067】
1) Ellman, G.L., Courtney, K,D., Andres, V. and Featherstone, R.M.(1961)Biochem. Pharmacol.,7,88 〜95
【0068】
【表1】

【0069】
実験例2
Ex vivoアセチルコリンエステラーゼ阻害作用
ラットに被検体を経口投与し、その1時間後に大脳半球を採取し、ホモジナイズ後、アセチルコリンエステラーゼ活性を測定した。なお、生理食塩水投与群を対照とした。
結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
実験例3
スコポラミンの受動回避学習障害に対する作用*1
Wistar系雄性ラットを用い、装置としてはstep through型の明暗箱を使用した。試行の1時間前に検体を経口投与し、30分前にスコポラミン0.5mg/kg(ip)を処置した。訓練試行では明室に動物を入れ、暗室に入った直後にギロチンドアを閉め電気ショックを床のグリットから与えた。6時間後に保持試行として再び動物を明室に入れ、暗室に入るまでの時間を測定し評価した。
効果は生食投与群とスコポラミン投与群の反応時間の差を100%とし検体により何%拮抗したか(Reverse%)で表した。
【0072】
*1 Z.Bokolanecky&Jarvik:Int.J.Neuropharmacol6,217〜222(1967)
結果を表3に示す。
【0073】
【表3】

【0074】
上記の薬理実験例から強力なアセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有していることが明らかとされた。
【0075】
本発明化合物は、従来のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤とは構造を著しく異にすること、強力なアセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有することのほか、主作用-副作用巾が大きいこと、作用持続が長いこと、水溶性が高く、且つ極めて安定な化合物であり、製剤上有利であること、及び生体利用率が優れ、first pass effectを受けにくく、且つ脳内移行性もよいなどの特徴を有している。
【0076】
従って、本発明の目的は、種々の痴呆症、脳血管障害後遺症に有効な新規な化合物、及びその化合物製造方法、及びその化合物を有効成分とする新規な医薬を提供するにある。
【0077】
なお、本発明化合物の代表的化合物(前記表3の化合物No.2,4,8)について、ラットにおける毒性試験を行ったところ、いずれも約100m/kg以上で重篤な毒性を示さなかった。
【0078】
本発明化合物は、各種老人性痴呆症;特にアルツハイマー型老年痴呆、脳卒中(脳出血、脳梗塞)、脳動脈硬化症、頭部外傷などに伴う脳血管障害;脳炎後遺症、脳性麻痺などに伴う注意力低下、言語障害、意欲低下、情緒障害、記銘障害、幻覚-妄想状態、行動異常などの治療、予防、緩解、改善などに有効である。
更に、本発明化合物は強力かつ選択性の高い抗コリンエステラーゼ作用を有するので、これらの作用に基づく医薬としても有用である。
即ち、アルツハイマー型老年痴呆のほか、例えばハンチントン舞踏病、ピック病、晩発性異常症などにも有用である。
【0079】
本発明化合物をこれらの医薬として使用する場合は、経口投与若しくは非経口投与により投与されるが、通常は静脈内、皮下、筋肉内など注射剤、坐薬若しくは舌下錠など非経口投与により投与される。投与量は、症状の程度;患者の年令、性別、体重、感受性差;投与方法;投与の時期、間隔、医薬製剤の性質、調剤、種類;有効成分の種類などによって異なり、特に限定されないが、通常成人1日あたり約0.1〜300mg、好ましくは約1〜100mgであり、これを通常1日1〜4回にわけて投与する。
【0080】
本発明化合物を製剤化するためには、製剤の技術分野における通常の方法で注射剤、坐薬、舌下錠、錠剤、カプセル剤などの剤型とする。
注射剤を調製する場合には、主薬に必要によりpH調整剤、緩衝剤、懸濁化剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤などを添加し、常法により静脈、皮下、筋肉内注射剤とする。その際必要により常法により凍結乾燥物とすることも可能である。
【0081】
懸濁剤としての例を挙げれば、例えばメチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどを挙げることができる。
溶解補助剤としては、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マグロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。
また安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、エーテル等が、保存剤としては、例えばパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを挙げることができる。
【0082】
【実施例】
以下に実施例に従って本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらの実施例の範囲に限定されるものでないことはいうまでもない。
なお、下記の実施例において、NMRの値はすべてフリー体での測定値を示す。
【0083】
実施例1
4-〔N-(o-アミノベンジル)アミノエチル〕-1-ベンジルピペリジン
【0084】
【化40】

【0085】
窒素気流下2-ニトロベンズアルデヒド30g、1-ベンジル-4-アミノエチルピペリジン21.4g、メタノール100mlを室温で3時間撹拝する。反応液を氷冷し、水素化ホウ素ナトリウム16gのMoOH30ml溶液を滴加する。さらに室温にて1時間反応させた後、水にあけ、メチルクロライドで抽出し、10%塩酸150mlで3回抽出し、メチレンクロライドで洗浄する。この水層を炭酸ナトリウムでpH10にし、メチレンクロライドで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、1-ベンジル-4-〔N-(o-ニトロベンジル)アミノエチル〕ピペリジン28.4gを得る。
これをメタノール100mlに溶解し、10%パラジウム-炭素(含水)3gを用い4kg/cm2圧力で水素添加を行い、標題化合物25.6gを得る。
【0086】
・分子式;C21H29N3
・1H-NMR(CDCl3)δ;
1.0〜2.1(9H,m)、2.64(2H,t)、2.90(2H,m)、3.47(2H,s)、6.65(2H,m)、7.02(2H,m)、7.30(5H,s)
実施例2
3-{N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕カルボキシアミド}-2-ピラジンカルボン酸イソプロピルエステル・塩酸塩
【0087】
【化41】

【0088】
2,3-ピラジンカルボン酸無水物18gをイソプロピルアルコール200mlに加え1時間還流する。その後アルコールを留去し、得られる固体をTHFに溶解して4-(2-アミノエチル)ベンジルピペリジン30.6g、1-ハイドロキシベンゾトリアゾル21gを加える。これを冷却下、撹拌し、DCC29.7gを加え、室温で1晩反応させる。濾過後、THFを留去し、塩化メチレンを加える。これを飽和炭酸カリウム水溶液、食塩水で洗浄し、乾燥後、溶媒留去する。さらにシリカゲルカラムで精製し、得られた結晶をエーテル-ヘキサンで再結晶すると目的物の白い結晶8.81gを得た。これを常法により塩酸塩とした。
【0089】
・元素分析値;C23H30N4O3・HCl・1/2H2Oとして
理論値(%) C 60.58, H 7.07, N 12.29
実測値(%) C 60.54, H 7.00, N 12.29
実施例3
N-{2-〔1-(4-ハイドロキシベンジル)ピペリジン-4-イル〕エチル}-2-キノキサリンカルボン酸アミド・塩酸塩
【0090】
【化42】

【0091】
2-キノキサリンカルボン酸クロライド2gを1-(p-メトキシベンジル)-4-ピペリジンエチルアミン2.52gをトリエチルアミン2g存在下、室温でTHF中で反応させた。これを常法により後処理してカラム精製することによりN-{2-〔1-(4-メトキシベンジル)ピペリジン-4-イル〕エチル}-2-キノキサリンカルボン酸アミド2.5gを得た。
これを1g塩化メチレンに溶解しBBr3により脱メチル化反応を行い、カラム精製することにより生成物0.3gを得た。これを塩酸塩とすることによりクリーム色の結晶を0.2g得た。
【0092】
・分子式;C23H26N4O2・HCl
・1H-NMR(CDCl3)δ;
1.08〜1.92(9H,m)、2.84〜3.18(2H,m)、3.24〜3.64(2H,m)、3.52(2H,s)、6.60(2H,d)、7.05(2H,d)、7.17(2H,s)、7.64〜8.14(4H,m)、9.53(1H,m)
実施例4
N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-2-キノキサリンカルボン酸アミド
【0093】
【化43】

【0094】
1-ベンジル-4-アミノエチルピペリジン4.6g、ピリジン50ml、4-ジメチルアミノピリジンを室温、撹拌下、2-キノキサロイルクロライド40g加える。3時間反応後、水にあけメチレンクロライドで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去する。
この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(5%MeOH-CH2Cl2)し、酢酸エチルより再結晶し、標題化合物3.0gを得る。
【0095】
・分子式;C23H26N4O2・HCl
・1H-NMR(CDCl3)δ;
1.16〜2,20(9H,m)、2.76〜3.04(2H,m)、3,49(2H,s)、3.48〜3.68(2H,t)、7.13〜7.40(5H,m)、7.70〜8.26(4H,m)、9.64(1H,s)
実施例5
1-ベンジル-4-(N’-フェニルアミノエチル)ピペリジン
【0096】
【化44】

【0097】
4-(N-ベンゾイルピペリジル)酢酸47gと塩化チオニル8mlとベンゼン20ml中2時間加熱還流後、減圧留去する。
これをTHF20mlに溶解し、氷冷撹拌下アニリン1.86g、トリエチルアミン10g、THF30ml内に滴加する。室温で約11時間反応した後、水にあけメチレンクロライドで抽出する。飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(5%MeOH in CH2Cl2)し4-(N-ベンゾイルピペリジル)酢酸アニリド0.9gを得る。
この4-(N-ベンゾイルピペリジル)酢酸アニリド0.9gをTHF10mlに溶解し、氷冷撹拌下、THF30ml中リチウムアルミニウムハイドライド0.38gを滴下し、さらに1時間加熱還流する。反応後、水を加え、沈澱濾去後、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、1-ベンジル-4-(N’-フェニルアミノエチル)ピペリジン0.7gを得る。
【0098】
・分子式;C20H26N2
・1H-NMR(CDCl3)δ;
1.0〜2.2(9H,m)、2.85(2H,m)、3.10(2H,t)、3.44(2Hs)、3.7(1H,bs)、6.4〜6.8(3H,m)、7.0〜7.4(7H,m)
実施例6
N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕アセトアニリド
【0099】
【化45】

【0100】
1-ベンジル-4-(N’-フェニルアミノエチル)ピペリジン0.7g、トリエチルアミン2.0g、THF20mlを氷冷下撹拌下、アセチルクロライド0.4gを滴下する。
室温で3時間反応後、水20mlを加え、メチレンクロライドで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去する。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製(5%MeOH in CH2Cl2)し、標題化合物を得る。
【0101】
・分子式;C23H28N2O
・ 1H-NMR(CDCl3)δ;
1.0〜2.1(12H,m)、2.6〜3.0(2H,m)、3.39(2H,s)、3.67(2H,t)、6.9〜7.5(10H,m)
実施例7
N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N-〔2-(1-ベンジルピペリジル-4-イル)エチル-4-フロロけい皮酸アミド・塩酸塩
【0102】
【化46】

【0103】
1-ベンジル-4-〔N’-(3’,5’-ジメトキシフェニル)アミノエチル〕ピペリジン1.0g、トリエチルアミン2.0g、THF20mlを氷冷撹拌下、p-フロロけい皮酸クロライド0.51g加える。室温で2時間反応後水にあけ、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去する。
この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(5%MeOH in CH2Cl2)する。常法により塩酸塩として標題化合物0.9gを得る。
【0104】
・分子式;C31H35N2O3F・HCl
・1H-NMR(CDCl3)δ;
1.1〜2.1(9H,m)、2.7〜3.0(2H,bd)、3.51(2H,s)、3.83(8H,m)、6.1〜6.4(4H,m)、6.9〜7.8(10H,m)
実施例8
N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-N-フェニルイソニコチン酸アミド・二塩酸塩
【0105】
【化47】

【0106】
N-〔4’(1-ベンジルピペリジン)エチル〕アニリン0.70g、4-(N,N’-ジメチルアミノ)ピリジン触媒量をピリジン30mlに溶かし、氷冷下撹拌する。ここに、イソニコチン酸クロライド塩酸塩0.85gを加え、3時間30分撹拌する。減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムで精製する。常法により二塩酸塩とし、淡黄色非晶質として0.75gを得る(収率73.0%)。
【0107】
・分子式;C26H29N3O・2HCl
・1H-NMR(CDCl3)δ;
1.13〜2.01(9H,m)、2.81(2H,bd)、3.44(2H,s)、3.88(2H,bt)、6.84〜7.26(12H,m)、8.31(2H,d)
実施例9
4-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)プロピオンアニリド・塩酸塩
【0108】
【化48】

【0109】
アニリン0.5g、トリエチルアミン1gをTHF中に溶解する。この中に撹拌下、4-(1-ベンジルピペリジン)プロピオン酸クロライドを1g滴下し、室温で5時間反応させる。その後、溶媒を留去し、塩化メチレンを加え、水洗、MgSO4で乾燥する。これを再び溶媒を留去してシリカゲルカラム精製することにより目的物の油状物を得た。さらにこのものを常法に従い、塩酸塩にすることにより白い結晶0.14gを得た。
【0110】
・融点(℃);197.5〜198
・元素分析値;C21H26N2C・HClとして
理論値(%) C 70.28, H 7.58, N 7.81
実測値(%) C 70.50, H 7.58, N 7.83
実施例10
N-〔(1-ベンジルピロリジン-3-イル)メチル〕ベンズアミド・塩酸塩
【0111】
【化49】

【0112】
ベンゾイルクロライド0.74g、3-(2’-アミノメチル)-ベンジルピロリジン1gをトリエチルアミン1.5g存在下THF中、室温で撹拌し反応させた。これを常法により後処理しカラム精製することにより、目的物を0.32g得た。これを一般的方法により塩酸塩にした。
【0113】
・分子式;C19H22N2O・HCl
・1H-NMR(CDCl3)δ;
1.48〜3.08(7H,m)、3.44(2H,d)、3.62(2H,d)、7.04〜7.88(10H,m)
実施例11
4-(N-ベンジルピペリジン-4-イル)-3-ハイドロキシ-(4-メトキシ)ブチロフェノン
【0114】
【化50】

【0115】
窒素気流下、THF7ml中にジイソプロピルアミン2mlを加え、0℃にて、1.6Mn-ブチルリチウムヘキサン溶液7.6mlを加え、10分間撹拌後、-78℃まで冷却してp-メトキシアセトフェノン1.65gのTHF10ml溶液を加え20分間撹拌する。さらに1-ベンジル-4-ピペリジンカルバルデヒド2.4gのTHF10ml溶液を加え、10分間撹拌する。1%塩化アンモニウム水溶液を加え、メチレンクロライドで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(5%MeOH-CH2Cl2)により精製し、標題化合物2.0gを得る。
【0116】
・分子式;C23H29NO3
・1H-NMR(CDCl3)δ;
1.0〜2.2(9H,m)、2.6〜3.4(5H,m)、3.43(2H,s)、3.81(3H,s)、4.1(lH)、6.83(2H,d)、7.17(5H,s)、7.82(2H,d)
実施例12
4-(N-ベンジルピペリジン-4-イル)-(4-メトキシ)ブチロフェノン・塩酸塩
【0117】
【化51】

【0118】
ディーン・スターク装置を用い、4-(N-ベンジルピペリジン-4-イル)-3-ハイドロキシ-(4-メトキシ)ブチロフェノン0.54g、p-トルエンスルホン酸0.1g、トルエン30mlで加熱還流を5時間行う。反応後、炭酸カリウム水溶液にあけ、メチレンクロライドで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧留去する。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製(3%MeOH-CH2Cl2)し、1-ベンジル-4-〔4-(p-メトキシフェニル)-4-オキソブチル〕ピペリジン0.45gを得る。これをMeOH20mlに溶解し、10%パラジウム-炭素(含水)40mgを加える。室温常圧で1.5時間水素添加する。不溶物を濾去し、減圧留去する。常法により塩酸塩とし、MeOH-IPEより結晶化し、標題化合物0.2gを得る。
【0119】
・分子式;C22H29NO2・HCl
・1H-NMR(CDCl3)δ;
1.4〜2.3(11H,m)、2.4〜2.7(2H,m)、2.95(2H,t)、3.55(2H,s)、3.87(3H,s)、6.93(2H,d)、7.1〜7.5(5H,m)、7.94(2H,d)
実施例13
N-〔2-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)エチル〕-3-フランカルボン酸アミド・塩酸塩
【0120】
【化52】

【0121】
4-(2-アミノエチル)-1-ベンジルピペリジン1.64g、炭酸カリウム2.67gをクロロホルム40ml、水40mlの混液に加え、氷冷下1時間撹拌する。有機層を分離し、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させる。減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムで精製、常法で塩酸塩とし、淡黄色非晶質として標題化合物1.60gを得る(収率61.1%)。
【0122】
・分子式;C19H24N2O2・HCl
・1H-NMR(CDCl3)δ;
1.47〜2.10(9H,m)、2.81(2H,bd)、3.25〜3.47(4H,m)、5.80(1H,bs)、6.51(1H,dd)、7.15〜7.19(6H,m)、7.82(1H,dd)
実施例14
N-〔2-(1-アダマンタンメチルピペリジン-4-イル)エチル〕ベンズアミド
【0123】
【化53】

【0124】
N-(1-アダマンタンメチル)-4-(2-アミノエチル)ピペリジン1.47g、炭酸カリウム0.73gをクロロホルム15mlと水15mlの混液に加え、氷冷下激しく撹拌する。ここにべンゾイルクロライド0.90gを滴下し、室温で一夜撹拌する。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去する。シリカゲルカラムで精製し、ベンゼン-n-ヘキサンから再結晶し、淡黄色板状晶として標題化合物1.47gを得る(収率72.6%)。
【0125】
・分子式;C25H36N2O
・1H-NMR(CDCl3)δ;
1.29〜2.28(27H,m)、2.72(2H,bs)、3.43(2H,q)、6.01(1H,bs)、7.31〜7.43(3H,m)、 7.67(1H,dd)
実施例15
N-メチル-N-〔2-(1-アダマンタンメチルピペリジン-4-イル)エチル〕ベンズアミド・塩酸塩
【0126】
【化54】

【0127】
ナトリウムハイドライド0.18gをテトラハイドロフラン(THF)2mlに懸濁させ、氷冷下撹拌する。ここにN-〔2-(1-アダマンタンメチルピペリジン-4-イル)エチル〕ベンズアミド1.45gをTHF5mlに溶かしたものを滴下する。室温で1時間撹拌した後、再び氷冷し、ヨウ化メチル0.36mlを加え、一夜室温で撹拌する。氷水にあけ、塩析下クロロホルム抽出し、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させる。減圧下溶媒を留去し、シリカゲルクロマトで精製する。0.60gの黄色油状物が得られる(収率47.0%)。
また、メチル化されていない原料0.22gを回収した(回収率15.2%)。得られた油状物を常法で塩酸塩として標題化合物0.52gを黄色非晶質として得る(収率37.6%)。
【0128】
・分子式;C26H38N2O・HCl
・1H-NMR(CDCl3)δ;0.92〜3.60(63H,m)、7.29(5H,s)
実施例16
N-〔2-(1-シクロヘキシルメチルピペリジン-4-イル)エチル-N-メチルベンズアミド・塩酸塩
【0129】
【化55】

【0130】
N-メチル-N-(4’-ピペリジルエチル)ベンズアミド0.6g、シクロヘキシルブロマイド1.2g、炭酸水素ナトリウム2.0g、メチルエチルケトン30mlを7時間加熱還流する。反応後、水に加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去する。この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(5%MeOH-CH2Cl2)し、標題化合物0.3gを得る。
【0131】
・分子式;C22H34N2O・HCl
・1H-NMR(CDCl3)δ;
0.8〜1,1(20H,m)、1.1〜1.6(4H,m)、1.8〜2.6(5H,m)、7.4(5H,s)
実施例17
1-ベンジル-4-〔(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イル〕メチルピペラジン・2塩酸塩
【0132】
【化56】

【0133】
5,6-ジメトキシ-1-インダノン1.00g、パラホルムアルデヒド0.31g、1-ベンジルピペラジン0.90mlをエタノール30ml、水2mlに懸濁し、濃塩酸を加えてpH3とした。3時間加熱還流した後、放冷し、白色固体を濾別した。これを塩化メチレンにて懸濁させ、10%炭酸ナトリウム水溶液と飽和食塩水にて洗浄した。硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムにて精製した。さらに常法により塩酸塩とし、メタノールから再結晶化し、次の物性を有する標題化合物0.55g(収率23%)を得た。
【0134】
・融点(℃);227〜228 (分解)
・元素分析値;C23H29N2O3・2HClとして
理論値(%) C 60.79, H 6.88, N 6.16
実測値(%) C 60.31, H 6.95, N 6.06
実施例18〜133
実施例1〜17と同様にして合成した化合物を表4〜28に示す。
【0135】
【表4】

【0136】
【表5】

【0137】
【表6】

【0138】
【表7】

【0139】
【表8】

【0140】
【表9】

【0141】
【表10】

【0142】
【表11】

【0143】
【表12】

【0144】
【表13】

【0145】
【表14】

【0146】
【表15】

【0147】
【表16】

【0148】
【表17】

【0149】
【表18】

【0150】
【表19】

【0151】
【表20】

【0152】
【表21】

【0153】
【表22】

【0154】
【表23】

【0155】
【表24】

【0156】
【表25】

【0157】
【表26】

【0158】
【表27】

【0159】
【表28】

 
訂正の要旨 (a)訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1が
「 次の一般式(I-1)で表される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩。……
ただし、以下の(1)〜(9)である場合を除く。
……又はシクロアルキル基である場合。]」とあるのを
「次の一般式(I-1)で表される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩。……
ただし、以下の(1)〜(16)である場合を除く。
……又はシクロアルキル基である場合。
(10) 次式で表される化合物
【化3】

(式中、Phはフェニル基、K11は、-CO(CH2)CH3、-COCH(CH3)2、-CO(CH2)3CH3、-CO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3、メチル基、フェネチル基、3,4-ジメトキシフェニルエチル基又は3,4-ジアセトキシフェニルエチル基を意味する。)
(11) 次式で表される化合物
【化4】

(式中、K12は、-(CH2)2CH(CH3)2、フェネチル基、シンナミル基、式
【化5】

で表される基、又は式
【化6】

で表される基を意味する。)
(12) 次式で表される化合物
【化7】

(式中、n’は0又は1、qは1又は2、K13は置換基としてハロゲンを有していてもよいフェニルアルキル(アルキルの炭素数1〜2)基、低級アルキル基、シクロアルキル(シクロアルキルの炭素数3〜6)アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基を意味する。)
(13) 次式で表される化合物
【化8】

(式中、J112は3-メトキシフェニル基又は3,4,5-トリメトキシフェニル基、Meはメチル基を意味する。)
(14) 次式で表される化合物
【化9】

(式中、J111はメチル基又はiso-プロピル基、Phはフェニル基を意味する。)
(15) 1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルベンジル)ピペリジン
(16) 次式で表される化合物
【化10】

(式中、Meはメチル基を意味する。)]」と訂正するものである。
訂正事項b
明細書【0013】が
「qは1又は2を意味する。但し、以下の(1)〜(9)である場合を除く。
(1)J1-1が置換又は無置換のフェニル基、……
(2)J1-1低級アルキル基、……
(3)J1-1が置換又は無置換のフェニル基、……
(4)J1-1が低級アルキル基、……
(5)J1-1が低級アルキルあるいは……
(6)J1-1がピリジル基、……
(7)J1-1が低級アルキル基、……
(8)J1-1がフリル基、……
(9)qが1で、J1-1が低級アルキル基……又はシクロアルキル基である場合。]……」あるのを
「qは1又は2を意味する。但し、以下の(1)〜(16)である場合を除く。
(1)Jが置換又は無置換のフェニル基、……
(2)Jが低級アルキル基、……
(3)Jが置換又は無置換のフェニル基、……
(4)Jが低級アルキル基、……
(5)Jが低級アルキルあるいは……
(6)Jがピリジル基、……
(7)Jが低級アルキル基、……
(8)Jがフリル基、……
(9)qが1で、Jが低級アルキル基……又はシクロアルキル基である場合。
(10) 次式で表される化合物
【化15】

(式中、Phはフェニル基、K11は、-CO(CH2)CH3、-COCH(CH3)2、-CO(CH2)8CH3、-CO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3、メチル基、フェネチル基、3,4-ジメトキシフェニルエチル基又は3,4-ジアセトキシフェニルエチル基を意味する。)
(11) 次式で表される化合物
【化16】

(式中、K12は、-(CH2)2CH(CH3)2、フェネチル基、シンナミル基、式
【化17】

で表される基、又は式
【化18】

で表される基を意味する。)
(12) 次式で表される化合物
【化19】

(式中、n’は0又は1、qは1又は2、K13は置換基としてハロゲンを有していてもよいフェニルアルキル(アルキルの炭素数1〜2)基、低級アルキル基、シクロアルキル(シクロアルキルの炭素数3〜6)アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基を意味する。)
(13) 次式で表される化合物
【化20】

(式中、J112は3-メトキシフェニル基又は3,4,5-トリメトキシフェニル基、Meはメチル基を意味する。)
(14) 次式で表される化合物
【化21】

(式中、J111はメチル基又はiso-プロピル基、Phはフェニル基を意味する。)
(15) 1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルベンジル)ピペリジン
(16) 次式で表される化合物
【化22】

式中、Meはメチル基を意味する。)]……」と訂正するものである。
異議決定日 2001-08-10 
出願番号 特願平9-186306
審決分類 P 1 652・ 161- YA (C07D)
P 1 652・ 531- YA (C07D)
P 1 652・ 113- YA (C07D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 冨永 保瀬下 浩一榎本 佳予子  
特許庁審判長 宮本 和子
特許庁審判官 横尾 俊一
大久保 元浩
登録日 2000-06-16 
登録番号 特許第3078244号(P3078244)
権利者 エーザイ株式会社
発明の名称 環状アミン誘導体  
代理人 義経 和昌  
代理人 古谷 聡  
代理人 義経 和昌  
代理人 坪井 有四郎  
代理人 古谷 馨  
代理人 青山 葆  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 持田 信二  
代理人 田村 恭生  
代理人 古谷 馨  
代理人 持田 信二  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 古谷 聡  

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