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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない E06B
管理番号 1052826
審判番号 無効2001-35237  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-06-06 
確定日 2002-01-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第2564242号発明「折り畳み式網戸」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由
1 手続きの経緯

出願(実願平3-58582号) 平成3年6月28日
出願公開(実開平5-3591号) 平成5年1月19日
出願変更(特願平5-96626号) 平成5年3月31日
出願公開(特開平6-17585号) 平成6年1月25日
特許権の設定登録(特許第2564242号) 平成8年9月19日
特許異議の申立て(2件) 平成9年6月11日
及び平成9年6月18日
取消理由通知 平成10年1月12日
訂正請求書 平成10年3月31日
訂正を認め、特許維持の決定 平成11年1月28日

別件無効審判の請求(平成11-35412号) 平成11年8月6日
答弁書 平成11年11月22日
弁ぱく書 平成12年5月1日
口頭審理(特許庁審判廷にて) 平成12年9月14日
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成12年9月14日
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成12年9月14日
陳述要領書(被請求人) 平成12年10月13日
請求不成立の審決(起案日) 平成13年4月24日
審決の確定登録 平成13年7月3日

本件無効審判の請求(2001-35237号) 平成13年6月6日
答弁書 平成13年9月7日


2 本件特許発明

本件特許第2564242号の請求項1〜7に係る発明(以下「本件特許発明1〜7」という)は、平成10年3月31日付けで訂正された訂正明細書及び特許査定時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜7に記載されたとおりの次のものである。
なお、以下の便宜のため、【請求項1】と【請求項3】については構成要件毎に分説して符号を付す。
【請求項1】(1-A)多数のプリーツを施すことによりアコーディオン式に伸縮自在となしたネットの基端を、網戸枠の一側辺の縦枠を構成する収納ケース内に横開き式に開閉自在に固定すると共に、
(1-B)該ネットの先端に開閉操作用の操作框を取り付け、
(1-C)該ネットには操作框と収納ケースとの間で常に緊張状態に保持される紐を挿通し、
(1-D)該ネットに、それを収納ケースから引き出してネット張設開口部を閉鎖した状態において、該ネットが上記プリーツによりジグザグ状を保持する長さをもたせた、ことを特徴とする折り畳み式網戸。
【請求項2】請求項1に記載のものにおいて、多数のプリーツを施すことによりアコーディオン式に伸縮自在となした通風性のあるネットを、収納ケースから引き出してネット張設開口部を閉鎖したときの各プリーツの折角が60〜90度になるような長さに形成した、ことを特徴とする折り畳み式網戸。
【請求項3】(3-A)請求項1に記載のものにおいて、
(3-B)収納ケース内に、一端を操作框に連結してネットに挿通した紐を常に緊張状態に保持するための手段を設け、
(3-C)操作框を常時開放方向に付勢した、ことを特徴とする折り畳み式網戸。
【請求項4】請求項3に記載のものにおいて、ネットに挿通した紐を常に緊張状態に保持するための手段として、収納ケース内にスプリングを駆動源とする巻取ローラを設け、該巻取ローラに一端を操作框に連結した紐の他端を巻き付けて、ネットを常時開放方向に付勢する手段を備えた、ことを特徴とする折り畳み式網戸。
【請求項5】請求項1に記載のものにおいて、アコーディオン式に伸縮自在となしたネットの先端に取り付けた操作框と、該ネットの中間位置に取り付けた振れ止め板との上端に、それぞれランナーを取り付け、これらのランナーを上枠のレール上に転動自在に載置することにより、該ネットを上枠に開閉自在に吊下した、ことを特徴とする折り畳み式網戸。
【請求項6】請求項1に記載のものにおいて、アコーディオン式に伸縮自在となしたネットの基端を、該ネットを収納する収納ケースの内底に固定し、該収納ケースと操作框の間に折り畳んだ状態にあるネットの収納域を形成した、ことを特徴とする折り畳み式網戸。
【請求項7】請求項3に記載のものにおいて、アコーディオン式に伸縮自在となしたネットの基端を、該ネットを収納する収納ケースの内底に固定し、該収納ケースと操作框の間に折り畳んだ状態にあるネットの収納域を形成し、折り畳んだときのネットの重なり厚さを、収納ケースの深さより大きくした、ことを特徴とする折り畳み式網戸。


3 請求人の主張及び提出した証拠方法

3-1 請求人の主張

(1)請求の趣旨
本件特許第2564242号発明の請求項1〜7に係る特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。(審判請求書2頁)

(2)特許無効事由
(2)-1 要点
本件特許は実願平3-58582号に係る実用新案登録出願(以下、「原出願」という)から出願変更した特願平5-96626号に係る特許出願(以下、「変更出願」という)に付与されたものである。
しかし、前記変更出願は原出願の当初明細書又は図面により開示されていた考案の要旨を明らかに変更して拡大しているものであり、「客体の同一性」を欠如するものであるから、特許法第46条により変更した出願とは認められず、その現実の出願日である平成5年3月31日の出願として取り扱われるべきである。
その結果、本件特許発明はその出願前の平成5年1月19日に公開され、且つ、日本国内で頒布された原出願の公開公報(実開平5-3591号、甲第4号証)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたことになり、無効にされるべきである。(同書3頁)

(2)-2 特許法第46条により適法に変更した出願とは認められない理由
変更出願に係る発明の要旨と原出願に係る考案の要旨は異なる。
特に、原出願の請求項1に記載されていた「…前記収納ケース内にはスプリングを駆動源とする巻取ローラを設け、該巻取ローラに紐を巻き付けて該紐の先端を前記操作框に固定することにより…」(以下、「構成要件A」という)につき変更出願では請求項1の記載から故意に削除されている。
このため、変更出願の請求項1の技術的範囲が大幅に拡大されてしまった。即ち、上記の「…前記収納ケース内にはスプリングを駆動源とする巻取ローラを設け、該巻取ローラに紐を巻き付けて該紐の先端を前記操作框に固定することにより…」の構成により、極めて限定されていた考案の要旨が、出願変更によって大きく拡大された点が、請求人が客体の同一性を欠如していると主張することの中核である。
一方で、被請求人は、上記考案の要旨を変更出願の請求項4に繰下げており、恰も客体の同一性があるかのように特許請求の範囲を作り変えている。
また、変更出願の特許請求の範囲には、その請求項1に「(1-C)該ネットには操作框と収納ケースとの間で常に緊張状態に保持される紐を挿通し」が記載され、且つ、請求項2、3、5及び6に引用されている。
さらに、請求項3に「(3-B)収納ケース内に、一端を操作框に連結してネットに挿通した紐を常に緊張状態に保持するための手段を設け」が記載され、且つ、請求項4及び7に引用されている。
このように、常に緊張状態に保持するための原出願の手段「…前記収納ケース内にはスプリングを駆動源とする巻取ローラを設け、該巻取ローラに紐を巻き付けて該紐の先端を前記操作框に固定することにより…」を削除し、これに代えて加入された構成要件(1-C)及び構成要件(3-B)が、以下に詳述するように、客体の同一性を損なう構成である。
これらの構成要件(1-C)及び構成要件(3-B)が原出願の明細書に記載されていれば、適法な出願変更となるので、これらの記載の有無を判断する。

構成要件(1-C)について
まず、構成要件(1-C)が原出願に記載されているか否かを判断するに、ネット2に紐15,15が挿通されている構成は記載されている(0013,図1)。
また、前記紐15,15は、収納ケース5内に設けられたスプリングを駆動源とする巻取りローラ16に巻付けられ、紐15,15の先端は、前記操作框10に固定されているので(実用新案登録請求の範囲、0013)、前記紐15,15が 操作框10と収納ケース5との間に挿通されている点も記載されている。
しかし「操作框と収納ケースとの間で常に緊張状態に保持される紐」は、前記紐15,15が収納ケース5内に設けられた前記巻取ローラ16に巻付けられ、それらの先端が、前記操作框10に固定されていることに基づく紐の構成であって、それ以外に紐を常に緊張状態に保持させる構成については記載も示唆もない。
このことは、原出願が、ネットをアコーディオンカーテン式に開閉自在とすることによって防虫網戸から巻取軸を無くすと共に、該ネットが風圧等の作用によってみだりに変形することがないようにした折り畳み式の防虫網戸を提供するを課題として(【考案が解決しようとする課題】)、そのため、前記紐15,15の一端を収納ケース5内に設けられたスプリングを駆動源とする巻取りローラ16に巻付け、紐15,15の先端を前記操作框10に固定した構成を実用新案登録請求の範囲に記載し、これらの構成が一体不可分となって有機的に結合し機能することにより、その作用効果(段落0016【考案の効果】)を得ていることからも明らかである。
即ち、原出願は「操作框と収納ケースとの間で常に緊張状態に保持される紐」自体の構成を案出し、その作用効果を得ようとするものではないのである。

構成要件(3-B)について
前記紐15,15が収納ケース5内に設けられた前記巻取ローラ16に巻付けられ、それらの先端が、前記操作框10に固定されていることからなる構成以外の構成要件(3-B)について、原出願には記載も示唆もない。
構成要件(1-C)及び構成要件(3-B)の効果について
構成要件(1-C)及び構成要件(3-B)に対応する効果として、変更出願は、「ネットには操作框と収納ケースとの間で常に緊張状態に保持される紐を挿通しているので、簡単な構造でネットの張設状態を安定的に保持し、防虫効果を有効に発揮させることができる」と記載しているが、このような効果は原出願には記載されていない。

以上、詳述したように、スプリングを駆動源とする巻取りローラ16以外の構成要件(1-C)、構成要件(3-B)及びそれらの作用効果は、原出願に記載も示唆もなく、変更出願に初めて加入された構成及び効果である。
その結果、変更出願には、前記紐15,15が収納ケース5内に設けられた前記巻取ローラ16に巻付けられ、それらの先端が、前記操作框10に固定されているもの以外の構成によって、紐を常に緊張状態に保持させる発明が含まれることになる。

よって、本件特許は、原出願の明細書又は図面に開示された事項の範囲外のものを含む発明についてされたもので、適法な変更出願に基づくものとは認められない。
このような不適法な変更出願の出願日は、現実の出願日の平成5年3月31日である。(同書9〜12頁)

3-2 請求人の提出した証拠方法

甲第1号証……原出願(実願平3-58582号)の願書、明細書、要約書及び図面の写し
甲第2号証……変更出願に基づく本件特許発明の訂正請求書及びその請求書に添付された全文訂正明細書の写し
甲第3号証……変更出願(特願平5-96626号)の願書、明細書、要約書及び図面の写し
甲第4号証……原出願に係る公開公報(実開平5-3591号)
甲第5号証……本件特許発明に係る特許原簿の写し


4 被請求人の主張及び提出した証拠方法

4-1 被請求人の主張

(1)答弁の趣旨
本件審判の請求は却下する、あるいは、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。(答弁書2頁)

(2)一事不再理
本件審判の請求は、特許法167条の1事不再理の規定に基づいて却下されるべきである。
即ち、本件特許発明については、本件審判の請求に先立ち、平成11年8月6日付けで株式会社メタコ(以下「先の請求人」という)から無効審判(平成11年審判第35412号、以下「先の審判」という)が請求され、それに対して、平成13年4月24日に「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決(乙第1号証、以下「先の審決」ともいう)がなされ、それが平成13年6月11日に確定し、特許原簿への審判の確定登録が平成13年7月3日になされている。
また、本件審判は、平成13年6月6日に請求されている。

一方、一事不再理の規定が適用されるのは、審判請求の理由が同一事実、同一証拠に基づく場合に限られるが、先の請求人の主張は、先の審決中に
「請求人は本件特許出願は、変更出願として不適法な出願であるとして、以下列挙する技術的事項にその要因があると主張している。
(イ)「操作框と収納ケースとの間で常に緊張状態に保持される紐」に関して。
もとの出願の明細書または図面には、このような規定は一切見あたらない。この規定が、甲第1号証(本件の甲第4号証と同じ)の記載からみて技術的に自明でもない。」(乙第1号証4頁下から5行〜5頁1行)と記述されており、そして、先の審決では、この主張に対する判断を示している。

本件審判における無効事由の根拠とする事実と先の請求人主張の事実を対比すると、それは実質的に同一であり、また、証拠はいずれも本件特許発明の原出願である実願平3-58582号の明細書及び図面であって、これらの証拠も両審判において同一である。
従って、両審判における請求理由(事実及び証拠)に関しては、一事不再理の要件を充足している。(同書2〜3頁)

(3)無効事由に対する反論
(3)-1 本件特許発明と原出願との関係
本件特許発明は、変更出願として適法に特許されたものであって、当然にその出願日は遡及し、平成3年6月28日に出願されたものとして処理されるべきものである。(同書5頁)

(3)-2 「客体の同一性の欠如」に対する反論
請求人は、請求理由(9頁8〜13行)において、本件特許発明の範囲に関連し、「出願変更によって大きく拡大された点が、請求人が客体の同一性を欠如していると主張することの中核である。」と主張し、しかも、請求理由の全体においてその考えを基礎にしている。
しかしながら、本件特許の原出願に対して適用(準用)される旧特許法第41条では、明細書又は図面に記載した事項の範囲内において請求の範囲を増加(構成要件の削除)することを許容している。
従って、請求の範囲の一部構成要件の削除が直ちに不適法であるわけはなく、請求人の上記主張は全く論拠がない。(同書6頁)

(3)-3 本件特許発明と甲第4号証との対比
本件特許の出願日は原出願の出願日である平成3年6月28日まで遡及し、その日に出願されたと見做されるべきものである。これに対し、甲第4号証は、本件特許の出願日以後のものであるから、本件特許発明と対比するまでもない。(同書6頁)

4-2 被請求人の提出した証拠方法

乙第1号証:平成11年審判第35412号の審決
乙第2号証:特許庁編、工業所有権法逐条解説[第14版]第365〜367頁


5 当審の判断

(1)一事不再理について
特許法第167条の規定の趣旨は、ある特許につき無効審判請求が成り立たない旨の審決(請求不成立審決)が確定し、その旨の登録がされたときは、その登録の後に新たに右無効審判請求におけるのと同一の事実及び同一の証拠に基づく無効審判請求をすることが許されないとするものであり、確定した請求不成立審決の登録により、その時点において既に係属している無効審判請求に対しては特許法第167条の規定は適用されないとするものである。
してみると、前記「1 手続きの経緯」にも記したとおり、先の審決の確定登録がなされた平成13年7月3日の時点においては、本件審判の請求は既に係属していたのであるから、本件審判請求と先の審判請求が同一事実及び同一証拠に基づくか否かを検討するまでもなく、本件審判請求に対しては特許法第167条の規定は適用できない。

なお、一応、両審判請求が同一事実及び同一証拠に基づくか否かを検討すると、
特許法第167条でいう「同一事実」とは、無効審判において無効事由として主張する事実が同一であることを、「同一証拠」とは、同一性のある証拠であることを意味している。
そこで本件審判請求と先の審判請求の無効事由を比較すると、
先の請求人は、(1)本件特許発明1〜7に対する、本件甲第4号証と同じものを証拠とする特許法第29条第1項第3号に基づく無効事由、及び、(2)本件特許発明1、2および6に対する、特開平5-179875号を証拠とする特許法第29の2に基づく無効事由を主張し、
本件請求人は、本件特許発明1〜7に対する、甲第4号証を証拠とする特許法第29条第2項に基づく無効事由を主張している。
これにより、本件審判請求は先の審判請求とは異なる事実に基づくものといえる。

また、先の審決を参照すると、その「3.請求人の主張及び提出した証拠方法」には「(4)本件特許は、変更出願として不適法のため、出願日は遡及が認められないと主張する理由。
請求人は本件特許出願は、変更出願として不適法な出願であるとして、以下列挙する技術的事項にその要因があると主張している。」とあり、
「(イ)「操作框と収納ケースとの間で常に緊張状態に保持される紐」に関して。・・・
(ロ)「容易に回復できるように変形する」ことに関して。・・・
(ハ)「掛け金具と受け金具の構造」について。・・・
(ニ)「プリーツのジグザグの保持」について。・・・」
の4つの根拠事実を上げている。(乙第1号証4〜8頁)
ところで、本件請求人は、「構成要件(1-C)及び構成要件(3-B)が原出願の明細書に記載されていれば、適法な出願変更となる」(審判請求書10頁)とし、本件特許出願が、変更出願として不適法な出願である根拠事実として、(i)構成要件「(1-C)該ネットには操作框と収納ケースとの間で常に緊張状態に保持される紐を挿通し」の原出願の明細書の記載における欠如、(ii)構成要件「(3-B)収納ケース内に、一端を操作框に連結してネットに挿通した紐を常に緊張状態に保持するための手段を設け」の原出願の明細書の記載における欠如を上げているが、このうちの根拠事実(ii)は上記4つの根拠事実とは異なるものである。従って、この点でも、本件審判請求は先の審判請求と同一事実に基づくとはいえない。

よって、本件審判請求に特許法第167条の規定の適用はせず、審理を続行するものとする。

(2)出願内容(客体)の同一性について
特許法第46条は実用新案登録出願を特許出願に変更することを許容しており、実体的要件として、変更出願に係る発明の要旨とする事項は原出願の当初明細書又は図面に記載されていなければならない。いわゆる出願内容の同一性を要する。
そこで、かかる観点から、以下、検討する。

(イ)構成要件Aの削除に関して
請求人が指摘する「変更出願に係る発明の要旨と原出願に係る考案の要旨は異なる。特に、原出願の請求項1に記載されていた構成要件A「…前記収納ケース内にはスプリングを駆動源とする巻取ローラを設け、該巻取ローラに紐を巻き付けて該紐の先端を前記操作框に固定することにより…」につき変更出願では請求項1の記載から故意に削除されている。
このため、変更出願の請求項1の技術的範囲が大幅に拡大されてしまった。即ち、上記構成要件Aにより、極めて限定されていた考案の要旨が、出願変更によって大きく拡大された点が、請求人が客体の同一性を欠如していると主張することの中核である。」(審判請求書9頁)について検討すると、
本件特許出願に対して適用される平成5年法改正前の特許法第41条では、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内においての、特許請求の範囲の増加や変更を許容していた。
してみると、原出願の請求項1から上記構成要件Aを削除した後の内容は、当然、原出願の明細書に記載した事項の範囲内のものであるから、構成要件Aの削除は適法な特許請求の範囲の増加または変更にあたるといえる。

(ロ)構成要件(1-C)及び構成要件(3-B)の開示の有無に関して
請求人が指摘する「以上、詳述したように、スプリングを駆動源とする巻取りローラ16以外の構成要件(1-C)、構成要件(3-B)及びそれらの作用効果は、原出願に記載も示唆もなく、変更出願に初めて加入された構成及び効果である。
その結果、変更出願には、紐15,15が収納ケース5内に設けられたスプリングを駆動源とする巻取ローラ16に巻付けられ、それらの先端が、前記操作桓10に固定されているもの以外の構成によって、紐を常に緊張状態に保持させる発明が含まれることになる。」(審判請求書11頁)という文言上の解釈については、特許請求の範囲の記載だけではなく、それ以外の記載をも参酌して、技術的意味を明確にする必要がある。
そこで、変更出願の明細書または図面を精査すると、
「ネットを収納ケース内に折り畳んだときの重なり厚さを、収納ケースの深さより大きくしておくと、ネットをスプリング等の力で折り畳んだ時の重なり厚さが収納ケースの深さより大きいので該ネットの開放時に操作框が収納ケースに勢いよく衝突することがない」(段落【0009】)、
「紐15,15を介して前記操作框10がスプリングの付勢力で常時開放方向(折り畳まれる方向)に付勢されており、操作框10でネット2を収納ケース5から引き出し建物開口部を閉鎖すると紐15,15を介して巻取ローラ16,16のスプリングにエネルギーが蓄積され、ネット2を折り畳んで開放するときこのスプリングに蓄積されたエネルギーにより紐15,15を介してネット2が自動的に折り畳まれる」(段落【0014】)、
「ネットを比較的強く押した場合などには、ネットが紐と共に容易に変形するため」(段落【0019】、【0021】)等の記載及び図面の記載からみて、
紐の一端は操作框に固定され、他端は、収納ケース内の紐を常に緊張状態を保持するための手段(収納ケース内に設けられた、スプリングを駆動源とする巻取ローラ)に連結されて紐と操作框が連動して動くことにより、紐は操作框と収納ケースとの間で常に緊張状態に保持されていることから、
「操作框と収納ケースとの間で常に緊張状態に保持される紐」とは、「操作框と連動しながら操作框と収納ケースとの間で常に緊張状態に保持される紐」と、
「収納ケース内に設けられた、一端を操作框に連結してネットに挿通した紐を常に緊張状態に保持するための手段」とは、「収納ケース内に設けられた、スプリングを駆動源とする巻取ローラ」と解釈するのが自然であり、
特に段落【0019】、【0021】の「ネットを比較的強く押した場合にはネットが紐と共に容易に変形するため」の説明からも明らかなように、変形の際、紐が網戸面に対して直角方向にも自由に動くことを排除するものでないことから、
「紐15,15が収納ケース5内に設けられたスプリングを駆動源とする巻取ローラ16に巻付けられ、それらの先端が、前記操作桓10に固定されているもの以外の構成によって、紐を常に緊張状態に保持させる発明」は含まれていないことは明らかであり、
変更出願の明細書及び図面に記載されたものは、原出願の明細書または図面に記載された事項の範囲を逸脱しているものとは言えない。
以上のとおり、請求人が、原出願の明細書または図面に記載されていないと主張する変更出願の明細書または図面における上記構成要件(1-C)及び構成要件(3-B)は、原出願の明細書または図面に示唆されていたものと認める。

以上、請求人による出願内容(客体)の同一性欠如の主張は失当と言わざるを得ない。
また、その他に、変更出願として不適法なものであるとする根拠も見出せない。
よって、本件変更出願の出願日は、原出願の出願時であるものと認める。

(3)甲第4号証の扱い
そうすると、請求人によって提出された甲第4号証は、本件変更出願の遡及する出願日より後に出願公開された刊行物となるから、その記載内容を吟味するまでもなく、本件特許発明1〜7の新規性進歩性を否定する証拠方法としては不適当である。


6.まとめ

以上、請求人の主張する理由および提出した証拠によっては、本件特許発明1〜7の特許を無効とすることができない。
また他に、本件特許発明1〜7を、特許を受けることができない発明とすべき理由を発見しない。
よって本件審判の請求は、理由がないものとし、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-11-30 
結審通知日 2001-12-05 
審決日 2001-12-19 
出願番号 特願平5-96626
審決分類 P 1 112・ 121- Y (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 忠夫  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 伊波 猛
中田 誠
登録日 1996-09-19 
登録番号 特許第2564242号(P2564242)
発明の名称 折り畳み式網戸  
代理人 内山 正雄  
代理人 林 宏  
代理人 内山 正雄  
代理人 島田 義勝  
代理人 水谷 安男  
代理人 林 宏  
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